円錐状構造物及びその製造方法
【課題】本発明はFEDに好適な放出開始電圧の低い電子放出源としての円錐状構造物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】プラズマ発生領域内にシリコン基板を配置する工程と、プラズマ発生領域内にメタンガス及び水素ガスの混合ガスを導入する工程と、400W未満のマイクロ波電力によりプラズマを発生させる工程と、シリコン基板に―120Vを超え―50V未満のバイアス電圧を印加する工程と、を含むプラズマ化学気相成長法による円錐状構造物の製造方法。本発明によればFEDに好適な放出開始電圧の低い電子放出源としての円錐状構造物およびその製造方法が提供される。
【解決手段】プラズマ発生領域内にシリコン基板を配置する工程と、プラズマ発生領域内にメタンガス及び水素ガスの混合ガスを導入する工程と、400W未満のマイクロ波電力によりプラズマを発生させる工程と、シリコン基板に―120Vを超え―50V未満のバイアス電圧を印加する工程と、を含むプラズマ化学気相成長法による円錐状構造物の製造方法。本発明によればFEDに好適な放出開始電圧の低い電子放出源としての円錐状構造物およびその製造方法が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は円錐状構造物及びその製造方法に関する。さらに詳しくは本発明は、電界放出ディスプレイの電子放出源に利用され得る円錐状構造物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真空中で電界を印加することにより陰極から電子を引き出し、陽極に塗布した蛍光体に衝突させて発光させる電界電子放出ディスプレイ(Field Emission Display、以下「FED」ともいう。)は、従来のブラウン管ディスプレイに比べて薄型で軽量の表示装置が実現できるため研究が盛んに行われている。FEDの電子放出陰極としては、先端の鋭く尖った導体が用いられるが従来の放出開始電圧は、数十V/μm程度あり、より低い放出開始電圧の実現が望まれている。
【0003】
かかる課題に対して室温で真空中に電子放出が可能な微小電子源として、シリコンやモリブデンなどをミクロンサイズの円錐状に加工したスピンド(Spindt)形電子放出源が提案されている(非特許文献1参照)。また低い仕事関数を持つといわれるダイヤモンド系薄膜でも、電界集中による動作電圧の低減化のために円錐状に整形した技術が提案されている。
【0004】
しかし、これらの材料を円錐状に加工するためには、リソグラフィーやエッチングなどの工程を複数回行わなければならず、非常に複雑でデリケートな作業が必要なため、作業時間とコストがかかっていた。さらに、これらの電子放出源は、放出電流を得るためには数十から百数十V/μmの高電界が必要であった。
【0005】
以上より、FEDに好適な放出開始電圧の低い電子放出源としての円錐状構造物およびその製造方法が求められていた。
【非特許文献1】電界放出素子(Field emission devices)、ロバート イー.ナイダート(Robelt.E. Neidert)、プロービィ エム.フィリップス(Purobi. M. .Phillips)、シドニー ティー.スミス(Sidney T. Smith)、チャールズ エー.スピント(Charls A. Spindt)、米国電子通信学会(IEEE)、トランスアクションズ・オンエレクトロン・ディバイス(Trans. Electron Devices)、第38巻、第12号(1991)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はFEDに好適な放出開始電圧の低い電子放出源としての円錐状構造物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の特徴は、プラズマ発生可能領域内にシリコン基板を配置する工程と、プラズマ発生可能領域内にメタンガス及び水素ガスの混合ガスを導入する工程と、400W未満のマイクロ波電力によりプラズマを発生させる工程と、シリコン基板に―120Vを超え―50V未満のバイアス電圧を印加する工程と、を含むプラズマ化学気相成長法による円錐状構造物の製造方法を要旨とする。
【0008】
本発明の第2の特徴は、底面の直径をL高さをTとしたときにT/Lで定義されるアスペクト比が0.9〜1.1である円錐状構造物を要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、FEDに好適な放出開始電圧の低い電子放出源としての円錐状構造物およびその製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に実施形態を挙げて本発明を説明するが、本発明が以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。図中、同一の機能及び用途を有するものについては同様の符号を付して説明を省略する。
【0011】
[円錐状構造物]
図1(a)、(b)、(c)に示す本実施形態にかかる円錐状構造物は、底面の直径をL高さをTとしたときにT/Lで定義されるアスペクト比が0.5〜2.0、好ましくは0.9〜1.1である先端が先鋭な円錐状構造物である。また図1(b)に示すように、円錐状構造物はその表面に年輪状の段差を備える。かかる段差の一態様としては、図2(a)(b)の模式図に示すような、複数の円柱が略同心円状にステップ状に積層した外観形状が挙げられる。
【0012】
実施形態にかかる円錐状構造物の特徴としては、さらに以下のような特徴を挙げることができる。(1)円錐状構造物は炭化ケイ素(SiC)からなる円錐状中心部と、円錐状中心部の外周を覆うように配置された炭素からなる表層部と、から構成されている。(2)円錐状構造物は非晶質である。(3)円錐状構造物は炭化ケイ素を含む。(4)円錐状構造物は炭素を含む。円錐状構造物はかかる群のいずれか1つ又は複数の特徴を有しても構わない。
【0013】
実施形態にかかる炭素を含む円錐状構造物の用途は特に制限されないが、電子放出しやすい性質をもつこと、先端に電界が集中しやすい形状であることから、電界電子放出源(Field Emission Device)として用いられることが好ましい。電界電子放出源以外の用途としては、バイオチップ用マーカー等が挙げられる。尚、本実施形態にかかる円錐状構造物は、好ましくは後述の円錐状構造物の製造方法により製造される。
【0014】
[円錐状構造物の製造装置]
図3は、円錐状構造物を作製する際に使用するマイクロ波プラズマ化学気相成長(CVD)装置1の一例を示す。図3に示すマイクロ波プラズマCVD装置1は、マイクロ波電源3と、マイクロ波電源3からのマイクロ波を導出するマイクロ波導波管4と、マイクロ波導波管4に垂直に挿入された石英製の反応管2と、を備える。反応管2の上部には供給部21が形成されており、供給部21を介して原料ガス供給装置5からメタン/水素混合ガスが導入される。また反応管2の下部には排気部22が形成されており、排気部22に連結しているロータリーポンプ6により反応管2内は排気され低圧化される。反応管2の内部には、基板10に対向する導体8と、導体8を保持する設置具9と、基板10を保持する導体製の基板台13とが設けられている。導体8と基板10は、基板10側が低電位となるように電圧を印加するバイアス印加装置15を挟んで、導線14により接続されている。
【0015】
マイクロ波電源3からのマイクロ波は、マイクロ波導波管4を経て反応管2との交叉部23に送られる。そして、低圧メタン/水素混合ガス等の雰囲気となっている交叉部23において、プラズマが発生し、このプラズマ発生部に配設された基板10上に円錐状構造物が成長する。
【0016】
[円錐状構造物の製造方法1]
円錐状構造物の製造方法の実施形態として、図3の装置を用いた直流バイアスマイクロ波プラズマ化学気相成長法による円錐状構造物の製造方法を説明する。
【0017】
(イ)図3に示すマイクロ波プラズマCVD装置1の反応管2内におけるプラズマ発生領域内の基板台13に鏡面研磨したシリコン基板10を配置する。その際シリコン基板10の(100)面を用いることが好ましい。シリコン基板10をプラズマ発生雰囲気内のプラズマ中心部から負のバイアス電極方向下方に配置することが好ましい。より具体的には導波管中央(ほぼプラズマ中心部)から、4mm〜10mm下にシリコン基板10が配置されるように基板台13の高さを調整することが好ましい。プラズマ中心から離れすぎると構造物は円錐状からドーム状となり密度も低下するからである。次に反応管2内の設置具9にタングステン製の導体8をシリコン基板10に対向する状態で設置する。そして反応管2を気密封止してマイクロ波導波管4に垂直に挿入する。
【0018】
(ロ)反応管2の供給部21及び排気部22にそれぞれ連結している原料ガス供給装置5及びロータリーポンプ6を稼動させる。そして反応管2内のガス圧力を20〜40Torr、好ましくは28〜32Torrに設定する。
【0019】
(ハ)プラズマ発生領域内にメタンガス及び水素ガスの混合ガスを導入する。メタンガスの供給量は15〜25sccmが好ましく、18〜22sccmがより好ましく、19〜21sccmがさらに好ましい。水素ガス供給量は90〜110sccmが好ましく、95〜105sccmがより好ましい。メタンガスが多すぎると円錐状ではなく針状となり、メタンガスが少なすぎると円錐の密度が低下するからである。
【0020】
(ニ)400W未満、好ましくは180W〜220Wでマイクロ波電源3を稼動させマイクロ波を発生させる。マイクロ波をマイクロ波導波管4を介して反応管2へ送り、反応管2内にプラズマを発生させる。
【0021】
(ホ)バイアス印加装置15を稼動させて基板10と導体8との間に基板10側が低電位となるように、シリコン基板10に―120Vを超え―50V未満、より好ましくは―110V〜―90Vのバイアス電圧をかける。バイアス電圧の印加時間は、製造しようとする円錐状構造物の底面の直径や高さによって適宜変化するものであり特に制限されないが、60分〜360分である。
【0022】
本実施形態にかかる円錐状構造物の製造方法によれば以下に列記するような作用効果が得られる。リソグラフィーや選択性エッチングなど非常に複雑で熟練の技術を必要とする工程を踏むことなく、先端が先鋭な円錐状構造物を再現性良くシリコン基板に対して垂直方向に多数自己形成させることができる。そのため、製造工程の簡略化と製造時間の短縮を図ることができる。また、カーボンナノチューブやナノコーンを製造するときとは異なり、触媒金属をあらかじめ基板上に堆積する必要がない。その結果、円錐状構造物に原材料以外の不純物が入り込む余地がなくなるため、円錐状構造物の純度の向上が図られる。さらに基板バイアス条件による円錐密度を制御できる。円錐状構造物の高さ及び底面の直径は、堆積時間にほぼ比例して増大し、数十nm〜数十μmの極めて広い範囲に成長する。そのため、円錐状構造物の寸法制御を容易に行うことができる。さらに炭素系物質の持つ低い仕事関数や負性電子親和力(NEA)特性により、電子放出電流をより低い印加電界で得ることができる。
【0023】
[円錐状構造物の製造方法2]
円錐状構造物の製造方法1の(イ)〜(ホ)工程により円錐状構造物が得られた後、さらに(ヘ)プラズマ発生可能領域内にメタンガス及び水素ガスの混合ガスを導入し、かつ400W以上のマイクロ波電力によりプラズマを発生させるプラズマ処理工程を設けても良い。(ヘ)工程を設けることにより円錐状構造物の電子放出特性がさらに向上するからである。その際マイクロ波電力は430W〜470Wが好ましい。メタンガスの供給量は15sccm〜25sccmが好ましく、水素ガス供給量は90sccm〜110sccmが好ましい。尚、(ヘ)工程は(イ)〜(ホ)工程と連続して行ってもよく、円錐状構造物に対して(ヘ)工程を独立して行っても構わない。
【0024】
[実施形態の変形例]
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。例えば実施形態にかかる円錐状構造物を母型として、さらに仕事関数の低い金属やダイヤモンドをコーティングすることにより低電界で高電流密度である電子源を製造できる。形状のそろったナノ構造物が得られることから、さらに微小化を図れば量子ドットを製造できる。このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【実施例】
【0025】
[円錐状構造物の調製例1]
図3の装置を用いて実施形態にかかる円錐状構造物の製造方法に基づいて、以下の調製条件において、堆積時間とシリコン基板10に印加する負の直流バイアス電圧を変化させて、円錐状構造物を調製した。
【0026】
―調製条件―
基板:シリコン基板、(100)面
ガス供給量:メタンガス20sccm、水素ガス100sccm
反応管2内のガス圧力:30Torr
マイクロ波電力:200W
バイアス電圧:−50V、−100V、−120V
堆積時間:10分間、60分間、360分間
―結果―
図4(a)、(b)、(c)は、堆積時間を10分とし、シリコン基板10に印加する負の直流バイアス電圧を、それぞれ(a)−50V、(b)−100V、(c)−120Vとした場合の円錐状構造物の成長の様子を走査型電子顕微鏡(SEM)観察した結果を示す。図4(a)に示すようにバイアス電圧が−50Vでは核形成は十分であるが、成長速度が遅いため円錐の高さは10nm程度であった。図4(b)に示すようにバイアス電圧が−100Vでは周りの円錐を吸収しながら成長した。図4(a)(b)のいずれの場合も整った円錐状構造物が得られた。しかし、図4(c)に示すように、バイアス電圧が−120V以上では円錐同士が融合し連続膜に近くなった。以上より、図3のCVD装置における負の基板バイアス電圧が、基板上の薄膜成長の核形成と成長速度を決定することが分かった。
【0027】
図5は、バイアス電圧を―100V、堆積時間を60分間とした場合の円錐状構造物のSEMによる観察図を示す。図5に示すように堆積時間60分では、円錐状構造物の高さが2μm程度でほぼ均一であった。また円錐の先端は先鋭であり極めて整った形状であった。円錐状構造物の底面の直径をL高さをTとしたときにL/Tで定義されるアスペクト比は1であった。
【0028】
図1は、バイアス電圧を―100V、堆積時間を360分間とした場合の円錐状構造物のSEMによる観察図を示す。図1に示すように堆積時間360分では高さが10μm程度となり、円錐状構造物の表面には年輪状の段差が見られた。以上より、円錐状構造物の高さ及び底面の直径は、堆積時間にほぼ比例して増加することが分かった。
【0029】
[円錐状構造物の調製例2]
図3の装置を用いて実施形態にかかる円錐状構造物の製造方法に基づいて、以下の調製条件において、マイクロ波電力を変化させて円錐状構造物を調製した。
【0030】
―調製条件―
基板:シリコン基板、(100)面
ガス供給量:メタンガス20sccm、水素ガス100sccm
反応管2内のガス圧力:30Torr
マイクロ波電力:400W、300W、200W、100W
バイアス電圧:−100V
堆積時間:60分間
―結果―
図6(a)、(b)、(c)、(d)は、堆積時間を60分とし、CVD装置に印加するマイクロ波電力をそれぞれ(a)400W、(b)300W、(c)200W、(d)100Wとした場合の円錐状構造物の成長の様子を走査型電子顕微鏡(SEM)観察した結果を示す。図6(c)に示すようにバイアス電圧が200Wのときは円錐状構造物が得られた。一方、図6(a)(b)に示す電力が400W、300Wのときはナノクリスタルダイヤモンド薄膜となり、図6(d)に示すバイアス電圧が100Wのときは薄膜状となり、円錐状構造物は得られなかった。このことよりマイクロ波電力が200W前後のときに円錐状構造物が得られることが分かった。
【0031】
[円錐状構造物の調製例3]
図3の装置を用いて実施形態にかかる円錐状構造物の製造方法に基づいて、以下の調製条件において、堆積時間を変化させて円錐状構造物を調製した。
【0032】
―調製条件―
基板:シリコン基板、(100)面
ガス供給量:メタンガス20sccm、水素ガス100sccm
反応管2内のガス圧力:30Torr
マイクロ波電力:200W
バイアス電圧:−100V
堆積時間:1分間、2分間、5分間、10分間
―結果―
図7(a)、(b)、(c)、(d)は、それぞれ(a)1分間、(b)2分間、(c)5分間、(d)10分間堆積させたときの円錐状構造物の成長の様子を走査型電子顕微鏡(SEM)観察した結果を示す。図7(a)〜(d)に示すように、成長初期にシリコン基板表面に断面略半円形状をした凹凸部が見られ、成長に伴い凹凸部が円錐形状に変化することが分かった。複数の凹凸部を取り込みながら構造物が円錐に成長するようだった。図示は省略するが図7(d)に示す円錐形状が形成された後は、相似状に円錐状構造物が成長した。円錐状構造物の成長速度は約1.5μm/時間であった。
【0033】
[円錐状構造物の電気伝導性]
円錐状構造物の電気伝導性を知るために走査プローブ顕微鏡(Scanning Probe Microscope、以下「SPM」ともいう。)観察を行った。図8(a)は5分間成長させた円錐状構造物のSPM写真(試料バイアス電圧1.0V、スキャンサイズ1.0μm)の凹凸像、図8(b)は電流像を示す。図9(a)は5分間成長させた円錐状構造物のSPM写真(試料バイアス電圧2.5V、スキャンサイズ1.0μm)の凹凸像、図9(b)は電流像を示す。
【0034】
図8(a)(b)によれば、試料に1.0Vのバイアス電圧を印加した場合は、電流像から基板部分の白色の個所で電流が流れることが示され、円錐部分は黒く電流は流れていないことが示された。しかし、図9(a)(b)によれば、2.5V印加した場合は、円錐部分でも部分的に灰白色となり、導電性があることが認められた。
【0035】
[円錐状構造物のXRD観察]
図10は、シリコン基板上に円錐状構造物を堆積した試料の結晶性を調べるために行った、X線回折(XRD)による結果を示す。基板のSi(100)kα、kβの回折ピークが見られる以外は炭素系のグラファイト、ダイヤモンド等の結晶に起因するピークが見られないところから円錐状構造物は非晶質であると推定される。
【0036】
[円錐状構造物の組成]
図11は、シリコン基板上の円錐状構造物が成長している部分についてその組成・構造などを知るために行った、赤外光吸収(FT−IR)測定の結果を示す。図11から以下のことが分かった。吸収スペクトルの傾きから、波数(Wave number)に対して、右下がりの吸収スペクトルの傾きを持つことから円錐の構造・組成は非晶質カーボンであることが推測される。また、吸収スペクトルの傾きd(Spectral index)の大きさが0.7程度であることからオニオン状カーボン(onionlike carbon)に近い構造であると推測される。グラファイトの傾きは1.8以上となることから、この円錐状構造物はグラファイトではないと推測される。また試料の804cm-1(12.4μm)のピーク位置とその形状から、β-SiC(炭化ケイ素)の存在を示している。このことより、シリコン基板10上に形成された炭化ケイ素(SiC)を種とした円錐状構造物が成長したものと推測される。
【0037】
以上の測定結果よりこの円錐は炭化ケイ素と非晶質カーボンにより形成されていることが分かった。また、SPMによる試料の導電性を調べたところ、基板部分は導電性があるが円錐状構造物の円錐部は部分的に導電性があることが分かった。
【0038】
[円錐状構造物からの電子放出実験]
図12に示すシリコン基板30、円錐状構造物32、蛍光体(ZnS:Cu:Al)38、ITOガラス34、電流計35、電圧源36、を備えるエミッション電流電界(I−F)特性測定装置50を用意した。そして、電子放出測定領域を円錐状構造物の成長領域のみに限定するべく、図12に示すように、円錐状構造物の成長領域に対応する部分に、直径5mmの貫通孔39aが設けられた厚み100μmのテフロン(登録商標)シート39で円錐状構造物32をマスクした。その後、表1の条件で円錐状構造物を堆積した試料の電子放出特性を真空中で測定した。尚、エミッションI−F特性測定装置50の理解を容易にするため、図12において円錐状構造物32は平板状に示した。
【0039】
電子放出結果及び蛍光面での発光の様子を図13に示す。円錐状構造物堆積膜の電子放出特性はDLCとよく似た活性化現象があった。1回目の電界印加よりも2回目以降の電界印加のほうが安定したエミッションが得られた。尚、3回目以降の電界印加の結果の表示は省略するが、2回目の電界印加と同様の傾向を示す結果であった。またシリコン(Si)基板のみ(円錐状構造物無し)では電子放出は観測されなかった。
【0040】
図13に示すように、従来のモリブデンやシリコンの円錐コーンを用いたエミッタよりも非常に低い6V/μm程度の閾値電界から電子放出電流(エミッション電流)が得られ、さらに高い1.4mA程度のエミッション電流値が得られることが分かった。
【0041】
SPMによる円錐構造の電気的特性を調べた結果から、部分的に導電性があることが確認されたことより、電子放射電流は、導電性を備える部分から放出されたものと考えられる
【表1】
【0042】
[水素プラズマおよびメタンプラズマ処理の効果]
図3の装置を用いて実施形態にかかる円錐状構造物の製造方法に基づいて、表2の調製条件で、堆積時間とシリコン基板10に印加する負の直流バイアス電圧を変化させて、円錐状構造物を調製した。その後、表2に示す条件で(1)水素プラズマ処理もしくは(2)水素・メタン処理を行った。円錐状構造物堆積膜の(1)水素プラズマ処理、(2)水素・メタン処理プラズマ処理後の蛍光発光の様子を図14(a)、(b)にそれぞれ示す。
【0043】
水素プラズマ処理の効果は電子放出にはほとんど影響が無かった。メタンプラズマ処理の効果は電子放出の一様性の向上が見られた。
【表2】
【0044】
表1の堆積条件で形成した円錐状構造物が堆積している基板の表面をXPSにより分析した。XPSは表面のみの分析なのでアルゴン(Ar)イオンによりそれぞれ30秒、5分エッチングした結果を図15に示す。図15から283eVにSiC、284.3eVにsp2、285.3eVにsp3の結合ピークが確認された。この結果からFT−IRの結果と同様に炭化ケイ素(SiC)と炭素系物質が存在していることがわかった。またArイオンエッチングしても炭化ケイ素のピークがほとんど変化しないことから、円錐状構造物は炭化ケイ素が炭素により覆われている構造だと推測される。
【0045】
円錐状構造物の形成メカニズムは定かではないが、以下のように考えることができる。図16(a)〜(d)を用いて説明する。(ア)図16(a)に示すように、シリコン(Si)基板30に矢印Aで示されるようにプラズマイオンエッチングを行うと、シリコン(Si)基板30表面にプラズマ中のH+やCH+のイオン衝撃により核31a、31b、31c、31d、31e、31fが形成される。(イ)シリコン基板30の温度が高いため、図16(b)に示すように、炭素原子がシリコン基板30のSiと反応して核31a〜31fを中心にナノサイズのSiCクラスター40a、40b、40c、40d、40e、40fが形成される。(ウ)そして図16(c)に示すように、矢印B1、B2で示されるバイアス電圧の影響を受けて、円錐状構造物41d、41fに変化する。(ウ)エッチングによりシリコン基板30から飛び出したSiが供給され図16(c)に示すように、円錐状構造物41d、41fがさらに成長して、円錐状構造物42d、42fとなる。また臨界の大きさの円錐状構造物はさらに成長していくが、それ以下の大きさのものは消滅する。円錐の先端は電界集中による温度上昇、放出電子によるエッチングイオンの中和が生じ先端部以外よりエッチング速度が減少する。このため、円錐の先端が先鋭な形状になるものと考えられる。
【0046】
炭化ケイ素はダイヤモンドに次ぐ硬度を有するとされていることから、炭化ケイ素を成形加工することは困難である。ところが、本実施形態にかかる製造方法によれば簡易に炭化ケイ素を円錐形状に成形することが可能である。またエッチング等を用いずに円錐状構造物を成形できるためエッチング液の回収等の手間が省け、環境負荷を軽減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1(a)、(b)、(c)は、堆積時間360分で成長させた際の円錐状構造物の走査型電子顕微鏡(SEM)写真の側面図(a)、側面拡大図(b)、上面拡大図(c)を示す。
【図2】図2(a)は円錐状構造物の概念斜視図、図11(b)は上面図を示す。
【図3】図3はマイクロ波プラズマCVD装置の概略図を示す。
【図4】図4(a)、(b)、(c)は、(a)−50V、(b)−100V、(c)−120Vのバイアス電圧をかけた際の基板バイアス電圧と円錐状構造物の形状および成長密度との関係を示すSEM写真を示す。
【図5】図5は堆積時間60分で成長させた円錐状構造物のSEM写真を示す。
【図6】図6(a)、(b)、(c)、(d)は、堆積時に投入する2.45GHのマイクロ波電力をそれぞれ(a)400W、(b)300W、(c)200W、(d)100Wとした場合の円錐状構造物の成長の様子を示すSEM写真を示す。
【図7】図7(a)、(b)、(c)、(d)は、それぞれ(a)1分間、(b)2分間、(c)5分間、(d)10分間堆積させたときの円錐状構造物の成長の様子を示すSEM写真を示す。
【図8】図8(a)は5分間成長させた円錐状構造物のSPM写真(試料バイアス電圧1.0V、スキャンサイズ1.0μm)の電流像、図8(b)は凹凸像を示す。
【図9】図9(a)は5分間成長させた円錐状構造物のSPM写真(試料バイアス電圧2.5V、スキャンサイズ1.0μm)の電流像、図9(b)は凹凸像を示す。
【図10】図10はシリコン基板上に円錐状構造物を堆積した試料のXRD(X線回折)パターンを示す。
【図11】図11はシリコン基板上に円錐状構造を堆積した試料のFT−IR測定結果を示す。
【図12】図12はエミッションI−F測定装置の概略図を示す。
【図13】図13はエミッションI−F測定の結果を示す。
【図14】図14(a)は円錐状構造物堆積膜に水素プラズマ処理した後の蛍光発光の様子を示し、図14(b)は円錐状構造物堆積膜に水素・メタン処理プラズマ処理後の蛍光発光の様子を示す。
【図15】図15(a)、(b)、(c)は円錐状構造物を堆積したシリコン基板のXRD(X線回折)パターンを示す。
【図16】図16(a)、(b)、(c)、(d)は円錐状構造物の形成メカニズムの概念図を示す。
【符号の説明】
【0048】
1 マイクロ波プラズマCVD装置
2 反応管
3 マイクロ波電源
4 マイクロ波導波管
5 原料ガス供給装置
6 ロータリーポンプ
8 導体
9 設置具
10 基板
13 基板台
15 バイアス印加装置
21 ガス供給部
22 排気部
30 シリコン(Si)基板
40a〜40f SiCクラスター
41d、41f、42d、42f 円錐状構造物
【技術分野】
【0001】
本発明は円錐状構造物及びその製造方法に関する。さらに詳しくは本発明は、電界放出ディスプレイの電子放出源に利用され得る円錐状構造物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真空中で電界を印加することにより陰極から電子を引き出し、陽極に塗布した蛍光体に衝突させて発光させる電界電子放出ディスプレイ(Field Emission Display、以下「FED」ともいう。)は、従来のブラウン管ディスプレイに比べて薄型で軽量の表示装置が実現できるため研究が盛んに行われている。FEDの電子放出陰極としては、先端の鋭く尖った導体が用いられるが従来の放出開始電圧は、数十V/μm程度あり、より低い放出開始電圧の実現が望まれている。
【0003】
かかる課題に対して室温で真空中に電子放出が可能な微小電子源として、シリコンやモリブデンなどをミクロンサイズの円錐状に加工したスピンド(Spindt)形電子放出源が提案されている(非特許文献1参照)。また低い仕事関数を持つといわれるダイヤモンド系薄膜でも、電界集中による動作電圧の低減化のために円錐状に整形した技術が提案されている。
【0004】
しかし、これらの材料を円錐状に加工するためには、リソグラフィーやエッチングなどの工程を複数回行わなければならず、非常に複雑でデリケートな作業が必要なため、作業時間とコストがかかっていた。さらに、これらの電子放出源は、放出電流を得るためには数十から百数十V/μmの高電界が必要であった。
【0005】
以上より、FEDに好適な放出開始電圧の低い電子放出源としての円錐状構造物およびその製造方法が求められていた。
【非特許文献1】電界放出素子(Field emission devices)、ロバート イー.ナイダート(Robelt.E. Neidert)、プロービィ エム.フィリップス(Purobi. M. .Phillips)、シドニー ティー.スミス(Sidney T. Smith)、チャールズ エー.スピント(Charls A. Spindt)、米国電子通信学会(IEEE)、トランスアクションズ・オンエレクトロン・ディバイス(Trans. Electron Devices)、第38巻、第12号(1991)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はFEDに好適な放出開始電圧の低い電子放出源としての円錐状構造物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の特徴は、プラズマ発生可能領域内にシリコン基板を配置する工程と、プラズマ発生可能領域内にメタンガス及び水素ガスの混合ガスを導入する工程と、400W未満のマイクロ波電力によりプラズマを発生させる工程と、シリコン基板に―120Vを超え―50V未満のバイアス電圧を印加する工程と、を含むプラズマ化学気相成長法による円錐状構造物の製造方法を要旨とする。
【0008】
本発明の第2の特徴は、底面の直径をL高さをTとしたときにT/Lで定義されるアスペクト比が0.9〜1.1である円錐状構造物を要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、FEDに好適な放出開始電圧の低い電子放出源としての円錐状構造物およびその製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に実施形態を挙げて本発明を説明するが、本発明が以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。図中、同一の機能及び用途を有するものについては同様の符号を付して説明を省略する。
【0011】
[円錐状構造物]
図1(a)、(b)、(c)に示す本実施形態にかかる円錐状構造物は、底面の直径をL高さをTとしたときにT/Lで定義されるアスペクト比が0.5〜2.0、好ましくは0.9〜1.1である先端が先鋭な円錐状構造物である。また図1(b)に示すように、円錐状構造物はその表面に年輪状の段差を備える。かかる段差の一態様としては、図2(a)(b)の模式図に示すような、複数の円柱が略同心円状にステップ状に積層した外観形状が挙げられる。
【0012】
実施形態にかかる円錐状構造物の特徴としては、さらに以下のような特徴を挙げることができる。(1)円錐状構造物は炭化ケイ素(SiC)からなる円錐状中心部と、円錐状中心部の外周を覆うように配置された炭素からなる表層部と、から構成されている。(2)円錐状構造物は非晶質である。(3)円錐状構造物は炭化ケイ素を含む。(4)円錐状構造物は炭素を含む。円錐状構造物はかかる群のいずれか1つ又は複数の特徴を有しても構わない。
【0013】
実施形態にかかる炭素を含む円錐状構造物の用途は特に制限されないが、電子放出しやすい性質をもつこと、先端に電界が集中しやすい形状であることから、電界電子放出源(Field Emission Device)として用いられることが好ましい。電界電子放出源以外の用途としては、バイオチップ用マーカー等が挙げられる。尚、本実施形態にかかる円錐状構造物は、好ましくは後述の円錐状構造物の製造方法により製造される。
【0014】
[円錐状構造物の製造装置]
図3は、円錐状構造物を作製する際に使用するマイクロ波プラズマ化学気相成長(CVD)装置1の一例を示す。図3に示すマイクロ波プラズマCVD装置1は、マイクロ波電源3と、マイクロ波電源3からのマイクロ波を導出するマイクロ波導波管4と、マイクロ波導波管4に垂直に挿入された石英製の反応管2と、を備える。反応管2の上部には供給部21が形成されており、供給部21を介して原料ガス供給装置5からメタン/水素混合ガスが導入される。また反応管2の下部には排気部22が形成されており、排気部22に連結しているロータリーポンプ6により反応管2内は排気され低圧化される。反応管2の内部には、基板10に対向する導体8と、導体8を保持する設置具9と、基板10を保持する導体製の基板台13とが設けられている。導体8と基板10は、基板10側が低電位となるように電圧を印加するバイアス印加装置15を挟んで、導線14により接続されている。
【0015】
マイクロ波電源3からのマイクロ波は、マイクロ波導波管4を経て反応管2との交叉部23に送られる。そして、低圧メタン/水素混合ガス等の雰囲気となっている交叉部23において、プラズマが発生し、このプラズマ発生部に配設された基板10上に円錐状構造物が成長する。
【0016】
[円錐状構造物の製造方法1]
円錐状構造物の製造方法の実施形態として、図3の装置を用いた直流バイアスマイクロ波プラズマ化学気相成長法による円錐状構造物の製造方法を説明する。
【0017】
(イ)図3に示すマイクロ波プラズマCVD装置1の反応管2内におけるプラズマ発生領域内の基板台13に鏡面研磨したシリコン基板10を配置する。その際シリコン基板10の(100)面を用いることが好ましい。シリコン基板10をプラズマ発生雰囲気内のプラズマ中心部から負のバイアス電極方向下方に配置することが好ましい。より具体的には導波管中央(ほぼプラズマ中心部)から、4mm〜10mm下にシリコン基板10が配置されるように基板台13の高さを調整することが好ましい。プラズマ中心から離れすぎると構造物は円錐状からドーム状となり密度も低下するからである。次に反応管2内の設置具9にタングステン製の導体8をシリコン基板10に対向する状態で設置する。そして反応管2を気密封止してマイクロ波導波管4に垂直に挿入する。
【0018】
(ロ)反応管2の供給部21及び排気部22にそれぞれ連結している原料ガス供給装置5及びロータリーポンプ6を稼動させる。そして反応管2内のガス圧力を20〜40Torr、好ましくは28〜32Torrに設定する。
【0019】
(ハ)プラズマ発生領域内にメタンガス及び水素ガスの混合ガスを導入する。メタンガスの供給量は15〜25sccmが好ましく、18〜22sccmがより好ましく、19〜21sccmがさらに好ましい。水素ガス供給量は90〜110sccmが好ましく、95〜105sccmがより好ましい。メタンガスが多すぎると円錐状ではなく針状となり、メタンガスが少なすぎると円錐の密度が低下するからである。
【0020】
(ニ)400W未満、好ましくは180W〜220Wでマイクロ波電源3を稼動させマイクロ波を発生させる。マイクロ波をマイクロ波導波管4を介して反応管2へ送り、反応管2内にプラズマを発生させる。
【0021】
(ホ)バイアス印加装置15を稼動させて基板10と導体8との間に基板10側が低電位となるように、シリコン基板10に―120Vを超え―50V未満、より好ましくは―110V〜―90Vのバイアス電圧をかける。バイアス電圧の印加時間は、製造しようとする円錐状構造物の底面の直径や高さによって適宜変化するものであり特に制限されないが、60分〜360分である。
【0022】
本実施形態にかかる円錐状構造物の製造方法によれば以下に列記するような作用効果が得られる。リソグラフィーや選択性エッチングなど非常に複雑で熟練の技術を必要とする工程を踏むことなく、先端が先鋭な円錐状構造物を再現性良くシリコン基板に対して垂直方向に多数自己形成させることができる。そのため、製造工程の簡略化と製造時間の短縮を図ることができる。また、カーボンナノチューブやナノコーンを製造するときとは異なり、触媒金属をあらかじめ基板上に堆積する必要がない。その結果、円錐状構造物に原材料以外の不純物が入り込む余地がなくなるため、円錐状構造物の純度の向上が図られる。さらに基板バイアス条件による円錐密度を制御できる。円錐状構造物の高さ及び底面の直径は、堆積時間にほぼ比例して増大し、数十nm〜数十μmの極めて広い範囲に成長する。そのため、円錐状構造物の寸法制御を容易に行うことができる。さらに炭素系物質の持つ低い仕事関数や負性電子親和力(NEA)特性により、電子放出電流をより低い印加電界で得ることができる。
【0023】
[円錐状構造物の製造方法2]
円錐状構造物の製造方法1の(イ)〜(ホ)工程により円錐状構造物が得られた後、さらに(ヘ)プラズマ発生可能領域内にメタンガス及び水素ガスの混合ガスを導入し、かつ400W以上のマイクロ波電力によりプラズマを発生させるプラズマ処理工程を設けても良い。(ヘ)工程を設けることにより円錐状構造物の電子放出特性がさらに向上するからである。その際マイクロ波電力は430W〜470Wが好ましい。メタンガスの供給量は15sccm〜25sccmが好ましく、水素ガス供給量は90sccm〜110sccmが好ましい。尚、(ヘ)工程は(イ)〜(ホ)工程と連続して行ってもよく、円錐状構造物に対して(ヘ)工程を独立して行っても構わない。
【0024】
[実施形態の変形例]
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。例えば実施形態にかかる円錐状構造物を母型として、さらに仕事関数の低い金属やダイヤモンドをコーティングすることにより低電界で高電流密度である電子源を製造できる。形状のそろったナノ構造物が得られることから、さらに微小化を図れば量子ドットを製造できる。このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【実施例】
【0025】
[円錐状構造物の調製例1]
図3の装置を用いて実施形態にかかる円錐状構造物の製造方法に基づいて、以下の調製条件において、堆積時間とシリコン基板10に印加する負の直流バイアス電圧を変化させて、円錐状構造物を調製した。
【0026】
―調製条件―
基板:シリコン基板、(100)面
ガス供給量:メタンガス20sccm、水素ガス100sccm
反応管2内のガス圧力:30Torr
マイクロ波電力:200W
バイアス電圧:−50V、−100V、−120V
堆積時間:10分間、60分間、360分間
―結果―
図4(a)、(b)、(c)は、堆積時間を10分とし、シリコン基板10に印加する負の直流バイアス電圧を、それぞれ(a)−50V、(b)−100V、(c)−120Vとした場合の円錐状構造物の成長の様子を走査型電子顕微鏡(SEM)観察した結果を示す。図4(a)に示すようにバイアス電圧が−50Vでは核形成は十分であるが、成長速度が遅いため円錐の高さは10nm程度であった。図4(b)に示すようにバイアス電圧が−100Vでは周りの円錐を吸収しながら成長した。図4(a)(b)のいずれの場合も整った円錐状構造物が得られた。しかし、図4(c)に示すように、バイアス電圧が−120V以上では円錐同士が融合し連続膜に近くなった。以上より、図3のCVD装置における負の基板バイアス電圧が、基板上の薄膜成長の核形成と成長速度を決定することが分かった。
【0027】
図5は、バイアス電圧を―100V、堆積時間を60分間とした場合の円錐状構造物のSEMによる観察図を示す。図5に示すように堆積時間60分では、円錐状構造物の高さが2μm程度でほぼ均一であった。また円錐の先端は先鋭であり極めて整った形状であった。円錐状構造物の底面の直径をL高さをTとしたときにL/Tで定義されるアスペクト比は1であった。
【0028】
図1は、バイアス電圧を―100V、堆積時間を360分間とした場合の円錐状構造物のSEMによる観察図を示す。図1に示すように堆積時間360分では高さが10μm程度となり、円錐状構造物の表面には年輪状の段差が見られた。以上より、円錐状構造物の高さ及び底面の直径は、堆積時間にほぼ比例して増加することが分かった。
【0029】
[円錐状構造物の調製例2]
図3の装置を用いて実施形態にかかる円錐状構造物の製造方法に基づいて、以下の調製条件において、マイクロ波電力を変化させて円錐状構造物を調製した。
【0030】
―調製条件―
基板:シリコン基板、(100)面
ガス供給量:メタンガス20sccm、水素ガス100sccm
反応管2内のガス圧力:30Torr
マイクロ波電力:400W、300W、200W、100W
バイアス電圧:−100V
堆積時間:60分間
―結果―
図6(a)、(b)、(c)、(d)は、堆積時間を60分とし、CVD装置に印加するマイクロ波電力をそれぞれ(a)400W、(b)300W、(c)200W、(d)100Wとした場合の円錐状構造物の成長の様子を走査型電子顕微鏡(SEM)観察した結果を示す。図6(c)に示すようにバイアス電圧が200Wのときは円錐状構造物が得られた。一方、図6(a)(b)に示す電力が400W、300Wのときはナノクリスタルダイヤモンド薄膜となり、図6(d)に示すバイアス電圧が100Wのときは薄膜状となり、円錐状構造物は得られなかった。このことよりマイクロ波電力が200W前後のときに円錐状構造物が得られることが分かった。
【0031】
[円錐状構造物の調製例3]
図3の装置を用いて実施形態にかかる円錐状構造物の製造方法に基づいて、以下の調製条件において、堆積時間を変化させて円錐状構造物を調製した。
【0032】
―調製条件―
基板:シリコン基板、(100)面
ガス供給量:メタンガス20sccm、水素ガス100sccm
反応管2内のガス圧力:30Torr
マイクロ波電力:200W
バイアス電圧:−100V
堆積時間:1分間、2分間、5分間、10分間
―結果―
図7(a)、(b)、(c)、(d)は、それぞれ(a)1分間、(b)2分間、(c)5分間、(d)10分間堆積させたときの円錐状構造物の成長の様子を走査型電子顕微鏡(SEM)観察した結果を示す。図7(a)〜(d)に示すように、成長初期にシリコン基板表面に断面略半円形状をした凹凸部が見られ、成長に伴い凹凸部が円錐形状に変化することが分かった。複数の凹凸部を取り込みながら構造物が円錐に成長するようだった。図示は省略するが図7(d)に示す円錐形状が形成された後は、相似状に円錐状構造物が成長した。円錐状構造物の成長速度は約1.5μm/時間であった。
【0033】
[円錐状構造物の電気伝導性]
円錐状構造物の電気伝導性を知るために走査プローブ顕微鏡(Scanning Probe Microscope、以下「SPM」ともいう。)観察を行った。図8(a)は5分間成長させた円錐状構造物のSPM写真(試料バイアス電圧1.0V、スキャンサイズ1.0μm)の凹凸像、図8(b)は電流像を示す。図9(a)は5分間成長させた円錐状構造物のSPM写真(試料バイアス電圧2.5V、スキャンサイズ1.0μm)の凹凸像、図9(b)は電流像を示す。
【0034】
図8(a)(b)によれば、試料に1.0Vのバイアス電圧を印加した場合は、電流像から基板部分の白色の個所で電流が流れることが示され、円錐部分は黒く電流は流れていないことが示された。しかし、図9(a)(b)によれば、2.5V印加した場合は、円錐部分でも部分的に灰白色となり、導電性があることが認められた。
【0035】
[円錐状構造物のXRD観察]
図10は、シリコン基板上に円錐状構造物を堆積した試料の結晶性を調べるために行った、X線回折(XRD)による結果を示す。基板のSi(100)kα、kβの回折ピークが見られる以外は炭素系のグラファイト、ダイヤモンド等の結晶に起因するピークが見られないところから円錐状構造物は非晶質であると推定される。
【0036】
[円錐状構造物の組成]
図11は、シリコン基板上の円錐状構造物が成長している部分についてその組成・構造などを知るために行った、赤外光吸収(FT−IR)測定の結果を示す。図11から以下のことが分かった。吸収スペクトルの傾きから、波数(Wave number)に対して、右下がりの吸収スペクトルの傾きを持つことから円錐の構造・組成は非晶質カーボンであることが推測される。また、吸収スペクトルの傾きd(Spectral index)の大きさが0.7程度であることからオニオン状カーボン(onionlike carbon)に近い構造であると推測される。グラファイトの傾きは1.8以上となることから、この円錐状構造物はグラファイトではないと推測される。また試料の804cm-1(12.4μm)のピーク位置とその形状から、β-SiC(炭化ケイ素)の存在を示している。このことより、シリコン基板10上に形成された炭化ケイ素(SiC)を種とした円錐状構造物が成長したものと推測される。
【0037】
以上の測定結果よりこの円錐は炭化ケイ素と非晶質カーボンにより形成されていることが分かった。また、SPMによる試料の導電性を調べたところ、基板部分は導電性があるが円錐状構造物の円錐部は部分的に導電性があることが分かった。
【0038】
[円錐状構造物からの電子放出実験]
図12に示すシリコン基板30、円錐状構造物32、蛍光体(ZnS:Cu:Al)38、ITOガラス34、電流計35、電圧源36、を備えるエミッション電流電界(I−F)特性測定装置50を用意した。そして、電子放出測定領域を円錐状構造物の成長領域のみに限定するべく、図12に示すように、円錐状構造物の成長領域に対応する部分に、直径5mmの貫通孔39aが設けられた厚み100μmのテフロン(登録商標)シート39で円錐状構造物32をマスクした。その後、表1の条件で円錐状構造物を堆積した試料の電子放出特性を真空中で測定した。尚、エミッションI−F特性測定装置50の理解を容易にするため、図12において円錐状構造物32は平板状に示した。
【0039】
電子放出結果及び蛍光面での発光の様子を図13に示す。円錐状構造物堆積膜の電子放出特性はDLCとよく似た活性化現象があった。1回目の電界印加よりも2回目以降の電界印加のほうが安定したエミッションが得られた。尚、3回目以降の電界印加の結果の表示は省略するが、2回目の電界印加と同様の傾向を示す結果であった。またシリコン(Si)基板のみ(円錐状構造物無し)では電子放出は観測されなかった。
【0040】
図13に示すように、従来のモリブデンやシリコンの円錐コーンを用いたエミッタよりも非常に低い6V/μm程度の閾値電界から電子放出電流(エミッション電流)が得られ、さらに高い1.4mA程度のエミッション電流値が得られることが分かった。
【0041】
SPMによる円錐構造の電気的特性を調べた結果から、部分的に導電性があることが確認されたことより、電子放射電流は、導電性を備える部分から放出されたものと考えられる
【表1】
【0042】
[水素プラズマおよびメタンプラズマ処理の効果]
図3の装置を用いて実施形態にかかる円錐状構造物の製造方法に基づいて、表2の調製条件で、堆積時間とシリコン基板10に印加する負の直流バイアス電圧を変化させて、円錐状構造物を調製した。その後、表2に示す条件で(1)水素プラズマ処理もしくは(2)水素・メタン処理を行った。円錐状構造物堆積膜の(1)水素プラズマ処理、(2)水素・メタン処理プラズマ処理後の蛍光発光の様子を図14(a)、(b)にそれぞれ示す。
【0043】
水素プラズマ処理の効果は電子放出にはほとんど影響が無かった。メタンプラズマ処理の効果は電子放出の一様性の向上が見られた。
【表2】
【0044】
表1の堆積条件で形成した円錐状構造物が堆積している基板の表面をXPSにより分析した。XPSは表面のみの分析なのでアルゴン(Ar)イオンによりそれぞれ30秒、5分エッチングした結果を図15に示す。図15から283eVにSiC、284.3eVにsp2、285.3eVにsp3の結合ピークが確認された。この結果からFT−IRの結果と同様に炭化ケイ素(SiC)と炭素系物質が存在していることがわかった。またArイオンエッチングしても炭化ケイ素のピークがほとんど変化しないことから、円錐状構造物は炭化ケイ素が炭素により覆われている構造だと推測される。
【0045】
円錐状構造物の形成メカニズムは定かではないが、以下のように考えることができる。図16(a)〜(d)を用いて説明する。(ア)図16(a)に示すように、シリコン(Si)基板30に矢印Aで示されるようにプラズマイオンエッチングを行うと、シリコン(Si)基板30表面にプラズマ中のH+やCH+のイオン衝撃により核31a、31b、31c、31d、31e、31fが形成される。(イ)シリコン基板30の温度が高いため、図16(b)に示すように、炭素原子がシリコン基板30のSiと反応して核31a〜31fを中心にナノサイズのSiCクラスター40a、40b、40c、40d、40e、40fが形成される。(ウ)そして図16(c)に示すように、矢印B1、B2で示されるバイアス電圧の影響を受けて、円錐状構造物41d、41fに変化する。(ウ)エッチングによりシリコン基板30から飛び出したSiが供給され図16(c)に示すように、円錐状構造物41d、41fがさらに成長して、円錐状構造物42d、42fとなる。また臨界の大きさの円錐状構造物はさらに成長していくが、それ以下の大きさのものは消滅する。円錐の先端は電界集中による温度上昇、放出電子によるエッチングイオンの中和が生じ先端部以外よりエッチング速度が減少する。このため、円錐の先端が先鋭な形状になるものと考えられる。
【0046】
炭化ケイ素はダイヤモンドに次ぐ硬度を有するとされていることから、炭化ケイ素を成形加工することは困難である。ところが、本実施形態にかかる製造方法によれば簡易に炭化ケイ素を円錐形状に成形することが可能である。またエッチング等を用いずに円錐状構造物を成形できるためエッチング液の回収等の手間が省け、環境負荷を軽減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1(a)、(b)、(c)は、堆積時間360分で成長させた際の円錐状構造物の走査型電子顕微鏡(SEM)写真の側面図(a)、側面拡大図(b)、上面拡大図(c)を示す。
【図2】図2(a)は円錐状構造物の概念斜視図、図11(b)は上面図を示す。
【図3】図3はマイクロ波プラズマCVD装置の概略図を示す。
【図4】図4(a)、(b)、(c)は、(a)−50V、(b)−100V、(c)−120Vのバイアス電圧をかけた際の基板バイアス電圧と円錐状構造物の形状および成長密度との関係を示すSEM写真を示す。
【図5】図5は堆積時間60分で成長させた円錐状構造物のSEM写真を示す。
【図6】図6(a)、(b)、(c)、(d)は、堆積時に投入する2.45GHのマイクロ波電力をそれぞれ(a)400W、(b)300W、(c)200W、(d)100Wとした場合の円錐状構造物の成長の様子を示すSEM写真を示す。
【図7】図7(a)、(b)、(c)、(d)は、それぞれ(a)1分間、(b)2分間、(c)5分間、(d)10分間堆積させたときの円錐状構造物の成長の様子を示すSEM写真を示す。
【図8】図8(a)は5分間成長させた円錐状構造物のSPM写真(試料バイアス電圧1.0V、スキャンサイズ1.0μm)の電流像、図8(b)は凹凸像を示す。
【図9】図9(a)は5分間成長させた円錐状構造物のSPM写真(試料バイアス電圧2.5V、スキャンサイズ1.0μm)の電流像、図9(b)は凹凸像を示す。
【図10】図10はシリコン基板上に円錐状構造物を堆積した試料のXRD(X線回折)パターンを示す。
【図11】図11はシリコン基板上に円錐状構造を堆積した試料のFT−IR測定結果を示す。
【図12】図12はエミッションI−F測定装置の概略図を示す。
【図13】図13はエミッションI−F測定の結果を示す。
【図14】図14(a)は円錐状構造物堆積膜に水素プラズマ処理した後の蛍光発光の様子を示し、図14(b)は円錐状構造物堆積膜に水素・メタン処理プラズマ処理後の蛍光発光の様子を示す。
【図15】図15(a)、(b)、(c)は円錐状構造物を堆積したシリコン基板のXRD(X線回折)パターンを示す。
【図16】図16(a)、(b)、(c)、(d)は円錐状構造物の形成メカニズムの概念図を示す。
【符号の説明】
【0048】
1 マイクロ波プラズマCVD装置
2 反応管
3 マイクロ波電源
4 マイクロ波導波管
5 原料ガス供給装置
6 ロータリーポンプ
8 導体
9 設置具
10 基板
13 基板台
15 バイアス印加装置
21 ガス供給部
22 排気部
30 シリコン(Si)基板
40a〜40f SiCクラスター
41d、41f、42d、42f 円錐状構造物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ発生可能領域内にシリコン基板を配置する工程と、
前記プラズマ発生可能領域内にメタンガス及び水素ガスの混合ガスを導入する工程と、
400W未満のマイクロ波電力によりプラズマを発生させる工程と、
シリコン基板に―120Vを超え―50V未満のバイアス電圧を印加する工程と、
を含むことを特徴とするプラズマ化学気相成長法による円錐状構造物の製造方法。
【請求項2】
前記マイクロ波電力は180W〜220Wであることを特徴とする請求項1記載の円錐状構造物の製造方法。
【請求項3】
前記バイアス電圧は―110V〜―90Vであることを特徴とする請求項1記載の円錐状構造物の製造方法。
【請求項4】
前記シリコン基板はプラズマ発生雰囲気内のプラズマ中心部から負のバイアス電極方向下方に配置されることを特徴とする請求項1記載の円錐状構造物の製造方法。
【請求項5】
前記メタンガスの供給量は15sccm〜25sccmであり、前記水素ガス供給量は90sccm〜110sccmであることを特徴とする請求項1記載の円錐状構造物の製造方法。
【請求項6】
前記プラズマ発生雰囲気内のガス圧力は20Torr〜40Torrであることを特徴とする請求項1記載の円錐状構造物の製造方法。
【請求項7】
バイアス電圧の印加時間は10分〜360分であることを特徴とする請求項1記載の円錐状構造物の製造方法。
【請求項8】
前記工程により円錐状構造物が得られた後、さらに前記プラズマ発生可能領域内にメタンガス及び水素ガスの混合ガスを導入し、かつ400W以上のマイクロ波電力によりプラズマを発生させるプラズマ処理工程を含むことを特徴とする請求項1記載のプラズマ化学気相成長法による円錐状構造物の製造方法。
【請求項9】
前記マイクロ波電力は430W〜470Wであることを特徴とする請求項8記載の円錐状構造物の製造方法。
【請求項10】
前記メタンガスの供給量は15sccm〜25sccmであり、前記水素ガス供給量は90sccm〜110sccmであることを特徴とする請求項8記載の円錐状構造物の製造方法。
【請求項11】
底面の直径をL高さをTとしたときにT/Lで定義されるアスペクト比が0.9〜1.1であることを特徴とする円錐状構造物。
【請求項12】
前記円錐状構造物は炭化ケイ素を含むことを特徴とする請求項11記載の円錐状構造物。
【請求項13】
前記円錐状構造物は炭素を含むことを特徴とする請求項11記載の円錐状構造物。
【請求項14】
前記円錐状構造物は、炭化ケイ素からなる円錐状中心部と、前記円錐状中心部の外周を覆うように配置された炭素からなる表層部と、から構成されていることを特徴とする請求項11記載の円錐状構造物。
【請求項15】
前記円錐状構造物は非晶質であることを特徴とする請求項12又は13記載の円錐状構造物。
【請求項16】
電子放出素子の電子源として用いられることを特徴とする請求項11記載の円錐状構造物。
【請求項1】
プラズマ発生可能領域内にシリコン基板を配置する工程と、
前記プラズマ発生可能領域内にメタンガス及び水素ガスの混合ガスを導入する工程と、
400W未満のマイクロ波電力によりプラズマを発生させる工程と、
シリコン基板に―120Vを超え―50V未満のバイアス電圧を印加する工程と、
を含むことを特徴とするプラズマ化学気相成長法による円錐状構造物の製造方法。
【請求項2】
前記マイクロ波電力は180W〜220Wであることを特徴とする請求項1記載の円錐状構造物の製造方法。
【請求項3】
前記バイアス電圧は―110V〜―90Vであることを特徴とする請求項1記載の円錐状構造物の製造方法。
【請求項4】
前記シリコン基板はプラズマ発生雰囲気内のプラズマ中心部から負のバイアス電極方向下方に配置されることを特徴とする請求項1記載の円錐状構造物の製造方法。
【請求項5】
前記メタンガスの供給量は15sccm〜25sccmであり、前記水素ガス供給量は90sccm〜110sccmであることを特徴とする請求項1記載の円錐状構造物の製造方法。
【請求項6】
前記プラズマ発生雰囲気内のガス圧力は20Torr〜40Torrであることを特徴とする請求項1記載の円錐状構造物の製造方法。
【請求項7】
バイアス電圧の印加時間は10分〜360分であることを特徴とする請求項1記載の円錐状構造物の製造方法。
【請求項8】
前記工程により円錐状構造物が得られた後、さらに前記プラズマ発生可能領域内にメタンガス及び水素ガスの混合ガスを導入し、かつ400W以上のマイクロ波電力によりプラズマを発生させるプラズマ処理工程を含むことを特徴とする請求項1記載のプラズマ化学気相成長法による円錐状構造物の製造方法。
【請求項9】
前記マイクロ波電力は430W〜470Wであることを特徴とする請求項8記載の円錐状構造物の製造方法。
【請求項10】
前記メタンガスの供給量は15sccm〜25sccmであり、前記水素ガス供給量は90sccm〜110sccmであることを特徴とする請求項8記載の円錐状構造物の製造方法。
【請求項11】
底面の直径をL高さをTとしたときにT/Lで定義されるアスペクト比が0.9〜1.1であることを特徴とする円錐状構造物。
【請求項12】
前記円錐状構造物は炭化ケイ素を含むことを特徴とする請求項11記載の円錐状構造物。
【請求項13】
前記円錐状構造物は炭素を含むことを特徴とする請求項11記載の円錐状構造物。
【請求項14】
前記円錐状構造物は、炭化ケイ素からなる円錐状中心部と、前記円錐状中心部の外周を覆うように配置された炭素からなる表層部と、から構成されていることを特徴とする請求項11記載の円錐状構造物。
【請求項15】
前記円錐状構造物は非晶質であることを特徴とする請求項12又は13記載の円錐状構造物。
【請求項16】
電子放出素子の電子源として用いられることを特徴とする請求項11記載の円錐状構造物。
【図2】
【図3】
【図10】
【図11】
【図12】
【図15】
【図16】
【図1】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図13】
【図14】
【図3】
【図10】
【図11】
【図12】
【図15】
【図16】
【図1】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−242614(P2007−242614A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49492(P2007−49492)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2006年8月29日 社団法人応用物理学会発行の「2006年(平成18年)秋季第67回応用物理学会学術講演会講演予稿集第2分冊」に発表
【出願人】(504133110)国立大学法人 電気通信大学 (383)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2006年8月29日 社団法人応用物理学会発行の「2006年(平成18年)秋季第67回応用物理学会学術講演会講演予稿集第2分冊」に発表
【出願人】(504133110)国立大学法人 電気通信大学 (383)
【Fターム(参考)】
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