説明

再供給を促進するシールを備えるマスタシリンダ

【課題】ブレーキ流体の再供給流量を増大させるマスタシリンダを提供する。
【解決手段】少なくとも1つの軸方向ピストンがその内部に摺動可能に取り付けられたボア14を有する、実質的に軸方向本体12を備える型式であり、ボア14は、ピストンとボア14との間に介在された前側シール30、34及び後側シールという2つのシールを備え、シール30、34は、ボア14内の溝70、72内に受容された3つの半径方向同心状リップ部を備える型式の自動車用のブレーキマスタシリンダ10であって、溝70、72の前面が少なくとも部分的に1つの勾配として形成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用のブレーキマスタシリンダに関する。
本発明は、より詳細には、少なくとも1つの軸方向ピストンがその内部に摺動可能に取り付けられたボアを有する、実質的に軸方向本体を備え、該ピストンは、車の運転者により、後方の休止位置と、前方のブレーキ力掛け位置との間にて作動させることができ、また、その後方の休止位置に向けて弾性的に戻される型式であり、ボアは、ピストンとボアとの間に介在された前側シール及び後側シールという2つのシールを備え、前側シールは、ボア内にて、後側供給室と、前側圧力室との限界を画成する型式であり、本体は、外側の液圧流体リザーバを後側供給室と接続する半径方向供給管路を備え、また、該管路は、2つのシールの間にて外方に開放する型式であり、本体は、前側圧力室内に開放するブレーキ回路の供給穴を備える型式であり、ピストンは、前側に開放して、一方にて、前側圧力室と連通し、他方にて、少なくとも1つの穴を介して上記ピストンの周縁と連通するボアを備え、該ボアは、ピストンがその後方休止位置となったとき、2つのシールの間に配置されて、前側圧力室と後側供給室との間の連通状態を開放し、また、ピストンがその作用位置に向けて軸方向前方に動いたとき、前側シールを超えて進むことができ、前側圧力室を後側供給室から隔離して、このため、前側圧力室内にてブレーキ圧力を確立することを許容する型式であり、少なくとも前側シールの各々は、マスタシリンダの本体の溝内に受容され且つ、軸方向向きを有する3つの同心状リップ部、特に、
その自由端がピストンの周縁と接触するように配置された第一の内側リップ部と、
その自由端が休止位置にて、溝の前面と接触するように配置された第二の中央リップ部と、
その自由端が休止位置にて、溝の周底面と接触するように配置された第三の外側リップ部とを備える型式であり、
第二の中央リップ部及び第三の外側リップ部は、ピストンがその前方作用位置からその休止位置に戻ることにより、又はブレーキ回路の一部を形成する軌道制御装置の作動によって生じた部分真空圧に前側圧力室が曝されたとき、溝の前面及び周底面から分離して、前側圧力室がリザーバにより再供給されることを許容することができるようにした型式の自動車用のブレーキマスタシリンダに関する。
【0002】
この型式のブレーキマスタシリンダの多数の例が既知である。
【背景技術】
【0003】
この型式の殆どのマスタシリンダにおいて、ピストンは、全体として、ボアの少なくとも2つの環状の軸受面によってボア内を案内され、これらの面は、それぞれ前側シールの前方にて且つ後側シールの後方に配置されている。
【0004】
前側シールの前方に配置された軸受面は、前側シールを受容する溝と隣接しており、また、軸受面は、ピストンがその前側作用位置からその休止位置に戻ることにより生じた部分真空圧に前側圧力室が曝されたとき、又はさもなければブレーキ回路の「ESP」型軌道制御装置が作動されて、前側圧力室内にて部分真空圧を発生させたとき、ブレーキ流体がこれらの再供給溝を通って流れるのを許容することを目的とするいわゆる再供給溝を備えている。
【0005】
前側シールを受容する溝は、全体として、周底壁を介して真直ぐな横方向後側面に接続された真直ぐな横方向前側面を備えている。前側シールの第二の中央リップ部及び第三の外側リップ部は、溝の真直ぐな横方向前側面及び周底壁にそれぞれ接着することを目的とする端部を有している。
【0006】
前側シールが部分真空圧に曝されたとき、前側シールの第二の中央リップ部及び第三の外側リップ部の端部は、溝の真直ぐな横方向前側面及び溝の周底壁からそれぞれ分離して、それぞれリザーバを前側圧力室により再供給することを許容し又はさもなければ、前側圧力室をリザーバにより再供給することを許容する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、多くの場合、前側シールの中央リップ部及び第三の外側リップ部は、溝の前側面及び溝の周底壁から不完全にのみ分離することが分かった。この場合、ブレーキ流体の流量は、再供給過程を正確に進行させるには不十分である。
【0008】
車が「ESP」型軌道制御装置を具備するとき、車の1つ又はより多くのブレーキキャリパに供給することを目的とするブレーキ流体の需要は、ピストンが圧力室内にて作用位置にあるときでさえ、増大する可能性があることは特に明らかである。不十分な流量の結果、効率の欠如、又は、少なくとも「ESP」型軌道制御装置の反動を好ましくない程、遅くする可能性がある。
【0009】
この短所を解消するため、本発明は、前側シールをわたる再供給流量を増大させる手段を備えるブレーキマスタシリングを提供するものである。
この目的のため、本発明は、上述した型式のブレーキマスタシリンダであって、溝の前面は少なくとも部分的に規定された傾斜角度の勾配として形成され、第二の中央リップ部の傾動による分離を容易にし且つ、第三の外側リップ部の傾動による分離を容易にするようにしたことを特徴とする、上記のブレーキマスタシリンダを提供する。
【0010】
本発明のその他の特徴に従い、
溝の前面の一部分は、マスタシリンダのボアから上記前面の中間部分までの連続的な勾配として形成され、溝の前面の別の部分は、その周底壁との接続部に対して半径方向向きを有し、
溝の前面は、その全高さをわたって連続的な勾配として形成され、
勾配は、第三の外側リップ部が傾動するとき、第三の外側リップ部の軸方向への変位を制限し、溝内でのシールの平行移動する動きを制限する、小さくした角度を形成し、
勾配は、半径方向に対して実質的に15°の角度を形成し、
マスタシリンダは、タンデム型であり、その実質的に軸方向本体内に、その内部に2つの軸方向ピストンが摺動可能に取り付けられたボアと、その前面が少なくとも部分的に1つの勾配として形成された2つの溝内に受容される2つの前側シールとを備えている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のその他の特徴及び有利な点は、添付図面を参照することにより理解される以下の詳細な説明を読むことにより明らかになるであろう。
以下の説明において、同一又は同様の機能を有する部品は、同一の参照番号にて表示する。
【0012】
慣例として、「前側」「前方」及び「後方」という語は、それぞれ図面の左側及び右側に向けてそれぞれ向き決めされた要素又は位置を示すものとする。
図1には、自動車用のブレーキマスタシリンダ10の組立体の全体が示されている。
【0013】
既知の態様にて、マスタシリンダ10は、軸線「A」の実質的に軸方向本体12を備えており、該軸方向本体のボア14内には、少なくとも1つの軸方向ピストンが摺動可能に取り付けられている。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態において、マスタシリンダ10は、軸線Aの実質的に軸方向本体12を備え、該軸方向本体のボア14内には、2つの軸方向ピストン16、18が摺動可能に取り付けられた、「タンデム」型マスタシリンダである。
【0015】
しかし、この形態は、本発明に何らの限定を付すものではなく、このマスタシリンダ10は、1つの摺動ピストンのみを有する簡単なマスタシリンダとしてもよい。
主ピストン16と称される、ピストン16は、車の主ブレーキ回路(図示せず)内に液圧圧力を確立することを許容することを目的としており、また、第二のピストン18と称されるピストン18は、車の主ブレーキ回路と独立的な車の第二のブレーキ回路(図示せず)内にて液圧圧力を確立することを許容することを目的としている。
【0016】
これら2つの回路の各々は、ブレーキキャリパのような車のブレーキ掛け構成要素をマスタシリンダと独立的に作動させることができる軌道制御装置と関係付けられている。
主ピストン16は、車の運転者が直接、作動させることができる。例えば、主ピストン16の後端19は、車のブレーキペダルに加えられる力を増幅するブースタ(図示せず)と接続することができる。
【0017】
第二のピストン18は、車の運転者により、特に、主ピストン16により間接的に作動させることができる。
このように、主ピストン16又は第二のピストン18の各々は、図1に示した後方の休止位置と、少なくとも1つの前方ブレーキ力掛け位置(図示せず)との間にて動くことができる。
【0018】
既知の態様にて、主ピストン16又は第二のピストン18の各々は、例えば、端部ストッパ(図示せず)に対抗してこの後方休止位置に向けて弾性的に戻る。
特に、第二のピストン18は、ボア14の横方向前端面22に対し且つ、第二のピストン18に対して当接するばね20により後方に向けて戻され、主ピストン16は、第二のピストン18の横方向後面26に対し且つ、主ピストン16に対して当接するばね24により弾性的に後方に向けて戻される。より詳細には、ばね24は、特に長い長さを有するから、ばねは、第二のピストン18の横方向後側面26と主ピストン16との間に介在させた摺動ラム28の回りに取り付けられる。
【0019】
ボア14は、主ピストン16とボア14との間にそれぞれ介在させた前側シール30及び後側シール32という、2つの主シールと、第二のピストン18とボア14との間にそれぞれ介在させた前側シール34及び後側シール36という、2つの第二のシールとを備えている。
【0020】
その結果、前側主シール30は、ボア14内にて、後側供給室38と、前側圧力室40との限界を画する。同様に、前側第二のシール34は、ボア14内にて、後側供給室42と、前側圧力室44との限界を画する。
【0021】
本体12は、主半径方向供給管路46を備えており、該管路46は、外部の主液圧流体リザーバ(図示せず)を主後側供給室38と接続すると共に、2つの主シール30、32の間にて外方に開放する。
【0022】
特に、主半径方向供給管路46は、例えば、中間の長手方向管路48を介してオリフィス50と接続され、該オリフィスは、本体12の外側に開放し且つ、関係した主リザーバの出口(図示せず)を受け入れることを目的とする。
【0023】
本体12は、第二の外部液圧流体リザーバ(図示せず)を第二の後側供給室42と接続する第二の半径方向供給管路52を備えており、該第二の半径方向供給管路は、2つの第二のシール34、36の間にて外方に開放している。
【0024】
本体は、関係した主ブレーキ回路及び第二のブレーキ回路に供給するための主要穴54及び第二の穴56という2つの穴を更に備えており、これらの穴は、関係した主前側圧力室40及び第二の前側圧力室44内に開放している。
【0025】
先行技術から既知のその他の実施の形態のうち、ピストン16、18の各々は、前側に開放したボア58、60を備えており、これらのボアは、一方にて関係した前側圧力室40、44と連通し、他方にて、少なくとも1つの穴62、64を介して上記ピストン16、18の周縁と連通し、該少なくとも1つの穴62、64の関係した主又は第二の前側シール30、34に対する位置は、主後側供給室38及び第二の後側供給室42の間の連通及び主前側圧力室40及び第二の前側圧力室44の連通を選択的に開放することを決定する。
【0026】
このように、ピストン16、18が図1に示したその後方休止位置をとるとき、関係した穴62、64は、2つの主シール30、32と第二のシール34、36との間に配置され、前側圧力室40、44と後側供給室38、42との間の連通を開放する。
【0027】
ピストン16、18がその作用位置(図示せず)に向けて軸方向前方に動くとき、穴62、64は、前側シール30、34を超えて通過し、前側圧力室40、44を後側供給室38、42から隔離し、これにより前側圧力室40、44の各々内にてブレーキ圧力を確立する。
【0028】
更に、図1に示したように、前側シール30、34の各々は、マスタシリンダの本体12の関係した溝70、72内に受容される。
図2及び以下の図面にて示したように、前側シール30、34の各々は、軸方向向きを有する3つの同心状リップ部、特に、
その自由端82をピストン16、18の周縁と接触するよう配置することを目的とする第一の内側リップ部80と、
その自由端86が溝70、72の前側面と接触して休止位置に配置される第二の中央リップ部84と、
その自由端92が溝70、72の周底面94と接触して、休止位置に配置される第三の外側リップ部90とを備えている。
【0029】
ピストン16、18がその前方作用位置からその休止位置に戻るとき又はブレーキ回路の一部を形成し且つ、主ブレーキ回路及び第二のブレーキ回路と接続された軌道制御装置が作動されたとき、主前側圧力室40及び第二の前側圧力室44内にて部分真空圧が発生され、この部分真空圧により第二の中央リップ部84及び第三の外側リップ部90は、溝70、72の前側面88及び周底面94から分離して前側圧力室40、44をリザーバによって再供給することを許容する。
【0030】
同様の態様にて、シール30、34のリップ部84、90が分離することは、主及び第二のブレーキ回路と接続されたブレーキ回路の軌道制御装置が作動されたとき、主半径方向供給管路46及び第二の半径方向供給管路52、従って関係したリザーバにより主前側圧力室40及び第二の前側圧力室44を再供給することを許容する。
【0031】
更に、再供給は、再供給溝66、68によりシール30、34の前方にて可能とされ、該溝66、68は、前側シール30、34を受容する溝70、72の前方にてボア内に形成されている。
【0032】
従来通り、溝70、72の前側面88は、真直ぐな横方向面である。
しかし、多くの場合、前側シール30、34の中央リップ部84及び第三の外側リップ部90は、溝70、72の前側面88から及び溝の周底壁から不完全にのみ分離することが分かった。この場合、ブレーキ流体の流量は、再供給過程が正確に進行するのに不十分である。
【0033】
この短所を解決するため、本発明は適正な輪郭外形の溝70、72を提供する。
この目的のため、且つ本発明に従い、溝71、72の正面88は、少なくとも部分的に規定された傾斜角度「α」の勾配として形成され、第二の中央リップ部84の傾動による分離を容易にし且つ、第三の外側リップ部90の傾動による分離を容易にし得るようにされている。
【0034】
図4及び図6に示した第一の実施の形態に従い、溝70、72の前面88の1つの部分96は、マスタシリンダ本体12のボア14から上記前面の中間部分98まで連続的な勾配として形成され、溝70、72の前面の別の部分100は、その周底壁との接続部に対し半径方向向きを有する。
【0035】
この形態において、中央リップ部84の端部86は、図4に示したように、2つの部分96、100の実質的に中間の接続部分98にて休止するよう配置され、また、図6に示したように、部分真空が確立されたとき、前面88から分離する。中央リップ部84の傾動する動きによってシール30、34は変形し、その変形の効果は、外側リップ部90の傾動する動きを生じ、該外側リップ部の端部92は図6に示したように、周底壁94から分離する。
【0036】
図3及び図5に示した本発明の第二の実施の形態に従い、溝70、72の前面88は、その全高さ「h」をわたって連続的な勾配として形成されている。
この実施の形態において、勾配は、半径方向に対して小さくした角度「α」を形成し、第三の外側リップ部90が傾動するとき、該外側リップ部の軸方向への変位を制限し、溝70、72内のシール30、34の平行移動する動きを制限するようにすることが好ましい。
【0037】
この目的のため、勾配は、半径方向に対して実質的に15°の角度「α」を形成することが好ましい。
本発明は、1つのピストンのみを有するマスタシリンダ10にのみ限定されず、実質的に、その実質的に軸方向本体12に、その内部に2つの軸方向ピストン16、18が摺動可能に取り付けられたボア14と、その前面88が少なくとも部分的に1つの勾配として形成された2つの溝70、72内に受容された2つの前側シール30、34とを備えるタンデム型マスタシリンダ10に適用することができることが理解それよう。
【0038】
このように、本発明は、関係したブレーキ回路を迅速に再供給するためのマスタシリンダを有することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に従った「タンデム」型マスタシリンダの軸方向断面図である。
【図2】前側シールを溝内に嵌める前の前側シールを示す半軸方向断面図である。
【図3】本発明の第二の実施の形態に従った溝内に嵌められたシールを表し且つ休止位置にて示す半軸方向断面図である。
【図4】本発明の第一の実施の形態に従った溝内に嵌められたシールを表し且つ休止位置にて示す半軸方向断面図である。
【図5】分離位置にて表した、図3に示したシールの半軸方向断面図である。
【図6】分離位置にて表した、図4に示したシールの半軸方向断面図である。
【符号の説明】
【0040】
10 マスタシリンダ
12 軸方向本体
14 ボア
16 ピストン
18 ピストン
19 ピストン16の後端
20 ばね
22 横方向前端面
24 ばね
26 横方向後面
28 摺動ラム
30 前側シール
32 後側シール
34 前側シール
36 後側シール
38 後側供給室
40 前側圧力室
42 後側供給室
44 前側圧力室
46 主半径方向供給管路
48 長手方向管路
50 オリフィス
52 第二の半径方向供給管路
54 主要穴
56 第二の穴
58 ボア
60 ボア
62 穴
64 穴
66 再供給溝
68 再供給溝
70 溝
72 溝
80 第一の内側リップ部
82 自由端
84 第二の中央リップ部
86 自由端
88 溝70、72の前側面
90 第三の外側リップ部
92 自由端
94 周底面
96 溝70、72の前面88の1つの部分
98 中間の接続部分
A 軸線
α 15°の角度/傾斜角度
h 全高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの軸方向ピストン(16、18)がその内部に摺動可能に取り付けられたボア(14)を有する、実質的に軸方向本体(12)を備え、該ピストンは、車の運転者により、後方の休止位置と、前方のブレーキ力掛け位置との間にて作動させることができ、また、その後方の休止位置に向けて弾性的に戻される型式であり、ボア(14)は、ピストン(16、18)とボア(14)との間に介在された前側シール(30、34)及び後側シール(32、36)という2つのシールを備え、前側シール(30、34)は、ボア(14)内にて、後側供給室(38、42)と、前側圧力室(40、44)との限界を画成する型式であり、本体(12)は、外側の液圧流体リザーバを後側供給室(38、42)と接続する半径方向供給管路(46、52)を備え、また、該管路は、2つのシール(30、32、34、36)の間にて外方に開放する型式であり、本体(12)は、前側圧力室(40、44)内に開放するブレーキ回路の供給穴(54、56)を備える型式であり、ピストンは、前側に開放して、一方にて、前側圧力室(40、44)と連通し、他方にて、少なくとも1つの穴(62、64)を介して上記ピストン(16、18)の周縁と連通するボア(58、60)を備え、該ボアは、ピストン(16、18)がその後方休止位置となったとき、2つのシール(30、32、34、36)の間に配置されて、前側圧力室(40、44)と後側供給室(38、42)との間の連通状態を開放し、また、ピストン(16、18)がその作用位置に向けて軸方向前方に動いたとき、前側シール(30、34)を超えて進むことができ、前側圧力室(40、44)を後側供給室(38、42)から隔離して、このため、前側圧力室(40、44)内にてブレーキ圧力を確立することを許容する型式であり、少なくとも前側シール(30、34)の各々は、マスタシリンダの本体の溝(70、72)内に受容され且つ、軸方向向きを有する3つの同心状リップ部、特に、
その自由端(82)がピストン(16、18)の周縁と接触するように配置された第一の内側リップ部(80)と、
その自由端(86)が休止位置にて、溝(70、72)の前面(88)と接触するように配置された第二の中央リップ部(84)と、
その自由端(92)が休止位置にて、溝(70、72)の周底面(94)と接触するように配置された第三の外側リップ部(80)とを備える型式であり、
第二の中央リップ部(84)及び第三の外側リップ部(90)は、ピストン(16、18)がその前方作用位置からその休止位置に戻ることにより、又はブレーキ回路の一部を形成する軌道制御装置の作動によって生じた部分真空圧に前側圧力室(40、44)が曝されたとき、溝(70、72)の前面(88)及び周底面(94)から分離して、前側圧力室(40、44)がリザーバにより再供給されることを許容することができるようにした型式の自動車用のブレーキマスタシリンダにおいて、溝の前面(88)は、少なくとも部分的に規定された傾斜角度(α)の勾配として形成され、第二の中央リップ部(84)の傾動による分離を容易にし且つ、第三の外側リップ部(90)の傾動による分離を容易にするようにしたことを特徴とする、自動車用のブレーキマスタシリンダ。
【請求項2】
請求項1に記載のマスタシリンダ(10)において、溝(70、72)の前面(88)の1つの部分(96)は、マスタシリンダ本体のボア(14)から前記前面(88)の中間部分(98)まで連続的な勾配として形成され、溝(70、72)の前面(88)の別の部分(100)は、その周底壁(94)との接続に対し半径方向向きを有することを特徴とする、マスタシリンダ(10)。
【請求項3】
請求項1に記載のマスタシリンダ(10)において、溝の前面(88)は、その全高さ(h)をわたって連続的な勾配として形成されることを特徴とする、マスタシリンダ(10)。
【請求項4】
請求項3に記載のマスタシリンダ(10)において、勾配は、半径方向に対して小さくした角度(α)を形成し、第三の外側リップ部(90)が傾動するとき、該外側リップ部の軸方向への変位を制限し、溝(70、72)内のシール(30、34)の平行移動する動きを制限するようにすることを特徴とする、マスタシリンダ(10)。
【請求項5】
請求項4に記載のマスタシリンダ(10)において、勾配は、半径方向に対して実質的に15°の角度(α)を形成することを特徴とする、マスタシリンダ(10)。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか1つの項に記載のマスタシリンダ(10)において、タンデム型であり、また、その実質的に軸方向本体(12)に、その内部に2つの軸方向ピストン(16、18)が摺動可能に取り付けられたボアと、その前面(88)が少なくとも部分的に1つの勾配として形成された2つの溝(70、72)内に受容された2つの前側シール(30、34)とを備えることを特徴とする、マスタシリンダ(10)。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−1262(P2009−1262A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−129161(P2008−129161)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(591245473)ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (591)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【Fターム(参考)】