説明

再吸収性ポリエーテルエステル及び医療用インプラントを製造するためのその使用

本発明は、ヒト又は他の動物の有機体に適合する外科用インプラントを製造するための、ポリエーテル単位とポリエステル単位とを含む再吸収性ブロック共重合体の使用に関するもので、さらに、対応するブロック共重合体に関する。この新規なブロック共重合体は機械抵抗が高く再吸収動態が速いことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、ポリエーテル単位及びポリエステル単位を有する吸収性ブロック共重合体(本願明細書においてポリ(エーテルエステル)と呼ぶ)、及び、ヒト又は動物の体への外科用又は治療用の移植材料(インプラント)を製造するための前記ブロック共重合体の使用に関する。本発明のブロック共重合体及び該共重合体から製造したインプラントは、吸収動態の向上と同時に機械的強度の高さを特徴とする。本発明のブロック共重合体の製造及び精製については明細書で説明する。
(従来技術)
医薬組成物又は生分解性インプラントにおける添加剤として、吸収性ポリマーの重要性は高まりつつある。あらゆる種類の技術用途で、物理的特性及び化学的特性が著しく異なるポリマーが必要とされている。
そこで、医薬組成物用の添加剤として、ポリエステル単位とポリエーテル単位とを有するブロック共重合体は、とりわけ有効成分の担体材料として、又は、有効成分をマイクロカプセル化するための材料として使用される。この場合、ポリマーの投与は非経口が好ましい。担体材料として使用する場合は、該材料が、粉末状、溶液状又は懸濁液状態のいずれかで、品質を損ねることなく製剤の他の成分と混合されることを前提としている。マイクロカプセル化に使用する場合、使用されるポリマーは製剤の他の成分に対して化学的にも物理的にも中性的な挙動をとるということが言える。また、マイクロカプセルは有効成分を目的の場所で放出しなければならないということも要求条件である。生来脆い材料又は固い材料はこうした用途からは除外される。この分野では、ポリ(エーテルエステル)のAB型、ABA型、BAB型又はABABABAB型がとりわけ好適であることがわかってきた。例えば、ブロックAとしてL-ラクチド又はD,L-ラクチド、ブロックBとしてポリエチレングリコールを有するポリマーが挙げられる。
【0002】
吸収性ポリマーは、製薬分野での使用の他に外科手術や外科治療の専門家達の関心を大いに集めているところである。製薬分野とは異なり、この分野で好適と思われる材料を選ぶには、材料の機械的特性ならびに毒学上の特性を考慮にいれることが重要である。毒学上の特性や機械的特性を満たす一方で、製造及び加工に必須の特性も有する固体材料が使用される。即ち、該材料は、射出成形、溶融プレス又は押出等の熱可塑性加工方法に適用できること、あるいは、機械加工などの機械的方法の要求に耐えるものでなければならない。この点で不可欠な特性は、主に引張り強さ又はねじり応力及び劣化速度である。
インプラントの特性を決めるのは、第一に使用した材料であり、次にその材料の加工である。
吸収性のあるインプラントはヒト又は他の動物の中でその機能を果たし終えた後、加水分解により分解し、その分解物が体に再吸収されるという点で、金属等のような非吸収性材料よりも優れている。このため、さらに手術をしてインプラントを除去する必要がない。また、吸収性インプラントのもう1つの利点は、例えば、骨接合の例に示されるようにその材料の許容性(toleration)が高いところにある。非吸収性インプラントの場合、不活性により骨が萎縮する危険性があり、インプラントが一旦取り去られると新鮮骨折の危険性が増大する可能性がある。外科用の目的で関心があるポリマーは、吸収性があることと同様に、高い強度といった他の特性も有しているとよい。
外科用インプラント等に適した公知の吸収性ポリマーには、例えば、ラクチド(=3,6-ジメチル-1,4-ジオキサン-ジオン)、グリコリド(=1,4-ジオキサン-2,5-ジオン)、ジオキサノン(1,4-ジオキサン-2-オン)を基礎とした脂肪族ポリ(エステル)類、ラクチド/グリコリドとトリメチレンカーボネート(=1,3-ジオキサン-2-オン)及びε-カプロラクトンとの共重合体が挙げられる。高分子量のものが好ましく使用される。
【0003】
例としては、ポリ(L-ラクチド)、ポリ(D,L-ラクチド)、ポリ(L-ラクチド-co-D,L-ラクチド)、ポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)、ポリ(グリコリド-co-トリメチレンカーボネート)、ポリ(L-ラクチド-co-トリメチレンカーボネート)、ポリ(D,L-ラクチド-co-トリメチレンカーボネート)、ポリ(L-ラクチド-co-カプロラクトン)が挙げられる。
前記材料を用い、機械的特性に関して広い範囲に及ぶ吸収性インプラントを製造することが可能である。例えば、ポリ(L-ラクチド)は高い強度に加えて剛性及び脆性が大きいが、D,L-ラクチドとトリメチレンカーボネートとを共重合させると、粘塑性を有する材料ができる。これらの材料の分解速度は数ヶ月から数年であることに鑑みて、それぞれに対応する長い期間、そのまま体内に存在することを意図したインプラント用にとりわけ好適である。
一方、よりすばやく分解可能な材料やインプランへの外科における要求はまだ応じられていないことが多い。とりわけ小児科用途や急速に増殖する組織を固定化するためのインプラントのためには、比較的速く分解するが、強度、弾力性、強靭性等といった必要な機械的特性も保持した材料が必要とされる。
本発明はこうした材料の提供に貢献するものである。実際、驚くべきことに、穏やかな合成条件のもと、単官能性又は二官能性ポリ(エチレングリコール)の存在下で環状エステルの開環重合を行うことにより、優れた特性のインプラントを製造するのに適したAB型又はABA型の高分子ブロック共重合体を工業的に適応可能な規模で容易に製造できることがわかった。これらのポリマーは、簡単な方法、例えば抽出等によって精製も工業的規模で行うことができ、その純度も体内移植に必要な条件を満たしている。さらに、前記プリマーは、簡単な熱可塑性成形方法により加工してインプラントを製造することが可能になる特性を有している。
【0004】
(発明の目的)
本発明の目的は、従来技術から公知である材料に比べ、より速くヒト又は他の動物の体によって分解されるだけでなく、例えば引張り強さ等のような機械的強度が高い、医療用及び外科用インプラントを製造するための材料を提供することである。
別の目的は、インプラントに適した物理的特性を有する、医療用及び外科用インプラントを製造するための材料を提供することである。この物理的特性とは例えば初期強度、弾力性又は強靭性が挙げられる。
本発明のさらに別の目的は、ヒト又は他の動物の体内で使用することが可能になる純度を有する、本発明による材料を提供することである。合成用出発物質の最終品中での含有量が低いことが特に重要視される。
本発明のさらなる目的は、小児科用途又は急速に増殖する組織を固定化するためのインプラントとして使用するのに吸収が十分速い外科用インプラント材料を提供することである。
さらに別の本発明の目的は、前記インプラント用材料の調製方法であり、工業規模で使用可能な調製方法を提供することである。
本発明の別の目的は、医療用インプラント及びその製造方法を提供することである。
【0005】
(発明の説明)
本発明は、吸収性のある外科用インプラントを製造するための、ポリエステル単位及びポリエーテル単位からなるブロック共重合体に関する。
本発明の好適な態様は、本発明によるブロック共重合体を含有するインプラントに関する。
インプラントという用語は、ヒト又は他の動物の体内へ導入するのに外科的にも機械的にも適しており、かつ、毒学上も問題のない、(吸収性のある)成形体を意味する。このような成形体は、ネジ、ピン、プレート、ネジ用ナット、留め具、フリース、フィルム、メンブレン、メッシュ等が上げられる。これらは、硬組織の破断を固定化するため、縫合材料の留め具として、脊椎インプラントとして、血管や他の脈管を閉じたり付けたりするため、ステントとして、組織欠損におけるキャビティー(cavity)又は穴(hole)を埋めるために使用することができる。
また、本発明のブロック共重合体は、例えば薬剤溶出ステントの製造にも適している。この薬剤溶出ステントは動脈血管内に設置して血管をサポートするもので、増殖抑制有効成分を長期にわたり周囲の組織に放出し再狭窄を防ぐものである。例えばパクリタキセル等の細胞成長抑止剤から選択される有効成分が、この目的には十分であることがわかっている。
【0006】
本発明のインプラントは前記材料から熱可塑成形方法により作製することができ、例えば、スクリュー等といった医療用に求められる形状に作り上げる。好適な造形方法としては、方法自体は熱可塑性樹脂用の先行技術から公知な方法であって、例えば溶融プレス、好ましくは押出成形及び射出成形が挙げられる。射出成形による形成が特に好ましい。
射出成形に適した温度は共重合体の厳密な組成によって変わるが、110〜210℃の範囲である。高分子量のブロック共重合体、即ち、溶融粘度が高いブロック共重合体の場合は、比較的低分子量のポリマーの場合よりも加工温度を高くする必要がある。また、L-ラクチド単位の割合が高いブロック共重合体では、その結晶化度により加工温度を高くする必要がある。
ブロック共重合体は加水分解により分解する傾向があるので、加工する前にブロック共重合体を乾燥させておき、加工温度をできるだけ低く保つことも有利である。
使用する本発明のブロック共重合体は、AB型又はABA型のポリエーテルエステルである。
Aは繰り返しエステル単位を有するポリマーブロックを示し、Bは繰り返しエーテル単位を有するポリマーブロックを示す。
ポリエステルブロックAは、1種以上のヒドロキシカルボン酸又はカーボネート、好ましくはα-ヒドロキシカルボン酸に形式上遡ることができるn個の成分で構成される。所望であれば、形式上、ブロックAは前記成分中の異なる数種から合成することもできる。
後者のBはポリエーテル単位であり、形式上、エチレングリコールから誘導される繰り返し単位である。繰り返し単位数はmで表される。
【0007】
本発明のポリマーは、ポリエステルブロックA又は複数のブロックAを、末端基として1個又は2個の遊離OH基を有するポリエチレングリコールブロックBと合成することにより調製される。したがって、ABA型のポリマーには2個の遊離OH基を末端基として有するポリエチレングリコールブロックを使用し、AB型ポリマーには遊離OH基を末端基として1個のみ有するポリエチレングリコールブロックを使用する。
本発明のAB型ポリエーテルエステルは一般式Iで表すことができる。
式I:E-(O-D-CO-)n-(O-CH2-CH2-)m-O-F
構造単位E-(-O-D-CO-)n-がブロックAを形成する。
ブロックAは共有結合によりブロックBと結合する。
Dは、n個の単位それぞれで互いに独立して、
-(CH(CH3)-)x 又は
-(CH2-)x 又は
-(CH2-O-CH2-CH2-) 又は
-(CH2-CH2-CH2-O-)を表し、
xは1、2、3、4又は5であり、
Eは水素、メチル又はエチルであり、
nは1より大きい整数である。
構造単位-(O-CH2-CH2-)m-O-FがブロックBを形成する。
Fは水素、メチル又はエチルを表し、
mは1より大きい整数である。
【0008】
AB型ブロック共重合体がBA型ブロック共重合体と構造的に同一であることから、本明細書の範囲においてその区別をしていないということをはっきりと指摘しておく。
ABA型ブロック共重合体は、前記定義に基づく一般式IIで表されるポリマーである。
式II:E-(O-D-CO-)n-(O-CH2-CH2-)m-O-(CO-D-O-)n'-E
(式中、すべての変数は前記記載の定義の通りであり、n’は1より大きい整数である)
ポリマーでは一般的であるように、n、n’及びmの文字は、2つのブロックの統計上の平均鎖長さを示す数字を意味する。個々の分子における正確な数字は統計的分布にゆだねられる。
共重合体におけるブロックBの長さは、平均して500〜10000ダルトンであるとよい。ブロックの平均長さは600〜8000ダルトンが好ましく、1000〜8000ダルトンがとりわけ好ましい。
ブロック共重合体の加水分解で放出される短いポリ(エチレングリコール)断片は、腎臓を介して体内から容易に排出することができる。
本明細書で規定のすべての範囲はそれぞれ包括的(上限、下限が含まれる)であることをここで述べておく。
ブロックAのブロックBに対する質量比は、共重合体の特性及び該共重合体から作製される本発明のインプラントの特性にとって極めて重要な役割を果たす。ブロックBの量が多くなるほど、この物質は親水性が強くなり、高速吸収性(加水分解速度又は分解速度)という点で前向きな効果がある。
本発明によると、ブロックBの質量比は0.01〜25%である。
【0009】
下記の並びは、ブロックBの好適な質量比を個々の実施形態で優先度が高くなる順番で記載している。0.01〜20質量%、0.1〜15質量%、0.1〜10質量%、0.1〜5質量%、0.1〜4質量%、1〜3質量%。最後の3つのBの質量比範囲を有するポリマーが特に好適である。実際のところ、驚いたことに、ほんの少量の親水性ブロックBを使った実施形態では、対応する純粋なポリ(エステル)Aと比較して加水分解による分解がかなり速くなることがわかった。
ブロックBを0.1〜4質量%の割合で含むポリマーが最も好ましい。このことは、ブロックAが占める割合が高いブロック共重合体を含有する成形体の強度が高まることから特に有利である。この点から、ブロックBを1〜3質量%、とりわけ0.5〜1.5質量%含む実施形態が極めて好適である。
前記ブロックBの長さと、ポリマー全体におけるブロックBの質量比の詳細な説明から、1個のブロックA又はブロックA全体の長さが自動的に決まり、それによって全分子量が決まる。ABA型の3ブロック共重合体の場合、2つのブロックAではブロックの長さと質量比が平均すると同じであることが前提とされている。同様に、共重合体の全分子量は、合成時に使用したエチレングリコールの分子量と、導入される2つの成分の比によって決まる。
最終的なブロック共重合体の分子量は、当然のことながらブロックBの長さと比率とによって限定的に決めることができるということをここで指摘しておく。
【0010】
本発明の使用に適したポリマーを特徴付ける別の重要なパラメータとして、内部粘度(i.v.)を用いることができる。ブロック共重合体の内部粘度は広範囲にわたり様々である。内部粘度(0.1%濃度溶液にしてクロロホルム中、25℃でウベローデ型粘度計を用いて測定)は0.1〜6dl/gが好ましく、さらには0.5〜5dl/gが好ましい。とりわけ、0.6〜3dl/gの範囲の値が好適であり、0.7〜2.75dl/gの範囲の値が最も好ましい。
以下の特徴を有するAB型又はABA型のブロック共重合体が本発明では好適である。
−内部粘度(0.1%濃度溶液にしてクロロホルム中、25℃で測定)が0.1〜5.5dl/g、好ましくは0.5〜5.0dl/g。
−ブロックBの平均ブロック長が1000〜8000ダルトン。
−ブロックBの質量比が0.1〜15質量%、好ましくは0.1〜5質量%、より好ましくは0.1〜4質量%。
−ブロックAが好ましくは下記のエステル成分を有する。
− L-ラクチド、D-ラクチド、meso-ラクチド又はDL-ラクチドのみ、
− L-ラクチドのみ、
− D,L-ラクチドのみ、
− L-ラクチド及びD,L-ラクチドの統計的分布による(ランダム化した)混合物で、好ましくはL-ラクチドのモル比が60〜90%、
− L-ラクチド及びグリコリドの統計的分布による(ランダム化した)混合物で、好ましくはL-ラクチドのモル比が70〜99%、より好ましくは85〜99%、さらに好ましくは70〜95%、より好ましくは87〜95%、
【0011】
− D,L-ラクチド及びグリコリドの統計的分布による(ランダム化した)混合物で、好ましくはD,L-ラクチドのモル比が50〜80%、
− L-ラクチド、D-ラクチド、meso-ラクチド又はDL-ラクチド及びε-カプロラクトン単位の統計的分布による(ランダム化した)混合物、
− L-ラクチド又はD,L-ラクチド及びε-カプロラクトン単位の統計的分布による(ランダム化した)混合物、
− L-ラクチド、D-ラクチド、meso-ラクチド又はDL-ラクチド及びジオキサノン単位の統計的分布による(ランダム化した)混合物、
− L-ラクチド又はD,L-ラクチド及びジオキサノン単位の統計的分布による(ランダム化した)混合物、
− L-ラクチド、D-ラクチド、meso-ラクチド又はDL-ラクチド及びトリメチレンカーボネート単位の統計的分布による(ランダム化した)混合物、
− L-ラクチド又はD,L-ラクチド及びトリメチレンカーボネート単位の統計的分布による(ランダム化した)混合物。
ブロックAが下記エステル成分を含むブロック共重合体がより好適である。
− L-ラクチドのみ、
− D,L-ラクチドのみ、
− L-ラクチド及びD,L-ラクチドの統計的分布による(ランダム化した)混合物で、好ましくはL-ラクチドのモル比が60〜90%、
【0012】
− L-ラクチド及びグリコリドの統計的分布による(ランダム化した)混合物で、好ましくはL-ラクチドのモル比が70〜95%、
− D,L-ラクチド及びグリコリドの統計的分布による(ランダム化した)混合物で、好ましくはD,L-ラクチドのモル比が50〜80%。
本発明のインプラントは、1種又は2種以上の異なる本発明によるブロック共重合体を含み、重合過程からの不純物をのぞけば他の添加剤を何も含まないものが好ましい。ある特定の実施形態のインプラントは、高分子ブロック共重合体と、例えば、ポリ(L-ラクチド)、ポリ(D-ラクチド)、ポリ(D,L-ラクチド)、ポリ(meso-ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(ε-カプロラクトン)から選択される吸収性ポリ(エステル)、同様に対応する複素環基の共重合体又はポリエチレングリコール等といった他の吸収性材料との混合物を含んでいてもよい。ブロック共重合体におけるブロックAの化学構造がポリ(エステル)における化学構造と対応している混合物が好適である。これによって、混合物における良好な相結合を確実なものとし、優れた機械的特性を実現するという点において有利である。また異なるブロック共重合体の混合物を使用することも可能である。
本発明のインプラントの質量は1〜10000mgであるとよく、好ましくは5〜5000mg、とりわけ好ましくは10〜1000mgである。
インプラントの好適な引張り強さは、ASTM規格D638に準拠した成形体、即ち、前記ポリマーから本発明により製造される成形体として測定されるが、少なくとも70MPa、好ましくは75〜95MPa、特に好ましくは80〜88MPaであるとよい。
【0013】
インプラントの好ましい加水分解速度(分解速度)は、ASTM規格D638に準拠した成形体、即ち、前記ポリマーから本発明により製造される成形体における内部粘度の変化により求められるが、pH7.4のリン酸塩緩衝水溶液で構成される浴槽中、温度37℃で6週間経過後の内部粘度の値が初期値の少なくとも30%、好ましくは40%、特に好ましくは45%である。
さらに本発明は、
(a)本発明のブロック共重合体と、
(b)L-ラクチド、D-ラクチド、DL-ラクチドもしくはmeso-ラクチドから選択されるラクチド、グリコリド、トリメチレンカーボネート、ε-カプロラクトン又はジオキサノンの繰り返し単位を有し、記載単位の中で同様な単位だけが存在してもよいし、あるいは、異なる単位が存在してもよい吸収性ポリエステルAとから構成される混合物を含有することを特徴とするインプラントに関するものである。
ブロック共重合体の調製
AB型共重合体は、遊離な水酸基と非反応性末端基(メトキシ末端基が好ましい)とを有するポリ(エチレングリコール)の存在下、環状エステルの開環重合により合成することができる。ABA型共重合体は、遊離な水酸基を2個有するポリ(エチレングリコール)の存在下で調製することができる。この場合、2個のブロックAは、同じ合成工程の中で並行して合成される。
一般式IIIで表される環状エステルは、ブロックA又は複数ブロックAを調製するための開環重合用の成分として働く。
【0014】
【化1】

【0015】
(式中、各-O-D-CO単位におけるDは互いに独立して前記定義のいずれか1つを有することができる。)
zは整数であり、少なくとも1、好ましくは1又は2である。特に好ましくは、α-ヒドロキシカルボン酸の二量体環状エステル、単量体ラクトン又は環状カーボネートが用いられる。
ブロックA又は複数ブロックAを調製する際、式IIIの成分は必ずしも1種のみの使用でなくてもよい。構造要素Dの化学的性状が異なる混合物を使用することも可能である。
開環重合によりブロックAを形成する式IIIで表される好適な構造又は好適な分子としては、a)L-ラクチド、b)D-ラクチド、c)D-ラクチドとL-ラクチドとの混合物で、例えばrac D,L-ラクチド、d)meso-ラクチド、e)グリコリド、f)トリメチレンカーボネート、g)ε-カプロラクトン、h)ジオキサノン、i)L-ラクチドとD,L-ラクチドとの混合物、j)L-ラクチドとグリコリドとの混合物、k)D,L-ラクチドとグリコリドとの混合物、l)L-ラクチド又はD,L-ラクチドとトリメチレンカーボネートとの混合物、m)L-ラクチド又はD,L-ラクチドとε-カプロラクトンとの混合物が挙げられる。
なかでも、a)L-ラクチド、b)L-ラクチド及びグリコリド、c)L-ラクチド及びD,L-ラクチド、d)D,L-ラクチド及びグリコリドを前記記載の割合にしたものが特に好ましい(ポリマーの説明を参照)。
【0016】
ポリ(エーテルエステル)を調製するには、純度の高い原料の使用が推奨される。例えば水等の極性を有するプロトン不純物により、重合の最中に鎖が切れてしまうことがある。そのため、ポリ(エチレングリコール)は重合に使用する前に乾燥しておくことが推奨される。
合成を行うために、ポリ(エチレングリコール)を式IIIで表される単量体又は二量体1種以上と混合し溶融する。エダクト(educts)を均一に混合した後、開環重合用の触媒を加える。反応混合物は加温して重合を行うことが好ましい。
この合成には数多くの様々な金属触媒、例えば、錫化合物又は亜鉛化合物が好適である。塩化錫(II)又はエチルヘキサン酸錫(II)の使用が好ましい。ヒト又は他の動物の体内での使用の提案を考慮すると、触媒はできるだけ最小の量で使用することが好ましい。30〜200ppmの濃度が好ましく、50〜100ppmの濃度が特に好ましい。触媒について記載した濃度は、いずれの場合も、全反応質量を基準とした触媒金属イオンの質量部を指す。
反応温度はそれぞれの場合に使用するエダクトの溶融温度より高くする。そのため、反応温度は、式IIIの単量体又は二量体の構造と、使用するポリ(エチレングリコール)の分子量とによって変わる。通常、100〜160℃の範囲の温度で反応を行う。100〜140℃の範囲が好ましく、特に110〜130℃の範囲が好適である。有機溶媒における良好な溶解性が重要であるポリマーの場合は、反応温度を150〜170℃に調整するとよい。ブロックA又は複数ブロックAにおいてコモノマー単位が良好な統計的分布となるには反応温度が高い方が好都合である。このようにして、例えば、アセトンに容易に溶解するグルコリド含有ポリマーを調製することが可能である。
【0017】
必要な反応時間は、使用した式IIIの単量体又は二量体の反応速度、反応温度、触媒濃度により異なり、数時間から数日に及ぶ。24時間〜5日間の反応時間が好ましく、2〜5日間の反応時間が特に好ましい。反応時間が長くなると通常転化率が上昇し、最終生成物におけるエダクト(educts)の割合を下げることになる。
要するに、関連する反応パラメータである触媒量、反応温度及び反応時間については、触媒はできるだけ少量に、反応温度は生成物の分解反応や変色反応を避けるために穏やかな反応温度に、また、可能な限り広範な単量体又は二量体の反応にするという観点から、使用するエダクトに応じて選択する。
一般に、前記記載の方法で調製したポリマーには精製工程も施す。式IIIで表されるエダクトの開環重合は平衡反応であるため、微量な未反応エダクトが粗生成物ポリマー中に依然として存在し、これが後続の加工や移植に害を及ぼすことがある。
ポリマーの精製は多様な溶媒から析出させるか、抽出により行うことができる。
析出の場合、沈殿剤と混和性のある溶媒、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、氷酢酸、氷酢酸とアセトンとの混合物、DMSO、塩化メチレン、クロロホルム又は塩化メチレンとクロロホルムとの混合物等の溶媒中で粗生成物ポリマーを溶解させ、得られた溶液を沈殿剤である水、メタノール、エタノール又は他のアルコールと一緒に混合する。他の溶媒/沈殿剤も考えられるが(例えばエーテルに析出させる)、工業規模では毒性又は安全性を考慮すると好ましくない。非晶質ポリマーは抽出による精製が困難であったり、或いは抽出での精製ができないので、析出により精製することが多い。
【0018】
抽出の方が好ましい。得られた粗生成物ポリマーを溶媒で抽出した後、乾燥を行う。抽出の場合、通常、粗生成物ポリマーをあらかじめ粉砕しておき、固体中に溶媒が十分に拡散するようにする。精製工程では、有機溶媒及び超臨界ガス又は加圧液化ガスが好適である。これらはモノマーを溶解するがポリマーは溶解しない。n-アルカン類又はシクロアルカン類(周囲温度においてシクロヘキサン又はn-ヘキサン)から選択される有機溶媒及び二酸化炭素の使用が好ましく、特に超臨界又は加圧液化した二酸化炭素が好ましくは使用される。
そこで、さらに本発明は、本発明によるポリ(エーテルエステル)AB型及びABA型の調製方法に関するものであり、該方法は、
(a)1個又は2個の遊離水酸基を末端基として有するポリ(エチレングリコール)を、式IIIで表される単量体又は二量体の1種以上と一緒に混合溶融し、
【0019】
【化2】

【0020】
(式中、各-O-D-CO単位においてDは互いに独立して、
-(CH(CH3)-)x 又は
-(CH2-)x 又は
-(CH2-O-CH2-CH2-) 又は
-(CH2-CH2-CH2-O-)を表せばよく、
xは1、2、3、4又は5であり、
zは整数で、少なくとも1、好ましくは1または2である)
(b)工程(a)で得られた均一な混合物に金属触媒を加え、
(c)工程(b)の混合物を、使用したエダクトの溶融温度より高い反応温度で24時間〜5日間の反応時間で重合させ、
(d)工程(c)で得られた粗生成物ポリマーを溶媒からの析出又は抽出により精製し、
(e)工程(d)で得られたポリマーを粉砕することを含む。
好ましくは、工程(a)で使用されるポリ(エチレングリコール)はあらかじめ乾燥を行っておくとよい。
前述の内容からさらに好適な実施形態を推論することができる。
【0021】
インプラントの作製
得られた高分子ブロック共重合体は、先行技術から公知のインプラントに比べ、より速く分解するという所望の特性を有する一方で、初期強度の高さを有する外科用インプラントに熱可塑成形で容易に加工することができる。
本発明のインプラントの使用
本発明のインプラントは、例えば、硬組織の破断を固定化(骨接合)するため、軟組織の組織再生を調整するため、骨に縫合糸を固定するため(縫合材料の留め具)、椎間の靭帯を守るための脊椎インプラントとして(例えば、いわゆる「脊椎ケージ」)、血管破裂の際の血管や他の脈管を閉じたり付けたりするため(吻合)、ステントとして、組織欠損部、例えば、歯科学上の欠損部や心臓中隔の欠損におけるキャビティー又は穴を埋めるため、腱や靭帯を骨に固定するために使用することができる。このため、ブロック共重合体は個々の用途に適合した設計の成形体に加工される。例えば、ネジ、ピン、プレート、ナット、留め具、フリース、フィルム、メンブレン、メッシュ等を得ることができる。この種のネジは、例えば、様々な大きさに製造することができ、また、ネジ山の大きさ、右ネジ又は左ネジ、異なるネジ頭(例えば、プラス又はマイナスネジ)に製造することができる。先行技術より他の可能な使用については推察することができる。
【0022】
実施例
以下の実施例は説明の例示を目的とし、可能性のあるものとして解釈すべきであり、それぞれの内容に本発明を制限するものではない。
1.生体外での劣化研究
先行技術から公知の射出成形方法を用いて、本発明のポリマーを加工して成形体(試験片)を作製する。これらを金網に固定して、温度37℃に調整されている加水分解用の浴槽に入れる。浴槽にpH7.4のリン酸塩緩衝液を満たし、これを毎週入れ替える。試験片は設定された試験時間で取り出す。ポリマーの分解は、内部粘度(i.v.)というパラメータのある期間にわたっての変化(0.1%濃度溶液にしてクロロホルム中、25℃でウベローデ型粘度計を用いて測定)をとおして観察する。
1.1 ポリL−ラクチド−ポリエチレングリコール系の2ブロック又は3ブロック共重合体
以下を使用する。
−ABA型ポリマーで、ブロックA成分としてL-ラクチド、ブロックBとして1〜5%のポリエチレングリコール6000(PEG 6000)を有する。
−AB型ポリマーで、ブロックA成分としてL-ラクチド、ブロックBとして1〜5%のポリエチレングリコール2000(PEG 2000)を有する。数字2000及び6000はPEGのモル
質量をダルトンで示すものである。
【0023】
時間0における内部粘度の測定値を100%として統一する。この値は、試験片を加水分解用浴槽の中に浸す前の値に相当する。分解を明らかにするために、初期値を基準として測定値を%で記録する。
AB型ポリマーとしては以下を使用する。
サンプル1: L-ラクチド-ポリエチレングリコールで、ポリエチレングリコール(PEG)の質量比が1%でモル質量が2000ダルトン。そのためブロックAの長さは198000ダルトンと算出される。
サンプル2: L-ラクチド-ポリエチレングリコールで、ポリエチレングリコール(PEG)の質量比が5%でモル質量が2000ダルトン。そのためブロックAの長さは38000ダルトンと算出される。
ABA型ポリマーとしては以下を使用する。
サンプル3: L-ラクチド-ポリエチレングリコール-L-ラクチドで、ポリエチレングリコール(PEG)の質量比が1%でモル質量が6000ダルトン。そのためブロックAの長さはそれぞれ297000ダルトンと算出される。
サンプル4: L-ラクチド-ポリエチレングリコール-L-ラクチドで、ポリエチレングリコール(PEG)の質量比が5%でモル質量が6000ダルトン。そのためブロックAの長さはそれぞれ57000ダルトンと算出される。
結果:
下記表1は使用したポリマーの分解速度の概要を示す。
【0024】
【表1】

【0025】
i.v. 内部粘度(0.1%濃度溶液にしてクロロホルム中、25℃でウベローデ型粘度計を用いて測定)
n.d. 測定していない。
AB型の2ブロック共重合体では、18週後、下記の値を得る。
サンプル1:初期値の52%
サンプル2:初期値の38%
ABA型の3ブロック共重合体(サンプル3及び4)では、PEG質量比を1%又は5%のどちらかに選択したにもかかわらず、18週後の加水分解では内部粘度が初期値のわずか約25%になる。
比較:ポリL-ラクチドの値は20週後でやっと60%近辺である。
1.2 ポリL-ラクチド-co-D,L-ラクチド-ポリエチレングリコール系の2ブロック又は3ブロック共重合体
以下を使用する。
−ABA型ポリマーで、ブロックA成分としてL-ラクチド-co-D,L-ラクチド、ブロックBとして5%のポリエチレングリコール2000(PEG 2000)を有する。
−AB型ポリマーで、ブロックA成分としてL-ラクチド-co-D,L-ラクチド、ブロックBとして5%のポリエチレングリコール-MME5000(PEG-MME 5000)を有する。数字2000及び5000はPEG又はPEG−MMEのモル質量をダルトンで示すものである。
時間0における内部粘度の測定値を100%として統一する。この値は、試験片を加水分解用浴槽の中に浸す前の値に相当する。分解を明らかにするために、初期値を基準として測定値を%で記録する。
【0026】
ABA型ポリマーとしては以下を使用する。
サンプル5: L-ラクチド-co-D,L-ラクチド-ポリエチレングリコール-L-ラクチド-co-D,L-ラクチドで、ポリエチレングリコール(PEG)の質量比が5%でモル質量が2000ダルトン。そのためブロックAの長さはそれぞれ19000ダルトンと算出される。
AB型ポリマーとしては以下を使用する。
サンプル6: L-ラクチド-co-D,L-ラクチド-ポリエチレングリコールで、ポリエチレングリコール(PEG)の質量比が5%でモル質量が5000ダルトン。そのためブロックAの長さは95000ダルトンと算出される。
結果:
ABA型の3ブロック系共重合体では、18週後の加水分解では内部粘度が初期値のわずか約30%になる。
AB型の2ブロック系共重合体(サンプル6)では、18週後の粘度は初期値の9%となる。
1.3 ポリL-ラクチド-co-グリコリド-ポリエチレングリコール系の2ブロック又は3ブロック共重合体
以下を使用する。
【0027】
−ABA型ポリマーで、ブロックA成分としてL-ラクチド-co-グリコリド、ブロックBとして5%のポリエチレングリコール2000(PEG 2000)を有する。
−AB型ポリマーで、ブロックA成分としてL-ラクチド-co-グリコリド、ブロックBとして5%のポリエチレングリコール-MME5000(PEG-MME 5000)を有する。数字2000及び5000は、PEG及びPEG−MMEのモル質量をそれぞれダルトンで示すものである。
時間0における内部粘度の測定値を100%として統一する。この値は、試験片を加水分解用浴槽の中に浸す前の値に相当する。分解を明らかにするために、初期値を基準として測定値を%で記録する。
ABA型ポリマーとしては以下を使用する。
サンプル7: L-ラクチド-co-グリコリド-ポリエチレングリコール-L-ラクチド-co-グリコリドで、ポリエチレングリコール(PEG)の質量比が5%でモル質量が2000ダルトン。そのためブロックAの長さはそれぞれ19000ダルトンと算出される。
AB型ポリマーとしては以下を使用する。
サンプル8: L-ラクチド-co-グリコリド-ポリエチレングリコールで、ポリエチレングリコール(PEG)の質量比が5%でモル質量が5000ダルトン。そのためブロックAの長さは95000ダルトンと算出される。
結果:
下記表2は使用したポリマーの分解速度の概要を示す。
【0028】
【表2】

【0029】
i.v. 内部粘度(0.1%濃度溶液にしてクロロホルム中、25℃でウベローデ型粘度計を用いて測定)
ABA型3ブロック共重合体及びAB型2ブロック共重合体のいずれにおいても、18週後の加水分解では内部粘度が初期値のわずか約10%になる。
2.機械試験
引張り強さを求めるために、下記に挙げた試験片をASTM D638に準じて作製し測定に供する。
サンプル1: L-ラクチド-ポリエチレングリコールで、ポリエチレングリコール(PEG)の質量比が1%でモル質量が2000ダルトン。そのためブロックAの長さは198000ダルトンと算出される。
サンプル2: L-ラクチド-ポリエチレングリコールで、ポリエチレングリコール(PEG)の質量比が5%でモル質量が2000ダルトン。そのためブロックAの長さは38000ダルトンと算出される。
サンプル3: L-ラクチド-ポリエチレングリコール-L-ラクチドで、ポリエチレングリコール(PEG)の質量比が1%でモル質量が6000ダルトン。そのためブロックAの長さはそれぞれ297000ダルトンと算出される。
サンプル4: L-ラクチド-ポリエチレングリコール-L-ラクチドで、ポリエチレングリコール(PEG)の質量比が5%でモル質量が6000ダルトン。そのためブロックAの長さはそれぞれ57000ダルトンと算出される。
【0030】
サンプル5: L-ラクチド-ポリエチレングリコール-L-ラクチドで、ポリエチレングリコール(PEG)の質量比が15%でモル質量が6000ダルトン。
サンプル6: L-ラクチド-co-D,L-ラクチド-ポリエチレングリコール-L-ラクチド-co-D,L-ラクチドで、ポリエチレングリコール(PEG)の質量比が5%でモル質量が2000ダルトンで、L-ラクチド:D,L-ラクチドの比が70:30。
サンプル7: L-ラクチド-co-D,L-ラクチド-ポリエチレングリコールで、ポリエチレングリコール(PEG)の質量比が5%でモル質量が5000ダルトンで、L-ラクチド:D,L-ラクチドの比が70:30。
サンプル8: L-ラクチド-co-グリコリド-ポリエチレングリコール-L-ラクチド-co-グリコリドで、ポリエチレングリコール(PEG)の質量比が5%でモル質量が2000ダルトンで、L-ラクチド:グリコリドの比が85:15。
サンプル9: L-ラクチド-co-グリコリド-ポリエチレングリコールで、ポリエチレングリコール(PEG)の質量比が5%でモル質量が5000ダルトンで、L-ラクチド:グリコリドの比が85:15。
サンプル10: ポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)で、L-ラクチド:グリコリドのモル比が85:15(*)
サンプル11: ポリ(L-ラクチド-co-DL-ラクチド)で、L-ラクチド:DL-ラクチドのモル比が70:30(*)
(*)これらの参照用材料の引張り強さはDIN 53455に準じて測定し、それぞれ対応の試験片はDIN 53452により作製した。
下記表3は使用した試験片の引張り強さについて得られた値の概要を示す。
【0031】
【表3】

【0032】
i.v. 内部粘度(0.1%濃度溶液にしてクロロホルム中、25℃でウベローデ型粘度計を用いて測定)
3.ポリマー
3.1 ポリラクチド-ポリエチレングリコール-ポリラクチドの3ブロック系共重合体
35gのPEG6000(分子量6000ダルトンのポリエチレングリコールで、2個の末端OH基を有する)を85℃、50mbar/2時間で乾燥を行う。3.5kgのL-ラクチドを加える。112℃で965mgの2-エチルヘキサン酸錫(II)を溶融エダクトに加える。混合物の塊状重合を120℃で3日間行う。得られた粗生成物ポリマーを粉砕して後述の条件下で抽出する。ポリマーの内部粘度(i.v.)は2.63dl/gであり、ラクチド残存モノマー量は0.5%未満である。共重合体中のPEG量は0.9%(1H-NMR)である。PEG6000基準で各ブロックAのモル質量が338000g/molに相当することになる。ガラス転移温度(Tg)(Netsch社製のDSC 200 PCで示差走査熱量測定(DSC)による。加温速度:10°K/分)は60.8℃である。
3.2 ポリ-D,L-ラクチド-co-L-ラクチド-ポリエチレングリコール-ポリ-D,L-ラクチド-co-L-ラクチドの3ブロック系共重合体
175gのPEG2000(分子量2000ダルトンのポリエチレングリコールで、2個の末端OH基を有する)を85℃、50mbar/2時間で乾燥を行う。2520gのL-ラクチドと980gのD,L-ラクチドとを加える。112℃で1003mgの2-エチルヘキサン酸錫(II)を溶融エダクトに加える。混合物の塊状重合を120℃で3日間行う。得られた粗生成物ポリマーを粉砕して後述の条件下で抽出する。ポリマーの内部粘度(i.v.)は0.86dl/gであり、ラクチド残存モノマー量は0.5%未満である。共重合体中のPEG量は4.8%(1H-NMR)である。
【0033】
3.3 ポリ-L-ラクチド-co-グリコリド-ポリエチレングリコールの2ブロック系共重合体
125gのPEG-MME2000(分子量2000ダルトンのポリエチレングリコールで、1個の末端OH基と1個の末端メトキシ基を有する)を85℃、50mbar/2時間で乾燥を行う。2135.2gのL-ラクチドと364.8gのグリコリドを加える。112℃で717mgの2-エチルヘキサン酸錫(II)を溶融エダクトに加える。混合物の塊状重合を150℃で3日間行う。得られた粗生成物ポリマーを粉砕して抽出する。ポリマーの内部粘度(i.v.)は1.7dl/gであり、残存モノマー量は0.5%未満である。共重合体中のPEG量は5.3%(1H-NMR)である。
3.4 ポリ-D,L-ラクチド-co-グリコリド-ポリエチレングリコールの2ブロック系共重合体
236.7gのPEG-MME5000(分子量5000ダルトンのポリエチレングリコールで、1個の末端OH基と1個の末端メトキシ基を有する)を85℃、50mbar/2時間で乾燥を行う。2537gのD,L-ラクチドと1936gのグリコリドを加える。112℃で1293mgの2-エチルヘキサン酸錫(II)を溶融エダクトに加える。混合物の塊状重合を150℃で3日間行う。得られた粗生成物ポリマーをアセトンに溶解させ水に析出させて精製し、乾燥させる。ポリマーの内部粘度(i.v.)は1.1dl/gであり、残存モノマー量は0.5%未満である。共重合体中のPEG量は4.9%(1H-NMR)である。
【0034】
3.5 ポリ-L-ラクチド-ポリエチレングリコール-MMEの2ブロック系共重合体
35gのPEG-MME2000(分子量2000ダルトンのポリエチレングリコールで、1個の末端OH基と1個の末端メトキシ基を有する)を85℃、50mbar/2時間で乾燥を行う。3500gのL-ラクチドを加える。112℃で965mgの2-エチルヘキサン酸錫(II)を溶融エダクトに加える。混合物の塊状重合を120℃で5〜7日間行う。得られた粗生成物ポリマーを粉砕して抽出を行う。ポリマーの内部粘度(i.v.)は1.91dl/gであり、残存モノマー量は0.5%未満である。共重合体中のPEG量は0.94%(1H-NMR)である。
3.6 ポリ-L-ラクチド-co-D,L-ラクチド-ポリエチレングリコール-MMEの2ブロック系共重合体
175gのPEG-MME5000(分子量5000ダルトンのポリエチレングリコールで、1個の末端OH基と1個の末端メトキシ基を有する)を85℃、50mbar/2時間で乾燥を行う。2520.0gのL-ラクチドと980gのD,L-ラクチドを加える。112℃で1003mgの2-エチルヘキサン酸錫(II)を溶融エダクトに加える。混合物の重合を120℃で3日間行う。得られた粗生成物ポリマーを粉砕して抽出を行う。ポリマーの内部粘度(i.v.)は1.55dl/gであり、残存モノマー量は0.5%未満である。共重合体中のPEG量は4.84%(1H-NMR)である。
【0035】
3.7 ポリ-L-ラクチド-co-グリコリド-ポリエチレングリコール-poly-L-ラクチド-co-グリコリドの3ブロック系共重合体
65gのPEG-6000(分子量6000ダルトンのポリエチレングリコールで、2個の末端OH基を有する)を85℃、50mbar/2時間で乾燥を行う。5496.1gのL-ラクチドと938.9gのグリコリドを加える。112℃で1775mgの2-エチルヘキサン酸錫(II)を溶融エダクトに加える。混合物の塊状重合を150℃で3日間行う。得られた粗生成物ポリマーを粉砕して抽出を行う。ポリマーの内部粘度(i.v.)は2.7dl/gであり、残存モノマー量は0.5%未満である。共重合体中のPEG量は1.0%(1H-NMR)である。
3.8 ポリ-D,L-ラクチド-co-グリコリド-ポリエチレングリコール-ポリ-D,L-ラクチド-co-グリコリドの3ブロック系共重合体
499.5gのPEG6000(分子量6000ダルトンのポリエチレングリコールで、2個の末端OH基を有する)を85℃、50mbar/2時間で乾燥を行う。2537.0gのD,L-ラクチドと1963.0gのグリコリドを加える。112℃で1365mgの2-エチルヘキサン酸錫(II)を溶融エダクトに加える。混合物の塊状重合を150℃で3日間行う。得られた粗生成物ポリマーをアセトンに溶解させ水に析出させて精製し、乾燥させる。ポリマーの内部粘度(i.v.)は0.75dl/gであり、残存モノマー量は0.5%未満である。共重合体中のPEG量は10.05%(1H-NMR)である。
【0036】
4.精製
実施例3.1〜3.3及び実施例3.5〜3.7の粉砕した生成物は、16Lの抽出カートリッジに入れる。カートリッジを閉じて、カートリッジ内容物を加圧液化二酸化炭素で抽出する。
抽出条件:
時間/圧力:90barで1時間、その後、300barで4時間。
温度:10℃以下
二酸化炭素の流量:約120kg/時間
この精製例は他のポリマーでも同様に行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料として、AがポリエステルブロックでBがポリエーテルブロックであるABブロック共重合体及びABAブロック共重合体から選択されるポリ(エーテルエステル)を含有するインプラント。
【請求項2】
材料として、AがポリエステルブロックでBがポリエーテルブロックであるABブロック共重合体及びABAブロック共重合体から選択されるポリ(エーテルエステル)からなるインプラント。
【請求項3】
前記Bがポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項1又は2記載のインプラント。
【請求項4】
前記ポリエーテルエステルがAB型であり、式I:
E-(O-D-CO-)n-(O-CH2-CH2-)m-O-F (式I)
(式中、構造単位E-(-O-D-CO-)n-がブロックAを形成し、
-(O-CH2-CH2-)m-がブロックBを形成し、
Dは、n個の単位それぞれで互いに独立して、
-(CH(CH3)-)x 又は
-(CH2-)x 又は
-(CH2-O-CH2-CH2-) 又は
-(CH2-CH2-CH2-O-)を表せばよく、
xは1、2、3、4又は5であり、
E及びFは互いに独立して水素、メチル又はエチルであり、
n及びmは統計的に平均化した値であり、互いに独立して1より大きい整数である)で表される、請求項1〜3のいずれか1項記載のインプラント。
【請求項5】
前記ポリエーテルエステルがABA型であり、式II:
E-(O-D-CO-)n-(O-CH2-CH2-)m-O-(CO-D-O-)n'-E (式II)
(式中、構造単位E-(-O-D-CO-)n-及びE-(-O-D-CO-)n'-がブロックAを形成し、
-(O-CH2-CH2-)m-がブロックBを形成し、
Dは、n個又はn’個の単位それぞれで互いに独立して、
-(CH(CH3)-)x 又は
-(CH2-)x 又は
-(CH2-O-CH2-CH2-) 又は
-(CH2-CH2-CH2-O-)を表せばよく、
xは1、2、3、4又は5であり、
Eは水素、メチル又はエチルであり、
n、n’及びmは統計的に平均化した値であり、互いに独立して1より大きい整数である)で表される、請求項1〜3のいずれか1項記載のインプラント。
【請求項6】
前記Aが、a)L-ラクチド、b)D-ラクチド、c)D-ラクチドとL-ラクチドとの混合物、好ましくは1:1の割合のD-ラクチドとL-ラクチドとの混合物、d)meso-ラクチド、e)グリコリド、f)トリメチレンカーボネート、g)ε-カプロラクトン、h)ジオキサノン、i)L-ラクチドとD,L-ラクチドとの混合物、j)L-ラクチドとグリコリドとの混合物、k)D,L-ラクチドとグリコリドとの混合物、l)L-ラクチド又はD,L-ラクチドとトリメチレンカーボネートとの混合物、m)L-ラクチド又はD,L-ラクチドとε-カプロラクトンとの混合物、及び、n)L-ラクチド又はD,L-ラクチドとジオキサノンとの混合物から選択されるモノマー成分から合成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載のインプラント。
【請求項7】
前記Aが、a)L-ラクチド、b)L-ラクチド及びグリコリド、c)L-ラクチド及びD,L-ラクチド、d)D,L-ラクチド及びグリコリドから選択されるモノマー成分から合成されることを特徴とする請求項6記載のインプラント。
【請求項8】
前記ブロックBの鎖の長さが平均500〜10000ダルトンであり、前記ブロックBの質量比が0.01〜25質量%、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.1〜15質量%、さらに好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%、さらに好ましくは0.1〜4質量%であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載のインプラント。
【請求項9】
前記インプラントが1種の材料のみで作製されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載のインプラント。
【請求項10】
硬組織の破断を固定化するため、縫合材料の留め具として、脊椎インプラントとして、血管や他の脈管を閉じたり付けたりするため、ステントとして、組織欠損におけるキャビティー又は穴を埋めるための、請求項1〜9のいずれか1項記載のインプラント。
【請求項11】
細胞増殖抑制剤群から選択される有効成分を含むことを特徴とする、ステントとしての請求項1〜8のいずれか1項記載のインプラント。
【請求項12】
ネジ、ピン、プレート、ナット、留め具、フリース、フィルム、メンブレン又はメッシュの形態である請求項1〜10のいずれか1項記載のインプラント。
【請求項13】
前記インプラントの初期引張り強さが少なくとも70MPa、好ましくは75〜95MPa、特に好ましくは80〜88MPaであり、かつ、pH7.4のリン酸塩緩衝水溶液中、温度37℃で6週間加水分解を行った後の内部粘度の内部粘度初期値からの減少分で評価される分解速度が、30%より大きい材料からなることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項記載のインプラント。
【請求項14】
ASTM D638に準じた成形体形態での初期引張り強さが少なくとも70MPa、好ましくは75〜95MPa、特に好ましくは80〜88MPaであり、かつ、pH7.4のリン酸塩緩衝水溶液中、温度37℃で6週間加水分解を行った後の内部粘度の内部粘度初期値からの減少分で評価される分解速度が30%よりも大きい材料からなるインプラント。
【請求項15】
AがポリエステルブロックでBがポリエーテルブロックであるAB型又はABA型のブロック共重合体。
【請求項16】
前記ブロック共重合体がAB型であり、式I:
E-(O-D-CO-)n-(O-CH2-CH2-)m-O-F (式I)
(式中、構造単位E-(-O-D-CO-)n-がブロックAを形成し、
-(O-CH2-CH2-)m-がブロックBを形成し、
Dは、n個の単位それぞれで互いに独立して、
-(CH(CH3)-)x 又は
-(CH2-)x 又は
-(CH2-O-CH2-CH2-) 又は
-(CH2-CH2-CH2-O-)を表せばよく、
xは1、2、3、4又は5であり、
E及びFは互いに独立して水素、メチル又はエチルであり、
n及びmは統計的に平均化した値であり、互いに独立して1より大きい整数である)で表される、請求項15記載のブロック共重合体。
【請求項17】
前記ブロック共重合体がABA型であり、式II:
E-(O-D-CO-)n-(O-CH2-CH2-)m-O-(CO-D-O-)n'-E (式II)
(式中、構造単位E-(-O-D-CO-)n-及びE-(-O-D-CO-)n'-がブロックAを形成し、
-(O-CH2-CH2-)m-がブロックBを形成し、
Dは、n個又はn’個の単位それぞれで互いに独立して、
-(CH(CH3)-)x 又は
-(CH2-)x 又は
-(CH2-O-CH2-CH2-) 又は
-(CH2-CH2-CH2-O-)を表せばよく、
xは1、2、3、4又は5であり、
Eは水素、メチル又はエチルであり、
n、n’及びmは統計的に平均化した値であり、互いに独立して1より大きい整数である)で表される、請求項15記載のブロック共重合体。
【請求項18】
前記ブロック共重合体がAB型であり、式I:
E-(O-D-CO-)n-(O-CH2-CH2-)m-O-F (式I)
(式中、構造単位E-(-O-D-CO-)n-がブロックAを形成し、
-(O-CH2-CH2-)m-がブロックBを形成し、
Dは、n個の単位それぞれで互いに独立して、
-(CH(CH3)-)x 又は
-(CH2-)x 又は
-(CH2-O-CH2-CH2-) 又は
-(CH2-CH2-CH2-O-)を表せばよく、
xは1、2、3、4又は5であり、
E及びFは互いに独立して水素、メチル又はエチルであり、
n及びmは統計的に平均化した値であり、互いに独立して1より大きい整数である)で表され、かつ、前記ブロックBが0.1〜4質量%の比率を占めることを特徴とする請求項15記載のブロック共重合体。
【請求項19】
前記ブロック共重合体がABA型であり、式II:
E-(O-D-CO-)n-(O-CH2-CH2-)m-O-(CO-D-O-)n'-E (式II)
(式中、構造単位E-(-O-D-CO-)n-及びE-(-O-D-CO-)n'-がブロックAを形成し、
-(O-CH2-CH2-)m-がブロックBを形成し、
Dは、n個又はn’個の単位それぞれで互いに独立して、
-(CH(CH3)-)x 又は
-(CH2-)x 又は
-(CH2-O-CH2-CH2-) 又は
-(CH2-CH2-CH2-O-)を表せばよく、
xは1、2、3、4又は5であり、
Eは水素、メチル又はエチルであり、
n、n’及びmは統計的に平均化した値であり、互いに独立して1より大きい整数である)で表され、かつ、前記ブロックBが0.1〜4質量%の比率を占めることを特徴とする請求項15記載のブロック共重合体。
【請求項20】
前記Aが、a)D-ラクチド及びL-ラクチド、好ましくは1:1の割合、b)L-ラクチド及びグリコリド、c)D,L-ラクチド及びグリコリド、d)L-ラクチド及びε-カプロラクトン、e)L-ラクチド及びジオキサノン、f)L-ラクチド及びトリメチレンカーボネートから選択されるモノマー成分混合物から合成されることを特徴とする請求項15〜19のいずれか1項記載のブロック共重合体。
【請求項21】
前記ブロックBの質量比が1〜3質量%であることを特徴とする請求項15〜20のいずれか1項記載のブロック共重合体。
【請求項22】
前記ブロックAが、前記L-ラクチド、D-ラクチド、meso-ラクチド又はDL-ラクチドの単位から合成されていることを特徴とする請求項15〜21のいずれか1項記載のブロック共重合体。
【請求項23】
前記ブロックAが、前記L-ラクチドの単位から合成されていることを特徴とする請求項22記載のブロック共重合体。
【請求項24】
前記ブロックAが、前記DL-ラクチドの単位から合成されていることを特徴とする請求項22記載のブロック共重合体。
【請求項25】
AB型又はABA型のブロック共重合体であって、前記共重合体が請求項16記載の式I又は請求項17記載の式IIで表され、かつ、前記ブロックAがL-ラクチド及びDL-ラクチドの統計的に分布された(ランダム化した)単位から合成されていることを特徴とするブロック共重合体。
【請求項26】
前記ブロックAにおけるL-ラクチドのモル比が60〜90%であることを特徴とする請求項25記載のブロック共重合体。
【請求項27】
AB型又はABA型のブロック共重合体であって、前記共重合体が請求項16記載の式I又は請求項17記載の式IIで表され、かつ、前記ブロックAがL-ラクチド及びグリコリドの統計的に分布された(ランダム化した)単位からなり、前記L-ラクチドのモル比が85〜99%であることを特徴とするブロック共重合体。
【請求項28】
前記ブロックAにおけるL-ラクチドのモル比が87〜95%であることを特徴とする請求項27記載のブロック共重合体。
【請求項29】
AB型又はABA型のブロック共重合体であって、前記共重合体が請求項16記載の式I又は請求項17記載の式IIで表され、かつ、前記ブロックAがDL-ラクチド及びグリコリドの統計的に分布された(ランダム化した)単位からなり、内部粘度の値が0.8dl/gより大きいことを特徴とするブロック共重合体。
【請求項30】
前記ブロックAにおけるDL-ラクチドのモル比が50〜80%であることを特徴とする請求項29記載のブロック共重合体。
【請求項31】
AB型又はABA型のブロック共重合体であって、前記共重合体が請求項16記載の式I又は請求項17記載の式IIで表され、かつ、前記ブロックAがL-ラクチド、D-ラクチド、meso-ラクチド又はDL-ラクチド及びε-カプロラクトンの統計的に分布された(ランダム化した)単位からなることを特徴とするブロック共重合体。
【請求項32】
前記ブロックAがL-ラクチド又はDL-ラクチド及びε-カプロラクトンの統計的に分布された単位からなることを特徴とする請求項31記載のブロック共重合体。
【請求項33】
AB型又はABA型のブロック共重合体であって、前記共重合体が請求項16記載の式I又は請求項17記載の式IIで表され、かつ、前記ブロックAがL-ラクチド、D-ラクチド、meso-ラクチド又はDL-ラクチド及びジオキサノンの統計的に分布された単位からなることを特徴とするブロック共重合体。
【請求項34】
前記ブロックAがL-ラクチド又はDL-ラクチド及びジオキサノンの統計的に分布された単位からなることを特徴とする請求項33記載のブロック共重合体。
【請求項35】
AB型又はABA型のブロック共重合体であって、前記共重合体が請求項16記載の式I又は請求項17記載の式IIで表され、かつ、前記ブロックAがL-ラクチド、D-ラクチド、meso-ラクチド又はDL-ラクチド及びトリメチレンカーボネートの統計的に分布された単位からなることを特徴とするブロック共重合体。
【請求項36】
前記ブロックAがL-ラクチド又はDL-ラクチド及びトリメチレンカーボネートの統計的に分布された単位からなることを特徴とする請求項35記載のブロック共重合体。
【請求項37】
前記ブロックBの質量比が0.01〜25%であることを特徴とする請求項25〜36のいずれか1項記載のブロック共重合体。
【請求項38】
前記ブロックBの質量比が0.01〜20%であることを特徴とする請求項37記載のブロック共重合体。
【請求項39】
前記ブロックBの質量比が0.1〜15%であることを特徴とする請求項38記載のブロック共重合体。
【請求項40】
前記ブロックBの質量比が0.1〜10%であることを特徴とする請求項39記載のブロック共重合体。
【請求項41】
前記ブロックBの質量比が0.1〜5%であることを特徴とする請求項40記載のブロック共重合体。
【請求項42】
前記ブロックBの質量比が0.1〜4%であることを特徴とする請求項41記載のブロック共重合体。
【請求項43】
前記ブロックBの数平均ブロック長が500〜10000ダルトンであることを特徴とする請求項15〜42のいずれか1項記載のブロック共重合体。
【請求項44】
前記ブロックBの数平均ブロック長が600〜8000ダルトンであることを特徴とする請求項43記載のブロック共重合体。
【請求項45】
前記ブロックBの数平均ブロック長が1000〜8000ダルトンであることを特徴とする請求項44記載のブロック共重合体。
【請求項46】
前記ブロック共重合体の内部粘度が0.1〜6dl/gであることを特徴とする請求項15〜45のいずれか1項記載のブロック共重合体。
【請求項47】
前記ブロック共重合体の内部粘度が0.5〜5dl/gであることを特徴とする請求項46記載のブロック共重合体。
【請求項48】
前記ブロック共重合体の内部粘度が0.6〜3dl/gであることを特徴とする請求項47記載のブロック共重合体。
【請求項49】
前記ブロック共重合体の内部粘度が0.7〜2.75dl/gであることを特徴とする請求項48記載のブロック共重合体。
【請求項50】
請求項15〜49のいずれか1項記載のポリ(エーテルエステル)AB型及びABA型の調製方法であって、
(a)1個又は2個の遊離水酸基を末端基として有するポリ(エチレングリコール)を、下記式III:
【化1】

式III:
(式中、各-O-D-CO単位においてDは互いに独立して、
-(CH(CH3)-)x 又は
-(CH2-)x 又は
-(CH2-O-CH2-CH2-) 又は
-(CH2-CH2-CH2-O-)を表せばよく、
xは1、2、3、4又は5であり、
zは整数で、少なくとも1、好ましくは1又は2である)で表される単量体又は二量体の1種以上と一緒に混合溶融し、
(b)工程(a)で得られた均一な混合物に金属触媒を加え、
(c)工程(b)の混合物を、使用したエダクトの溶融温度よりも高い反応温度で24時間〜5日間の反応時間で重合させ、
(d)工程(c)で得られた粗生成物ポリマーを溶媒からの析出又は抽出により精製し、
(e)工程(d)で得られたポリマーを粉砕することを含む、調製方法。
【請求項51】
前記工程(a)で使用されるポリ(エチレングリコール)をあらかじめ乾燥させておくことを特徴とする請求項50記載の調製方法。
【請求項52】
前記工程(b)の前記金属触媒として、塩化錫(II)又はエチルヘキサン酸錫(II)を濃度30〜200ppm、好ましくは50〜100ppmで使用することを特徴とする請求項50記載の調製方法。
【請求項53】
前記工程(c)の重合を、100〜160℃の範囲の温度、好ましくは100〜140℃の範囲の温度、特に好ましくは110〜130℃の範囲の温度で行うことを特徴とする請求項50記載の調製方法。
【請求項54】
前記工程(c)の重合が、2〜5日間の反応時間にわたり起きることを特徴とする請求項50記載の調製方法。
【請求項55】
前記工程(d)の精製を抽出により行うもので、前記工程(c)で得られた粗生成物ポリマーを、n-アルカン類又はシクロアルカン類から選択される溶媒又は二酸化炭素で抽出するもので、好ましくは二酸化炭素で抽出することを特徴とする請求項50記載の調製方法。
【請求項56】
請求項50〜55のいずれか1項記載の方法で調製された、請求項15〜49のいずれか1項記載のブロック共重合体。
【請求項57】
請求項15に記載のポリエーテルエステル又は請求項16〜49のいずれか1項記載のポリエーテルエステルにおけるような、モノマーが混入しているブロック共重合体の精製方法であって、前記粗生成物ポリマーを、n-アルカン類又はシクロアルカン類から選択される溶媒又は二酸化炭素で抽出するもので、好ましくは二酸化炭素で抽出することを特徴とする精製方法。
【請求項58】
請求項1〜14のいずれか1項記載のインプラントの製造方法であって、
(a)式I又はIIで表されるブロック共重合体を乾燥させ、
(b)前記ブロック共重合体を射出成形機で溶融状態にし、
(c)前記ポリマー溶融物を所望の寸法を有する金型に注入し、
(d)前記射出成形用金型の前記ポリマー溶融物を冷却し、
(e)前記射出成形用金型から成形体を取り出す工程を含む製造方法。
【請求項59】
医療用又は外科用のインプラントを作製するための、請求項15〜49のいずれか1項記載のブロック共重合体の使用。
【請求項60】
小児科適応症用のインプラントを作製するための、請求項59記載のブロック共重合体の使用。
【請求項61】
前記インプラントが、
(a)請求項15記載のブロック共重合体と、
(b)L-ラクチド、D-ラクチド、DL-ラクチド又はmeso-ラクチドから選択されるラクチド、グリコリド、トリメチレンカーボネート、ε-カプロラクトン又はジオキサノンの繰り返し単位を有する吸収性ポリエステルAであって、前記指定単位の中で同様な単位だけが存在してもよいし、あるいは、異なる単位が存在してもよい吸収性ポリエステルAとから構成される混合物からなることを特徴とする、請求項1記載のインプラント。

【公表番号】特表2009−501559(P2009−501559A)
【公表日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520874(P2008−520874)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【国際出願番号】PCT/EP2006/064128
【国際公開番号】WO2007/009919
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(503137975)ベーリンガー インゲルハイム ファルマ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト (129)
【Fターム(参考)】