説明

再循環触媒を使用する湿式空気酸化方法

プロセス流れを処理する系及びプロセス。水性混合物中の少なくとも1種の望ましくない成分を処理するために、触媒が、湿式酸化法を高温及び高圧下で促進する。水性混合物を、高温及び過圧下に、触媒及び酸化剤と接触させることができる。少なくとも一部の触媒を、pH調整により沈殿させ、水性混合物と接触させるために再循環することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、35 U.S.C.119(e)項に基づく優先権を、その全体が参照により本明細書に援用される2007年1月22日出願の米国特許仮出願第60/885966号:発明の名称「再循環銅触媒を使用する湿式空気酸化プロセス」に対して、主張する。
【0002】
1.発明分野
本発明は、一般にプロセス流れの処理に、より特定すると、その中の望ましくない成分を処理するための接触湿式酸化系及びプロセスに、関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連分野の記載
湿式酸化は、プロセス流れを処理するためのよく知られている技術であり、例えば、廃水中の汚染物質を分解するために、広く使用されている。このプロセスは、望ましくない成分を、酸化剤、通常は酸素含有ガスからの分子状酸素、により高温及び高圧下で水性相酸化することを伴う。このプロセスにより、有機汚染物質を、二酸化炭素、水、及び酢酸等の生分解性短鎖有機酸に、転換することができる。硫化物、メルカプチド及びシアン化物を始めとする無機成分も、また、酸化することができる。焼却の代替法として、湿式酸化は、幅広い様々な用途で、後で放出するために、プロセス内再循環のために、又は精製のための慣用の生物学的処理プラントを供給するための前処理ステップとしてプロセス流れを処理するために、使用することができる。接触湿式酸化は、伝統的な非接触湿式酸化を有効に強化するものとして登場した。接触湿式酸化プロセスは、通常、より低い温度及び圧力で、従って、より低い資本経費で、より高度の分解を可能にする。処理すべき水性流を、酸化剤と混合し、高温及び高圧下で触媒と接触させる。不均一系触媒は、典型的には、床の上に存在し、その上方を、水性混合物が通過するか、又は、固体粒子の形態で存在し、酸化に先立って水性混合物とブレンドされる。触媒は、再使用のために、湿式酸化ユニットの下流で酸化流出液から濾取することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
1つ又は複数の実施形態では、本発明は、接触湿式酸化のためのプロセス及び系に関する。一実施形態では、接触湿式酸化プロセスは、処理すべき少なくとも1種の望ましくない成分を含有する水性混合物を提供することを含んでなる。水性混合物を触媒及び酸化剤と高められた温度で過圧下に接触させて、少なくとも1種の望ましくない成分を処理し、酸化された水性混合物を形成する。酸化された水性混合物のpHレベルを調整することにより、少なくとも一部の触媒を沈殿させて、沈殿触媒を形成する。少なくとも一部の沈殿触媒を再循環して、水性混合物と接触させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
他の実施形態では、接触湿式酸化系は、湿式酸化ユニット;湿式酸化ユニットに流体接続されていて、少なくとも1種の望ましくない成分を含んでなる水性混合物の源;湿式酸化ユニットに流体接続されていて、水性混合物の源と湿式酸化ユニットとの間に配置されている、水性混合物に溶解可能な触媒の源;酸化された水性混合物のpHレベルを、湿式酸化ユニットの下流で、検出するように構成されているpH感知装置;pH感知装置と連絡していて、触媒についての所定のpH溶解性範囲内のpHレベルを登録しているpH感知装置に応答して、酸化された水性混合物のpHレベルを、触媒についての所定のpH溶解性範囲外のレベルに、調整する制御信号を生じるように構成されているpH制御装置;湿式酸化ユニットの下流に配置され且つこれと流体接続していて更にpH制御装置の下流に配置されている、触媒の少なくとも一部を沈殿させるように構成されている分離器;並びに、分離器の出口、及び、触媒の源の少なくとも1個の入口及び湿式酸化系への入口に流体接続している再循環管路を含んでなる。
【0006】
他の実施形態では、接触湿式酸化プロセスで使用された触媒の再循環を容易にする方法は、pH感知装置と連絡している制御装置を有するpH監視系を提供することを含んでなり、ここで、この制御装置は、利用される触媒について所定のpH溶解性範囲内のpHレベルを登録しているpH感知装置に応答して、水性混合物のpHレベルを調整する制御信号を生じるように構成されている。
【0007】
本発明の利点、新規な特徴及び対象は、添付の図面と共に以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0008】
添付の図面は、規模を写すことを意図したものではない。図面では、様々な図面に示されている同一の又はほぼ同一の構成要素はそれぞれ、同様の数字で表されている。明確さのために、全ての構成要素を全ての図面で表示しているとは限らない。本発明の好ましい非限定的な実施形態を、添付の図面を参照して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の湿式酸化系の一実施形態による系統図である。
【図2】触媒再循環プロセスを包含する本発明の湿式酸化系の実施形態による系統図である。
【図3】2ステップ沈殿プロセスを伴う触媒再循環プロセスを包含する本発明の湿式酸化系の実施形態による系統図である。
【図4】銅に関して本明細書で参照されるプールベダイアグラムである。
【図5】バナジウムに関して本明細書で参照されるプールベダイアグラムである。
【図6】鉄に関して本明細書で参照されるプールベダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、その応用において、以下の記述で説明されているか、図面で説明されている構成要素の構成及び配置の詳細に、限定されるものではない。本発明は、本明細書に例示されているもの以上の様々な方法で実態化、実行又は実施することができる。
【0011】
1つ又は複数の実施形態では、本発明は、プロセス流れを処理するための1つ又は複数の系及びプロセスに関する。典型的な操作では、開示されている系は、地域共同体、産業又は住宅源からのプロセス流れを受け入れることができる。例えば、系が廃水を処理する実施形態では、プロセス流れは、自治体廃水スラッジ又は他の大規模汚水系に由来してよい。プロセス流れは、また、例えば、食品加工プラント、化学加工施設、ガス化プロジェクト又はパルプ及び紙プラントに由来してもよい。プロセス流れは、操作により、系を通して、系の上流又は下流へと移動させることができる。
【0012】
本明細書で使用する場合、「プロセス流れ」という用語は、処理のために系に輸送することができる水性混合物を指している。処理の後に、プロセス流れは、上流プロセスに戻してもよく、廃棄物として系から出してもよい。水性混合物は、典型的には、酸化することができる少なくとも1種の望ましくない成分を含んでいる。望ましくない成分は、例えば、公衆衛生、プロセス設計及び/又は審美的考慮のために、水性混合物からの除去の対象となる任意の物質又は化合物であってよい。一部の実施形態では、酸化することができる望ましくない成分は、有機化合物である。或る種の無機成分、例えば、硫化物、メルカプチド及びシアン化物もまた、酸化することができる。スラリー等の、系により処理すべき水性混合物の源は、プラントからの直接的な配管又は保持容器の形態を取っていてよい。
【0013】
本発明の1つ又は複数の実施形態では、望ましくない成分又はその分解産物中の1つ又は複数の特定の化学結合を分解することが望ましい。酸化反応は、酸化可能な有機汚染物質を、二酸化炭素、水、及び酢酸等の生分解可能な短鎖有機酸に、転換することができる分解技術の1つである。本発明の一側面は、1種又は複数の望ましくない成分を含有する水性混合物の酸化処理のための系及びプロセスに関する。
【0014】
一実施形態では、少なくとも1種の望ましくない成分を含有する水性混合物を湿式酸化する。水性混合物は、酸化剤を用いて高められた温度で過圧下に、少なくとも1種の望ましくない成分を処理するのに十分な期間、酸化される。酸化反応は、望ましくない成分中の1つ又は複数の化学結合の完全性を実質的に分解することができる。本明細書で使用する場合、「実質的に分解」という語句は、少なくとも約95%の分解と定義される。本発明のプロセスは、通常、酸化され得る任意の望ましくない成分の処理に適用することができる。
【0015】
開示されている湿式酸化プロセスは、酸化される化合物に適した任意の公知のバッチ式又は連続式湿式酸化ユニットで実施することができる。典型的には、水性相酸化は、図1に例示されているような連続フロー湿式酸化系で実施することができる。任意の酸化剤を使用することができる。酸化剤は、通常、空気、酸素富化空気又は実質的に純粋な酸素等の、酸素含有ガスである。本明細書で使用する場合、「酸素富化空気」という語句は、約21%を超える酸素含有量を有する空気と定義される。
【0016】
典型的な操作では、図1を参照すると、貯蔵タンク10として示されている源からの水性混合物は、導管12を通して高圧ポンプ14に流れ、ここで、ポンプにより水性混合物を加圧する。水性混合物を、コンプレッサー16により供給される加圧酸素含有ガスと、導管18内で混合する。水性混合物は、熱交換機20を流れ、ここで、酸化が開始される温度に加熱される。次いで、加熱された供給混合物は、入口38で反応容器24に入る。湿式酸化反応は、通常、発熱性であり、反応器で生じる反応熱により、混合物の温度を所望の値まで更に上昇させることができる。大部分の酸化反応が、所望の程度の酸化を達成するのに十分な滞留時間を提供する反応容器24内で生じる。次いで、酸化された水性混合物及び酸素が消耗されたガス混合物が、反応器から、圧力制御バルブ28により制御される導管26を通して、外に出される。熱い酸化された流出液が熱交換機20を横切り、ここで、流入する原料水性混合物及びガス混合物により冷却される。冷却された流出液混合物は、導管30を通して分離容器32に流れ、ここで、液体及びガスが分離される。液体流出物は、分離容器32から下部導管34を通して外に出、一方で、排ガスは、上部導管36を通して排気される。その組成及び大気への排出要件に応じて、排ガスの処理が、下流の排ガス処理ユニットにおいて必要なこともある。湿式酸化流出液は、典型的には、精製(polishing)のための生物学的処理プラントに排出してもよい。流出液を、また、湿式酸化系による更なる処理のために再循環することもできる。
【0017】
典型的には、十分な酸素含有ガスを系に供給して、湿式酸化系排ガス中に残留酸素を維持するが、典型的には、過圧ガス圧は、液相中の水を選択された酸化温度に維持するのに十分である。例えば、240℃での最小系圧力は33気圧であり、280℃での最小圧力は64気圧であり、373℃での最小圧力は215気圧である。一実施形態では、水性混合物は、約30気圧から約275気圧の圧力で酸化される。湿式酸化プロセスは、水の臨界温度である374℃未満の高められた温度で行なうことができる。一実施形態では、湿式酸化プロセスを、約150℃及び約6気圧の圧力から約320℃及び約200気圧の圧力までの範囲の高められた温度で行なうことができる。一部の実施形態では、湿式酸化プロセスを、超臨界高温で行なうことができる。反応室内での水性混合物の滞留時間は、一般に、所望の程度の酸化を達成するのに十分であるのがよい。一部の実施形態では、滞留時間は、約1時間を超え約8時間までである。少なくとも1つの実施形態では、滞留時間は、少なくとも約15分から約6時間までである。一実施形態では、水性混合物を約15分から約4時間酸化される。他の実施形態では、水性混合物は、約30分から約3時間酸化される。
【0018】
1つ又は複数の実施形態では、湿式酸化プロセスは、接触湿式酸化プロセスである。酸化反応を、触媒により媒介させることができる。通常、処理すべき少なくとも1種の望ましくない成分を含有する水性混合物を、触媒及び酸化剤と高められた温度で過圧下に接触させる。通常、反応速度を高め、並びに/又は、化学的酸素要求量(COD)及び/若しくは全有機炭素(TOC)の大きな低減を始めとする系の全体分解除去効率を改善するのには、有効量の触媒で、十分である。触媒は、また、湿式酸化系の全体エネルギー必要量を低下させるのにも役立ちうる。
【0019】
少なくとも1つの実施形態では、触媒は、周期表のV、VI、VII及びVIII族の任意の遷移金属であってよい。一実施形態では、例えば、触媒は、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mo、Ag又はこれらの合金若しくは混合物であってよい。遷移金属は、元素であってもよく、金属塩等の化合物で存在してもよい。一実施形態では、遷移金属触媒は、バナジウムである。他の実施形態では、遷移金属触媒は、鉄である。更に他の実施形態では、遷移金属触媒は、銅である。
【0020】
触媒を水性混合物に、湿式酸化系の任意の地点で加えることができる。触媒を、水性混合物と混合することができる。一実施形態では、触媒源40が貯蔵タンク10に流体接続している、図1に示されているとおりの湿式酸化ユニットに供給する水性混合物の源に、触媒を、加えることもできる。一部の実施形態では、触媒を、湿式酸化ユニットに直接加えることもできる。他の実施形態では、また、加熱及び/又は加圧に先立って、水性混合物に触媒を供給することもできる。
【0021】
更に他の実施形態では、触媒が、処理すべきプロセス流れに既に存在していてもよい。酸化ユニットに供給される水性混合物は、触媒材料を含有していてもよい。例えば、遷移金属が、接触湿式酸化系により処理すべき廃棄物流れ中に存在してもよい。水性スラリー、例えば揮発性有機炭素を含有する水性スラリー、は、触媒として作用し得る金属を含有することがある。例えば、水性混合物は、ガス化副生成物のスラリーであってよい。
【0022】
1つ又は複数の実施形態では、触媒は、水性混合物に可溶であって湿式酸化プロセスを促進するものであってよい。通常、水性混合物の特性は、水性混合物中の触媒の溶解性に影響を及ぼしうる。例えば、処理すべき水性混合物のpHレベルが、水性混合物中の特定の触媒の溶解性に影響を及ぼしうる。
【0023】
一部の実施形態では、触媒を、水性混合物の特性に基づいて選択することができる。図1に示されているとおり、湿式酸化系は、処理すべき水性混合物の特性を検出するように構成された感知装置50を含んでいてよい。一部の実施形態では、感知装置50は、水性混合物のpHレベルを検出するように構成されたpH感知装置であってよく、湿式酸化プロセスのための触媒を、水性混合物の検出されたpHレベルに基づき選択することができる。
【0024】
様々な触媒についての溶解性とpHレベルとの関係は、一般に当業者に知られている。電位−pH平衡ダイアグラムが、様々な触媒−水系について構築されていて、その参照方法を熟知している当業者であれば、容易に利用することができる。例えば、Pourbaix,M.M.、The Atlas of Electrochemical Equilibria in Aqueous Solutions、National Association of Corrosion Engineers:Texas 1974から入手可能なプールベダイアグラムと一般に称されるものの再現を、それぞれ、銅、バナジウム及び鉄に関して図4〜6に示す。
【0025】
1つ又は複数の実施形態では、検出されたpHレベルで溶解可能な触媒を選択して、湿式酸化プロセスを強化する。従って、図4を参照すると、1つ又は複数の実施形態では、pH感知装置50により検出された水性混合物のpHレベルが、約2未満又は約13超である場合には、銅を含有してなる触媒を、触媒源40のために選択することができる。同様に、図5を参照すると、検出されたpHレベルが約4.5超である場合には、バナジウムを含有してなる触媒を選択することができる。図6を参照すると、検出されたpHレベルが約4未満である場合には、鉄を含有してなる触媒を選択することができる。本明細書で例示されたもの以外の他の触媒を利用することができる。
【0026】
他の実施形態では、触媒を選択し、水性混合物の1つ又は複数の特性を操作して、選択された触媒の溶解可能形態での存在を促進して、湿式酸化プロセスを強化することができる。例えば、水性混合物のpHレベルを感知装置50により検出し、調整して、選択された触媒を水性混合物に溶かすことができる。pH調整剤は、湿式酸化系内の任意の地点で水性混合物に加えることができるが、好ましくは、触媒が、酸化反応の間じゅう、水性混合物内で溶解可能であるように、添加する。一部の実施形態では、pH調整剤の源60は、図1に示されているとおり、水性混合物の源10に流体接続されていてよい。pH調整剤の源60は、通常、水性混合物のpHレベルを望ましい値又は範囲に調整することができる、酸又は塩基等の、任意の物質又は化合物を包含してよい。例えば、アルカリ金属水酸化物を、水性混合物のpHレベルを調整するために利用することができる。一実施形態では、アンモニアを使用して、触媒を溶かすことができる。
【0027】
この場合にも、様々な触媒についての可溶性とpHレベルとの関係は、当業者に、通常、知られている。前記で検討したとおり、プールベダイアグラムから、選択された触媒が溶解可能となる所望のpH範囲を決定するための情報を得ることができる。図4を参照すると、選択された触媒が銅を含んでなる場合には、水性混合物のpHレベルを、約2未満又は約13超に調整することができる。同様に、図5を参照すると、選択された触媒がバナジウムを含んでなる場合には、水性混合物のpHレベルを約4.5超に調整することができる。鉄を含んでなる触媒が選択される場合には、図6を参照すると、水性混合物のpHレベルを、約4未満のレベルに調整することができる。
【0028】
一部の実施形態では、湿式酸化系は、弁及びポンプを作動させる等の−これらに限られないが−系の又は系の成分の操作パラメーターの少なくとも1つを調整又は調節するための制御装置70を含んでいてもよい。制御装置70は、図1に示されているとおり、感知装置50と電子的に連絡していてよい。制御装置70は、通常、選択された触媒について所定のpH溶解性範囲外のpHレベルを登録しているpH感知装置50に応答して、水性混合物のpHレベルを調整する制御信号を生じるように構成されていてよい。例えば、制御装置70は、pH調整剤源60と関連している1つ又は複数の弁に制御信号を与えて、pH調整剤を水性混合物源10に加えることができる。
【0029】
制御装置70は、典型的には、湿式酸化系の構成要素に入力信号を送り又は構成要素から出力信号を受け取る、プログラマブルロジック制御装置(PLC)又は分散制御システム等の、マイクロプロセッサに基づく装置である。通信網により、任意の感知装置又は信号発生装置を、制御装置70又は関連コンピューター系からかなりの距離に、位置させることができる一方で、それらの間でデータを送ることもできる。このような通信機構を、無線プロトコルを利用するものを始めとする−これらに限られないが−任意の適切な技術を利用して実行することができる。
【0030】
酸化ユニットの典型的な操作に関して前記で検討したとおり、酸化反応器の下流で、酸化された水性混合物から液体流出物を分離する。一部の実施形態では、分離プロセスにより、触媒を液体流出物から回収することができる。例えば、一部の実施形態では、触媒を、流出液流れから沈殿させることができる。一実施形態では、結晶器を使用して、触媒を回収することができる。次いで触媒を、湿式酸化系に再循環することができる。
【0031】
図2は、触媒循環系を包含する湿式酸化系の他の実施形態を図示している。この実施形態では、プロセス流れは、管202を通して系200に入ることができる。系200で利用することができる触媒には、周期表のV、VI、VII及びVIII族の任意の遷移金属が含まれる。一部の実施形態では、例えば、触媒は、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mo、Ag、又はこれらの合金若しくは混合物であってよい。遷移金属は元素であってもよく金属塩等の化合物で存在してもよい。一実施形態では、遷移金属触媒は、バナジウムである。他の実施形態では、遷移金属触媒は、鉄である。更に他の実施形態では、遷移金属触媒は、銅である。
【0032】
1つ又は複数の実施形態では、触媒は、水性混合物に可溶であって湿式酸化プロセスを強化してもよい。通常、水性混合物の特性は、水性混合物中の触媒の溶解性に影響を及ぼしうる。例えば、処理すべき水性混合物のpHレベルが、水性混合物中の特別の触媒の溶解性に影響を及ぼしうる。
【0033】
1つ又は複数の実施形態では、入ってくる水性混合物のpHレベルで溶解可能である触媒を選択して、湿式酸化プロセスを強化することができる。図1のpH感知装置50と同様のpH感知装置を、図2の湿式酸化系200の入力に導入して、入ってくる水性混合物のpHの示度を得ることができる。従って、図4を参照すると、水性混合物のpHレベルが約2未満又は約13超である場合、1つ又は複数の実施形態では、銅を含有してなる触媒を選択することができる。同様に、図5を参照すると、水性混合物のpHレベルが約4.5超である場合には、バナジウムを含有してなる触媒を選択することができる。図6を参照すると、水性混合物のpHレベルが約4未満である場合には、鉄を含有してなる触媒を選択することができる。本明細書に例示されているもの以外の他の触媒も利用することができる。
【0034】
図2を参照すると、触媒は、系の入口でプロセス流れに添加してもよく、下記で更に検討する再循環触媒を含む水性混合物を通してもよい管224を通って管202を流れる間に添加してもよい。新鮮な触媒を、また、再循環触媒と共に添加することもできる。
【0035】
他の実施形態では、触媒又は触媒の一部は、処理すべきプロセス流れに既に存在していてもよい。酸化ユニットに供給される水性混合物は、触媒材料を含有していてもよい。例えば、遷移金属が、接触湿式酸化系により処理すべき廃棄物流れ中に存在していてもよい。水性スラリー、例えば揮発性有機炭素を含有する水性スラリー、は、触媒として作用しうる金属を含有することがある。例えば、水性混合物は、ガス化副生成物のスラリーであってよい。
【0036】
プロセス流れを、反応器206に入る前に、熱交換機204に通過させて、所与の滞留時間の間、所望の温度に加熱することができる。処理が完了した後に、処理されたプロセス流れを、反応器206から管208を通して出す。次いで、処理されたプロセス流れを、熱交換機210により冷却してもよく、これは、一部の実施形態では、熱交換機204と同じ熱交換機であってよい。処理されたプロセス流れを、pH調整剤の源212からの酸又はアルカリ化合物を添加することにより、pH調整することができる。pH調整剤がpH調整剤の源212から添加されている間、酸化された水性混合物のpHを監視し、pHが所定の点に達したときにpH調整を中断する信号を与えるように、pH感知装置(図示せず)をpH調整剤の源212と連絡させて設けてもよい。代わりの実施形態では、pH感知装置(図示せず)を、pH調整剤の源212の下流に位置させ、図1に示されている制御装置70等のpH制御装置(図示せず)に接続することができるが、ここで、この制御装置は、pH調整剤の源212に付随している輸送ポンプ及び/又は弁及び/又は配管を通って、pH調整剤の源から酸化された水性混合物に入るpH調整剤の流れを制御して、所定の範囲内にpHを維持するように構成されている。一部の実施形態では、pH調整剤の源212からのpH調整剤の添加を手動で制御することができる。一部の実施形態では、図2に示されている気液分離器214の上流に代えて、気液分離器214の下流で管218にpH調整剤を導入するように、pH調整剤の源212を構成することができる。他の実施形態では、清澄機220にPH調整剤を直接導入するように、pH調整剤の源212を構成することができる。
【0037】
例えば、銅が触媒として使用される場合、可溶性水酸化銅を含有する処理されたプロセス流れを、約80℃に冷却し、気液分離器214の上流若しくは下流で又は清澄機220内で、水酸化銅の溶解性が低い(25℃で<1ppm)条件である約6から約12の範囲にpH調整する。一部の実施形態では、pHを、約8から約9の範囲に調整してもよく、一部の実施形態では、pHを約9に調整してもよい。管216を通して排ガスを放出する気液分離器214を通過した後に、処理されたプロセス流れを、管218を通して、清澄機220に輸送することができ、そこで、酸素の存在下、80℃、約6から約12のpHで、少なくとも一部の水酸化銅を、酸化銅粒子に変換する。一部の実施形態では、清澄機中で、約8から約9の範囲のpHで、水酸化銅を酸化銅粒子に変換し、一部の実施形態では、清澄機中で、約9のpHで、水酸化銅を酸化銅粒子に変換する。酸化銅粒子は、清澄機220中で沈殿し、濃縮流出スラリーの少なくとも一部を除去し、管224を通して、系200の入口に再循環させ、一方で、実質的に銅を含有しない酸化された流出液を、管222を通して除去することができる。管224(図示せず)及び/又はpH制御装置(図示せず)と連絡しているpH感知装置からの信号に応答して、pH調整剤の源226からの酸又はアルカリ化合物を添加することにより、再循環される銅を含有する流出液のpHを、望むように、調整することができる。pH調整剤を、再循環される銅を含有する流出液に添加して、銅触媒が溶解可能であるレベルにpHを調整することができる。例えば、銅は、通常、約6未満又は約12超のpHレベルで可溶であるので、再循環される銅を含有する流出液が約6から約12のpHを有する場合には、酸を再循環される銅を含有する流出液に添加してpHレベルを約6未満に低下させ又は苛性化合物を添加して再循環される銅を含有する流出液のpHレベルを約12超に上昇させ、少なくとも一部の銅触媒を溶解させることができる。一部の実施形態では、少なくとも一部の再循環される触媒を、触媒の源40に向けることもできる。
【0038】
一部の用途では、系をより効率的にし、系の運転中に使用される化学薬品の量を低減するために、2ステップ触媒沈殿プロセスを使用することが有利であることもある。図3は、2ステップ触媒沈殿プロセスを利用する湿式空気酸化系の実施形態を図示している。図3に示されているとおり、2ステップ触媒沈殿プロセスを伴う系300は、一組の清澄機228及び230を利用することができる。一実施形態では、pH調整剤の追加の源212が、気液分離器214の上流に配置されていてよい。系300の一部の実施形態では、pH調整剤の源並びに関連輸送ポンプ及び/又は弁及び/又は配管が存在してもよく、これらは、気液分離器214の上流又は下流の位置に及び/又は清澄機228、清澄機230若しくはその両方へ、pH調整剤を輸送するように、構成される。複数のpH感知装置(図示せず)を、系300の任意の構成要素の上流又は下流の位置に位置させ、図1に示されている制御装置70等のpH制御装置(図示せず)に結合させることができるが、このpH制御装置は、系の至るところに位置しているpH調整剤の1つ又は複数の源、例えばpH調整剤の源234、からのpH調整剤の流れを、pH調整剤の1つ又は複数の源と関連している輸送ポンプ及び/又は弁及び/又は配管を通して、制御するように構成及び配置されている。
【0039】
図3の系300では、粗い清澄化が、第1の清澄機228で起こりうる。第1清澄化ステップからの第1分離溶液の少なくとも一部を、管236及び224を通して、更なる処理のための希釈水及び触媒供給原料として、系の入口に戻すことができる。第1清澄化ステップからの上澄みの少なくとも一部を、管232を通して輸送し、第2清澄機ステップにおいて、pH調整剤の源234からの酸又はアルカリ化合物を添加することによりpHを調整した後に、清澄機230中で沈殿させる。管232において又は清澄機230において又はその両方において、上澄みの一部のpHを調整することができるように、pH調整剤の源234及び関連輸送ポンプ及び/又は弁及び/又は配管を配置及び配列することができる。図2又は図3による系の別の実施形態では、いずれかの又は全ての清澄機を、酸化された水性混合物から沈殿触媒を分離することができる任意の形態の分離器に、置き換えることができる。濃縮された固化触媒を含有する溶液を、管238及び224を通して系300の入口に戻し、入ってくるプロセス流れと混合し、一方で、触媒を実質的に含有しない酸化された流出液を、管222を通して抜き出すことができる。一部の実施形態では、再循環触媒の少なくとも一部を、触媒40の源に向けることができる。2ステップ系の利点は、触媒を沈殿させるために、湿式酸化ユニットの流出液の少量のみをpH調整すればよいことである。希釈水のために再循環させることができる流出液の一部は、その中に可溶性触媒を残留させていてもよく、それが望ましい。pH調整剤の源226を利用して、前記銅触媒に関する例について検討したのと同様の方法で、酸又は苛性化合物を添加することにより、管224を通して輸送されてもよい触媒を溶解することができる。湿式酸化ユニットの再循環流出液のpHは、また、湿式空気酸化系において触媒を溶解可能に維持するのに必要なpHに非常に近いものとなるであろう。
【0040】
図2及び図3に示されている系では、酸化された水性混合物のpHを調整するだけで、触媒を沈殿させることができる。一部の実施形態では、例えば、触媒を沈殿させるための電気脱イオン方法等により、化学薬品を何ら加えることなく、pH調整を達成することができる。他の実施形態では、例えば硫化ナトリウム又は硫化水素のようなスルフィドイオンの源等の、追加の化学薬品を、酸化された水性混合物に添加して、反応速度を早めるか、さもなければ、触媒の沈殿を促進することができる。
【0041】
1つ又は複数の実施形態では、湿式酸化された液体流出流を、図1に示されているように酸化反応器容器24の下流に接続されている第2処理ユニット80により処理して、存在する残留している望ましくない成分を除去し、及び/又は、それが必要であるか望ましい場合には、精製することができる。第2処理ユニット80は、化学的スクラバ、生物学的スクラバ、吸着媒体床又は他の単位操作であってよい。一部の実施形態では、湿式酸化流出液のオゾン及び紫外光による酸化処理を始めとする高度酸化ステップを行なうことができる。このような高度酸化処理は、典型的には、容器又はタンク中で、周囲温度及び圧力で又はその付近で実施する。第2処理ユニット80の大きさを調整して、所望の程度の精製と調和する表面積を得ることができる。別法では、液体流出物も、また、更なる処理のために反応器容器24に再循環させることができる。排ガスの処理も、また、その組成及び大気に放出するための要件に応じて、下流排ガス処理ユニットで必要となることがある。
【0042】
標的である臭気成分の濃度を検出するための感知装置を、系制御を容易にするために湿式酸化ユニット24の上流及び/又は下流に備え付けてもよい。例えば、確立された環境規制に適合させるために、感知装置を導管26に配置し制御装置70と連絡させて、液体流出物流れを二次処理ユニット80に振り向けるべきかどうかを決定し及び/又は制御することができる。
【0043】
数多くの変化、変更及び改善を、図示された系及びプロセスに加えることができることを、理解すべきである。例えば、1つ又は複数の湿式酸化系を、複数のプロセス流れの源に、接続することができる。一部の実施形態では、湿式酸化系は、系の他の特性又は操作条件を測定するための追加の感知装置を包含することができる。例えば、系は、系の監視を容易にするために、温度、圧力低下及び流速のための感知装置を、様々な地点に、包含することができる。1つ又は複数の実施形態では、触媒を、湿式酸化プロセスの間に補充することができる。
【0044】
本発明は、本発明の技術を実施するために、1つ又は複数の系又は構成要素を改造する既存の設備の変更を企図している。既存の湿式酸化系を、本明細書で例示的に検討された1つ又は複数の実施形態に従って、少なくとも一部の既存の装備を利用して、変更することができる。例えば、1つ又は複数のpH感知装置を装備し、本明細書で示された1つ又は複数の実施形態に従った制御装置を既存の湿式酸化系で実施して、触媒溶解性を促進し又は触媒再循環を容易にすることができる。
【0045】
本発明のこれらの実施形態及び他の実施形態の機能及び利点は、次の実施例からより十分に理解されるであろう。これらの実施例は、その本質上、例示的なものであることを意図しており、本発明の範囲を限定するものと考えられるべきではない。次の実施例では、化合物を湿式酸化により処理して、その結合の分解をもたらす。
【0046】
実施例
ベンチスケール湿式酸化(オートクレーブ)反応器
次の実施例では、ベンチスケール湿式酸化試験を、実験室オートクレーブで行なった。オートクレーブは、バッチ反応器であることにおいて、フルスケール系とは異なり、フルスケールユニットは、連続フロー反応器であってよい。反応期間に亘って十分な酸素を供給するために、高い充填空気がオートクレーブに添加されるべきであるので、オートクレーブは、典型的には、フルスケールユニットよりも高い圧力で、操作される。オートクレーブ試験の結果から、湿式酸化技術の性能の示度が得られ、これは、湿式酸化プロセスのための操作条件をスクリーニングするために有用である。
【0047】
使用されたオートクレーブは、チタン、合金600及びニッケル200から製作されていた。オートクレーブ構造材料の選択は、廃水供給材料の組成に基づいた。使用するために選択されたオートクレーブは、それぞれ、500又は750mlの全体容量を有する。
【0048】
オートクレーブに、廃水及び酸化後に過剰な残留酸素(約5%)をもたらすのに十分な圧縮空気を充填した。充填されたオートクレーブを、ヒーター/シェーカー機構に入れ、所望の温度(280℃から350℃)に加熱し、約60分から約360分に亘る所望の時間、温度を保持した。
【0049】
加熱及び反応期間の間、オートクレーブ温度及び圧力を、計算機制御データ取得系により監視した。酸化の直後に、オートクレーブをヒーター/シェーカー機構から外し、水道水を使用して室温に冷却した。冷却した後に、オートクレーブヘッドスペース中の排ガスの圧力及び体積を測定した。排ガスの試料を永久気体に関して分析した。排ガスの分析に続いて、オートクレーブを圧抜きし、開放した。酸化された流出液をオートクレーブから除去し、貯蔵容器に入れた。一部の流出液を分析に供し、残りの試料を後酸化処理のために使用した。分析作業及び酸化後試験作業に十分な量を生じさせるために、各条件について複数のオートクレーブ試験を行なった。
(実施例1)
【0050】
均一系銅触媒を利用する湿式酸化プロセス
ベンチスケール湿式酸化試験を280℃で、温度で60分間、様々なpHレベル(pH=2.2、8.1、11.5、12.5及び13.5)で行なって、酢酸の酸化に対する銅触媒の影響を決定した。データを下表1に示す。
【0051】
表1.銅触媒を使用した酢酸溶液の湿式酸化(WO)の結果
【表1】

【0052】
銅触媒は、2.2及び13.5のpHレベルで最も高い溶解性を示した。酸化された流出液のpHが2.2及び13.5であるとき、それぞれ、約98%及び88%の酢酸分解が達成された。これは、また、最も高い比率のCOD分解(96.5%、90%)及びTOC分解(96.4%、88.1%)に対応した。対照的に、溶液のpHが、銅が溶解可能でないpH範囲(pH=8.1、11.5及び12.5)に維持されると、約17%から37%の酢酸分解しか達成されなかった。銅が溶解可能でない場合には、同様に、より低い比率のCOD分解及びTOC分解が観察された。データは、銅溶解性が、酢酸の酸化を実質的に増加させることを示した。
(実施例2)
【0053】
均一系バナジウム触媒を利用する湿式酸化プロセス
ベンチスケール湿式酸化試験を、均一系触媒としてのバナジウムを2種の異なるpHレベルで使用して、酢酸含有水溶液について行なった。結果を、下表2に示す。
【0054】
表2.バナジウム触媒を使用した酢酸溶液の湿式酸化の結果
【表2】

【0055】
酸化条件下に、バナジウムは、約4.5を超えるpHレベルで溶解可能である。結果は、溶液のpHが2.6でありバナジウムがほぼ不溶であると、2%のTOC分解しか達成されなかったことを示している。2.66のpHレベルでも、また、低い比率のTOC分解が生じた。溶液のpHが5.3まで高められて(バナジウムを溶解すると)、同じ触媒用量、温度及び温度での時間が維持されると、TOC分解は、17.3%まで上昇した。溶液のpHを2.66から5.3に上昇させると、全有機炭素の分解が約64%上昇した。データは、バナジウム溶解性が、酢酸の酸化を実質的に上昇させたことを示した。
(実施例3)
【0056】
均一系鉄触媒を利用する湿式酸化プロセス
ベンチスケール湿式酸化試験を、2種の異なるpHレベルのシュウ酸溶液について、230℃で150分間、行なった。データを、下表3に示す。
【0057】
表3.鉄触媒を使用したシュウ酸溶液の湿式酸化の結果
【表3】

【0058】
酸化条件下で、鉄は、約4のpHレベル未満で溶解可能である。結果は、鉄触媒をそれが不溶性である高いpHレベル(pH=13.6及び13.7)で使用した場合、酸化は強化されなかったことを示した。溶液のpHが、鉄が溶解可能である範囲(pH=2.6及び1.7)にあった場合、シュウ酸の分解が、それぞれ、約95%及び約100%に上昇した。データは、鉄の溶解性がシュウ酸の酸化を実質的に上昇させたことを示した。
(実施例4)
【0059】
均一系鉄触媒を利用するクロロフェノールの湿式酸化
クロロフェノールの鉄触媒酸化及び非触媒酸化の両方を、150℃で、この温度での90分間で行なった。データを下表4に示す。
【0060】
表4.鉄触媒を使用したクロロフェノールの湿式酸化の結果
【表4】

【0061】
これらの試験は、2.9から2.3へpHレベルを低下させることにより鉄触媒の溶解性を上昇させると、TOC分解が約7%から約57%へ上昇することを示した。同様に、pHレベルの低下は、約7.4%から約68.1%へとCOD分解を上昇させた。データは、pHレベルの僅かな調整でも、接触湿式酸化プロセスの効率をかなり上昇させることを示した。
(実施例5)
【0062】
酸化銅再循環試験
銅触媒を回収するためのpH調整を評価するための比較試験を行なった。2セットの試験を行なった。第1セットの試験では、pH非調整の苛性廃棄ナフテン酸を200℃で、120分の滞留時間及び酸化銅として添加された銅500mg/Lを用いて酸化した。第2セットの試験は、pH調整された苛性廃棄ナフテン酸で、200℃で、滞留時間120分及び酸化銅として添加された銅500mg/Lを用いて行なった。
【0063】
各セットの試験を、下記と同じ条件で実施した。苛性廃棄ナフテン酸の試料を酸化させて、酸化された流出液を製造した。酸化された流出液を、水酸化ナトリウムを使用して約8.5にpH調整し、遠心分離した。一部の上澄みを除去し、酸化銅を含有する残存流出液を、希釈水として再循環させ、後続の酸化のために新鮮な供給物と混合した。各ランを、複数回反復し、その際、当初供給の酸化により、酸化銅を含有する第1再循環流出液が得られ、これを、新鮮な供給物と混合し、酸化させると、酸化銅を含有する第2再循環流出液が得られた。各再循環物を新鮮な供給物と混合し、表5及び6に示されている循環回数、酸化し後続の再循環物を形成した。
【0064】
各再循環反復について、COD及びTOC分解を、2種の異なる方法で、算出した。第1の方法は、オートクレーブに入れられた供給混合物に基づく。先行するランからの酸化された流出液を受け入れたままの苛性廃棄物を希釈するために使用するので、供給CODは、酸化された流出液に対する新鮮な供給物の比を使用して算出した。第2の方法は、受け入れたままの供給に基づき、「COD分解−全体」として列挙した。酸化された流出液を希釈のためにWAO系に戻すので、全体CODを低下させることとなる追加の水を系に添加しなかった。
【0065】
pH非調整及びpH調整再循環についての結果を、それぞれ、表5及び6に報告する。
【0066】
【表5】

【0067】
表5に示されているとおり、酸化された流出液のpHを約8.5に調整し、続いて、遠心分離で沈殿させると、可溶性銅22.9mg/Lが、再循環1で回収され、次いで、これを、更なる酸化のために新鮮な供給物と混合した。可溶性銅を含有する再循環された流出液のpHを、新鮮な供給物と混合する前に、酸又は塩基で更に調整することはなかった。
【0068】
各再循環で回収された可溶性銅の量は、各反復で上昇し、再循環3では、55.5mg/Lとなった。3回の再循環反復の後に、酸化/再循環系は、51.8%のオートクレーブCOD分解効率で、定常状態を達成し始めたが、これは、88.1%の全体COD分解効率をもたらす。オートクレーブTOC分解効率は、各反復で8.8%から38.3%まで上昇したが、再循環3では、81.2%の全体TOC分解効率であった。これらの結果は、銅触媒を含有する酸化された流出液のpH調整により、可溶性銅を含有する再循環流出液が生成され、これは、酸化系に戻し供給することができ、このことにより、酸化系に加えられるべき新鮮な触媒の量を低減することができることを示している。
【0069】
【表6】

【0070】
表6に示されているとおり、酸化された流出液のpHを約8.5に調整し、続いて、遠心分離で沈殿させると、再循環1では、可溶性銅152mg/Lが回収され、次いでこれを、更なる酸化のために新鮮な供給物と混合した。新鮮な供給物と合わせる前に、各再循環物1〜5を、示されている酸でpH調整した。
【0071】
各再循環で回収された可溶性銅の量は、再循環1から再循環3で、152mg/Lから354mg/Lへと上昇した。酸化された流出液を約8.5ではなく8にpH調整し、続いて60℃で沈殿させた結果である再循環4は、14.7mg/Lのかなり低い可溶性銅を示したが、酸化された流出液を再び約8.5にpH調整して生じた後続の再循環5は再び、289mg/Lへの可溶性銅の著しい上昇を示した。
【0072】
表6に示されているとおり、供給物への酸の添加及び引き続く各再循環1〜5への酸の添加により、pH調整が再循環物に対して行われない場合よりも早く、系は定常状態に達した。pH調整された供給物で行われた再循環試験は、定常状態条件が、2再循環反復の後に達成されることを示した。全体TOC分解効率は、2循環の後に90.2%から89.6%で安定した。同様に、全体COD分解効率は、2循環の後に約94%で安定した。
【0073】
同様に、供給物に酸を加え、各再循環1〜5に酸を後で加えると、pH調整を再循環に対して行なわない場合よりも、高いTOC及びCOD分解効率が生じた。表6に示されているとおり、酸を各再循環に加えると、全体TOC分解効率は約90%に上昇し、これに対して、酸を各再循環に加えないと、分解効率は約81%であった。同様に、各再循環に酸を加えると、全体COD分解効率は約88%に上昇し、これに対して、各再循環に酸を加えないと、約72%であった。再循環に硫酸を添加すると、再循環のpHは、銅触媒がより可溶性である範囲にし、この可溶性銅の高いレベルを、後続の酸化サイクルにおいて分解効率を上昇させるために利用することができた。
【0074】
再循環のpHを調整し及び調整しない両方の試験ランに関して、酸化された流出液及び触媒をWAOユニットに再循環させる他の利点は、それにより、酸化し難い成分の滞留時間が長くなることである。滞留時間を、添加された希釈水の量に比例して延長した。即ち、必要な希釈水が多いほど、滞留時間は長くなった。再循環試験からの結果は、この増加した滞留時間は、酸化に対して当初は抵抗する一部の成分の分解に有効であることを示した。受け入れたままの苛性化合物のCODを260,000mg/Lから約40,000mg/Lに低下させるために、オートクレーブ中で大量の希釈を使用する必要があったので、酸化されにくい成分での滞留時間も、また、非常に長かった。
【0075】
本明細書で使用される場合、「複数」という用語は、2個以上のアイテム又は成分を指している。「含有してなる」、「包含する」、「持つ」、「有する」、「含有する」及び「伴う」という用語は、詳細な説明、請求項及びその他のいずれにおいても、オープンエンドな用語であり、即ち、「〜を包含し、これらに限られない」ことを意味している。従って、このような用語の使用は、その後に列挙されている事項及びその等価物、更に追加の事項を包み込むことを意図している。移行的語句「からなる」及び「から本質的になる」のみが、請求項に関して、それぞれ、クローズド又はセミクローズドな移行的語句である。
【0076】
請求項要素を修飾するための、請求項における「第1」、「第2」、「第3」等の序数詞の使用は、それ自体、他に対する一請求項要素の任意の優先性、優位性若しくは順序又は方法の実施が行われる時間的な順序を示すものではなく、単に、ある種の名称を有する請求項の一つの要素を、(順番を示す用語を除いて)同じ名称を有する他の要素から区別して、請求項要素を区別するための表示として使用されている。
【0077】
当業者であれば、本明細書に記載のパラメーター及び配置は例示的であること、及び実際のパラメーター及び/又は配置は、本発明の系及び技術が使用される特定の用途に左右されることを理解するであろう。当業者であれば、また、日常的な実験を行なうだけで、本発明の特定の実施形態と等価のものを認識するか、確認することができるであろう。従って、本明細書に記載の実施形態は、単なる例として示されていること、そして、添付の請求項及びそれと等価なものの範囲内で、本発明を、特別に記載されたものとは別の方法で実施することができることを理解するであろう。
【符号の説明】
【0078】
24 湿式酸化ユニット
10 水性混合物の源
40 触媒の源
50 pH感知装置
70 pH制御装置
32 分離器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理すべき少なくとも1種の望ましくない成分を含有する水性混合物を供給すること;
前記水性混合物を、高められた温度で過圧下に、触媒及び酸化剤と接触させて、前記少なくとも1種の望ましくない成分を処理して、酸化された水性混合物を形成すること;
前記酸化された水性混合物のpHレベルを調整することにより、前記触媒の少なくとも一部を沈殿させて、沈殿触媒を形成すること;
前記沈殿触媒の少なくとも一部を再循環して、前記水性混合物と接触させること;
を含んでなる接触湿式酸化プロセス。
【請求項2】
前記水性混合物の温度を高める前に前記水性混合物を前記触媒に接触させる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記水性混合物を前記過圧にする前に前記水性混合物を前記触媒に接触させる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記水性混合物のpHレベルを監視することを更に含んでなる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記水性混合物を連続プロセスで酸化する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記触媒を補充することを更に含んでなる、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記水性混合物を前記触媒に接触させることが、前記水性混合物と酸素含有ガスと接触させることを含んでなる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記触媒の少なくとも一部を沈殿させることが、前記酸化された水性混合物の少なくとも一部のpHを上昇させることを含んでなる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記触媒の少なくとも一部を沈殿させることが、前記酸化された水性混合物の少なくとも一部のpHを低下させることを含んでなる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
前記触媒が銅を含有してなるものである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
前記沈殿触媒が、酸化銅を含有してなるものである、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記水性混合物の少なくとも一部のpHを調整することが、前記水性混合物の少なくとも一部のpHを約6から約12の範囲内に調整することを含んでなる、請求項10に記載のプロセス。
【請求項13】
前記水性混合物の少なくとも一部のpHを調整することが、前記水性混合物の少なくとも一部のpHを約8から約9の範囲内に調整することを含んでなる、請求項10に記載のプロセス。
【請求項14】
前記沈殿触媒の少なくとも一部のpHを調整することを更に含んでなる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項15】
前記沈殿触媒の少なくとも一部のpHの調整が、前記沈殿触媒の少なくとも一部が溶解するレベルに前記pHを調整することを含んでなる、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記酸化された水性混合物から前記触媒の少なくとも一部を沈殿させる前に、前記酸化された水性混合物を清澄化し、それにより、第1分離溶液を形成することを更に含んでなる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項17】
前記第1分離溶液を、少なくとも1種の処理すべき望ましくない成分を含有する前記水性混合物と接触させることを更に含んでなる、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
実質的に全ての前記触媒を回収することを更に含んでなる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項19】
前記少なくとも1種の望ましくない成分を処理するのに十分な期間、前記水性混合物を酸化する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項20】
前記過圧が、約6気圧から約200気圧である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項21】
前記高められた温度が、約150℃からほぼ水の臨界温度までである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項22】
前記高められた温度が水の臨界温度より高いものである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項23】
湿式酸化ユニット;
前記湿式酸化ユニットに流体接続されていて、少なくとも1種の望ましくない成分を含有してなる水性混合物の源;
前記湿式酸化ユニットに流体接続されていて、前記水性混合物の前記源と前記湿式酸化ユニットとの間に配置されている、前記水性混合物に溶解可能な触媒の源;
酸化された水性混合物のpHレベルを、前記湿式酸化ユニットの下流で、検出するように構成されているpH感知装置;
前記pH感知装置と連絡しており、前記触媒についての所定のpH溶解性範囲内のpHレベルを登録している前記pH感知装置に応答して、前記酸化された水性混合物のpHレベルを、前記触媒についての所定のpH溶解性範囲外のレベルに調整する制御信号を生じるように構成されている、pH制御装置;
前記湿式酸化ユニット下流に配置され且つこれと流体接続していて、前記pH制御装置の下流に配置されている、前記触媒の少なくとも一部を沈殿させるように構成されている分離器;並びに
前記分離器の出口並びに前記触媒の源の少なくとも1個の入口及び前記湿式酸化系への入口とに、流体接続している再循環管路を含んでなる、接触湿式酸化系。
【請求項24】
前記湿式酸化ユニットの下流に接続されている第2処理ユニットを更に含んでなる、請求項23に記載の系。
【請求項25】
前記分離器及び前記湿式酸化ユニットの少なくともいずれかの下流に位置し且つそれに流体接続しているアルカリ化合物の源を更に含んでなる、請求項23に記載の系。
【請求項26】
前記分離器及び前記湿式酸化ユニットの少なくともいずれかの下流に位置し且つそれに流体接続している酸の源を更に含んでなる、請求項23に記載の系。
【請求項27】
前記触媒が銅を含有してなるものである、請求項23に記載の系。
【請求項28】
前記pH制御装置と連絡していて且つ前記分離器中の酸化された水性混合物のpHレベルを検出するように構成されている、第2pH感知装置を更に含んでなり、ここで、前記pH制御装置は、更に、前記分離器中の前記酸化された水性混合物のpHレベルを約6から約12の範囲内に調整する制御信号を生じるように構成されている、請求項27に記載の系。
【請求項29】
前記pH制御装置が、更に、前記分離器中の前記酸化された水性混合物のpHレベルを約8から約9の範囲に調整する制御信号を生じるように構成されている、請求項28に記載の系。
【請求項30】
前記pH制御装置が、更に、前記分離器中の前記酸化された水性混合物のpHレベルを約8.5に調整する制御信号を生じるように構成されている、請求項29に記載の系。
【請求項31】
前記分離器の上流にあり且つそれと流体接続されていて、前記酸化された水性混合物を清澄化して廃棄物を形成するように構成されている、清澄機を更に含んでなる、請求項23に記載の系。
【請求項32】
前記廃棄物の少なくとも一部を、前記湿式酸化ユニットの上流で且つそれと流体連絡している系中の位置に輸送し、前記廃棄物を、少なくとも1種の望ましくない成分を含む前記水性混合物と、接触させるように構成されている導管を更に含んでなる、請求項31に記載の系。
【請求項33】
実質的に全ての前記触媒が回収される、請求項23に記載の系。
【請求項34】
前記再循環管路と流体接続しているpH調整剤の源を更に包含する、請求項23に記載の系。
【請求項35】
前記pH制御装置と連絡していて且つ前記再循環管路中の水性混合物のpHレベルを検出するように構成されている第3pH感知装置を更に含んでなり、ここで、前記pH制御装置は、更に、前記触媒についての所定のpH溶解性範囲外のpHレベルを登録している前記第3pH感知装置に応答して、前記再循環管路中の前記水性混合物のpHレベルを調整する制御信号を生じるように、構成されている、請求項34に記載の系。
【請求項36】
pH感知装置と連絡している制御装置を有するpH監視系を提供し、ここで、前記制御装置は、利用される触媒について所定のpH溶解性範囲内のpHレベルを登録している前記pH感知装置に応答して、水性混合物のpHレベルを調整する制御信号を生じるように構成されている、
接触湿式酸化プロセスで使用された触媒の再循環を促進する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−516446(P2010−516446A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546444(P2009−546444)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/000784
【国際公開番号】WO2008/091578
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(506355361)シーメンス ウォーター テクノロジース コーポレイション (18)
【Fターム(参考)】