説明

冗長化電源監視システム

【課題】コンピュータシステムにおいては、高可用性、高信頼性が求められ、サーバを構成する部品や無停電電源装置、分電盤、施設への電力供給も冗長化する場合がある。この場合、停電で電力供給ができなくなる直前にオペレーティングシステムをシャットダウンする処理が実装されているが、他方の電源装置への電力供給がされている場合でもオペレーティングシステムのシャットダウン処理が実行される課題がある。
【解決手段】冗長化電源監視システムは、サーバの電源装置に入力される電源供給情報を電源装置ごとに電源情報読取部でデータ管理し、電源監視制御部でモニタリングし、電源供給されていない電源装置部位の判別を行う。判別部位が無停電電源装置の入力部の場合は、オペレーティングシステムのシャットダウン処理を行うか、他方の電源装置の電源供給情報から継続的に稼働させるか制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータシステムにおけるサーバで冗長化された電源装置へ無停電電源装置(UPS)を用いて電力供給を行った場合の電源を監視する技術である。
【背景技術】
【0002】
コンピュータシステムでは、システムを構成するサーバの信頼性や可用性が高いことが求められている。一般的には、サーバ内のCPUやメモリ装置、主記憶装置などの部品を冗長化構成することに加えて、電源装置の冗長化やサーバを設置する施設の停電を考慮して、サーバの電源装置に無停電電源装置(UPS)を接続して電源供給する方法が利用されている。
【0003】
ところで、サーバの電源装置を冗長化し、無停電電源装置(UPS)を利用した場合に無停電電源装置(UPS)からの電源供給を常時監視し、一時的な停電の場合は、無停電電源装置(UPS)内のバッテリにより電源供給することで、サーバ内のオペレーティングシステムを始め、コンピュータシステム全体を停止させないように制御を行っている。例えば、特開2006−254688号公報には、前記の無停電電源装置(UPS)の電源供給を常時監視することで、停電が一定時間経過し、バッテリによるサーバへの電力供給ができなくなる前にサーバのオペレーティングシステムを安全停止(シャットダウン)する制御方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−254688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コンピュータシステムにおいては、高可用性、高信頼性であることがコンピュータシステムを導入する顧客を始め市場ニーズとして求められ、そのニーズを満たすためにCPU、メモリ、ハードディスク装置、電源装置などのサーバを構成する部品を冗長化することが一般的に行われている。
【0006】
また、上記の様に高可用性、高信頼性が要求されるコンピュータシステムにおいては、さらにサーバの電源装置と接続する無停電電源装置(UPS)や分電盤、コンピュータシステムを導入する施設への電力供給においても冗長化する場合がある。
【0007】
しかしながら、コンピュータシステムの導入コストや運用・保守コストの低減を課題とされることが多いのも事実である。その様な課題に対しては、サーバの冗長化された電源装置の片方のみを無停電電源装置(UPS)と接続し、無停電電源装置(UPS)と分電盤とを電源コンセントを使用して接続する。また、他方の電源装置は、電源コンセントに直接接続し、電源コンセントと分電盤とを接続する構成を実装する場合がある。
【0008】
この様な構成の場合、停電が発生した場合に無停電電源装置(UPS)と接続している方の電源装置への電力供給を無停電電源装置(UPS)内部にあるバッテリを使用して電力供給を行う。また、バッテリによる電力供給ができなくなる直前には、オペレーティングシステムを安全停止(シャットダウン)する制御処理を行う仕組みが一般的に実装されている。
【0009】
しかし、この仕組みでは、無停電電源装置(UPS)からサーバの電源装置への電力供給のみを監視することで、サーバのオペレーティングシステムを安全停止させるか、継続的に稼働させるかの制御処理が行われる。その為、直接電源コンセントと接続している他方の電源装置への電力供給が正常に供給されていてもオペレーティングシステムを安全停止(シャットダウン)する制御処理が実行されてしまう課題がある。オペレーティングシステムの制御処理とは、無停電電源装置(UPS)のバッテリによる電力供給ができなくなると予測され、尚且つ直接電源コンセントに接続されている電源装置への電力供給が正常に供給されている場合は、オペレーティングシステムを継続的に稼働させ、無停電電源装置(UPS)のバッテリによる電力供給ができなくなると予測され、尚且つ直接電源コンセントに接続されている電源装置への電力供給が供給されていない場合は、オペレーティングシステムを安全停止(シャットダウン)させる。
【0010】
本発明は、無停電電源装置(UPS)のバッテリによる電力供給ができなくなると
予測され、尚且つ直接電源コンセントに接続されている電源装置への電力供給が正常に供
給されている場合は、オペレーティングシステムを継続的に稼働させ、また、無停電電源
装置(UPS)のバッテリによる電力供給が継続できなくなると予測され、直接電源コン
セントに接続されている電源装置への電力供給が供給されていない場合は、オペレーティ
ングシステムを安全停止(シャットダウン)させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための一手段を説明する。本発明に係る冗長化電源監視システムは、複数の電源装置およびサーバに接続される無停電電源装置からの電源供給情報を前記サーバに通知する送受信手段と、前記電源供給情報を蓄積する無停電電源装置情報管理手段と、前記サーバの電源装置への電源供給情報をモニタリングする電源情報読取手段と、前記電源情報読取手段と前記無停電電源装置情報管理手段でモニタリング、または、蓄積データに基づいて前記サーバのオペレーティングシステムを制御する電源監視制御手段と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、サーバの冗長化された電源装置の片方のみを無停電電源装置(UP
S)と接続し、無停電電源装置(UPS)と分電盤とを電源コンセントを使用して接続し、
他方の電源装置は、電源コンセントに直接接続し、電源コンセントと分電盤とを接続する
構成としたので、無停電電源装置(UPS)のバッテリによる電力供給ができなくなると
予測され、尚且つ直接電源コンセントに接続されている電源装置への電力供給が正常に供
給されている場合は、オペレーティングシステムを継続的に稼働させることが可能であ
る。
【0013】
また、無停電電源装置(UPS)のバッテリによる電力供給が継続できなくなると予測
され、直接電源コンセントに接続されている電源装置への電力供給が供給されていない場
合は、オペレーティングシステムを安全停止(シャットダウン)させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】冗長化電源監視システムの構成を示す図。
【図2】実施例1の無停電電源装置(UPS)110 を示す図。
【図3】サーバ100を示す図。
【図4】UPS情報管理部105の管理データ1051を示す図。
【図5】電源情報読取部103の管理データ1031を示す図。
【図6】実施例1の電源監視制御部106の制御フロー図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
コンピュータシステムにおいては、高可用性、高信頼性であることが市場ニーズとして求められ、そのニーズを満たすためにCPU、メモリ、ハードディスク装置、電源装置などのサーバを構成する部品を冗長化することが一般的に行われている。さらにサーバの電源装置と接続する無停電電源装置(UPS)や分電盤、システムを導入する施設への電力供給においても冗長化する場合がある。
【0017】
一方、コンピュータシステムの導入コストや運用・保守コストの低減を課題とされることが多いのも事実である。その様な課題に対しては、サーバの冗長化された電源装置の片方のみを無停電電源装置(UPS)と接続し、無停電電源装置(UPS)と分電盤とを電源コンセントを使用して接続する。また、他方の電源装置は、電源コンセントに直接接続し、電源コンセントと分電盤とを接続する構成を実装する場合がある。
【0018】
図1は、本発明に関する冗長化電源監視システムのハードウェア構成図である。冗長化電源監視システムは、サーバ100と、サーバ100に電源供給する無停電電源装置110と無停電電源装置110に電源供給する分電盤120と、分電盤120に電源供給する電源130と、サーバ100は電源装置が冗長化されており、無停電電源装置110と接続されていないサーバ100の他方の電源装置に電源供給する分電盤220と分電盤220に電源供給する電源230により構成される。
【0019】
図2は、無停電電源装置110の構成を示すブロック図である。無停電電源装置110は、分電盤120から供給される電力をバッテリ112へ入力部111を介して蓄電する。また、バッテリ112に蓄電された電力をサーバ100に出力部115を介して出力するか、分電盤120から供給される電力を入力部111と出力部115を介してサーバ100に出力するかを制御する制御部113と、無停電電源装置における入力部111に電源130から供給され分電盤120を介して入力される電圧・電流、蓄電されたバッテリ112から制御部113を介して出力部115へ供給される場合と電源130から分電盤120を介し、入力部111から制御部113を介して出力部115へ供給される場合のどちらかにより供給される電圧・電流、バッテリ112の残容量を電源供給情報として、サーバ100に伝達する送受信部114と、サーバ100へ電力を出力する出力部115から構成される。
【0020】
図3は、サーバ100の構成を示すブロック図である。サーバ100は冗長化電源を構成する電源装置101、102と冗長化された電源装置の電源供給情報を読み取る電源情報読取部103と読み取った電源供給情報をデータ管理する管理データ1031、無停電電源装置110からの電源供給情報を受信し、UPS情報管理部105へ送信する送受信部104と、無停電電源装置110の電源供給情報をUPS情報管理部105内部でデータ管理する管理データ1051、電源情報読取部103内部でデータ管理する管理データ1031とUPS情報管理部105内部の管理データ1051の電源供給情報を常時モニタリングし、冗長化された電源装置101と102のいずれかにより、電源供給されているかをモニタリングし、サーバ100をコンピュータシステムとして稼働させるオペレーティングシステム107を継続的に稼働させるか、正常停止させるかを制御する電源監視制御部106から構成される。
【0021】
図4は、UPS情報管理部105のデータベースの構成を示す図である。UPS情報管理部105の管理データ1051には、電源装置ID10511とUPS入力部電圧10512、UPS入力部電流10513、UPS出力部電圧10514、UPS出力部電流10515、バッテリ残容量10516が記憶、管理されている。
【0022】
電源装置ID10511は、図1で示す様なシステム構成を実現化したコンピュータシステムにおいて、サーバ100の電源装置101と無停電電源装置110を接続し、システム構築したときに電源装置固有の装置ID(電源装置101)を確認した上で、手動でUPS情報管理部105の管理データ1051にデータ登録する。
【0023】
電源130から分電盤120を介して無停電電源装置110の入力部111に電力供給し、入力部111で検知される電圧と電流(以下、UPS入力部電圧10512、UPS入力部電流10513と記す)を送受信部114からサーバ100の送受信部104を介してUPS情報管理部105内部でデータ管理されている管理データ1051に格納する。同様に無停電電源装置110の制御部113で検知される電圧と電流(以下、UPS出力部電圧10514、UPS出力部電流10515と記す)、バッテリ残容量10516を送受信部114からサーバ100の送受信部104を介してUPS情報管理部105内部でデータ管理されている管理データ1051に格納する。
【0024】
図5は、電源情報読取部103のデータベースの構成を示す図である。電源情報読取部103の管理データ1031には、サーバ100の電源装置ID10311ごとに入力部電圧10312、入力部電流10313を電源情報読取部103でリアルタイムにモニタリングし、管理データ1031に格納する。
【0025】
図6は、本発明の第1の実施形態による情報処理を示すフローである。
【0026】
先ず、PS情報管理部105と電源情報読取部103にそれぞれ格納された管理データ1051と管理データ1031をリアルタイムでモニタリングする(S101)。
【0027】
電源監視制御部106は、停電により電源供給が断絶したことを検知する(S1011)。電源供給が断絶した場合は、UPS情報管理部105の管理データ1051のUPS入力部電圧10512、UPS入力部電流10513がゼロになることから、電源供給が断絶した部位が無停電電源装置110の入力部111であると判断する(S102)。
【0028】
無停電電源装置110の故障により電源供給が断絶した場合は、UPS情報管理部105の管理データ1051のUPS出力部電圧10514、UPS出力部電流10515がゼロになる。また、バッテリ残容量10516がゼロになり、電源供給が断絶した場合は、電源供給が断絶した部位が無停電電源装置110の出力部115であると判断する(S103)。判断した結果、出力部115である場合は、S105の処理を行う。判断した結果が出力部115でない場合は、S107の処理を行う。
【0029】
S102において、電源供給が断絶した電源装置の部位が無停電電源装置110の入力部111の場合は、無停電電源装置110の機能により自動的にバッテリ112からの電源供給がおこなわれ、バッテリ残容量10516に蓄電された電力量とサーバ100の消費電力量からバッテリ残容量10516の消費傾向を蓄電された電力量をサーバ100の消費電力量で除算することでサーバ100に電源供給可能な時間を求める(S104)。電源供給が断絶した電源装置の部位が無停電電源装置110の出力部115である場合は、電源情報読取部103の格納された管理データ1031から、UPS情報管理部105の管理データ1051の電源装置ID10511とは、異なる電源装置ID10311の入力部電圧10312と入力部電流10313がゼロになっていないか判断する(S105)。
【0030】
S103とS105において、冗長化された電源装置のどちらとも電源供給されていない場合は、オペレーティングシステムは、異常停止する(S107)。
【0031】
S105において、無停電電源装置110と接続されていない電源装置に電源供給されている場合は、オペレーティングシステムを継続して稼働させる(S108)。また、リアルタイムモニタリングを行う(S101)。
【0032】
S104において、無停電電源装置110のバッテリ残容量10516とサーバの消費電力量から電源供給可能な時間の予測をおこない、電源供給可能な時間がサーバ100のオペレーティングシステム107のシャットダウン処理に必要とされる時間(約3分間)より短いと判断された場合は、UPS情報管理部105の管理データ1051の電源装置IDとは、異なる電源装置IDの入力部電圧10312と入力部電流10313を管理データ1031からチェックし、ゼロになっていないか確認する(S106)。S106の判断において、入力部電圧10312と入力部電流10313がゼロになっている場合は、オペレーティングシステム107を正常に停止するためにシャットダウン処理を行う(S109)。S106の判断において、入力部電圧10312と入力部電流10313がゼロになっていない場合は、オペレーティングシステムを継続して稼働させるS108。また、リアルタイムモニタリングを行う(S101)。
【符号の説明】
【0033】
100 サーバ
101 電源装置
102 電源装置
103 電源装置読取部
1031 管理データ
10311 電源装置ID
10312 入力部電圧
10313 入力部電流
104 送受信部
105 UPS情報管理部
1051 管理データ
10511 電源装置ID
10512 UPS入力部電圧
10513 UPS入力部電流
10514 UPS出力部電圧
10515 UPS出力部電流
10516 バッテリ残容量
106 電源監視制御部
107 オペレーティングシステム
110 無停電電源装置(UPS)
111 入力部
112 バッテリ
113 制御部
114 送受信部
115 出力部
120 分電盤
130 電源
200 サーバ
210 無停電電源装置(UPS)
220 分電盤
230 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電源装置およびサーバに接続される無停電電源装置からの電源供給情報を前記サーバに通知する送受信手段と、
前記電源供給情報を蓄積する無停電電源装置情報管理手段と、
前記サーバの電源装置への電源供給情報をモニタリングする電源情報読取手段と、
前記電源情報読取手段と前記無停電電源装置情報管理手段でモニタリング、または、蓄
積データに基づいて前記サーバのオペレーティングシステムを制御する電源監視制御手段
と、を具備する、
ことを特徴とする冗長化電源監視システム。
【請求項2】
前記無停電電源装置は、入力部を通過する電源情報と、出力部を通過する電源
情報と、当該無停電電源装置が具備するバッテリの残容量情報と、前記サーバに送信
する手段を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の冗長化電源監視システム。
【請求項3】
前記電源情報読取手段は、前記電源装置に入力される前記電源供給情報を前記電源装
置ごとに管理し、電源監視制御手段は、前記無停電電源装置情報管理手段で管理している
データと前記電源情報読取手段で管理しているデータをモニタリングし、電源供給されて
いない電源装置部位の判別を行う、
ことを特徴とする請求項2に記載の冗長化電源監視システム。
【請求項4】
前記電源監視制御手段は、前記判別により、前記電源供給されていない電源装置部位が
前記無停電電源装置の入力部の場合は、前記無停電電源装置の前記バッテリの残容量から
予測される電源供給可能な時間を算出し、前記オペレーティングシステムを正常停止する
ためのシャットダウン処理、または、他の電源装置の電源供給情報から前記オペレーティ
ングシステムを継続的に稼働させるか制御する、
ことを特徴とする請求項3に記載の冗長化電源監視システム。
【請求項5】
前記電源監視制御手段は、前記判別により、前記電源供給されていない電源装置部位が
無停電電源装置の出力部の場合は、他の電源装置の電源供給情報から前記オペレーティン
グシステムを継続的に稼働させるか制御する、
ことを特徴とする請求項4に記載の冗長化電源監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−99147(P2013−99147A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240760(P2011−240760)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】