説明

冶金粉末組成物およびそれを使用する製品および方法

本発明の冶金粉末組成物懸濁物は、キャリアー流体に懸濁された外側酸化物層を有する磁気粉末を含む。磁気粉末は例えば他の元素と前合金化された鉄粉末のような鉄に基づく粉末を含む。合金材料には、コロンビウム、シリコン、カルシウム、マンガン、マグネシウム、炭素、ボロン、アルミニウム、チタン、モリブデン、クロム、銅、ニッケル、金、バナジウム、リンまたはそれらの組み合わせを含む。キャリアー流体には、シリコンに基づく流体および/または炭化水素油のような油を含む。外側酸化物層は酸素と反応/錯化する合金材料を含む。磁気粉末は広い温度範囲にわたり低い酸化速度を現す。冶金粉末組成物懸濁物を包含する製品には、チャンバー、チャンバー中で往復するピストン、およびチャンバーに操作可能に連結された磁気源を有するダンプナーを含む。磁気源は作動すると、冶金粉末組成物懸濁物の見掛け粘度を変化させる磁場を生じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連分野
本出願は、引用により全部、本明細書に編入する2003年11月26日に出願された米国特許仮出願第60/525,571号明細書の特典を主張する。
発明の分野
本発明は一般には冶金粉末組成物、それから作られた製品、およびその作成法に関する。より詳細には、本発明は磁気−流動学的(magneto−rheological)組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
磁気−流動学的流体は、磁場の存在下で見掛け粘度に変化を受ける。通常、磁気−流動学的特性を表す冶金粉末組成物は、例えばキャリアー媒質に懸濁された強磁性または常磁性粒子のような磁気粒子を含んでなる。
【0003】
磁気−流動学的組成物が磁場に暴露されると、磁気−流動学的組成物中の磁気粒子は分極するようになり、そしてこれにより粒子鎖に組織化される。粒子鎖は整列して、流体全体の見掛け粘度、または流れ抵抗が上がる。磁場が存在しなければ、粒子は非組織化状態または自由状態に戻り、そして物質全体の見掛け粘度または流れ抵抗は相応じて下がる。
【0004】
従来の磁気−流動学的組成物は、特許文献1に記載されている。特許文献1は液体、冷却液または半固体グリースの中の常磁性または強磁性粒子の分散物例えば鉄粉末と軽機械油を教示する。1つの態様では、特許文献1はカルボニル鉄粉末を記載する。
【0005】
磁気−流動学的組成物は、例えばブレーキシステム(braking system)、車両サスペンションダンプナー(vehicle suspension dampener)および発電機におけるような線状および回転メカニズムにおいて硬質な結合材料として使用される。ダンプニング(dampening)デバイスでは、磁気−流動学的組成物はダンプニング流体の粘度が、かけた磁場に応答して変化できるようにする。かくしてライド スティフネス(ride stiffness)はダンプナー中の電気コイルの電流を調整することにより制御することができる。その結果、サスペンションシステムのスティフネスは容易に制御される。
【0006】
磁場の存在下での磁気−流動学的組成物の結合強さは、一部は流体にかけた磁場の強さおよび磁気粒子のサイズに依存する。大きな磁気粒子を有する磁気−流動学的組成物は、より高い降伏強さおよび大きな結合能を現す。
【0007】
不幸なことには、磁気−流動学的組成物は磁気粒子の比重とキャリアー流体の比重との間の大きな差異により性能に一貫性が無いことが多い。その結果、大きなサイズの粒子は懸濁液から沈殿する傾向がある。例えば特許文献2は、粒子を安定化し、そして沈殿を防ぐためにチキソトロピーネットワークを有する磁気−流動学的流体を教示する。より小さいサイズの磁気粒子を有する磁気−流動学的組成物は、懸濁液から即座には沈殿しないが、より低い降伏強さおよびより低い結合能を現すと同時に、より容易に「ケーキアップ」する傾向を有し、これにより組成物の流動性に影響を及ぼす。
【0008】
従来の磁気−流動学的組成物も、一部は特に高温を適用した磁気粒子の酸化による経時的な性能の低下に問題がある。したがって製造者は性能の低下に抵抗し、そして高い降伏強さおよび結合強さを維持する磁気−流動学的組成物を求め続けている。したがってこれらの要求を満たす組成物が望まれている。
(参考文献)
【特許文献1】米国特許第2,667,237号明細書
【特許文献2】米国特許第5,645,752号明細書
【発明の開示】
【0009】
要約
本発明の冶金粉末組成物懸濁物は、外側酸化物層を有する磁気粉末粒子およびキャリアー流体を含む。磁気粉末は、キャリアー流体中に懸濁されている。磁気粉末は例えば他の元素と前以て合金された鉄の粉末のような金属に基づく粉末を含む。合金化する材料には、モリブデン、マンガン、マグネシウム、クロム、シリコン、銅、ニッケル、金、バナジウム、コロンビウム(ニオブ)、グラファイト、リン、アルミニウム、カルシウム、ボロン、チタンまたはそれらの混合物を含む。キャリアー流体には従来の炭化水素油またはシリコンに基づく液体を含む。外側酸化物層には、酸素と錯化される合金材料を含む。
【0010】
磁気粉末は熱重量分析/示差熱量分析により測定する時、例えば摂氏180度で約0.25%/分/m未満、そして摂氏230度で約0.40%/分/m未満のような、広い温度範囲にわたり低い酸化速度を現す。
【0011】
冶金粉末組成物懸濁物を利用する本発明の製品には、例えばチャンバー、チャンバー中で往復するピストン、チャンバー内に配置された冶金組成物、およびチャンバーに操作可能に連結された磁気源を有するダンプナーのようなデバイスを含む。作動させると、磁気源は冶金粉末組成物懸濁物の粘度を変える磁場を生じる。冶金粉末組成物懸濁物の粘度が上がると、ピストンを往復させるためにより多くの力を要する。
詳細な説明
本発明は冶金粉末組成物懸濁物、それを包含する製品、およびその作成法に関する。冶金粉末組成物懸濁物は、外側酸化物層を有する磁気粉末粒子およびキャリアー流体を含む。冶金粉末組成物懸濁物は磁気−流動学的特性を現し、これにより冶金粉末組成物の粘度は磁場に暴露することにより変化する。外側酸化物層を有する磁気粉末は、広い温度範囲にわたり低い酸化速度を現し、そしてこれにより特に高温を使用した適用で耐摩耗性である。
【0012】
冶金粉末組成物懸濁物を包含する製品には、例えば車両サスペンションダンプナーのような通例のデバイスを含む。ダンプナーはハウジング、シリンダー、シリンダー内を往復するピストン、冶金粉末組成物懸濁物およびチャンバーに操作可能に連結された磁気源を含む。作動させると、磁気源はチャンバー内に含まれる冶金粉末組成物懸濁物の粘度を変える磁場を生じる。冶金粉末組成物懸濁物の粘度が上がると、ピストンを往復させるためにより多くの力を要する。
【0013】
本明細書で使用するように、冶金粉末組成物懸濁物は磁気−流動学的特性を現し、そしてこれにより磁場の存在下で見掛け粘度に変化を受ける組成物である。磁場に暴露されると、冶金粉末組成物は分極するようになり、そしてキャリアー流体中で懸濁されている粒子の鎖に組織化されると考えることができる。粒子鎖は整列して、流体全体の見掛け粘度、または流れ抵抗が上がる。磁場が存在しなければ、粒子は非組織化状態または自由状態に戻り、そして物質全体の見掛け粘度または流れ抵抗は相応じて下がる。組成物の見掛け粘度の変化は、ミリセカンドで測定される。従来の磁気−流動学的組成物は例えば米国特許第5,645,752号および同第2,667,237号明細書に開示され、その各々は引用により全部、本明細書に編入する。
【0014】
冶金粉末組成物は、磁気粉末またはそのような粉末のブレンドを含む。磁気粉末は好ましくは、鉄に基づく粉末のような粉末冶金工業で一般的に使用される種類の金属に基づく粉末である。本明細書で使用する用語として、鉄に基づく粉末の例は、実質的に純粋な鉄の粉末、強さ、硬化性(hardenability)、電磁気特性、または最終産物に望ましい他の特性を強化する他の元素(例えばスチールを生産する元素)と前合金された鉄の粉末、およびそのような他の元素が拡散結合された鉄の粉末である。
【0015】
本発明に使用される実質的に純粋な鉄粉末は、約1.0重量%未満、好ましくは約0.5重量%未満の標準不純物を含む鉄の粉末である。そのような高度に圧縮可能な冶金等級の鉄粉末の例は、ニュージャージー州、リバートンのホーガニーズ(Hoeganaes)コーポレーションから入手可能な純粋な鉄粉末のANCORSTEEL1000シリーズ、例えば1000、1000Bおよび1000Cである。例えばANCORSTEEL1000鉄粉末は、No.325シーブ(sieve)(U.S.シリーズ)未満の粒子の約22重量%、およびNo.100シーブより大きい粒子の約10重量%、残りはこれら2つのサイズの間(No.60シーブよりも大きい痕跡量)である典型的なスクリーンプロファイルを有する。ANCORSTEEL1000粉末は、約2.85〜3.00g/cm、典型的には2.94g/cmの見掛け密度を有する。本発明に使用される他の鉄粉末は、ホーガニーズのANCOR MH−100粉末のような典型的な海綿(sponge)鉄粉末である。
【0016】
鉄に基づく粉末は、最終金属部分の軟質磁性(soft magnetic)または冶金特性を強化する1もしくは複数の合金元素を場合により包含することができる。そのような鉄に基づく粉末は、1もしくは複数のそのような元素に前合金された鉄、好ましくは実質的に純粋な鉄の粉末である。前合金した粉末は、鉄および所望する合金元素の実質的に均一なメルトを作成し、次いでメルトを噴霧し、これにより噴霧化した液滴が固化で粉末を形成することにより調製される。メルトブレンドは、例えば水噴霧化のような通例の噴霧技術を使用して噴霧される。別の態様では、磁気粉末は最初に金属に基づく粉末を準備し、そして次いで粉末を合金材料でコーティングすることにより調製される。
【0017】
鉄に基づく粉末と前合金される合金元素の例には、限定するわけではないがモリブデン、マンガン、マグネシウム、クロム、シリコン、銅、ニッケル、金、バナジウム、コロンビウム(ニオブ)、グラファイト、リン、チタン、アルミニウムおよびそれらの組み合わせを含む。合金元素または包含される元素の量は、最終組成物に望む特性に依存する。そのような合金元素を包含する前合金鉄粉末は、粉末のANCORSTEEL系の一部としてホーガニーズ社から入手可能である。
【0018】
好ましくは鉄に基づく粉末は、コロンビウム、チタンまたは両方の組み合わせ、および少なくとも1つの他の合金材料との合金が作られる。より好ましくは鉄に基づく粉末は、コロンビウムおよび少なくとも1つの他の合金材料との合金が作られる。
【0019】
鉄に基づく粉末のさらなる例は、拡散結合された鉄に基づく粉末で、それは実質的に純粋な鉄の粒子であって、それらの外層に拡散されたスチール生成元素のような1もしくは複数の他の材料の層またはコーティングを有する粉末である。そのような市販されている粉末には、ホーガニーズコーポレーションから約1.8%のニッケル、約0.55%のモリブデンおよび約1.6%の銅を含むDISTALOY4600A拡散結合粉末、およびホーガニーズコーポレーションから約4.05%のニッケル、約0.55%のモリブデンおよび約1.6%の銅を含むDISTALOY4800A拡散結合粉末を含む。
【0020】
本発明の実施に有用な他の鉄に基づく粉末は、強磁性粉末である。例は少量のリンと前合金された鉄の粉末である。
【0021】
鉄または前合金された鉄の粒子は、1ミクロン以下、または最高約850〜1,000ミクロンほどの小さい重量平均粒子サイズを有するが、一般的に粒子は約10〜500ミクロンの範囲の重量平均粒子サイズを有する。
【0022】
キャリアー流体は、温度の変動による流体特性の変化に抵抗するそれらの能力について選択される。キャリアー流体には、当業者に知られている通例のキャリアー流体を含む。例えばキャリアー流体には機械油またはシリコンに基づく流体のような油を含む。油には天然および合成炭化水素および植物油を含む。またキャリアー流体は、冶金粉末組成物質懸濁物の粘度に基づき選択される。
【0023】
場合により、金属に基づく粉末の懸濁物からの沈殿およびケーキングを防ぐために、分散剤も冶金粉末組成物懸濁物に加えることができる。分散剤には例えばシリカまたは繊維状炭素のような当業者により知られている通例の分散剤を含む。
【0024】
好ましくは磁気粉末は2.0重量パーセント未満の酸素を含む。より好ましくは磁気粉末は1.0重量パーセント未満の酸素、より好ましくは0.6重量パーセント未満の酸素、より一層好ましくは0.4重量パーセント未満の酸素、そしてさらにより一層好ましくは約0.275重量パーセント未満の酸素を含む。酸素含量は、例えばTGA/SDTA851装置のような熱重量分析/示差熱量分析を使用して測定される。本発明で使用する重量パーセントの酸素は、外側酸化物層を含め、磁気粉末の総酸素重量パーセントを指す。
【0025】
冶金粉末組成物懸濁物は、外側酸化物層を有する金属に基づく粒子を含む。図1は外側酸化物層を有する例示磁気粉末のミクロ構造である。図1を参照にして、酸化物層は磁気粉末の噴霧中に形成される。磁気粉末は例えば液体噴霧技術のような当業者に周知の通例の噴霧技術を使用して噴霧化される。噴霧中、周囲酸素が磁気粉末粒子と反応/錯化すると、酸化物層が形成する。
【0026】
酸素は、磁気粉末の個々の成分との錯化する。例えば合金材料と前合金される鉄に基づく粒子には、酸素と錯化した鉄、すなわち酸化鉄、そしてまた酸素と錯化した合金金材料、例えばコロンビウム酸化物を含む外側酸化物層を含む。
【0027】
酸化物層は磁気粉末粒子の表面を実質的に覆う。理論に拘束されることなく、酸素と錯化する合金材料を含む外側酸化物層は、その後の酸化に対するバリアを形成し、これにより各磁気粉末粒子の回りに受動的バリアを形成すると考えられている。
【0028】
また外側酸化物層は、有益な磁気特性も提供する。外側酸化物層は、磁気抵抗を増し、透磁率、構造的密度およびコア損失特性を強化する。例えば690MPag/cmの密度を有する磁気粉末は、80の初期透磁率、210の最大透磁率、4.7Oeの抗磁力および40 Oeで7,700の誘導を現す。高温で分解に抵抗する能力は、高圧圧縮中に形成される応力を軽くするために磁気粉末を加熱処理することを可能とする。応力を軽くするための高温処理は、ヒステリシス損に関わる歪みを最小にし、軟質磁気性能を強化する。そのような粉末は、鉄−ポリマー組成および鉄粉末芯の応用に有益である。外側酸化物層は鉄に基づく磁気粉末の軟質磁気特性を減じない。
【0029】
好ましくは外側酸化物層は低い多孔性、すなわち小さい孔空間を有する。理論に拘束されることなく、外側酸化物層の多孔性を制限することは、磁気粉末の酸化を制限すると考えられる。
【0030】
外側酸化物層は、約700オングストローム厚未満である。より好ましくは外側酸化物層は、約1〜約500オングストローム厚である。さらにより好ましくは外側酸化物層は、約5〜約500オングストローム厚である。さらに一層好ましくは外側酸化物層は、約5〜約100オングストローム厚である。さらにより一層好ましくは外側酸化物層は、約20〜約50オングストローム厚である。
【0031】
好ましくは磁気粉末は熱重量分析/示差熱量分析により測定される時、摂氏180度で約0.75%/分/m未満の酸化速度を現す。より好ましくは磁気粉末は、摂氏180度で約0.50%/分/m未満の酸化速度、そしてさらに好ましくは摂氏180度で約0.25%/分/m未満の酸化速度を現す。好ましくは磁気粉末は、摂氏230度で約1.20%/分/m未満の酸化速度を現す。さらに好ましくは磁気粉末は、摂氏230度で約0.80%/分/m未満の酸化速度、そしてより一層好ましくは摂氏230度で約0.40%/分/m未満の酸化速度を現す。
【0032】
1つの態様では、冶金粉末組成物懸濁物は、磁気粉末の総重量に基づき約0.01〜約0.4重量パーセントのコロンビウムを含んでなる磁気粉末を含む。より好ましくは冶金粉末組成物懸濁物は、約0.05〜約0.2重量パーセントのコロンビウム、そしてより一層好ましくは約0.08〜約0.15重量パーセントのコロンビウムを含んでなる磁気粉末を含む。
【0033】
別の態様では冶金粉末組成物懸濁物は、磁気粉末の総重量に基づき約0.01〜約0.4重量パーセントのコロンビウム、約0.01〜約0.50重量パーセントのシリコン、および約0.01〜約0.20重量パーセントのボロンを含んでなる磁気粉末を含む。より好ましくは磁気粉末は、約0.05〜約0.2重量パーセントのコロンビウム、約0.05〜約0.35パーセントのシリコン、および約0.01〜約0.10重量パーセントのボロンを含む。さらにより一層好ましくは磁気粉末は、約0.08〜約0.15重量パーセントのコロンビウム、約0.10〜約0.20重量パーセントのシリコン、および約0.03〜約0.05重量パーセントのボロンを含む。
【0034】
別の態様では冶金粉末組成物懸濁物は、磁気粉末の総重量に基づき約0.01〜約0.10重量パーセントのアルミニウムを含む磁気粉末を含んでなる。より好ましくは磁気粉末は、約0.01〜約0.05重量パーセントのアルミニウム、そしてさらにより好ましくは約0.01〜約0.02重量パーセントのアルミニウムを含む。
【0035】
別の態様では冶金粉末組成物懸濁物は、磁気粉末の総重量に基づき約0.001〜約0.03重量パーセントのカルシウムを含む磁気粉末を含んでなる。より好ましくは磁気粉末は、約0.001〜約0.02重量パーセントのカルシウム、そしてさらにより好ましくは約0.01〜約0.015重量パーセントのカルシウムを含む。
【0036】
別の態様では冶金粉末組成物懸濁物は、磁気粉末の総重量に基づき約0.1〜約0.2重量パーセントのマンガンを含む磁気粉末を含んでなる。より好ましくは磁気粉末は、約0.25〜約0.1重量パーセントのマンガン、そしてさらにより好ましくは約0.5〜約0.75重量パーセントのアルミニウムおよびまたはチタンを含む。
【0037】
別の態様では冶金粉末組成物懸濁物は、磁気粉末の総重量に基づき約0.015重量パーセントの炭素、約0.6重量パーセントの酸素、約0.5〜約0.75重量パーセントのマンガン、約0.08〜約0.15重量パーセントのコロンビウム、約0.10〜約0.20のシリコン、約0.02重量パーセントのアルミニウム、そして約0.012重量パーセントのカルシウムを含んでなる磁気粉末を含んでなる。
【0038】
本発明の製品は、例えばブレーキシステム、車両サスペンションダンプナーおよび発電機におけるような硬質結合材料として冶金粉末組成物懸濁物を使用した線状および回転メカニズムを含む。これらのデバイスに冶金粉末組成物懸濁物を使用すると、磁場をダンプニング流体にかけることにより操作中にダンプニング流体の粘度を調節できるようになる。例えばライド スティフネスはこれによりダンプナー中の冶金粉末組成物懸濁物に磁場を適用する電気コイルの電流を調整することにより制御することができる。その結果、サスペンションシステムのスティフネスは容易に制御される。磁場の存在下での冶金粉末−流動学的組成物懸濁物の結合強さは、一部はかけた磁場の強さおよび磁気粒子のサイズに依存する。磁気流動学的流体を使用した従来の線状および回転メカニズムは、例えば米国特許第6,382,369号、同第6,510,929号および同第6,525,289号明細書に記載され、この各々は引用により全部、本明細書に編入する。
【0039】
図2aおよび2bは、冶金粉末組成物懸濁物を包含する回路を示す。図2aは冶金粉末組成物懸濁物にかける双極子モーメントなしの回路を示す。図2bは冶金粉末組成物懸濁物にかける双極子モーメントを用いた回路を示す。図2aおよび2bを参照にして、回路1は冶金粉末組成物懸濁物の一般的性能を示す。回路1は冶金粉末組成物懸濁物2、第1電極3および第2電極4を含む。冶金粉末組成物懸濁物2は第1および第2電極3と4との間に配置される。
【0040】
冶金粉末組成物懸濁物2はキャリアー流体5および磁気粉末6を含む。電極3および4は、任意の種類の導電材料を含んでなる。
【0041】
操作において、電極3および4は能動的または非能動的であることができる。図2aに示すように電極3および4が非能動的である時、磁気粉末6は無作為な様式でキャリアー流体5中に均一に分散し、そして冶金粉末組成物懸濁物2は電極3と4の間を自由に流れる。電極3および4が能動的である時、電気が回路1を通って流れ、そして双極子モーメントが磁気粉末6に導入され、粒子の電荷または磁場の方向への整列を引き起こす。並んだ粒子7は冶金粉末組成物懸濁物2がさらに粘稠となるようにし、そして磁場または電荷が上がると固体形に近づく。電荷または磁場が除かれると、磁気粉末6はそのランダムな状態に戻り、そして冶金粉末組成物懸濁物2は低い粘稠状態に戻る。
【0042】
別の態様では、冶金粉末組成物懸濁物はバイブレーションダンプナーに包含される。図3は冶金粉末組成物懸濁物を包含するダンプナーを示す。図4は図3の線Iを横切るダンプナーの断面図を示す。図5は図3の線IIを横切るダンプナーの断面図である。図3、4および5を参照にして、バイブレーションダンプナー8はハウジング9、ピストン10、シリンダー11、コンプレッションチャンバー12、回復(recovery)チャンバー13および磁気コイル14を含む。シリンダー11はハウジング9に収容されている。
【0043】
ピストン10はピストンロッド15、複数の入口16および複数の出口17、ピストンロッド15の中心を通る中央導管18および磁化性(magnetizable)導管19を含む。ピストン10はシリンダーに往復するように取り付けられ、そしてシリンダー11をコンプレッションチャンバー12と回復チャンバー13に分割する。
【0044】
磁気コイル14は、磁化性導管19に配置された流体に電場をかけることができるように、ピストン10中に操作可能に配置される。
【0045】
操作では、冶金粉末組成物懸濁物2がコンプレッションチャンバー12に配置される。ピストン10は冶金粉末組成物懸濁物2を圧縮し、これは圧力下で複数の入口16を介してピストン10へ流れる。冶金粉末組成物懸濁物2は複数の入口16から磁化性導管19へ流れる。磁化性導管19から、冶金粉末組成物懸濁物は中央導管13を通って複数の出口17へ流れる。冶金粉末組成物懸濁物2は出口17を介してピストン10から回復チャンバー13へ流れる。
【0046】
磁気コイル14は能動的または非能動的であることができる。磁気コイル14が非能動的である時、磁気粉末6は無作為な様式でキャリアー流体5中に均一に分散し、そして冶金粉末組成物懸濁物2は磁化性導管19に直ちに流れる。磁気コイル14が能動的である時、磁気コイル14を通って電気が流れ、そして双極子モーメントが冶金粉末組成物懸濁物2に導入され、磁気粒子の電荷または磁場の方向への整列を引き起こす。並んだ磁気粒子は冶金粉末組成物懸濁物2がさらに粘稠となるようにし、そして磁場または電荷が上がると固体形に近づく。電荷または磁場が除かれると、磁気粉末はその無作為な配列に戻り、そして冶金粉末組成物懸濁物2はその低い粘稠状態に戻る。
【0047】
冶金粉末組成物懸濁物2がより粘稠になると、ピストン10は冶金粉末組成物懸濁物2を磁化性導管19に通して流すために、より多くの圧縮力を適用しなければならない。すなわちダンプナーにより吸収される力の量は、磁化性導管19中の冶金粉末組成物懸濁物2に適用される磁場の強さを制御することにより調節される。
【0048】
当業者は本発明の好適な態様に多くの変更および修飾を行うことができ、そしてそのような変更および修飾は、本発明の精神から逸脱せずに行えると考えるだろう。以下の実施例ではさらに冶金粉末組成物懸濁物を説明する。
【実施例】
【0049】
限定を意図していない以下の実施例は、本発明の特定の態様および利点を提示する。特に示さない限り、パーセントは重量に基づく。
【0050】
試験は磁気粉末および参照のカルボニル粉末の酸化を比較するために行った。空気を磁気粉末および参照のカルボニル粉末上に、室温から融点付近の温度まで種々の温度で通した。各サンプルが酸化する能力は、TGA/SDTA85le装置を使用し、空気をパージガスとして用いて測定した。パージガスから水分を除去する予防措置は利用しなかった。
【0051】
サンプルの重量は経時的に記録した。重量における増加はサンプルの酸化による、すなわち劣化に起因した。各実験で温度を1分あたり30℃まで上げた。各実験では、サンプル粉末を保持するために白金るつぼを利用した。
【0052】
参照組成物は、99.5%より多い鉄、0.05%未満の炭素、0.3%未満の酸素、0.01%未満の窒素からなるカルボニル鉄(carbonyl ferrous)粉末からなる。参照組成物は、4.0g/cmのタップ密度、および
d10 3マイクロメーター
d50 5マイクロメーター
d90 10マイクロメーター
の粒子サイズ分布を有した。
【0053】
試験組成物は、0.015重量パーセントの炭素、0.009重量パーセントの硫黄、0.77重量パーセントの酸素、0.0086重量パーセントの窒素、0.008重量パーセントのリン、0.16重量パーセントのシリコン、0.34重量パーセントのボロン、0.70重量パーセントのマンガン、0.02重量パーセントの銅、0.02重量パーセントのニッケル、0.02重量パーセントのモリブデン、0.12重量パーセントのコロンビウム、および残りは鉄に基づく粉末からなる冶金組成物からなった。試験組成物のHe粒子を噴霧中に酸化物層でコートした。
【0054】
図6は磁気粉末の酸化を示すグラフを表す。図6を参照にして、種々の温度での重量パーセントの増加を以下の表1に示す:
【0055】
【表1】

【0056】
表1に示すように、試験組成物は参照組成物に比べて低い重量増加を現し、したがって酸化に対する抵抗が大きい。冶金粉末組成物はカルボニル粉末よりも酸化が13.6パーセント低かった。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】外側酸化物層を有する例示的な磁気粉末のミクロ構造を表す。
【図2】図2aは、双極性モーメントをかけてない冶金粉末組成物懸濁物の回路を表す。図2bは双極性モーメントをかけた冶金粉末組成物懸濁物の回路を表す。
【図3】冶金粉末組成物懸濁物を包含するダンプナーを表す。
【図4】図3のダンプナーの線Iを横切る断面図を表す。
【図5】図3のダンプナーの線IIを横切る別の断面図を表す。
【図6】磁気粉末の酸化を表すグラフを表す。
【図2A】

【図2B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
冶金粉末組成物懸濁物であって:
前合金化(prealloyed)磁気粉末の総重量に基づき約0.01〜約0.4重量パーセントのコロンビウム、および
外側酸化物層
を含んでなる前合金化磁気粉末、ならびに
キャリアー流体
を含んでなり、上記前合金化磁気粉末が上記キャリヤー流体中に懸濁されている上記冶金粉末組成物懸濁物。
【請求項2】
前合金化磁気粉末が鉄に基づく粉末である請求項1に記載の冶金粉末組成物懸濁物。
【請求項3】
前合金化磁気粉末が、モリブデン、マンガン、マグネシウム、クロム、シリコン、銅、ニッケル、金、バナジウム、グラファイト、リン、アルミニウム、カルシウム、ボロン、チタンまたはそれらの組み合わせをさらに含んでなる請求項1に記載の冶金粉末組成物懸濁物。
【請求項4】
前合金化磁気粉末が、シリコン、カルシウム、マンガン、炭素、ボロン、アルミニウム、チタンまたはそれらの組み合わせをさらに含んでなる請求項1に記載の冶金粉末組成物懸濁物。
【請求項5】
前合金化磁気粉末が、前合金化磁気粉末の総重量に基づき約0.05〜約0.2重量パーセントのコロンビウムを含んでなる、請求項1に記載の冶金粉末組成物懸濁物。
【請求項6】
前合金磁気粉末が、前合金化磁気粉末の総重量に基づき約0.08〜約0.15重量パーセントのコロンビウムを含んでなる、請求項1に記載の冶金粉末組成物懸濁物。
【請求項7】
外側酸化物層が、前合金化磁気粉末の総重量に基づき約0.015重量パーセントの炭素、約0.6重量パーセントの酸素、約0.5〜約0.75重量パーセントのマンガン、約0.08〜約0.15重量パーセントのコロンビウム、約0.10〜約0.20シリコン、約0.02重量パーセントのアルミニウムおよび約0.012重量パーセントのカルシウムを含んでなる請求項1に記載の冶金粉末組成物懸濁物。
【請求項8】
前合金化磁気粉末の総重量に基づき、約1.0重量パーセント未満の酸素をさらに含んでなる請求項1に記載の冶金粉末組成物懸濁物。
【請求項9】
前合金化磁気粉末の総重量に基づき、約0.6重量パーセント未満の酸素をさらに含んでなる請求項1に記載の冶金粉末組成物懸濁物。
【請求項10】
前合金化磁気粉末が、摂氏180度で約0.25%/分/m未満の酸化速度を有する請求項1に記載の冶金粉末組成物懸濁物。
【請求項11】
前合金化磁気粉末が、摂氏230度で約0.40%/分/m以下の酸化速度を有する請求項1に記載の冶金粉末組成物懸濁物。
【請求項12】
外側酸化物層が、前合金化磁気粉末の噴霧中に形成される請求項1に記載の冶金粉末組成物懸濁物。
【請求項13】
外側酸化物層が、約5〜約500オングストローム厚である請求項1に記載の冶金粉末組成物懸濁物。
【請求項14】
外側酸化物層が、約5〜約100オングストローム厚である請求項1に記載の冶金粉末組成物懸濁物。
【請求項15】
冶金粉末組成物懸濁物であって:
前合金化磁気粉末の総重量に基づき約0.01〜約1.0重量パーセントのチタン、および
外側酸化物層
を含んでなる前合金化磁気粉末、ならびに
キャリアー流体
を含んでなり、上記前合金化磁気粉末が上記キャリアー流体中に懸濁されている上記冶金粉末組成物懸濁物。
【請求項16】
前合金化磁気粉末が、モリブデン、マンガン、マグネシウム、クロム、シリコン、銅、ニッケル、金、バナジウム、グラファイト、リン、アルミニウム、カルシウム、ボロンまたはそれらの組み合わせをさらに含んでなる請求項15に記載の冶金粉末組成物懸濁物。
【請求項17】
前合金化磁気粉末が、前合金化磁気粉末の総重量に基づき約0.3〜約0.6重量パーセントチタンを含んでなる、請求項15に記載の冶金粉末組成物懸濁物。
【請求項18】
前合金化磁気粉末の総重量に基づき約1.0重量パーセント未満の酸素をさらに含んでなる、請求項15に記載の冶金粉末組成物懸濁物。
【請求項19】
外側酸化物層が約5〜約500オングストローム厚である請求項15に記載の冶金粉末組成物懸濁物。
【請求項20】
磁気−流動学的デバイスであって:
チャンバー、
チャンバー内で往復するように配置されたピストン、
チャンバー内に配置された冶金粉末組成物懸濁物、冶金粉末組成物懸濁物は、
前合金化磁気粉末の総重量に基づき約0.01〜約0.4重量パーセントのコロンビウム、および
外側酸化物層
を含んでなる前合金化磁気粉末;ならびに
キャリアー流体
を含んでなり、ここで前合金化磁気粉末がキャリアー流体中に懸濁され、ならびに
ピストンに操作可能に連結された磁気源、ここで冶金粉末組成物懸濁物の見掛け粘度が磁気源により生成される磁場により調節される、
を含んでなる上記デバイス。


【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【公表番号】特表2007−522338(P2007−522338A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541194(P2006−541194)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/035569
【国際公開番号】WO2005/053881
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(502144073)ヘガネス・コーポレーシヨン (3)
【Fターム(参考)】