説明

冷却システム

【課題】 機械設備ごとに個別に冷却水温度設定を可能にしつつ、省エネルギ化を図る冷却システムを提供する。
【解決手段】 貯留タンク52と、冷却水循環ポンプ54と、温度検知器62と、熱交換器56を具備した個別温調器を前記複数の機械設備に各々備え、熱交換器56に被冷却流体を供給する冷却装置1を接続している。記冷却装置1は、冷却塔2と、チラーユニット3とを備え、外気温度が低い場合は冷却塔のみで被冷却流体を冷却する。被冷却流体の全体はインバータ制御可能な被冷却流体循環ポンプ70で制御し、各々の個別温調器へは流量制御弁66の流量で制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種機械設備に冷却水を供給する冷却システムに関し、特にダイカスト成形機やプラスチック成形機を複数台有し、各々異なる温度の冷却水を成形機に供給する冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダイカスト成形機やプラスチック成形機等の機械設備に冷却水を供給し、成形金型や機械設備の温度を一定に保つことが行われている。冷却水を供給する設備は、チラーを主体とする冷凍機が用いられ、機械設備ごとに備えられていた。特に、成形金型温度は、成形製品の良品率を左右する重要なファクタであり、冷却水路内に錆びやスケール等が付着することによって熱交換効率が悪化する問題を有していた。
この問題に関連し、特許文献1には、ダイカストマシンと、大気中の空気を取り込んで窒素ガスと酸素ガスに分離する空気分離装置と、前記ダイカストマシンの金型の冷却回路に冷却水を供給する冷却水供給装置と、前記冷却水に前記窒素ガスを混入させる窒素ガス混入装置とを具備し、前記空気分離装置により分離された酸素ガスが、前記冷却水を貯溜する冷却水槽に設けた点検口に供給されるダイカスト鋳造システムが記載されている。
【0003】
一方、チラーを主体とする冷却水供給設備は、電気エネルギを多量に消費し、近年の省エネルギの要求に合致しないという問題を有していた。そこで、特許文献2、特許文献3には、冷媒・水熱交換器にて冷却水を冷却する空冷式冷凍機付水冷却機を有し、かつ、該冷却水を所定の温度に調整してプラスチック成形機に供給する既設の冷却調整手段に、該冷却水が通る熱交換器に室外空気を直接的に当てて該冷却水を冷却する空冷式熱交換ユニットが、増設され、さらに、上記冷却水の冷却設定温度近傍の第1切換え温度よりも外気温度が低い場合に上記熱交換ユニットを使用し、かつ、上記冷却設定温度近傍の第2切換え温度よりも外気温度が高い場合に上記冷凍機付水冷却機を使用するように制御する制御手段が、増設された冷却システムが提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−150395号公報(第3頁から第6頁)
【特許文献2】特開2007−106045号公報(第5頁から第6頁、図1)
【特許文献3】特開2007−137070号公報(第4頁から第6頁、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、成形される製品ごとに冷却水温度設定を変えなければ成形品の良品率に影響がある場合、特許文献1乃至3に記載の技術では、機械設備ごとに冷却設備を設置しなければならず、冷却設備の設置費用が嵩むだけでなく、省エネルギ性も十分ではなかった。
【0006】
本発明は、上記の事項に留意してなされたもので、機械設備ごとに個別に冷却水温度設定を可能にしつつ、省エネルギ化を図る冷却システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、熱負荷源である複数の機械設備に冷却水を供給する冷却システムであって、冷却水を一時的に溜め置く貯留タンクと、冷却水を前記機械設備に供給する冷却水循環ポンプと、冷却水の温度を検知する温度検知器と、熱交換器を具備した個別温調器を前記複数の機械設備に各々備え、前記熱交換器に冷却流体を供給する冷却装置の往き管と戻り管とを、各々の前記熱交換器に接続し、前記冷却装置は、冷却流体が流入する往き管と冷却流体が流出する戻り管とに接続される冷却ユニットと前記冷却ユニットを冷却する冷却手段とを含む冷却塔と、圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器を含み、この順に冷媒が循環する冷媒管路を有するチラーユニットとを備え、前記凝縮器は、前記冷却塔の内部に配置されて、前記圧縮機で冷却された冷媒が前記冷却手段より給送された冷却媒体と熱交換されるとともに、前記往き管から分岐されかつ前記戻り管と合流すると共に前記被冷却流体を前記蒸発器に流すチラー部配管に接続されるバイパス管と、前記バイパス管の途中及び前記往き管又は前記戻り管の途中に各々設けられて前記被冷却流体を前記冷却ユニット又は前記バイパス管に流す流路切換手段とを具備し、前記戻り管にはインバータ制御可能な冷却流体循環ポンプを介設し、前記熱交換器の前記冷却流体入口又は出口に流量制御弁を有することを特徴とする冷却システムである。
【0008】
上記の構成によれば、チラーユニットは、上記冷却装置内に備えればよく、また、この冷却装置は、冷却塔を有しているので、外気の低い場合には、チラーユニットを停止し冷却塔のみで冷却流体を冷却するため、消費電気エネルギが最小の省エネルギ冷却システムとすることができる。また、往き管にはインバータ制御可能な冷却流体循環ポンプを介設し、前記熱交換器の前記冷却流体入口又は出口に流量制御弁を有するので、各々の機械設備に供給される冷却水と熱交換する冷却流体を流量制御しつつ適切に供給することができる。更に、冷却水系統が、各々の機械設備に備わっているので、万が一、特定の機械設備の冷却水系統に異常が発生した場合においても、他の機械設備に影響を与えることなく、個別に対応することができる。
【0009】
また、本発明において、前記個別温調器は、個別制御手段を具備し、該個別制御手段は、前記温度検知器の出力に基づいて、前記流量制御弁の弁開度を制御することができる。
この構成によれば、各々の機械設備に要求される冷却水温度を個別に制御することができる。
【0010】
また、上記発明において、前記冷却システムは、集中制御手段を具備し、該集中制御手段は、前記個別制御手段から、個別の冷却水温度データと、個別の冷却水流量データとを受け、
前記個別の冷却水温度データの最低温度を前記冷却装置に出力するとともに、前記個別の冷却水流量データの積算値を冷却流体循環ポンプに出力し、前記冷却装置は、この冷却水温度データの最低温度に基づいて、前記冷却流体の冷却温度を決定し、前記冷却流体循環ポンプは、冷却水流量データの積算値に基づいて吐出流量を決定することが好ましい。
【0011】
上記の構成によれば、各々の機械設備から要求される最低温度に基づいて上記冷却装置が運転され、冷却システム全体に必要な冷却流体流量に基づいて上記冷却水循環ポンプが運転されるので、更に最低限のエネルギを消費するだけで冷却流体の供給を賄うことができる。
【0012】
また、本発明において、前記個別温調器は、冷却水の溶存酸素低下装置を有することが好ましい。
この構成によれば、冷却水の溶存酸素を低下させることによって、冷却水系の腐食を防止することができる。
【0013】
また、本発明において、前記貯留タンクは、電気ヒータを有することが好ましい。
この構成によれば、冬季等の操業開始時に所定の水温まで加温することができ、金型温度が一定になるまでの捨て打ち(製品にならない成形)回数を減少させることができ、材料ロス、エネルギロスを低減することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる冷却システムによれば、次のように優れた作用効果を発揮することができる。
1)チラーユニットは、上記冷却装置内に備えればよく、また、この冷却装置は、冷却塔を有しているので、外気の低い場合には、チラーユニットを停止し冷却塔のみで冷却流体を冷却するため、消費電気エネルギが最小の省エネルギ冷却システムとすることができる。
2)戻り管にはインバータ制御可能な冷却流体循環ポンプを介設し、前記熱交換器の前記冷却流体入口又は出口に流量制御弁を有するので、各々の機械設備に供給される冷却水と熱交換する冷却流体を流量制御しつつ適切に供給することができる。
3)冷却水系統が、各々の機械設備に備わっているので、万が一、特定の機械設備の冷却水系統に異常が発生した場合においても、他の機械設備に影響を与えることなく、個別に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明に係る冷却システムの一実施例を添付図面に基づいて詳述する。
図1は本発明に係る冷却システムの模式図である。図2は本発明を構成する冷却装置の一実施例の断面模式図である。図3は、図2の冷却装置の運転フローを示すチャート図である。
【0016】
[冷却システム]
図示するように、冷却システム100は、例えばダイカスト成形機やプラスチック成形機のような複数台の機械設備200A、200B、・・・・に各々設置される個別温調器50A、50B、・・・・とこれら個別温調器と熱交換を行う被冷却流体を供給する冷却装置1とから主に構成されている。
【0017】
個別温調器は、個別温調器50Aを代表して説明すると、冷却水を一時的に溜め置く貯留タンク52と、冷却水を機械設備200Aに供給する冷却水循環ポンプ54と、熱交換器56とを直列に介設された冷却水系58を有し、機械設備200Aとの間で冷却水を循環させている。そして、冷却水系58から分岐した一部の冷却水は、溶存酸素低下装置60を経由して貯留タンク52に戻るようにされている。また、冷却水系58には冷却水の温度を検知する温度検知器62を、貯留タンク52には冷却水を加熱可能なように電気ヒータ64を具備している。
【0018】
一方、冷却装置1から供給される被冷却流体は、往き管30aからそれぞれの個別温調器の熱交換器56に向けて分岐し、流量制御弁66を介して、熱交換器56に供給されるようになっている。そして、熱交換器56で熱交換した後の被冷却流体は、戻り管30bを経由して冷却装置1に戻るようにされている。なお、往き管30aと戻り管30bの末端はバイパス弁68を介して接続されており、被冷却流体循環ポンプ70に過負荷が加わらないように、バイパス弁68が開閉するようになっている。なお、符号72は被冷却流体が入ったサーバタンクである。
【0019】
そして、流量制御弁66、温度検知器62、電気ヒータ64、及び冷却水循環ポンプ54は、個別制御手段である個別制御盤74に接続されている。個別制御盤は、電気ヒータ64、及び冷却水循環ポンプ54のON、OFFを制御するとともに、温度検知器62からの出力を受けて、流量制御弁66に対して弁開度の指示信号を出力する。すなわち、所定の温度より低い場合には、弁開度を閉方向の指示信号を出力し、所定の温度よりも高い場合には、弁開度を開の方向の指示信号を出力する。
【0020】
また、個別温調器50Aに設けられた個別制御盤74は、集中制御盤76に接続され、個別制御盤74から冷却水温度データと冷却水流量データとを出力するように構成されている。そして、集中制御盤76は、各々の個別制御盤から出力された冷却水温度データの中で最も低い温度データを選択して、冷却装置1の制御盤(不図示)に出力する。また、冷却水流量データを積算し、その積算値から求めた冷却流体循環ポンプ70の回転数をインバータ制御装置78に出力する。
【0021】
したがって、各々の機械設備から要求される最低温度に基づいて上記冷却装置が運転され、冷却システム全体に必要な冷却流体流量に基づいて上記冷却水循環ポンプが運転されるので、更に最低限のエネルギを消費するだけで被冷却流体の供給を賄うことができる。
【0022】
ここで、被冷却流体は、熱交換器56を介して、冷却水に熱交換されるから、当然被冷却流体の温度のほうが冷却水よりも低いことが必要である。各々に異なる要求の冷却水温度に対して、有効に熱交換するためには、要求冷却水温度の2℃以上の温度差があれば可能である。しかし、被冷却流体と冷却水との温度差が2℃では熱交換器が大きくなり非経済的である。一方、被冷却流体と冷却水との温度差が5℃程度となると、熱交換器はコンパクトなもので済むが、省エネ性という点で好ましくない。したがって、冷却装置1から吐出される被冷却流体の温度は、集中制御盤76から出力された各所定の冷却温度の最低値から3℃低い温度とすることが望ましい。
【0023】
電気ヒータ64は、例えばシーズヒータを用いて、朝の立ち上がりリードタイムと冷却水系の保有量を考慮して、冷却水系を所定の温度に加熱できる容量を備えるようにすればよい。
【0024】
溶存酸素低下装置60は、例えば、特開2004−298793号公報に記載されるエジェクタとそれを用いた脱気装置で構成し、冷却水内に窒素を付加して溶存させ、溶融している酸素を脱気すればよい。
【0025】
[冷却装置]
次に、本発明を構成する冷却装置について、詳細に説明する。
図2に示すように、冷却装置1は、ケース(筐体)10の内部に収容された冷却塔2とその下方に配置されたチラーユニット3とを有し、ケース10の側部には外気を取り込むために通風孔(ルーバー)11が設けられている。冷却塔2は、上から順に、モータ20aにより駆動される冷却ファン(送風機)20bと、底面に散水孔(図示せず)を有する散水槽21と、内周側が入口ヘッダー22に接続され外周側が出口ヘッダー23に接続された密閉蒸発式の冷却ユニット24と、冷却ユニット24に散水される冷却水を補給する補給用水栓27とストレーナ26aを有する受水槽26を備えている。受水槽26と散水槽21とを接続する連結管28の途中には散水ポンプ29が設けられている。冷却ユニット24は、図示しないが銅管コイルを渦巻き状に巻回して形成された冷却パイプから構成されている。入口ヘッダー22には、冷却ユニット24内に被冷却流体を流入させるために往き管30aが接続され、出口ヘッダー23には、冷却ユニット24から流出する被冷却流体を蒸発器33a、33bに流すために戻り管30bが接続され、さらに蒸発器には、被冷却流体を外部機器(不図示)に戻すためにチラー部配管30dが接続されている。
【0026】
チラーユニット3は、各一対の圧縮機31a、31b、凝縮器32a、32b、蒸発器33a、33b及び膨張弁34a、34b及び冷媒が循環する冷媒管路35a、35bを含む。凝縮器32a、32bは、図示しないが渦巻き状に巻回して形成された伝熱パイプを有し、各伝熱パイプは入口ヘッダー36a、36bを介して一対の圧縮機31a、31bに接続され、また出口ヘッダー37a、37bを介して一対の膨張弁34a、34bに接続されている。さらにチラーユニット3においては、冷却ユニット24の上流側に設けられた往き管30aの途中(X)からバイパス管30cが分岐され、このバイパス管30cは冷却ユニット24の下流側に設けられた戻り管30bとその出口(X)で合流しかつ蒸発器33a、33bを通過するチラー部配管30dに接続されている。
【0027】
バイパス管30c及び戻り管30bの途中にはそれぞれ被冷却流体の流路を切り替える方向切換弁(二方弁)38a及び38bが設けられている。この方向切換弁38bは往き管30aの途中に設けてもよい。また往き管30aの入口付近、チラー部配管30dの出口付近、戻り管30bの途中及び受水槽26の周囲には、各々被冷却流体の入口温度を検出する温度センサ39a、被冷却流体の出口温度を検出する温度センサ39b、冷却ユニット24を通過後の被冷却流体の温度を検出する温度センサ39c及び外気湿球温度を検出する温度センサ39dが設置されている。
【0028】
上記冷却装置1の運転を制御する装置は、温度センサ39aで検出される被冷却流体の入口温度(T)、温度センサ39bで検出される被冷却流体の出口温度(T)、温度センサ39cで検出される冷却ユニット24通過後の被冷却流体の温度(T)及び温度センサ39dで検出される外気温度(T)に基いて上記方向切換弁38a及び38bの制御装置に開閉信号を出力するシーケンサを含む。
【0029】
上記冷却装置1の運転方法の一例を説明する。外気の温度(T)が設定温度(例えば20℃)より低い場合(例えば冬期)は、冷却水の温度は10℃位まで低下するので、被冷却流体は次の手順で冷却される。すなわちシーケンサ(不図示)から方向切換弁38aを閉じかつ方向切換弁38bを開く信号を出力することにより、外部機器(図示せず)で熱交換された高温の被冷却流体が冷却塔2の内部に導入され、冷却塔2の上部に配置された散水槽12の底面に設けた多数の小孔から冷却水が冷却ユニット24に均一に散布され、その冷却コイルの中を通過する被冷却流体が冷却される。この場合、散水された冷却水は冷却パイプの外周面に水膜を作りながら順に下方の冷却パイプに落下し、冷却パイプがそこに散水された水の蒸発潜熱で冷却され、冷却パイプ内の被冷却流体が冷却される。
【0030】
ここで、上記冷却ユニット24に散水される冷却水は、補給用水栓27から受水槽26に供給されるとともに、受水槽26の下部に設けられたストレーナ26aで挟雑物が除去された後、散水ポンプ29で汲み上げられて散水槽21に給送される。さらに冷却ユニット24は冷却水で冷却されることに加えて、送風機20bにより導入された外気によっても冷却される。冷却ユニット24で冷却された被冷却流体は、出口ヘッダー23からチラーユニット3に給送され、そこで冷却媒体に吸熱された後外部機器に給送される。チラーユニット3においては、圧縮機31a、31bで圧縮された冷媒(図示せず)を、凝縮器32a、32bで放熱し、膨張弁34a、34bを介して蒸発器33a、33b内で膨張蒸発して吸熱するサイクルが繰返される。凝縮器32a、32bにおいては、圧縮機31a、31bで圧縮された冷媒と、散水手段の一部である受水槽26から給送される冷却水及び冷却塔2の内部に導入される外気とが熱交換される。
【0031】
次に、夏期又は夏期と冬期の中間期のように外気温度が高い(例えば20℃以上)の場合は、冷却水の温度は20〜30℃になるため、被冷却流体は次の手順で冷却される。すなわちシーケンサから方向切換弁38aを開弁し、方向切換弁38bを閉弁する信号を出力することにより、冷却装置1内に流入した高温の被冷却流体は、冷却ユニット2を通らずにバイパス管30cに給送されてバイパス運転が行われる。
【0032】
このバイパス運転は図3に示す手順に従って実行される。ステップS1で、温度センサ39aで検出される被冷却流体の入口温度(T)と、温度センサ39cで検出される冷却ユニット24通過後の被冷却流体の温度(T)とを比較する。TよりもTの方が高い温度であれば、シーケンサから方向切替弁38aを「閉」、方向切替弁38bを「開」の信号を出力して、被冷却流体は冷却ユニット24に導入される(ステップ2)。一方、TとTの温度が等しいか、Tの方がTよりも高い温度の場合には、シーケンサから方向切替弁38aを「開」、方向切替弁38bを「閉」の信号を出力して、冷却ユニット24を経由せず、バイパス管30cから蒸発器33a、33bに被冷却流体を導入するバイパス運転を行う(ステップ3)。
【0033】
そして、バイパス運転を開始したときの外気温度(T01)を記憶しておき(ステップ4)、パイパス運転中は、現在の外気温度(T0)と、バイパス運転を開始したときの外気温度(T01)から所定の値(α)を減算した値とを比較している(ステップ5)。このときの所定の値(α)は、例えば1℃である。
【0034】
現在の外気温度(T0)が、バイパス運転を開始したときの外気温度(T01)から所定の値(α)を減算した値と等しいか、高い温度の場合には、運転を継続するか否かを判断し(ステップ6)、継続する場合には、そのままバイパス運転を継続する。一方、現在の外気温度(T0)が、バイパス運転を開始したときの外気温度(T01)から所定の値(α)を減算した値よりも低くなると、運転を継続するか否かを判断し(ステップ7)、継続する場合には再びステップ1に戻って、運転条件を判断する。
【0035】
また夏期又は夏期と冬期の中間期はバイパス運転が長期間に及ぶことがあるので、消費電力を節約するために、バイパス運転が行われていない場合、バイパス運転を行う時間がその設定時間を経過していない場合あるいはバイパス運転が実行された場合は、冷却装置に被冷却流体が流入する温度、冷却装置から被冷却流体が流出する温度、又は外気湿球温度を検出し、その温度を基準値と比較することにより、弁の切換え制御を行うことが望ましい。上記のバイパス運転は、1日当たり例えば12回の頻度(例えば118分間隔)で、タイマーで設定した時間(例えば2分間)だけ方向切換弁38aを閉弁しかつ方向切換弁38bを開弁する動作を繰り返すシーケンス制御を行うことにより実行される。このような弁の切換え制御により、冷却パイプの内部に流入した被冷却流体がそこに滞留することが防止される。タイマーによる上記設定時間(方向切換弁38bを開く時間)は、冷却ユニット24内の被冷却流体が全て入れ替わるだけの時間に設定すればよい。
【0036】
したがって、特に外気温度が低い場合に、チラーユニット3を停止させ、冷却塔2のみで熱交換を行って被冷却流体を冷却することができるので、無駄な電力を消費することなく、冷却効率の高い状態で被冷却流体を供給することができる。
【0037】
上記冷却装置は、図2に示す構造に限らず、種々の変更が可能である。例えば上記冷却装置において、散水槽及び受水槽を含む散水機構を省略した空冷式冷却装置とすることができる。この空冷式冷却装置によれば、水冷式のものよりも冷却能力はやや低下し、消費電力はやや増加するが、冷却コイルにスケールが付着しないので、保守点検が容易になるという利点がある。
【0038】
また、上記冷却装置は、主に屋外に設置される。この場合、被冷却流体をブライン(不凍液)とすれば、冬季の凍結防止が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る冷却システムの一例を示す模式図である。
【図2】本発明に係る冷却システムの模式図である。
【図3】図2の冷却装置の運転フローを示すチャート図である。
【符号の説明】
【0040】
1:冷却装置、10:筐体、11:ルーバー
2:冷却塔、20a:モータ、20b:送風機、21:散水槽、22:入口ヘッダー、23:出口ヘッダー、24:冷却ユニット、26:受水槽、26a:ストレーナ、27:補給用水栓、28:連結管、29:散水ポンプ、
3:チラーユニット、30a:往き管、30b:戻り管、30c:バイパス管、30d:チラー部配管、31a、31b:圧縮機、32a、32b:凝縮器、33a、33b:蒸発器、34a、34b:膨張弁、35a、35b:冷媒管路、36a、36b:入口ヘッダー、37a、37b:出口ヘッダー、38a、38b:方向切換弁、39a、39b、39c、39d:温度センサ
50A、50B:個別温調器、52:貯留タンク、54:冷却水循環ポンプ、56:熱交換器、58:冷却水系
60:溶存酸素低下装置、62:温度検知器、64:電気ヒータ、66:流量制御弁、68:バイパス弁
70:被冷却流体循環ポンプ、72:サーバタンク、74:個別制御盤、76:集中制御盤、78:インバータ制御装置
100:冷却システム、200A、200B:機械設備

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱負荷源である複数の機械設備に冷却水を供給する冷却システムであって、
冷却水を一時的に溜め置く貯留タンクと、冷却水を前記機械設備に供給する冷却水循環ポンプと、冷却水の温度を検知する温度検知器と、熱交換器を具備した個別温調器を前記複数の機械設備に各々備え、
前記熱交換器に冷却流体を供給する冷却装置の往き管と戻り管とを、各々の前記熱交換器に接続し、
前記冷却装置は、冷却流体が流入する往き管と冷却流体が流出する戻り管とに接続される冷却ユニットと前記冷却ユニットを冷却する冷却手段とを含む冷却塔と、圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器を含み、この順に冷媒が循環する冷媒管路を有するチラーユニットとを備え、前記凝縮器は、前記冷却塔の内部に配置されて、前記圧縮機で冷却された冷媒が前記冷却手段より給送された冷却媒体と熱交換されるとともに、前記往き管から分岐されかつ前記戻り管と合流すると共に前記被冷却流体を前記蒸発器に流すチラー部配管に接続されるバイパス管と、前記バイパス管の途中及び前記往き管又は前記戻り管の途中に各々設けられて前記被冷却流体を前記冷却ユニット又は前記バイパス管に流す流路切換手段とを具備し、
前記戻り管にはインバータ制御可能な冷却流体循環ポンプを介設し、前記熱交換器の前記冷却流体入口又は出口に流量制御弁を有することを特徴とする冷却システム。
【請求項2】
前記個別温調器は、個別制御手段を具備し、該個別制御手段は、前記温度検知器の出力に基づいて、前記流量制御弁の弁開度を制御することを特徴とする請求項1に記載の冷却システム。
【請求項3】
前記冷却システムは、集中制御手段を具備し、該集中制御手段は、前記個別制御手段から、個別の冷却水温度データと、個別の冷却水流量データとを受け、
前記個別の冷却水温度データの最低温度を前記冷却装置に出力するとともに、前記個別の冷却水流量データの積算値を冷却流体循環ポンプに出力し、前記冷却装置は、この冷却水温度データの最低温度に基づいて、前記冷却流体の冷却温度を決定し、前記冷却流体循環ポンプは、冷却水流量データの積算値に基づいて吐出流量を決定することを特徴とする請求項2に記載の冷却システム。
【請求項4】
前記個別温調器は、冷却水の溶存酸素低下装置を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の冷却システム。
【請求項5】
前記貯留タンクは、電気ヒータを有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の冷却システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−192088(P2009−192088A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29885(P2008−29885)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】