説明

冷却器モジュール

【課題】少なくとも2つの熱交換器を備えた冷却器モジュールにおいて、熱交換器の膨張および収縮動作が妨げされず、また、熱交換器の振動が互いに伝達しないようにする。
【解決手段】自動車内に配置され、水冷冷却器および空冷冷却器等の少なくとも2つの熱交換器(1、2)と、2つの弾力性を有する軸受(4、5)からなる支持部(3)とを備える。軸受(4、5)は、自動車の支持ビーム(10)の上に載置されるとともに、熱交換器(1)のストレージボックス(14)または側部(31)に固定された支持プレート(20、30)に取り付けられる。軸受(4、5)は少なくとも2つの部分から形成され、これらの部分の間には弾力性を有するエレメントが配置される。熱交換器(1、2)が、それぞれ独立に、弾性的に支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車内に配置され、水冷冷却器および空冷冷却器等の少なくとも2つの熱交換器と、2つの弾力性を有する軸受からなる支持部と、を備えた冷却器モジュールに関するものであり、この場合、支持部は、その一方が自動車の支持ビーム上に載置され、他方が冷却器に固定された支持プレート上に取り付けられ、それによって、冷却器モジュールの自動車内における弾性的な支持が達成されるようになっている。また、本発明は、弾力性を有する軸受に関するものである。
【背景技術】
【0002】
DE10018000B4およびDE4411456B4には、この種の冷却器モジュールが記載されている。これらの文献においては、支持プレートが空冷冷却器の吸気パイプおよび排気パイプに固定される。これに反して、水冷冷却器またはその他の液状冷却媒体を用いる冷却器はこれに接触して固定される。それ故、支持プレートは、冷却器モジュールの全体を支持しなければならない。振動を減衰させる支柱によっては、空冷冷却器から直接的に水冷冷却器に伝達される振動を減衰させることができず、これは明らかな不利益となっている。さらに、これら2つの冷却器の間の振動は、冷却器の膨張および収縮過程に悪影響を及ぼし、その結果、温度変化による負荷が生じてしまう。
【特許文献1】DE10018000B4
【特許文献1】DE4411456B4
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、上述のような従来の冷却器モジュールの欠点を取り除くことにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、本発明は、自動車内に配置され、水冷冷却器および空冷冷却器等の少なくとも2つの熱交換器と、2つの弾力性を有する軸受からなる支持部と、を備え、前記弾力性を有する軸受は、自動車の支持ビームの上に載置されるとともに、前記熱交換器のストレージボックスまたは側部に固定された支持プレートに取り付けられ、前記弾力性を有する軸受は少なくとも2つの部分から形成され、前記少なくとも2つの部分の間には弾力性を有するエレメントが配置された冷却器モジュールにおいて、前記熱交換器が、それぞれ独立に、弾性的に支持されていることを特徴とする冷却器モジュールを構成したものである。
なお、本発明において、「水冷冷却器」には、冷却媒体として水を使用する冷却器に加えて、水以外の公知の液状冷却媒体を使用する冷却器も含む。
【0005】
上記構成において、好ましくは、個々の前記支持部は、前記弾力性を有する軸受内に備えられている。
また、前記弾力性を有する軸受は、それぞれ、前記弾力性を有するエレメント上に配置された運動可能な押圧プレートを有し、前記押圧プレートの上には前記支持プレートを介して前記熱交換器が載置され、それによって、前記支持部が構成されていることが好ましい。
また、好ましくは、前記弾力性を有する軸受は、それぞれ、前記押圧プレートの下側において、弾力性を有するエレメント内に、第2の前記熱交換器を支持する支持エレメントのための少なくとも1つの受け部を有しており、それによって、第2の支持部が構成されている。
【0006】
また、前記弾力性を有する軸受のそれぞれの前記2つの部分は、少なくとも部分的に互いを補完する形状を有し、前記2つの部分の間に、ゴム材料から形成された前記弾力性を有するエレメントが配置されていることが好ましい。
また好ましくは、前記押圧プレートが、第3の部分として、前記第1の部分の形状内に設けられ、前記形状は、それを補完する前記第2の部分の形状内にのびている。
また、前記弾力性を有する軸受の前記2つの部分のうちの第1の部分は押圧プレートから形成されるとともに、第2の部分の形状内において前記弾力性を有するエレメント上に運動可能に配置されていることが好ましい。
【0007】
また、前記熱交換器は、冷却水が流れる方向に前後に並んで配置されているが、それらを支持するためのいかなる結合もその上下に有していないことが好ましく、また、個々の前記支持部は、前記弾力性を有する軸受内において、互いに上下に並んで配置されていることが好ましい。
また好ましくは、前記第2の熱交換器の支持プレートは、その側部に対して取り外し可能にまたは取り外し不可能に取り付けられている。
【0008】
上記課題を解決するため、また、本発明は、少なくとも2つの熱交換器を備えた冷却器モジュールの支持部のための弾力性を有する軸受であって、第1および第2の部分、並びにそれら2つの部分の間に配置された弾力性を有するエレメントからなる上述の軸受において、個々の前記熱交換器の個々の支持部に対する手段を有していることを特徴とする軸受を構成したものである。
【発明の効果】
【0009】
冷却器モジュールの冷却器(熱交換器)は、それぞれ独立に、弾力性を有する軸受に支持されているので、冷却器(熱交換器)の間には、それらを支持するためのいかなる結合構造も存在せず、よって熱交換器の膨張および収縮動作が妨げられることがない。加えて、一方の熱交換器の振動は、他方の熱交換器の周囲には全く、あるいはほとんど伝達することはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図示されない自動車内に組み込まれた冷却器モジュールは、この実施例では、単に2つの熱交換器のみから構成される。図1において、視線方向後ろ側には空冷冷却としての熱交換器1が配置され、前側には水冷冷却器としての熱交換器2が配置されている。なお、冷却器モジュールの構成の一部が、ここでは省略されている。図1には、冷却器モジュールの一方の側部だけが図示されており、自動車の2本の支持ビーム10のうちの1本だけが示されている。図示されない他方の側部は、同一の構成を有しており、第2の支持ビーム10に第2の弾力性を有する軸受5およびそれと同一の他方の部分が指示されている。
【0011】
水冷冷却器2は、上側および下側の水平に配置されたストレージボックス24を有していて、これらのストレージボックス24の間には、図示されない冷却器のためのフランジ管が配置され、さらに、このフランジ管の間には冷却空気のために波状リブが挿入されており、それによって、垂直方向に2つの冷却器1、2を通って流体が流れるようになっている。これに反して、空冷冷却器1は、2つの垂直に配置されたストレージボックス14を備えている。
【0012】
冷却空気のストレージボックス14上には、冷却空気のための流入パイプおよび流出パイプ7、8が配置されている。これらは、部分的に図示されている。流入および流出パイプ7、8に接して支持プレート20が配置され、支持プレート20は、空冷冷却器1の支持のために使用される。この実施例では、流入および流出パイプ7、8を含むストレージボックス14が、アルミニウムから圧縮ガス法において製造され、自動車内に組み込まれる。この製造方法は、既に公知のものである。
【0013】
図1からわかるように、支持プレート20は流入および流出パイプ7、8に一体形成され、同時に、リブを備えている。支持プレート20は、弾力性を有する軸受4、5の弾力性を有する押圧プレート60の上に載置される。これの詳細については、後に図7を参照して説明する。冷却器2は、その両方のストレージボックス24に結合された側部31を有し、側部31には支持エレメント30が固定され、支持エレメント30は、水冷冷却器2の弾力性を有する軸受4、5内での支持のために使用される。両方の側部31は互いに筋交い35によって結合されている。
【0014】
図示の実施例では、両方の側部31はそれぞれ2つの支持エレメント35を備えている。支持エレメント30は、側方に突出するクランプ状に曲がった部分を指示ている。クランプ状に曲がった部分32は、上側または下側から互いに並んで押圧プレート60の下側を通って対応する受け部70までのびている。受け部70は弾力性を有するエレメント6内において弾力性を有する軸受4、5を形成する。これら2つのクランプ状に曲がった部分32はまた、比較的近接して配置することができ、独立な受け部70内に案内される。
【0015】
図8は、2つの弾力性を有する軸受4、5の詳細を断面図で示したものである。この断面は、図7に示した軸受の中心線に沿ってとったものである。軸受4、5は、第1のまたは上側の部分4.1と、第2のまたは下側の部分4.2からなっている。2つの部分4.1、4.2は、互いに補完する形状を有し、互いに他方を下側から押し付けるようになっている。それによって、これら2つの部分4.1、4.2はクランプのように左右の縁において互いに被さり合っている。
【0016】
中心線に沿った断面において、上側の部分4.1は、下側の部分4.2の形状62を補完する形状61を有している。2つの部分4.1、4.2の間には、弾力性を有するエレメント(6)が配置されている。第2のまたは下側の部分4.2の下側には、自動車の支持ビーム10が位置している。固定エレメント90が、第2のまたは下側の部分4.2に取り外し可能に結合される。固定エレメント40は、支持プレート20を第1のまたは上側の部分4.1に固定するために用いられる。図8からわかるように、第3の部分として機能する垂直な運動可能な押圧プレート60が、第1のまたは上側の部分4.1の上述した受け部または形状内に配置される。押圧プレート60上には、弾力性を有するエレメント6が載置される。
【0017】
押圧プレート60は、負荷のない位置において、実質上第1のまたは上側の部分4.1から上方に突出しており、それによって、いわばバネ用の作用を自由に生じさせることができる。空冷冷却器1の重量を支持する支持プレート20のさらなる固定エレメント40が選択されて、上側部分4.1に固定される場合には、この突出状態は、弾力性を有するエレメント6の押圧によって減じられる。弾力性を有するエレメント6の弾性は当業者によってその都度適当に選択され、それによって、存在する軸受荷重に対応せしめられることは言うまでもない。さらに、弾性を有するエレメント6内に空洞部を設けることで、この弾力性がさらに高められることは明らかである。
【0018】
弾力性を有するエレメント6内には、受け部70が設けられ、受け部70は、実質上支持エレメント31のクランプ状に曲げられた部分32の断面に対応しており、それによって、所望の収容が達成される。
【0019】
本発明によれば、2つの熱交換器1、2の間には、如何なる水平方向の結合構造も存在しないので、個々の熱交換器の交換が例えば、メンテナンスの際に非常に簡単になされる。さらに、従来の技術においては、一方の熱交換器が他方の熱交換器の重量および慣性を支えなければならないので、それに対応する安定した構造が必要となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施例による冷却器モジュールの部分的な斜視図である。
【図2】図1の冷却モジュールにおける弾力性を有する軸受の変形例を示した斜視図である。
【図3】図1の冷却モジュールにおける弾力性を有する軸受の変形例を示した斜視図である。
【図4】図1の冷却モジュールにおける弾力性を有する軸受の変形例を示した斜視図である。
【図5】図1の冷却モジュールにおける弾力性を有する軸受の変形例を示した斜視図である。
【図6】図1の冷却モジュールにおける弾力性を有する軸受の変形例を示した斜視図である。
【図7】図1の冷却モジュールにおける弾力性を有する軸受の変形例を示した斜視図である。
【図8】図7の軸受の断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1、2 熱交換器
3 支持部
4、5 軸受
4.1、4.2 軸受の少なくとも2つの部分
6 エレメント
10 支持ビーム
14 ストレージボックス
20、30 支持プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車内に配置され、水冷冷却器および空冷冷却器等の少なくとも2つの熱交換器(1、2)と、2つの弾力性を有する軸受(4、5)からなる支持部(3)と、を備え、
前記弾力性を有する軸受(4、5)は、自動車の支持ビーム(10)の上に載置されるとともに、前記熱交換器(1)のストレージボックス(14)または側部(31)に固定された支持プレート(20、30)に取り付けられ、前記弾力性を有する軸受(4、5)は少なくとも2つの部分(4.1、4.2)から形成され、前記少なくとも2つの部分(4.1、4.2)の間には弾力性を有するエレメント(6)が配置された冷却器モジュールにおいて、
前記熱交換器(1、2)が、それぞれ独立に、弾性的に支持されていることを特徴とする冷却器モジュール。
【請求項2】
個々の前記支持部(3)は、前記弾力性を有する軸受(4、5)内に備えられていることを特徴する請求項1に記載の冷却器モジュール。
【請求項3】
前記弾力性を有する軸受(4、5)は、それぞれ、前記弾力性を有するエレメント(6)上に配置された運動可能な押圧プレート(60)を有し、前記押圧プレート(60)の上には前記支持プレート(20)を介して前記熱交換器(1)が載置され、それによって、前記支持部(3)が構成されていることを特徴する請求項1または請求項2に記載の冷却器モジュール。
【請求項4】
前記弾力性を有する軸受(4、5)は、それぞれ、前記押圧プレート(60)の下側において、弾力性を有するエレメント(6)内に、第2の前記熱交換器(2)を支持する支持エレメント(30)のための少なくとも1つの受け部(70)を有しており、それによって、第2の支持部が構成されていることを特徴する請求項1〜請求項3のいずれかに記載の冷却器モジュール。
【請求項5】
前記弾力性を有する軸受(4、5)のそれぞれの前記2つの部分(4.1、4.2)は、少なくとも部分的に互いを補完する形状を有し、前記2つの部分の間に、ゴム材料から形成された前記弾力性を有するエレメント(6)が配置されていることを特徴する請求項1〜請求項4のいずれかに記載の冷却器モジュール。
【請求項6】
前記押圧プレート(60)が、第3の部分として、前記第1の部分(4.1)の形状(61)内に設けられ、前記形状(61)は、それを補完する前記第2の部分(4.2)の形状(62)内にのびていることを特徴する請求項1〜請求項5のいずれかに記載の冷却器モジュール。
【請求項7】
前記弾力性を有する軸受(4、5)の前記2つの部分のうちの第1の部分(4.1)は押圧プレート(60)から形成されるとともに、第2の部分(4.2)の形状(62)内において前記弾力性を有するエレメント(6)上に運動可能に配置されていることを特徴する請求項1〜請求項4のいずれかに記載の冷却器モジュール。
【請求項8】
前記熱交換器(1、2)は、冷却水が流れる方向に前後に並んで配置されているが、それらを支持するためのいかなる結合もその上下に有していないことを特徴する請求項1〜請求項7のいずれかに記載の冷却器モジュール。
【請求項9】
個々の前記支持部(3)は、前記弾力性を有する軸受内において、互いに上下に並んで配置されていることを特徴する請求項1〜請求項8のいずれかに記載の冷却器モジュール。
【請求項10】
前記第2の熱交換器(2)の支持プレート(30)は、その側部(31)に対して取り外し可能にまたは取り外し不可能に取り付けられていることを特徴する請求項1〜請求項9のいずれかに記載の冷却器モジュール。
【請求項11】
少なくとも2つの熱交換器(12)を備えた冷却器モジュールの支持部のための弾力性を有する軸受であって、第1および第2の部分(4.1、4.2)、並びにそれら2つの部分の間に配置された弾力性を有するエレメント(6)からなる請求項1〜請求項10のいずれかに記載の軸受において、
個々の前記熱交換器の個々の支持部に対する手段を有していることを特徴とする軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−62723(P2007−62723A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−230227(P2006−230227)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(592079675)モーディーン・マニュファクチャリング・カンパニー (60)
【氏名又は名称原語表記】MODINE MANUFACTURING COMPANY
【Fターム(参考)】