説明

冷却媒体・離型剤噴霧装置

【課題】 液状の離型剤を金型のキャビティ表面に広範囲に均等に噴霧できるようにすると共に、ノズルの大気開口部からの噴出勢いも過不足なく実現し、かつ低騒音である噴霧ノズルユニットを備えた冷却媒体・離型剤噴霧装置を提供する。
【解決手段】 液状離型剤の供給開口部54の中心と圧縮空気の噴出開口部44と導入開口部43との中心を同軸中心線上に配置することにより該中心に対して点対称的に均等な環状乱流噴流を実現すると共に、圧縮空気の噴出開口部44と導入開口部43とを接続する流路の一部を所定角度のテーパ内壁面形状とすることによってテーパ内壁面46での渦流損失を抑制し、かつ噴出開口部44の流路面積と導入開口部43の流路面積との比率を略1:3とすることによって内部の圧力降下を最低限に抑えて噴出開口部44の直前圧力を最大限引き出すようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却媒体・離型剤噴霧装置に関し、特に金型のキャビティ表面に冷却媒体や離型剤を噴霧する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に示されるように、ダイカストマシンその他の成形機においては、型開状態になる都度、金型への離型剤付着性を良くするために金型キャビティ表面に冷却液媒体を噴霧して金型キャビティの温度を所定値に降下させる。しかる後、金型から鋳込み製品の型離れを良くするために、金型キャビティ表面に液状離型剤が噴霧されるようになっている。この冷却液媒体や液状離型剤は離型剤噴霧装置内で圧縮空気の作用によって霧化される。
【特許文献1】特開平8−168865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、この特許文献1に開示される装置においては、圧縮空気の噴流の方向と離型剤の流れ方向が概ね直行する構造とされているため、離型剤供給開口部が圧縮空気の噴流の方向にわずかでも逆行する方向に傾いて取付けられた場合、離型剤供給路の開口部には圧縮空気の噴流動圧が正の静圧として作用し離型剤の供給が阻害されることになる。また逆に離型剤供給開口部が圧縮空気の噴流の方向にわずかでも順ずる方向に傾いて取付けられた場合、離型剤供給路の開口部には圧縮空気の噴流による負の誘引静圧が働き設定量以上の離型剤が引き出されて過供給されることになる。また構造上、圧縮空気の噴出している流れの中に離型剤供給パイプが不本意にも配設されることになるため、ノズル内部での噴流空気の流れは局部的に乱され不均一になり、ノズルの大気開口部から均一な噴霧状態を実現するのは非常に困難である。また離型剤供給パイプを圧縮空気の噴流中に配設した場合、圧縮空気の噴流が局部的に乱される際に大きな空気の剥離騒音を発生させてしまう。
【0004】
更に、ひとつのノズルに複数の離型剤供給パイプを配設した場合は、各々離型剤供給パイプの取付け精度のばらつきに依って、ノズルの大気開口部からの噴霧状態は不均一となり、従って金型のキャビティ表面に付着する離型剤の膜厚も不均一になってしまう。何れにしても離型剤供給パイプの本数に関係なく、ノズルの大気開口部から均一な噴霧状態を実現するのが非常に困難で、従って金型のキャビティ表面に付着する離型剤の膜厚も不均一となる。対策として霧状離型剤を重ね塗りするとか、噴霧ノズルユニットの取付け個数を増やすなどして離型剤の付着むらを低減することが必要となる。
【0005】
それ故に、本発明は、ノズルの大気開口部からの噴霧状態がより均一でより細かく広範囲にわたって実現することによって液状の離型剤を金型のキャビティ表面に広範囲に均等に噴霧できるようにすると共に、ノズルの大気開口部からの噴出勢いも過不足なく実現し、かつ低騒音である冷却媒体・離型剤噴霧装置を提供することをその技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記技術的課題を解決するために、本発明の請求項1において講じた技術的手段(以下、第1の技術的手段と称する。)は、
液状離型剤の供給開口部の中心と圧縮空気の噴出開口部と導入開口部との中心を同軸中心線上に配置し、かつ圧縮空気の噴出開口部と導入開口部とを接続する流路の一部を所定角度20度のテーパ内壁面形状とし、該噴出開口部の流路面積と導入開口部の流路面積との比率が略1:3である噴霧ノズルユニットを備えた冷却媒体・離型剤噴霧装置を構成したことである。
【0007】
上記技術的課題を解決するために、本発明の請求項2において講じた技術的手段(以下、第2の技術的手段と称する。)は、第1の技術手段の噴霧ノズルユニットにおいて、圧縮空気の噴出開口部と導入開口部を接続する流路の一部を10度から40度のテーパ内壁面形状であるようにしたことである。
【0008】
上記技術的課題を解決するために、本発明の請求項3において講じた技術的手段(以下、第3の技術的手段と称する。)は、第1の技術手段の噴霧ノズルユニットにおいて、所定角度のテーパ内壁面の小径端から液状離型剤の供給開口部までの距離を圧縮空気の噴出開口部と液状離型剤の供給開口部との半径隙間寸法に対して0倍から10倍であるようにした噴霧ノズルユニットを備えた冷却媒体・離型剤噴霧装置を構成したことである。
【0009】
上記技術的課題を解決するために、本発明の請求項4において講じた技術的手段(以下、第4の技術的手段と称する。)は、第1の技術手段の噴霧ノズルユニットにおいて、液状離型剤の供給開口部から大気開口部までの距離を大気開口部の孔径寸法に対して0.5倍から10倍であるようにしたことである。
【0010】
上記技術的課題を解決するために、本発明の請求項5において講じた技術的手段(以下、第5の技術的手段と称する。)は、第1の技術手段の噴霧ノズルユニットにおいて、液状離型剤の供給開口部の内径角部と外径角部および大気開口部の内径角部にC0mmからC1mmの直線面取りを施すか、又はR0mmからR1mmの曲線面取りを施したことである。
【0011】
上記第1の技術的手段による作用は、以下のようである。
【0012】
すなわち、図示せぬ圧縮空気源から離型剤噴霧装置内の噴霧ノズルユニット部に供給された圧縮空気は導入開口部から噴出開口部へ流れて行き、液状離型剤の供給開口部の外側を通過した直後に急激に膨張する。該膨張エネルギのミキシング作用によって離型剤の供給開口部から流出した液状離型剤を微粒霧に変化させることが可能となる。この時、圧縮空気の静圧エネルギは小さくなり、代りに動圧エネルギが大きくなって噴出空気の流速は絶対圧力比に比例して著しく増大し、従ってノズルの大気開口部からの噴出勢いも増大することになる。なお液状離型剤は図示せぬ離型剤ポンプから冷却媒体・離型剤噴霧装置内の噴霧ノズルユニット部へ加圧供給される。
【0013】
液状離型剤の供給開口部の中心と圧縮空気の噴出開口部と導入開口部との中心を同軸中心線上に配置することによって、圧縮空気の噴出開口部における空気の流れは該中心に対して点対称的に均等な環状乱流噴流を実現する。また、圧縮空気の噴出開口部の流路面積である噴出面積と導入開口部の流路面積である導入面積との比率を略1:3にすることによって、該導入開口部から連続的に供給された圧縮空気の圧力は噴出開口部の直前においてわずかの低下で済み、必要十分な圧縮空気を噴出開口部へ供給することが可能となる。すなわち、液状離型剤の供給開口部の中心と圧縮空気の噴出開口部と導入開口部との中心を同軸中心線上に配置することによって均一な噴出流を実現すると共に、噴出面積と導入面積との比率を略1:3にすることによって噴出開口部の直前圧力を効果的に高く引き出して、液状離型剤のより細かな微粒化と勢いのよい噴霧ノズルを実現することができる。なお、圧縮空気の噴出開口部の直前圧力を効果的に高く引き出すことは、液状離型剤の供給開口部の外側を圧縮空気が通過した直後の膨張エネルギを大きくすることになり、離型剤の供給開口部から流出した液状離型剤を大きな膨張エネルギのミキシング作用で、より細かな微粒霧に変化させることが可能となる。
【0014】
上記第2の技術的手段による作用は、以下のようである。
【0015】
すなわち、噴出開口部の直前圧力を可能な限り高圧に維持するために前記の噴出面積と導入面積との比率を略1:3にするのだが、さらに噴出開口部と導入開口部を接続する流路の一部を10度から40度のテーパ内壁面形状とすることに依り、導入開口部から噴出開口部に至るノズル内部での渦流損失の発生を抑制することができ、噴出開口部の直前圧力をより高圧に最大限維持することができる。すなわち圧縮空気の噴出開口部の直前圧力を最大限まで高く維持することができるので液状離型剤の供給開口部の外側を圧縮空気が通過した直後の膨張エネルギを最大化することになり、離型剤の供給開口部から流出した液状離型剤をより大きな膨張エネルギのミキシング作用で、より細かな微粒霧に変化させることが可能となると共に、ノズルの大気開口部からの噴出勢いも増大することになる。
【0016】
従って、本発明の冷却媒体・離型剤噴霧装置では、圧縮空気の圧力を従来よりも低い供給圧力の条件で、従来と同じ噴霧状態を得ることができるので、多数の冷却媒体・離型剤噴霧装置を有するダイカスト工場における省エネルギ化に貢献することができる。
【0017】
もっとも、圧縮空気の噴出開口部と導入開口部とを接続するテーパ内壁面の所定角度についてはノズル内部での渦流の発生を抑制する観点からするならば小さい程よいことになるが、小さすぎると噴霧ノズルユニット内のノズル部が長くなってダイカストマシンの型開空間を広くしなければならない設備上の問題が発生するだけでなく、製作上の限界の問題も発生することから、現実の使用・加工の状況などから総合的に判断すると、かかる所定角度は10度から40度が適切な範囲と言える。
【0018】
上記第3の技術的手段による作用は、以下のようである。
【0019】
所定角度のテーパ内壁面を経てテーパ小径端へ流れた圧縮空気は該テーパ小径端部においてテーパ流から噴出開口部の中心線と同一平行方向への流れに変わる。前記テーパ内壁面の小径端から液状離型剤の供給開口部までの距離が圧縮空気の噴出開口部と液状離型剤の供給開口部との半径隙間寸法に対して長過ぎると圧縮空気の流路抵抗が増大し、噴出開口部の直前圧力を効果的に高く引き出すことができなくなる。従ってテーパ内壁面の小径端から液状離型剤の供給開口部までの距離を圧縮空気の噴出開口部と液状離型剤の供給開口部との半径隙間寸法に対して2.5倍としている。この倍率は流路抵抗が少なく適切な平行方向の流れを得るために適している値であることが経験上わかっている。
【0020】
もっとも、圧縮空気の流路抵抗を小さくする観点からするならばテーパ内壁面の小径端から液状離型剤の供給開口部までの距離は短い程よいことになるが、短過ぎると圧縮空気の供給圧力が高い場合は平行流の乱れが多く発生してしまうという問題がある。ただし、圧縮空気の供給圧力が低い場合はテーパ内壁面の小径端から液状離型剤の供給開口部までの距離はゼロでも問題が無い。また、圧縮空気の噴出開口部と液状離型剤の供給開口部との半径隙間寸法が大きい場合はテーパ内壁面の小径端から液状離型剤の供給開口部までの距離を流路抵抗に差支えが無い範囲で長くしても問題にならない。すなわち圧縮空気の噴出開口部と液状離型剤の供給開口部との半径隙間寸法に対するテーパ内壁面の小径端から液状離型剤の供給開口部までの距離には何らかの関係がある。従って短過ぎると平行流の乱れが多く発生して問題があり、長過ぎると流路抵抗の増大や噴霧ノズルユニット内のノズル部が長くなってダイカストマシンの型開空間を広くしなければならないという設備上の問題が発生する。また圧縮空気や離型剤の供給圧力の変動によっても最適な噴霧条件は変わってくることから、現実の使用状況などから総合的に判断すると、かかるテーパ内壁面の小径端から液状離型剤の供給開口部までの距離は圧縮空気の噴出開口部と液状離型剤の供給開口部との半径隙間寸法に対して0倍から10倍が適切な範囲と言える。
【0021】
上記第4の技術的手段による作用は、以下のようである。
【0022】
噴出開口部から流出した直後の圧縮空気は膨張エネルギによって離型剤の供給開口部から流出した液状離型剤を微粒霧に変化させると共に微粒霧化した離型剤をノズルの大気開口部から勢いよく噴出させることは請求項1でも述べた。ここで離型剤の供給開口部から大気開口部までの距離と大気開口部の孔径寸法との間には何らかの関係がある。すなわち大気開口部の孔径寸法を一定にして比較した場合、離型剤の供給開口部から大気開口部までの距離を短くすると大気開口部からの噴霧は広角の広がりをもたらすが、逆に離型剤の供給開口部から大気開口部までの距離を長くすると大気開口部からの噴霧は狭角にしか広がらない。従って大気開口部から広角に噴霧された場合は離型剤密度が低くなるため金型キャビティ表面への単位面積当りの付着量も少なくなって鋳込み条件に依っては問題になる場合がある。逆に狭角に噴霧された場合は離型剤密度が高くなるため金型キャビティ表面への単位面積当りの付着量も多くなり、金型キャビティ表面での離型剤の液垂れ問題が発生する場合もある。すなわち噴霧角度に関して大気開口部の孔径寸法と離型剤の供給開口部から大気開口部までの距離には何らかの関係があり、経験上ここでは離型剤の供給開口部から大気開口部までの距離を大気開口部の孔径寸法の2.5倍に設定している。ただし寸法関係以外にも圧縮空気の供給圧力や液状離型剤の供給圧力が噴霧角度に影響を与えるので、それらの圧力変動を考慮すれば液状離型剤の供給開口部から大気開口部までの距離を大気開口部の孔径寸法に対して経験上0.5倍から10倍が適切な範囲と言える。
【0023】
上記第5の技術的手段による作用は、以下のようである。
【0024】
液状離型剤の供給開口部において内径角部に大きな直線面取りや大きな曲線面取りがあると、粘性流体である液状離型剤の一部は面取りの面に沿って流れて行くので本来行くべき方向の流量や流勢が阻害される。また圧縮空気が液状離型剤の供給開口部の外径角部を通過する場合、該外径角部に大きな直線面取りや大きな曲線面取りがあると、同じく粘性流体である圧縮空気の一部は面取りの面に沿って流れて行くので本来行くべき方向の流量や流勢が阻害される。また霧化された
離型剤が大気開口部の内径角部を通過する場合、該内径角部に大きな直線面取りや大きな曲線面取りがあると、同じく粘性流体である霧状離型剤の一部は面取りの面に沿って流れて行くので本来行くべき方向の流量や流勢が阻害される。従って液状離型剤の供給開口部の内径角部と外径角部および大気開口部の内径角部の面取りをC0mmからC1.5mmの直線面取り、又はR0mmからR1.5mmの曲線面取りに限定することに依り、本来行くべき方向の流量や流勢を維持できるようにした。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明の冷却媒体・離型剤噴霧装置では、噴霧ノズルユニットにおける液状離型剤の供給開口部の中心と圧縮空気の噴出開口部と導入開口部との中心を同軸中心線上に配置し、かつ圧縮空気の噴出開口部と導入開口部を接続する流路の一部を渦流損失の発生し難い角度を有したテーパ内壁面形状とし、噴出開口部の流路面積である噴出面積と導入開口部の流路面積である導入面積との比率を略1:3とした。さらにテーパ内壁面の小径端から液状離型剤の供給開口部までの距離を最適化し、かつ液状離型剤の供給開口部から大気開口部までの距離を最適化すると共に、流体通路の各内径角部や外径角部の面取りが無いように形成した。それにより広範囲に均一な噴出流を実現することができるので液状の離型剤を金型のキャビティ表面に広範囲に均等に噴霧できると共に、液状離型剤のより細かな微粒化と勢いのよい噴霧ノズルを実現することができる。従って、本発明の離型剤噴霧装置では、圧縮空気の圧力を従来よりも低い供給圧力の条件で、従来と同じ噴霧状態を得ることができるので、工場における省エネルギ化にも貢献することができる。また圧縮空気の圧力を従来と同じ供給条件で使用した場合、より微細化した離型剤微粒霧が流速の勢をさらに増して金型のキャビティ表面に噴霧されるので、金型をより早く冷却することができ生産効率・稼動率を向上させることができると共に、焼付きによる不良の発生を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明にかかる冷却媒体・離型剤噴霧装置の実施形態例を具体的に説明する。
【0027】
図1は冷却媒体・離型剤噴霧装置の概要を表した構成図である。この図面で示すようにダイカスト鋳造などの金型は固定型10と可動型12とからなり、固定型10はマシンの固定ダイプレート14に、かつ可動型12はマシンの可動ダイプレート16にそれぞれ固定されている。そしてこの図1では前記可動ダイプレート16の作動によって可動型12を固定型10から離れる方向に移動させた型開状態が示されており、この固定型10と可動型12との間に離型剤噴霧部20を進入させている。この離型剤噴霧部20は複数個のマニホールド21と複数個の噴霧ノズルユニット22を備えており、これらの噴霧ノズルユニット22は前記固定型10および可動型12のそれぞれのキャビティ表面11、13に向けて離型剤を噴霧できるように配置されている。
【0028】
図2は1個の噴霧ノズルユニット22の内部構造を表した断面図、図3は噴霧ノズルユニット22の一部であるA部を拡大した部分断面図、図4は図3のB−B線断面図、図5は図3のC−C線断面図である。
【0029】
噴霧ノズルユニット22はノズル取付座30と、大気開放ノズル40と、離型剤供給ノズル50と、離型剤ON・OFFピストン60とを主たる構成部材としてマニホールド21に螺子46で取付けられている。前記マニホールド21には圧縮空気供給孔23、25と離型剤供給孔24が形成されており、前記ノズル取付座30に形成されている圧縮空気通過孔31とパイロット空気孔35および離型剤通過孔34へ各々連通している。前記圧縮空気供給孔23から供給された圧縮空気は圧縮空気通過孔31を通過し、枝孔32を介して作動空間33へ供給されると共に、圧縮空気通過孔41を通過してバッファ空間42へ供給された後、導入開口部43を経て、所定角度θが10度から40度のテーパ内壁面46を介して噴出開口部44へ連通されている。該導入開口部43を経てテーパ内壁面46を介して噴出開口部44へ至る圧縮空気流路の内側には離型剤の供給ノズル53と噴出開口部44が形成されており、該導入開口部43とテーパ内壁面46および噴出開口部44の中心は、離型剤の供給ノズル53や噴出開口部44の中心と同軸中心線上に配置されている。ここで前記導入開口部43の導入面積は、噴出開口部44の噴出面積に対して略3倍としている。また前記離型剤供給孔24から供給された液状離型剤は離型剤通過孔34を介して前記離型剤ON・OFFピストン60に形成された離型剤通過孔61を通過して液溜空間51へ供給され、離型剤導入流路52を経て離型剤の供給開口部54へ達する。前記噴出開口部44へ達した圧縮空気は同部を過ぎた直後において急激に大気圧近くまで膨張することにより、供給開口部54から流出してきた液状離型剤を膨張エネルギのミキシング作用で微粒霧に変化させると共に、そのまま勢いよく大気開口部45からキャビティ表面11、13に向けて霧状離型剤を噴霧させる。また圧縮空気を前記圧縮空気供給孔25からパイロット空気孔35へ供給することによって前記離型剤ON・OFFピストン60を離型剤供給ノズル50側に密着するまで移動させ、液溜空間51から離型剤導入流路52への離型剤の流入を阻止することで離型剤の噴霧を停止させることができる。この時、前記圧縮空気供給孔23から圧縮空気の供給は行なわない。なお、気密・水密性を必用とする箇所には適宜Oリングなどのシール材が設けてある。
【0030】
図3において、前記バッファ空間42へ供給された圧縮空気は導入開口部43を経て、所定角度θが10度から20度のテーパ内壁面46を介して噴出開口部44へ連通されている。もっとも、圧縮空気の噴出開口部と導入開口部とを接続するテーパ内壁面の所定角度についてはノズル内部での渦流の発生を抑制する観点からするならば小さい程よいことになるが、小さすぎると噴霧ノズルユニット内のノズル部が長くなってダイカストマシンの型開空間を広くしなければならない設備上の問題が発生するだけでなく、製作上の限界の問題も発生することから、現実の使用・加工の状況などから総合的に判断すると、かかる所定角度は10度から40度が適切な範囲と言える。
【0031】
図6は主に液状離型剤の供給開口部と大気開口部付近を拡大した断面図である。
【0032】
この図面で示すようにテーパ内壁面46を経て小径端46aに達した圧縮空気はテーパ流から噴出開口部44の中心線と同一平行方向への流れに変わって噴出開口部44まで流れて行く。圧縮空気の流路抵抗が少なくかつ乱れの少ない適切な平行方向の流れを得るためにテーパ内壁面46の小径端46aから液状離型剤の供給開口部54までの距離L1は圧縮空気の噴出開口部44と液状離型剤の供給開口部54との半径隙間寸法Hに対して2.5倍としている。この倍率は流路抵抗が少なく適切な平行方向の流れを得るために適している値であることが経験上わかっている。
【0033】
図6において噴出開口部44から流出した直後の圧縮空気は膨張エネルギによって離型剤の供給開口部54から流出した液状離型剤を微粒霧に変化させると共に微粒霧化した離型剤をノズルの大気開口部45から勢いよく噴出させることは実施例1でも述べた。ここで離型剤の供給開口部54から大気開口部45までの距離L2と大気開口部45の孔径寸法φDとの間には何らかの関係があり、大気開口部45からの噴霧角度を最適化して金型キャビティ表面への離型剤の付着状態を最良にするため、経験上ここでは離型剤の供給開口部54から大気開口部45までの距離L2を大気開口部45の孔径寸法φDの2.5倍に設定している。ただし寸法関係以外にも圧縮空気の供給圧力や液状離型剤の供給圧力が噴霧角度に影響を与えるので、それらの圧力変動を考慮すれば液状離型剤の供給開口部54から大気開口部45までの距離L2を大気開口部45の孔径寸法φDに対して経験上0.5倍から10倍が適切な範囲と言える。
【0034】
図6において、液状離型剤の供給開口部54の内径角部54aに大きな直線面取りや大きな曲線面取りがあると、粘性流体である液状離型剤の一部は面取りの面に沿って流れて行くので本来行くべき方向の流量や流勢が阻害される。また液状離型剤の供給開口部54の外径角部54bに大きな直線面取りや大きな曲線面取りがあると、同じく粘性流体である圧縮空気の一部は面取りの面に沿って流れて行くので本来行くべき方向の流量や流勢が阻害される。また大気開口部45の内径角部45aに大きな直線面取りや大きな曲線面取りがあると、同じく粘性流体である霧状離型剤の一部は面取りの面に沿って流れて行くので本来行くべき方向の流量や流勢が阻害される。従って経験上これらの内径角部45a、54aと外径角部54bの面取りを無しとしているが、加工刃具や加工機械の精度の変動を考慮して前記面取りをC0mmからC1.5mmの直線面取り、又はR0mmからR1.5mmの曲線面取りが適切な範囲と言える。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態例の冷却媒体・離型剤噴霧装置の概要を表した構成図。
【図2】図1の冷却媒体・離型剤噴霧装置の噴霧ノズルユニットの内部構造を表した断面図。
【図3】図2のA部を拡大した部分断面図。
【図4】図3のB−B線断面図。
【図5】図3のC−C線断面図。
【図6】図3の一部の更なる拡大断面図
【符号の説明】
【0036】
22…噴霧ノズルユニット
43…導入開口部
44…噴出開口部
45…大気開口部
45a…大気開口部の内径角部
46…テーパ内壁面
46a…テーパ内壁面の小径端
54…供給開口部
54a…供給開口部の内径角部
54b…供給開口部の外径角部
L1…小径端から供給開口部までの距離
L2…供給開口部から大気開口部までの距離
θ…所定角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却液媒体や液状離型剤を圧縮空気によって霧化し、大気開口部を介して金型のキャビティ表面に噴霧する離型剤噴霧装置において、冷却液媒体や液状離型剤の供給開口部の中心と圧縮空気の噴出開口部と導入開口部との中心を同軸中心線上に配置し、かつ圧縮空気の噴出開口部と導入開口部を接続する流路の一部を所定角度のテーパ内壁面形状とし、噴出開口部の流路面積である噴出面積と導入開口部の流路面積である導入面積との比率が略1:3である噴霧ノズルユニットを備えたことを特徴とする冷却媒体・離型剤噴霧装置。
【請求項2】
請求項1に記載する冷却媒体・離型剤噴霧装置において、前記所定角度が10度から40度である噴霧ノズルユニットを備えたことを特徴とする冷却媒体・離型剤噴霧装置。
【請求項3】
請求項1に記載する冷却媒体・離型剤噴霧装置において、所定角度のテーパ内壁面の小径端から前記供給開口部までの距離が、圧縮空気の噴出開口部と前記供給開口部との半径隙間寸法の0倍から10倍であることを特徴とする冷却媒体・離型剤噴霧装置。
【請求項4】
請求項1に記載する冷却媒体・離型剤噴霧装置において、前記供給開口部から大気開口部までの距離が、大気開口部の孔径寸法の0.5倍から10倍であることを特徴する冷却媒体・離型剤噴霧装置。
【請求項5】
請求項1に記載する冷却媒体・離型剤噴霧装置において、液状離型剤の供給開口部の内径角部と外径角部および大気開口部の内径角部にC0mmからC1mmの直線面取りを施すか、又はR0mmからR1mmの曲線面取りを施したことを特徴する冷却媒体・離型剤噴霧装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−175489(P2006−175489A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−372660(P2004−372660)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】