説明

冷却機器付き断熱容器とその断熱容器を搭載した自動車

【課題】容器内の断熱性を高め、容器内に冷却装置を設けて容器内の物品を冷却又は加温でき、容器内の温度を検知してその温度管理もできる断熱容器と、その断熱容器を配送車に搭載して、配送中に断熱容器内の物品を冷却又は加温できるようにした配送車を提供する。
【解決手段】冷却機器付き断熱容器は、冷気通路20、温気通路21、保冷空間の外気導入口22及び内気排出口23、温蔵空間の外気導入口24及び内気排出口25で構成され、冷気通路20を開いて温気通路21を閉じ、冷気空間の外気導入口22及び内気排出口23を閉じて温蔵空間の外気導入口24及び内気排出口25を閉じると、冷気空間の冷気が冷気通路20から物品室内に流入して物品室内の物品を保冷できる。温気通路21を開いて冷気通路20を閉じ、温蔵空間の外気導入口24及び内気排出口25を閉じて冷蔵空間の外気導入口22及び内気排出口23を閉じると、物品室内の物品を温蔵できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、保冷(冷蔵、冷凍を含む)又は加温(保温、加温を含む)を必要とする食材や食品、化粧品や薬品などの物品を配送するのに適する冷却機器付き断熱容器と、その断熱容器を搭載した自動車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、就業主婦の増加、高齢者世帯の増加に伴い、食材の宅配サービスの需要が拡大している。食材の宅配サービスとは、食材の販売事業者が需要者のもとに食材を届けるサービスであり、需要者の注文に応じた食材を随時或いは定期的に宅配するものである。
【0003】
宅配される食材には、常温管理できるものに限らず要冷蔵や要冷凍の食材も含まれるため発泡スチロールなど断熱材を使用した保冷容器に収容して配送しているのが現状である。また夏場に宅配されることもあり、あるいは需要者に手渡しされず指定された場所(例えば玄関前)に置いて帰ることもあるので、多くの食材の宅配事業者では、「要冷凍食材」を宅配する場合にはドライアイスを、「要冷蔵食材」を宅配する場合には蓄冷剤を保冷容器内に同梱している。
【0004】
従来の保冷容器は、ドライアイスや蓄冷剤で冷却し、かつ発泡スチロールなどで断熱することによって、保冷容器内の食材を保冷する(冷却状態を保つ)ものである。しかしながら、時間とともにドライアイスや蓄冷剤の冷却能力も衰えていくうえ、発泡スチロールの熱伝導率は空気と同じ0.02〜0.03w/mk程度でそれほど断熱性に優れたものではないことから、長時間にわたって従来の保冷容器で食材を保冷することは困難であった。
【0005】
食材の宅配では、一回の配送で複数の宅配先を訪れるため、交通事情によっては届けるまでに予定よりも長い時間がかかることもある。需要者に直接手渡しするつもりで宅配したにもかかわらず、需要者が不在ということもある。このような場合、宅配者が保冷容器内の温度状態を確認することができないので、そのまま食材を指定場所に置いていくか、あるいは持ち帰るべきか、いずれか判断に迷うこととなる。
【0006】
通常、宅配者が配送中に保冷容器の中を確認することはないので、保冷容器の故障によって、あるいはドライアイスや蓄冷剤の入れ忘れによって、図らずも保冷されない状態で食材を届けてしまうことがある。現在は、保冷容器内の温度管理ができないため保冷状態の確認ができないまま需要者に届けることになる。
【0007】
現状の改善策として、現在使用されている発泡スチロール製の保冷容器を、より断熱性の高い材料製の保冷容器に変更することが考えられる。しかし、食材の宅配サービスの需要拡大に伴って保冷容器が大量に使用されている現在では、現状の全ての保冷容器を新規材料製の容器に変更するには時間がかかり、短期間での対応が難しいうえ、変更しても、保冷容器内の温度管理ができないという問題は解決できない。
【0008】
現状の改善策として、保冷容器内に同梱するドライアイスや蓄冷剤を通常の設計量よりも多くして保冷持続時間を長くすることも考えられるが、ドライアイスや蓄冷剤を多くした分だけそれらによる容器内の占有面積が広くなるため、収容できる食材の量が減ることという新たな問題があるし、保冷容器内の温度管理ができないという問題は依然として解決できない。
【0009】
保冷容器内の温度管理ができないという問題を解決するため、特許文献1では、特別な保冷庫を利用して物品を配送するシステムを提案している。ここで用いられる保冷庫は、物品を保冷するとともに、庫内の温度を検知し、この温度データを記憶し、さらにこのデータを送信する手段を備え、送信データを管理センタで集中管理するのが、特許文献1で提案するシステムである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−322459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1によれば、特別な保冷容器を必要とするため、その数量を考えると莫大な費用がかかるうえ、大量の既存の保冷容器を破棄しなければならず、経済的にも自然環境的にも問題が残る。
【0012】
そこで、特許文献1で提案される特別な保冷容器に代えて、バッテリ、温度センサ、温度記憶素子、検知温度(データ)を送受信可能な小型通信機器を、既存の保冷容器内に配置するシステムも考えられる。しかしこの場合、前記電池、温度センサ、記憶素子等が保冷容器内で低温に曝され、ドライアイスや蓄冷剤による結露に曝される結果、前記バッテリが急速に劣化し、温度センサ、無線センサ、温度記憶素子、通信機器が作動しなくなる。
【0013】
本願発明の課題は前記した問題を解消することにあり、容器内の断熱性を高め、容器内に冷却装置を設けて容器内の物品を冷却又は加温でき、必要であれば、容器内の温度を検知してその温度管理もできる断熱容器と、その断熱容器を配送車に搭載して、配送中に断熱容器内の物品を冷却又は加温できるようにした配送車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願発明の冷却機器付き断熱容器は、容器本体及び蓋の内面に断熱パネルが内装され、容器本体内又は蓋内が本体区画壁により冷蔵機器を収容可能な機器室と物品を収容可能な物品室に区画され、機器室が室区画壁により冷気空間と温気空間に区画され、冷気空間に冷却機器の冷却側機器が設けられ、温気空間に冷却機器の温気側機器が設けられ、前記本体区画壁に機器室と物品室とに連通する冷気通路と、温蔵室と物品室とに連通する温気通路が設けられ、前記保冷空間の外壁に保冷空間とその外部に連通する外気導入口と内気排気口が、前記温蔵空間の外壁に温蔵空間とその外部に連通する外気導入口と内気排気口が設けられ、前記冷気通路、温気通路、前記保冷空間の外気導入口及び内気排出口、前記温蔵空間の外気導入口及び内気排出口は開閉でき、前記冷気通路を開いて温気通路を閉じ、前記冷気空間の外気導入口及び内気排出口を閉じて前記温蔵空間の外気導入口及び内気排出口を閉じると、前記冷気空間の冷気が前記冷気通路から物品室内に流入して物品室内の要保冷物品を保冷でき、前記温気通路を開いて冷気通路を閉じ、前記温蔵空間の外気導入口及び内気排出口を閉じて前記冷蔵空間の外気導入口及び内気排出口を閉じると、前記温蔵空間の温気が前記温気通路から物品室内に流入して、物品室内の要温蔵物品を温蔵できるようにしたものである。
【0015】
本発明の冷却機器付き断熱容器は、容器本体又は蓋の内面に設ける断熱材を真空断熱パネル又はセンサ付き真空断熱パネルとすることができる。それら真空断熱パネル又は真空断熱パネルは物品室内の温度を感知できる温度センサ、同室内の湿度を感知できる湿度センサ、断熱容器の移動距離を感知できる加速度センサ、真空センサ、のうちのいずれか1又は2以上のセンサを備え、前記センサで検知した温度データ、真空データ等を記憶できる記憶素子や、それらデータを表示できる表示手段、それらデータを外部の管理部と通信可能な通信機器、それらの駆動用電源(バッテリ:充電式電池)等を備えたものとすることができる。
【0016】
本発明の冷却機器付き断熱容器の冷却機器は、前記バッテリで駆動することも可能であるが、冷却機器付き断熱容器をオートバイ、自軽自動車、その他の自動車(これらをまとめて「自動車」という。)に搭載した場合は、自動車のバッテリや、自動車の近くにある商用電源を使用することができる。前記した各種センサ、データ記憶素子、データ表示器、通信機器等は真空断熱パネルに内蔵せずに、既存の断熱材の内面に取付けることもできる。
【0017】
本願発明の冷却機器付き断熱容器搭載車は、前記冷却機器付き断熱容器を自動車に搭載し、容器本体の物品室に保冷物品や温蔵商品を収容し、それらを断熱容器の冷却機器からの冷気で保冷又は温蔵しながら運送(配送、輸送を含む)することができるようにしものである。
【発明の効果】
【0018】
本願発明の断熱容器は次のような効果がある。
(1)一つの断熱容器を冷却と温蔵に切り替え使用可能であるため、収容する物品が要冷却物品であるか、要温蔵物品であるかによって、使い分けができて便利である。
(2)冷却機器を容器本体内又は蓋内に設けたので、小型の冷却装置付き断熱容器となる。
(3)容器本体と蓋の内側に内装する断熱材が真空断熱パネル又はセンサ付き真空断熱パネルの場合は、特に、断熱効果に優れた断熱容器となる。
(4)断熱材が温度センサ、湿度センサ、データ記憶素子、データ表示器、データ通信器を備えた場合は、それらデータに基づいて物品室内の温度管理や湿度管理を行って物品室内の物品の品質管理を行うことができる。
(5)加速度センサを設ければ、断熱容器の移動距離を検知して、移動中の断熱容器内の物品の振動状況を把握できるので品質管理に好適である。
(6)真空センサを設ければ、真空断熱パネルの真空度を管理して、断熱容器内の温度監視、管理ができ、断熱容器内の物品の品質管理を行うこともできる。
(7)外部の管理部と通信可能な通信機器、検知した温度データ、真空データ等を記憶できる記憶素子や、それらデータを表示できる表示手段等を設ければ、それらデータを断熱容器の移動中も物品収容室内の環境管理、物品収容室内の物品の品質管理をタイムリーに行いながら物品を配送することができる。また、工場からの搬出時、目的先への搬入時等に外部通信機能の近くを通過させることによっても、環境管理、品質管理を行うことができる。
(8)センサ付き真空断熱パネルにバッテリを設けたので、電源の取り出しができない移動中の断熱容器であっても、センサ付き真空断熱パネルのセンサを動作させることができ、物品室内の物品の品質管理ができる。
(9)バッテリが真空断熱パネル内に設けられたので、結露が生ずるような高湿環境や低温環境で使用してもバッテリが劣化しにくく、長期使用が可能となる。
【0019】
本願発明の冷却機器付き断熱容器搭載自動車は次のような効果がある。
(1)前記冷却機器付き断熱容器を自動車に搭載したので、移動中に保冷物品の冷却、温蔵物品の温蔵ができ、物品を良好な保冷状態或いは温蔵状態で輸送(配送)することができる。
(2)冷却機器、センサ付き真空断熱材の各種センサ、通信機器等の電源に、自動車のバッテリを利用することができるので、断熱パネルがバッテリを搭載しない場合であっても、それら機器の動作を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本願発明の断熱容器を搭載した自動車の一例を示す説明図。
【図2】本願発明の真空パネルを備えた断熱容器の蓋を閉じた状態の説明図。
【図3】本願発明の真空パネルを備えた断熱容器の冷蔵仕様の一例を示す概要図。
【図4】本願発明の真空パネルを備えた断熱容器の温蔵仕様の一例を示す概要図。
【図5】本願発明の断熱容器に使用されるセンサ付真空断熱パネルの一例を示す断面図で、(a)は無線センサを芯材に埋設した場合を示す断面図、(b)は無線センサを芯材の表面に配置した場合を示す断面図、(c)はセンサの本体部とアンテナを芯材の表面に、バッテリを芯材に埋設した場合を示す断面図、(d)はアンテナ部とバッテリを芯材の一方の表面に配置し温度センサを芯材の他方の表面に配置した場合を示す断面図、(e)は一方の表面にアンテナとバッテリを配置し温度センサを芯材の他方の表面に配置した場合を示す断面図。
【図6】芯材の片面に板状外被材、他面にシート状外被材を被せたセンサ付真空断熱パネルを示す断面図。
【図7】センサユニット13の一例を示す平面図。
【図8】本願発明におけるセンサ付真空断熱パネルの真空検知説明図。
【図9】(a)は本発明における冷却機器の構成の概要説明図、(b)は本発明における冷却機器の動作説明の概要図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本願発明の冷却機付き断熱容器(以下「断熱容器」という。)の実施形態の一例を図に基づいて説明する。図示した容器本体及び蓋は一例であり、その形状、寸法、構造、材質、蓋の開閉構造等は、図示した以外のものであってもよく、例えば、現在利用されている発泡スチロール製の断熱容器とか、他の材質製の容器をそのまま利用することもできる。現在大量に流通している既存の断熱容器を有効活用することによって、経済的な負担を軽減できるとともに、廃棄物を減らし自然環境にも配慮したものとなる。
【0022】
断熱容器に収容して配送(輸送、運搬等を含む)する物品、特に食品には、冷蔵された食品(冷蔵食品)や冷凍された食品(冷凍食品)などがあり、それら食品は消費されるまで低温状態を維持しておく必要があることから、本願発明では、これらを便宜上「保冷を必要とする物品」、あるいは単に「要保冷物品」と呼ぶ。食品には、消費されるまで温かい状態を維持しておく必要があるもの或いは維持しておくのが好ましいものもある。本願発明では、これらを便宜上「要温蔵物品」又は「温蔵物品」と呼ぶ。また、前記保冷物品と温蔵物品を合わせて「物品」という。
【0023】
(冷却機器付き断熱容器)
本願発明の冷却機器付き断熱容器は、自動車に搭載せずに使用できるものであるが、図1に示すように自動車に搭載して使用することもできる。
【0024】
図1に示す断熱容器は、保冷物品や温蔵物品などを収容することができるものであり、容器本体1とそれに開閉可能な蓋2(図1)を備えている。蓋2は止め具3で容器本体1に係止でき、係止時に容器本体1が密閉(略密閉を含む)されるようにしてある。
【0025】
容器本体1内は本体区画壁4で物品を収容可能な物品室5(図1)と、冷却機器を収容配置できる機器室6に区画され、機器室6内が機器室区画壁7(図2)により上下に区画され、上方を冷気空間18(図2)、下方を温気空間19(図2)とし、冷気空間18内に冷却機器の冷却側機器10(図2)が、温気空間19内に冷却機器の温熱側機器11(図2)が配置されている。
【0026】
前記本体区画壁4には冷気空間18と物品室5とに連通する冷気通路20(図1、図2)、前記温気空間19と物品室5とに連通する温気通路21(図1、図2)が設けられ、前記機器室6の外壁に、その冷気空間18と外部が連通する外気導入口22と内気排気口23が設けられ(図1、図2)、前記機器室6の外壁に、温気区間9と外部が連通する外気導入口24と内気排気口25が設けられている(図1、図2)。
【0027】
前記冷気通路20、温気通路21、前記冷気空間の外気導入口22及び内気排出口23、前記温気空間19の外気導入口24及び内気排出口25は扉D(図2)で開閉できる。扉Dは蝶番式、シャッター式といった各種開閉動作のものとすることができる。
【0028】
前記冷気通路20を開いて温気通路21を閉じ、前記冷気空間18の外気導入口22及び内気排出口23を閉じて、前記温気空間19の外気導入口24及び内気排出口25を開くと、冷却機器の冷却側機器10(図2)からの冷気が前記冷気通路20から物品室5内に流入して物品室5内の物品を冷蔵でき、前記温気通路21を開いて冷気通路20を閉じ、前記温気空間19の外気導入口24及び内気排出口25を閉じて前記冷気空間18の外気導入口22及び内気排出口23を開くと、冷却機器の温熱側機器11(図2)からの温気が前記温気通路21から物品室5内に流入して物品室5内の物品を温蔵できるようにしてある。
【0029】
容器本体1は硬質樹脂製であり、既存のもの或いは新規なものを使用することができる。容器本体1の底面及び周壁、蓋2の天面及び周面の内面(以下、これらを「内壁面」という。)には断熱パネル26(図1)が内装されている。断熱パネル26には既存の発泡スチロール製の断熱パネル、真空断熱パネル、センサ付真空断熱パネル等を使用することができる。前記本体区画壁4(図1)、機器室区画壁7(図4)も断熱材とするのが望ましい。機器室区画壁7は冷却機器の冷却側機器10を設置できる強度の板材としてあるが、その上面と下面の双方またはいずれか一方に断熱材を設けることができる。
【0030】
(センサ付真空断熱パネル、真空断熱パネル)
本発明で使用されるセンサ付真空断熱パネルの各種例を図5(a)〜(e)及び図6に示す断面図に基づいて説明する。本発明における真空断熱パネルは、図5(a)〜(e)及び図6に示すセンサ付真空断熱パネルであってセンサ類を備えないパネルである。
【0031】
図5(a)〜(e)及び図6に示すセンサ付真空断熱パネル26は、シート状の芯材8に各種センサ13を配置し、それらの外周を気密性のある(ガスバリア性のある)外被材9で被覆し、その心材8及び外被材9の内部を真空(略真空)にしたものである。センサ13には、容器本体1の物品室5(図1)内の温度を感知できる温度センサ、湿度を感知できる湿度センサ、断熱容器の振動等を検知できる加速度センサ、外皮材9内の真空度を検知できる真空センサのうちいずれか1又は2以上のセンサを用いることができる。また、前記センサ13の他に、それらセンサ13で検知した温度データ、真空データ等を記憶できる記憶素子(データロガー)や、それらデータを表示できる表示手段、それらデータを外部の管理部と通信可能な通信機器、それらを駆動するための駆動用電源(バッテリ:充電式電池)等を備えたものとすることができる。
【0032】
センサ付き真空断熱パネル26は、芯材8に外被材9を被せた状態で減圧してから外被材9の開口部を熱溶着(ヒートシール)してある。芯材8には例えばガラス繊維製の断熱シート(通称、ガラスウール)や、他の材質製の繊維を使用したシート(例えば、ロックウール)、或いは連続気泡を備えたポリウレタンシート等を使用することができる。
【0033】
芯材8の材質としては、内部に多くの空隙をもついわゆる多孔体が用いられ、例えば、グラスウール、セラミックファイバ、ロックウールなどの繊維素材、粉末シリカなどの粉体、有機又は無機の発泡体などを用いることができる。発泡スチロールやFRP等を使用することもできるが、断熱材は多くの空気を排出できる方が減圧され、高い真空状態にすることができるため、内部に多くの空隙や孔等(以下「空隙」という。)をもついわゆる多孔質のものが望ましい。スタイロホームも芯材8として利用できるが、割れやすいという面があるので使用状況によっては注意を要する。逆に、芯材8として利用するガラスウールは割れ難いという特性を有する。芯材8の材質、形状、サイズ、厚さ等はセンサ付真空断熱パネル6の用途に合わせて設計される。
【0034】
これらシートを使用する場合は、繊維間の空隙や気泡内に空気を含むため、それら空気をローラで押し出したりしながら、外皮材9の内部の空気を抜き、外皮材9の内部を真空引きして内部を真空状態にする。このとき芯材8が湿気を帯びているとその後の真空状態が保たれ難いので、空隙内からの空気排出作業は、乾燥空気を送りながら行うなど乾燥環境下で実施するのが望ましい。ここでいう真空状態とは、必ずしも絶対真空状態に限らず真空度の高い状態を指すもので、10−5Pa以下の絶対真空状態に近い状態を含め、10−5〜200Pa、望ましくは0.1〜100Pa程度の真空度となる状態も含まれる。
【0035】
より多くの空気を芯材8から排出できる方がより減圧されて、より高い真空度の真空断熱パネルが得られることとなる。そのため、外被材9は、フィルム状、シート状、板状のものを使用することができる。外被材9はその内部を真空状態に保つためガスバリア性に富む材質で形成される必要がある。ガスバリア性に富む材料としては、ステンレススチール、アルミニウム、鉄といった金属、プラスチック(樹脂)、金属箔とプラスチックフィルムとをラミネートした複合材、プラスチックに金属を蒸着した複合材、金属シートと樹脂シートを貼り合わせた積層構造の複合材樹脂繊維製或いは天然繊維製の織布や不織布等の布とガスバリア性のある樹脂製、金属箔製等のフィルムやシート等とを積層した複合材等がある。これら外被材9の材質、厚さ、形状、サイズ、複合構造等は使用目的に応じて適宜採用することができる。外被材9は、フィルム状、シート状、板状のものを単独で使用することもできるが、芯材8の片面をフィルム状の外被材9で被覆し反対側面をシート状の外被材9で被覆することもできる。
【0036】
図6のように芯材8の片面(図6では下面)に板状の外被材9aを配置し、芯材8の反対側面(図6では上面)をフィルム状やシート状の外被材9bを被せて芯材8を被覆することもできる。このように、フィルム状、シート状、板状のものを組み合わせて芯材8を被覆することもできる。場合によっては芯材8の両面に図6に示すような板状の外被材9aを配置し、その外側をさらにフィルム状やシート状の外被材9bで被覆して、その外被材9bの内側を真空にすることもできる。外被材9の材質、形状、サイズ、厚さ、強度等もセンサ付真空断熱パネルの用途に合わせて設計される。外被材9は同じあるいは異なる材質、構造のもの(いずれもガスバリア性のあるもの)を二重にして芯材8を被覆することもでき、二重被覆することにより、万が一いずれか一方の外被材9が損傷しても外被材9の内側の真空状態は確保される。
【0037】
アルミニウムをはじめとする金属製の素材を用いた外被材9は、熱伝導性が高いという特性がある半面、シールド性(電波遮蔽性)もある。後に説明するように、真空断熱パネルの内部に入れられる温度センサは周辺温度を検知し、この検知した結果は外部へ通信される。周辺温度を検知するという面ではアルミニウム素材は適しているが、通信するという面ではアルミニウム素材は適さない。
【0038】
一方、外被材9として、ナイロン系の素材を用いることもできるが、ナイロン系の素材は熱伝導性が低く、電波を透過しやすいという特性がある。つまり、アルミニウム素材とは逆で、通信するという面ではナイロン系の素材は適しているが、周辺温度を検知するという面ではナイロン系の素材は適さない。双方の特性を生かすべく、アルミニウム素材とナイロン系素材を組み合わせて外被材9とすることもできる。一例として、センサ13の温度センサ部に近接する(温度センサ部を覆う)範囲は熱伝導性の高いアルミニウム素材を用い、センサ13のアンテナ部に近接する(アンテナ部を覆う)範囲は電波透過性の良いナイロン系素材とする外被材9を用いることができる。
【0039】
芯材8の空隙内の空気が排出された状態、すなわち真空断熱パネルの内部が減圧された状態で外被材9の開口部がヒートシールされ、これによって真空度の高い状態を維持することができる。従って、外被材9は熱溶着可能な材料と組み合わされることが多い。例えば、アルミニウム箔の裏面(又は表裏面)にPET素材を重ねたものを、外被材29として用いるなど、アルミニウムをはじめとする金属製の板、フィルム、シート等にPET素材を組み合わせたもの(貼り合わせ、蒸着等したもの)を用いることができる。PET素材は90℃程度で溶着され、これに対してセンサ13は通常200℃程度までは溶けることがないので、センサ13にとっては好適である。
【0040】
なお、芯材8や外被材9は、ここで例示したものに限らず、従来から真空断熱パネルとして用いられている素材、材質のものを使用することができ、特にサイズを大きめにし、更に折り曲げ可能な材質、厚さに設計すると、一枚のセンサ付真空断熱パネルを折り曲げて、図1の容器本体1内に設置することができる。
【0041】
真空断熱パネル、センサ付き真空断熱パネルは、内部を真空状態(減圧状態)とすることで優れた断熱性能を有する。具体的には、真空断熱パネルの熱伝導率は0.002〜0.01w/mkであり、発泡スチロールの0.02〜0.03w/mk、空気の0.02w/mkに比べると、その断熱性能が顕著であることがわかる。この優れた断熱性能を有するセンサ付き真空断熱パネル26を利用すれば、従来の保冷容器の断熱性能も格段に向上する。
【0042】
センサ付真空断熱パネル26は、外被材9内に、温度センサ35と、ここで検知した温度データを送信する通信部(送受信部)を備えている。温度センサ35で検知した温度データは、通信部から例えば外部の管理センタや他の設備に無線送信され、管理センタや他の設備でデータ処理して、遠隔地から温度管理することもできる。前記通信は有線で行うこともできる。無線式の場合は通信部にアンテナを内蔵或いは外付けすることができる。有線式の場合は外被材9の外に外部機器と電気的に接続可能なコネクタなど他の接続機器(接続具)を設けておき、それに接続された外部機器との間で有線通信することができる。
【0043】
本願発明では、温度センサ35で検知した温度データを、外被材9の内側に設けたデータロガー(記憶部)に記憶させておき、記憶されたデータを例えば外部の管理センタやその他の箇所で処理して温度状態を管理することもできる。データロガーには温度データだけでなく、他のセンサで検知されたデータ、例えば、真空データ、湿度データ、加速度データ等も記録することができる。湿度センサは、外被材9のガスバリア性が劣化又は破損して外部から外被材9の内側に侵入した場合の湿気を検知するものである。加速度センサは振動を感知できるものである。この加速度センサを設けることにより、例えば断熱容器の物品室5(図1)内に保冷食品を収容して搬送している間、保冷食品の周囲の振動状況が把握できるので、品質管理上から考えるとさらに好適である。
【0044】
センサ付真空断熱パネル26には、温度センサ35と通信部、あるいはデータロガーや真空センサを作動させるためのバッテリ13cが設けられている。バッテリ13cにはリチウム電池をはじめ長寿命の電池を使用することができる。この電池は、充電式のものでも非充電式のものでも使用可能である。充電式の場合は外被材9の外に充電用電源接続器(例えば、コンセント)を設けておき、それに電源を接続することにより充電することができる。近年は、非接触式の充電、例えば、電磁波を充電に利用する充電方法も研究され、実用化の目途が立っているので、非接触式で充電が可能な電池を使用することもできる。
【0045】
温度センサ35、通信部、バッテリ13c等を一体としてユニット化したものがセンサユニット13である。このセンサユニット13は市販されていることもあって、現在では広く利用されている。このセンサユニット13は、図7に示すようにフィルム状の基板13aの先方部に温度センサ35を、基板13aの後方にアンテナ13bを、基板13aの中央部に通信部13dが設けられ、基板13aの中央部背面にバッテリ13cが搭載されている。通信部13dは基板13aの中央部に形成された回路とそれに搭載された通信用の素子や部品で構成されている。本願発明のセンサ付真空断熱パネルは、少なくとも温度センサ35と通信部13dを備えていればよく、これらが別体であってもよい。以下では便宜上、センサ付真空断熱パネル26がセンサユニット13を備えた場合で説明する。また、近年ではセンサユニット13は小型化が進み、その外寸(長さ)が2〜4mmのものまである。本発明で使用するセンサ付真空断熱パネルに用いられるセンサユニット13も小型の方が望ましいが、真空断熱パネルの内部に設置することのできるものであれば、その大きさや形状は任意に設計できる。
【0046】
センサ付真空断熱パネルに用いられるセンサユニット13は、専用のものとして別途作成してもよいが、市販されているものを使用することもできる。また、市販されているセンサユニット13には、温度を検知することができる温度センサのほかに、湿度を検知することができる湿度センサや、振動の程度を検知できる加速度センサを備えたものもあるので、このような無線センサを利用することもできる。
【0047】
センサユニット13のバッテリ13cには、リチウム電池などが多用されている。リチウム電池等は、一般に低温環境や高湿環境では劣化が進みやすく、極端に寿命が短くなることが知られている。そのためセンサユニット13は、常温環境であって高湿とならない環境で利用されることが多い。従って、保冷食品を搬送する容器本体1内にセンサユニット13を設置できれば、搬送中であっても保冷食品の環境温度を管理することができて好適であるが、保冷容器1内にはドライアイス等が置かれるためにバッテリ13cの劣化(短寿命)問題が生じることとなって、従来では断熱容器内にセンサユニット13設置されることはなかった。一方、本願発明は、断熱性能が高い真空断熱パネルの内部にセンサユニット13を設置するので、物品部5(図1)内の低温・高湿からバッテリ13cを保護することが可能となり、バッテリ13cの劣化問題が生じないことから、安心して断熱容器内にセンサユニット13を設けることができる。
【0048】
センサユニット13を真空断熱パネル26の内部に設置する方法は、種々選択することが可能であり、その例を図5(a)〜(e)に示す。
【0049】
図5(a)は、センサユニット13を芯材8に埋設した場合を示す断面図である。この図に示すように、芯材8に設けられた埋設凹部40にセンサユニット13を設置することができる。あるいは、基板13a、アンテナ13b、バッテリ13cの三つの部品のうちいずれか一つの部品を埋設凹部40に設置することもできるし、これら三つの部品から選ばれる二つの部品を埋設凹部40に設置することもできる。この場合、あらかじめ芯材8に埋設凹部40を設け、これにセンサユニット13(又は前記三つの部品のうち少なくとも一つの部品)を設置し、その後に外被材9を被せて減圧し、外被材9の開口部をヒートシールすることで、センサ付真空断熱パネル26を完成させる。センサユニット13(又は前記三つの部品のうち少なくとも一つの部品)を設置した後の埋設凹部40にできる空隙部は、外被材9を被せる前に熱伝導性の高い充填剤で注入しておくことも、あるいはそのまま空隙として残しておくこともできる。バッテリ13cが埋設凹部40に設置された場合、バッテリ13cは芯材8の略中心部に配置されることになるので、確実に外部の低温・高湿環境から守られる。
【0050】
図5(b)は、センサユニット13を芯材8の表面に配置した場合を示す断面図である。この図に示すように、芯材8と外被材9との間にセンサユニット13を設置することができる。この場合、あらかじめ芯材8の表面(図では上面)にセンサユニット13を取付け、その後に外被材9を被せて減圧し、外被材9の開口部をヒートシールすることで、センサ付真空断熱パネル26を完成させる。基板13aとアンテナ13bは外被材9のみで覆われているので、温度検知や通信という点では好適である。このセンサ付真空断熱パネル26は、表面近くにバッテリ13cがあることから、バッテリ13cが配置されていない面(図では下面)が低温・高湿環境となる(具体的には保冷容器1の物品室5側となる)ように配置して利用することが望ましい。
【0051】
図5(c)は、センサユニット13のうち基板13aとアンテナ13bを芯材8の表面に、バッテリ13cを芯材8に埋設した場合を示す断面図である。この場合、あらかじめ芯材8の一部にバッテリ13cを埋設するとともに、芯材8の表面に基板13aとアンテナ13bを取付け、その後に外被材9を被せて減圧し、外被材9の開口部をヒートシールすることで、センサ付真空断熱パネル26を完成させる。基板13aとアンテナ13bは外被材9のみで覆われているので、温度検知や通信という点では好適である。しかもバッテリ13cは、芯材8の内部に配置されるので、外部の低温・高湿環境から守られる。なお、この図のセンサ付真空断熱パネル26も、バッテリ13cが配置されていない面(図では下面)が低温・高湿環境となる(具体的には断熱容器の物品収容室5側となる)ように配置して利用することが望ましい。
【0052】
図5(d)は、センサユニット13のうちアンテナ13bとバッテリ13cを芯材8の一方の表面に配置し、基板13aの先端にある温度センサ35を芯材8の他方の表面に配置した場合を示す断面図である。この場合、芯材8の一方の表面(図では上面)にアンテナ部13bとバッテリ13cを設置し、基板13aの先端にある温度センサ35を芯材8の他方の表面(図では下面)まで伸ばして配置し、その後に外被材9を被せて減圧し、外被材9の開口部をヒートシールすることで、センサ付真空断熱パネル26を完成させる。なお基板13aの先端にある温度センサ35は、芯材8に設けた貫通孔や貫通溝の中を通過させて反対側の表面まで伸ばすことができる。
【0053】
図5(e)は、センサユニット13のうちアンテナ13bとバッテリ13cを芯材8の一方の表面に配置し、基板13aの先端にある温度センサ35を芯材8の他方の表面に配置した場合を示す断面図である。この場合、芯材8の一方の表面(図では上面)付近にバッテリ13cを埋設するとともにアンテナ部13bを設置し、基板13aの先端にある温度センサ35を芯材8の他方の表面(図では下面)まで伸ばして配置し、その後に外被材9を被せて減圧し、外被材9の開口部をヒートシールすることで、センサ付真空断熱パネル26を完成させる。なお基板13aの先端にある温度センサ35は、芯材8に設けた貫通孔や貫通溝の中を通過させて反対側の表面まで伸ばすことができる。
【0054】
図5(d)及び図5(e)のセンサ付真空断熱パネル26は、アンテナ13bが外被材9のみで覆われているので、通信という点で好適である。また、一方の芯材8の表面(あるいは表面付近)にバッテリ13cが配置され、他方の芯材8表面に温度センサ35が配置されるので、例えばこのセンサ付真空断熱パネル26を、温度センサ35がある面(図では下面)を断熱容器の物品室5(図1)側となるように配置して利用すると、温度検知という点で好適であるとともに、バッテリ13cを低温・高湿環境から守るという点においても好適である。
【0055】
温度センサ35による温度検知、及びアンテナ13bによる通信を考えた場合、基板13aの先端にある温度センサ35やアンテナ13b付近に用いられる外被材9の素材の選択が重要になる。前記したように、アルミニウムをはじめとする金属製の素材は熱伝導性が高いという特性がある半面、シールド性(電波遮蔽性)があり、一方ナイロン系の素材は熱伝導性が低く、電波を透過しやすいという特性がある。従って図5(d)や図5(e)に示すセンサ付真空断熱パネル26の場合、アンテナ13bが配置された面(図では上面)は電波透過性のナイロン系の素材を用い、温度センサ35が配置された面(図では下面)は熱伝導性の高い金属製の素材を用いた外被材9とすることが望ましい。
【0056】
図5(a)〜(c)に示すセンサ付真空断熱パネル26の場合、全体を熱伝導性の高い金属製の素材とし、アンテナ13bを覆う範囲だけ部分的に電波透過性のナイロン系の素材を用いた外被材9とすることもできる。あるいは、全体を電波透過性のナイロン系の素材とし、温度センサ35を覆う範囲だけ部分的に熱伝導性の高い金属製の素材を用いた外被材9とすることもできる。部分的に異なる素材のものとする(全体が金属製素材で一部ナイロン系素材、又はその逆とする)場合、当該部分を含む孔状や溝状となるように異なる素材部分を設けることができる。
【0057】
センサ付真空断熱パネルには、温度センサ35(あるいはセンサユニット13)に加えて、真空センサ14(図8)を備えることもできる。この真空センサ14は、外被材9の内側の真空状態を検知できるものであり、ピラニ真空計、隔膜真空計、静電容量型真空センサ、マイクロメカニカル真空センサ等々各種のものがあり、これら各種の真空センサを使用できる。真空状態は減圧状態を意味するので、例えば圧力センサを使用することができる。芯材8内又は外被材9内に収容するため、できればこの真空センサ14には小型、薄型のものを選ぶのが望ましい。
【0058】
図8では、バッテリから供給される電源で真空センサ14を作動させ、真空センサ14で外被材9の内側の圧力を検知し、検知した電流(電圧)を増幅器Aで増幅し、増幅器Aの出力電圧を、比較器Cにおいてセンサ付真空断熱パネル26が必要とする適正な真空状態(外被材9内の適正圧力:基準圧力)Paと比較することにより、外被材9の内部が適正な真空状態に維持されているか否かを判別することができる。図8では検知した圧力をデジタルメータ15に表示して、外被材9の内部の真空状態を確認できるようにしてある。比較器Cの出力が前記基準圧力Paよりも高い場合は、リレー16により真空ポンプPの電磁弁を開いて、真空ポンプPで外被材9内を減圧することもできる。真空センサ14は全部を外被材9内に設けてもよいが、部分的に外被材9の外部に突出して取付けてもよい。いずれの場合も外被材9内の真空状態が損なわれないように取付ける。図8の真空センサ14の検知データは、センサ付真空断熱パネル内に設けた通信部を介して増幅器Aに送信することもできる。
【0059】
真空センサ14、温度センサ35、通信部13d、データロガー等は、それぞれ個別に芯材8や外被材9の内部に設けることもできる。
【0060】
(センサ付真空断熱パネルの配置)
前記したとおり、容器本体1(図1)と蓋2の内壁面に内装する断熱材26には、容器本体1の周壁、底面のいずれか一面又は蓋2にセンサ付真空断熱パネル26を配置すれば、他の面にはセンサの付いていない真空断熱パネルや既存の断熱材を使用することもできる。
【0061】
容器本体1の物品室5内にセンサ付真空断熱パネル26を配置する場合、基板13aの先端にある温度センサ35が物品室5(図1)に近い位置となるように配置すると温度を検知する上で好適であり、物品室5から見て容器本体1の側壁の背面側となるように(物品収容室5とバッテリ13cの間に断熱パネル26が介在するように)バッテリ13cを配置すると、バッテリ13cが低温・高湿環境から守られるという点において好適である。なお、センサ付真空断熱パネル26のアンテナ13bは、芯材8に設けた貫通孔や貫通溝の中を通過させて反対側の表面(物品室5側)まで伸ばすこともできる。もちろん、アンテナ13bを反対側まで伸ばさず、図5(a)〜(e)に示すようにアンテナ13b全体を芯材8の同一面に配置することもできる。
【0062】
現在流通している既存の断熱容器には蓋内にドライアイス等を収容するタイプのものもある。このようなタイプの既存断熱容器を利用して、センサ付真空断熱パネル26と真空断熱パネル26を配置することで本願発明の断熱容器を作成することもできる。この場合、蓋2の内面に内装されるセンサ付真空断熱パネルは、バッテリ13cが物品室5側となるように配置されることが望ましい。これによって、蓋2内にドライアイスや蓄冷剤がある場合、それらによる低温・高湿環境から、センサ付真空断熱パネルのバッテリ13cを保護することができて好適である。
【0063】
(冷却機器)
本発明の冷却機器には既存の冷却機器を使用することができる。この冷却機器は既存の冷蔵庫やエアコン等に使用されている冷却機器と同様に動作する。その一例を図9(a)、(b)に示す。図9(a)に示すように、蒸発器50と、圧縮器60と、凝縮器70を備えている。蒸発器50が本願発明の冷却側機器10(図2)、圧縮器60と凝縮器70が本願発明の温熱側機器11(図2)に相当する。
【0064】
図9(a)の冷却機器では、図9(b)のように、温熱側機器11から液体の状態でアルミのフィン(蒸発器)50に送られる冷媒(例えば、フロン代替物)が、周囲の熱を吸収して冷却側機器10の蒸発器50で蒸発し、周りから気化熱を奪って蒸発器50が冷やされ、その冷気が冷却側機器10のファン51で冷気空間18(図2)に送られる。蒸発して気体になった冷媒は温熱側機器11に戻されて温熱側機器11のコンプレッサー(圧縮機)60で圧縮される。圧縮されて高温になった冷媒は温熱側機器11の凝縮器70(アルミのフィン)に送られ、その冷媒の温気が温熱側機器11のファン61で温気空間19に送られる。この場合、温熱側機器11の電磁弁(冷媒の圧力を調整する弁)を通過すると冷媒は液体になって、再度、冷却側機器10の蒸発器50に送られる。この循環で連続的に冷却される。冷媒は図示しない配管パイプ内を循環する。
【0065】
以下、本願発明の断熱容器を使用して食品を宅配する場合の一例を示す。
(1)需要者から注文を受けると、指定された食品が保冷食品の場合は、図3に示すように、容器本体1の冷気通路20を開いて温気通路21を閉じ、冷気空間18の外気導入口22及び内気排出口23を閉じて、温気空間19の外気導入口24及び内気排出口25を閉じる。これにより、冷気空間18内の冷気が前記冷気通路20から物品室5内に流入して物品室5内の保冷物品が保冷される状態にセットされる。
(2)前記状態にセットしてから、この保冷食品を容器本体1の物品室5内に入れる。このとき、必要であればドライアイスも物品室5内に入れ、蓋2を閉める。この状態で配達すれば、保冷食品は保冷状態で配達される。
【0066】
(1)需要者から注文を受けると、指定された食品が温蔵食品の場合は、図4に示すように、容器本体1の温気通路21を開いて冷気通路20を閉じ、温気空間19の外気導入口24及び内気排出口25を閉じて、冷気空間18の外気導入口22及び内気排出口23を閉じる。これにより、温気空間19内の温気が前記温気通路21から物品室5内に流入して物品室5内の温蔵物品が温蔵される状態にセットされる。
(2)前記状態にセットしてから、この温蔵食品を容器本体1の物品室5内に入れて蓋2を閉める。この状態で配達すれば、温蔵食品は温蔵状態で配達される。
【0067】
図1の断熱材26がセンサ付き真空断熱パネルの場合は、その温度センサにより、搬送中に物品室5内の温度が検知されるとともに、その検知データが通信部13dによって送信され、例えば品質管理センタなど離れた場所で検知温度を受信できるので、搬送される食材の温度管理を容易に行うことができる。
【0068】
本発明では、一枚物の断熱材、真空断熱パネル、センサ付真空断熱パネルを、容器本体1、蓋2の内部に内装してあるが、それら断熱材、真空断熱パネル、センサ付真空断熱パネルは、一枚の真空断熱材を折り曲げたり折り畳んだりして、容器本体1、蓋2の内部に内装することができる。このようにすると、断熱材、真空断熱パネル、センサ付真空断熱パネルの突き合わせ部分に隙間ができないため、断熱効果が向上する。数枚の真空断熱材を使用した場合は、それら真空断熱材の突き合わせ部分(接合部分)を、他の断熱材又は真空断熱材でカバーすると、断熱が確保される。
【0069】
本発明では、断熱材、真空断熱パネル、センサ付真空断熱パネルを、容器本体1、蓋2の内部に内装したものであるが、本発明では容器本体1及び蓋2を、断熱材、真空断熱パネル、センサ付真空断熱パネル自体によって形成することもできる。その場合は、真空断熱パネル、センサ付真空断熱パネルを外側面又は内外両面に剛性の板材を備えたものとしたり、容器本体1及び蓋2を樹脂や発泡スチロール等で成型する際に、それらの内部に真空断熱パネル又はセンサ付真空断熱パネルを埋め込んだ(内蔵した)ものとすることができる。冷却機器付き断熱容器には自動車のバッテリや商用電源を取り出すために、それらに接続可能な接続具(コンセント)を設けておくのが良い。
【0070】
[冷却機器付き断熱容器搭載自動車の実施形態]
本願発明の冷却機器付き断熱容器を搭載した自動車(冷却機器付き断熱容器搭載自動車)の実施形態の一例を図1に基づいて説明する。
【0071】
本願発明の冷却機器付き断熱容器搭載車は、前記断熱容器をオートバイ、軽自動車、その他の自動車(これらをまとめて「自動車」という。)の荷台に搭載し、断熱容器の物品室5に要保冷物品や要温蔵商品を収容し、それらを断熱容器の冷却機器からの冷気で冷却又は温蔵しながら配送することができるようにしてある。この場合は、冷却機器付き断熱容器にバッテリ又は商用電源取り出し具(コンセント)を備えておくのが良い。自動車は図示したものに限らず他の形状、構造のものでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本願発明の保冷容器は、食材の宅配用のほか、化粧品や薬品、或いは、医療用(移植用)の生体などの搬送用としても応用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 容器本体
2 蓋
3 止め具
4 本体区画壁
5 物品室
6 機器室
7 機器室区画壁
8 芯材
9 外皮材
9a 下面の外被材
9b 上面の外被材
10 冷却側機器
11 温熱側機器
13 センサ(センサユニット13)
13a 基板
13b アンテナ
13c バッテリ
13d 通信部
14 真空センサ
15 デジタルメータ
16 リレー
18 冷気空間
19 温気空間
20 冷気通路
21 温気通路
22 冷気通路の外気導入口
23 冷気通路の内気排気口
24 温気通路の外気導入口
25 温気通路の内気排気口
26 断熱パネル
35 温度センサ
40 埋設凹部
50 フィン(蒸発器)
51 ファン
60 コンプレッサー
70 凝縮器
A 増幅器
B (既存の)保冷容器
C 比較器
D 扉
P 真空ポンプ
Pa 基準圧力(基準値)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体及び蓋の内面に断熱パネルが内装され、容器本体内又は蓋内が本体区画壁により冷蔵機器を収容可能な機器室と物品を収容可能な物品室に区画され、
機器室が室区画壁により冷気空間と温気空間に区画され、冷気空間に冷却機器の冷却側機器が設けられ、温気空間に冷却機器の温気側機器が設けられ、
前記本体区画壁に機器室と物品室とに連通する冷気通路と、温蔵室と物品室とに連通する温気通路が設けられ、
前記保冷空間の外壁に保冷空間とその外部に連通する外気導入口と内気排気口が、前記温蔵空間の外壁に温蔵空間とその外部に連通する外気導入口と内気排気口が設けられ、
前記冷気通路、温気通路、前記保冷空間の外気導入口及び内気排出口、前記温蔵空間の外気導入口及び内気排出口は開閉でき、
前記冷気通路を開いて温気通路を閉じ、前記冷気空間の外気導入口及び内気排出口を閉じて前記温蔵空間の外気導入口及び内気排出口を閉じると、前記冷気空間の冷気が前記冷気通路から物品室内に流入して物品室内の要保冷物品を保冷でき、前記温気通路を開いて冷気通路を閉じ、前記温蔵空間の外気導入口及び内気排出口を閉じて前記冷蔵空間の外気導入口及び内気排出口を閉じると、前記温蔵空間の温気が前記温気通路から物品室内に流入して、物品室内の要温蔵物品を温蔵できるようにした、
ことを特徴とする冷却機器付き断熱容器。
【請求項2】
請求項1記載の冷却機器付き断熱容器において、容器本体又は蓋の内面に設ける断熱材が真空断熱パネル又はセンサ付き真空断熱パネルであることを特徴とする冷却機器付き断熱容器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の冷却機器付き断熱容器において、容器本体又は蓋の内面に設ける断熱材が物品室内の温度を感知できる温度センサ、同室内の湿度を感知できる湿度センサ、断熱容器の移動距離を感知できる加速度センサ、真空センサ、のうちのいずれか1又は2以上のセンサを備え、前記センサで検知した温度データ、真空データ等を記憶できる記憶素子、それらデータを表示できる表示手段、それらデータを外部の管理部と通信可能な通信機器、それらの駆動用電源(バッテリ:充電式電池)等のいずれか一又は二以上備えたことを特徴とする冷却機器付き断熱容器。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の冷却機器付き断熱容器において、冷却機器、センサ付き真空断熱パネルのセンサ、記憶素子、表示器、通信部が自動車のバッテリ又は商用電源取り出し具を備えたことを特徴とする冷却機器付き断熱容器。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の冷却機器付き断熱容器において、温度センサ、真空センサ、記憶素子、表示器、通信部が、容器本体又は蓋に内装された断熱材に取付けられたことを特徴とする冷却機器付き断熱容器。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の冷却機器付き断熱容器が自動車に搭載されたことを特徴とする冷却機器付き断熱容器搭載車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−172906(P2012−172906A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35263(P2011−35263)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(511046472)
【出願人】(511046483)
【出願人】(511046494)
【Fターム(参考)】