説明

冷却装置、電子機器及びヒートシンク

【課題】効率良く塵や埃をケース内から排出でき、ホコリ詰まりを防止することができるようにする。
【解決手段】冷却装置15は、ケースと、ケース内に収納されるファン22と、ヒートシンク23とを備えている。ケースは、空気を吸気する下側吸気口28及び上側吸気口31と、吸気した空気を排出する排気口と、且つ空気を排気口に導く通風路を形成する側壁26bと、を有している。ヒートシンク23は、ケースの排気口に配置されると共に、複数の放熱フィン36を有している。更に、ヒートシンク23には、ケース内を流れる空気の流速に対応した位置に塵埃排出口40が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置内に侵入した埃や塵によって放熱フィンの埃詰まりを防止する冷却装置及び、この冷却装置を備えた電子機器、並びに冷却装置に用いられるヒートシンクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パーソナルコンピュータ等の電子機器には、IC(Integrated Circuit)やCPU(Central Processing Unit)等の発熱する部品(以下、「発熱部品」という。)の冷却にヒートシンクとファンから構成される冷却装置が用いられている。そして、ヒートシンクは、複数の放熱フィンを所定の間隔を開けて積層して構成されている。
【0003】
しかしながら、冷却装置のケース内には、空気と共に塵や埃が吸入されていた。そして、この吸入された塵や埃がヒートシンクを構成する放熱フィンの間に塵や埃が付着し、いわゆるホコリ詰まりが生じていた。また、ヒートシンクにホコリ詰まりが生じると、装置全体の冷却能力が低下する、という問題を有していた。
【0004】
このヒートシンクへのホコリ詰まりを抑制するために、従来では、例えば冷却装置の吸気口に埃や塵が侵入することを防止するパッチングメッシュ等からなるホコリ侵入防止材を設けていた。また、特許文献1では、放熱フィンに傾斜を設けると共に、ファンやヒートシンクを収納するケースに塵埃排気口を形成し、この塵埃排気口から塵や埃を排出する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−321287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のホコリ侵入防止材を設ける技術では、装置を組み立てる際にホコリ侵入防止材を吸気口に設ける工程が必要であった。そのため、部品点数が増加するだけでなく、装置を組み立てる際の工程数が増える、という問題を有していた。
【0007】
また、特許文献1に記載された技術では、塵や埃を排出する塵埃排気口をケースに設けている。そのため、装置を組み立てる際に、放熱フィンに傾斜を設けるだけでなく、塵埃排気口をケースに形成する工程が必要であり、装置の組み立てが煩雑なものとなっていた。
【0008】
更に、放熱フィンに設けた傾斜を塵や埃が流れる際に、放熱フィンに塵や埃が付着するおそれがあるだけでなく、ケース内を流れる空気の流速や圧力を考慮せずに、塵埃排気口を設ける箇所を設定していた。そのため、効率良く塵や埃を排出することができず、排出されずに残った塵や埃が放熱フィンに付着し、装置の冷却能力が低下する、という問題も有していた。
【0009】
本発明の目的は、上記の問題点を考慮し、簡単な構成で効率良く塵や埃をケース内から排出でき、ホコリ詰まりを防止することができる冷却装置、電子機器及びヒートシンクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の冷却装置は、空気を吸気する吸気口と、吸気した空気を排出する排気口と、且つ空気を吸気口から排気口に導く通風路を形成する側壁と、を有するケースと、ケース内に収納されたファンを備えている。更に、ケースの排気口に配置されると共に、複数の放熱フィンを有し、且つケース内を流れる空気の流速に対応した位置に塵埃排出口が形成されたヒートシンクを備えたことを特徴としている。
【0011】
本発明の電子機器は、基板に搭載された発熱部と、発熱部を冷却する冷却装置と、を備え、備えている。そして、冷却装置は、空気を吸気する吸気口と、吸気した空気を排出する排気口と、且つ空気を吸気口から排気口に導く通風路を形成する側壁と、を有するケースと、ケース内に収納されたファンと、を備えている。更に、冷却装置は、ケースの排気口に配置されると共に、複数の放熱フィンを有し、且つケース内を流れる空気の流速に対応した位置に塵埃排出口が形成されたヒートシンクを備えている。そして、発熱部からの熱を吸収する受熱部と、受熱部が吸収した熱をヒートシンクに伝達させる伝熱部と、を有する。
【0012】
また、本発明のヒートシンクは、ファンを内蔵し、且つ空気を吸気する吸気口と、吸気した空気を排出する排気口と、空気を吸気口から排気口に導く通風路を形成する側壁と、を有する冷却装置の排気口に配置されるヒートシンクである。そして、ヒートシンクは、複数の放熱フィンと、冷却装置のケース内を流れる空気の流速に対応した位置に形成された塵埃排出口と、を備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の冷却装置、電子機器及びヒートシンクによれば、通風路から導かれた空気が排気口から吹き付けられるヒートシンクに塵埃排気口を設けている。更に、この塵埃排気口を設ける位置は、ケース内を流れる空気の流速に対応した位置であるため、効率良く埃や塵を排出することができる。これにより、ケースや放熱フィンに塵や埃が付着して、冷却能力が低下することを防ぐことができ、CPUやIC等の発熱部材の温度上昇を抑制することができる。
【0014】
また、ホコリ侵入防止材を設けたりケースに孔を開けたりする必要がなく、極めて簡単な構成で塵や埃を排出することができる。その結果、装置を組み立てる際の工程を簡略化することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の電子機器の第1の実施の形態例として適用したノート型パソコンを示す斜視図である。
【図2】本発明の電子機器の第1の実施の形態例として適用したノート型パソコンを示す分解斜視図である。
【図3】本発明の電子機器の第1の実施の形態例として適用したノート型パソコンにかかる本体部を示す上面図である。
【図4】本発明の電子機器の第1の実施の形態例として適用したノート型パソコンにかかる本体部を示す側面図である。
【図5】本発明の電子機器の第1の実施の形態例として適用したノート型パソコンの要部を示す分解斜視図である。
【図6】本発明の冷却装置の第1の実施の形態例を示す分解斜視図である。
【図7】本発明の冷却装置の第1の実施の形態例にかかる上ケースを外した状態を示す正面図である。
【図8】本発明の冷却装置の第1の実施の形態例にかかるヒートシンクを示す斜視図である。
【図9】本発明の冷却装置の第1の実施の形態例にかかる放熱フィンを示す正面図である。
【図10】本発明の冷却装置の第1の実施の形態例におけるケース内の圧力分布を示す分布図である。
【図11】本発明の冷却装置の第1の実施の形態例におけるケース内を流れる空気の速度を示す流速分布図である。
【図12】本発明の冷却装置の第2の実施の形態例にかかるヒートシンクを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の電子機器及び冷却装置の実施の形態例について、図1〜図12を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。また、本発明は、以下の形態に限定されるものではない。
なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態例
1−1.電子機器の構成
1−2.冷却装置の動作
2.第2の実施の形態例
【0017】
1.第1の実施の形態例
1−1.電子機器の構成
まず、図1〜図4を参照して本発明の電子機器の第1の実施の形態例(以下、「本例」という。)について説明する。
図1は、本例の電子機器を示す斜視図、図2は、本例の電子機器を示す分解斜視図である。図3は、本例の電子機器の本体部を示す上面図、図4は、本例の電子機器の本体部を示す側面図である。
【0018】
[電子機器]
図1に示すように、本例の電子機器1は、ノート型パーソナルコンピュータ(以下、「ノート型パソコン」という。)である。このノート型パソコン1は、扁平な直方体をなす本体部2と、同じく偏平な直方体をなす表示部3等を備えて構成されている。本体部2及び表示部3は、それぞれに所定の大きさを有する空間部が設けられていると共に、互いに重なり合って積層可能に構成されている。即ち、本体部2の上に表示部3が積層され、その本体部2と表示部3がヒンジ機構4によって回動可能に連結されている。
【0019】
表示部3の内面である本体部2の上面と対向する面には、周囲にわずかな縁取りを残して開口部5が設けられている。表示部3の開口部5には、その内部に収納された表示装置である液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ、表面電界ディスプレイ等の平面表示パネル6が臨まれている。
【0020】
平面表示パネル6の内側には、図示しないが、平面表示パネル6の背面側に光を当てるバックライトや、平面表示パネル6の画面を制御する制御装置が搭載された配線基板等が必要に応じて収納されている。そして、各種の情報や画像等が平面表示パネル6に表示可能に構成されている。
【0021】
図2に示すように、本体部2は、一面が開口され、且つ扁平な容器状に形成された筐体8と、筐体8の開口を閉じる入力板9とから構成されている。入力板9は、本体部2と表示部3を重ね合わせた際に表示部3の開口部5及び平面表示パネル6に対向する。
【0022】
入力板9には、多数のキーからなるキー式入力部11と、タッチ式入力部12が設けられている。タッチ式入力部12は、タッチタッチパネル式入力手段等によって入力操作を行う。これらのキー式入力部11及びタッチ式入力部12から制御信号が入力され、所定の情報処理等が行われる。
【0023】
また、本体部2の内部には、不図示のディスクドライブと、このディスクドライブ装置やその他の装置、機器等を制御する制御装置が搭載された配線基板13と、冷却装置15等が収納されている。配線基板13には、発熱部品19であるICやCPUが搭載されている(図5参照)。
【0024】
筐体8は、略四角形状に形成された主面部8aと、この主面部8aを囲む4つの側面部8b,8b,8b,8bとを有している。図3に示すように、主面部8aの短手方向の一側には、凹部8cが設けられている。そして、この凹部8cには、ディスクドライブ装置や制御装置等に電力を供給する図示しないバッテリー電源が配置される。また、この凹部8cの左右の両側部には、ヒンジ機構4を構成する本体部側ヒンジ部4a,4aが配置される。
【0025】
ヒンジ機構4は、一対の本体部側ヒンジ部4a,4aと、一対の表示部側ヒンジ部4b,4bと、ヒンジ軸4cとの組み合わせから構成されている。一対の表示部側ヒンジ部4b,4bは、表示部3の後方の両側部において、筐体8に配置した一対の本体部側ヒンジ部4a,4aと対応する位置に配置されている。そして、図4に示すように、ヒンジ軸4cは、本体部側ヒンジ部4aと表示部側ヒンジ部4bとを貫通している。
【0026】
このヒンジ機構4によって本体部2と表示部3が回動可能に連結され、本体部2に対して表示部3が上下方向へ回動可能とされたノート型パソコン1が構成されている。なお、表示部3は本体部2に対して、任意の角度位置でその傾斜した姿勢を保持できるように構成されている。
【0027】
図2に戻って示すように、筐体8の主面部8aには、配線基板13や冷却装置15を固定する固定部16が形成されている。そして、配線基板13や冷却装置15は、固定ねじ等の固定方法によって筐体8の主面部8aに固定される。また、図4に示すように、主面部8aの長手方向の一端側に位置する側面部8bには、筐体側排気口17が形成されている。
【0028】
[冷却装置]
次に、図5〜図7を参照して本例の冷却装置の構成について説明する。
図5は、本例のノート型パソコン1の要部を示す斜視図、図6は、本例の冷却装置15を示す分解斜視図である。
【0029】
図5及び図6に示すように、冷却装置15は、中空のケース21と、ファン22と、ヒートシンク23と、2つの受熱部材24a,24bと、伝熱部材25とから構成されている。そして、図5に示すように、冷却装置15は、固定部材20を介して配線基板13に固定されている。
【0030】
また、冷却装置15は、受熱部材24a,24bが配線基板に搭載されたICやCPU等の発熱部品19に接触するように配置されている。なお、この固定部材20は、熱伝導性に優れたアルミニウムや銅で形成されており、放熱手段としての役割も有している。
【0031】
ケース21は、容器状の下ケース26と、この下ケース26に重なり合う上ケース27とから構成されている。このケース21は、薄い略直方体状に形成されている。そして、このケース21内には、ファン22が収納される。
【0032】
下ケース26は、平板状の載置面部26aと、この載置面部26aの一部を除いた周囲を囲む側壁26bとを有している。載置面部26aには、ファン22が搭載される。このファン22は、軸方向から空気を吸気し、接線方向から空気を排出するシロッコファンである。また、載置面部26aには、ファン22が搭載される箇所を囲むようにして3つの下側吸気口28が形成されている。そして、この下側吸気口28から空気が吸気される。
【0033】
側壁26bは、載置面部26aから略垂直に連続して形成されている。この側壁26bには、複数の係止部29が設けられている。係止部29は、側壁26bから垂直方向の上方に向けて突出する突起である。
【0034】
上ケース27は、略平板状に形成されており、下ケース26の載置面部26aと対向するようにして下ケース26に重なり合う。また、図5に示すように、上ケース27は、平面部27aと、側壁27bとを有している。側壁27bは、平面部27aの周縁の一部から略垂直に形成されている。
【0035】
この上ケース27の平面部27aには、円形の上側吸気口31が形成されている。上側吸気口31は、上ケース27を下ケース26に被せた際に下ケース26に搭載されたファン22の上方に位置している。また、平面部27aの周縁部には、複数の係止受部32が形成されている。この係止受部32は、上ケース27を下ケース26に重ね合わせた際に、下ケース26の係止部29と係止する。また、下ケース26と上ケース27を重ね合わせることにより、空気を排出する排気口33が形成される。
【0036】
図7は、本例の冷却装置15を、上ケース27を外した状態を示す正面図である。
この図7に示すように、下ケース26の側壁26bと上ケース27の側壁27bによって通風路34が形成される。この通風路34は、下側吸気口28及び上側吸気口31で吸気した空気を排気口33に導く。また、図3に示すように、冷却装置15は、排気口33がノート型パソコン1の筐体8に設けた筐体側排気口17の位置と対向するように配置される。
【0037】
なお、本例では、ファン22は、反時計回りに回転する。そのため、下側吸気口28及び上側吸気口31によって吸気された空気は、ファン22の回転方向と同様に、側壁26b,27bに沿って反時計回りに導かれる。このとき、ケース21の排気口33からケース21内を見て左側に位置する側壁26b,27b側が通風路34を流れる空気の下流側となる。
【0038】
また、ファン22が時計回りに回転する場合では、空気は側壁26b,27bに沿って時計回りに流れる。そのため、ケース21の排気口33からケース21内を見て右側に位置する側壁26b,27b側が流れる空気の下流側となる。
【0039】
ヒートシンク23は、ケース21の排気口33を覆うように配置される。このヒートシンク23は、複数の放熱フィン36から構成されている。このヒートシンク23には、伝熱部材25が取り付けられている。
【0040】
伝熱部材25は、パイプの中に液体又は気体を封入したヒートパイプである。この伝熱部材25の一方の端部は、上述したようにヒートシンク23に接続されており、他方の端部は、第1の受熱部材24aに接続されている。また、伝熱部材25の中途部には、第2の受熱部材24bが取り付けられている。
【0041】
そして、伝熱部材25は、2つの受熱部材24a,24bで吸収した熱をヒートシンク23に伝熱している。この伝熱部材25の材質としては、熱伝導性に優れた材料がよく、例えば銅やアルミニウム等を用いることができる。
【0042】
なお、本例では、伝熱部材25として2本のヒートパイプを用いた例を説明したが、これに限定されるものではなく、伝熱部材25を構成するヒートパイプの数は、要求される冷却能力に応じて適宜設定されるものである。
【0043】
2つの受熱部材24a,24bは、熱伝導性に優れた銅やアルミニウム等の材質で形成されている。第1の受熱部材24aには、固定部材20に固定ねじを介して接続される固定片30が設けられている。
【0044】
そして、図5に示すように、第1の受熱部材24aは、配線基板13を間に挟んで固定部材20と固定ねじ等の固定方法によって固定される。このとき、第1の受熱部材24a及び第2の受熱部材24bの一面は、配線基板13の裏面に搭載された不図示のCPU等の発熱部品に接触する。なお、第1の受熱部材24a及び第2の受熱部材24bと発熱部品との間に熱伝導性に優れたグリスやジェルシート等を介在させてもよい。
【0045】
[ヒートシンク]
次に、図8及び図9を参照して、ヒートシンク23の詳細な構成について説明する。
図8は、ヒートシンク23を示す斜視図、図9は、放熱フィン36を示す平面図である。
【0046】
図8に示すように、ヒートシンク23は、複数の放熱フィン36を所定の間隔を開けて略平行に積層し、全体として略直方体状に形成されている。放熱フィン36は、薄い板材で形成されている。図9に示すように、放熱フィン36は、略台形状に形成されており、短手方向の上辺と下辺には、折曲部37が設けられている。この上辺と下辺に形成された折曲部37は、同じ方向に略垂直に折り曲げられている。
【0047】
放熱フィン36の材質としては、熱伝導性に優れたものが好ましく、例えば、銅やアルミニウム等を用いることができる。
【0048】
そして、図7に示すように、ヒートシンク23は、複数の放熱フィン36の主面をケース21の排気口33から排出される空気の流れに沿う向きとなるように配置される。これにより、複数の放熱フィン36の間から空気が排気される。また、複数の放熱フィン36を折曲部37で連接することで、ヒートシンク23の上面及び下面が閉塞した面となる(図8参照)。
【0049】
また、ヒートシンク23の長手方向の一側に配置された複数の放熱フィン36は、塵や埃を排出する塵埃排出用放熱フィン36Aとしての役割を有している。この塵埃排出用放熱フィン36Aにおけるファン22から吸気された空気が吹き付けられる側には、切り欠き38が形成されている。これにより、塵埃排出用放熱フィン36Aは、略コの字状に構成される。なお、切り欠き38の大きさは、ヒートシンク23に求める冷却能力と排出する塵や埃の量や大きさによって適宜設定されるものである。
【0050】
そして、塵埃排出用放熱フィン36Aに形成された切り欠き38によって、塵埃排出口40が形成される。なお、切り欠き38を形成することで、他の放熱フィン36よりも埃や塵が通り易くなるため、ヒートシンク23全体として、塵や埃がたまり難くなる。よって、この塵埃排出口40が、ファン22によって空気と共に吸気された塵や埃が通る道となる。また、塵埃排出口40は、ケース21の排気口33からケース21内を見て左側に設けられている。更に、この塵埃排出口40の大きさ、すなわち塵埃排出用放熱フィン36Aに形成する切り欠き38の大きさや切り欠き38を形成する放熱フィン36の枚数は、ヒートシンク23に求める冷却能力に応じて適宜設定される。
【0051】
なお、ファン22が時計回りに回転する場合では、塵埃排出口40は、ケース21の排気口33からケース21内を見て右側に設けられる。すなわち、塵埃排出口40は、ケース21内を流れる空気の流速に対応した位置に設けられる。具体的には、塵埃排出口40は、ケース21の側壁26b,27bにおける通風路34を沿って流れる空気の下流側に位置する側壁26b,27bに沿って形成される。または、複数の放熱フィン36のうち、その間を通る空気の流速が最も速い箇所に配置された放熱フィン36から隣り合う放熱フィン36を所定の枚数切り欠くことで形成される。
【0052】
そして、このような構成を有するヒートシンク23は、溶接や接着等の固定方法によって伝熱部材25の一方の端部に固定される。また、図4に示すように、冷却装置15をノート型パソコン1の筐体8に搭載した際に、ヒートシンク23は、筐体側排気口17と対向する。
【0053】
1−2.冷却装置の動作
次に、図5〜図11を参照して上述した構成を有する冷却装置15の動作について説明する。
図10は、空気が流れる際のケース21内の圧力を示す圧力分布図であり、図11は、ケース21内を流れる空気の速度を示す流速分布図である。図10では、色が濃い箇所は、圧力が高く、色が薄い箇所は、圧力が低いことを表している。また、図11では、色が濃い箇所は、流速が速く、色が薄い箇所は、流速が遅いことを表している。
【0054】
冷却装置15は、電子機器であるノート型パソコン1が駆動すると、ファン22が回転する。なお、ファン22の回転は、発熱部品19の温度をフィードバックすることで、制御される。通常、発熱部品19の温度が上昇するとファン22の回転数が上がり、発熱部品19の温度が下がるとファン22の回転数は下がる。
【0055】
まず、発熱部品19に生じた熱は、発熱部品19に接触している第1の受熱部材24a及び第2の受熱部材24bに伝熱(吸収)される。第1の受熱部材24a及び第2の受熱部材24bに吸収された熱は、伝熱部材25を介してヒートシンク23に伝熱される。
【0056】
また、ファン22が回転すると、ケース21の下側吸気口28及び上側吸気口31から空気がケース21内に吸い込まれる。図7に示すように、ファン22が反時計回りに回転しているため、吸い込まれた空気は、ケース21の側壁26b,27bで形成された通風路34に沿って反時計回りに流れる。そして、通風路34を流れた空気は、排気口33から排気されて、ヒートシンク23に吹き出される。
【0057】
ヒートシンク23に吹き付けられた空気は、複数の放熱フィン36の間を通り、冷却装置15の外側に排気される。そして、ヒートシンク23に空気が吹き付けられることで、ヒートシンク23に伝熱された熱が放熱され、発熱部品19の放熱を行うことができる。ヒートシンク23による冷却能力を効率良く発揮するためには、放熱フィン36の間隔を可能な限り狭く設定することが好ましい。
【0058】
なお、下側吸気口28及び上側吸気口31からは、空気だけでなく、塵や埃もケース内21に吸入される。このケース21に吸入された塵や埃は、ファン22が回転することに生じる遠心力によって、ファン22の半径方向の外側、すなわちケース21の側壁26b,27bに流される。そして、塵や埃は、ケース21の側壁26b,27bに沿って空気と共に通風路34を通り、排気口33から排出される。
【0059】
ここで、一般的な埃や塵の詰まり方を検討する。まず、排気口33から排出された塵や埃は、ヒートシンク23を形成する複数の放熱フィン36に吹き付けられる。そして、複数の放熱フィン36のどこか一箇所に一旦埃や塵が詰まると、その場所を基点として、塵や埃が詰まり始める。そして、最終的には、塵や埃がヒートシンク23を構成する複数の放熱フィン36の全面を覆ってしまい、ヒートシンク23の冷却能力が著しく低下する。
【0060】
また、図10に示すケース21内の圧力分布を見ると、ケース21の排気口33からケース21内を見て右側、すなわち側壁26b,27bにおける空気の下流側に位置する側壁26b,27b側の領域Pが最も圧力が低いことがわかる。そして、この領域Pでの圧力の変化が他の箇所よりも大きくなっていることがわかる。そのため、図11に示すように、この圧力が低い領域Pに空気が強く吹き込まれるため、領域Pを流れる空気の流速が他の箇所よりも速くなる。
【0061】
よって、ケース21内に吸入され、側壁26b,27bに沿って空気と共に通風路34を流れた塵や埃は、領域Pから集中して排出されることが推測できる。そして、この領域Pの近傍に配置されたヒートシンク23の放熱フィン36がホコリ詰まりの基点となることが推測できる。ここで、ヒートシンク23における排気口33からケース21内を見て右側である領域Pに対応する箇所に配置した塵埃排出用放熱フィン36Aに切り欠き38を形成し、塵埃排出口40を設けている。そして、切り欠き38を設けることで、他の放熱フィンよりも塵や埃を排出し易くし、たまり難くしている。
【0062】
すなわち、排気口33から排気される空気のうち最も流速が速くなる箇所に対応して、ヒートシンク23に塵埃排出口40を設けている。これにより、最も多くの塵や埃が排出されて、ホコリ詰まりの基点となり易い箇所に塵埃排出口40を設けることで、塵や埃が詰まる発生基点を絶つと共に効率良く塵や埃を排出することができる。その結果、ホコリ詰まりを効果的に防ぐことができる。また、放熱フィン36の一部を切り欠くことで、ヒートシンク23としての冷却能力を維持させることもできる。
【0063】
なお、塵埃排出口40を構成する塵埃排出用放熱フィン36Aの切り欠き38に塵や埃が引っ掛かっても、図8に示す塵埃排出用放熱フィン36Aの隣りに配置された放熱フィン36bの平面部が防護壁となる。すなわち、放熱フィン36bの平面部が防護壁となることで、塵埃排出用放熱フィン36Aに引っ掛かった塵や埃が、他の放熱フィン36側に侵入することを防ぐことができ、ホコリ詰まりの拡大を防止することができる。
【0064】
2.第2の実施の形態例
次に、図12を参照して本発明のヒートシンクの第2の実施の形態例について説明する。
図12は、第2の実施の形態例にかかるヒートシンクを示す斜視図である。
【0065】
この第2の実施の形態例にかかるヒートシンク50が、第1の実施の形態例に係るヒートシンク23と異なるところは、塵埃排出口の構成である。そのため、ここでは、塵埃排出口について説明し、第1の実施の形態例にかかるヒートシンク23と共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0066】
図12に示すように、ヒートシンク50における長手方向の一側には、塵埃排出口51が設けられている。この塵埃排出口51は、塵埃排出口40は、ケース21の排気口33からケース21内を見て右側に配置された放熱フィン36を除いて構成されている。
【0067】
その他の構成は、上述した第1の実施の形態例にかかるヒートシンク23と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有するヒートシンク50によっても、上述した第1の実施の形態例にかかるヒートシンク23と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0068】
なお、第2の実施の形態例にかかるヒートシンク50によれば、塵埃排出口51から放熱フィン36を除いているため、第1の実施の形態例にかかるヒートシンク23よりもホコリ詰まりを低減することができる。
【0069】
なお、本発明は上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施の形態例では、電子機器としてノート型パソコンに適用した例について説明したが、これに限定されるものではない。電子機器としては、例えば、デスクトップ型パーソナルコンピュータ、電子辞書、DVDプレーヤ、カーナビゲーションその他各種の電子機器に適用できるものである。
【0070】
また、排気口から排気される空気のうち流速がもっと速くなる箇所に配置された放熱フィンの間隔を他の箇所に配置された放熱フィンの間隔よりも広げることで、塵埃排出口を形成してもよい。この塵埃排出口を構成する放熱フィンの間隔は、塵や埃の大きさよりも大きく設定される。
【0071】
更に、上述した実施の形態例では、塵埃排出口をヒートシンクに一箇所だけ設けた例を説明したが、これに限定されるものではない。塵埃排出口は、ケース内を流れる空気の流速に応じてヒートシンクに2箇所以上設けてもよい。塵埃排出口を設ける箇所は、例えば、排気口から排気される流速が最も速い箇所と、その次に速くなる箇所に設けてもよく、あるいはケースの左右の側壁に沿って形成してもよい。
【符号の説明】
【0072】
1…ノート型パソコン(電子機器)、 2…本体部、 3…表示部、 13…配線基板、 15…冷却装置、 17…筐体側排気口、 19…発熱部品、 20…固定部材、 21…ケース、 22…ファン、 23,50…ヒートシンク、 24a…第1の受熱部材、 24b…第2の受熱部材、 25…伝熱部材、 26b,27b…側壁、 28…下側吸気口(吸気口)、 31…上側吸気口(吸気口)、 33…排気口、 34…通風路、 36,36b…放熱フィン、 36A…塵埃排出用放熱フィン、 40,51…塵埃排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を吸気する吸気口と、吸気した前記空気を排出する排気口と、且つ前記空気を前記吸気口から前記排気口に導く通風路を形成する側壁と、を有するケースと、
前記ケース内に収納されたファンと、
前記ケースの前記排気口に配置されると共に、複数の放熱フィンを有し、且つ前記ケース内を流れる空気の流速に対応した位置に塵埃排出口が形成されたヒートシンクと、
を備えた冷却装置。
【請求項2】
前記塵埃排出口を設ける位置は、前記ファンの回転方向によって設定される
請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記塵埃排出口は、前記側壁における前記空気を導く際に下流側に位置する側壁に沿って形成される
請求項1又は2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記塵埃排出口は、前記複数の放熱フィンのうち、その間を通る空気の流速が最も速い箇所に配置された放熱フィンから隣り合う放熱フィンにかけて所定の大きさで形成されている
請求項1〜3のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項5】
前記塵埃排出口は、前記複数の放熱フィンのうち対応する位置に配置された放熱フィンを切り欠くことで形成される
請求項1〜4のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項6】
前記塵埃排出口は、前記複数の放熱フィンのうち対応する位置に配置された放熱フィンを除くことで形成される
請求項1〜4のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項7】
前記複数の放熱フィンは、所定の間隔を開けて配置されており、
前記塵埃排出口は、前記複数の放熱フィンのうち対応する位置に配置された放熱フィンの間隔を他の放熱フィンの間隔よりも広げることで形成される
請求項1〜4のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項8】
基板に搭載された発熱部と、
前記発熱部を冷却する冷却装置と、を備え、
前記冷却装置は、
空気を吸気する吸気口と、吸気した前記空気を排出する排気口と、且つ前記空気を前記吸気口から前記排気口に導く通風路を形成する側壁と、を有するケースと、
前記ケース内に収納されたファンと、
前記ケースの前記排気口に配置されると共に、複数の放熱フィンを有し、且つ前記ケース内を流れる空気の流速に対応した位置に塵埃排出口が形成されたヒートシンクと、
前記発熱部からの熱を吸収する受熱部と、
前記受熱部が吸収した熱を前記ヒートシンクに伝達させる伝熱部と、を有する
電子機器。
【請求項9】
ファンを内蔵し、且つ空気を吸気する吸気口と、吸気した前記空気を排出する排気口と、前記空気を前記吸気口から前記排気口に導く通風路を形成する側壁と、を有する冷却装置の前記排気口に配置されるヒートシンクであって、
複数の放熱フィンと、
前記冷却装置の前記ケース内を流れる空気の流速に対応した位置に形成された塵埃排出口と、
を備えたヒートシンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−233849(P2011−233849A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105835(P2010−105835)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】