説明

冷却装置

【課題】受熱部の受熱面の温度を均温化しうる冷却装置を提供する。
【解決手段】冷却装置1は、上面が受熱面となされた受熱部3と、受熱部3の下方に固定状に設けられた放冷部4とを備えている。放冷部4内に、2つの冷却流体通路15,16を、熱伝導材料からなる仕切部材18を介して上下方向に並んで積層状に形成する。放冷部4に、下側冷却流体通路15に冷却流体を流入させる冷却流体入口21と、上側冷却流体通路16から冷却流体を流出させる冷却流体出口22とを設ける。放冷部4に、受熱部2の受熱面から下側冷却流体通路15を流れる冷却流体に熱を伝える伝熱部29を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえばIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)などの電子部品からなる発熱体を冷却する冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の冷却装置として、上面が受熱面となされた受熱部と、受熱部の下方に固定状に設けられた放冷部とを備えており、放冷部内に1つの冷却流体通路が設けられ、放冷部の一端部に、冷却流体通路に冷却流体を流入させる冷却流体入口が設けられるとともに、放冷部の他端部に、冷却流体通路から冷却流体を流出させる冷却流体出口が設けられ、冷却流体通路内を冷却流体が1方向に流れるようになされているものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1記載の冷却装置において、受熱部の受熱面に取り付けられた発熱体を冷却する際には、発熱体から発せられる熱は、受熱部を経て放冷部の冷却流体通路内を1方向に流れる冷却流体に伝わるようになっている。
【0004】
ここで、図9(a)に示すように、冷却流体入口から流入する冷却流体の温度T1および流量、ならびに発熱体から発せられる熱量が一定であれば、冷却流体出口から流出する冷却流体の温度T2は常に一定となり、その結果冷却流体通路内を流れる冷却流体の温度は、図9(a)に直線L1で示すように、冷却流体入口側で低くなるとともに、冷却流体出口側で高くなる。そして、受熱部の受熱面は、1つの冷却流体通路内を流れる冷却流体の温度の影響だけを受けるので、受熱部の受熱面における冷却流体通路の各部に対応する部分の温度は、図9(a)に直線L2で示すように、冷却流体通路の冷却流体入口側において低くなるとともに、冷却流体出口側において高くなり、受熱部の受熱面における冷却流体通路の上流端側の温度t1と、同じく下流端側の温度t2との最大温度差tdは、冷却流体通路の冷却流体入口側の冷却流体の温度T1と冷却流体出口側の冷却流体の温度T2との温度差(T2−T1)とほぼ等しくなって、比較的大きくなる。
【0005】
ところで、発熱体がIGBTなどの電子部品の場合、電子部品の温度をできる限り均温化することが、電子部品の寿命を延ばすことに繋がるが、特許文献1記載の冷却装置のように、受熱部の受熱面の温度が不均一になると、電子部品の温度も不均一になり、電子部品の寿命が短くなるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−346480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明の目的は、上記問題を解決し、受熱部の受熱面の温度を均温化しうる冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0009】
1)上面が受熱面となされた受熱部と、受熱部の下方に固定状に設けられた放冷部とを備えた冷却装置であって、
放冷部内に、複数の冷却流体通路が、熱伝導材料からなる仕切部材を介して上下方向に並んで積層状に形成され、放冷部に、最下層の冷却流体通路に冷却流体を流入させる冷却流体入口と、最上層の冷却流体通路から冷却流体を流出させる冷却流体出口とが設けられている冷却装置。
【0010】
2)放冷部に、受熱部の受熱面から最下層の冷却流体通路を流れる冷却流体に熱を伝える伝熱部が設けられている上記1)記載の冷却装置。
【0011】
3)上下方向に隣接する2つの冷却流体通路における冷却流体の流れ方向が同方向である上記1)または2)記載の冷却装置。
【0012】
4)上下方向に隣接する2つの冷却流体通路における冷却流体の流れ方向が逆方向である上記1)または2)記載の冷却装置。
【0013】
5)放冷部内に、2つの冷却流体通路が上下方向に並んで積層状に形成されている上記1)〜4)のうちのいずれかに記載の冷却装置。
【発明の効果】
【0014】
上記1)の冷却装置によれば、放冷部内に、複数の冷却流体通路が、熱伝導材料からなる仕切部材を介して上下方向に並んで積層状に形成され、放冷部に、最下層の冷却流体通路に冷却流体を流入させる冷却流体入口と、最上層の冷却流体通路から冷却流体を流出させる冷却流体出口とが設けられているので、受熱面に取り付けられた発熱体を冷却する際には、冷却流体入口から最下層の冷却流体通路内に流入した冷却流体が、全ての冷却流体通路を通って最上層の冷却流体通路に至り、最上層の冷却流体通路を流れて冷却流体出口から流出する。一方、受熱部の受熱面に取り付けられた発熱体から発せられる熱は、受熱部を経て最上層の冷却流体通路内を流れる冷却流体に伝わり、仕切部材を経て1つ下層の冷却流体通路内を流れる冷却流体に順次伝わる。その結果、すべての冷却流体通路内を流れる冷却流体の温度は、最上層の冷却流体通路から最下層の冷却流体通路に向かって低くなり、受熱部の受熱面は、最上層の冷却流体通路内を流れる冷却流体の温度だけではなく、それよりも下層の冷却流体通路内を流れる冷却流体の温度の影響を受ける。
【0015】
したがって、冷却流体入口から流入する冷却流体の温度および冷却流体の流量、ならびに発熱体から発せられる熱量が特許文献1記載の冷却装置と同様であれば、冷却流体出口から流出する冷却流体の温度も特許文献1記載の冷却装置と同様になるが、受熱部の受熱面における最上層の冷却流体通路の上流端側の温度が、特許文献1記載の冷却装置の冷却流体通路の上流端側の温度よりも高くなるとともに、受熱部の受熱面における最上層の冷却流体通路の下流端側の温度が、特許文献1記載の冷却装置の冷却流体通路の下流端側の温度よりも低くなる。その結果、受熱部の受熱面の温度を均温化することが可能になり、受熱部の受熱面に取り付けられる発熱体の温度も均温化されることとなって、発熱体がIGBTなどの電子部品の場合であっても、電子部品の寿命を延ばすことが可能になる。
【0016】
上記2)の冷却装置によれば、放冷部に、受熱部の受熱面から最下層の冷却流体通路を流れる冷却流体に熱を伝える伝熱部が設けられているので、受熱面に取り付けられた発熱体を冷却する際には、受熱部の受熱面に取り付けられた発熱体から発せられる熱が、伝熱部を経て全ての冷却流体通路内を流れる冷却流体に伝わる。したがって、受熱部の受熱面における最上層の冷却流体通路の上流端側の温度と、同下流端側の温度との差は、特許文献1記載の冷却装置の受熱部の受熱面における冷却流体通路の上流端側の温度と、同下流端側の温度との差よりも一層小さくなる。
【0017】
上記3)および4)の冷却装置によれば、冷却流体入口から流入する冷却流体の温度および冷却流体の流量、発熱体から発せられる熱量、ならびに冷却流体出口から流出する冷却流体の温度が、それぞれ特許文献1記載の冷却装置と同様になる場合、受熱部の受熱面は、すべての冷却流体通路内を流れる冷却流体の温度の影響を受ける。したがって、受熱部の受熱面における最上層の冷却流体通路の上流端側の温度は、冷却流体入口から流入する冷却流体の温度だけではなく、それよりも上方に位置する冷却流体通路内を流れる冷却流体の影響を受けるために、冷却流体入口から流入する冷却流体の温度の影響だけを受ける特許文献1記載の冷却装置の受熱部の受熱面における冷却流体通路の上流端側の温度よりも高くなる。一方、受熱部の受熱面における最上層の冷却流体通路の下流端側の温度は、冷却流体出口から流出する冷却流体の温度だけではなく、それよりも下方に位置する冷却流体通路内を流れる冷却流体の影響を受けるために、冷却流体出口から流出する冷却流体の温度の影響だけを受ける特許文献1記載の冷却装置の受熱部の受熱面における冷却流体通路の下流端側の温度よりも低くなる。その結果、受熱部の受熱面の温度を均温化することが可能になり、受熱部の受熱面に取り付けられる発熱体の温度も均温化されることとなって、発熱体がIGBTなどの電子部品の場合であっても、電子部品の寿命を延ばすことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の実施形態1の冷却装置の全体構成を示す一部を切り欠いた分解斜視図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図2のB−B線断面図である。
【図4】図2のC−C線断面図である。
【図5】図3のD−D線断面図である。
【図6】図4のE−E線断面図である。
【図7】この発明の実施形態2の冷却装置の全体構成を示す一部を切り欠いた分解斜視図である。
【図8】図7のF−F線断面図である。
【図9】発熱体から発せられる熱を放熱する際の特許文献1記載の冷却装置、実施形態1の冷却装置および実施形態2の冷却装置における受熱部の受熱面の温度分を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。この実施形態は、この発明による冷却装置を、冷却流体として冷却液を用いる液冷式冷却装置に適用したものである。
【0020】
なお、全図面を通じて同一部分および同一物には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0021】
以下の説明において、図5および図6の上下、左右を上下、左右というものとし、図3および図4の下側(図2の左側)を前、これと反対側を後というものとする。
【0022】
また、以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0023】
実施形態1
この実施形態は図1〜図6に示すものである。
【0024】
図1は実施形態1の液冷式冷却装置の全体構成を示し、図2〜図6はその要部の構成を示す。
【0025】
図1〜図6において、液冷式冷却装置(1)は、上面が受熱面(3)となされた受熱部(2)と、受熱部(2)の下方に固定状に設けられた放冷部(4)とを備えている。受熱部(2)は左右方向に長い方形状のアルミニウム製平板からなる。放冷部(4)は、受熱部(2)の前後両側縁部に一体に垂下状に形成されたアルミニウム製前後両壁(5)と、前後両壁(5)の下端どうしを一体に連結する平板状のアルミニウム製底壁(6)と、受熱部(2)、ならびに放冷部(4)の前後両壁(5)および底壁(6)の右端部に固定されたアルミニウム製右端壁(7)と、受熱部(2)、ならびに放冷部(4)の前後両壁(5)および底壁(6)の左端に固定されたアルミニウム製左端壁(8)とを備えている。
【0026】
放冷部(4)内には、複数、ここでは2つの冷却流体通路(15)(16)が、上下方向に並んで積層状に設けられている。下側冷却流体通路(15)と上側冷却流体通路(16)との間には、放冷部(4)の前後両壁(5)と一体に形成された平板状のアルミニウム製仕切部材(18)が介在させられている。下側冷却流体通路(15)は、前側に位置する第1通路(11)と後側に位置する第2通路(12)とよりなる。上側冷却流体通路(16)は、前側に位置する第3通路(13)と後側に位置する第4通路(14)とよりなる。下側冷却流体通路(15)の第1通路(11)と第2通路(12)の間には、底壁(6)および仕切部材(18)と一体に形成されて左右方向にのび、かつ右端が右端壁(7)に固定されるとともに左端が左端壁(8)から離隔したアルミニウム製下仕切壁(17)が設けられている。また、上側冷却流体通路(16)の第3通路(13)と第4通路(14)との間には、受熱部(2)および仕切部材(18)と一体に形成されて左右方向にのび、かつ右端が右端壁(7)に固定されるとともに左端が左端壁(8)から離隔したアルミニウム製上仕切壁(19)が設けられている。
【0027】
放冷部(4)の右端壁(7)には、下側冷却流体通路(15)の第1通路(11)に冷却流体を流入させる冷却流体入口(21)と、上側冷却流体通路(16)の第4通路(14)から冷却流体を流出させる冷却流体出口(22)と、下側冷却流体通路(15)の第2通路(12)から冷却流体を流出させる中間流出口(23)と、上側冷却流体通路(16)の第3通路(13)に冷却流体を流入させる中間流入口(24)とが設けられている。中間流出口(23)と中間流入口(24)とは、放冷部(4)の右端壁(7)の外面に固定されかつ内部に連通路(26)が形成された連通部材(25)により通じさせられている。また、放冷部(4)の下仕切壁(17)と左端壁(8)との間には、第1通路(11)と第2通路(12)を通じさせる連通部(27)が形成され、同じく上仕切壁(19)と左端壁(8)との間には、第3通路(13)と第4通路(14)とを通じさせる連通部(28)が形成されている。そして、冷却流体入口(21)から下側冷却流体通路(15)の第1通路(11)内に流入した冷却流体は、第1通路(11)内を左方に流れ、連通部(27)を通って第2通路(12)内に入るとともに、第2通路(12)内を右方に流れ、中間流出口(23)から流出する。中間流出口(23)から流出した冷却流体は、連通部材(25)の連通路(26)内を通って、中間流入口(24)から上側冷却流体通路(16)の第3通路(13)内に入り、第3通路(13)内を左方に流れ、連通部(28)を通って第4通路(14)内に入るとともに、第4通路(14)内を右方に流れ、冷却流体出口(22)から流出する。したがって、上下方向に隣接する第1通路(11)および第3通路(13)における冷却流体の流れ方向は右から左で同方向であり、上下方向に隣接する第2通路(12)および第4通路(14)における冷却流体の流れ方向は左から右で同方向である。すなわち、上下方向に隣接する両冷却流体通路(15)(16)の流れ方向が同方向になっている。
【0028】
放冷部(4)には、受熱部(2)の受熱面(3)から上側冷却流体通路(16)の第3および第4通路(13)(14)内と、下側冷却流体通路(15)の第1および第2通路(11)(12)内とを流れる冷却流体に熱を伝える伝熱部(29)が設けられている。伝熱部(29)は、前後方向に間隔をおいて受熱部(2)および仕切部材(18)に一体に設けられかつ左右方向にのびる複数の上側垂直壁(31)と、前後方向に間隔をおいて仕切部材(18)および底壁(6)に一体に設けられかつ左右方向にのびる複数の下側垂直壁(32)とからなる。上下の垂直壁(31)(32)の左右両端は、左右両端壁(7)(8)からは離隔している。また、上下の垂直壁(31)(32)は前後方向の同一位置に設けられている。
【0029】
受熱部(2)と、放冷部(4)における右端壁(7)および左端壁(8)を除いた前後両壁(5)、底壁(6)、仕切部材(18)、仕切壁(17)(19)、および伝熱部(29)を構成する上下両垂直壁(31)(32)とは、受熱部(2)、前後両壁(5)、底壁(6)、仕切部材(18)、仕切壁(17)(19)を構成する垂直部分、および上下両垂直壁(31)(32)を構成する垂直部分を有するアルミニウム押出形材をつくり、ついで仕切壁(17)(19)を構成する垂直部分の左端部を切除するとともに、上下両垂直壁(31)(32)を構成する垂直部分の左右両端部を所定長さにわたって切除することにより一体に形成されている。
【0030】
上述した冷却装置(1)において、IGBTなどの電子部品からなる発熱体(H)は、受熱部(2)の受熱面(3)に取り付けられる。発熱体(H)を冷却する際には、液からなる冷却流体が、冷却流体入口(21)を通って放冷部(4)の下側冷却流体通路(15)の第1通路(11)内に流入し、第1通路(11)内を左方に流れ、連通部(27)を通って第2通路(12)内に入るとともに、第2通路(12)内を右方に流れ、中間流出口(23)から流出する。中間流出口(23)から流出した冷却流体は、連通部材(25)の連通路(26)内を通って、中間流入口(24)から上側冷却流体通路(16)の第3通路(13)内に入り、第3通路(13)内を左方に流れ、連通部(28)を通って第4通路(14)内に入るとともに、第4通路(14)内を右方に流れ、冷却流体出口(22)から流出する。
【0031】
そして、発熱体(H)から発せられる熱は、受熱部(2)を経て上側冷却流体通路(16)の第3および第4通路(13)(14)内を流れる冷却流体に伝わり、仕切部材(18)を経て下側冷却流体通路(15)の第1および第2通路(11)(12)内を流れる冷却流体に伝わる。また、発熱体(H)から発せられる熱は、受熱部(2)および伝熱部(29)を経て第1〜第4通路(14)内を流れる冷却流体に伝わる。その結果、発熱体(H)が冷却される。
【0032】
ここで、図9(b)に示すように、冷却流体入口(21)から流入する冷却流体の温度T1および冷却流体の流量、発熱体から発せられる熱量、ならびに冷却流体出口(22)から流出する冷却流体の温度T2が、それぞれ特許文献1記載の冷却装置と同様である場合、下側冷却流体通路(15)の第2通路(12)から中間流出口(23)を通って流出する冷却流体の温度をT3、中間流入口(24)を通って上側冷却流体通路(16)の第3通路(13)内に流入する冷却流体の温度をT4(=T3)とすると、下側冷却流体通路(15)の第1および第2通路(11)(12)内を流れる冷却流体の温度は、図9(b)に直線L3で示すように、冷却流体入口(21)側で低くなるとともに、中間流出口(23)側で高くなる。また、上側冷却流体通路(16)の第3および第4通路(13)(14)内を流れる冷却流体の温度は、図9(b)に直線L4で示すように、中間流入口(24)側で低くなるとともに、冷却流体出口(22)側で高くなる。そして、受熱部(2)の受熱面(3)における下側冷却流体通路(15)の第1および第2通路(11)(12)と、上側冷却流体通路(16)の第3および第4通路(13)(14)の各部に対応する部分の温度は、第1および第2通路(11)(12)内を流れる冷却流体の温度と、第3および第4通路(13)(14)内を流れる冷却流体の温度の影響を受ける。すなわち、受熱部(2)の受熱面(3)における第1および第3通路(11)(13)の上流端側では、冷却流体入口(21)から流入する冷却流体の温度T1だけではなく、中間流入口(24)を通って第3通路(13)内に流入する冷却流体の温度T4の影響を受けるので、この部分の温度t3は、特許文献1記載の冷却装置の受熱部の受熱面における冷却流体通路の冷却流体入口側の温度t1よりも高くなる。一方、受熱部(2)の受熱面(3)における第2および第4通路(12)(14)の下流端側では、冷却流体出口(22)から流出する冷却流体の温度T2と、第2通路(12)から中間流出口(23)を通って流出する冷却流体の温度T3の影響を受けるので、この部分の温度t4は、特許文献1記載の冷却装置の受熱部の受熱面における冷却流体通路の冷却流体出口側の温度t2よりも低くなる。したがって、受熱部(2)の受熱面(3)における第1および第3通路(11)(13)の上流端側の温度t3と、第2および第4通路(12)(14)の下流端側の温度t4との最大温度差td1は、特許文献1記載の冷却装置よりも小さくなって、受熱部(2)の受熱面(3)の温度を均温化することが可能になり、受熱部(2)の受熱面(3)に取り付けられる発熱体の温度も均温化されることとなって、発熱体がIGBTなどの電子部品の場合であっても、電子部品の寿命を延ばすことが可能になる。
【0033】
実施形態2
この実施形態は図7および図8に示すものである。
【0034】
実施形態2の液冷式冷却装置(40)の場合、放冷部(4)内には、受熱部(2)および放冷部(4)の前後方向の全幅にわたる複数、ここでは2つの冷却流体通路(41)(42)が、上下方向に並んで積層状に設けられている。上下2つの冷却流体通路(41)(42)間には、放冷部(4)の前後側壁(5)と一体に形成された平板状のアルミニウム製仕切部材(43)が介在させられている。
【0035】
放冷部(4)の右端壁(7)には、下側冷却流体通路(41)に冷却流体を流入させる冷却流体入口(44)と、上側冷却流体通路(42)から冷却流体を流出させる冷却流体出口(45)とが設けられている。また、放冷部(4)の仕切部材(43)と、左端壁(8)との間には、下側冷却流体通路(41)と上側冷却流体通路(42)とを通じさせる連通部(46)が形成されている。そして、冷却流体入口(44)から下側冷却流体通路(41)内に流入した冷却流体は、下側冷却流体通路(41)内を左方に流れ、連通部(46)を通って上側冷却流体通路(42)内に入るとともに、上側冷却流体通路(42)内を右方に流れ、冷却流体出口(45)から流出する。したがって、下側冷却流体通路(41)における冷却流体の流れ方向は右から左であり、上側冷却流体通路(42)における冷却流体の流れ方向は左から右で合って、上下方向に隣接する2つの冷却流体通路(41)(42)の流れ方向は逆方向である。
【0036】
放冷部(4)には、受熱部(2)の受熱面(3)から上側冷却流体通路(42)内および下側冷却流体通路(41)を流れる冷却流体に熱を伝える伝熱部(47)が設けられている。伝熱部(47)は、前後方向に間隔をおいて受熱部(2)および仕切部材(43)に一体に設けられかつ左右方向にのびる複数の上側垂直壁(48)と、前後方向に間隔をおいて仕切部材(43)および底壁(6)に一体に設けられかつ左右方向にのびる複数の下側垂直壁(49)とからなる。上下両垂直壁(48)(49)の左右両端は、左右両端壁(8)(7)からは離隔している。また、上下両垂直壁(48)(49)は前後方向の同一位置に設けられている。
【0037】
受熱部(2)と、放冷部(4)における右端壁(7)および左端壁(8)を除いた前後両壁(5)、底壁(6)、仕切部材(43)、および伝熱部(47)を構成する上下両垂直壁(48)(49)とは、受熱部(2)、前後両壁(5)、底壁(6)、仕切部材(43)を構成する水平部分、および上下両垂直壁(48)(49)を構成する垂直部分を有するアルミニウム押出形材をつくり、ついで仕切部材(43)を構成する水平部分の左端部を所定長さにわたって切除するとともに、上下両垂直壁(48)(49)を構成する垂直部分の左右両端部を所定長さにわたって切除することにより一体に形成されている。
【0038】
上述した冷却装置(40)において、IGBTなどの電子部品からなる発熱体(H)は、受熱部(2)の受熱面(3)に取り付けられる。発熱体(H)を冷却する際には、液からなる冷却流体が、冷却流体入口(44)を通って放冷部(4)の下側冷却流体通路(41)内に流入し、下側冷却流体通路(41)内を左方に流れ、連通部(46)を通って上側冷却流体通路(42)内に入るとともに、上側冷却流体通路(42)内を右方に流れ、冷却流体出口(45)から流出する。
【0039】
そして、発熱体(H)から発せられる熱は、受熱部(2)を経て上側冷却流体通路(42)内を流れる冷却流体に伝わり、仕切部材(43)を経て下側冷却流体通路(41)内を流れる冷却流体に伝わる。また、発熱体(H)から発せられる熱は、受熱部(2)および伝熱部(47)を経て第2および下側冷却流体通路(41)内を流れる冷却流体に伝わる。その結果、発熱体(H)が冷却される。
【0040】
ここで、図9(c)に示すように、冷却流体入口(44)から流入する冷却流体の温度T1および冷却流体の流量、発熱体から発せられる熱量、ならびに冷却流体出口(45)Poから流出する冷却流体の温度T2が、それぞれ特許文献1記載の冷却装置と同様である場合、下側冷却流体通路(41)から連通部(46)を通って上側冷却流体通路(42)に流入する冷却流体の温度をT5とすると、下側冷却流体通路(41)内を流れる冷却流体の温度は、図9(c)に直線L6で示すように、冷却流体入口(44)側で低くなるとともに連通部(46)側で高くなる。また、上側冷却流体通路(42)内を流れる冷却流体の温度は、図9(c)に直線L7で示すように、連通部(46)側で低くなるとともに冷却流体出口(45)側で高くなる。そして、受熱部(2)の受熱面(3)における第1および第2通路(41)(42)の各部に対応する部分の温度は、下側冷却流体通路(41)内を流れる冷却流体の温度と、上側冷却流体通路(42)内を流れる冷却流体の温度の影響を受ける。すなわち、受熱部(2)の受熱面(3)における上側冷却流体通路(42)の上流端側では、下側冷却流体通路(41)から流出するとともに上側冷却流体通路(42)に流入する冷却流体の温度T5の影響を受けるので、この部分の温度t5は、特許文献1記載の冷却装置の受熱部の受熱面における冷却流体通路の上流端側の温度t1、および実施形態1の冷却装置(1)の受熱部(2)の受熱面(3)における第2および第4通路(12)(14)の上流端側の温度t3よりも高くなる。一方、受熱部(2)の受熱面(3)における上側冷却流体通路(42)の下流端側では、冷却流体出口(45)を通って流出する冷却流体の温度T2と冷却流体入口(44)から流入する冷却流体の温度T1との影響を受けるので、この部分の温度t6は、特許文献1記載の冷却装置の受熱部の受熱面における冷却流体通路の下流端側の温度t2、および実施形態1の冷却装置(1)の受熱部(2)の受熱面(3)における第2および第4通路(12)(14)の下流端側の温度t4よりも低くなる。したがって、受熱部(2)の受熱面(3)における上側冷却流体通路(42)の上流端側の温度t5と、上側冷却流体通路(42)の下流端側の温度t6との最大温度差td2は、特許文献1記載の冷却装置の最大温度差tdおよび実施形態1の冷却装置(1)の最大温度差td1よりも小さくなって、受熱部(2)の受熱面(3)の温度を均温化することが可能になり、受熱部(2)の受熱面(3)に取り付けられる発熱体の温度も均温化されることとなって、発熱体がIGBTなどの電子部品の場合であっても、電子部品の寿命を延ばすことが可能になる。
【0041】
上記2つの実施形態においては、冷却流体として冷却液が用いられるようになっているが、これに限定されるものではない。
【0042】
また、上記2つの実施形態においては、受熱部の受熱面から最下層の冷却流体通路を流れる冷却流体に熱を伝える伝熱部(29)(47)は、受熱部(2)および仕切部材(18)(43)に一体に形成された上側垂直壁(31)(48)と、仕切部材(18)(43)および底壁(6)に一体に形成された下側垂直壁(32)(49)とからなるが、これに限定されるものではなく、受熱部(2)と仕切部材(18)(43)との間、および仕切部材(18)(43)と底壁(6)との間に配置されたフィンからなるものであってもよい。
【0043】
さらに、上記2つの実施形態においては、2つの冷却流体通路(15)(16)および(41)(42)が、上下方向に並んで積層状に設けられているが、これに限定されるものではなく、3以上の冷却流体通路が上下方向に並んで積層状に設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
この発明の冷却装置は、たとえば車両などの半導体電力変換装置に適用され、IGBTなどの電子部品からなる発熱体を冷却するのに好適に使用される。
【符号の説明】
【0045】
(1)(40):冷却装置
(2):受熱部
(3):受熱面
(4):放冷部
(11)(12)(13)(14):第1〜第4通路
(15)(16)(41)(42):冷却流体通路
(18)(43):仕切部材
(21)(44):冷却流体入口
(22)(45):冷却流体出口
(29)(47):伝熱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が受熱面となされた受熱部と、受熱部の下方に固定状に設けられた放冷部とを備えた冷却装置であって、
放冷部内に、複数の冷却流体通路が、熱伝導材料からなる仕切部材を介して上下方向に並んで積層状に形成され、放冷部に、最下層の冷却流体通路に冷却流体を流入させる冷却流体入口と、最上層の冷却流体通路から冷却流体を流出させる冷却流体出口とが設けられている冷却装置。
【請求項2】
放冷部に、受熱部の受熱面から最下層の冷却流体通路を流れる冷却流体に熱を伝える伝熱部が設けられている請求項1記載の冷却装置。
【請求項3】
上下方向に隣接する2つの冷却流体通路における冷却流体の流れ方向が同方向である請求項1または2記載の冷却装置。
【請求項4】
上下方向に隣接する2つの冷却流体通路における冷却流体の流れ方向が逆方向である請求項1または2記載の冷却装置。
【請求項5】
放冷部内に、2つの冷却流体通路が上下方向に並んで積層状に形成されている請求項1〜4のうちのいずれかに記載の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−60040(P2012−60040A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203909(P2010−203909)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】