説明

冷暖房システム

【課題】エアコンに代わる温度調整および湿度調整が可能な冷暖房システムを提供する。
【解決手段】冷温熱供給装置22から供給される調整空気28(温度調節及び湿度調整された冷熱又は温熱)、熱放出管22を介して第一プレナム部24内に一度収容される。収容された調整空気28は、第一吹出し口24aから第二プレナム部26内へ送風され、その調整空気28の熱は、蓄熱材18に蓄熱される。その蓄熱を夜間に行い、蓄熱材18に蓄熱された熱によって日中(昼間)の室内の冷房又は暖房を行うことができる。また、床下空間16aに珪藻岩32と透湿防水シート34を備える換気ユニットを設ける。珪藻岩32と透湿防水シート34は、室内20の湿度調整を行う。湿気38を吸収し水分を含んだ珪藻岩32は、第二プレナム部26の第二吹出し口26aから吹出される熱によって夜間に乾燥される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅などの建築物の冷暖房システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在の住宅においては、その建築物内の空気の温度、湿度などを調整する手段としてエアコンが利用されている。エアコンは、室内の温度調整、湿度調整、気流発生の3つの機能を有し、空気環境を変化させ過ごし易い室内環境を提供するものである。
しかし、住宅で消費されるエネルギーの内で冷暖房によるエネルギー消費が最も多いことから、従来は温度設定の調整によってエアコンによる電力消費を抑え、冷暖房コストの軽減を図っていた。
【0003】
一方、韓国には、床下に煉瓦で仕切った煙道を設け、焚口から煙をおくり室内を暖房するオンドルという住宅の暖房システムが存在する。いわゆる床暖房であり、快適な住まいを提供できる暖房システムとして長く利用されている。
我国でも、上記床暖房のシステムを応用した冷暖房システムが提供されている(例えば、特許文献1、2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−115342号公報
【特許文献2】特開平7−98131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の住宅の床構造は、床下に敷き詰めた砂利石の中に埋め込んだ貯水タンクに太陽熱温水器や浴槽の温水を給水し又は水道水を給水する冷暖房システムである。この住宅の床構造は、エアコン等の冷暖房装置を利用しない、経済的で省エネルギー効果の高い冷暖房を実現できるものである。
【0006】
特許文献2の蓄熱式空気調和ユニットは、床下の空間部に小石(蓄熱材)を収納した床下蓄熱部を構成し、その床下蓄熱部に電力により温熱または冷熱を蓄える熱量付与手段と、この蓄えられた熱量を室内に取り出す熱量供給手段とを設け、前記電力に安価な夜間電力を利用して室内の冷暖房を実現するものである。
【0007】
特許文献1の床構造および特許文献2の蓄熱式空気調和ユニットは、いずれも冷熱または温熱を蓄熱する蓄熱材として石を利用し、石に蓄熱される冷熱または温熱による輻射熱によって室内を冷暖房するものである。
しかし、空気環境を変化させ過ごし易い室内環境を提供するエアコンに代わる冷暖房システムを提供する場合、特許文献1および2の冷暖房システムでは、室内の湿度調整が行われないことから、冷暖房時に結露が生じるおそれがあった。また、エアコンによる冷暖房によっても気流が流れない場所では結露が発生する場合があった。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するものであって、エアコンに代わる温度調整および湿度調整が可能な冷暖房システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の冷暖房システムは、建築物の室外に設置する温度調節及び湿度調整された冷熱又温熱を送風する冷温熱供給装置と、前記建築物の床下空間に形成される第一プレナム部と、前記第一プレナム部の第一吹出し口を介して連通する建築物の床下空間に形成される第二プレナム部と、前記第二プレナム部内を貫通し第一プレナム部内に前記冷温熱供給装置から送風される冷熱又は温熱を放出する熱放出管と、前記第二プレナム部の空間に収納する蓄熱材と、前記建築物の床下空間に設ける調湿手段と、前記床下空間に前記第二プレナム部内の熱を吹出す第二プレナム部の第二吹出し口とを備えるようにしたものである。
【0010】
また、前記調湿手段は、建築物の床面に設ける透湿防水シートを備えた換気ユニットと、床下空間に設ける珪藻岩とを備えるようにしたものである。
【0011】
また、前記熱放出管は、第二プレナム部内を貫通する部分に蓄熱材に向けて冷熱又は温熱を放出するための熱放出孔を備えるようにしたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の冷暖房システムは、床下に配置する石を蓄熱材として用い、その蓄熱材の熱による輻射熱で室内全体を冷房し又は暖房するものである。これにより、安価な夜間電力を利用して日中の冷暖房を行うことができ、電気料金を軽減できる。
また、本発明の冷暖房システムによると、冷房又は暖房と同時に室内の湿度を調整することができることから、電力消費が大きいエアコンに代わる冷暖房システムを提供することができる。これにより、エアコンと同様、建築物の室内の空気環境を変化させ過ごし易い室内環境を提供できるとともに、夏季の電力需要のピーク時間帯の電力消費を軽減でき、室内における熱中症事故を防止することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の冷暖房システムの構成部を表わす図である。
【図2】図1の冷暖房システムの熱放出管の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、蓄熱材を用いて室内の温度および湿度を調整することを実現するものである。
【実施例】
【0015】
本発明の冷暖房システムを図に基づいて説明する。図1は、本発明の冷暖房システムの構成部を表わす図であり、図2のX−X面からみた構成図である。図2は、図1の冷暖房システムの熱放出管の平面図である。
本発明の冷暖房システム10は、建築物12の床面14の床下空間16に蓄熱材18(たとえば、安山岩の砕石等)を収納し、その蓄熱材18の熱による輻射熱によって室内20を冷房又は暖房するとともに、蓄熱材18の熱を用いて室内20の湿度を調整するものである。
【0016】
建築物12の床下空間16には、冷温熱供給装置22から送風(供給)される冷熱又は温熱を収容し吹出すための2つのプレナム部24,26が形成されている。第一プレナム部24は、その部内に収容される冷熱又は温熱を連通する第二プレナム部26に吹出す第一吹出し口24aを有する。第一プレナム部24は、第一吹出し口24aを介して第二プレナム部26に連通している。
第二プレナム部26は、蓄熱材18を収容する空間である。また、蓄熱材18の熱を床下空間16に吹出す第二吹出し口26aを有する。
【0017】
図1および図2では、第一吹出し口24aおよび第二吹出し口26aとして、空気調和又は換気用の吹出し口に用いられるグリル(格子状の金属板)を使用しているが、これに限定するものではない。
床下空間16は、第一吹出し口24aのグリルと第二吹出し口26aのグリルによって、3つの空間に仕切られている。第一プレナム部24は、第一吹出し口24aであるグリルによって仕切られた空間であり、建築物12の内壁面12aとの間に形成される空間である。第二プレナム部26は、第一吹出し口24aのグリルと第二吹出し口26aのグリルで仕切られ形成される空間である。
図1および図2では、平板状のグリル2枚24a,26aで床下空間16を三分し、第一プレナム部24と第二プレナム部26を形成している。但し、プレナム部24,26は、上記仕切り以外の仕切りによって形成してもよい。
なお、建築物の壁面には、断熱材が設けられている。
【0018】
建築物12の室外40には、冷熱又は温熱を送風する冷温熱供給装置22(空調機)が設けられている。冷温熱供給装置22から送風される冷熱又は温熱は、温度・湿度・清浄度が調整された調整空気28である。なお、冷温熱供給装置22の室外機22aは屋外に備えられている。また、冷温熱供給装置22は、室内20に設けられるリモコン22bによって操作できるようになっている。
冷温熱供給装置22から送風される冷熱又は温熱(調整空気28)は、熱放出管30を通じて第一プレナム部24内に一度収容される。図1では、熱放出管30は、第二プレナム部26を貫通し、第一プレナム部24内に調整空気28(冷熱又は温熱)を送風できるように敷設されている。なお、熱放出管30は、第二プレナム部26の空間を通るように設けても良い。
【0019】
冷温熱供給装置22から供給される調整空気28(冷熱又は温熱)は、熱放出管22を介して第一プレナム部24内に一度収容されると、第一吹出し口24aから第二プレナム部26内へ送風され、その調整空気28の熱は、蓄熱材18に蓄熱される。その蓄熱を夜間に行い、蓄熱材18に蓄熱された熱によって日中(昼間)の室内の冷房又は暖房を行うことができる。
【0020】
図1において、第二プレナム部26内を貫通する熱放出管30は、径大の管30aと径小の管30bから構成されるものを使用している(図2)。また、熱放出管30の側面に熱放出孔30cを設けても良い。これにより、調整空気28(冷熱又は温熱)の送風時に熱放出管30にかかる負荷を緩和することができ、また蓄熱材18にムラ無く蓄熱することができる。
【0021】
第二プレナム部26内の熱は、第二吹出し口26aから床下空間16a(第一プレナム部24および第二プレナム部26が形成されていない空間)に放出される。これにより、第一プレナム部24および第二プレナム部26が形成されているところの床下空間16のみならず、室内20全体の床下空間16が調整空気28(冷熱又は温熱)の熱によって冷やされ又温められることから、床面14全体で室内20を冷房し又は暖房することができる。
【0022】
床下空間16aには、珪藻岩32(珪質頁岩又は稚内層珪質頁岩)が収容されている。珪藻岩32は、水分吸収保持能力に優れたものであり、珪藻土の数倍の調湿性を有している。すなわち、床下空間16aの湿度が60%以上になるとその湿気を吸収し、乾燥すると放湿して、所定の湿度(たとえば、40%〜60%の湿度)に保つように自律的に調湿する。
日中(昼間)に湿気を吸収し水分を含んだ珪藻岩32は、夜間に第二吹出し口26aから床下空間16に放出される第二プレナム部26内の熱(温度調節及び湿度調整された調整空気28(冷熱又は温熱))によって、乾燥される。
珪藻岩32は、有害物質を吸収するため、有害物質が室内に侵入することを防止する働きも有する。また、洗浄し天日乾燥することにより、再生利用できる。
【0023】
床下空間16を形成する床面14に当該室内20の湿気を吸収する透湿防水シート34を備えた換気ユニット36(がらり板)を設ける。透湿防水シート34は、水は通さないが湿気は通す性質を有するシートであり、日本工業規格JISA6111で規定されているものである。床面14に透湿防水シート34を備えることにより、室内20の湿気38を床下空間16aに排出でき、室内20の結露を防止することができる。床下空間16aに排出された湿気38は珪藻岩32によって吸収される。なお、珪藻岩32は上述したように温度調節及び湿度調整された調整空気28によって乾燥される。
上記珪藻岩32と透湿防水シート34を備えた換気ユニット36(がらり板)は、本発明において調湿手段として働く。この調湿手段により、室内20の湿度調整が可能となり、また結露を防止することができる。
【0024】
本発明が密閉空間である床下空間16で実施される場合、冷暖房時室内20においてほこりが立たないという効果を有する。
【0025】
なお、床下空間16を形成する基礎部42には、建築基準法(令条22条)に基づく換気孔42aが形成されている。また、換気孔42aから排出される床下空間16内の調整空気28は、室外40の冷温熱供給装置22(空調機)によって第一プレナム部24および床下空間16全域に送風され、循環される。
【符号の説明】
【0026】
10 冷暖房システム
12 建築物
14 床面
16 床下空間
18 蓄熱材
20 室内
22 冷温熱供給装置
24 第一プレナム部
24a 第一吹出し口
26 第二プレナム部
26a 第二吹出し口
28 冷熱又は温熱
30 熱放出管
30c 熱放出孔
32 珪藻岩
34 透湿防水シート
36 換気ユニット
40 室外

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の室外に設置する温度調節及び湿度調整された冷熱又温熱を送風する冷温熱供給装置と、前記建築物の床下空間に形成される第一プレナム部と、前記第一プレナム部の第一吹出し口を介して連通する建築物の床下空間に形成される第二プレナム部と、前記第二プレナム部内を貫通し第一プレナム部内に前記冷温熱供給装置から送風される冷熱又は温熱を放出する熱放出管と、前記第二プレナム部の空間に収納する蓄熱材と、前記建築物の床下空間に設ける調湿手段と、前記床下空間に前記第二プレナム部内の熱を吹出す第二プレナム部の第二吹出し口とを備えることを特徴とする冷暖房システム。
【請求項2】
前記調湿手段は、建築物の床面に設ける透湿防水シートを備えた換気ユニットと、床下空間に設ける珪藻岩とを備えることを特徴とする請求項1記載の冷暖房システム。
【請求項3】
前記熱放出管は、第二プレナム部内を貫通する部分に蓄熱材に向けて冷熱又は温熱を放出するための熱放出孔を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の冷暖房システム。






【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−19550(P2013−19550A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150671(P2011−150671)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【特許番号】特許第4869447号(P4869447)
【特許公報発行日】平成24年2月8日(2012.2.8)
【出願人】(511165522)
【Fターム(参考)】