説明

冷暖房設備の二重床構造および床吹出し空調・冷暖房装置

【課題】フロアパネルに荷重や衝撃がかかる体育館などに有効に適用できる冷暖房設備の二重床構造及び床吹出し空調・冷暖房設備の二重床構造を提供する。
【解決手段】基礎床上に複数個の支持脚で支持されたフロアパネルの裏側に冷温水循環パイプを配列し、基礎床上に支持脚を介して横置された大引部材、大引部材上に設置され、フロアパネルを支持する根太部材、根太部材の側方に配置され、大引部材とフロアパネルの間に延在して大引部材に支持された複数個の山形部をもつ山形支持部材、山形支持部材の頂部に支持され、冷温水循環パイプを収容する樋状部材、樋状部材の両側部及び上部開放部を覆う側部伝熱部材及び上側伝熱部材を有し、冷温水循環パイプは樋状1材の上側を覆う上側伝熱部材に対して隙間を有し、上側伝熱部材の上面はフロアパネルの裏面に接触する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎床の上に離隔してフロアパネルが設けられ、このフロアパネルの裏側に冷温水循環パイプが配置され、該パイプを流れる冷・熱媒によって前記フロアパネルを通して建屋内を冷暖房する冷暖房設備の二重床構造および床吹出し式空調・冷暖房装置に関する。
【0002】
本発明は特に、屋内体育館や屋内競技場などのスポーツフロアに適用される床冷暖房式の二重床構造および床吹出し式空調・冷暖房装置に関する。
【背景技術】
【0003】
この種の床吹出し空調・冷暖房装置としては既に、図4に示すように、冷温水発生機17からの冷水あるいは温水を、床パネル6の下側に配設した冷温水パイプ1に送水、循環させて床自体を冷却あるいは加熱し、その床輻射により室12内を冷暖房する床輻射冷暖房システムと、空気調和機29からの湿度あるいは温度等の調節空気を床パネル6の下側の空間部32に供給し、該空間部32に連通する床パネル側部近傍に形成した吹出口11から室12内へ送風し、室上部の吸込口13から空気調和機29へ戻して循環させることにより室内を空調雰囲気に調節する、いわゆる床吹出し空調システムとの組み合わせによる空調・冷暖房装置が知られている(例えば特許第260219号)。この場合、冷温水パイプ1はモルタル等の熱伝導率の高い被覆材38に埋め込まれるようにして床パネル6の下側に固定される。
【0004】
上述の例は一般家庭の居間あるいはオフイスビルの室内やホールに適用されているものであるが、体育館などのスポーツフロアは、床パネルが基礎床に対して弾性的に僅かに変位し得るように離隔して設置されおり、床面に大きな繰り返し衝撃荷重がかかるスポーツフロアについては床面直下に冷温水パイプを設置したものは存在していない。
【0005】
床面自体を放熱構造にしたものとしては、例えば特許文献1に示すような床板兼温水循環放熱器が知られている。これは、2枚のプラスチック材料で上下に水路壁を形成し、かつ下側の水路壁に複数の凸条の仕切壁を設け、この仕切壁と上側水路壁を熱圧着手段などで連結して複数の水路とし、上側水路壁の上面にカーペットなどを敷き詰めた構造としている。
【0006】
また例えば、特許文献2に示すように、合成樹脂発泡体の断熱板の上面中央に放熱管の嵌込み用の凹溝を形成するとともに、この凹溝位置を頂部とするように前記断熱板を若干山形にしてその両端部を根太部材で支持し、この状態で床板を前記断熱板上に設置したとき、前記凹溝内の放熱管を介して前記断熱板を全体として平坦状態になるように押圧する構成の床暖房装置の放熱パネルも知られている。この場合、前記放熱管は前記床板に直かに圧接され、平坦な床板の重みで断熱板が平坦状態になる。
【特許文献1】実公昭48−1575号公報
【特許文献2】特開昭54−21047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
体育館のスポーツフロアのように広い面積を持ちかつ床面に衝撃荷重が加わる床構造については、パネルと基礎床との間に大きな空間があり、この空間部に冷暖房装置を設置しても、その冷熱媒が有効に室内に伝わり難い。また冷熱媒導入管を床パネルの直下に接するように支持すると、床パネルの弾性変位で冷熱媒導入管が毀損するおそれがある。
【0008】
上述した特許文献1に記載のものは、温水路をもつ放熱器自体が床板となっており、しかも根太部材の上部に直接放熱器を支持する構造であるため、熱伝導性は良いものの、これを体育館などの室内スポーツフロアに適用すると、運動に伴う室内の荷重や衝撃が直接放熱器にかかり、放熱器を毀損させてしまう。
【0009】
特許文献2に記載された放熱パネルは、中央に凹溝を形成した厚肉断熱板が、凹溝が口を開くように該凹溝を頂点に山形に形成されているため、凹溝への放熱管の挿入は容易となるが、床板によって断熱板の山形頂部を、放熱管を介して下方に押し込んで平坦面に変形させるので、床板と放熱管が強く接触する形態となり、特許文献1と同様に床板に衝撃力や重荷重が加わった場合、放熱管を毀損させるおそれがあり、競技場や体育館などのスポーツフロアには適さない。
【0010】
本発明は、冷温水パイプをフロアパネルの下面に非接触状態に支持しつつも良好な熱伝導性を確保し、しかもフロアパネルを上部からの荷重、衝撃に対して弾性変位可能としても前記冷温水パイプを毀損させることがなく、したがって体育館やスポーツジムなどに有効に適用できる冷暖房設備の二重床構造および床吹出し空調・冷暖房設備の二重床構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、基礎床上に離隔して複数個の支持脚で支持されたフロアパネルの裏側に冷温水循環パイプを配列し、前記フロアパネルを介してその輻射熱で冷暖房対象空間を冷暖房する設備の二重床構造において、前記基礎床上に支持脚を介して横置された大引部材と、前記大引部材上に該大引部材に対して直交する方向に設置されかつ前記フロアパネルを支持する根太部材と、前記根太部材の側方に配置され、かつ前記大引部材と前記フロアパネルの間に延在して該大引部材に支持され、かつ複数個の山形部を有するように帯板を山形に折曲して成る帯状山形支持部材と、前記帯状山形支持部材の頂部に支持され、前記冷温水循環パイプを収容するように上部が開放された樋状部材と、前記樋状部材の両側部および上部開放部を覆う側部伝熱部材および上部伝熱部材とを有し、前記冷温水循環パイプは前記樋状部材の上部開放部を覆う前記上部伝熱部材に対して隙間を有して該樋状部材に収容され、前記上部伝熱部材の上面は前記フロアパネルの裏面に接触することを特徴とする冷暖房設備の二重床構造提供される。
【0012】
また、本発明によれば、基礎床上に離隔して複数個の支持脚で支持されたフロアパネルの裏側に配置された冷温水循環パイプと、前記フロアパネルの一部に形成された空気吹出口と、冷暖房対象空間の上部に形成された空気吸込口と、前記基礎床と前記フロアパネルとの間の前記冷温水循環パイプ周囲に冷気あるいは暖気を送り込み、前記フロアパネルの前記空気吹出口から前記冷暖房対象空間および前記空気吸込口を経て前記基礎床と前記フロアパネルとの間へと循環させる冷暖気供給装置と、前記冷温水循環パイプに冷水あるいは温水を送って循環させる冷温水供給装置と、前記基礎床上に支持脚を介して横置された大引部材と、前記大引部材上に該大引部材に対して直交する方向に設置されかつ前記フロアパネルを支持する根太部材と、前記根太部材の側方に配置され、かつ前記大引部材と前記フロアパネルの間に延在して該大引部材に支持され、かつ複数個の山形部を有するように帯板を山形に折曲して成る帯状山形支持部材と、前記帯状山形支持部材の頂部に支持され、前記冷温水循環パイプを収容するように上部が開放された樋状部材と、前記樋状部材の両側部および上部開放部を覆う側部伝熱部材および上部伝熱部材とを有し、前記冷温水循環パイプは前記樋状部材の上部開放部を覆う前記上部伝熱部材に対して隙間を有して該樋状部材に収容され、前記上部伝熱部材の上面が前記フロアパネルの裏面に接触するようにした床吹出し空調・冷暖房装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
このように本発明は、冷温水パイプをフロアパネルの下面に非接触状態に支持しつつも良好な熱伝導性を確保し、前記フロアパネルに作用する断続的な荷重、衝撃に対しても前記冷温水パイプを毀損させず、前記冷温水パイプによる輻射熱で前記フロアパネル上の室内を冷暖房状態に保持し得、体育館やスポーツジムなどに適用して極めて有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明を好適な実施形態について図面を参照して説明する。図1は本発明を屋内体育館やスポーツジム等におけるスポーツフロアに適用した実施形態の一部分裁断した斜視図、図2は図1に示す実施例の拡大縦断面図である。コンクリート等の基礎床3に複数本のスポーツフロア用の支持脚25が立設され、この支持脚25上に、かつ基礎床3に対して上方へ或る間隔Hを有して、長尺横材の大引部材26が支持されている。大引部材26には、該大引部材26の伸長方向に対して直交する方向に根太部材27が載置、固定され、さらにこの根太部材27上にスポーツフロア用のフロアパネル28が載置されている。使用中のフロアパネル28に作用する下向きの荷重や衝撃力は根太部材27や前記支持脚25による所定の弾性吸収作用により吸収され、スポーツフロアとしての機能を果たすようになっている。
【0015】
図3は図1,図2に示す実施例の山形支持部材30とこれに支持される樋状部材2および伝熱部材との関係を示した拡大横断面図(冷温水パイプの伸長方向に対して直角方向の断面図)である。図1〜図3に示すように、大引部材26とフロアパネル28との間に、かつ大引部材26に支持されるようにして、板材を山部と谷部を有するように曲折形成した山形支持部材30が配置されている。山形支持部材30は並行に配列された複数の山部30aを有し、これらの各山部30aを該山部の伸長方向に対して直角に横切るように山の頂部が凹形に切除され、この凹形部31(図3)に各山部30aを横切るように長尺の樋状部材2が収容されている。複数個の樋状部材2は根太部材27と並行に配列されている。
【0016】
図2および図3に良く示されるように、樋状部材2の両外側部に接するように、該樋状部材2と山形支持部材30の凹形部31との間にL形の伝熱部材33の一辺部33aが挿入され、また、このL形の他辺部33bは山形支持部材30の頂部平坦面に接して側方へ水平に張り出されている。冷温水パイプ1は前述のように樋状部材2内に収容され、かつ図1の実施例と同様に樋状部材2の端部で蛇腹状に折り返されて冷熱媒の供給口および排出口(図示省略)に接続されている。さらに、樋状部材2を蓋閉するように帯板状の上側伝熱部材35がL形伝熱部材33の前記他辺部(側方張出部)33bの上面にボルト等によって固着されている。上側伝熱部材35は山形支持部材30の山部上面に沿って、該支持部材30の凹形部31の位置を越えて側方へ或る長さで延在している。なお、図6では明瞭化のため伝熱部材は図示省略してある。根太部材27に支持されたフロアパネル28の下面は前記上側伝熱部材35の上面に接するようになっている。
【0017】
図2、図3に明示するように、冷温水パイプ1は、フロアパネル6の裏面に接触する上側伝熱部材35に対して、或る隙間を有して樋状部材2に収容されている。これによってフロアパネル6を床面とする競技室で各種の運動、競技等を行った場合、フロアパネル6に作用する衝撃や荷重でフロアパネル6が弾性変位しても、この変位は冷温水パイプ1と上側伝熱部材35との間の隙間で吸収され、冷温水パイプ1には直接衝撃や荷重が加わらず、パイプ1を変形させたり、毀損したりすることはない。
【0018】
図2,図3の実施例ではL形の伝熱部材33の一辺部33aが樋状部材2の外側面に接当するようにしたが、樋状部材2の内側面に接するように該樋状部材2内に挿入するように配置することもできる。またL形伝熱部材33の前記他辺部33bおよび上側伝熱部材35は根太部材27まで達するように山形支持部材30の頂部平坦面の全面にわたって張り渡すように巾広の板状部材としてもよい。冷温水パイプ1の冷・熱媒は、これらの伝熱部材33,35からフロアパネル28に伝わり、これによるフロアパネル28の輻射熱によってフロアパネル28上の空間の冷暖房がなされ、また、基礎床3とフロアパネル28間の空間部32に送り込まれた湿度、温度の調節空気はフロアパネル28の吹出口11から吹き出されてフロア上の空間内に満たされ、フロア上の競技室内は常に新鮮で快適な空調雰囲気に保たれる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】屋内体育館やスポーツジム等におけるスポーツフロアに適用した本発明の実施形態の一部分裁断した斜視図である。
【図2】図1に示す実施形態の拡大縦断面図である。
【図3】図1に示す実施形態の山形支持部材とこれに支持される樋状部材および伝熱部材との関係を示した拡大横断面図である。
【図4】従来の冷暖房装置の概略的な縦断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 冷温水パイプ
2 樋状部材
3 基礎床
11 吹出口
25 支持脚
26 大引部材
27 根太部材
28 フロアパネル
30 山形支持部材
30a 山部
33 伝熱部材
35 上側伝熱部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎床上に離隔して複数個の支持脚で支持されたフロアパネルの裏側に冷温水循環パイプを配列し、前記フロアパネルを介してその輻射熱で冷暖房対象空間を冷暖房する設備の二重床構造において、前記基礎床上に支持脚を介して横置された大引部材と、前記大引部材上に該大引部材に対して直交する方向に設置されかつ前記フロアパネルを支持する根太部材と、前記根太部材の側方に配置され、かつ前記大引部材と前記フロアパネルの間に延在して該大引部材に支持され、かつ複数個の山形部を有するように帯板を山形に折曲して成る帯状山形支持部材と、前記帯状山形支持部材の頂部に支持され、前記冷温水循環パイプを収容するように上部が開放された樋状部材と、前記樋状部材の両側部および上部開放部を覆う側部伝熱部材および上部伝熱部材とを有し、前記冷温水循環パイプは前記樋状部材の上部開放部を覆う前記上部伝熱部材に対して隙間を有して該樋状部材に収容され、前記上部伝熱部材の上面は前記フロアパネルの裏面に接触することを特徴とする冷暖房設備の二重床構造。
【請求項2】
基礎床上に離隔して複数個の支持脚で支持されたフロアパネルの裏側に配置された冷温水循環パイプと、前記フロアパネルの一部に形成された空気吹出口と、冷暖房対象空間の上部に形成された空気吸込口と、前記基礎床と前記フロアパネルとの間の前記冷温水循環パイプ周囲に冷気あるいは暖気を送り込み、前記フロアパネルの前記空気吹出口から前記冷暖房対象空間および前記空気吸込口を経て前記基礎床と前記フロアパネルとの間へと循環させる冷暖気供給装置と、前記冷温水循環パイプに冷水あるいは温水を送って循環させる冷温水供給装置と、前記基礎床上に支持脚を介して横置された大引部材と、前記大引部材上に該大引部材に対して直交する方向に設置されかつ前記フロアパネルを支持する根太部材と、前記根太部材の側方に配置され、かつ前記大引部材と前記フロアパネルの間に延在して該大引部材に支持され、かつ複数個の山形部を有するように帯板を山形に折曲して成る帯状山形支持部材と、前記帯状山形支持部材の頂部に支持され、前記冷温水循環パイプを収容するように上部が開放された樋状部材と、前記樋状部材の両側部および上部開放部を覆う側部伝熱部材および上部伝熱部材とを有し、前記冷温水循環パイプは前記樋状部材の上部開放部を覆う前記上部伝熱部材に対して隙間を有して該樋状部材に収容され、前記上部伝熱部材の上面は前記フロアパネルの裏面に接触することを特徴とする床吹出し空調・冷暖房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−194080(P2006−194080A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−75741(P2006−75741)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【分割の表示】特願2001−359999(P2001−359999)の分割
【原出願日】平成13年11月26日(2001.11.26)
【出願人】(592147790)株式会社インターセントラル (11)
【Fターム(参考)】