説明

処理槽および薄物シートの処理方法

【課題】薄物シートの上端にクリップを取り付けるだけの簡単な作業によって、該薄物シートの表面を均一に処理することを課題とする。
【解決手段】処理液2が充填される処理槽本体3内に左右一対のノズル管4を複数段配設し、該ノズル管4には内側に向けて斜め下方に処理液2を噴射するノズル孔が複数個設けられ、被処理材である薄物シート5を該左右一対のノズル管4の間に通過させる処理槽1を提供する。この場合、該処理槽1に処理液2を充填し、該左右一対のノズル管4のノズル孔より左右等しい圧力および流速で処理液2を噴射し、クリップ6で支持した被処理材である薄物シート5を該処理槽1の一端より処理液2内に挿入し、該薄物シート5を該左右一対のノズル管4の中間で他端側に移動させ、その間に該処理液2によって該薄物シート5を処理し、他端において該薄物シート5を引き上げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薄物シートを処理するための処理槽および該処理槽を使用した薄物シートの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気メッキ装置におけるクリップ式のワークハンガーとして、メッキ液中に入れられてメッキ処理される略平板状のワークを懸垂状態に支持し、電流を陰極バーに横移動自在に吊り下げ支持されるとともに、該陰極バーに導電的に接触される支持部材と、この支持部材の下部に導電的に接続されるように面接触状態に固着され、前記ワークの横長辺の方向に沿って延ばされた横長基板と、この横長基板にそれぞれ取り付けられ、前記ワークの上部を挟持し、該ワークを懸垂状態に吊り下げ支持する複数の挟持クリップとから構成されるものが提供されている(特許文献1参照)。
また従来、薄形基板のめっき装置として、被めっき部材である薄形基板の大きさに合わせて中央部に開口部を形成し、開口部に薄形基板を着脱自在に装着し得る構造とした金属製の枠を有するものが提供されている(特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−328193号公報(第4−6頁、第2図)
【特許文献2】特開平08−104998号公報(第2−3頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記従来のワークハンガーでは、ワークの上部に挟持クリップと取り付けるだけの簡単な作業によってワークを取り付けることができるものの、ワークの比重がメッキ液の比重よりも小さい場合、該ワークがメッキ液中で浮力を受けて浮き上がり、ワークの表面を均一にメッキ処理することができないという問題があった。
また上記従来の薄形基板のめっき装置では、被めっき部材である薄形基板が金属枠に支持されているので、薄形基板がめっき処理液中で浮き上がることがなく、薄形基板の表面を均一にめっき処理することができるものの、薄形基板に金属枠を装着する作業には多大な労力や手間を要し、また、装置自体も高価になるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するための手段として、処理液2が充填される処理槽本体3内に左右一対のノズル管4を複数段配設し、該ノズル管4には内側に向けて斜め下方に処理液2を噴射するノズル孔11が複数個設けられ、被処理材である薄物シート5を該左右一対のノズル管4の間に通過させる処理槽1を提供するものである。
該処理槽1の底部にはノズル管4に連絡する処理液循環経路7が開口しており、該処理槽1の底部から該循環経路7に処理液2を吸引してノズル管4に循環することが望ましい。
また、左右一対のノズル管4のノズル孔11はそれぞれ相対する位置に設けられていることが望ましい。
更に、該ノズル管4のノズル孔11は管状に延長されていることが望ましい。
また本発明では、上記の処理槽1を使用し、該処理槽1に処理液2を充填し、該左右一対のノズル管4のノズル孔11より左右等しい圧力および流速で処理液2を噴射し、クリップ6で支持した被処理材である薄物シート5を該処理槽1の一端より処理液2内に挿入し、該薄物シート5を該左右一対のノズル管4の中間で他端側に移動させ、その間に該処理液2によって該薄物シート5を処理し、他端において該薄物シート5を引き上げる薄物シート5の処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
〔作用〕
本発明の処理槽1および薄物シート5の処理方法では、薄物シート5の両面には左右一対のノズル管4のノズル孔11から噴出する処理液2が等圧かつ等流速で及ぼされるので、薄物シート5の左右における処理液2の液圧が拮抗し、薄物シート5は処理液2中で揺動することを抑制される。該処理液2は左右一対のノズル管4のノズル孔11から内側に向けて斜め下向きに噴出されるので、処理液2の液圧も該薄物シート5の両面に斜め下向きに及ぼされ、該薄物シート5の下端は浮力で浮き上がることを阻止される。
〔効果〕
従って本発明では、薄物シート5の上端にクリップ6を取り付けるだけの簡単な作業によって、該薄物シート5の表面を均一に処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明を図1〜図4に示す一実施例によって説明する。
図1および図2に示すように、例えばスルーホールやビアホールのめっき処理等に使用される処理槽1は、処理液であるめっき液2が充填されている処理槽本体3と、該処理槽本体3内に三段に配設されている左右一対のノズル管4と、例えば薄形プリント基板等の被処理材である薄物シート5を挟持して該左右一対のノズル管4の間に通過させるクリップ6とを有している。
なお本実施例では、該左右一対のノズル管4は薄物シート5の移動方向に対して斜めに傾いて設けられている(図2参照)。
【0008】
該処理槽1の処理槽本体3の底部には処理液循環経路7の一端にある処理液吸引口8が開口しており、該処理液循環経路7の他端は該処理槽本体3の上方に配置される左右一対のヘッダー9に連絡しており、該左右一対のヘッダー9はそれぞれ左右一対の三段のノズル管4に連絡している。また、該処理液循環経路7には、該処理液吸引口8からめっき液2を吸引してヘッダー9を介してノズル管4に循環させるための循環ポンプ10が介在されている。
【0009】
図3および図4に示すように、該ノズル管4には内側に向けて斜め下方にめっき液2を噴射するノズル孔11が複数個設けられており、左右一対のノズル管4のノズル孔11はそれぞれ相対する位置に設けられている。
本実施例では、ノズル管4の管本体12からは帯板13が差し出されており、該帯板13には管本体12内に連通するノズル孔11が並設されている。そして、めっき液2が各ノズル孔11から平行に噴出するように構成されている(図3参照)。
また、帯板13の内部においてノズル孔11は管状に延長されており(図4参照)、該ノズル孔11から噴出するめっき液2の液流が直線的に配向されるように構成されている。
【0010】
上記の処理槽1を使用して薄物シート5にめっき処理を施す場合には、まず、該処理槽1の処理槽本体3内にめっき液2を充填し、該左右一対のノズル管4のノズル孔11より左右等しい圧力および流速でめっき液2を噴射させる。
つぎに、クリップ6で薄物シート5を挟持して、該クリップ6で支持した薄物シート5を該処理槽本体3の一端よりめっき液2内に挿入する。
そして、該処理槽本体3の内部において該薄物シート5を該左右一対のノズル管4の中間で他端側に移動させ、その間に該めっき液2によって該薄物シート5をめっき処理し、最後に、他端において処理槽本体3内のめっき液2から該薄物シート5を引き上げる(図2参照)。
【0011】
上記のように、本実施例の処理槽1および薄物シート5の処理方法では、薄物シート5の両面には左右一対のノズル管4のノズル孔11から噴出するめっき液2が等圧かつ等流速で及ぼされるので、薄物シート5の左右におけるめっき液2の液圧が拮抗し、薄物シート5はめっき液2中で揺動することを抑制される。該めっき液2は左右一対のノズル管4のノズル孔11から内側に向けて斜め下向きに噴出されるので、めっき液2の液圧も該薄物シート5の両面に斜め下向きに及ぼされ、該薄物シート5の下端は浮力で浮き上がることを阻止される。
従って本実施例では、薄物シート5の上端にクリップ6を取り付けるだけの簡単な作業によって、該薄物シート5の表面を均一にめっき処理することができる。
【0012】
該処理槽1の底部にはノズル管4に連絡する処理液循環経路7が開口しており、該処理槽1の底部から該循環経路7にめっき液2を吸引してノズル管4に循環するので、めっき液2を別途補給する必要がなく、めっき液2の補給に要する手間や労力を削減することができる。
また、左右一対のノズル管4のノズル孔11がそれぞれ相対する位置に設けられているので、薄物シート5の両面に左右一対のノズル管4のノズル孔11から噴出するめっき液2がより等圧かつ等流速で及ぼされる。そのため、薄物シート5の左右におけるめっき液2の液圧がより拮抗し、薄物シート5はめっき液2中で揺動することを更に抑制される。
更に、該ノズル管4のノズル孔11が管状に延長されているので、該ノズル孔11から噴出するめっき液2の液流が直線的に配向される。そのため、薄物シート5の両面に左右一対のノズル管4のノズル孔11から噴出するめっき液2がより更に等圧かつ等流速で及ぼされ、薄物シート5の左右におけるめっき液2の液圧がより更に拮抗し、薄物シート5はめっき液2中で揺動することをより更に抑制される。
【0013】
また更に、ノズル管4が薄物シート5の移動方向に対して平行に設けられた場合には、薄物シート5の一部に該ノズル管4によって常にめっき処理が妨害される部分が生じるのに対して、本実施例では、ノズル管4が薄物シート5の移動方向に対して斜めに傾いて設けられているので、薄物シート5に該ノズル管4によって常にめっき処理が妨害されることがなく、薄物シート5の表面を均一にめっき処理することができる。
【0014】
以上、本発明の実施の形態を実施例により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明は、薄物シートの上端にクリップを取り付けるだけの簡単な作業によって、該薄物シートの表面を均一に処理することができる処理槽および薄物シートの処理方法として、産業上利用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】処理槽の説明正面図である。
【図2】処理槽の説明側面図である。
【図3】ノズル管の斜視図である。
【図4】ノズル管の断面図である。
【符号の説明】
【0017】
1 処理槽
2 処理液(めっき液)
3 処理槽本体
4 ノズル管
5 薄物シート
6 クリップ
7 処理液循環経路
11 ノズル孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液が充填される処理槽本体内に左右一対のノズル管を複数段配設し、該ノズル管には内側に向けて斜め下方に処理液を噴射するノズル孔が複数個設けられ、被処理材である薄物シートを該左右一対のノズル管の間に通過させることを特徴とする処理槽。
【請求項2】
該処理槽の底部にはノズル管に連絡する処理液循環経路が開口しており、該処理槽の底部から該循環経路に処理液を吸引してノズル管に循環する請求項1に記載の処理槽。
【請求項3】
左右一対のノズル管のノズル孔はそれぞれ相対する位置に設けられている請求項1または請求項2に記載の処理槽。
【請求項4】
該ノズル管のノズル孔は管状に延長されている請求項1〜請求項3のいずれかに記載の処理槽。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の処理槽を使用し、該処理槽に処理液を充填し、該左右一対のノズル管のノズル孔より左右等しい圧力および流速で処理液を噴射し、クリップで支持した被処理材である薄物シートを該処理槽の一端より処理液内に挿入し、該薄物シートを該左右一対のノズル管の中間で他端側に移動させ、その間に該処理液によって該薄物シートを処理し、他端において該薄物シートを引き上げることを特徴とする薄物シートの処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−291264(P2006−291264A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−111615(P2005−111615)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【出願人】(000228235)日本エンバイロ工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】