説明

処理治具用の収納ケース

【課題】リングフレームのばたつきや振動を防いで異物の発生を抑制し、基板損傷のおそれを排除できる処理治具用の収納ケースを提供する。
【解決手段】半導体ウェーハを搭載する処理治具のリングフレームを収納する収納ケースと、収納ケースの開口した前後面を開閉する一対の蓋体20とを備え、各蓋体20を、収納ケースの前後面に着脱自在に嵌合される断面略皿形のカバー体21と、カバー体21の収納ケースの前後面に対向する対向面の中央部に配列形成され、収納されたリングフレームの周縁端部を挟持する複数の挟持リブと、カバー体21の対向面の両側部にそれぞれ一体形成され、リングフレームの周縁端部の両側に接触する一対の膨出壁25とを備える。複数の挟持リブの両側部を膨出壁25方向に円弧形に伸長形成して各膨出壁25の側部26とし、複数の挟持リブの両側部をリングフレーム2の周縁端部からその両側の間に沿わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ等からなる各種の基板を搭載する処理治具のリングフレーム収納用の収納ケースを蓋体により開閉する処理治具用の収納ケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハは半導体パッケージの製造時にダイシング用テープフレームと呼ばれる処理治具に搭載されるが、この処理治具は一般的に収納ケースに保管して搬送されたり、工場間を輸送される。この処理治具用の収納ケースは、図示しないが、半導体ウェーハを搭載する処理治具のリングフレームを水平に整列収納する収納ケースと、この収納ケースの開口した前後面をそれぞれ着脱自在に開閉するフラットな蓋体とを備えて構成されている(特許文献1、2、3参照)。
【特許文献1】特開2007‐207404号公報
【特許文献2】特開2007‐294303号公報
【特許文献3】特開2008‐016022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来における処理治具用の収納ケースは、以上のように構成され、収納ケースの開口した前後面を剛性に欠ける蓋体により単に開閉するので、搬送時や輸送時に収納されたリングフレームがばたついたり、振動して収納ケースと擦れ、汚染源となる異物を発生させたり、半導体ウェーハを損傷させてしまうという問題がある。
【0004】
本発明は上記に鑑みなされたもので、リングフレームのばたつきや振動を防いで異物の発生を抑制し、基板損傷のおそれを排除することのできる処理治具用の収納ケースを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明においては上記課題を解決するため、基板を搭載する処理治具のリングフレームを収納する収納ケースと、この収納ケースの開口面を開閉する蓋体とを備えたものであって、
蓋体は、収納ケースの開口面に着脱自在に嵌合される断面略皿形のカバー体と、このカバー体の収納ケースの開口面に対向する対向面の中央部に配列形成され、収納ケースに収納されたリングフレームの周縁端部を挟み持つ複数の挟持突部と、カバー体の収納ケースの開口面に対向する対向面の両側部にそれぞれ一体形成され、収納ケースに収納されたリングフレームの周縁端部の両側に接触する一対の膨出壁とを含み、
複数の挟持突部の両側部を隣接する膨出壁方向にそれぞれ略円弧形に伸長形成して各膨出壁の側部とし、この複数の挟持突部の両側部を収納ケースに収納されたリングフレームの周縁端部からその両側の間に沿わせるようにしたことを特徴としている。
【0006】
なお、収納ケースの両側壁に、リングフレームを支持する一対の支持片を設け、この一対の支持片を側壁の上下方向に所定のピッチで複数配列形成し、上下方向に隣接する支持片と支持片との間に、リングフレーム用の挿入溝を区画し、支持片の下面後部には、リングフレームの周縁側部の後方に対向するストッパを形成するとともに、このストッパには、リングフレームのがたつきを規制する傾斜面を形成することができる。
【0007】
また、蓋体は、カバー体の周壁の内面に突出形成されて収納ケースの開口面外周に接触する複数の脱落防止突部を含むと良い。
また、蓋体を、ポリエチレンテレフタレートあるいはポリスチレンを含む成形材料を使用して真空成形することができる。
【0008】
ここで、特許請求の範囲における基板には、φ200mm、300mm、450mmの半導体ウェーハ、液晶基板、ガラス板、マスクガラス等が含まれる。処理治具は、リングフレームに基板を搭載した治具でも良いし、そうでなくても良い。収納ケースと蓋体とは、収納した処理治具を視認できるよう透明が好ましいが、何らこれに限定されるものではなく、不透明や半透明でも良い。
【0009】
本発明によれば、複数の挟持突部の両側部が伸びて膨出壁の側部と立体的に一体化し、蓋体を補強してその強度を増大させるので、収納ケースに収納された処理治具のリングフレームがばたついたり、振動して収納ケースと擦れることが少ない。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リングフレームのばたつきや振動を防いで異物の発生を抑制し、基板損傷のおそれを排除することができるという効果がある。
また、蓋体に、カバー体の周壁の内面に突出形成されて収納ケースの開口面外周に接触する複数の脱落防止突部を含めば、収納ケースから蓋体が抜けにくくなり、蓋体が収納ケースから脱落するのを有効に防ぐことができる。
【0011】
また、蓋体を、ポリエチレンテレフタレート、あるいはポリスチレンを含む成形材料を使用して真空成形すれば、優れた寸法安定性や耐候性等を得ることができる。また、部分的なデザイン変更が簡易となり、小ロット化にも簡単に対応することができ、さらには、静電気対策や軽量化が容易になり、射出成形に比べて蓋体を安価に製造することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明に係る処理治具用の収納ケースの好ましい実施形態を説明すると、本実施形態における処理治具用の収納ケースは、図1ないし図8に示すように、半導体ウェーハWを搭載する処理治具1のリングフレーム2を収納する透明の収納ケース10と、この収納ケース10の開口した前後面をそれぞれ開閉する一対の蓋体20とを備え、各蓋体20を、カバー体21、複数の挟持リブ24、及び一対の膨出壁25から形成し、複数の挟持リブ24の両側部を円弧形に伸長形成して各膨出壁25の側部26とし、この複数の挟持リブ24の両側部を収納されたリングフレーム2の周縁端部からその両側の間に沿わせて面接触させるようにしている。
【0013】
半導体ウェーハWは、図2に示すように、例えば薄く丸くスライスされたφ200mmのシリコンウェーハからなり、周縁部には位置合わせ用の平面略半形のノッチが選択的に切り欠かれる。
【0014】
処理治具1は、図1や図2に示すように、例えば半導体ウェーハWを収容可能なSUS製あるいは樹脂製の中空のリングフレーム2を備え、このリングフレーム2の裏面には、中空を下方から覆う粘着層3が着脱自在に粘着されており、この粘着層3に収容された半導体ウェーハWが着脱自在に粘着保持される。このリングフレーム2は、その周縁前端部の両側に切り欠き4がそれぞれ平面略三角形に形成され、後部表面の中央には、移動体識別用のRFIDタグ5が粘着される。
【0015】
収納ケース10は、図1、図3、図4に示すように、リングフレーム2よりも大きい底板11と、この底板11に複数のリングフレーム2の収容空間をおいて上方から相対向する同形の天板13と、これら底板11と天板13との両側部間を縦に連結する左右一対の側壁14とを備えて前後面がそれぞれ横長の矩形に開口した箱形に構成され、半導体ウェーハWを搭載した処理治具1のリングフレーム2、あるいは半導体ウェーハWを搭載しないリングフレーム2を図示しないロボットを介して水平に複数枚(例えば、13枚や25枚等)整列収納するよう機能する。
【0016】
底板11、天板13、及び一対の側壁14は、例えばポリカーボネート等の樹脂を含む成形材料を使用して射出成形され、ビス等の締結具を用いて組み立てられる。底板11の内面前端部には、下方のリングフレーム2の出し入れに資する矩形の切り欠き部12が切り欠かれ、一対の側壁14の上部前方間と上部後方間とには、握持操作用のハンドル15がそれぞれ起伏可能に軸支される。
【0017】
一対の側壁14の内面には、リングフレーム2の両側部を略水平に支持する一対の支持片16がそれぞれ対設され、この一対の支持片16が側壁14の上下方向に所定のピッチで複数配列形成されており、各支持片16が収納ケース10の前後方向に伸びる細長い板に形成される。各側壁14の上下方向において隣接する支持片16と支持片16との間には、リングフレーム2用の挿入溝17が区画形成され、各挿入溝17が収納ケース10の前後方向に伸び、かつリングフレーム2の厚さ以上の高さ(幅)を有する溝とされる。
【0018】
支持片16の下面後部には図4に示すように、リングフレーム2の周縁側部の後方に干渉・対向して位置決めするストッパ18が一体形成され、ストッパ18の側面には、下方の支持片16に向かうに従い徐々に狭まる傾斜面19が滑らかに形成されており、この傾斜面19がリングフレーム2の後部表面に隙間をおいて対向する。
【0019】
各蓋体20は、静電気対策やコスト削減等の観点からポリエチレンテレフタレートあるいはポリスチレンを含む成形材料を使用して透明に真空成形される。この蓋体20のカバー体21は、図4ないし図8に示すように、収納ケース10の開口した前面あるいは後面に対応する横長の矩形、かつ断面略皿形に形成され、収納ケース10の開口した前後面に着脱自在に密嵌されて収納ケース10に対する異物の外部からの流入を防止する。
【0020】
カバー体21の周壁22は、正面略枠形に形成されて複数の挟持リブ24、及び一対の膨出壁25を包囲し、両側部の内面上下には、収納ケース10の前後面の外周に圧接する小判形の脱落防止リブ23がそれぞれ複数突出形成されており、この複数の脱落防止リブ23が蓋体20の収納ケース10からの落下を防止するよう機能する。
【0021】
複数の挟持リブ24は、カバー体21の収納ケース10の前後面に対向する対向面の中央部上下方向に所定のピッチで配列形成されて一対の膨出壁25の間に介在し、各挟持リブ24が左右水平方向に細長い断面略山形に形成されており、収納ケース10に収納されたリングフレーム2の周縁端部を上下方向から挟持してリングフレーム2のばたつきや振動を防止するよう機能する。
【0022】
一対の膨出壁25は、カバー体21の収納ケース10の前後面に対向する対向面の両側部にそれぞれ一体的に膨出形成されて複数の挟持リブ24の両側に隣接し、各膨出壁25が縦長の矩形に形成されて蓋体20の強度を高めており、収納ケース10に収納されたリングフレーム2の周縁端部の両側に圧接してリングフレーム2のばたつきや振動を防止する。
【0023】
各膨出壁25の側部26は、図5ないし図7に示すように、隣接する複数の挟持リブ24の円弧形に湾曲伸長した側部と立体的に一体化され、収納ケース10に収納されたリングフレーム2の周縁端部からその両側の間に沿って面接触で圧接するとともに、蓋体20に剛性を付与する。換言すれば、複数の挟持リブ24の両側部は、隣接する膨出壁25方向にそれぞれ円弧形に湾曲伸長して各膨出壁25の曲がった側部26とされ、膨出壁25と一体化して蓋体20の撓みや変形を抑制するよう機能する。
【0024】
上記において、収納ケース10に処理治具1のリングフレーム2を収納する場合には、先ず、収納ケース10に処理治具1のリングフレーム2を前方からロボットにより挿入すれば良い。すると、収納ケース10の挿入溝17にリングフレーム2が水平に挿入されてスライドするとともに、一対の支持片16にリングフレーム2の両側部が下方から水平に支持され、ストッパ18の傾斜面19にリングフレーム2が案内されて接触・停止し、これらにより、収納ケース10内に処理治具1のリングフレーム2が適切に位置決め収納されることとなる。
【0025】
収納ケース10内に処理治具1のリングフレーム2が適切に収納されると、収納ケース10の開口した前後面に蓋体20がそれぞれ手動操作で嵌合され、各蓋体20の複数の挟持リブ24がリングフレーム2の周縁端部を上下方向から挟持してその動きや不揃いを規制し、搬送時や輸送時におけるリングフレーム2のばたつきや振動が防止される。この際、蓋体20の複数の挟持リブ24の両側部や一対の膨出壁25は、リングフレーム2の周縁端部からその両側に亘って面接触する。
【0026】
上記構成によれば、複数の挟持リブ24の両側部を立体的に伸長して各膨出壁25の側部26と一体化し、蓋体20の強度を増大させてその撓みや変形を防止するので、搬送時や輸送時に収納されたリングフレーム2がばたついたり、振動して収納ケース10と擦れることがない。したがって、汚染源となる異物の発生を抑制し、半導体ウェーハWの損傷を未然に防止することができる。
【0027】
また、支持片16のストッパ18がリングフレーム2の後部を規制するので、挿入されたリングフレーム2の位置ずれやがたつきを有効に防止することができる。さらに、ストッパ18の傾斜面19が挿入溝17の余分なスペースを徐々に埋めるので、振動に伴うリングフレーム2のがたつきを防ぐことができ、半導体ウェーハWの損傷防止が大いに期待できる。
【0028】
なお、上記実施形態では収納ケース10の前後面をそれぞれ開口させたが、収納ケース10の前面のみを開口させても良い。また、底板11の内面前端部に切り欠き部12を切り欠いたが、底板11の内面後端部に、下方のリングフレーム2の出し入れに資する矩形の切り欠き部12を切り欠いても良い。また、支持片16を細長い平板に形成するのではなく、支持片16を略J字形等の板に形成しても良い。さらに、周壁22の上下部の内面両側に、収納ケース10の前後面の外周に圧接する脱落防止リブ23をそれぞれ突出形成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る処理治具用の収納ケースの実施形態を模式的に示す正面説明図である。
【図2】本発明に係る処理治具用の収納ケースの実施形態における処理治具を模式的に示す斜視説明図である。
【図3】本発明に係る処理治具用の収納ケースの実施形態を模式的に示す側面説明図である。
【図4】本発明に係る処理治具用の収納ケースの実施形態における収納ケースの内部を模式的に示す説明図である。
【図5】本発明に係る処理治具用の収納ケースの実施形態における蓋体を模式的に示す斜視説明図である。
【図6】本発明に係る処理治具用の収納ケースの実施形態における蓋体を模式的に示す説明図である。
【図7】本発明に係る処理治具用の収納ケースの実施形態における蓋体を模式的に示す平面説明図である。
【図8】本発明に係る処理治具用の収納ケースの実施形態における蓋体の周壁内面を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1 処理治具
2 リングフレーム
10 収納ケース
14 側壁
16 支持片
17 挿入溝
18 ストッパ
19 傾斜面
20 蓋体
21 カバー体
22 周壁
23 脱落防止リブ(脱落防止突部)
24 挟持リブ(挟持突部)
25 膨出壁
26 側部
W 半導体ウェーハ(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を搭載する処理治具のリングフレームを収納する収納ケースと、この収納ケースの開口面を開閉する蓋体とを備えた処理治具用の収納ケースであって、
蓋体は、収納ケースの開口面に着脱自在に嵌合される断面略皿形のカバー体と、このカバー体の収納ケースの開口面に対向する対向面の中央部に配列形成され、収納ケースに収納されたリングフレームの周縁端部を挟み持つ複数の挟持突部と、カバー体の収納ケースの開口面に対向する対向面の両側部にそれぞれ一体形成され、収納ケースに収納されたリングフレームの周縁端部の両側に接触する一対の膨出壁とを含み、
複数の挟持突部の両側部を隣接する膨出壁方向にそれぞれ略円弧形に伸長形成して各膨出壁の側部とし、この複数の挟持突部の両側部を収納ケースに収納されたリングフレームの周縁端部からその両側の間に沿わせるようにしたことを特徴とする処理治具用の収納ケース。
【請求項2】
蓋体は、カバー体の周壁の内面に突出形成されて収納ケースの開口面外周に接触する複数の脱落防止突部を含んでなる請求項1記載の処理治具用の収納ケース。
【請求項3】
蓋体を、ポリエチレンテレフタレートあるいはポリスチレンを含む成形材料を使用して真空成形した請求項1又は2記載の処理治具用の収納ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−13176(P2010−13176A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177175(P2008−177175)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】