説明

処理顔料及び化粧料

【課題】、滑り感、柔らかな感触を維持しながら、ロングラスティング効果と肌への均一な付着性に優れる化粧料を提供すること。
【解決手段】顔料粉体の表面に非水溶性の微細結晶セルロースである成分(A)と、撥水性または撥水撥油性を付与する化合物である成分(B)を二段階で被覆したこと易崩壊性凝集顔料粉体を配合することにより、微細結晶セルロース由来の滑り感、柔らかな感触を維持しながら、撥水または撥水撥油性を付与する成分(B)由来のロングラスティング効果と、肌への均一な付着性に優れる化粧料を得る。また、成分(A)を顔料粉体に被覆する際、成分(A)と顔料粉体を水中に分散したスラリーを、スプレードライヤーを用いて造粒しながら、成分(A)を顔料粉体の表面に被覆することにより、その球状形状からも、優れた滑り感を得る事がてき、またこの球状粒子が塗布の際、肌の上で崩壊されることにより、肌への均一な付着性を得る事ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水溶性の微細結晶セルロースである成分(A)と、撥水性または撥水撥油性を付与する化合物である成分(B)を二段階で被覆した易崩壊性凝集顔料粉体、及び該顔料粉体を配合する事により、滑り感、柔らかな感触を維持しながら、ロングラスティング効果と肌への均一な付着性に優れることを特徴とする化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、粉体を結晶セルロースで被覆し、崩壊性を有する造粒物を調整することは特許3742782公報、特許4107933公報、特開2003−146841公報等にて広く知られている。また、結晶セルロースと撥水性または撥水撥油性を付与する化合物で粉体を同時に被覆することも、特開2004−91357公報、特開2004−91358公報、特開2005−53807公報等にて広く知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の結晶セルロースのみで被覆した顔料粉体は、滑り性、柔らかな感触を有しているが、ファンデーション、アイシャドウ、ほほ紅等のメイクアップ化粧料、もしくは、サンスクリーン化粧料に配合した場合、撥水性または撥水撥油性がないため、皮膚の発汗作用や皮脂によって化粧くずれをおこしやすいという問題点があった。またそれを改善するため、溶剤中に結晶セルロースと撥水性または撥水撥油性を付与する化合物を分散し、同時にスプレードライヤーなどで粉体表面に被覆する顔料粉体も提案されているが、撥水性または撥油性を付与する化合物を分散するために水とアルコールなどの混合溶剤が必要であり、コストや、製造中の廃液の面で問題があり、また肌への均一な付着という点で充分満足できるものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで、本発明人は鋭意検討した結果、顔料粉体の表面に非水溶性の微細結晶セルロースである成分(A)と、撥水性または撥水撥油性を付与する化合物である成分(B)を二段階で被覆した易崩壊性凝集顔料粉体を用いることにより、結晶セルロース由来の滑り感、柔らかな感触を維持しながら、ロングラスティング効果と肌への均一な付着性に優れた化粧料を得ることを見出した。
【0005】
すなわち、第一の本発明は、顔料粉体の表面に非水溶性の微細結晶セルロースである成分(A)と、撥水性または撥水撥油性を付与する化合物である成分(B)を二段階で被覆したことを特徴とする易崩壊性凝集顔料粉体に関するものである。
【0006】
第二の本発明は、上記成分(A)を顔料粉体に被覆する際、成分(A)と顔料粉体を水中に分散したスラリーを、スプレードライヤーを用いて造粒しながら、成分(A)を顔料粉体の表面に被覆した上記の顔料粉体に関するものである。
【0007】
第三の本発明は、上記成分(B)が、N−ラウロイル−L−アスパラギン酸・有機チタネート複合体である上記の顔料粉体に関するものである。
【0008】
第四の本発明は、上記成分(B)が、下記一般式(1)または(2)で示されるシラン化合物である上記の顔料粉体に関するものである。
CH−(CH−Si−(OCHCH …(1)
CF−(CF−(CH−Si−(OCHCH …(2)
【0009】
第五の本発明は、上記記載の顔料粉体を配合することを特徴とする化粧料に関するものである。
【発明の効果】
【0010】
以上説明するように、顔料粉体の表面に非水溶性の微細結晶セルロースである成分(A)と、撥水性または撥水撥油性を付与する化合物である成分(B)を二段階で被覆することにより、成分(A)の結晶セルロース由来の滑り感、柔らかな感触を維持しながら、成分(B)由来のロングラスティング効果を得られることは明らかである。また、N−ラウロイル−L−アスパラギン酸・有機チタネート複合体または、特定のシラン化合物を用いる事で、さらに肌への均一な付着性に優れた化粧料を得ることができる。また、成分(A)を顔料粉体に被覆する際、成分(A)と顔料粉体を水中に分散したスラリーを、スプレードライヤーを用いて造粒しながら、成分(A)を顔料粉体の表面に被覆することにより、その球状形状からも、優れた滑り感を得る事ができ、またこの球状粒子が塗布の際、肌の上で崩壊されることにより、肌への均一な付着性を得る事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、上記本発明を詳細に説明する。
本発明において、非水溶性の微細結晶セルロースである成分(A)を被覆する工程と、撥水性または撥水撥油性を付与する化合物である成分(B)を被覆する工程の二つの工程からなる。
【0012】
この二つの工程は、(A)を被覆した後に(B)を被覆しても良いし、(A)を被覆する前に(B)を被覆しても良い。
【0013】
非水溶性の微細結晶セルロースである成分(A)としては、旭化成工業株式会社から、アビセルRC−591NFの名称で市販の微細セルロース結晶体の二次凝集物粉体が挙げられる。本製品は一次粒子の微細セルロース結晶体の表面を水溶性高分子でコーティングし乾燥させて製造されたものであり、二次凝集体を形成する粉体である。また、この製品を水中に分散させ、ホモミキサーやビーズミル等にて強いせん断力を付与しつつ撹拌すると、容易にその二次凝集体がほぐれてコロイド状態になるのが特徴である。また、その他のセルロース微結晶としては旭化成工業株式会社からセオラスクリームFP−03の名称で市販のものが挙げられる。この製品は、微細な結晶セルロースが水中で均一に分散され、クリーム状にされたものである。
【0014】
撥水性または撥水撥油性を付与する化合物である成分(B)としては、例えば従来公知の表面処理が挙げられる。表面処理の例としては、例えばフッ素化合物処理(パーフルオロアルキルリン酸エステル処理やパーフルオロアルキルシラン処理、パーフルオロポリエーテル処理、フルオロシリコーン処理、フッ素化シリコーン樹脂処理など)、シリコーン処理(メチルハイドロジェンポリシロキサン処理、ジメチルポリシロキサン処理、気相法テトラメチルテトラハイドロジェンシクロテトラシロキサン処理など)、シリコーン樹脂処理(トリメチルシロキシケイ酸処理など)、ペンダント処理(気相法シリコーン処理後にアルキル鎖などを付加する方法)、シランカップリング剤処理、チタンカップリング剤処理、アルミニウムカップリング剤処理、シラン処理(アルキル化シランやアルキル化シラザン処理など)、油剤処理、ポリアクリル酸処理、金属石鹸処理(ステアリン酸塩やミリスチン酸塩処理など)、アクリル樹脂処理、金属酸化物処理などが挙げられ、またこれらの処理を複数組み合わせて用いることも可能である。
【0015】
好ましくは、N−ラウロイル−L−アスパラギン酸・有機チタネート複合体または、特定のシラン化合物を用いる事で、さらに肌への均一な付着性に優れた化粧料を得ることができる。
【0016】
非水溶性の微細結晶セルロースである成分(A)と、撥水性または撥水撥油性を付与する化合物である成分(B)を被覆する顔料としては、従来公知の顔料が使用でき、その形状(球状、棒状、針状、板状、不定形状、鱗片状、紡錘状等)や粒子径(煙霧状、微粒子、顔料級等)、粒子構造(多孔質、無孔質等)を問わず、いずれのものも使用することができ、例えば無機粉体、有機粉体、界面活性剤金属塩粉体、有色顔料、パール顔料、金属粉末顔料等が挙げられる。
【0017】
具体的には、無機粉体としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化能鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、マイカ、カオリン、セリサイト、白雲母、合成雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、ヒドロキシアパタイト、バーミキュライト、ハイジライト、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ゼオライト、セラミックスパウダー、第二リン酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ボロン、シリカ等;有機粉体としては、ポリアミドパウダー、ポリエステルパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリプロピレンパウダー、シリコーンレジンパウダー、シリコーンエラストマー粉体、ポリスチレンパウダー、ポリウレタンパウダー、ベンゾグアナミンパウダー、ポリメチルベンゾグアナミンパウダー、ポリテトラフルオロエチレンパウダー、ポリメチルメタクリレートパウダー、セルロース、シルクパウダー、ナイロンパウダー、12ナイロン、6ナイロン、アクリルパウダー、アクリルエラストマー、スチレン・アクリル酸共重合体、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、ビニル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネイト樹脂、微結晶繊維粉体、デンプン末、ラウロイルリジン等;界面活性剤金属塩粉体(金属石鹸)としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、セチルリン酸亜鉛、セチルリン酸カルシウム、セチルリン酸亜鉛ナトリウム等;有色顔料としては、酸化鉄、水酸化鉄、チタン酸鉄の無機赤色顔料、γ−酸化鉄等の無機褐色系顔料、黄酸化鉄、黄土等の無機黄色系顔料、黒酸化鉄、カーボンブラック等の無機黒色顔料、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット等の無機紫色顔料、水酸化クロム、酸化クロム、酸化コバルト、チタン酸コバルト等の無機緑色顔料、紺青、群青等の無機青色系顔料、微粒子酸化チタン、微粒子酸化セリウム、微粒子酸化亜鉛等の微粒子粉体、タール系色素をレーキ化したもの、天然色素をレーキ化したもの、及びこれらの粉体を複合化した合成樹脂粉体等;パール顔料としては、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆マイカ、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔、酸化チタン被覆着色雲母等;金属粉末顔料としては、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー、ステンレスパウダー等から選ばれる粉体が挙げられる。また、タール色素としては、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、黄色204号、黄色401号、青色1号、青色2号、青色201号、青色404号、緑色3号、緑色201号、緑色204号、緑色205号、橙色201号、橙色203号、橙色204号、橙色206号、橙色207号等;天然色素としては、カルミン酸、ラッカイン酸、カルサミン、ブラジリン、クロシン等から選ばれる顔料が挙げられる。
【0018】
非水溶性の微細結晶セルロースである成分(A)の処理方法としては、成分(A)と顔料粉体を水中に分散したスラリーを、スプレードライヤーを用いて造粒しながら、成分(A)を顔料粉体の表面に被覆し、易崩壊性凝集顔料粉体を調整する方法が望ましい。
【0019】
前記微細結晶性セルロースの顔料表面への付着または被覆量は、特に限定されるものではないが、目的とする滑り感、柔らかな感触を得るには、1重量%以上30重量%以下であるのが好ましい。
【0020】
また、撥水性または撥水撥油性を付与する化合物である成分(B)の処理方法としては、N−ラウロイル−L−アスパラギン酸・有機チタネート複合体を用いる場合は、水中でN−ラウロイル−L−アスパラギン酸を被覆し、次いで有機チタネートを被覆した後、ろ過、加熱乾燥、場合により粉砕、篩い分けする方法が挙げられる。
【0021】
また、下記一般式(1)または(2)で示されるシラン化合物を用いる場合は、被覆処理される顔料を適当なミキサー中で大気中で撹拌中に、前記化合物を液滴下あるいはスプレー
CH−(CH−Si−(OCHCH …(1)
CF−(CF−(CH−Si−(OCHCH …(2)
噴霧にて加えた後、一定時間高速強撹拌する。その後、撹拌を続けながら80〜200℃に加熱熟成させることによって、反応表面被覆処理を行う方法が一般的である。あるいは、一般式(1)または(2)で示される前記化合物をエタノール、イソプロピルアルコール、イソブタノール等のアルコール類、トルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系有機溶剤、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の極性有機溶剤などに溶解させておき、この溶液に撹拌中に化粧料用顔料を添加撹拌した後、有機溶剤を完全に蒸発除去し、その後、80〜200℃に加熱熟成させることにより、反応表面被覆処理を行う方法等も挙げられる。
【0022】
また、混合分散方法としては、溶液の濃度や粘度などに応じて適当な方法を選択することができ、好適な例としては、ディスパー、ヘンシェルミキサー、レディゲミキサー、ニーダー、V型混合機、ロールミル、ビーズミル、2軸混練機等の混合機よる方法や、水溶液と顔料を加熱空気中に噴霧して水分を一気に除去するスプレードライの方法などを選択することができる。また、粉砕を行う場合においては、ハンマーミル、ボールミル、サンドミル、ジェットミル等の通常の粉砕機を用いることができる。これらいずれの粉砕機によっても同等の品質のものが得られるため、特に限定されるものではない。
【0023】
この場合、顔料の表面被覆処理に用いられる撥水性または撥水撥油性を付与する化合物である成分(B)の重量比は、被覆処理される顔料に対して0.5〜30重量%である。前記重量比が0.5重量%未満であるとロングラスティング効果と肌への均一な付着性が充分でなく、30重量%を越えると感触が非常に油っぽく湿った感じとなり、化粧料としては適さない。
【0024】
本発明の化粧料ではこうして得られた処理顔料を化粧料100質量部に対して0.1〜99質量部の範囲で配合が可能であり、特に10質量部以上配合するとその特長が明確に得られるので好ましい。
【0025】
本発明の化粧料では、上記の処理顔料以外に、化粧料で使用される各種の素材、例えば顔料、紫外線吸収剤、油剤、界面活性剤、フッ素化合物、樹脂、粘剤、防腐剤、香料、保湿剤、塩類、溶媒、酸化防止剤、キレート剤、中和剤、pH調整剤、昆虫忌避剤、生理活性成分等の成分を使用することができる。
【0026】
本発明の化粧料としては、メイクアップ化粧料、基礎化粧料、頭髪化粧料、香料、ボディ化粧料など各種の化粧料が該当するが、特にファンデーション、頬紅、白粉、フェースパウダー、口紅、アイシャドウ、アイブロー、マスカラ、ネイルカラー、ボディパウダー、サンスクリーン、デオドラント料に好適である。
【0027】
本発明の化粧料の形態としては、パウダー状、乳液状、クリーム状、スティック状、固型状、スプレー、多層分離型などいずれの剤型を用いても構わない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0029】
(製造実施例1:非水溶性の微細結晶セルロースとN−ラウロイル−L−アスパラギン酸・有機チタネート複合体被覆易崩壊性凝集顔料粉体の製造実施例)
酸化チタン100質量部を40℃の精製水300質量部とイソプロピルアルコール20質量部と混合し、攪拌した。そこに45℃の精製水100質量部にN−ラウロイル−L−アスパラギン酸ナトリウム0.5質量部を溶解した溶解液を投入し、さらに攪拌した。50℃のエチルアルコール20質量部に塩化亜鉛0.35質量部を溶解させた溶液を用意し、攪拌下に除々に加えた。次に5mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを5.8に調整した後、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート1.5質量部とデカメチルシクロペンタシロキサン1.5質量部の混合溶液を攪拌下の上記溶液に除々に滴下した。次いで、ろ過、水洗した後、結晶セルロース10%水分散液(旭化成社製:セオラスクリームFP−03)100質量部を精製水600質量部に希釈分散させ、この中に水洗した粉体を投入・混合した。得られたスラリーをスプレードライヤーにより噴霧乾燥し、目的とする結晶セルロース/N−ラウロイル−L−アスパラギン酸・有機チタネート処理顔料を得た。得られた処理顔料は球状の凝集体であり、指で摩擦すると崩壊性を示した。処理顔料と崩壊後の電顕写真を図1、2に示す。
同様にして、タルク、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、微粒子酸化セリウムを処理した。
また、イソプロピルアルコールを用いない他は全て同様にしてセリサイト、マイカ、黄色酸化鉄、ベンガラ、黒酸化鉄の処理を実施した。
【0030】
(製造実施例2:非水溶性の微細結晶セルロースとn−オクチルトリエトキシシラン被覆易崩壊性凝集顔料粉体の製造実施例)
市販の旭化成工業(株)社製、結晶性セルロース、アビセルRC−591NFを用い、原料となる酸化チタンに対して、10重量%となるように秤量し、このアビセルRC−591NFの量に対して70倍量の水を加え、ホモミキサーにて約30分間攪拌し、コロイド状態とする。これに所定量の酸化チタンを加え、ホモミキサーで約10分間攪拌して水スラリー状とする。この水スラリー状物を2流体スプレーノズルを備えたスプレードライヤーに供給する。このとき、スプレードライヤーの熱風温度を180℃とし、2流体ノズルのスプレー圧を4kgf/cm2とした。このようにして、微細結晶性セルロースが10重量%付着された酸化チタンを得た。
この微細結晶セルロース被覆酸化チタンをヘンシェルミキサーで高速撹拌中に、n−オクチルトリエトキシシランを酸化チタンに対してその重量比が3重量%となるように液滴下した。このとき、反応速度のバラツキをなくすため、ヘンシェルミキサー内の温度は50℃に設定された。滴下終了後、同じ温度で30分間撹拌した。その後、ミキサー内の温度を110℃として3時間反応熟成させた。ヘンシェルミキサーより取り出し、ハンマー式粉砕機にて粉砕し、目的とする結晶セルロース/n−オクチルトリエトキシシラン処理顔料を得た。得られた処理顔料は球状の凝集体であり、指で摩擦すると崩壊性を示した。処理顔料と崩壊後の電顕写真を図3、4に示す。
同様にして、タルク、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、微粒子酸化セリウム、セリサイト、マイカ、黄色酸化鉄、ベンガラ、黒酸化鉄の処理を実施した。
【0031】
(製造実施例3:非水溶性の微細結晶セルロースとトリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン被覆易崩壊性凝集顔料粉体の製造実施例)
市販の旭化成工業(株)社製、結晶性セルロース、アビセルRC−591NFを用い、原料となる酸化チタンに対して、5重量%となるように秤量し、このアビセルRC−591NFの量に対して70倍量の水を加え、ホモミキサーにて約30分間攪拌し、コロイド状態とする。これに所定量の酸化チタンを加え、ホモミキサーで約10分間攪拌して水スラリー状とする。この水スラリー状物を2流体スプレーノズルを備えたスプレードライヤーに供給する。このとき、スプレードライヤーの熱風温度を180℃とし、2流体ノズルのスプレー圧を4kgf/cm2とした。このようにして、微細結晶性セルロースが5重量%付着された酸化チタンを得た。
この微細結晶セルロース被覆酸化チタンをヘンシェルミキサーで高速撹拌中に、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランを酸化チタンに対してその重量比が3重量%となるように10倍量のイソプロピルアルコールに溶解させた溶液をヘンシェルミキサー内に入れ、酸化チタンとよく混合した。その後、ヘンシェルミキサーに熱をかけ、必要ならばヘンシェルミキサー内を減圧し、イソプロピルアルコールを除去した。次いで、顔料粉体をヘンシェルミキサーから取り出し、130℃で6時間加熱した後、解砕して目的とする結晶セルロース/トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン処理顔料を得た。得られた処理顔料は球状の凝集体であり、指で摩擦すると崩壊性を示した。処理顔料と崩壊後の電顕写真を図5、6に示す。
同様にして、タルク、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、微粒子酸化セリウム、セリサイト、マイカ、黄色酸化鉄、ベンガラ、黒酸化鉄の処理を実施した。
【0032】
(製造比較例1)
製造実施例1のN−ラウロイル−L−アスパラギン酸・有機チタネート複合体処理工程を全てカットし、微細結晶セルロースのみで処理した酸化チタン、タルク、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、微粒子酸化セリウム、セリサイト、マイカ、黄色酸化鉄、ベンガラ、黒酸化鉄の処理顔料を得た。
【0033】
(製造比較例2)
市販の旭化成工業株式会社製、セオラスクリームFP−03(内容物は結晶セルロース10%と、水が90%)を、結晶セルロース分が原料となる酸化チタンに対して5重量%となるように科量し、これに約10倍量の水を加えてスラリー状(水スラリー)とし70℃で約30分間撹拌する。これとは別に、パーフルオロアルキルリン酸エステルを含む50重量%イソプロプルアルコール分散液を、パーフルオロアルキルリン酸エステル分が酸化チタンに対して3重量%となるように科量し、これに約20倍のイソプロピルアルコールを加え、約70℃で撹拌混合した分散液を準備しておく。前記水スラリーに、別途準備しておいたパーフルオロアルキルリン酸エステルの分散液を加え約30分間撹拌する。こうして得られた混合スラリーを二流体スプレーノズルを備えたスプレードライヤーに供給する。この際、スプレードライヤーの入口熱風温度を200℃とし、二流体ノズルのスプレー圧を0.55MPaとする。このようにして、微細結晶性セルロース5重量%とパーフルオロアルキルリン酸エステル3重量%が同時に付着した表面被覆酸化チタンを得た。
同様にして、タルク、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、微粒子酸化セリウム、セリサイト、マイカ、黄色酸化鉄、ベンガラ、黒酸化鉄の処理を実施した。
【0034】
ここで、本実施形態に係る化粧料用顔料粉体の撥水撥油性を確認するために、それぞれ処理酸化チタンの水との接触角および、パラフィンとの接触角をエルマー社製ゴニオメーター式接触角測定装置を用いて測定した。表1に製造実施例1〜3、製造比較例1〜2の結果を示す。
【0035】
【表1】

【0036】
〔実施例1〕
パウダーファンデーションの製造
表2の処方と製造方法に従いパウダーファンデーションを得た。尚、処理顔料は製造実施例1の非水溶性の微細結晶セルロースとN−ラウロイル−L−アスパラギン酸・有機チタネート複合体被覆易崩壊性凝集顔料粉体を用いた。表中の単位は質量%である。
【0037】
【表2】

【0038】
製造方法
成分Aをミキサーを用いて良く混合しながら、均一に加熱溶解した成分Bを除々に加えてさらに混合した後、粉砕し、メッシュを通した後、金型を用いて金皿に打型して製品を得た。
【0039】
〔実施例2〕
パウダーファンデーションの製造
実施例1で用いた製造実施例1の非水溶性の微細結晶セルロースとN−ラウロイル−L−アスパラギン酸・有機チタネート複合体被覆易崩壊性凝集顔料粉体の代わりに、製造実施例2で作成した非水溶性の微細結晶セルロースとn−オクチルトリエトキシシラン被覆易崩壊性凝集顔料粉体を用いた以外は全て実施例1と同様にして製品を得た。
【0040】
〔実施例3〕
パウダーファンデーションの製造
実施例1で用いた製造実施例1の非水溶性の微細結晶セルロースとN−ラウロイル−L−アスパラギン酸・有機チタネート複合体被覆易崩壊性凝集顔料粉体の代わりに、製造実施例3で作成した非水溶性の微細結晶セルロースとトリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン被覆易崩壊性凝集顔料粉体を用いた以外は全て実施例1と同様にして製品を得た。
【0041】
〔比較例1〕
実施例1で用いた非水溶性の微細結晶セルロースとN−ラウロイル−L−アスパラギン酸・有機チタネート複合体被覆易崩壊性凝集顔料粉体の代わりに、製造比較例1で製造した微細結晶セルロースのみで処理した顔料を用いた他は全て実施例1と同様にして製品を得た。
【0042】
〔比較例2〕
実施例1で用いた製造実施例1の非水溶性の微細結晶セルロースとN−ラウロイル−L−アスパラギン酸・有機チタネート複合体被覆易崩壊性凝集顔料粉体の代わりに、製造比較例2で製造した微細結晶性セルロースとパーフルオロアルキルリン酸エステルが同時に処理された顔料を用いた他は全て実施例1と同様にして製品を得た。
【0043】
実施例および比較例で作製した各化粧料について、女性パネラー10名を使用して、使用感に関する官能評価試験を実施した。試験はアンケート形式で実施し、各項目ごとに0から5点の間の点数をつけ、0点は評価が悪い、5点は評価が優れるとして数値化し、結果を全パネラーの平均点として表した。従って、点数が高い程評価が優れていることを示す。尚、化粧料は乳液状の化粧下地を使用してから塗布する形式で実施した。結果を表3に示す。
【0044】
【表3】

【0045】
表2の結果より、実施例1〜3は、滑り感、柔らかな感触、ロングラスティング効果、肌への均一な付着性の全てにおいて優れていた。比較例1では、微細結晶セルロースのみの処理顔料を配合しているため、滑り感と柔らかな感触には優れているものの、ロングラスティング効果と肌への均一な付着性において、劣るという結果になった。また比較例2では、微細結晶性セルロースとパーフルオロアルキルリン酸エステルが同時に処理された処理顔料を配合しているため、滑り感、柔らかな感触、ロングラスティング効果には優れているものの、肌への均一な付着性において、劣る結果となり、また処理顔料の製造中に水とアルコールなどの混合溶剤が必要であり、コストや、製造中の廃液の面で問題があった。
【0046】
〔実施例4〕
表4の処方と製造方法に従いW/O型リキッドファンデーションを製造した。尚、配合量の単位は質量%である。
【0047】
【表4】

【0048】
成分Bをミキサーを用いて良く混合した。一方、成分Aを80℃に加温し、均一になるように良く混合した。ここに成分Bを攪拌下に除々に添加し、50℃まで徐冷した。ついで、成分Cを80℃に加温し、均一に溶解させた後、50℃にまで徐冷した。成分Aに成分Cを攪拌下に加え、さらに良く攪拌し、室温まで冷却した。得られた溶液を容器に充填し、製品を得た。
【0049】
得られたリキッドファンデーションは滑り感、柔らかな感触、ロングラスティング効果、肌への均一な付着性の全てにおいて優れていた。
【0050】
〔実施例5〕
表5の処方と製造方法に従ってW/O型日焼け止め化粧料を試作した。尚、配合量の単位は質量%である。
【0051】
【表5】

【0052】
製造方法
成分Aを80℃に加温し、均一になるように良く混合した。ここに成分Bを攪拌下に除々に添加し、50℃まで徐冷した。ついで、成分Cを80℃に加温し、均一に溶解させた後、50℃にまで徐冷した。成分Aに成分Cを攪拌下に加え、さらに良く攪拌し、室温まで冷却した。得られた溶液を容器に充填し、製品を得た。
【0053】
得られたW/O型日焼け止め化粧料は、滑り感、柔らかな感触、ロングラスティング効果、肌への均一な付着性の全てにおいて優れていた。
【0054】
〔実施例6〕
表6の処方と製造方法に従ってO/W型リキッドファンデーションを試作した。尚、配合量の単位は質量%である。
【0055】
【表6】


【0056】
製造方法
成分A、Cを80℃にて良く混合した。
成分Bを成分Cに攪拌下に添加してよく混合した後、上から成分Aを徐々に添加し、徐冷した後、容器に充填して製品を得た。
【0057】
得られたO/W型リキッドファンデーションは、滑り感、柔らかな感触、ロングラスティング効果、肌への均一な付着性の全てにおいて優れていた。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】 製造実施例1で製造した複合顔料の走査型電子顕微鏡写真の例
【図2】 製造実施例1で製造した複合顔料を摩擦により崩壊させた際の走査型電子顕微鏡写真の例
【図3】 製造実施例2で製造した複合顔料の走査型電子顕微鏡写真の例
【図4】 製造実施例2で製造した複合顔料を摩擦により崩壊させた際の走査型電子顕微鏡写真の例
【図5】 製造実施例3で製造した複合顔料の走査型電子顕微鏡写真の例
【図6】 製造実施例3で製造した複合顔料を摩擦により崩壊させた際の走査型電子顕微鏡写真の例

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料粉体の表面に非水溶性の微細結晶セルロースである成分(A)と、撥水性または撥水撥油性を付与する化合物である成分(B)を二段階で被覆したことを特徴とする易崩壊性凝集顔料粉体。
【請求項2】
請求項1記載の成分(A)を顔料粉体に被覆する際、成分(A)と顔料粉体を水中に分散したスラリーを、スプレードライヤーを用いて造粒しながら、成分(A)を顔料粉体の表面に被覆したことを特徴とする請求項1記載の顔料粉体。
【請求項3】
請求項1記載の成分(B)が、N−ラウロイル−L−アスパラギン酸・有機チタネート複合体であることを特徴とする請求項1〜2記載の顔料粉体。
【請求項4】
請求項1記載の成分(B)が、下記一般式(1)または(2)で示されるシラン化合物であることを特徴とする請求項1〜2記載の顔料粉体。
CH−(CH−Si−(OCHCH …(1)
CF−(CF−(CH−Si−(OCHCH …(2)
【請求項5】
請求項1〜4記載の顔料粉体を配合することを特徴とする化粧料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−37812(P2011−37812A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203095(P2009−203095)
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【出願人】(391015373)大東化成工業株式会社 (97)
【Fターム(参考)】