説明

処置される宿主における切断についてのキメラ分子

本発明は、天然に存在しない様式で互いに連結する成分分子を含み、このリンカーが、少なくとも1つの酵素切断部位を含み、そしてこの酵素(nezyme)切断部位が、処置される被験体において酵素によって切断されるように操作される、キメラ分子に関連する。本発明はまた、本キメラ分子、産生用宿主において本キメラ分子を作製する方法、本キメラ分子を診断、予防、治療および栄養上の目的のために、これらを必要とする被験体において用いる方法を含む、組成物およびキットに関連する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、宿主に投与され、インビボで切断されて、処置される宿主において、診断効果、予防効果、治療効果および/または栄養上の効果を生じるために適切な、キメラ分子の分野に関連する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
キメラ分子は、微生物宿主における組換えタンパク質の産生および精製に際しての、インビトロの切断の目的で作製されている。「Expression Linkers」と題された米国特許第4,769,326号(「326特許」)(1988年9月6日に発行、the Regents of the University of Californiaに譲渡される)は、とりわけ、「自然環境においては近接しない3つのセグメントを含み、ここで第1セグメントは真核のタンパク質をコードし、そして少なくとも2アミノ酸の特異的切断配列をコードする第2セグメントと近接し、上記第2セグメントは第3のセグメントと近接し、ここで、上記DNAの発現産物は、少なくとも1つの酵素薬剤または化学薬剤により、真核タンパク質および特異的切断配列と連結するペプチド結合において特異的に切断され;そして上記第3のセグメントは、宿主ペプチドをコードし、ここで上記第3のセグメントは、宿主ペプチドをコードし、ここで、上記ペプチドは・・・上記真核タンパク質とネイティブには関係しない」組換えDNA配列に(請求項1)関連する。
【0003】
それ以来、他の研究者らは、インビトロの産生および加工のための他の系を開発している。このような適応の例としては、以下が挙げられる。
【0004】
「Cloning Vectors for Expression of Exogenous Protein」と題された米国特許第4,745,069号(1988年5月17日発行、Eli Lilly & Companyに譲渡される)は、とりわけ、「外来性タンパク質の発現のために有用な組換えDNAクローニングベクター」に関し、ここで、このクローニングベクターは、「縦列に、リポタンパク質プロモーター領域を規定するヌクレオチド配列、リポタンパク質5’非翻訳領域を規定するヌクレオチド配列、ならびに外来性タンパク質産物をコードする配列、翻訳開始シグナルコドンおよびエンテロキナーゼ切断部位をコードするヌクレオチド配列を介してリポタンパク質遺伝子の5’非翻訳領域の3’末端に結合する産物をコードする配列を、含むように構築される。」(2欄、45〜62行)この発明の理論的根拠は、「リポタンパク質遺伝子について観察される高レベルの恒常的な転写・・・外来性DNAフラグメントの発現のための媒体として、これを推薦する」(2欄、14〜17行)である。
【0005】
「Hybrid Polypeptides Comprising Somatocrinine and Alpha−Antitrypsin,Method for Their Production from Bacterial Clones and Use Thereof for the Production of Somatocrinine」と題された米国特許第4,828,988号(1989年5月9日発行、Smith Kline−RITに譲渡される)は、とりわけ、「細菌におけるhGRFの発現(この発現は、hGRFのコード配列とhATまたはそのフラグメント(細菌において最適な様式で、自身を発現する)に対応するコード配列との融合によって有意に、予期せず改善され得る)」(3欄、4〜9行)に関連する。
【0006】
「Peptide and Protein Fusions to Thioredoxin and Thioredoxin−like Molecules」と題された米国特許第5,292,646号(「’646特許」)(1994年3月8日発行、Genetics Institute,Inc.に譲渡される)は、とりわけ「選択された異種ペプチドまたは異種タンパク質に融合した、チオレドキシン様のタンパク質配列を含む融合配列」に関連し、この融合配列は、「必要に応じてリンカーペプチドを含み得」、このリンカーペプチドは、「必要な場合、選択された切断部位」を提供する(2欄、47〜60行)。’646特許において記載される発明は、『可溶組換えタンパク質発現を増加するための新規の方法』(この方法は、『上述の宿主細胞を適切な条件下で培養し、融合タンパク質を産生する工程』を包含する)を提供することを目的とする(3欄、6〜10行目)。
【0007】
「Expression of Processed Recombinant Lactoferrin and Lactoferrin Polypeptide Fragments from a Fusion Product in Aspergillus」と題された米国特許第6,080,559号(2000年6月27日、Agennix,Inc.に対して発行)は、「組換えプラスミドを含む、形質転換したアスペルギルス真菌細胞を培養する工程を包含するプロセスにより産生された、インタクトな脱グリコシル化ラクトフェリンタンパク質または1ドメイン脱グリコシル化ラクトフェリンポリペプチドフラグメントであって、上記プラスミドは、5’から3’まで操作可能に連結される、(a)プロモーター;(b)シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列;(c)高度に発現する、内因性の、分泌された、アスペルギウスポリペプチドのアミノ末端部分をコードする遺伝子のヌクレオチド配列の5’部分;(d)ペプチドリンカーをコードするヌクレオチド配列(このペプチドリンカーは、アスペルギウスに内因性のプロテアーゼの切断部位を含む);および(e)ラクトフェリンまたはラクトフェリンポリペプチドフラグメントをコードするヌクレオチド配列;の構成部分を含み、ここで、上記の形質転換したアスペルギウス真菌細胞は、適切な栄養培地で、ラクトフェリンタンパク質またはラクトフェリンポリペプチドフラグメントが融合産物として産生されるまで培養され、次いで、上記のリンカー配列に特異的な内因性タンパク質分解酵素を介して加工され、ここで、上記の加工されたラクトフェリンまたはラクトフェリンポリペプチドフラグメントは、栄養倍地中に分泌されてそこから単離され、ここで、ラクトフェリンタンパク質またはラクトフェリンポリペプチドフラグメントは、脱グリコシル化されている、インタクトな脱グリコシル化ラクトフェリンタンパク質または1ドメイン脱グリコシル化ラクトフェリンポリペプチドフラグメント」(請求項1)に、関連する。
【0008】
「Protein Expression System」と題されたWO97/28272(1997年8月7日公開、Technologene,Inc.により出願)は、とりわけ、以下の方法に関連する:「このような融合タンパク質からの、標準の組換えタンパク質の発現および精製のための方法。特に、本発明は、融合タンパク質に関し、ここで、さらなるドメインおよび/またはエレメントが、この融合タンパク質に付加される。ヒンジ領域(3)、親水性スペーサー(4)、および二塩基性アミノ酸エンドプロテアーゼ切断部位(5)を含むポリペプチドによって目的のタンパク質に融合したFcフラグメント(1)が、これらのドメインおよび/またはエレメントに含まれ、ここで、上記スペーサーは、切断され得、次いでカルボキシペプチダーゼB(6)によって消化されて、標準的タンパク質を生じる(2)」(要約書)。
【0009】
「Fused Protein」と題されたWO99/58662(1995年5月13日公開の日本国特許出願)は、以下のタンパク質を含む融合タンパク質に関連する:「N末端からC末端に向かう方向に、a)シグナル配列、b)少なくともCH1ドメインの欠失を有する免疫グロブリンFc領域;c)エンテロキナーゼなどによる切断を許容する、C末端に酵素切断部位を有するペプチドリンカー;およびd)エリスロポエチンなどの標的タンパク質のアミノ酸配列からなる標的タンパク質であって、酵素切断の完了後、この標的タンパク質がN末端にペプチドリンカー由来のアミノ酸残基を含まないという点で特徴付けられる。従って、N末端における任意のアミノ酸修飾を有さない標的タンパク質は、酵素処理により、効率的に生成され得る」(要約書) 。
【0010】
「Interferon−Beta Fusion Proteins and Uses」と題されたWO00/23472(Biogen,Inc.により出願)は、とりわけ、「インターフェロンβ−1bと比較してより高い活性を有し、そして融合タンパク質の有益な特性を有し、通常は活性を事実上喪失しない、インターフェロンβ−1a組成物」(2頁、17〜19行)に関連する。この明細書は、「アミノ酸配列X−Y−Zを有する単離されたポリペプチドであって、ここでXはインターフェロンβのアミノ酸配列からなるアミノ酸配列またはその部分を有するポリペプチドであり;Yは、任意のリンカー部分であり;そしてZは、インターフェロンβ以外のポリペプチドの少なくとも一部を含むポリペプチドである、ポリペプチド」(3頁、1〜5行目)に関連して、本発明を記載する。この発明は、「以下の工程を包含する、組換えポリペプチドの産生方法:本発明に従い、宿主細胞の集団を提供する工程;この細胞集団を、組換えDNAによってコードされるポリペプチドが発現される条件下で、培養する工程;および発現されたポリペプチドを単離する工程」(4頁、3〜6行)に、さらに関連する。
【0011】
「Rubredoxin Fusion Proteins, Protein Expression System and Methods」と題されたWO00/39310(The University of Georgia Research Foundationにより出願)は、とりわけ、「N末端ルブレドキシン構成部分およびC末端融合ポリペプチドを含む組換えルブレドキシン融合タンパク質」(3頁、3〜5行)に関連する。この融合タンパク質は、「適切に折りたたまれた場合、Fe2+を結合して赤色を呈し得、これにより精製の間にこれを追跡しやすくなる。」(3頁、5〜6行)「N末端ルブレドキシン構成部分とC末端融合ポリペプチドとの間の結合は、切断可能な結合であり得るが、そうでなくともよい。」(3頁、15〜17行目)
「Preparation of Biologically Active Molecule」と題されたWO00/61768(Yeda Research and Development Co.Ltd.により出願)は、とりわけ、「天然の形成過程において生物学的に非活性な形態で産生され、前駆体の切断後に活性になる分子の産生」に関連する。この明細書は、好ましい実施形態において、「その切断部位において変異させた生物学的活性分子の前駆体をコードするcDNAを含むベクターで、宿主をトランスフェクトする工程;トランスフェクトされた宿主を培養する工程;前駆体を発現させ、プロテアーゼ処理した後に、生物学的活性分子を単離する工程を、包含する方法」(3頁、27〜31行)を、提供する。
【0012】
「Activable Recombinant Neurotoxins」と題されたWO01/14570(Allergan Sales,Inc.により出願)は、とりわけ、「機能的結合ドメイン、トランスロケーションドメイン、および治療ドメインを含む単離された組換えタンパク質であって、ここでこのようなタンパク質はまた、単鎖として発現した後に、インビトロで選択的切断を受けやすいアミノ酸配列も含む、タンパク質」(7頁、19〜22行)に、関連する。この明細書中のトランスロケーションエレメントは、「トランスロケーション活性を有する、クロストリジウム神経毒のH鎖部分を含む」(19頁、11〜12行)。この発明は、「これらの物質の製造に関する重要な考察」としての「操作されたクロストリジウム毒素の活性化の程度」の課題に取り組む。従って、「BoNT(ボツリヌス神経毒)およびTeTx(破傷風毒素)のような神経毒は、急速に増殖する細菌(例えば、異種のE.coli細胞)において、安全であり、単離が容易で、かつ完全に活性な形態への変換が単純である、比較的非毒性の単鎖(またはより低い毒性活性を有する単鎖)として、効率で発現し得る場合に、大きな利点」(6頁、5〜11行)である。
【0013】
分子のインビトロの加工と組み合わされた融合分子のインビボの産生は、「High−efficiency synthesis of human alpha−endorphin and magainin in the erythrocytes of transgenic mice:a production system for therapeutic peptides」と題された、Proc.Natl.Acad.Sci USA 91(20):9337−41(1994年9月27日)において記載される。
【0014】
特定の場合、インビトロで合成されたポリポリペプチドを送達するよりむしろ、インビボでポリペプチドを発現させることが望ましくあり得る。例として、宿主によるインビボのポリペプチド合成は、有利な翻訳後修飾(例えば、C末端アミド化またはグリコシル化)を受け得る。(US 5,707,826(BioNebraska,Inc.に対し1998年1月13日発行)の1欄、18〜25行;およびEP 0134 085(Salk Institute for Biological Studiesにより出願、1985年3月13日に公表)の3頁、13〜16行;同4頁3〜5行を、参照のこと。)
従って、遺伝子治療の方法は、インビボでのタンパク質の産生のために生物内へ治療遺伝子を送達するために、適用されている。しかし、遺伝子治療の現実は未だ遠く、そして処置形態としての遺伝子治療は、未だ達成されていない。核酸の遺伝子治療送達の例としては、以下が挙げられる:
「Viral Vectors to Inhibit Leukocyte Infiltration or Cartilage Degradation of Joints」と題された米国特許第6,228,356号(the University of Pittsburgh of the Commonwealth System of Higher Educationに対し、2001年5月8日に発行)は、とりわけ、「哺乳動物の関節における白血球浸潤または軟骨分解を阻害するための方法であって、この方法は、プロモーターに作動可能に連結する、関節においてIL−1の作用を相殺するタンパク質をコードする核酸配列を含むウイルスベクターを、上述の関節に直接投与する工程であって、ここで、上述の関節内での上述のタンパク質の発現は、上述の関節において白血球浸潤または軟骨分解の阻害をもたらす工程を、包含する、方法」(請求項1)に、関する。IL−1の作用を相殺するタンパク質は、例えば、インターロイキン−1レセプターアンタゴニストタンパク質(IRAP)(請求項2)、可溶インターロイキン−1レセプター(請求項3)、可溶TNFレセプター(請求項4)、またはインターロイキン−10(請求項5)である。結合組織の病理学の研究のための動物モデルを産生する方法であって、ここでこの方法は、「サイトカインおよびプロテイナーゼからなる群から選択される物質の遺伝子としての使用を含み」、ここでこのプロテイナーゼは、マトリックスメタロプロテイナーゼを使用し、そしてマトリックスメタロプロテイナーゼは、「コラゲナーゼ、ゼラチナーゼ、およびストロメライシンからなる群から選択される」(14欄、36行〜15欄、1行)方法が、さらに開示される。この明細書は、「産物をコードする少なくとも1つの遺伝子を、哺乳動物宿主の結合組織の少なくとも1つの細胞内に導入する」(要約書)ために提供されるが、1度に1つより多い遺伝子を送達するための、明白な特定の戦略は、存在しない。これに関連して、「IRAP gene as treatment for arthritis」と題された米国特許第5,858,355号(1999年1月12日発行)は、インビトロで滑液細胞をトランスフェクトすることおよび感染された滑液細胞を、関節内注射によって関節結合部分に移植し、軟骨破壊の軽減または滑膜炎の軽減を生じさせることを、開示する。
【0015】
2000年1月25日に発行された、University of Alabama Research Foundation and Southern Research Instituteに対する米国特許第6,017,896号(表題「Purine Nucleoside Phosphorylase Gene Therapy for Human Malignancy」)は、とりわけ、「(a)アデノシンを切断し得るプリン切断酵素をコードする核酸により哺乳動物細胞をトランスフェクトまたは形質導入することにより、そして(b)トランスフェクトまたは形質導入された細胞とプリン切断酵素に対する有効量の基質とを接触させること」によって、「トランスフェクトまたは形質導入された哺乳動物細胞および周辺細胞を殺傷、複製、または非複製化する方法」に関し、「ここで、この基質は、哺乳動物細胞に対して実質的に非毒性であり、かつ酵素によって切断されてトランスフェクトまたは形質導入された哺乳動物細胞および周辺細胞に対して毒性であるプリンを得、酵素を発現する哺乳動物細胞および周辺細胞を殺傷する」(請求項1)。
【0016】
2000年6月27日に発行された、Hoechst Aktiengeselschaft AGに対する米国特許第6,080,575号(表題「Nucleic Acid Construct for Expressing Active Substances which can be Activated by Proteases,and Preparation and Use」)は、とりわけ、「核酸構築物」に関し、これは、「哺乳動物細胞から放出される酵素によって活性化され、この構築物は、以下の成分を含む:a)少なくとも1つのプロモーターエレメント、b)活性な化合物(タンパク質B)をコードする少なくとも1つのDNA配列、c)アミノ酸配列(部分構造C)をコードする少なくとも1つのDNA配列(これは、哺乳動物細胞により放出される酵素により特異的に切断され得る)、およびd)ペプチドまたはタンパク質(部分構造D)をコードする少なくとも1つのDNA配列であり、このペプチドまたはタンパク質(部分構造D)は、切断可能なアミノ酸配列(部分構造C)によって活性化合物(タンパク質B)に結合され、そして活性化合物の活性を阻害する・・・」(要約)。
【0017】
2000年11月14日に発行された、Vical Incorporatedに対して発行された米国特許第6,147,055号(表題「Cancer Treatment Method Utilizing Plasmids Suitable for IL−2 Expression」)は、とりわけ、「ヒト患者における癌を処置するための方法であって、カチオン性脂質により処方されたDNAプラスミドを該患者の腫瘍にインビボで直接投与する工程を包含し;ここで、該プラスミドは、(1)成熟ヒトインターロイキン2(IL−2)ポリペプチドをコードする第1のポリヌクレオチド;(2)該第1のポリヌクレオチドに作動可能に連結されたペプチドリーダーをコードする第2のポリヌクレオチドであって、ここで、該ペプチドリーダーは、該IL−2の分泌を指向する、第2のポリヌクレオチド;(3)該第1および第2のポリヌクレオチドと作動可能に会合するプロモーター・・・」(請求項1)に関する。
【0018】
外来遺伝子はまた、植物に導入されそして発現される。例えば、1999年8月17日に発行された、University of South Carolinaに対する米国特許第5,939,541号(表題「Method for Enhancing Expression of a Foreign Gene or Endogenous Gene Product in Plants」)は、とりわけ「ブースター配列であって、P1(ヘルパー成分プロテイナーゼ(HC−Pro)およびP3の一部についてのコード領域を含み、それにより、該ブースター配列は、植物細胞、植物原形質体、または植物全体に対するpotyウイルスのゲノムのHC−Proカルボキシ末端の自己タンパク質分解プロセッシングに必要なタンパク質切断部位をコードする領域を含み、それにより、該外来遺伝子または内因性植物遺伝子の発現が、該ブースター配列がない該植物細胞、植物原形質体、または植物全体における発現と比較して増強される、ブースター配列」(請求項1)の提供に関する。
【0019】
1996年2月13日に発行された、Texas A & M University Systemに対する米国特許第5,491,076号(表題「Expression of Foreign Genes Using a Replicating Polyprotein Producing Virus Vector」)は、とりわけ、「ポリタンパク質産生植物ウイルスに感受性の植物において異種タンパク質を発現するように適合された発現ベクター。このベクターは、ウイルスポリタンパク質プロテアーゼがウイルスポリタンパク質由来の異種タンパク質を切断する特有の能力を利用する」(要約)ことに関する。注記すべきは、このベクターが、cDNAを含み、「該cDNAが、ポリタンパク質産生Tobacco Etch Virusの複製可能なゲノムをコードする配列を含む」(請求項1および2)。
【0020】
Zeneca Limitedによって出願され、2000年3月2日に公開されたWO00/11175A1(表題「Genetic Method for the Expression of Polyproteins in Plants」)は、とりわけ、「トランスジェニック植物における1つ以上のタンパク質を発現するか、または発現レベルを向上させる方法であって、該方法が、該植物のゲノムにDNA配列を挿入する工程を包含し、該DNA配列は、2つ以上のタンパク質コード領域に作動可能に連結されたプロモーター領域および3’−終止領域を含み、ここで、該タンパク質コード領域は、リンカープロペプチドをコードするDNA配列により互いに分離され、該プロペプチドは、切断部位を提供し、これにより、発現されたポリタンパク質が、成分タンパク質分子へと翻訳後にプロセッシングされる、方法。特に、シグナル配列がまた、翻訳後プロセシングが植物の分泌経路において実行されるように含まれる。この方法に使用するための適切なリンカー配列およびDNA構築物もまた、記載される」(要約)ことに関する。
【0021】
Wisconsin Alumni Research Foundationにより出願され、1999年6月15日に発行された、米国特許第5,912,167号(表題「Autocatalytic Cleavage Site and Use Thereof in a Protein Expression Vector」)は、とりわけ、「ピコルナウイルスに見出される自己触媒性切断部位を使用して、組換えペプチドまたはタンパク質を有効に発現する方法」に関し、「自己触媒性ペプチド切断部位をコードする核酸配列の少なくとも2つのコピーを含む核酸構築物」もまた開示され、ここで、この部位は、特定のアミノ酸配列を含み、そして、「ここで、この構築物は、複製コンピテントピコルナウイルス配列の部分であり、そしてここで、このコピーは、天然に存在する自己触媒性切断部位の部位に位置する」(請求項1)。請求項1に従属する請求項4は、「自己触媒性部位をコードする核酸配列の2つのコピー間にあるポリリンカー」を記載する。請求項5に従属する請求項6(これは、請求項4に従属する)は、「自己触媒性切断部位によって分離される異種タンパク質を含むポリタンパク質」を含むための核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を記載する。別の従属項において、請求項1に記載のベクターは、Mengoウイルスである(請求項7)。
【0022】
2001年4月24日に発行された、Washington Universityに対する米国特許第6,221,355号(表題「Anti−pathogen System and Methods of Use Thereof」)は、「形質導入ドメインおよび細胞傷害性ドメインを含む1つ以上の融合タンパク質」の使用に関する。「この細胞傷害性ドメインは、病原体感染によって特に活性化される。抗病原系は、1つの病原または異なる病原の組み合わせによって感染された細胞を有効に殺傷または傷害させる。」(要約)
WO 98/13059(Bristol−Myers Squibb Co.によって出願された、表題「Hydrolyzable Prodrugs for Delivery of Anticancer Drugs to Metastatic Cells」)は、転移性細胞の細胞膜中に位置するプロテアーゼによって活性化され、転移細胞によって取り込まれ得る活性抗癌薬物を生産する加水分解性プロドラッグに関する。一般に、本発明に従う加水分解性プロドラッグは、立体障害の発生を予防するのに十分な長さの自己犠牲的なスペーサーを介して治療薬物に共有結合された転移細胞の表面上に位置されるペプチドヒドロラーゼの基質であるアミノ末端キャップペプチドを含む。治療薬物は、代表的に抗癌薬物である。抗癌薬物は、ドキソルビシン、タキソール、カンプトセシン、マイトマイシンCまたはエスペラマイシン(esperamycin)である。代表的に、加水分解性プロドラッグの基質を加水分解するペプチドヒドロラーゼは、カテプシンBである(要約)。
【0023】
US 6,251,392(2001年6月26日にEpicyte Pharmaceuticals, Inc.対して発行された、表題「Epithelial Cell Targeting Agent」)は、「非分極上皮細胞へ生物学的因子を送達する際の使用のための」標的分子に関し、送達の際、「生物学的因子は、上皮細胞に死をもたらす。標的分子は、例えば、転移性上皮細胞の根絶のために使用され得る」(要約)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
多くの疾患または障害は、1つ以上の遺伝子産物のその存在または欠損に関連する。従って、1つ以上の遺伝子産物の存在または欠損を指向するための1つの活性成分を有する医薬の投与は、非常に効果的に疾患または状態を制御することは十分でないかも知れない。さらに、医薬の半減期を延長し得る場合、1日に数回よりも少ない回数で、多くの理由(便利さ、費用および安全性を含む)による好ましいレジメンで医薬を投与することが可能であり得る。さらに、所定の医薬の容量が減少し得、従って、医薬が作用を必要とする位置により効果的に送達され得る場合、その副作用が減少することが所望される。さらに、処置される宿主への送達のための90%を超える純度の分子の精製に関連する高い費用を用いることなく、費用効果がある活性分子の送達方法が存在することが所望される。従って、処置される宿主中の所望の部位への1つ以上の活性分子のより効果的でかつ効率的な送達のまだ対処されていない必要性が存在する。
【0025】
低分子(例えば、組換え低分子ペプチド)の生産のための、このようなペプチドを生産する宿手中で分解されない発現系の必要性の認識がさらに存在する。
【課題を解決するための手段】
【0026】
(発明の要旨)
上記のような当該分野で、まだ対処されていない必要性に指向することが、本発明の
1つの目的である。
【0027】
診断、治療、予防または栄養目的のために、複数細胞宿主(「処置される宿主」)に複数の成分分子を1度に送達するための方法を提供することが、本発明のさらなる1つの目的である。
【0028】
処置される宿主中で通常分解される分子を、処置される分子に送達するための方法を提供することが、本発明の別の1つの目的でもある。
【0029】
処置される宿主中の作用部位に分子を送達し、分子の効果を最大にし、そして副作用を最小にすることが、本発明のなお別の1つの目的である。
【0030】
1つの目的に従って、複数細胞宿主への複数の成分分子の送達の方法を提供し、この方法は、以下の工程を包含する:(a)キメラ分子を含む組成物を提供する工程;および(b)宿主にキメラ分子を投与し、処置される宿主を生産する工程、ここで、キメラ分子は、少なくとも1つの第1の成分分子、少なくとも1つのリンカーおよび少なくとも1つの第2の成分分子を含み;リンカーは、酵素切断部位を含み、そして少なくとも第1のリンカーは、第1の成分分子および第2の成分分子に作動可能に連結され、第1の成分分子と第2の成分分子との間の非天然の連結および切断部位を生じ;切断部位は、宿主酵素によってインビボで切断されるために操作され、そして任意の生産宿主中での切断に耐性であり;切断部位でのキメラ分子の切断の際、少なくとも1つの成分分子は、機能的活性であり;そして少なくとも1つの第1の成分分子および第2の成分分子は、ペプチド、タンパク質
またはその活性フラグメントからなる群から選択される1つを含む。
【0031】
別の1つの目的に従って、上記の通りの方法を提供し、全身を循環する酵素上に位置する切断部位は、酵素によるインビボでの切断のために操作される。従って、例えば、切断酵素は、消化管、尿生殖路、涙液、唾液などに位置され得る。切断酵素はまた、全身に存在し得る。1つの実施形態において、切断酵素は、宿主の尿生殖路中に存在し、例えば、任意の消化酵素(転移のプロセスに関連するような任意のエンテロペプチダーゼ(例えば、トリプシン、キモトリプシン、エラスターゼ、エンテロキナーゼまたは組織型のプラスミノーゲンアクチベーター)および同様に関連するマトリクスメタロプロテイナーゼ)である。
【0032】
本発明のなお別の1つの目的に従って、上記の通りの方法を提供し、切断部位は、細胞表面以外で、処置される宿主中の細胞外で、インビボでの切断のために操作され、例えば、1つまたは両方の成分分子は、インターフェロン−β以外である。
【0033】
本発明のなお別の1つの目的に従って、上記の通りの方法を提供し、切断部位は、細胞表面で、処置される宿主中で、インビボでの切断のために操作され、例えば、第1の成分分子は、抗体または抗体フラグメント以外である。
【0034】
さらなる1つの目的に従って、上記の通りの方法を提供し、切断部位は、内在性の処置される宿主酵素による切断のために操作される。1つの実施形態において、切断部位は、以下からなる群から選択される内在性宿主酵素による切断のために操作される:凝固因子;ADAMTS 4およびADAMTS 5;Aggreganases 1およびAggreganases 2;トロンビン;プラスミン;相補体因子;ガストリシン;顆粒プロテアーゼ;マトリクスメタロプロテイナーゼ;膜型マトリクスメタロプロテイナーゼ;II型膜貫通セリンプロテアーゼ;ADAM;ネプリリシン;ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーター、組織型プラスミノーゲンアクチベーターおよびカスパーゼ。
【0035】
さらなる1つの目的に従って、上記の通りの方法を提供し、切断部位は、処置される宿主中の酵素による細胞内でのインビボでの切断のために操作され、そして第1の成分分子および第2の成分分子の組み合せは、タンパク質形質導入ドメインおよび細胞傷害性ドメインの組み合せ以外である。
【0036】
本目的のさらに別の1つによると、切断部位が、処置される宿主中の酵素による細胞内インビボ切断のために操作され、この切断部位がウイルス病原体により活性化された切断部位ではない上記の方法が提供される。
【0037】
本目的のさらに別の1つによると、切断部位が、処置される宿主中の酵素による細胞内インビボ切断のために操作され、第2の成分が細胞傷害性分子ではないか、細胞傷害性分子以外である上記の方法が提供される。
【0038】
本目的のさらに別の1つによると、酵素切断部位におけるキメラ分子の切断の際に、成分分子の少なくとも2つが機能的に活性である上記の方法が提供される。
【0039】
本目的のさらに別の1つによると、成分分子の少なくとも1つが、キメラ分子の切断の前に機能的に活性である上記の方法が提供される。
【0040】
一実施形態において、上記の成分分子は、非阻害分子である。別の実施形態において、この成分分子は、非細胞傷害性分子である。特定の実施形態において、第1および第2の成分分子は、同一である。他の実施形態において、第1および第2の成分分子は、異なる。
【0041】
本目的の別の1つによると、キメラ分子が、式:A(xを有する上記の方法が提供され、ここで、Aは、第1の成分分子を表し、xは、リンカーを表し、Bは、第2の成分分子を表し、iおよびnは、各々、正の整数である。
【0042】
本目的の別の1つによると、式が、以下(a)、(b)、(c)、(d)および(e)からなる群から選択される上記の方法が提供される:
(a)A(x);
(b)A(x)(x)(ここで、xおよびxは、同じであっても異なっていてもよく、そしてBおよびBは、同じであっても異なっていてもよく、そしてAは、BおよびBと同じであっても異なっていてもよい);
(c)A(x)(x)(x)(ここで、x、xおよびxは、同じであっても異なっていてもよく、そしてB、BおよびBは、同じであっても異なっていてもよく、そしてAは、B、BおよびBと同じであっても異なっていてもよい);
(d)A(x)(x)(x)(x)(ここで、x、x、xおよびxは、同じであっても異なっていてもよく、そしてB、B、BおよびBは、同じであっても異なっていてもよく、そしてAは、B、B、BおよびBと同じであっても異なっていてもよい);
(e)A(x)(x)(x)(x)(x)(ここで、x、x、x、xおよびxは、同じであっても異なっていてもよく、そしてB、B、B、BおよびBは、同じであっても異なっていてもよく、そしてAは、B、B、B、BおよびBと同じであっても異なっていてもよい)。例えば、Aは、産生宿主において高度に発現されるペプチドまたはポリペプチドであり、その結果、キメラ分子は、成分分子の生成の増加を容易にする。
【0043】
本目的のさらに別の1つによると、第1の成分分子が、ペプチドもしくはタンパク質またはそれらの活性フラグメントであり、少なくとも1つの第2の成分分子が、ペプチド、タンパク質、核酸、糖、合成ポリマー、植物産物、真菌産物、低分子薬物、検出可能な分子、ハプテン、リガンド、抗感染剤(anti−infective)ならびにそれらのアナログおよびフラグメントからなる群から選択される上記の方法が提供される。
【0044】
本目的の1つによると、キメラ分子がポリタンパク質である上記の方法が提供される。
【0045】
本目的のさらに別の1つによると、成分分子の少なくとも1つが、抗原、可溶性レセプター、成長因子、サイトカイン、リンホカイン、ケモカイン、酵素、抗感染剤、プロドラッグ、毒素およびそれらの活性フラグメントからなる群から選択される上記の方法が提供される。
【0046】
本目的のさらに別の1つによると、成分分子の少なくとも1つが、可溶性p75TNFαレセプターFc融合物、ヒト成長ホルモン、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、インターフェロン−α2b、ペグ化(PEG)インターフェロン−α、PEG−アスパラガーゼ(asparagase)、PEG−アダマーゼ(adamase)、抗CO17−1A、ヒルジン、組織型プラスミノーゲン活性化因子、エリスロポイエチン、ヒトDNAase、IL−2、凝固因子IX、IL−11、TNKase、活性化タンパク質C、PDGF、凝固因子VIIa、インシュリン、インターフェロンα−N3、インターフェロンγ1b、インターフェロンαコンセンサス配列、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼおよびそれらの活性フラグメントからなる群から選択される上記の方法が提供される。
【0047】
本牧的の別の1つによると、第1の成分分子が、ペプチド、タンパク質またはそれらの活性フラグメントであり、第2の成分分子が、キメラ化合物である上記の方法が提供される。代替の実施形態において、これらの成分分子の2つ以上または全てが、キメラ化合物(例えば、ホルモンまたは糖または低分子)である。このような例において、これらのキメラ化合物は、従来の技術を使用して、インビトロで本発明のリンカーと連結される。本目的の別の1つによると、成分分子の少なくとも1つが抗体である上記の方法が提供される。一実施形態において、第1の成分分子が、抗体またはその活性フラグメントであり、第2の成分分子が、抗体以外である上記の方法が提供される。別の実施形態において、第2の成分分子は、抗体またはその活性フラグメントであり、第1の成分分子は、抗体以外である。さらに別の実施形態において、第1および第2の成分分子は、各々、抗体またはその活性フラグメントである。
【0048】
本目的の別の1つによると、成分分子の少なくとも1つが、抗微生物性ペプチド、タンパク質、それらのアナログまたは活性フラグメントからなる群から選択される上記の方法が提供される。一実施形態において、成分分子の少なくとも1つは、デフェンシン、リゾチームまたはラクトフェリンである。
【0049】
本発明の別の1つの目的に従って、その成分分子のうちの少なくとも1つが、ペプチド、タンパク質、それらのアナログまたは活性フラグメントからなる群より選択され、これらがヒトまたは非ヒト動物のペプチド、タンパク質、それらのアナログまたは活性フラグメントである、上記の方法がさらに提供される。別の実施形態において、それらは、植物のペプチド、タンパク質、それらのアナログまたは活性フラグメントである。さらなる実施形態において、それらは、魚または微生物のペプチド、タンパク質、それらのアナログまたは活性フラグメントである。
【0050】
なお別の1つの目的に従って、その成分分子のうちの少なくとも2つが、ペプチド、タンパク質、それらのアナログまたは活性フラグメントからなる群より選択される、上記の方法が提供される。
【0051】
さらなる1つの目的に従って、そのペプチドが、IGF−I、EGF、PDGF、ITF、KGF、ラクトフェリン、リゾチーム、フィブリノゲン、α−アンチトリプシン、エリスロポエチン、hGH、tPA、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、コンセンサスインターフェロン、インスリン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、ジフテリアタンパク質、および抗好血性因子からなる群より選択される、上記のペプチドが提供される。
【0052】
別の1つの目的に従って、その成分分子の少なくとも1つがホルモンである、上記方法が提供される。一実施形態において、そのホルモンは、エストロゲン、テストステロン、およびプロゲステロンからなる群より選択される。
【0053】
さらなる1つの目的に従って、その成分分子の少なくとも1つが、細胞傷害性化合物(例えば、タキソールまたはそのアナログもしくは誘導体)、酵素インヒビター(例えば、マトリクスメタロプロテイナーゼインヒビター)、および抗感染剤からなる群より選択される、上記方法が提供される。
【0054】
なお別の1つの目的に従って、成分分子のうちの少なくとも2つが、ラクトフェリン/ラクトフェリン;ラクトフェリン/リゾチーム;リゾチーム/リゾチーム;ラクトフェリン/EGF;EGF/EGF;ラクトフェリン/ITF;ITF/ITF;ITF/EFG;EGF/KGF;KGF/KGF;ITF/KGF;KGF/PDGF;PDGF/PDGF;α−アンチトリプシン/MMPインヒビター;エストロゲン/プロゲステロン;抗体/抗体およびITF/ITF、またはそれらのアナログ、改変体もしくは誘導体からなる群より選択される、上記方法を提供する。
【0055】
1つの目的に従って、キメラ分子がワクチンである、上記の方法が提供される。一実施形態において、そのキメラ分子は、成分分子のうちの1つとしてアジュバントを含む。別の実施形態において、そのワクチンは、病原性微生物の成分を含む。なお別の実施形態において、そのワクチンは、癌ワクチンであり、その成分分子は、癌細胞中で過剰発現される分子である。
【0056】
1つの目的に従って、そのキメラ分子の投与が、診断、予防、治療、および栄養補給からなる群より選択される生物学的効果を達成する、上記方法が提供される。
【0057】
別の1つの目的に従って、そのキメラ分子がさらなるペプチドの少なくともフラグメントをさらに含み、ここでこのポリペプチドが、生成宿主において高度に発現される、上記方法が提供される。
【0058】
別の1つの目的に従って、そのキメラ分子がその生成宿主(例えば、酵母宿主、哺乳動物細胞宿主またはE.coli宿主)からのキメラ分子の分泌を指向するため、またはその生成宿主(例えば、植物宿主またはE.coli宿主)中でのそのキメラ分子の貯蔵を指向するためのリーダー配列をさらに含む、上記方法が提供される。
【0059】
別の1つの目的に従って、そのキメラ分子が標的化分子を含む、上記方法が提供される。例えば、その標的化分子は、そのキメラ分子を、作用させるために処置される宿主中の特異的部位に指向し得る。
【0060】
さらに1つの目的に従って、そのキメラ分子が精製タグをさらに含む、上記方法が提供され、ここでその精製タグは、生成宿主から生成された後に、そのキメラ分子のインビトロ精製を容易にする。
【0061】
別の1つの目的に従って、そのリンカーが2つの切断部位、およびその切断部位の間にスペーサーを含む、上記方法が提供される。
【0062】
なお別の1つの目的に従って、そのキメラ分子が食用生成物の成分である、上記方法が提供される。一実施形態において、その食用生成物は、乳、植物、種子(例えば、穀物種子)、微生物細胞(例えば、酵母または細菌(例えば、Lactobacillus))、ならびにそれらの誘導体および抽出物からなる群より選択される。
【0063】
別の1つの目的に従って、そのキメラ分子は、経口により、非経口により(例えば、静脈内に、皮下に、腹腔内に、経皮的に、心臓内に)または吸入により投与される、上記方法が提供される。
【0064】
1つの目的に従って、そのキメラ分子が核酸分子ではない、上記方法が提供される。
【0065】
1つの目的に従って、第1または第2の成分分子のうちの少なくとも1つが抗体またはその活性フラグメントであり、その抗体が抗IL8、抗CD11a、抗ICAM−3、抗CD80、抗CD2、抗CD3、抗補体C5、抗TNFα、抗CD4、抗α4β7、抗CD40L(リガンド)、抗VLA4、抗CD64、抗IL5、抗IL4、抗IgE、抗CD23、抗CD147、抗CD25、抗β2インテグリン、抗CD18、抗TGFβ2、抗第VII因子、抗IIIIレセプター、抗PDGFβR、抗Fプロテイン(RSV由来)、抗gp120(HIV由来)、抗HepB、抗CMV、抗CD14、抗VEFG、抗CA125(卵巣癌)、抗17−1A(結腸直腸細胞表面抗原)、抗抗イディオタイプGD3エピトープ、抗EGFR、抗HER2/neu;抗αVβ3インテグリン、抗CD52、抗CD33、抗CD20、抗CD22、抗HLA、および抗HLA DRまたはこれらの活性フラグメントからなる群より選択される、上記方法が提供される。
【0066】
別の1つの目的に従って、その組成物が薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤をさらに含む、上記方法が提供される。
【0067】
本発明の別の1つの目的に従って、キメラ分子を含む組成物、およびパッケージ挿入物を含むキットが提供され、ここでそのパッケージ挿入物は、組成物をヒトまたは非ヒトの処置される宿主へ投与するための指示書を含み、そのキメラ分子は、少なくとも1つの第1の成分分子、少なくとも1つのリンカー、および少なくとも1つの第2の成分分子を含み、ここでそのリンカーは、酵素切断部位を含み、少なくとも1つの第1のリンカーは、第1の成分分子および天然に存在しない結合を生成する第2の成分分子およびこの第1の成分分子と第2の成分分子との間の切断部位に作動可能に連結される;ここでその切断部位は、処置される宿主の酵素によってインビトロでの切断のために操作され、いずれの生成宿主における切断にも耐性である;ここでその切断部位でのキメラ分子の切断の際に、その成分分子のうちの少なくとも1つは、機能的に活性であり;その第1および第2の成分分子のうちの少なくとも1つは、ペプチド、タンパク質、またはそれらのアナログ、活性フラグメントもしくは誘導体からなる群より選択されるものを含む。
【0068】
さらに1つの目的に従って、そのキメラ分子中に切断部位がインビボ(例えば、処置される宿主の胃腸管)での酵素による切断のために操作され、その酵素は、例えば、エンテロキナーゼである、上記キットが提供される。
【0069】
別の1つの目的に従って、そのキメラ分子中の切断部位は、インビボでの、細胞外での(細胞表面または細胞表面以外のいずれかでの)切断のために操作される、上記キットが提供される。
【0070】
なお別の1つの目的に従って、そのキメラ分子中の切断部位が処置される宿主における細胞内での(例えば、内因性の宿主酵素)切断のために操作される、上記キットが提供される。一実施形態において、そのキメラ分子は、タンパク質形質導入ドメインおよび細胞傷害性ドメインの組み合わせではない。
【0071】
なお別の1つの目的に従って、そのキメラ分子中の切断部位が処置される宿主におけるインビボでの細胞内の切断のために操作され、その切断部位がウイルス病原体活性化切断部位ではない、上記キットが提供される。
【0072】
別の1つの目的に従って、その切断部位が処置される宿主においてインビボでの細胞内の切断のために操作され、第2の成分分子が細胞傷害性分子以外である、上記キットが提供される。
【0073】
本発明のなお別の1つの目的に従って、式:A(xを含むキメラ分子が提供され、ここでAは、第1の成分分子を示し、xは、リンカーを示し、Bは、第2の成分分子を示し、iおよびnは、各々正数であり、そしてここでキメラ分子は、少なくとも1つの第1の成分分子、少なくとも1つのリンカー、および少なくとも1つの第2の成分分子を含み;リンカー分子は、酵素切断部位を含み、少なくとも1つの第1のリンカーは、第1の成分分子および第2の成分分子に作動可能に連結されて、第1の成分分子と第2の成分分子との間に、天然に存在しない結合および切断部位を生成する;その切断部位は、宿主酵素によるインビボでの切断のために操作され、生成宿主における切断に感受性でない;ここでその切断部位でのキメラ分子の切断の際に、少なくとも1つの成分分子は、機能的に活性であり;そして第1の成分分子および第2の成分分子のうちの少なくとも1つは、ペプチド、タンパク質、またはそのアナログもしくは活性フラグメントもしくは誘導体からなる群より選択されるものを含む。
【0074】
なお別の1つの目的に従って、上記式が、以下:
(a)A(x);
(b)A(x)(x)(ここでxおよびxは、同じであっても異なっていてもよく、BおよびBは、同じであっても異なっていてもよい);
(c)A(x)(x)(x)(ここでx、xおよびxは、各々同じであっても異なっていてもよく、B、BおよびBは、各々同じであっても異なっていてもよい);
(d)A(x)(x)(x)(x)(ここでx、x、xおよびxは、各々同じであっても異なっていてもよく、B、B、BおよびBは、各々同じであっても異なっていてもよい);ならびに
(e)A(x)(x)(x)(x)(x)(ここでx、x、x、xおよびxは、各々同じであっても異なっていてもよく、B、B、B、BおよびBは、各々同じであっても異なっていてもよい)、
からなる群より選択される上記のキメラ分子が提供される。
【0075】
別の1つの目的に従って、そのキメラ分子がポリタンパク質である、上記キメラ分子が提供される。
【0076】
さらに1つの目的に従って、上記のキメラ分子をコードする核酸分子が提供される。本発明のさらなる局面において、そのキメラ分子をコードする核酸分子を含むベクターが提供される。
【0077】
上記の核酸分子を含む宿主細胞がさらに提供される。
【0078】
本発明のさらに別の1つの目的に従って、処置される宿主に投与するための、生成宿主中でキメラ分子を調製する方法が提供され、この方法は、(a)キメラ分子をコードする核酸を提供する工程;(b)生成宿主をその核酸で形質転換する工程;(c)その生成宿主のキメラ分子を生成させる工程;(d)そのキメラ分子をその生成宿主から回収する工程;ならびに(e)その採取したキメラ分子に対する品質管理を行って、処置される宿主に対する投与のための当局の承認を満たす工程、を包含する。
【0079】
別の1つの目的に従って、その生成宿主が細菌細胞(E.coliを含む);真菌細胞(酵母またはAspergillusを含む);植物細胞;植物種子(穀物(例えば、コメ、コムギ、ライ麦、オート麦、およびオオムギ)を含む);哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞);昆虫細胞(例えば、SF9細胞);植物(例えば、タバコ植物);および動物(例えば、トランスジェニックウシ、ヤギ、ヒツジまたはブタ)からなる群より選択される、上記キメラ分子の調製の方法が提供される。
【0080】
なお別の1つの目的に従って、処置される宿主に投与するための、上記のキメラ分子および薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物が提供される。
【0081】
別の1つの目的に従って、その切断部位が、例えば、その酵素がエンテロキナーゼの場合、処置される宿主の胃腸管での処置される宿主の酵素による切断のために操作される、上記組成物が提供される。別の実施形態において、その切断部位は、炎症部位における(例えば、滑膜における)、または腫瘍部位における(例えば、胃癌)切断のために操作される。
【0082】
別の1つの目的に従って、その組成物がカプセル化される、上記方法が提供される。
【0083】
特に、本発明は、先行技術において開示される方法でもなく、組成物でもないが、このようなものの改善または改変であり得る。
【0084】
本発明の他の目的、特徴および利点は、本明細書中の説明を読めば、当業者に明らかになる。このような他の目的、特徴および利点は、本発明の一部と見なされる。
【0085】
(発明の詳細な説明)
本明細書中の技術用語は、これらの用語が当該分野で従来使用されているように理解されるべきである。この点に関して、使用され得る専門辞書としては、以下が挙げられる:Lewin,Genes V(Oxford University Pressにより発行,1994(ISBN 0−19−854287−9));Kendrewら(編),The Encyclopedia of Molecular Biology(Blackwell Science Ltd.により発行,1994(ISBN 0−632−02182−9));およびRobert A.Meyers(編),Molecular Biology and Biotechnology:a Comprehensive Desk Reference(VCH Publishers,Inc.により発行,1995(ISBN 1−56081−8))。さらに、生物工学の用語の定義は、ウェブサイト(例えば、http://biotechterms.org)を介してアクセスされ得る。本発明のよりよい理解のために、以下の用語は、以下の特定の意味を有するものとする:
用語「活性フラグメント」または「生物学的に活性なフラグメント」とは、生物学的活性を有するかまたはこのような活性に関与する能力を有する分子(例えば、タンパク質、核酸分子、または抗体)の一部を意味し、これらのフラグメントとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:例えば、診断目的で、別の分子に特異的に結合する能力(例えば、抗体/抗原反応またはDNA/DNAハイブリダイゼーションもしくはDNA/RNAハイブリダイゼーションにおいて)、酵素活性を有する、酵素認識部位を有する、酵素基質として作用し得る、抗原または免疫原として作用する能力、リガンドまたはレセプターと相互作用する能力、ならびに他の生物学的に活性な分子を阻害する能力。このようなフラグメントは、天然に存在する核酸、ポリペプチド、または抗体の活性に類似であるが、必ずしも同一ではない活性を示し得る。本明細書中のフラグメントの生物学的活性は、改善された所望の活性または減少された所望でない活性を含む。抗体の活性なフラグメントの例は、例えば、免疫グロブリンのFフラグメントもしくはFabフラグメント、または免疫グロブリンの重鎖の可変領域もしくは軽鎖の可変領域である。
【0086】
用語「アナログ」とは、比較される分子に対して少なくとも約70%の配列相同性を有する分子を意味する。分子とその対応するアナログとの間の差異としては、例えば、以下が挙げられるが、これらに限定されない:保存的アミノ酸変化またはその対応するコドン変化;例えば、1つ以上のジスルフィド結合部位を排除するための、1以上のアミノ酸残基またはその対応するコドンの欠失;例えば、細菌発現を補助するための、メチオニンのようなアミノ酸またはそのコドンの付加;その化学的分子の結合に影響を及ぼさない化学分子の側鎖における保存的変化(例えば、メチル基からエチル基、プロピル基またはブチル基への変化);あるいはこのような他の類似の例。
【0087】
用語「抗体」とは、ヒトまたは非ヒト動物において天然に見出されるかまたは誘導される抗体、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、単鎖抗体、およびそれらのフラグメント(例えば、免疫グロブリンのFabフラグメントまたはFフラグメント、または重鎖もしくは軽鎖の可変領域)をいう。
【0088】
用語「抗感染剤」は、細胞増殖抑制性または細胞殺傷性のいずれかの活性を有し、直接的な細胞増殖抑制効果または細胞殺傷効果を有する分子の生成を誘導することによって、直接的または間接的のいずれかで作用する、抗細菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、および他の抗病原体分子もしくは化合物を含む。抗感染剤の例は、ディフェンシンであるが、これに限定されない。
【0089】
抗体結合の状況において用語「特異的に結合する」とは、抗体の特定のポリペプチドへの、またはより正確には、特定のポリペプチドの特定のエピトープへの、高い結合能および/もしくは高い親和性結合をいう。このような特定のエピトープへの抗体結合は、代表的には、同じ抗体の、任意の他のエピトープまたはこのような特定のエピトープを含まない任意の他のポリペプチドへの結合より強い。このような特定の抗体は、代表的には、特定のポリペプチドを動物に注射して、このような抗体の生成を誘発することによって生成される。このような特異的抗体は、1週間で、検出可能なレベル(例えば、特定のポリペプチドに対して示される結合の10%未満)ではあるが、他のポリペプチドに結合し得る。このような弱い結合は、例えば、適切なコントロールの使用によって、特異的抗体結合から容易に認識可能である。一般に、本発明の抗体は、10−7M以上、好ましくは、10−8M以上(例えば、10−9M、10−10M、10−11Mなど)の結合親和性で、特定のポリペプチドに特異的に結合する。
【0090】
分子に関連する用語「生物学的活性」としては、以下が挙げられる:分子が検出される能力、従って診断活性;分子がワクチンまたはアジュバントとして作用する能力、従って、予防活性;分子が疾患または状態を処置するための治療剤として作用する能力、従って、治療活性;その分子が微生物(例えば、細菌、ウイルス、真菌、プリオン、寄生生物など)の成長または増殖を阻害する能力、従って、抗感染活性;分子が食品の栄養価を増す能力、従って、栄養活性;およびその分子が、他の生物学的反応(例えば、酵素反応;免疫学的(例えば、抗体−抗原結合)結合活性、リガンド−レセプター結合活性)に、またはシグナル伝達反応に関与する能力、ならびにこのような類似の活性。
【0091】
用語「生物学的効果」とは、例えば、診断効果、予防効果、治療効果、抗感染効果、栄養補給効果、および従来から理解されているような他の生物学的効果を含む、任意の生物学的活性の結果をいう。
【0092】
用語「内因性の処置される宿主の分子」または「内因性の処置される宿主の酵素」とは、処置される宿主のゲノムによってコードされる分子または酵素をいう。
【0093】
「発現カセット」は、組換えまたは合成で生成される核酸構築物であり、宿主発現系において1つ以上の組換えポリペプチドを生成するために転写または翻訳され得る一連の特異的な核酸エレメントを含む。この発現カセットは、プラスミドまたはウイルスベクター内に組み込まれて、例えば、発現ベクターを形成し得、または宿主染色体、ミトコンドリアDNA、プラスミドDNA、ウイルスまたは核酸フラグメント中に、例えば、粒子衝撃(particle bombardment)によって統合され得る。代表的には、発現カセットは、とりわけ、プロモーター、転写開始、翻訳開始、目的の異種遺伝子、翻訳ターミネーターおよび転写ターミネーターを含む。必要に応じて、発現カセットは、1つ以上の選択マーカーを含み得る。
【0094】
「発現ベクター」は、宿主細胞中の異種DNAまたは異種RNAの発現のための発現カセットを含み、またはその使用に適切なベクターをいう。多くの原核生物発現ベクターおよび真核生物発現ベクターは、市販されている。適切な発現ベクターの選択は、当業者の知識内である。必要に応じて、発現ベクターは、発現ベクターを含む宿主細胞の選択のための1つ以上の選択マーカーを含み得る。
【0095】
用語「細胞外の」は、本発明のキメラ分子の切断に関する場合、例えば、胃腸官中で、血液中で、リンパ液中で、腹膜液中で、間質液中で、髄液中で、滑液中で、膣液中で、または肺液中でおよびこのような類似の空間でのような処置される宿主の細胞の外側のキメラ分子の切断をいう。
【0096】
用語「細胞内の」は、本発明のキメラ分子の切断に関する場合、処置される宿主中の細胞内のキメラ分子の切断をいう。
【0097】
食用に適する産物に関して、用語「微生物細胞」は、ヒトまたは動物の消費のために認可されている酵母やLactobacillusのような微生物を含む。
【0098】
用語「微生物タンパク質」は、微生物から得られるタンパク質から誘導されるか、またはそれらのタンパク質に実質的に同一なタンパク質を意味する。この微生物としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:細菌、ウイルス、真菌、プリオン、他の単細胞生物、寄生生物、およびこのようなアナログ。
【0099】
用語「分子」は、天然に存在するかまたは合成により作製される任意の化合物またはその塩を含み、そしてペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、糖タンパク質を含むタンパク質、DNAまたはRNAのいずれかの核酸、炭水化物、植物産物のような天然の産物、合成ポリマーおよびフラグメントを含む他のポリマー、ホルモン、タキソールのような化学化合物、そのアナログまたは誘導体、その組み合わせならびにアナログを含む。
【0100】
用語「天然に存在する」は、人間の手の介入の結果ではない形態において天然に存在する任意の分子をいう。
【0101】
用語「作動可能に結合する」は、キメラ分子中の成分分子と切断部位との間の結合を参考として用いられる場合、成分分子が、例えば、切断部位にてキメラ分子の切断のときに、構成成分分子が1つ以上の生物学的活性を示し得るような様式で結合されることを意味する。
【0102】
用語「薬学的に受容可能なキャリア」は、本明細書中で用いられる場合、キメラ分子またはキメラ分子を含む組成物の送達の様式について適切であるキャリアを意味する。例えば、非経口投与のために、受容可能なキャリアが生理食塩水であり得;経口投与のために、受容可能なキャリアが米、ミルクおよび野菜などのようなキメラ分子を含むように遺伝的に設計される食物産物であり得、ここで食物産物は、処理されるかまたは、抽出され得る。薬学的に受容可能なキャリアは一般に、無毒の固体、半固体もしくは液体フィルター、希釈液、カプセル化物質または任意の従来の型の処方補助物である。これは、使用される投薬量および濃度にてレシピエントに無毒であり、処方の他の成分と適合可能である。例えば、ポリペプチドを含む処方のためのキャリアは、好ましくは酸化剤およびポリペプチドの半減期または保存期間に有害であることが公知である他の化合物を含まない。適切なキャリアとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:水、デキストロース、グリセロール、生理食塩水、エタノール、およびこれらの組み合わせ。キャリアは、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝化剤、または処方の効力を高めるアジュバンドのようなさらなる薬剤を含み得る。抗酸化剤、湿潤剤、粘度安定化剤、および類似の薬剤のような他の物質が、必要ならば加えられ得る。Azoneのような経皮浸透エンハンサーがまた、含まれ得る。本明細書中で経口投与のための組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、ピル、カプセル、徐放処方物または粉末を形成し得る。
【0103】
本明細書中で使用するのに適切な用語「薬学的に受容可能な塩」は、酸付加塩(ポリペプチドの遊離アミノ基と共に形成される)ならびに無機酸(例えば、塩酸またはリン酸のような)または有機酸(酢酸、マンデル酸、蓚酸および酒石酸)と共に形成されるものを含む。遊離カルボキシル基を用いて形成される塩は、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または水酸化鉄(III)のような無機の塩基およびイソプロピルアミン、トリメチルアミンなどのような有機の塩基から誘導され得る。
【0104】
食用可能な産物に関する用語「植物」は、野菜および穀物(grain)(例えば、穀物(cereal grain)、代表的には、米、小麦、大麦、トウモロコシ、キビ、モロコシおよびカラスムギのような)を含む。
【0105】
用語「ポリペプチド」は、グリコシル化を経るような、「産生宿主」によって翻訳後にさらに修飾されていてもいなくても良く、またはポリエチレングリコールを含むような合成ポリマーの化学的付加によりインビトロで修飾されていてもいなくても良い、アミノ酸のポリマーである「分子」である。用語「ポリペプチド」および「ポリペプチド組成物」は、ペプチド、オリゴペプチド、タンパク質、アナログ、および活性フラグメントまたはその誘導体をいうために使用される。
【0106】
用語「産生宿主」は、本発明のキメラ分子を産生するための宿主系をいう。このような宿主系は、キメラ分子およびその所産(progeny)をコードする任意の組換えベクター(単数または複数)、プラスミド、または単離されたポリヌクレオチドのレシピエントであり得、またはそうであった、インビボまたはインビトロのどちらでもよい宿主細胞を含む。
【0107】
用語「タンパク質」は、用語「ポリペプチド」の同義語であり得、または、さらに、2つ以上のポリペプチドの複合体をいい得、一次構造、二次構造または三次構造であり得る。
【0108】
用語「標的酵素」は、本発明のキメラ分子の切断部位がこのために設計されている酵素をいう。例えば、本明細書中のキメラ分子がエンテロキナーゼのための切断部位を有して設計されている場合、「エンテロキナーゼ」は、標的酵素である。
【0109】
用語「処置される宿主」は、本発明のキメラ分子の送達が意図され、その結果診断的、予防的、治療的または栄養的効果を含む生物学的効果を生成する宿主を言う。このような処置される宿主としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ヒト、非ヒト動物(例えば、家畜(例えば、ウシ、ブタ、ヤギおよびウマを含む)およびペット(例えばイヌやネコのような);ならびにげっ歯類;非ヒト霊長類;鳥(例えばニワトリ);植物;微生物;寄生生物;および魚のような)。「処置される宿主」とは、2つの宿主(例えば、微生物(本明細書中以後、「標的化された微生物」)に特異的な切断部位を含むキメラ分子が被験体に投与され、微生物が被験体のGI管中を介して通過するような)を含み得る。キメラ分子は、標的微生物によって細胞内で切断され得るか、または被験体の酵素である「処置される宿主」酵素による切断のための標的化微生物によってインタクトに放出され得る。例えば、キメラ分子が、例えば切断において活性化される緑蛍光タンパク質のような検出可能なシグナルを有する場合、緑蛍光タンパク質の存在が、ヒトの消化器官における微生物の存在を指示する。用語「個々の」、「被験体」、「患者」および「処置される宿主」が、本明細書中で交換可能に使用される。
【0110】
本発明がさらに記載される前に、本発明が、当然変わり得るような、記載される特定の実施形態に限定されないことが理解されるべきである。本発明の範囲は添付される特許請求の範囲によってのみ限定されるので、本明細書中で使用される専門用語が、特定の実施形態の記載の目的のみであって、限定が意図されないことが、理解されるべきである。
【0111】
値の範囲が提供される場合、文脈が明らかに他を指示しない限り、その範囲の上限と下限の間の下限の単位の十分の一までの各々の介在値および述べられた範囲における他の全ての述べられた値または介在値が、本発明中に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、より小さい範囲に独立して含まれ得、そしてまた述べられた範囲における任意の特異的に除外される限界を受けて、本発明中に包含される。述べられた範囲が限界の1つまたは両方を含む場合、これらの限界のいずれかまたは両方を除外する範囲はまた、本発明中に含まれる。
【0112】
本明細書中および添付の特許請求の範囲中で使用されるように、「a」、「an」、「the」、「ポリペプチド」、「ポリヌクレオチド」、「キメラ分子」および「分子」のような用語の単数形が、文脈が明らかに他を指示または規定しない限り、対応する複数形を含む。例えば、「ポリペプチド(a polypeptide)」への言及は、複数形のポリペプチド(polypeptides)を含み、「薬剤(an agent)」への言及は、1つ以上の薬剤(agents)を含む。
【0113】
本明細書中で考察される出版物は、本願の出願日の前の開示のためのみに提供される。本明細書中で、本発明が以前の発明のためにこのような出版を早めるために表題化されていないという承認として解釈されるべきものはない。さらに、提供される出版日は、別個に確認する必要があり得る実際の出版日と異なり得る。
【0114】
以下に記載される本発明は、例のために与えられ、本発明を限定するような任意の方法において解釈されるべきではない。
【0115】
本明細書中の発明者は、2つ以上の成分分子が、宿主(すなわち、「処置される宿主」)への投与のために、1つ以上の切断部位を含む1つ以上のリンカーの使用によって、有利に組み合わせることで天然に存在しないキメラ分子を形成し得、ここで成分分子は、処置される宿主中に存在する酵素のような切断分子によって放出され得ることを発見した。本明細書中のキメラ分子は、好ましくは、処置される宿主における所望の位置にて構成成分部分に切断可能であるような様式で設計され、切断部位においてまたは近接部位にてのいずれかで生物学的効果を達成する。キメラ分子の切断は、例えば胃腸管(GI)における、滑液中における、または細胞内のような処置される宿主中の実質的に制限された領域において起こり得るか、または血液もしくは他の体液中のように全身的に起こり得る。キメラ分子の切断は、処置される宿主中において機能的である成分分子を放出する。このような成分分子は、キメラ分子の切断の前に活性であってもなくても良い。本発明の1つの実施形態において、キメラ分子における少なくとも1つの成分分子が、ペプチド、ポリペプチドまたはその活性フラグメントである。
【0116】
従って、本発明は、処置される宿主に成分分子を送達し、そこにキメラ分子を投与することによってそこでの生物学的効果を達成する方法を含み、各々のキメラ分子は少なくとも2つの成分分子を含み、その各々は、処置される宿主中の切断分子によって切断のための1つ以上の切断部位を含むリンカーによってもう1つの成分分子と結合される。本発明は、キメラ分子、このような核酸分子を含むベクターおよび宿主細胞などをコードする核酸分子、キメラ分子またはコードする核酸分子を含むキットおよび組成物、ならびにこれらを作製および使用する方法を含む。特に、本発明のキメラ分子は、天然に存在しない。
【0117】
最も単純な構成において、本発明のキメラ分子は、以下の式を有する:「AxB」。ここで「A」は、第1の成分分子であり、「B」は、第2の成分分子であり、「x」は、1つ以上の切断部位を含むリンカーである。しかし、本発明のキメラ分子は、「AxB」に限定されず、以下の式を有するキメラ分子を含む:「A(x」。ここで、「i」および「n」は、各々正の整数であり、「xB」は、第一に繰り返され得る単位である(本明細書中以後、「繰り返し」)。従って、例えば、本発明のキメラ分子は、以下の式を有するキメラ分子を含む:(Ax)または(Ax)(x)。必要に応じて、キメラ分子は、合理的に作製され得、かつ投与され得る(xB)単位の繰り返しの任意の数を含む(Ax)(x)(x)、(Ax)(x)(x)(x)、または(Ax)(x)(x)(x)(x)の式を有し得、ここで各々の「B」は同じでも違っていても良く、さらに「A」と同じでも違っていても良く;そして各々の「x」は、同じでも違っていても良い。いくつかの実施形態において、繰り返しを形成する成分分子Bは、小さい。例えば、分子が、小さなペプチドである場合、この小さなペプチドは、単独で投与される場合、迅速に分解される;例えば、ディフェンシンまたは腸内トレフォイル因子(「ITF」)のような抗感染性のペプチドのようなもの。さらに、キメラ分子における全ての切断部位に対して、同時にまたは完全に切断されることは、必要ではない。1つ以上の成分分子が、キメラ分子から切断され得る一方、他の成分分子は、残るキメラ分子の一部として残っている。1つの例として、本明細書中のキメラ分子は、切断されていない形態または部分的に切断された形態において、細胞外マトリックスのような組織と結合し得、そして成分分子は、その位置における特定の酵素レベルが高い場合、その時々にそこから放出され得る。さらに、成分分子は、このような成分分子の活性部位が他の分子と自由に相互作用する限りは、切断されることなく他のキメラ分子に一部として活性であり得る。
【0118】
本発明は、処置される宿主における所望される位置での切断に対して設計される切断部位を有するキメラ分子を含む。例えば、本明細書中のキメラ分子は、処置される宿主のGI管における酵素によって切断されるように設計され、そこでの活性(例えば、抗感染性活性)のために成分分子を放出し得る。この実施形態の適用が、本発明のキメラ分子を含む動物またはニワトリのえさを提供し、抗生物質を使用することのない抗感染性活性を提供する。この適用はヒトに対しても有用であり、特に乳、乳製品、果物、穀物、肉およびジュースのような乳児食の場合に有用である。このような場合において、キメラ分子は、GI管における1つ以上の酵素についての1つ以上の切断部位(例えば、エントロキナーゼ切断部位のような)を有するリンカーを用いて構築される。エンテロキナーゼ認識部位または切断部位を表すアミノ酸配列は、公知であり、一般に以下のアミノ酸配列によって表される:−Lys−Lys−Lys−Lys−Asp−。エンテロキナーゼ切断部位を有するキメラ分子は、任意の数の適切な宿主発現系(「産生宿主」)において組換え技術を使用して従来の方法において作製され得る。このような1つの例が、「Expression Linkers」と題される米国特許第4,769,326号またはその対応する欧州対応物EP0035384号に記載される。エンテロキナーゼに加えて、GI管におけるキメラ分子の切断のために、他のGI管酵素のための切断部位を含むリンカーが、使用され得る。
【0119】
本発明のキメラ分子のリンカーへの組み込みのために適切な切断部位の型が、図1に例示されるような特定の処置される宿主酵素(本明細書中以後、「標的酵素」)によって切断され得る特定の型を含む。処置される宿主に対して内因性である宿主および感染性病原体によって導入され得る宿主を含む、処置される宿主中に含まれる全てのプロテアーゼと共に開始して、本明細書中の使用のために適切な切断部位は、アミノペプチダーゼおよびカルボキシペプチダーゼに対する基質を除外し、特異的でないものを除外する。しかし、トリプシン、キモトリプシンおよびエラスターゼのようなあまり特異的でないエンドペプチダーゼの、本明細書中での使用が見出される。本発明の1つの実施形態において、切断部位は、エンドペプチダーゼに対する基質である切断部位を含む。本発明の1つの局面において、本明細書中で適切な切断部位は、細胞内酵素に対する基質である切断部位を含む。本発明の別の局面において、切断部位は、細胞外酵素に対する基質である切断部位を含む。本発明のさらなる局面において、切断部位は、細胞表面にて活性である酵素に対する基質である切断部位を含む。特に、標的酵素は、構成的に発現されるか、または誘導性である。これらは全身的にまたは局所的にのいずれかで循環する。
【0120】
本発明はさらに、処置される宿主において細胞内切断のために設計される切断部位を有するキメラ分子を含む。本発明の1つの局面において、切断部位は、処置される宿主に対して内因性である細胞内酵素による切断について設計される。本発明の別の局面において、内因性であるか否かに関わらず、切断部位は、処置される宿主中の細胞内に存在する任意の酵素による切断のために設計されるが、但し、キメラ分子が、形質導入ドメインおよび細胞傷害性ドメインからなる組み合わせでなく、または第2の成分分子が、細胞傷害性分子ではない。本発明の別の局面において、切断部位は、処置される宿主において細胞内での切断について設計され、または操作されるが、但し、切断部位が処置される宿主細胞に感染する病原体由来の病原体活性化切断部位ではない。従って、例えば本発明の切断部位が、酵素について設計され、処置される宿主中に別個に誘導されまたは導入され得る。
【0121】
本発明はまた、上記のような構造を有し、しかし酵素が宿主に対して内因性であるか否かに関わらず、宿主中に構成的に発現されるか、または宿主中で誘導性である処置される宿主中の細胞外での酵素による切断について設計される切断部位を有する、キメラ分子の投与を含む。細胞外切断は、例えば任意の体液中におけるような、宿主中の任意の場所で起こり得る。任意の体液としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:リンパ液、血液、髄液、腹膜液、滑液、膣分泌液および肺液。細胞外切断は、細胞の表面上の切断であり得る。従って、本発明は、処置される宿主中の細胞表面にて酵素による切断について設計される切断部位を有するリンカーを含むキメラ分子を含む。
【0122】
本発明を考慮して、処置される宿主の内側の所望の位置での切断のための本明細書中のキメラ分子における用途のために、適切な酵素切断部位およびそれに対する配列を選択することは、当業者の技術の範囲内である。酵素およびその切断部位に関する情報は、多くのソースから入手可能である。例えば、ウェブサイト(http://us.expasy.or/cgi−bin/enzyme−search−cl)は、酵素分類の定義のリストを示す。例として、分類「3.4.−.−」は、酵素「ペプチド結合に作用する(ペプチド加水分解酵素)」である。分類「3.4.24.−」は、「メタロエンドペプチダーゼ」である。さらに、例えば、「3.4.21.9エンテロペプチダーゼ」へのリンクをクリックすると、この酵素についての詳細な情報を与える次のページを開く。代替的な名前として「エンテロキナーゼ」を提供する。これは、反応が触媒されると、「トリプシノーゲンの−Lys−/−Ile結合の選択的な切断」に特定化する。この酵素に関するMedlineにおける文献への参照を提供する。別の例において、「3.4.21.38第XIIa凝固因子」へのリンクをクリックすると、第XIIa凝固因子についての代替的な名前としてHageman因子を列挙し、そして、反応触媒として「第VII因子のArg−/−Ile結合を選択的に切断し、第VIIa因子および第XI因子を形成し、そして第XIa因子を形成する」と記載する次のページを開く。
【0123】
酵素およびその切断部位についての別の参照源は、AHFS Drug Information(American Society of Health−System Pharmacists,Inc.(7272 Wisconsin Avenue,Bethesda,MD 20814,USA)から毎年出版される)である。例えば、「20:40 Thrombolytic Agents 1477頁」には、血栓溶解剤としてAlteplaseが列挙され、これは、「酵素ヒト組織型プラスミノーゲンアクチベーター(t−PA)の生合成(組換えDNA起源)型」である。さらに、「内因性([e]ndogenous)ヒトt−PAが、いくつかの内因性プロテアーゼ(プラスミン、組織カリクレイン、活性化因子X(因子Xa)およびトリプシンを含む)によって、アルギニン275−イソロイシン276ペプチド結合で切断され、2本鎖誘導体を形成し得る1本鎖ポリペプチドとして分泌される」。
【0124】
さらに、刊行された文献(例えば、政府のウェブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi))を介して入手可能であるものは、本発明のキメラ分子における使用のための酵素および切断部位についての情報の別のソースである。例えば、検索用語として「関節炎」および「プロテアーゼ」と入力すると、件名として2000以上の論文が見出され得る。マトリクスメタロプロテイナーゼ3(「MMP−3」、「ストロメリシン−1」としてもまた公知)が、Aigner,T.ら、Arthritis Rheum.44(12):2777−89(2001年12月)に記載されるように、正常な状態および初期の変形性骨関症の悪化段階において強く発現しており、かつMMP−2およびMMP−11が後期の疾患においてアップレギュレートされていることに直ちに気付き得る。さらに、カテプシンKはまた、潜在的なアグリカン分解活性を有するので、滑膜線維芽細胞において高度に発現していることが見出されており、そして、カテプシンKを生成するアグリカン切断産物は、Hou W.S.ら、Am.J.Pathol.159(6):2167−77(2001年12月)に記載されるように、カテプシンKのコラーゲン溶解活性を特に増強することが見出された。従って、本発明のキメラ分子への取り込みのために適切に処置される宿主酵素切断部位の同定は、当業者の技術範囲内である。
【0125】
さらなる例として、Tortorella,M.D.ら、J.Biol.Chem.275(24):18566−18573(2000年6月16日)は、アグリカンの切断、組換え型ヒトアグリカナーゼ(aggrecanase)−1(「ADAMTS−4」)による、関節疾患における測定可能な損失を経験する第1のマトリクス成分である軟骨の主要なプロテオグリカンを開示する。アグリカナーゼ−1およびアグリカナーゼ−2(「ADAMTS−11/5」)は亜鉛−結合メタロプロテアーゼのアダマリシン(adamalysin)ファミリーのメンバーである。Tortorellaらは、P位のグルタミン酸残基を含有する全ての部位、および、P’位の非極性または無電荷の極性残基(アラニン、ロイシン、またはグリシン)のいくつかの部位で、組換え型ヒトアグリカナーゼ−1がアグリカンを切断すると報告した。最も効率的な切断部位は、分子のG2−G3ドメインにおけるGlu1667−Gly1668結合であった。分子のG1フラグメントはさらに、Glu1480−Gly1481において切断され、Glu373−Ala374での切断はよりゆっくりと生じた。さらに、著者らは、アグリカナーゼ−1およびアグリカナーゼ−2が、Asn341−Phe342部位を切断せず、マトリクスメタロプロテイナーゼ(「MMP」)部位においてもまた切断することなく、アグリカナーゼ−1がアグリカナーゼGlu373−Ala374部位において切断することが示されている、今日までの唯一の酵素であることを報告した。著者らはさらに、他の研究が、2つのプロテアーゼ(MMP−8およびアトロリシン(atrolysin)−C)がアグリカナーゼGlu373−Ala374部位において切断し、また、Asn341−Phe342MMP部位において切断したことを示していると報告した。それ故、関節炎の処置のために滑膜の流体に成分分子を送達するためのリンカーのデザインにおいて、例えば、Glu−Ala配列が、P位にグルタミン酸残基を、かつP’位に非極性残基または無電荷の極性残基(アラニン、ロイシン、またはグリシン)を伴って本発明のリンカーに組み込まれ得るか;または、Glu−Gly配列が用いられ得る。
【0126】
切断部位として本発明のキメラ分子に含まれ得る標的酵素の例は、多数あり、当業者に公知である。いくつかの例が表1で示され、そして、これらとしては以下が含まれるがこれらに限定されない:エンテロキンナーゼ(消化管で活性);第VIIa因子、第IXa因子、第Xa因子、第XIa因子および第XIIa因子のような凝固因子(血液で活性);ADAMTS−4、ADAMTS−5(アグリカナーゼ−1、アグリカナーゼ−2)(関節、心臓、脳、肺で活性);トロンビン(血液で活性);プラスミン(血液で活性);因子D、Clr、C3/C5変換酵素のような補因子(血液で活性);ガストリン(胃で活性);エラスターゼおよびPR−3のような顆粒プロテアーゼ(好中球および白血球で活性、かつ活性形態として分泌される);MMP−2(乳癌および前立腺癌でならびに損傷した肝臓でアップレギュレートされる)、MMP−7(Matrilysin、結腸のようなリンパ腺の上皮で活性、腫瘍でアップレギュレートされる)、MMP−9、MMP−11、MMP−13(MMP−11およびMMP−13は、乳癌においてアップレギュレートされる)のようなマトリクスメタロプロテイナーゼ(「MMP」、その大部分がチモーゲンとして分泌される);MT−1、MT−2、MT−3およびMMP−14、MMP−15、MMP−16、MMP−24のような膜型MMP(細胞表面において活性な膜貫通タンパク質;いくらか減らされるが、転移でアップレギュレートされる);TMPRSS−2、TMPRSS−4およびMatriptaseのようなII型膜貫通型セリンプロテアーゼ(細胞表面において活性で、腫瘍においてアップレギュレートされる膜貫通タンパク質);およそ30のディスインテグリン(disintegrin)のADAMファミリー、ならびにADAM−10、ADAM−17およびTACE(TNF変換酵素)を含むメタロプロテイナーゼ(たいていの組織で発現され;原形質膜において活性);ネプリリシン(neprilysin)(正常な肝臓細胞および腫瘍性の肝臓細胞において発現される;原形質膜において活性)、カテプシンK(滑膜線維芽細胞によって分泌される)、肥満細胞トリプターゼ(喘息で活性化される)ならびに組織型プラスミノーゲンアクチベーター。
【0127】
いくつかの実施形態において、本発明のキメラ分子の切断部位は、プロテアーゼのための基質である切断部位のみではなく、グリコシダーゼおよびへパラナーゼのような他の酵素のための基質である切断部位を含む。
【0128】
別の実施形態において、キメラ分子の中に操作された酵素切断部位は、疾患、ストレス、病原性、アレルギー、早産または老人の状態および処置を必要としている他の状態の下で発現されるか、または高められるために酵素について設計される。
【0129】
本発明のリンカーは、1つまたは1つ以上の酵素切断部位を有する。本明細書中のリンカーは、例えば、切断のためにもっと良く酵素に切断部位を曝露するように、有利にスペーサー分子を含み得る。従って、1つの実施形態において、本発明はもっと良く酵素処置に切断部位を曝露するために、リンカーにスペーサーを含む。このような例において、リンカーは、それ自身の上に折り畳まれる傾向がない一連のランダムなアミノ酸残基であり得る。従って、これらのアミノ酸残基は、例えば親水性アミノ酸分子の鎖であり得る。さらに、スペーサーが使われるとき、本発明は必要に応じてリンカーに別の切断部位の追加を含んでもよく、その結果、スペーサーが切断部位とともに切断され、適切であるかまたは天然のC末端もしくはN末端あるいは適切な活性フラグメントを有する成分分子を生成し得る。
【0130】
リンカーのそれぞれの側の成分分子が切断前に、良好なプロテアーゼアクセス能のために活性である、本発明の1つの局面において、本明細書中のリンカーは、必要に応じて約10〜20個のアミノ酸残基、より好ましくは、約11〜17個のアミノ酸残基(本明細書中以下、「スペーサー」)を含む。例えば、本発明のキメラ分子は、スペーサーが以下のようなアミノ酸配列を含む場合、タンパク質Xとタンパク質Yとの間のスペーサーを含み得る:タンパク質X−ASGGGGIEGRGGGGSA−タンパク質Y(太字かつ下線を付した配列は、第Va因子の切断部位を表し、タンパク質Xおよびタンパク質Yは成分分子である)。従って、成分分子の活性を維持しつつ、切断酵素への切断部位の曝露を確証するために、さらなるアミノ酸が、キメラ分子における酵素切断部位の上流および/または下流に組み込まれ得る。このようなアミノ酸の例は、当該分野で公知であり、例えば、Hosfield,T.およびLu,Q.、「Influence of the Amino Acid Residue Downstream of(Asp)Lys on Enterokinase Cleavage of a Fusion Protein」、Anal.Biochem.269:10〜16(1999)を参照のこと。
【0131】
例えば、成分分子が切断されるまで活性でないことが意図される、本発明の別の局面において、より少ないアミノ酸残基が使用され得る。例えば、キメラ分子は、1アミノ酸配列:タンパク質X−GGRSGG−タンパク質Y(RSはプラスミンについての切断部位を表し、タンパク質Xおよびタンパク質Yは成分分子である)を有し得る。
【0132】
本発明は、第2の成分分子のN末端にある成分分子のC末端を結合することが、リンカー分子の付加を伴わずに、切断の際に融合された成分分子自身が切断部位を生成し得る、まれな事例における実施形態を含む。
【0133】
本発明の1つの実施形態において、切断部位が細胞表面以外の細胞外切断のために設計される場合、キメラ分子はグリコシル化されたインターフェロンβ以外である。
【0134】
本明細書中の成分分子は、宿主における生物学的な効果を達成することが期待され得る任意の分子であり得る。従って本発明は、ペプチド、タンパク質、核酸、炭水化物、他の天然または合成のポリマーである成分分子、低分子の薬物、診断目的のためのような検出可能な分子、ハプテン、リガンド、抗感染剤ならびにこれらのアナログおよび活性フラグメントを含む。
【0135】
本明細書中の成分分子はまた、起源または供給源、ヒトまたは非ヒト、天然または合成のいずれかであり得る。従って、例えば、成分分子はペプチド、タンパク質、十分にヒト、非ヒト動物、植物、魚、昆虫ならびに細菌、ウイルス、真菌および寄生虫を含む微生物から入手可能なそれらとまったく同じのそのアナログあるいは誘導体であり得る。
【0136】
本発明の別の局面において、キメラ分子は多タンパク質であり、少なくとも2つまたは全ての成分分子がペプチドもしくはポリペプチドまたはその活性フラグメント(本明細書中以下、「タンパク質成分」)である。本明細書中における使用に適したタンパク質成分としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:抗体、抗原、レセプター、成長因子、ホルモン、サイトカイン、リンホカイン、ケモカイン、酵素、抗感染剤、プロドラッグ、毒素、栄養増強分子およびこれらの活性フラグメント。
【0137】
(表1.サンプル標的酵素:処置される宿主細胞において、インビボでのキメラ分子の切断に有用なエンドプロテアーゼ)
【0138】
【表1】

本発明のさらなる実施形態において、少なくとも1つの成分分子は、以下からなる群から選択される:可溶性p75TNFαレセプターFc融合物、ヒト成長ホルモン、顆粒球コロニー刺激因子(「GCSF」)、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(「GM−CSF」)、インターフェロン−α2b、ペギル化(pegylated)(「PEG」)インターフェロン−α、PEG−アスパラガース(asparagase)、PEG−アダマーゼ、抗CO17−1A、ヒルジン、組織型プラスミノーゲンアクチベーター、エリスロポイエチン、ヒトDNAase、IL−2、凝固因子IX、IL−11、TNKase、活性化タンパク質C、PDGF、凝固因子VIIa、インシュリン、インターフェロンα−N3、インターフェロンγ1b、インターフェロンαコンセンサス配列、血小板活性化因子アセチル加水分解酵素およびこれらの活性フラグメントまたは誘導体。
【0139】
もう1つの本発明の実施形態において、キメラ分子は成分分子としてペプチド、タンパク質または以下からなる群から選択されるその活性フラグメントを含む:インターロイキン;IGF−I、EGF、FGF、PDGF、ITFおよびKGFを含む成長因子;GM−CSFおよびM−CSFを含むコロニー刺激因子;第VIII因子または第IX因子、tPAを含む凝固因子;hGHを含む成長ホルモン;ラクトフェリンおよびリゾチームを含む抗感染剤;フィブリノゲン;α−アンチトリプシン;エリスロポイエチン;インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγおよびインターフェロンのコンセンサスを含むインターフェロン;インシュリン;ヒト絨毛膜ゴナドトロピン;ジフテリアタンパク質;抗好血性因子;レセプター;ワクチン;抗生物質;またはそのアナログもしくはフラグメント。
【0140】
本発明の好ましい実施形態において、リストがウェブサイト:www.FDA.govにおいて見い出され得る、食糧医薬品局(「FDA」)によって認可された薬物を成分分子として使用することが特に望ましい。例えば、生物製剤の下に認可された生体分子については、2002年のBiological License Application Approvalsの下のリンクは、以下のような分子を列挙する:再発性形態の多発性硬化症を処置するための、インターフェロンβ−1a(商標「Rebif」);ジフテリアおよび破傷風毒素および無細胞の百日咳ワクチン(商標、「Daptacel」);慢性C型肝炎を有する成人の処置のためのペグインターフェロンα−2a(商標「Pegasys」);ならびに、慢性関節リウマチのためのヒト腫瘍壊死因子(「TNF」)に特異的な組換え型ヒトIgG1モノクローナル抗体であるアダリムマブ(adalimumab)(商標「Humira」)。他の認可された生物製剤は、認可の年の下に列挙される。
【0141】
本発明の1つの実施形態において、成分分子のいずれもが抗体ではない。
【0142】
本発明の別の実施形態において、1つまたは2つ以上の成分分子が抗体またはその活性フラグメント(本明細書中以下、「抗体成分」)である。本明細書中の抗体成分は、治療目的、予防目的または診断目的に適している任意のものを含む。好ましい実施形態において、抗体成分は、FDAによって認可された抗体のリストから選択される。このような抗体の例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:抗IL8抗体、抗CD11a抗体、抗ICAM−3抗体、抗CD80抗体、抗CD2抗体、抗CD3抗体、抗補体C5抗体、抗TNFα抗体、抗CD4抗体、抗α4β7抗体、抗CD40L(リガンド)抗体、抗VLA4抗体、抗CD64抗体、抗IL5抗体、抗IL4抗体、抗IgE抗体、抗CD23抗体、抗CD147抗体、抗CD25抗体、抗β2インテグリン抗体、抗CD18抗体、抗TGFβ2抗体、抗第VII因子抗体、抗IIIIレセプター抗体、抗PDGFβR抗体、抗Fタンパク質抗体(RSV由来)、抗gp120抗体(HIV由来)、抗HepB抗体、抗CMV抗体、抗CD14抗体、抗VEFG抗体、抗CA125(卵巣癌)抗体、抗17−lA(結腸直腸細胞表面抗原)抗体、抗イディオタイプGD3エピトープ抗体、抗EGFR抗体、抗HER2/neu抗体;抗αVβ3インテグリン抗体、抗CD52抗体、抗CD33抗体、抗CD20抗体、抗CD22抗体、抗HLA抗体、抗TNF抗体、および抗HLADR抗体。
【0143】
1つの実施形態において、第1の成分分子は抗体またはその活性フラグメントであり、第2の成分分子または他の成分は、抗体または抗体フラグメントでない。さらなる実施形態において、第1の成分分子は抗体または抗体フラグメントでないが、第2の成分分子または他の成分分子は抗体またはそれらのフラグメントである。発明のバリエーションにおいて、キメラ分子のすべての成分分子は、抗体またはその活性フラグメントである。
【0144】
本発明はさらに、1つの実施形態において、少なくとも1つの成分分子が抗細菌性ペプチド、タンパク質、類似体またはその活性フラグメントであるキメラ分子を含む。このような抗細菌性のペプチドは公知であり、例えば、ディフェンシン、リゾチーム、ラクトフェリン、ITF、マガイニンおよび他の天然の抗感染剤が挙げられる。
【0145】
別の実施形態において、本発明は、キメラ分子を含み、ここで、本明細書中に記載されるように、第1の成分分子がペプチド、タンパク質またはその活性フラグメントであり、第2の成分分子は化合物である。本明細書中における使用に適した化合物は、好ましくは、CDERによって認可された薬物の下で、例えば、www.FDA.govで、見い出され得るように、FDAによって認可された薬物である。本発明の1つの局面において、化合物は、ホルモン(例えば、テストステロン、エストロゲン、プロゲステロンまたはそのアナログもしくは誘導体)である。本発明の別の局面において、化合物は毒性化合物(例えば、タキソール、ドキソルビシン、シスプラチンまたはそのアナログもしくは誘導体)である。発明のバリエーションにおいて、化合物はインヒビター(例えば、マトリクスメタロプロテアーゼインヒビター、または化学的な抗感染剤)である。
【0146】
2つの成分分子を含むキメラ分子の例としては、以下の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない:ラクトフェリン/ラクトフェリン;ラクトフェリン/リゾチーム;リゾチーム/リゾチーム;ラクトフェリン/ITF;リゾチーム/ITF;ラクトフェリシン(lactoferricin)/ラクトフェリシン;ITF/ITF;EGF/EFG;EGF/KGF;KGF/KGF;KGF/PDGF;PDGF/PDGF;α−抗トリプシン/MMPインヒビター;エストロゲン/プロゲステロン;抗体/抗体;ならびにこれらのアナログ、改変体および誘導体。
【0147】
キメラ分子の成分分子は、異なった活性を保有し得る。例えば、成分分子がマトリックスメタロプロテイナーゼ(「MMP」)である場合、成分分子は、細胞増殖を変更し、アポトーシスを調節し、細胞移動に影響を及ぼし、細胞間連絡に影響を及ぼし、そして腫瘍の進行に影響を及ぼすように選択され得る。例示として、McCawley,L.J.および Matrisian,L.M.、「Matrix metalloproteinase:they're not just for matrix anymore!」Current Opinion in Cell Biology 13:534〜540の536(2001)において開示される「MMP−7−generated soluble Fas ligand is effective in killing Fas−expressing tumor cells」。代替の実施形態において、本発明のキメラ分子は、MMP活性のインヒビターである成分分子を含み得る。
【0148】
本発明のキメラ分子組成物は、処置される宿主における生物学的効果を達成するために、処置される宿主に投与される。この生物学的効果は、診断効果、予防効果、治療効果、抗感染効果、または栄養上の効果であり得る。
【0149】
本発明のキメラ分子組成物はまた、宿主において目的のポリペプチド(特に目的のポリペプチドの活性)の活性を調節することを望む場合、または特定の解剖学的部位における活性を提供することを望む場合、治療薬剤としての使用をも見出す。
【0150】
成分分子は、有利に結合され、処置される宿主における異なった部位への送達または切断のためのキメラ分子を形成し得る。1つの実施形態において、抗感染剤を含むようなキメラ分子は、処置される宿主の消化管に送達される。このような成分の例としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:胃腸管においては、例えば以下であるが、これらに限定されない:腸三葉型因子(「ITF」)のような抗感染剤およびマゲイニン(magainin)、ラクトフェリン、ラクトフェリシン、界面活性剤タンパク質(例えば、SP−A、SP−D、およびリゾチーム);シクロオキシゲナーゼ(COX)−2インヒビター(J.Pharmacol.Exp.Ther.290:551(1999))のような抗炎症剤;DMBTI(悪性脳腫瘍における欠損(Deleted in malignant brain tumors)1)(Cancer Res.61:8880(2001)に記載されるような食道癌および消化管癌において欠失している分泌性腫瘍抑制因子)のような抗癌分子;乳タンパク質のような栄養増強分子;ならびに上皮成長因子(「EGF」)、インスリン様成長因子(「IGF−I」)およびケラチノサイト成長因子(「KGF」)のような成長因子。胃腸管において放出される成分分子としては、胃腸管において活性な成分分子および消化管を裏ばりする上皮細胞を横切って輸送され得る成分分子(例えば、IgA)が、挙げられる。本発明のこのような実施形態において、酵素は、通常、処置される宿主の消化管内に存在し、他の酵素を加えたり投与したりする必要はない。
【0151】
成分分子はまた、例えば感染、癌のような疾患、鬱血反応もしくはアレルギー反応、または他の炎症状態を、予防するかまたは処置するために適切なエアロゾルを使用する肺への投与のために、有利に結合され得る。本明細書中での使用に適切な抗感染剤としては、成分分子としての、界面活性剤タンパク質SP−Bおよび界面活性剤タンパク質SP−Cが挙げられる。
【0152】
さらに、成分分子は、本明細書中のキメラ分子として、慢性関節リウマチの患者の関節のような炎症の局部部位に有利に投与され得る。これらの成分分子としては、以下が挙げられるが、これらに限定はされない:IL−10、インターロイキン1レセプターアンタゴニスト(IL−1Ra)および可溶性TNF−αレセプター(「solTNFR」)など。
【0153】
本発明の別の局面において、本明細書中のキメラ分子は、静脈内投与のために意図される。例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:多系統造血の刺激のためのGM−CSFおよび/またはIL−3、ならびに乳癌腫のためのFlt2およびTRAIL。幾つかの場合において、治療効力は、プロテアーゼ切断部位を設計することによって増強され得、この切断部位は、成分分子活性が所望であるような体内中の部位もしくはその近傍で優先的に切断される。これは、キメラ分子中の1つ以上の切断部位を、処置される条件においてその発現および/または活性が局所的に増大するプロテアーゼによって選択的に認識されるように設計することによって、達成される。
【0154】
1つの実施形態において、本発明のキメラ分子中の少なくとも1つの成分分子は、Trichosanthes kirilowii由来の真核生物リボソーム−不活性化タンパク質である、α−トリコサンチン(α−Trichosanthin)(ヒト免疫不全ウイルス(「HIV」)の複製を阻害する)(例えば、Kumagaiら,Proc.Natl.Acad.Sci.90:427−430(1993)を参照)のような阻害分子であり得る。
【0155】
キメラ分子が、第2成分分子とリンカーによって連結された第1成分分子を有する、本発明の好ましい実施形態において、この第1成分分子は、第2成分分子の活性を阻害せず、逆もまた然りである。
【0156】
別の実施形態において、本発明のキメラ分子は、このキメラ分子を処置される宿主中の作用位置へと導くための標的化分子を含む。この標的化分子は、例えば細胞表面レセプターなどのレセプターのリガンド、またはある位置に対する親和性を有する別の分子を含む。例としては、T細胞を活性化することなくT細胞を結合する抗CD40抗体またはEGFレセプターを活性化することなくEGFレセプターを結合するEGFフラグメントがある。この標的化分子は、本発明のキメラ分子における第1成分分子の代わりをし得るか、または第1成分分子と連結され、この第1成分分子から切断され得る。
【0157】
必要に応じて、本発明のキメラ分子は、シグナルペプチドすなわちリーダー配列を含み、このシグナルペプチドすなわちリーダー配列は、キメラ分子が産生宿主内で産生され、例えばこの産生宿主から分泌され得るか、または産生宿主内での貯蔵が指向されるように、このキメラ分子の分泌または貯蔵を指示する。リーダー配列の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:米国特許第4,870,008号に記載されるようなS.cerevisiae由来のα−因子分泌リーダー;または、キメラ分子が単子葉植物の種子内で産生される場合、種子貯蔵タンパク質由来のシグナルペプチド(例えば、WO 01/83792に記載されるようなコメのGt1およびG1b遺伝子)。
【0158】
1つの実施形態において、本発明のキメラ分子は、第1成分分子として、例えば、産生宿主において高度に発現される産生宿主タンパク質またはその一部(本明細書で以後、「産生宿主ペプチド(Production Host Peptide)」)をさらに含む。本発明の1局面において、高度に発現される産生宿主ペプチドを有するキメラ分子は、1つ以上の第2成分分子(代表的に、産生宿主ペプチドの非存在下での発現が困難である)に、集団的に連結される。このような第2成分分子の例としては、ITF、マゲイニン、および他の天然の抗感染剤のような低分子ペプチドが挙げられる。従って、本発明の1つの実施形態において、キメラ分子は、以下の式によって表され得る:産生宿主ペプチド−(リンカー−低分子ペプチド)、または産生宿主ペプチド−リンカー−(低分子ペプチド)。ここで、nは、1〜約10の正の整数であり;必要に応じて、約2〜約7の正の整数であり;さらに必要に応じて、約3〜約5の正の整数である。この低分子は、その発現が所望され、そして例えば約2個〜約60個;必要に応じて、約5個〜約40個;さらに必要に応じて、約7個〜約25個;なお必要に応じて、約10個〜約20個の範囲にわたるアミノ酸残基の配列を含み得る、任意の低分子である。必要に応じて、本発明のキメラ分子はまた、産生宿主からの産生後の精製を容易にする部分(例えば、ヒスチジンタグ)も、含み得る。
【0159】
1つの実施形態において、本発明は、リンカーがスペーサーを含むような、キメラ分子をさらに包含する。このスペーサーは、数個のアミノ酸残基だけを含み得る。このスペーサーは、例えば、キメラ分子の切断部位における酵素切断には影響しないが、しかしなお、切断をより容易にするために、切断部位を露出させるようなスペーサーである。別の実施形態において、このリンカーは、スペーサーがどの成分分子にも結合しないように、スペーサーの両端に1つずつ、2つの切断部位を有する。
【0160】
本発明のキメラ分子は、処置される宿主内への送達のために任意の数の方法において処方され得る。1つの実施形態において、このキメラ分子は、例えば、キメラ分子をコードする核酸分子が、産生宿主内に導入される場合、食用製品の成分である。このような食用製品としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:乳汁(産生宿主が、ヤギまたはウシのような動物である場合)、植物(産生宿主が、トマトのような野菜である場合)、種子(産生宿主が、コメ、コムギ、オオムギ、カラスムギ、または雑穀のような穀物である場合)、微生物細胞(産生細胞が、Lactobacillusまたは酵母である場合)ならびにこれらの誘導体および抽出物。
【0161】
従って、本発明は、キメラ分子を、経口、経頬、経膣、経直腸、頭蓋内、脳室内、非経口または吸入による投与によって、処置される宿主に送達する方法を包含する。送達の非経口経路としては、静脈内、動脈内、鼻腔内、筋肉内、皮下、腹腔内、経皮(transdermal)または経皮(percutaneous)が挙げられる。
【0162】
本発明の別の実施形態において、キメラ分子は、成分分子としてのポリペプチドワクチンもしくは核酸ワクチン、および/または成分分子としてのアジュバント分子、あるいはこのような組み合わせを含む。ワクチンは、感染性生物、トキソイド、または癌細胞によって過剰発現される癌抗原の成分であり得る。
【0163】
1つの実施形態において、キメラ分子は、核酸分子ではない。しかし、キメラ分子がポリタンパク質である場合、本発明は、このキメラ分子をコードする核酸分子、ならびにこの核酸分子を含むベクター、およびこの核酸分子を含む宿主細胞を、包含する。従って、一般的に、キメラ分子がポリタンパク質である場合、本発明は、5'から3'の方向で以下をコードする核酸分子を提供する:リンカーをコードする核酸に連結された第1成分分子のリンカー、これは、次いで、第2成分分子をコードする核酸分子に連結される。本明細書中のキメラ分子は、プロモーターおよび、必要に応じて、転写ターミネーター、ならびにさらに必要に応じて、翻訳ターミネーターを含み、これら全てが適切な宿主(例えば、キメラ分子の発現のための産生宿主)をトランスフェクトするために使用され得る発現ベクター内に挿入された、発現カセットの形態で構築され得る。
【0164】
本発明の別の実施形態において、キメラ分子は、リンカーが上述のような酵素切断部位を含んだままであるような、核酸分子である成分分子を含む。このようなキメラ分子が、処置される宿主内に送達され得、ここで、例えば、切断に際して、核酸成分分子は転写され、そして/または翻訳されて、処置される宿主において効果を達成する。
【0165】
本発明は、キメラ分子および薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤を含む組成物を、さらに包含する。本明細書中での使用に適した薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤は、当該分野で従来的である。この組成物は、キメラ分子が処置される宿主に投与される経路に適切な方法で、処方される。従って、この組成物は、経口送達、頬送達、直腸送達、膣送達、頭蓋内送達、脳室内送達、非経口送達(鼻腔内送達、静脈内送達、腹膜内送達、動脈内送達、皮下送達、経皮(transdermal)送達、または吸入を含む)のために適切に処方され得る。
【0166】
別の実施形態において、本発明は、本発明のキメラ分子組成物およびこの組成物の処置される宿主への投与説明書を含むキットを、包含する。この説明書は、代表的に、この組成物の投与経路(例えば、経口送達、頬送達、直腸送達、膣送達、頭蓋内送達、脳室内送達、非経口送達(鼻腔内送達、静脈内送達、動脈内送達、腹膜内送達、皮下送達、経皮(transdermal)送達、または吸入を含む))を記載する。
【0167】
成分分子を有するキメラ分子の、処置される宿主への送達は、このキメラ分子が、処置される宿主内に存在する1つ以上の酵素によってインビボで切断され得る場合、活性分子を処置される宿主へ送達し、生物学的効果を達成する効率的な方法である。本発明のキメラ分子は、宿主への、個々の活性成分分子より長期間にわたる活性分子の送達のために操作され得る。本発明のキメラ分子はまた、処置される宿主における切断および作用のための特定の部位への活性分子の送達のために操作され得る。本発明のキメラ分子は、相乗的に作用し得るか、または疾患もしくは状態に他の方法で対処し得る、1つ以上の活性分子を組み合わせるために、さらに操作され得る。
【0168】
本発明のキメラ分子は、当該分野の任意の従来的手順によって作製され得る。例えば、1つのそのような方法において、第1成分分子をコードする核酸配列は、5'→3'の方向で、少なくとも1つの切断部位を含むリンカーに連結され、この切断部位は、次に第2成分分子に連結される。代表的には、これらの連結は、適切な制限酵素認識および切断の部位において形成され、ここで、異なった核酸フラグメントは、調節配列(例えば、プロモーター、転写ターミネーターおよび翻訳ターミネーター、そして必要に応じて、エンハンサーと共に、一緒に連結されて、選択マーカーを含むかまたは含まない、発現カセットを作製する。必要に応じて、選択マーカーは、ベクター内に存在し得、ここで、このベクター内に発現カセットが挿入されて発現ベクターを形成し得、この発現ベクターは、キメラ分子の産生のために細胞(「産生宿主」)内にトランスフェクトされ得る。本発明のキメラ分子がいかにして作製され得るかの例は、以下に、説明の目的で示される。これらは、限定することを意図しない。従来技術は、キメラ分子、組成物およびこのような新規のものを含むキットを介して使用される。
【0169】
(ポリペプチド組成物)
用語「目的のタンパク質および目的のポリペプチド」は、本発明のキメラ分子の成分分子が、タンパク質およびポリペプチドである実施形態を言う。これらの目的のタンパク質および目的のポリペプチドは、天然に存在する供給源から得られ得るか、または組換え技術によるように合成的に産生され得る。天然に存在するタンパク質およびポリペプチドの供給源は、一般的に、タンパク質が誘導されるべき種に依存する。目的のタンパク質はまた、例えば、適切な宿主において目的のタンパク質をコードする組換え遺伝子を発現させることによって、合成的な手段からも誘導され得る。任意の便利なタンパク質精製手順が使用され得る。例えば、溶解物は、元々の供給源から調製され得、そしてHPLC、排除クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、またはアフィニティクロマトグラフィーを使用して精製され得る。個々の成分分子は、一緒に化学的に連結され得るか、または例えば、産生宿主においてコード核酸分子を発現することによって、単一のポリペプチドとして発現され得る。
【0170】
本発明はまた、ポリペプチドフラグメントの、本明細書中のキメラ分子中の成分分子としての用途を提供する。幾つかの実施形態において、フラグメントは、対応する天然に存在するポリペプチドに関連する、1つ以上の活性を示す。フラグメントは、例えば、全長ポリペプチドに対する抗体を産生する際;およびポリペプチドに結合し、そして/またはその活性を調節する検出薬剤の方法における用途を見出す。目的のポリペプチドのフラグメントは、代表的には、少なくとも約10〜300アミノ酸(aa)長であり;必要に応じて、このフラグメントは、少なくとも約25aa長であり;さらに必要に応じて、このフラグメントは、少なくとも約50aa長であり、なお必要に応じて、このフラグメントは、少なくとも約75aa長であり;その上なお必要に応じて、このフラグメントは、少なくとも約100aa長である;なおさらに必要に応じて、このフラグメントは、少なくとも約200aa長である。目的の特定のフラグメントとしては、酵素活性を有するフラグメント、生物学的活性を有するフラグメント、および他のタンパク質または核酸と結合するフラグメントが、挙げられる。
【0171】
天然に存在するタンパク質に加えて、本発明のキメラタンパク質の成分分子は、天然に存在する形態から変化したポリペプチド(例えば、融合タンパク質を含む改変体ならびにそれらのアナログおよび誘導体)を含み得、ここで、このような改変体は、天然に存在するタンパク質と相同であるか、または実質的に類似である。例として、融合タンパク質は、目的のポリペプチドまたはそのフラグメント、ならびに目的のポリペプチドのN末端および/もしくはC末端、または目的のポリペプチドの内部に、インフレームで融合された、目的のポリペプチド以外のポリペプチド(「融合パートナー」)を含み得る。このような融合パートナーは、本発明のリンカーによって、成分分子と連結されてもされなくてもよい。
【0172】
適切な融合パートナーとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:融合パートナーに特異的な抗体を結合し得るポリペプチド(例えば、血球凝集素、FLAG、およびc−mycのようなエピトープタグ);蛍光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質、Anthozoan種由来の蛍光タンパク質);β−ガラクトシダーゼ;ルシフェラーゼ;creリコンビナーゼのような、検出可能シグナルを提供するポリペプチド);触媒機能を提供するかまたは細胞応答を誘導するポリペプチド;真核生物細胞からの融合タンパク質の分泌を提供するポリペプチド;原核生物細胞からの融合タンパク質の分泌を提供するポリペプチド;金属イオンへの結合を提供するポリペプチド (例えば、n=3〜10であるようなHis(例えば、6His))。
【0173】
例えば、融合パートナーが、免疫学的に認識し得るエピトープを提供する場合、エピトープ特異的抗体が、ポリペプチドレベルを定量的に検出するために使用され得る。幾つかの実施形態において、融合パートナーは、検出可能シグナルを提供し、そしてこれらの実施形態において、検出方法は、融合パートナーによって産生されるシグナルの型に基づいて選択される。例えば、融合パートナーが蛍光タンパク質である場合、蛍光が測定される。
【0174】
融合パートナーが、検出可能産物を生じる酵素である場合、この産物は、適切な手段を使用して検出され得る。例えば、酵素β−ガラクトシダーゼは、基質に依存して有色産物を生じ、この有色産物は、分光光度計によって検出され得、そして蛍光酵素ルシフェラーゼは、ルミノメーターで検出可能な発光産物を生じ得る。
【0175】
本発明のキメラ分子のポリペプチドは、天然に存在しない環境において存在する、すなわち、それらの天然に存在する環境から分離されている。特定の実施形態において、このキメラ分子が、実質的に他のタンパク質を含まない組成物中に存在するように、このキメラ分子は実質的に精製される。
【0176】
本発明のキメラ分子のポリペプチドは、単離体として存在し得、すなわち、実質的に他のタンパク質または他の天然に存在する生物学的分子(例えば、多糖類、ポリヌクレオチド、およびそれらのフラグメントなど)を含まない。特定の実施形態において、キメラ分子は、少なくとも約95%、一般的には少なくとも約97%、より一般的には少なくとも約97%、必要に応じて、少なくとも約98%または99%純粋である。
【0177】
任意の便利な精製手順が、本明細書中の目的のために使用され得る。適切な場合、タンパク質精製方法論は、例えば、Guide to Protein Purification(Deuthser編)(Academic Press.1990)において記載される。
【0178】
(ペプチド)
本発明の幾つかの実施形態において、成分分子はペプチドである。幾つかの実施形態において、ペプチドは、1つ以上の以下の活性を示す:相互作用タンパク質への目的のペプチドの結合を阻害する;第2ポリペプチド分子への目的のポリペプチドの結合を阻害する;目的のポリペプチドのシグナル伝達活性を阻害する;目的のポリペプチドの酵素活性を阻害する;目的のポリペプチドのDNA結合活性を阻害する。幾つかの実施形態において、ペプチドは、対応する天然に存在するタンパク質の約3アミノ酸〜約50アミノ酸、約5アミノ酸〜約30アミノ酸、または約10アミノ酸〜約25アミノ酸の配列を有する。
【0179】
ペプチドは、天然に存在するアミノ酸および天然に存在しないアミノ酸を含み得る。ペプチドは、D−アミノ酸、D−アミノ酸およびL−アミノ酸の組み合わせ、ならびに種々の「デザイナー(designer)」アミノ酸(例えば、β−メチルアミノ酸、Cα−メチルアミノ酸、およびNα−メチルアミノ酸、など)を含み得、特定の特性を有する。さらに、ペプチドは、環状であり得る。ペプチドは、特定の立体配座モチーフを導入するために、非古典的アミノ酸を含み得る。任意の公知の非古典的アミノ酸が、使用され得る。非古典的アミノ酸としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボキシレート;(2S,3S)−メチルフェニルアラニン、(2S,3R)−メチル−フェニルアラニン、(2R,3S)−メチル−フェニルアラニンおよび(2R,3R)−メチル−フェニルアラニン;2−アミノテトラヒドロナフタレン−2−カルボン酸;ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボキシレート;β−カルボリン(DおよびL);HIC(ヒスチジンイソキノリンカルボン酸);およびHIC(ヒスチジン環状尿素)。アミノ酸アナログおよびペプチド模倣物は、ペプチドに組み込まれ、特定の二次構造を誘導するかまたは指示し得る。これらのアミノ酸アナログおよびペプチド模倣物は、以下が挙げられるが、これらに限定されない:LL−Acp(LL−3−アミノ−2−プロペニドン−6−カルボン酸)、β−ターン誘導ジペプチドアナログ;β−シート誘導アナログ;β−ターン誘導アナログ;α−へリックス誘導アナログ;γ−ターン誘導アナログ;Gly−Alaターン誘導アナログ;アミド結合アイソスター;またはトレトラゾール。
【0180】
ペプチドは、直鎖状または環状であり得るデプシペプチド(depsipeptide)であり得る(Kuisleら,1999)。ペプチドは、環式または二環式であり得る。例えば、C末端カルボキシル基またはC末端エステルは、カルボキシル基の−OHまたはエステル(−OR)あるいはエステルの、それぞれN末端アミノ基での内部置換によって、環化が誘導され、環式ペプチドを形成し得る。例えば、ペプチド酸を生じ合成および切断の後、遊離酸は、溶液中(例えば、メチレンクロリド(CHCl)、ジメチルホルムアミド(DMF)混合物中)のジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)のような、適切なカルボキシル基アクチベーターによって、活性化エステルに変換される。次いで、環式ペプチドが、活性化エステルのN末端アミンでの内部置換によって、形成される。重合化と反対に、内部環式化は、非常に希薄な溶液の使用によって増強され得る。環式ペプチドを作製する方法は、当該分野で周知である。
【0181】
(抗体)
本発明は、特定のポリペプチド(本明細書中以後、「標的ポリペプチド」とする)を、1個以上の成分分子として特異的に認識する抗体またはその活性フラグメントを含むキメラ分子を提供する。適切な抗体を、当該分野で慣習的な種々の手段で、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体および抗体フラグメントとして産生し得る。本明細書中の抗体としては、天然の形かまたは当該分野で慣習的なヒト化した形でのヒト抗体、非ヒト動物抗体(例えば、非ヒト霊長類抗体、マウス抗体、ラット抗体、ヒツジ抗体、ヤギ抗体、ウサギ抗体、ブタ抗体、ウシ抗体など)が挙げられる。本明細書の抗体としては、また、霊長類化した抗体およびキメラ抗体が挙げられる。
【0182】
本発明の抗体は、多様な機能を果たし得る。それらは、標的抗体、中和抗体、安定化抗体または増強抗体として機能し得る。それらは、アゴニストまたは他の抗体のアンタゴニストとして機能し得る。それらは、ADCCを仲介し得る。そのリガンドまたはその基質に対する同族のポリペプチドの結合を特異的に阻害するために、抗体をブロックし得、機能し得る。さらに、本発明の抗体は、他の分子の基質としてのそれらの同族のペプチドの結合を、特異的に阻害し得る。
【0183】
1つの実施形態では、ポリクローナル抗体を、標的ポリペプチドの全てまたは一部を含むポリペプチドでの宿主動物の免疫化により入手し得る。例えば、ヒト標的ポリペプチドに対する抗体を作製するために、適切な宿主動物としては、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ハムスター、モルモット、ニワトリ、およびウサギが挙げられるが、これらに限定されない。タンパク質免疫原の起源としては、マウス、ヒト、非ヒト霊長類、ラット、サル、鳥類、昆虫、爬虫類または甲殻類を含む任意の種であり得る。宿主動物は、一般に免疫原とは異なる種である。抗体産生の方法は、当該分野で周知であり、HowardおよびBethell(2000)により記載される。一般に、成分分子として使用される抗体は、処置される宿主と適合性である。例えば、抗体が、キメラ分子の構成要素として、ヒトに治療目的で、予防目的で、または、診断目的で投与される場合、抗体は、好ましくは、ヒト抗体またはヒト化した抗体あるいはそれらの活性フラグメントである。
【0184】
免疫原は、完全なタンパク質またはそのフラグメントおよびその誘導体を含み得る。免疫原は、タンパク質またはその一部が翻訳後の修正(例えば、グリコシル化)を含み得る場合、天然の標的タンパク質上に発見される。標的タンパク質の細胞外ドメインを含む免疫原(例えば、癌抗原)は、当該分野で公知の種々の方法(例えば、慣習的な組換え方法を使用したクローン化した遺伝子の発現または腫瘍細胞培養上清からの単離)により産生される。
【0185】
本発明のポリクローナル抗体は、慣習的な技術により調製される。これらは、約1%未満の混入物しか含まない、実質的に純粋な形での標的タンパク質を用いる宿主動物の免疫化を含む。あるいは、完全細胞が、細胞表面上で、免疫原または抗原(例えば、膜タンパク質)を高濃度で発現するように、標的タンパク質またはその抗原性部分をコードする核酸分子でトランスフェクトした完全細胞を用いて、宿主動物を免疫化し得る。このような例としては、標的ポリペプチドをコードする核酸を含むバキュロウイルスでトランスフェクトした昆虫細胞の使用、またはこのような核酸分子を含むベクターでトランスフェクトしたマウス細胞の使用がある。
【0186】
免疫原に対する宿主動物の免疫反応を増加させるために、標的タンパク質をアジュバントに結合し得る。適切なアジュバントとしては、ミョウバン、デキストラン、硫酸塩、大型ポリマーアニオン、ならびに油および水のエマルション、例えば、完全なまたは不完全なFreundのアジュバントが挙げられるが、これらに限定されない。標的タンパク質は、また、合成キャリアタンパク質または合成抗原に連結し得る。標的タンパク質は、宿主に通常は、最初の用量とともに、皮内に、皮下に、筋肉内にまたは腹腔内に投与され、その後、1回以上の、通常は少なくとも2回のさらなる効果促進の用量を投与する。以下の免疫化では、免疫化した宿主由来の血清を収集し、抗体産生を試験する。生じた抗血清に存在する免疫グロブリンをさらに、公知の方法(例えば、アンモニウム塩分画またはDEAEクロマトグラフィー)を使用して分画し得る。
【0187】
また、本発明のモノクローナル抗体を、慣習的な技術により産生し得る。一般に、上に記載した免疫化した宿主動物の脾臓結節および/またはリンパ結節は、プラズマ細胞の供給源を提供し、次いで、抗体を分泌するハイブリドーマ細胞を産生するための骨髄腫細胞を融合して、不死化した。ハイブリドーマ細胞を培養し、個々のハイブリドーマに由来する培養上清を、所望の特異性を有する抗体を産生するクローンを同定するための標準的技術を使用して、スクリーニングする。ハイブリドーマ細胞上清または宿主に存在する腹水から、慣習的な技術(例えば、不溶性支持体(すなわちタンパク質Aセファロース)に結合した抗原を使用するアフィニティクロマトグラフィー)により抗体を精製し得る。このような様式により産生した抗体を、その後改変し、または、所望の特性を含むように最適化し得る。
【0188】
抗体を、免疫グロブリン分子の通常の多重結合構造の代わりに、単鎖として産生し得る。単鎖抗体は、以前に、Jostら(1994)に記載されている。重鎖の可変領域および軽鎖の可変領域をコードするDNA配列を、少なくとも約4個の小さな中性アミノ酸(すなわち、グリシンまたはセリン)をコードするスペーサーに連結する。この融合物によってコードされるタンパク質は、もとの抗体の特異性および親和性を保持している機能性可変領域の集合を可能にする。
【0189】
本発明は、また、「人工的な」抗体(例えば、インビボで産生し、選択した単鎖抗体および抗体フラグメント)を提供する。いくつかの実施形態において、これらの抗体は、バクテリオファージまたは他のウイルス粒子の表面上に表れる。他の実施形態において、人工的な抗体は、ウイルス構造タンパク質またはバクテリオファージ構造タンパク質(M13遺伝子IIIタンパク質を含むが、これに限定されない。)を有する融合タンパク質として存在する。このような人工的な抗体を産生する方法は、当該分野において周知である(米国特許第5,516,637号;同5,223,409号;同5,658,727号;同5,667,988号;同5,498,538号;同5,403,484号;同5,571,698号および同5,625,033号)。いくつかの実施形態において、本明細書中で使用するための抗体としては、1つ以上の重鎖、1つ以上の軽鎖、1つ以上の軽鎖と一緒になった1つ以上の重鎖またはそれらの可変領域のみが挙げられる。
【0190】
インビボの使用のために、特にヒトへの注入のために、いくつかの実施形態では、非ヒト抗体の抗原性を減少することが望ましい。処置される宿主の非ヒト抗体を含むキメラ分子に対する免疫反応は、潜在的に、治療が効果的である期間を減少し得る。ヒト化抗体の方法は、当該分野において公知である。ヒト化抗体は、遺伝子組換えヒト免疫グロブリン定常領域遺伝子を有する動物の産物であり得、例えば、国際特許出願WO90/10077およびWO90/04036に記載される。あるいは、CH1、CH2、CH3、ヒンジドメインおよび/またはヒト配列に対応する枠組みドメインを置換するために、目的の抗体を、組換えDNA技術により設計し得る(例えば、WO92/02190に記載されるように)。
【0191】
さらに、キメラ分子の構成要素を作製するために、または本発明のキメラ分子をコードする核酸分子を作製するために、免疫グロブリンをコードする遺伝子が、本発明において使用され得る。免疫グロブリンcDNAで構成した免疫グロブリン遺伝子は、当該分野で公知であり、例えば、Liuら(1987a)およびLiuら(1987b)中に記載される。メッセンジャーRNAを、ハイブリドーマまたは脾臓またはこのような抗体を産生する他の細胞から単離し、cDNAライブラリーを産生するために使用する。目的のcDNAを、特定のプライマー(例えば、米国特許第4,683,195号および同4,683,202号に記載される)を使用したポリメラーゼ連鎖反応(‘‘PCR’’)により増幅し得る。あるいは、ライブラリーを作製し、目的の配列を単離するためにスクリーニングを行った。抗体の可変領域をコードするDNA配列を、ヒト定常領域配列に融合し得る。ヒト定常領域(‘‘C領域’’)遺伝子の配列は、当該分野で公知であり、例えば、Kabatら、1991中に記載される。ヒトC領域遺伝子は、公知のクローンから容易に入手可能である。アイソタイプの選択は、所望のエフェクター機能(例えば、相補体固定または抗体依存性細胞傷害性)により導かれる。IgG1、IgG3およびIgG4アイソタイプならびにκ軽鎖定常領域またはλ軽鎖定常領域のいずれかを使用し得る。次いで、キメラヒト化抗体を、慣習的な方法により発現する。
【0192】
また他の実施形態において、本発明のキメラ分子中で成分分子として使用するための抗体は、十分にヒト抗体であり得る。例えば、ヒト抗体と同一である異種の抗体を使用し得る。異種ヒト抗体が、充分なヒト化抗体である抗体を意味するので、それらが、ヒト抗体を発現するために、遺伝的に設計されてきた非ヒト宿主中で産生される(例えば、WO98/50433;WO98,24893およびWO99/53049中に記載される)例外を有する。
【0193】
本明細書の使用に適した抗体フラグメント(例えば、Fv、F(ab’)およびFab)を、インタクトなタンパク質の切断(例えば、プロテアーゼまたは化学切断)により調製し得る。あるいは、切断した遺伝子(例えば、重(‘‘H’’)鎖のCH1ドメインおよびヒンジ領域、その後翻訳終止コドンをコードするDNA配列を含むF(ab’)フラグメントの一部をコードするキメラ遺伝子)を設計し得る。
【0194】
ヒトC領域セグメントに対する可変(‘‘V’’)領域セグメントの続く結合のために、J領域に有用な制限部位を導入するためのプライマーとして使用するためのオリゴヌクレオチドを設計するために、Hおよび軽(‘‘L’’)鎖J領域のコンセンサス配列を、使用し得る。C領域cDNAを、部位に関する変異生成により改変し、制限部位をヒト配列の相同な位置に配置し得る。
【0195】
抗体を産生するための慣習的な発現ベクターは、機能的に完全なヒトCまたはC免疫グロブリン配列をコードし、任意のVまたはV配列が、例えば、プラスミド、レトロウイルス、YACまたはEBVに誘導されたエピソームに容易に挿入され、発現し得るように、適切な制限部位を設計する。このようなベクターでは、スプライシングは、通常、J領域に挿入されたスプライスドナー部位とヒトC領域の前のスプライスアクセプター部位との間に生じ、また、ヒトCエクソン内に生じたスプライス領域でも生じる。ポリアデニル化および転写終結は、コード領域の下流の天然の染色体の部位に生じる。生じたキメラ抗体を、任意の強力なプロモーター(レトロウイルスLTR、例えば、Okayamaら(1983)に記載されたSV−40初期プロモーター;例えば、Gormanら(1982)に記載されたラウス肉腫ウイルスLTRおよび例えば、Grosschedlら(1985)に記載されたモロニーマウス白血病ウイルスLTRまたは天然の免疫グロブリンプロモーターを含む)に接合し得る。
【0196】
(核酸組成物)
本発明はまた、それぞれが、本発明のポリペプチド、または、適切な条件下で、上に記載したキメラ分子の本発明のポリペプチドを産生するように発現される能力のあるそのフラグメントをコードするオープンリーディングフレームを有する核酸分子を、提供する。核酸分子は、キャリアを含む核酸組成物の形態で存在し得る。用語は、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、スプライス改変体、アンチセンスRNA、リボザイム、RNAi、ペプチド核酸および本発明の核酸配列を含むベクターを含む。本発明のタンパク質をコードする核酸に、相同であるかまたは実質的に類似するかまたは同一である核酸もまた、この用語に含まれる。従って、本発明は、本発明のタンパク質およびアナログまたはその誘導体をコードする遺伝子を提供する。
【0197】
本明細書に使用される場合、用語遺伝子またはゲノム配列は、約20kbまでまたはコード領域を超えるまで、あるいは、さらにいずれかの向きで、発現の調節に関与する5’および3’非コードヌクレオチド配列に隣接したかまたはしていない、イントロンを含むかまたは含まない、本発明の特定のタンパク質およびポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むcDNAかまたはゲノムDNAかまたはmRNAのいずれかを意味することを意図する。遺伝子は、染色体外遺伝の維持のためかまたは宿主ゲノムへの組込みのための適切なベクターに導入され得る。
【0198】
1つの実施形態では、本発明のポリヌクレオチドとしては、約1kb(しかしより多くも可能である)の側方のゲノムDNAを転写領域の5’または3’末端のいずれかに含む特定の転写調節配列および翻訳調節配列、例えばプロモーター、エンハンサーなどが挙げられる。特定の実施形態では、ゲノムDNAは、100kbpかまたはそれより小さいフラグメントとして単離され得、る;そして、染色体配列の側面に、実質的に何も隣接しない。コード領域に隣接するゲノムDNA、3’または5’のいずれか、または時々イントロン中に見出される内在的な調節配列は、適切な組織特異的な発現および段階特異的な発現に必要な配列を含む。
【0199】
本発明の核酸組成物は、本発明のタンパク質の全て、または一部をコードし得る。二本鎖または一本鎖フラグメントは、慣習的な方法に従って化学的合成したオリゴヌクレオチドにより、制限酵素消化により、PCR増幅などによりDNA配列から入手され得る。
大部分について、DNAフラグメントは、少なくとも15ntのものであり、通常は、少なくとも18ntまたは25ntのものであり、そして少なくとも約50ntのものであり得る。
【0200】
本発明のキメラ分子が、プローブとして使用される場合、本発明の核酸は、直接検出し得る標識(例えば、放射標識または蛍光標識)を組み込むヌクレオチドアナログ、または、後の反応で可視化し得る標識(例えば、種々のハプテン)を組み込むヌクレオチドアナログを含み得る。一般的な放射標識したアナログとしては、32Pまたは35Sで標識したもの、例えば、α−32P−dATP、−dTTP、−dCTPおよびdGTP;ならびにγ−35S−GTP、α−35S−dATPなどが挙げられる。ただちに、主題核酸に組み込まれた、商業的に利用可能な蛍光ヌクレオチドアナログとしては、Cy3、Cy5、Texas Red、Alexa Fluor色素、ローダミン、cascade blue、BODIPYなどで標識したデオキシリボヌクレオチドアナログおよび/またはリボヌクレオチドアナログが挙げられる。続く標識のために、一般的にヌクレオチドに結合したハプテンは、ビオチン、ジゴキシゲニンおよびジニトロフェニルを含む。
【0201】
本発明の核酸は、以下に記載したように、転写かまたは翻訳のアンチセンス阻害のために使用され得る。例えば、Phillips(編) Antisense Technology、Part B Methods in Enzymology 314巻、Academic Press、Inc.(1999);Phillips(編) Antisense Technology、Part A Methods in Enzymology 313巻、Academic Press、Inc.(1999);Hartmannら(編) Manual of Antisense Methodology(Perspectives in Antisense Science)Kluwer Law International(1999);Steinら(編) Applied Antisense Oligonucleotide Technology Wiley−Liss(1998);Agrawalら(編) Antisense Research and Applications Springer−Verlag New York、Inc(1998)を参照のこと。
【0202】
本発明の核酸分子はまた、当業者に公知の、本明細書では詳しく述べる必要のない幅広い種のベクターの一部(例えば、ポリヌクレオチド構築物)として提供され得る。ベクターとしては、プラスミド;コスミド;ウイルスベクター;ヒト、酵母、細菌およびP1由来の人工染色体(HAC’s、YAC’s、BAC’s、PAC’sなど);ミニ染色体などが挙げられるが、これらに限定されない。ベクターは、当業者に周知の多数の出版物(例えば、Short Protocols in Molecular Biology、(1999)、F.Ausubelら(編)、Wiley & Sons;Jonesら(編) Vectors:Cloning Applications:Essential Techniques John Wiley&Son Ltd(1998);Jonesら(編)Vectors:Expression Systems:Essential Techniques John Wiley&Son Ltd(1998)を含む)に十分に記載される。ベクターは、本発明の核酸の発現を提供し得;本発明の核酸の増殖を提供し得、または両方を提供し得る。
【0203】
本発明の核酸が、ベクターかまたはプラスミドの一部である場合、ベクターまたはプラスミドは、「組換えベクター」または「構築物」と呼ばれ得る。本発明の構築物は、産生した宿主細胞(‘‘クローニングベクター’’)中での本発明の核酸の増殖;異なる生物に由来する宿主細胞間での本発明の核酸の往復(‘‘シャトルベクター’’);産生した宿主細胞の染色体への本発明の核酸の挿入(‘‘挿入ベクター’’);本発明のセンスRNA転写物かまたはアンチセンスRNA転写物の発現(例えば、細胞のない系または培養した宿主細胞内で)(‘‘発現ベクター’’);および産生した宿主中で本発明の核酸によりコードされる本発明のポリペプチドの産生(‘‘発現ベクター’’)に有用である。
【0204】
ベクターは、代表的には、少なくとも1個の複製起源、少なくとも1個の非相同な核酸の挿入に対する部位(例えば、複数の、きちんと群生した、単一の切断制限エンドヌクレアーゼ認識部位を有するポリリンカーの形態で)および少なくとも1個の選択マーカーを含むが、いくつかの組み込んだベクターは、宿主内で染色体の改変に機能する起源を欠いていて、そして、いくつかのベクターは、選択マーカーを欠いている。
【0205】
本発明のキメラ分子をコードする核酸分子に関して、または核酸分子を成分分子として含むキメラ分子に関して、核酸分子は、代表的には、実質的に純粋に単離され、および、得られる遺伝子またはポリヌクレオチドを含む。通常は、DNAは、本発明の遺伝子の配列またはそのフラグメントを含まない、実質的に他の核酸配列を含まずに得られ、一般には少なくとも約50%の純度、通常は、少なくとも約90%の純度であり、そして、代表的な「組換え体」は、天然に生じる染色体上で、通常は結合しない1個以上のヌクレオチドに、隣接されている。
【0206】
(アンチセンスオリゴヌクレオチド)
本発明のなお別の実施形態において、処置される宿主に対して、キメラ分子を細胞内に投与するための成分分子は、例えば、アンチセンス分子、リボザイムまたはRNAiのような宿主中での標的タンパク質をコードする遺伝子の発現を調節し、および一般には減少するかまたはダウンレギュレートする薬剤である。
【0207】
アンチセンス試薬は、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ODN)すなわち、天然の核酸由来の化学的改変を有する合成ODN、または、このようなアンチセンス分子をRNAとして発現する核酸構築物を含む。アンチセンス配列は、標的遺伝子のmRNAに対して相補的であり、標的遺伝子産物の発現を阻害する。アンチセンス分子は、種々のメカニズムを介して(例えば、RNAse Hの活性化を介して、または、立体構造の障害を介して、翻訳に使用可能なmRNAの量を減少することにより)遺伝子発現を阻害する。1個またはアンチセンス分子の組み合わせを投与し得、ここで、組み合わせは、複数の異なる配列を含み得る。
【0208】
適切なベクター中の全てかまたは一部の標的遺伝子配列の発現により、アンチセンス分子を産生し得、ここで、転写開始は、アンチセンス鎖がRNA分子として産生されるような向きである。あるいは、アンチセンス分子は、合成オリゴヌクレオチドである。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、一般に、少なくとも約7のヌクレオチド長であり、通常は、少なくとも約12のヌクレオチド長であり、より通常には、少なくとも約20のヌクレオチド長であり、約500のヌクレオチド長より多くはなく、約50のヌクレオチド長より多くはなく、約35のヌクレオチド長より多くはなく、ここで、長さは、交差反応の欠如を含む、阻害、特異性の効率により支配される。7から8塩基長の短いオリゴヌクレオチドは、例えば、Wagnerら(1996)に記載されるような、強力で選択的な遺伝子発現のインヒビターであり得る。
【0209】
特定の内因性のセンス鎖mRNA配列の特定の領域が、アンチセンス配列により相補的であるとして選択される。オリゴヌクレオチドに対する特定の配列の選択は、経験的な方法を使用し得、ここで、インビトロかまたは動物モデル中の標的遺伝子の発現の阻害に関して、いくつかの候補体配列をアッセイする。配列の組み合わせもまた使用され得、ここで、mRNA配列のいくつかの領域を、アンチセンス相補性のために選択する。
【0210】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、Wagnerら(1993);Milliganら(1993)に記載されるように、当該分野で公知の方法により化学的に合成され得る。オリゴヌクレオチドは、それらの細胞内の安定性および結合親和性を増加するために、天然のホスホジエステル構造から化学的に改変され得る。
【0211】
アンチセンスインヒビターに対する代替物として、触媒作用的な核酸化合物(例えば、リボザイムまたはアンチセンス結合体)が、遺伝子発現を阻害するために使用され得る。リボザイムは、インビトロで合成され得、または、発現ベクター中にコードされ得、そこからリボザイムは、例えば、WO9523225およびBeigelmanら(1995)に記載されるように、標的細胞中で合成される。触媒活性を有するオリゴヌクレオチドの例は、WO9506764中に記載される。mRNA加水分解を仲介し得る金属複合体(例えば、ターピリジル(terpyridyl)Cu(II))とのアンチセンスODNの結合体が、Bashkinら(1995)に記載される。
【0212】
(干渉RNA)
いくつかの実施形態では、成分分子は、干渉RNA(RNAi)である。RNA干渉は、真核生物遺伝子をサイレンシングする方法を提供する。二本鎖RNAは、C.elegans、真菌、植物、Drosophilaおよび哺乳動物中で、その同起源のmRNAの相同性依存的な分解を誘導し得る(Gaudilliereら、2002)。特定のmRNAおよび/またはタンパク質のレベルを減少させるためのRNAiの使用は、遺伝子のコード領域に由来する二本鎖RNAの干渉特性に基づいている。この技術は、遺伝子機能を破壊するための効率の良い高処理能力法である(O’Neil、2001)。
【0213】
本発明の1つの実施形態においては、本発明のポリヌクレオチドの実質的な部分に由来する相補的なセンスRNAおよびアンチセンスRNAを、インビトロで合成する。生じたセンスRNAおよびアンチセンスRNAを、注入緩衝液中でアニーリングし、その二本鎖RNAを被験体に注入するかまたは他の方法で被験体に導入した。すなわち、食料中で、またはRNA(WO99/32619)を含む緩衝液中に浸漬することにより被験体に導入する。別の実施形態では、本発明の遺伝子に由来するdsRNAは、センス方向およびアンチセンス方向の両方で、コード配列に作動可能に結合した適切に位置したプロモーターからセンスRNAおよびアンチセンスRNAの両方を同時に発現することによりインビボで産生される。
【0214】
(本発明のポリペプチドの調製)
以下の節でより詳細に記載された複数の使用に加えて、本発明の核酸組成物は、本発明のキメラ分子のポリペプチド調製での使用を見出す。一般に、ポリヌクレオチドの発現に関しては、転写開始領域および翻訳開始領域を含む発現ベクターを含む発現カセットが使用され得、この転写開始領域および翻訳開始領域は、誘導され得るかまたは構成的であり得、ここで、コード領域は、転写開始領域、ならびに転写および翻訳終結領域の転写制御下で、作動可能に結合している。
【0215】
従って、本発明のキメラ分子は、当該分野における任意の従来的な習慣的な技術により作製され得る。他に明白に提供されなければ、本発明は、本明細書中のキメラ分子を作製する任意の特定の方法に限定されないことを理解すべきである。例えば、本発明のキメラ分子は、例えば、本明細書に引用した特許および出版物に記載されるかまたはSambrookら(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual (第2版)、Cold Spring Harbor Press、Plainview、N.Y.;およびAusubel F.M.ら(1993)Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley&Sons、New York、N.Y.に記載されるような組換え技術により作製され得る。さらに、生物学的なプロトコルは、http://www.bioprotocol.com.のようなウェブサイトを介して利用され得る。本明細書のキメラ分子は、また、研究室合成により作製され得、例えば、いくつかのポリペプチド配列、ポリヌクレオチド配列または化学的存在物およびこのような配列または分子をインビトロで一緒に連結により、作製される。
【0216】
本発明の1つの実施形態において、本発明のキメラ分子をコードするDNA分子は、キメラ分子の産生のために産生宿主中で発現され得る発現カセット中に組み込まれ得る。発現カセットは、転写調節配列および翻訳調節配列(例えば、プロモーター、転写開始配列および転写終結配列ならびに翻訳開始配列および翻訳終止配列)を含む。エンハンサーが、シス位置またはトランス位置に存在しても存在しなくてもよい。図記のように、5’→3’向きに、転写調節配列および翻訳調節配列を含むDNAフラグメントが、キメラ分子をコードするDNAに結合し得、このDNAは、以下を含む:第1成分分子をコードする第1DNAフラグメント、それは、順に第2DNAフラグメントに結合し得、第2DNAフラグメントは、切断部位を含むリンカーをコードし、切断部位は、順に第3DNAフラグメントに結合し得、第3DNAフラグメントは、第2成分分子をコードし、その後、翻訳終止配列および転写終結配列が続く。結合は、代表的には、適切な制限エンドヌクレアーゼ制限部位でなされ、そして、異なるフラグメントが一緒に、例えば、DNAリガーゼに結合する。発現カセットは、プラスミドまたはウイルスベクターの一部であり得る。一般に使用されるベクターとしては、Gatewayベクター(www.Invitrogen.com)およびCreatorベクター(www.bdbioscience.com)が挙げられる。
【0217】
従って、本発明は、本発明のポリペプチド(その分子がポリプロテインである場合、本明細書のキメラ分子を含み、その成分分子がペプチドまたはポリペプチドまたはその活性フラグメントである場合、本明細書の成分分子を含む)を産生する方法を提供する。この方法は、一般に、上のように、インビボ生成またはインビトロ生成のいずれかでの核酸構築物の宿主細胞への導入を包含する。インビトロのキメラ分子の産生に関して、宿主細胞は、インビトロでの核酸構築物の発現およびコードされた本発明のポリペプチドの産生そして(例えば、培養培地から、または宿主細胞内から(例えば、宿主細胞を破壊することにより)またはその両方から)、本発明のポリペプチドの収集に適した条件下で培養される。
【0218】
本発明は、本発明のポリペプチドを産生する方法をまた提供し、その方法は、例えば、WO 00/68412、WO01/27260、WO02/24939、WO02/38790、WO91/02076およびWO91/02075に記載されるウサギ網状赤血球を含まない溶解物、カエル卵母細胞溶解物、小麦胚芽溶解物、細菌溶解物などの使用により、当該分野で周知である無細胞インビトロ転写/翻訳方法を使用する。
【0219】
本発明はさらに、本発明のポリペプチドをインビボで産生する方法を提供し、例えば、遺伝子組換え動物中で産生する方法が、例えばWO93/25567に記載される。
【0220】
本発明は、さらに宿主細胞を提供し、例えば、本発明の核酸および本発明の組換えベクターを含む宿主細胞を有する組換え宿主細胞を提供する。本発明の宿主細胞は、インビトロ培養中に存在し得、また、多細胞生物の一部ででもあり得る。宿主細胞は、以下にさらに詳細に記載される。
【0221】
必要に応じて、プロセシングおよび/または分泌のために、キメラ分子を、産生宿主中のある区画または細胞小器官に方向付けするためのシグナルペプチド、リーダーペプチド、輸送(transit)ペプチドをコードする、シグナル配列、リーダー配列または輸送配列は、調節配列と、第1の成分分子をコードする第1のDNAフラグメントとの間に適切に挿入され得る。例えば、産生宿主が、酵母細胞である場合、融合タンパク質をプロセシングおよび分泌のために、ゴルジ体へ方向付け得るシグナル配列またはリーダー配列は適切である。このようなシグナル配列は、分泌タンパク質(例えば、米国特許第4,870,008号に記載されるように酵母のα因子)のプレ配列またはプロ配列に由来し得る。
【0222】
あるいは、産生宿主が植物である(例えば、稲である)場合、WO99/16890中に記載される調節配列およびリーダー配列を使用して、発現カセットは、植物の種子中でのキメラ分子の発現のために構築され得る。植物産生宿主中の本発明のキメラ分子の産生のための発現カセットは、また、WO00/04146に記載されるように作製される。
【0223】
例えば、Aspergillusなどの真菌宿主中の本発明のキメラ分子の産生のための発現カセットもまた、例えば、WO97/45156およびWO93/22348中に記載されるように作製される。
【0224】
本発明のキメラ分子は、さらに、産生宿主中に多量に発現されるタンパク質の全てまたは一部を用いて作製され得る。そのようなものを含む発現カセットは、例えば、米国特許第4,828,988号、米国特許第5,292,646号中に記載される。
【0225】
本明細書中での使用のための、キメラ分子をコードする核酸分子の産生のために適切な発現ベクターは、核酸分子の挿入を提供するために、一般に、プロモーター配列の近辺に位置する好都合な制限部位を有する。発現宿主中で作動する選択マーカーが、必要に応じて、このような構築物中に存在し得る。発現ベクターは、融合パートナーをコードする核酸分子をさらに含み得る。ここで、融合パートナーは、さらなる機能性、すなわち、タンパク質合成の増加、分泌のためのリーダー配列、安定性、定義された抗血清との反応性、酵素マーカー(例えば、β−ガラクトシダーゼ)などを提供する。
【0226】
本明細書中での使用のために適切な発現カセットは、転写開始領域、その遺伝子またはフラグメントおよび転写終結領域を含むように調製され得る。特に興味深いのは、機能性エピトープまたはドメインの発現を可能にする配列の使用であり、通常は、少なくとも約8アミノ酸長であり、より通常的には、少なくとも約15アミノ酸長から約25アミノ酸長までであり、または上記のフラグメントのいずれかであり、遺伝子の完全オープンリリーディングフレームまでである。DNAの産生宿主中への導入の後、構築物を含む細胞は、選択マーカーを使用して選択され得、細胞は増殖され、次いで、発現のために使用される。
【0227】
タンパク質、ポリペプチド(抗体を成分分子として含む)を含むキメラ分子は、発現のための目的に依存し、従来的な方法のとおりに、原核生物かまたは真核生物中で発現され得る。大規模なタンパク質の産生のために、単細胞生物(例えば、E.coli、B.subtilis、S.cerevisiae、Pichia pastorisまたはKluyveromyces lactis、Aspergillus oryza)、例えば、SF9細胞またはHigh Five cellなどのバキュロウイルスベクターと組み合わせた昆虫細胞または高等生物(例えば、植物および脊椎動物、特に哺乳動物)の細胞(例えば、COS7細胞)が、発現宿主細胞として使用され得る。ある状況では、真核細胞中で遺伝子を発現することが好ましく、ここで、コードされたタンパク質は、天然の折りたたみおよび翻訳後の修飾を受ける。適切な植物細胞としては、双子葉類(例えば、タバコ植物、トマト植物)または単子葉類(その種子を含む)(例えば、穀物:カラスムギ、稲、小麦、大麦、サトウモロコシおよび他の食用植物)が挙げられるが、これらに限定されない。プロモーター、エンハンサー、ターミネーターおよびベクターの組み合わせは、各宿主で発現を最適化され得る。小さなペプチドもまた、研究室で合成され得る。実施例に記載された上記の宿主細胞のいずれかかまたは他の適切な宿主細胞もしくは生物が、本発明のポリヌクレオチドまたは核酸を含むキメラ分子を複製し、および/または発現するために使用される場合、生じた複製した核酸、RNA、発現したタンパク質またはポリペプチドは、産生宿主細胞または生物の産物として、本発明の範囲内である。産物は、当該分野で公知の任意の適切な手段により回収される。例えば、溶解物は、元の起源(例えば、内性の本発明のポリペプチドを発現する細胞または本発明のポリペプチドを発現する発現ベクターを含む細胞)から調製され得、そして、HPLC、排除クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、アフィニティクロマトグラフィーなどを使用して精製され得る。
【0228】
本発明での使用に適した発現系のさらなる記載としては、例えば、米国特許番号第4,745,069号;同4,828,988号;同6,312,923号;同6,342,375号;同6,235,878号;RE37,343号;米国特許番号第6,068,994号;同6,080,559号;同5,695,985号;同6,277,633号;同6,232,105号;同6,222,094号;同5,888,814号;同5,981,275号:同6,025,540号;同5,750,172号;同6,329,137号;U.S.6,303,369号が挙げられる。
【0229】
本明細書のキメラ分子が、植物産生宿主中で発現する場合、キメラ分子は、植物の葉または苗条で発現するように標的され得る。あるいは、キメラ分子は、植物(例えば、稲、小麦、大麦、カラスムギ、キビ、トウモロコシ、サトウモロコシを含む穀物植物のような単子葉類)の子実または種子中での発現のために標的され得る。植物産生宿主の種子中で発現したキメラ分子は、キメラ分子の活性が保存されるかまたは実質的に維持されるような手段で、処理される。従って、種子を含むキメラ分子の抽出物が作製され得、抽出物は、食物サプリメントまたは栄養添加物として食物に組み込まれ得る。あるいは、種子または種子抽出物は、低温プロセスを使用して、例えば、穀物中のデンプンが麦芽シロップに変わり、ポリペプチドが実質的にインタクトなままであるような条件下で、抽出物を麦芽醸造物に添加することにより、処理され得る。本明細書のキメラ分子を生成するためのこのような系が使用される場合、キメラ分子中の切断部位は、種子または抽出物の処理の間それが活性化されないように、設計されなければならない。
【0230】
(組成物)
本発明は、さらに、本発明のキメラ分子を含む、組成物(薬学的組成物を含む)を提供する。これらの組成物は、緩衝液(それは、キメラ分子の所望の使用に従って選択され)を含み得、および、また、意図した使用に対して適切な他の物質も含み得る。当業者は、幅広い種が当該分野で公知である、種々の緩衝液が、意図された使用に適した緩衝液を容易に選択し得る。ある例では、組成物は、薬学的に受容可能な賦形剤を含み得、当該分野で公知であり、本明細書では詳細に論じる必要がない。本明細書の使用に適した薬学的に受容可能な賦形剤は、例えば、A Gennaro(1995)“Remington:The Science and Practice of Pharmacy”第19版、Lippincott、Williams,& Wilkinsを含む、種々の出版物中に記載される。
【0231】
本明細書の組成物は、可能な投与の様式に従って処方される。従って、組成物が、鼻腔内にまたは吸入により投与されることが意図される場合、そのような目的のために、組成物は、当該分野で習慣的なように、粉末形態に変えられ得る。他の処方物(例えば、経口的または非経口的な送達のための)もまた、当該分野で慣習的なものとして使用される。
【0232】
(賦形剤および処方物)
いくつかの実施形態では、組成物は、薬学的に受容可能な賦形剤を有する処方で提供され、種々の賦形剤が、当該分野で公知であり、例えば、Gennaro、2000;Anselら、1999;Kibbeら、2000に記載される。薬学的に受容可能な賦形剤(例えば、ビヒクル、アジュバント、キャリアまたは希釈剤)は、一般社会に容易に入手可能である。さらに、薬学的に受容可能な補助物質(例えば、pH調整剤および緩衝剤、張度調整剤、安定剤、湿潤剤など)は、一般社会に容易に入手可能である。
【0233】
薬学的投薬形態では、本発明のキメラ分子は、それらの薬学的に受容可能な塩の形態で投与され得、またはそれらはまた、単独で、または他の薬学的に活性な化合物と共同して、ならびに組み合わせて、使用され得る。以下の方法および賦形剤は、単に模範であり、決して限定的ではない。
【0234】
経口調製物に関しては、キメラ分子は、単独で、または錠剤、粉末、顆粒またはカプセルをつくるために適切な添加剤(例えば、従来の添加剤(例えば、乳糖、マンニトール、コーンスターチまたはポテトスターチ);結合剤(例えば、結晶性セルロース、セルロース誘導体、アラビアゴム、コーンスターチまたはゼラチン);崩壊剤(例えば、コーンスターチ、ポテトスターチ、またはカルボキシメチルセルロース塩);潤滑剤(例えば、タルクもしくはステアリン酸マグネシウム);および所望の場合、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、防腐剤および矯味矯臭剤)と組み合わせて、使用され得る。
【0235】
適切な賦形剤ビヒクルは、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロールおよびエタノールならびにそれらの組み合わせである。さらに、所望の場合、ビヒクルは、少量の補助物質(例えば、湿潤剤または乳化剤またはpH緩衝剤)を含み得る。このような投薬形態を調製する実際の方法は、公知であるかまたは当業者に明らかである(Remington、1985)。投与される組成物または処方物は、いずれにしても、処置される被験者中で所望の状態を達成するために十分な量のキメラ分子を含む。
【0236】
このキメラ分子は、それらを、水溶媒または非水溶媒(例えば、植物油または他の類似油、合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸のエステルまたはプロピレングリコール;および所望の場合、従来の添加剤(例えば、可溶化剤、等張剤、懸濁剤、乳化剤、安定化剤および防腐剤)とともに)に溶解、懸濁または乳化することにより、注射のための調製物中に処方され得る。
【0237】
キメラ分子は、吸入により投与されるエアゾール処方で使用され得る。本発明の化合物は、加圧された受容可能な噴霧剤中(例えば、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、または窒素)に処方され得る。
【0238】
さらに、キメラ分子は、種々の基剤(例えば、乳化基剤または水溶性基剤)と混合することにより、坐剤へと生成され得る。本発明の化合物は、坐剤により直腸に投与され得る。坐剤は、体温で融解し、室温ではまだ固体化しているビヒクル(例えば、ココアバター、カーボワックスおよびポリエチレングリコール)を含み得る。
【0239】
経口投与または直腸投与のための単位投薬形態(例えば、シロップ、エリキシル剤および懸濁液)で提供され、各投薬単位中(例えば、小さじ一杯、大さじ一杯、錠剤、坐剤)は、予め決めた量の1つ以上のインヒビターを含む組成物を含む。同様に、注射または静脈内投与のための単位投薬形態は、組成物中にインヒビターを、滅菌水、通常の生理食塩水または他の薬学的に受容可能なキャリア中の溶液として含み得る。
【0240】
(診断方法、予防方法、治療方法および栄養増強の方法)
本発明は、種々の診断方法、予防方法、治療方法、および栄養増強の方法を提供し、ここでその方法は処置される宿主への、有効量の本発明のキメラ分子またはこのようなものを含む組成物の投与を含み、ここで、成分分子は、診断活性、予防活性および栄養増強活性を有する。
【0241】
いくつかの実施形態では、その方法は、処置される宿主へのキメラ分子、またはキメラ分子を含む組成物の投与を含み、ここで、その成分分子は、診断目的のための生物学的分子に結合し得る。例えば、成分分子は、自己抗原または感染生物の抗原をコードする循環核酸分子に結合し得る、検出し得る標識を有するポリヌクレオチドであり得る。
【0242】
いくつかの実施形態では、その方法は、処置される宿主へのキメラ分子またはキメラ分子を含む組成物の投与を含み、ここで、その成分分子は、予防的な目的のためのワクチンである。例えば、成分分子は、ポリペプチドかまたはDNAワクチンであり得る。このようなワクチンは、特に好都合であり得、ここで、成分分子は、別に分解された小さなペプチドである。
【0243】
いくつかの実施形態では、その方法は、処置される宿主へのキメラ分子またはそのようなものを含む組成物の投与を含み、ここで、成分分子は、治療的価値(例えば、処置した宿主中のタンパク質またはレセプターの生物学的活性を調節する(例えば、活性化し、増加し、または阻害する))を有する。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、処置した宿主中のタンパク質の酵素活性の調節を含む。他の実施形態では、処置した宿主中のタンパク質のシグナル伝達活性を調節する方法が提供される。他の実施形態では、本発明のタンパク質と他の相互作用するタンパク質または他の高分子(例えば、DNA、炭水化物、脂質)との相互作用を調節する方法が提供される。
【0244】
いくつかの実施形態では、本明細書の方法は、処置される宿主への、キメラ分子、もしくはそのようなものを含む組成物を投与して、栄養的な価値を有する成分分子を提供する点で、あるいは、食物の価値を最適化するための抗感染剤を提供する点のいずれかで、処置した宿主の栄養を増強することを含む。
【0245】
本発明は、また、処置される宿主へのキメラ分子またはそのようなものを含む組成物の送達または投与を提供し、ここで、キメラ分子は、成分分子の分解を有利に減少する。
【0246】
本発明は、さらに、処置される宿主へのキメラ分子またはそのようなものを含む組成物の送達または投与を提供し、ここで、キメラ分子は、成分分子の利用性を有利に増加する。
【0247】
ヒトおよび非ヒト動物を含む種々の宿主は、本発明の方法に従って処置され得る。一般に、このような宿主は、「哺乳動物」または「哺乳類」であり、ここで、これらの用語は、肉食動物類(例えば、イヌおよびネコ)、げっ歯類(例えば、マウス、モルモットおよびラット)および他の動物(ウシ、ヤギ、ヒツジ、ウサギおよびブタならびに霊長類(例えば、ヒト、チンパンジーおよびサル)を含む)を含む、哺乳綱内にある生物を記載するために広く使用される。多くの実施形態において、その宿主は、ヒトである。動物モデルは、実験調査者にとって関心が持たれるものであり、ヒト疾患の処置のためのモデルを提供する。
【0248】
(処方物、投薬量および投与の経路)
有効量のキメラ分子(低分子、本発明のポリペプチドに特異的な抗体または成分分子として、本発明のポリペプチドを含む)が宿主に投与され、ここで、「有効量」は、所望の結果を産生するために十分な投薬量を意味する。例えば、いくつかの実施形態では、所望の結果は、少なくともコントロールと比較して本発明のポリペプチドの所定の生物学的活性における減少である。それに対して、他の実施形態では、所望の結果は、コントロールと比較して、(個体においてか、または個体の局所性解剖部位における)活性な本発明のポリペプチドのレベルの増加である。また、例として、いくつかの実施形態では、所望の結果は、少なくともコントロールと比較して本発明のポリペプチドの酵素活性の減少であり、それに対して、他の実施形態では、所望の結果は、コントロールと比較して、酵素的に活性な本発明のポリペプチド(個体内で、または個体内の解剖学的部位中で)のレベルの増加である。
【0249】
代表的には、本発明の組成物は、1%未満から約95%までの活性成分を含み、好ましくは、約10%から約50%である。一般に、小児には、約100mgと500mgとの間で投与され、成人には、約500mgと5gとの間で投与される。投与は一般に、注射により、多くの場合、局部への注射による。投与の頻度は、患者の応答性に基づいて、介護者により決定される。他の効果的な投薬量は、型どおりの試験を介して用量応答曲線を確立することにより、当業者によって容易に決定され得る。
【0250】
キメラ分子または成分分子の量を計算するために、当業者は、所望の効果を有するために必要な成分分子の量についての入手可能な情報を容易に使用し得る。活性な本発明のポリペプチドのレベルを増加するために必要な成分分子の量は、インビトロの実験から計算され得る。成分分子の量は、当然、使用した特定の成分分子に依存して異なる。
【0251】
本発明の方法では、キメラ分子は、所望の活性を生じ得る任意の好都合な手段を使用して宿主に投与される。従って、キメラ分子は、宿主に投与するための種々の処方物に組み込まれ得る。より、詳しくは、本発明のキメラ分子は、適切な、薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤と組み合わせることにより、薬学的組成物に処方され得、そして、固体の、半固体の、液体のまたは気体の形態で(例えば、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、軟膏、溶液、坐剤、注射、吸入薬およびエアゾールで)調製物中に処方され得る。
【0252】
従って、キメラ分子の投与は、例えば、経口で、口腔に、直腸に、非経口的に(鼻腔内に、静脈内に、動脈内に、腹腔内に、皮内に、経皮的に(transdermal)、皮下に、経皮的に(percutaneous)、心臓内に(intra−arterial)、心室内に、頭蓋内になどおよび移植による投与を含む)のような種々の手段で達成され得る。薬剤は、毎日、毎週、適切に、または従来法で決定して投与され得る。
【0253】
用語「単位投薬形態」とは、本明細書で使用される場合、ヒトおよび動物被験体への単位投薬量として適切な物理的に別個の単位をいい、各単位量は、薬学的に受容可能な希釈剤、キャリアまたはビヒクルと関連して所望の効果を産生するために十分な量を計算した、予め決めた量の本発明の化合物を含む。本発明の新規の単位投薬形態のための仕様は、使用される特定の化合物に達成される効果および宿主中の各化合物と関連した薬力学に依存する。
【0254】
キメラ分子が、成分分子としてポリペプチド、ポリヌクレオチド、そのアナログまたは模倣物(例えば、アンチセンス組成物)を含む場合、このキメラ分子は、任意の多数の経路(ウイルス感染、マイクロインジェクションまたは小胞の融合を含む)によって、組織または宿主細胞へと導入され得る。ジェットインジェクション(jet injection)はまた、Furthら、(1992),Anal Biochem 205:365−368に記載されるように、筋内投与のために使用され得る。DNAは、金微粒子上にコーティングされ得、そして特定のボンバードメントデバイスまたは「遺伝子銃」によって、文献(例えば、Tangら、(1992),Nature 356:152−154を参照のこと)に記載されるように皮内送達され得る。ここで、金発射体は、治療的DNAでコーティングされ、次いで、皮膚細胞へと射出される。
【0255】
当業者は、用量レベルが、特定の化合物、症状の重篤度および副作用に対する被験体の感受性の関数として変動し得ることを、容易に理解する。所定の化合物についての好ましい投薬量は、種々の手段によって、当業者に容易に決定され得る。
【0256】
処置によって、宿主を侵している病理学的状態に関連する症状の少なくとも寛解を意味し、ここで、寛解とは、広い意味で使用されて、処置される病理学的状態(例えば、炎症およびそれに伴う疼痛)に関連するパラメータ(例えば、症状)の強度の少なくとも減少をいう。従って、処置はまた、病理学的状態または少なくともそれに伴う症状が完全に阻害される(例えば、発生が予防される)または停止(stop)(例えば、終結(terminate))される状況を包含し、その結果、宿主は、病理学的状態または少なくともその病理学的状態を特徴付ける症状をもはや被らない。
【0257】
活性試薬の単位用量(通常、経口用量または注射可能な用量で)を有するキットが、提供される。このようなキットにおいて、単位用量を含む容器に加えて、目的の病理学的状態を処置する際の薬物の使用および付随する利点を記載する、情報パッケージ挿入物が存在する。好ましい化合物および単位用量は、本明細書中に上記される。
【0258】
1実施形態において、成分分子として抗体を含むキメラ分子は、癌または増殖障害または免疫障害または代謝障害の処置のために、このような処置を必要とする被験体に投与される。このような抗体は、例えば、注射(例えば、静脈内投与)によって全身的に;または適切な部位への注射もしくは塗布(例えば、腫瘍への直接的注射、またはこの部位が手術中に露出される場合、この部位への直接的塗布)によって;局所的塗布によって(例えば、障害が皮膚上にある場合)、投与され得る。このような抗体は、単独でかまたは他の薬剤(例えば、細胞傷害性剤)と組み合わせて、投与され得る。
【0259】
本発明の方法を使用して処置され得る腫瘍としては、以下が挙げられる:癌腫(例えば、結腸、直腸、前立腺、乳房、黒色腫、腺管、子宮内膜、胃、膵臓、中皮腫、口腔粘膜異形成、侵襲性口腔癌、非小細胞肺癌腫(「NSCL」)、移行性および扁平上皮細胞の尿路(urinary)癌腫など);神経学的悪性腫瘍(例えば、神経芽細胞腫、多形性グリア芽細胞腫、星状細胞腫、神経膠腫など);血液学的悪性疾患(例えば、小児期急性白血病、非ホジキンリンパ腫、慢性リンパ性白血病、悪性皮膚T細胞、菌状息肉腫、非MF皮膚T細胞リンパ腫、リンパ腫様丘疹症、T細胞リッチな皮膚リンパ球性過形成、水疱性類天疱瘡、円板状エリテマトーデス、扁平苔癬など);婦人科学の癌(例えば、子宮頚部および卵巣);精巣癌;肝臓癌(肝細胞癌腫(「HCC」)および胆管の腫瘍を含む);多発性骨髄腫;食道の腫瘍;他の肺腫瘍(小細胞および明細胞を含む);ホジキンリンパ腫;異なる器官における肉腫など。
【0260】
例えば、処置されるべき疾患または状態が炎症または免疫機能である他の実施形態において、本発明は、このような炎症または免疫障害を処置するための、本発明のキメラ分子(ポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、低分子などを含む)を提供する。本発明の処方物を使用して処置可能な疾患状態としては、以下が挙げられる:種々の型の関節炎(例えば、慢性関節リウマチおよび変形性関節症)、皮膚の種々の慢性炎症状態(例えば、乾癬)、炎症性腸疾患(「IBD」)、インスリン依存性糖尿病、自己免疫疾患(例えば、多発性硬化症(「MS」)および全身性エリテマトーデス(「SLE」))、アレルギー性疾患、移植拒絶、成人呼吸促進症候群、アテローム硬化症、末梢血管、心血管および中枢神経系(「CNS」)の血管の閉塞に起因する虚血疾患。本開示を読めば、当業者は、本発明の処方物の投与によって、他の疾患状態および/または症状が、処置および/または緩和され得ることを認識する。
【実施例】
【0261】
以下の実施例は、本発明を如何にして作製および使用するかの完全な開示および説明を当業者に提供するために示され、そして本発明者らが彼らの発明であるとみなす範囲を限定することを意図せず、そして以下の実験が実施された全ての実験であるかまたは唯一の実験であると示すこともまた、意図しない。使用される数値(例えば、量、温度など)に関して正確さを確実にするための努力がなされているが、いくらかの実験誤差および偏差が考慮されるべきである。他に示されない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は℃であり、そして圧力は大気圧またはその付近である。
【0262】
(実施例1:細菌における発現)
本明細書中のキメラ分子は、細菌産生宿主において発現され得る。細菌における発現系には、以下に記載されるものが挙げられる:
【0263】
【化1】

(実施例2:酵母における発現)
本明細書中のキメラ分子は、酵母産生宿主において発現され得る。酵母における発現系には、以下に記載されるものが挙げられる:
【0264】
【化2】

(実施例3:バキュロウイルス発現系における発現)
本明細書中のキメラ分子は、昆虫細胞産生宿主において発現され得る。昆虫における異種遺伝子の発現は、以下に記載されるように達成される:米国特許第4,745,051号;Friesenら、「The Regulation of Baculovirus Gene Expression」、The Molecular Biology Of Baculoviruses(1986)(W.Doerfler、編);EP 0 127,839;EP 0 155,476;およびVlakら、J.Gen.Virol.(1988)69:765−776;Millerら、Ann.Rev.Microbiol.(1988)42:177;Carbonellら、Gene(1988)73:409;Maedaら、Nature(1985)315:592−594;Lebacq−Verheydenら、Mol.Cell.Biol.(1988)8:3129;Smithら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)(1985)82:8844;Miyajimaら、Gene(1987)58:273;ならびにMartinら、DNA(1988)7:99。多数のバキュロウイルスの株および改変体ならびに宿主由来の対応する許容性の昆虫宿主細胞が、Luckowら、Bio/Technology(1988)6:47−55、Millerら、Generic Engineering(1986)8:277−279およびMaedaら、Nature(1985)315:592−594に記載される。
【0265】
(実施例4:哺乳動物細胞における発現)
このキメラ分子は、哺乳動物細胞においても発現され得る。哺乳動物発現は、以下に記載されるように達成される:Dijkemaら、EMBO J.(1985)4:761、Gormanら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)(1982)79:6777、Boshartら、Cell(1985)41:521および米国特許第4,399,216号。哺乳動物発現の他の特徴は、以下に記載されるように促進される:HamおよびWallace,Meth.Enz.(1979)58:44、BarnesおよびSato,Anal.Biochem.(1980)102:255、米国特許第4,767,704号、同第4,657,866号、同第4,927,762号、同第4,560,655号、WO90/103430、WO87/00195および米国再特許第30,985号。
【0266】
(実施例5:EFGおよびTFFを含むキメラ分子)
処置される宿主の消化管または腸管において有利に放出され得る成分分子としては、以下が挙げられる:抗菌活性を有するもの(例えば、ラクトフェリンおよびリゾチーム)、および粘膜組織に対する保護特性もしくは治癒特性を有するもの(例えば、ヒト上皮成長因子(EGF)および三つ葉型因子ファミリーのペプチド:TFF1(以前にはpS2)、TFF2(以前にはhSP)およびTFF3(以前には腸三つ葉型因子(intestinal trefoil factor)))。本発明のこのような実施形態において、キメラ分子の切断部位は、処置される宿主の消化管中またはその表面上で活性な酵素によってタンパク質分解されるように設計される。例えば、ヒトエンテロキナーゼは、十二指腸および空腸の粘膜において活性である。
【0267】
本発明の好ましい実施形態において、キメラ分子は、ヒトEGFおよびTFF2の両方の1つ以上のコピーを含み、その各々は、エンテロキナーゼ切断部位を含むリンカーによって連結される。組換え産物は、薬学的に受容可能なキャリア中の精製薬物として、またはトランスジェニックウシ、トランスジェニックヒツジまたはトランスジェニックヤギの乳汁中で、あるいはトランスジェニック植物産物(例えば、イネ)において発現される栄養医薬品(nutraceutical)として経口投与される。このような処置から利益を受けると予測される患者集団としては、急性胃腸炎症性疾患(例えば、潰瘍性大腸炎およびクローン病の発赤)を有する患者、およびこれらの疾患の慢性形態を有する患者が挙げられる。アルコールまたはNSAIDの消費から生じる潰瘍または粘膜損傷もまた、このような処置から利益を得ることが推定される。
【0268】
TFF2およびEGFは、いくつかの理由で、経口送達される組換えキメラ分子の成分に十分適しているようである。これらはともに、通常、消化管で生成され、それらの条件に対してともに安定であり、生物学的に相乗作用を示すようである(Oertel,Mら、Am J Respir Cell Mol Biol 25:418,2001)。EGFは、広い生物学的潜在能を有する分子であり、壊死している腸炎、ゾリンジャー−エリソン症候群、胃腸潰瘍形成、および先天性微絨毛萎縮症を有する患者において臨床的に試験されてきた(Guglietta.,A.ら,Eur J Gastroenterol Hepatol 7:945−50,1995)。EGFは、胃腸粘膜に対してマイトジェン性であり、胃酸分泌を阻害し、その両方は、治癒を速めると考えられる。組換えヒトEGFは、プラシーボ制御された二重盲検の臨床試験において十二指腸潰瘍の処置において経口的に活性であることが報告された(Palomino,A.ら,Scand J Gastroenterol 35:1066−22,2000)。
【0269】
N末端EGF、続いて、エンテロキナーゼ切断部位を含むリンカー、およびTFF2からなるキメラ分子は、いくつかの様式において、組換えEGFの生成および使用を改善し得る。成熟組換えEGFは、分子量が約6kDであり、多くの生成宿主において生成される場合、生成および精製の間にC末端プロセシングに起因して、活性を失うと報告された(Engler,D.ら、J Biol Chem 263:12384−90,1986)。EGF上のC末端融合成分は、おそらく発現レベルを増加させつつ、このような所望されないプロセシングを妨害または排除し得る。EGFのTFF2への融合はまた、TFFが胃および小腸の粘膜におけるムチン糖タンパク質に結合する報告された能力の結論として、より長期にわたって、所望の位置にEGF活性を維持するはずである(Poulson,S.ら、Gut 43:240−47,1998)。同様に、静脈内投与された組換えEGFの8分間という半減期(Calnan,D,ら、Gut 47:622−27,2000)は、TFF2ムチン結合の結論としてこの融合構築物において増加し、そしてMWが増加すると推測される。
【0270】
上記のキメラ分子構築物のTFF2成分は、分子量が約12〜14kDであり、これは、使用される産生宿主が、その分子の単一のN結合部位でその分子を完全にグリコシル化可能であるか否かに依存する。ラットモデルにおいて、組換えTFF2は、皮下経路および経口経路の両方を介して、胃潰瘍の治癒を促進し(Poulsen,S.ら、Gut 45:516〜22,1999)、粘膜の血流を増強して胃の分泌を刺激し(Konturek,P.ら、Regul Pept 68:71〜9,1997)、そしてヒト単球の遊走を刺激する(Cook,G.ら、FEBS Lett 456:155〜59,1999)。これらの知見により予測される通り、TFF2ノックアウトマウスは、胃粘膜の成長の減少、酸分泌の増加、およびヨードメタシン処置後の胃潰瘍に対する感受性の増加を示した(Farrell,J.ら、J Clin Invest 109:193〜204,2002)。多様な潰瘍状態において、3つすべての三葉(trefoil)因子ならびにEGFを生成する腺構造が形成されて、おそらく、病巣治癒を促進する(Poulsom,R.,Baillieres Clin Gastroenterol 110:113〜34,1996)。要するに、TFF2は、組換え生成についての改善された特性ならびに上記に列挙した胃腸状態に対する効力を有するキメラ分子において、EGFと有効に作用し得る。
【0271】
Saccharomyces cerevisiaeは、EGF(Herber Biote SA,Havana,Cuba)およびTFF2(Thim,L.ら、FEBS Lett 318:345〜52,1993)の両方の組換え形態を生成するために首尾良く使用されている。Escherichia coliは、リフォールディングされた組換えEGF(Lee,J.ら、Biotechnol Appl Biochem 31:245〜48,2000)およびTFF1(TFF2に対して相同な分子であるが、2つではなく1つのシステインリッチな三葉ドメインを有する)を生成するために首尾良くしようされている。従って、これらの産生宿主のうちの1つまたは両方を使用して、有用な量の活性組換えEGF/リンカー/TFF2キメラ分子を生成することが、可能であるはずである。
【0272】
(実施例6:ヒト上皮成長因子と、エンテロキナーゼ切断部位を含むリンカーと、ヒトTFF2とを含む、キメラ分子の調製)
本発明に従って、EGF/エンテロキナーゼ切断部位リンカー/TFF2融合化合物を、生成する。5’→3’の方向で、上記成分DNA配列を、それらの成分の末端に適切な切断部位をPCR増幅を使用して設計すること、当業者にとって公知であるような市販の制限酵素およびDNAリガーゼをそれぞれ使用してそれらのフラグメントを切断し一緒に連結することによって、連結する。その成分は、順番に、酵母GAPDHプロモーター配列、酵母α接合因子リーダー配列、および配列番号1におけるタンパク質をコードするヒト上皮成長因子のDNA配列を含む。この3’末端に、配列番号2に示されるエンテロキナーゼ切断部位を含むリンカーをコードするDNA配列を付加する。最後に、配列番号3におけるタンパク質をコードするヒト三葉ファミリー因子2(TFF2、hSPとしても公知、Tomassetto,C.,EMBO J 9:407,1990)のDNA配列を、この3’末端に付加し、最後に、酵母α接合因子ターミネーターを付加する。
【0273】
構築物の正確性を、DNA配列決定によって確認し、次いで市販の酵母発現ベクターであるYep24(American Type Culture Collection由来であり、そして選択マーカーとして使用するためにUra3遺伝子を含む)にクローニングする。この構築物を、当該分野で公知の方法を使用して、生成物酵母株であるINVScl(Invitrogen製であり、Ura3を欠いている)にトランスフェクトする。結果としてプラスミドpEET−1を含む、選択された形質転換体をファーメンテイション(fermentation)のために使用して、大きな選択生成物として融合化合物ポリペプチドを生成する。
【0274】
Thim,L.ら、FEBS Lett 318:345−52,1993に記載されるように、この形質転換体を、8リットルのYPD培地+60ng/l酵母抽出物中、30℃にて、OD650が50を超えるまで増殖させた。Thim,L.ら、FEBS Lett 318:345−52,1993に記載されるように、ファーメンテイションブロスを遠心分離によって清浄化し、Amicon filtrationによって濃縮し、pHを1.7に調整し、伝導率を4.5mSに調整し、そしてFast Flow S−Sepharoseカラムに充填し、溶出した。この融合タンパク質を、Calnan,D.ら、Gut 47:622−27,2000に記載されるように、EGFについての初代ラット肝細胞増殖アッセイにおける中和アリコートの活性を測定することによって、得られた画分中で検出する。ピーク画分における活性を、SDS−PAGEによって確認し、それによると、相当な量の融合タンパク質を含む画分は、Gaillard,I.ら、Biochemistry 35:6150,1996に記載されるように、20KD MWまたはその付近にバンドを有し、これは、エンテロキナーゼ(Stratagene)を用いるインビトロでの第二のアリコートのインキュベートにより切断されるが、汚染されたバンドは、大部分は変化しない。
【0275】
プールされた画分は、さらにThim,L.,FEBS Lett 318:345−52,1993に記載されるように、エンドトキシンを含まない装置およびVydac C4逆相HPPLCカラムクロマトグラフィーを用いて精製する。記載されるように、アセトニトリルおよびTFA中のRP−HPLCは、グリコシル化されていない融合タンパク質からグリコシル化された融合タンパク質および集合体を分離し、そして所望の生成物から所望でないエンドトキシンを分離する。最終のプールされた物質におけるエンドトキシンを、リムルス遊走細胞アッセイ(limulus amebocyte assay)(Associates of Cape Cod,Inc,Woods Hole,MA)を用いて測定し、これは、精製タンパク質の1EU/mg未満である。ピーク画分を、上記のSDS−PAGE分析によって実証し、プールし、そして20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)に対してダイアフィルトレーションする。
【0276】
精製した物質を、治療用投与にとって適切な濃度(例えば、1%カルボキシメチルセルロース中の約8mgタンパク質/ml(経口投与用)または40mg/mlマンノース中の約8mgタンパク質/ml(滅菌濾過および非経口薬物の凍結乾燥用))に濾過することによって濃縮する。経口投与は−20℃で保存し、凍結乾燥物質は4℃で安定である。
【0277】
最終調製物は、例えば、12%ゲルでの還元SDS−PAGEによって95%より高い純度であり、非還元SDS−PAGEによって5%未満のオリゴマーを有し、90%よりも高い推定N末端配列をエドマン分解によって示し、そして1mgのタンパク質あたり1EU未満のエンドトキシンおよびEGFバイオアッセイによって等モル濃度でアッセイした場合にモノマーEGF成分の活性の約20%以内である融合タンパク質1モルあたりの生物学的活性を有し、品質管理測定に合格する。同様に、精製融合化合物は、インビトロで上皮細胞移動アッセイ(Poulsom,R.,Baillieres Clin Gastroenterol 10:113−34,1996)において等モル濃度でアッセイした場合、TFF2成分の生体活性の約20%以内の生物学的活性を有する。
【0278】
急性胃腸管障害に関して処置されるべき患者は、経口処方物中の融合化合物を1日あたり約500mgまで受け、そして滅菌注射用水中で新たに作製される皮下調製物において約2mg/kg/日までを受ける。
【0279】
本発明を、本発明の特定の実施形態を参照して記載してきたが、種々の変更が行われ得、そして本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく等価物で置換され得ることが当業者によって理解されるべきである。さらに、特定の状況、材料、組成物、プロセス、プロセスの工程を本発明の目的、趣旨および範囲に合わせるために、多くの改変が行われ得る。全てのこのような改変は、添付の特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。
【0280】
【化3】

【0281】
【化4】

【0282】
【化5】

【0283】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0284】
【図1】図1は、切断部位が本発明のキメラ分子のリンカーについて設計され得る酵素(「標的酵素」)の型の図示である。
【配列表】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の成分分子を多細胞宿主に送達する方法であって、該方法は、以下:
(a)キメラ分子を含む組成物を提供する工程;および
(b)該キメラ分子を該宿主に投与し、処置される宿主を産生する工程を包含し、
ここで該キメラ分子が、少なくとも1つの第1成分分子、少なくとも1つのリンカー、および少なくとも1つの第2成分分子を含み;該リンカーが、酵素切断部位を含み、そして少なくとも第1のリンカーが、該第1成分分子および該第2の成分分子に作動可能に連結して、天然に存在しない連結および該第1成分分子と該第2成分分子の間の切断部位を作製し;
ここで該切断部位は、宿主酵素によるインビボの切断のために操作され、そして産生宿主において切断を受けにくく;
切断部位における該キメラ分子の切断において、少なくとも1つの該成分分子は機能的に活性であり;そして
少なくとも1つの該第1成分分子および該第2成分分子は、ペプチド、タンパク質、またはその活性フラグメントからなる群から選択される1つを含む、方法。
【請求項2】
前記切断部位が、前記宿主の消化管内の酵素によるインビボの切断のために操作される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酵素が、エンテロキナーゼ、マトリックスメタロプロテイナーゼ、または組織型プラスミノーゲンアクチベーターである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記キメラ分子の前記酵素切断部位における切断において、少なくとも2つの前記成分分子が機能的に活性である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの前記成分分子が、前記キメラ分子の切断の前は機能的に活性である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記成分分子が、非阻害的分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記成分分子が、非細胞傷害性分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1成分分子が、前記第2成分分子と同一である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記キメラ分子が以下:
A(x
の式を有し、ここでAが前記第1成分分子を、xが前記リンカーを、Bが前記第2成分分子を、iおよびnがそれぞれ自然数を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、前記式が、以下:
(a) A(x);
(b) A(x)(x)、ここでxおよびxは、同一であるかまたは異なり得、そしてBおよびBは、同一であるかまたは異なり得る;
(c) A(x)(x)(x)、ここでx、xおよびxは、それぞれ同一であるかまたは異なり得、そしてB、BおよびBは、それぞれ同一であるかまたは異なり得る;
(d) A(x)(x)(x)(x)、ここでx、x、xおよびxは、それぞれ同一であるかまたは異なり得、そしてB、B、BおよびBは、それぞれ同一であるかまたは異なり得る;および
(e) A(x)(x)(x)(x)(x)、ここでx、x、x、xおよびxは、それぞれ同一であるかまたは異なり得、そしてB、B、B、BおよびBは、それぞれ同一であるかまたは異なり得る;
からなる群より選択される、方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、前記第1成分分子がペプチドもしくはタンパク質またはこれらの活性フラグメントであり、少なくとも1つの前記第2成分分子が、ペプチド、タンパク質、核酸、炭水化物、合成ポリマー、植物産物、真菌類産物、低分子薬物、検出可能分子、ハプテン、リガンド、抗感染剤、ならびにこれらのアナログおよびフラグメントからなる群から選択される、方法。
【請求項12】
前記キメラ分子が、ポリタンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記キメラ分子が、ポリタンパク質である、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記キメラ分子が、ポリタンパク質である、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
、x、x、xおよびxが同一である、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
、B、B、BおよびBが同一である、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法であって、少なくとも1つの前記成分分子が、抗原、可溶レセプター、成長因子、サイトカイン、リンホカイン、ケモカイン、酵素、抗感染剤、プロドラッグ、毒素、およびこれらの活性フラグメントからなる群より選択される、方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法であって、少なくとも1つの前記成分分子が、可溶p75TNFαレセプターFc融合体、ヒト成長ホルモン、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、インターフェロン−α2b、PEG化(PEG)インターフェロン−α、PEG−アスパラガーゼ、PEG−アダマーゼ、抗CO17−1A、ヒルジン、組織型プラスミノーゲンアクチベーター、エリスロポエチン、ヒトDNAase、IL−2、凝固因子IX、IL−11、TNKase、活性化タンパク質C、PDGF、凝固因子VIIa、インスリン、インターフェロンα−N3、インターフェロンγ1b、インターフェロンαコンセンサス配列、血小板活性化因子アセチルヒドロラーゼおよびこれらの活性フラグメントからなる群より選択される、方法。
【請求項19】
前記第1成分分子が、ペプチド、タンパク質またはこれらの活性フラグメントであり、そして前記第2成分分子が、キメラ化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1つの前記成分分子が、抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記第1成分分子が、抗体またはこれらの活性フラグメントであり、そして前記第2成分分子が、抗体以外である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記第2成分分子が、抗体またはこれらの活性フラグメントであり、そして前記第1成分分子が、抗体以外である、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記第1成分分子および前記第2成分分子が、それぞれ抗体またはこれらの活性フラグメントである、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
少なくとも1つの前記成分分子が、抗微生物性のペプチド、タンパク質、これらのアナログまたは活性フラグメントからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1つの前記成分分子が、デフェンシン、リゾチーム、またはラクトフェリンである、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
少なくとも1つの前記成分分子が、ヒトまたは非ヒト動物のペプチド、タンパク質、これらのアナログおよび活性フラグメントからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
少なくとも1つの前記成分分子が、植物のペプチド、タンパク質、これらのアナログまたは活性フラグメントからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
少なくとも1つの前記成分分子が、微生物のペプチド、タンパク質、これらのアナログまたは活性フラグメントからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項29】
少なくとも1つの前記成分分子が、魚のペプチド、タンパク質、これらのアナログまたは活性フラグメントからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
少なくとも2つの前記成分分子が、ペプチド、タンパク質、これらのアナログまたは活性フラグメントからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項31】
前記ペプチドまたはタンパク質が、IGF−1、EGF、PDGF、ITF、KGF、ラクトフェリン、リゾチーム、フィブリノゲン、α−抗トリプシン、エリスロポエチン、hGH、tPA、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、コンセンサスインターフェロン、インスリン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、ジフテリアタンパク質、および抗好血性因子からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
少なくとも1つの前記成分分子が、ホルモンである、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記ホルモンが、テストステロン、エストロゲン、およびプロゲステロンからなる群より選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
少なくとも1つの前記成分分子が、タキソールまたはそのアナログもしくは誘導体、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、および抗感染剤からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
少なくとも2つの前記成分分子が、ラクトフェリン/ラクトフェリン;ラクトフェリン/リゾチーム;リゾチーム/リゾチーム;ラクトフェリン/EGF;EGF/EFF;ラクトフェリン/ITF;ITF/ITF;ITF/EFG;EGF/KGF;KGF/KGF;ITF/KGF;KGF/PDGF;PDGF/PDGF;α−抗トリプシン/MMP阻害剤;エストロゲン/プロゲステロン;抗体/抗体;ITF/ITF;ならびにこれらのアナログ、改変体および誘導体の組み合わせからなる群より選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項36】
前記キメラ分子を投与する工程が、前記処置される宿主において、生物学的効果をもたらし、そして該生物学的効果が、診断効果、予防効果、治療効果、抗感染効果または栄養上の効果である、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
前記キメラ分子が、さらなるポリペプチドの少なくともフラグメントをさらに含み、ここで該ポリペプチドは産生宿主において高度に発現される、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
前記切断部位が、前記処置される宿主における細胞表面以外の細胞外でのインビボの切断のために操作される、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
前記第1成分分子も前記第2成分分子も、インターフェロンβではない、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記切断部位が、前記処置される宿主における細胞上でのインビボの切断のために操作される、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
前記第1成分分子が、抗体でも抗体フラグメントでもない、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
前記切断部位が、内因性処置される宿主酵素による切断ために操作される、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
前記切断部位が、凝固因子;ADAMTS4,5;Aggreganases1,2;トロンビン;プラスミン;補体因子;ガストリシン;顆粒プロテアーゼ;マトリックスメタロプロテイナーゼ;膜型マトリックスメタロプロテイナーゼ;II型膜貫通セリンプロテアーゼ;ADAM;ネプリリシン;組織型プラスミノーゲンアクチベーター;およびカスパーゼからなる群から選択される内因性宿主酵素による切断ために操作される、請求項1に記載の方法。
【請求項44】
前記切断部位が、前記処置される宿主における細胞内での酵素によるインビボの切断のために操作され、そして前記第1成分分子および第2成分分子の組み合わせが、タンパク質形質転換ドメインと細胞傷害性ドメインとの組み合わせ以外である、請求項1に記載の方法。
【請求項45】
前記切断部位が、前記処置される宿主における細胞内での酵素によるインビボの切断のために操作され、そして該切断部位が、ウイルス病原体活性化切断部位ではない、請求項1に記載の方法。
【請求項46】
前記切断部位が、前記処置される宿主における細胞内での酵素によるインビボの切断のために操作され、そして前記第2成分分子が、細胞傷害性分子ではない、請求項1に記載の方法。
【請求項47】
前記キメラ分子が、産生宿主における該キメラ分子の分泌を指示するため、または該産生宿主における該キメラ分子の貯蔵を指示するためのリーダー配列をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項48】
前記キメラ分子が、該キメラ分子を前記処置される宿主における作用部位に導くための標的化分子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項49】
前記キメラ分子が、産生宿主から産生された後で、該キメラ分子のインビトロ精製を容易にする精製部分をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項50】
前記リンカーが、2つの切断部位および該2つの切断部位の間に隣接したスペーサーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項51】
前記キメラ分子が、食用産物の成分である、請求項1に記載の方法。
【請求項52】
前記食用産物が、ミルク、植物、種子、微生物細胞、ならびにこれらの誘導体および抽出物からなる群から選択される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記食用産物が、穀物である、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記キメラ分子が、経口投与されるか、非経口投与されるかまたは吸入投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項55】
前記キメラ分子が、静脈内経路、皮下経路、腹腔内経路、心臓内経路、または経皮経路により非経口投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項56】
前記キメラ分子が、核酸分子ではない、請求項1に記載の方法。
【請求項57】
前記キメラ分子が、前記第1成分分子に連結するが前記リンカーには連結しないさらなる分子をさらに含み、ここで該さらなる分子が産生宿主において高度に発現される、請求項1に記載の方法。
【請求項58】
少なくとも1つの前記第1成分分子または第2成分分子が、抗体またはその活性フラグメントであり、該抗体が、抗IL8、抗CD11a、抗ICAM−3、抗CD80、抗CD2、抗CD3、抗補体C5、抗TNFα、抗CD4、抗α4β7、抗CD40L(リガンド)、抗VLA4、抗CD64、抗IL5、抗IL4、抗IgE、抗CD23、抗CD147、抗CD25、抗β2インテグリン、抗CD18、抗TGFβ2、抗因子VII、抗IIIIレセプター、抗PDGFβR、抗Fタンパク質(RSV由来)、抗gp120(HIV由来)、抗Hep B、抗CMV、抗CD14、抗VEFG、抗CA125、(卵巣癌)、抗17−1A(結腸直腸細胞表面抗原)、抗抗イディオタイプGD3エピトープ、抗EGFR、抗HER2/neu;抗αVβ3インテグリン、抗CD52、抗CD33、抗CD20、抗CD22、抗HLA、および抗HLA DRまたはこれらの活性フラグメントからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項59】
前記組成物が、薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項60】
キメラ分子を含有する組成物、およびヒト処置される宿主および非ヒト動物処置される宿主に対する組成物の投与のための指示を含む添付文書を含むキットであって、該キメラ分子は、少なくとも1つの第1成分分子、少なくとも1つのリンカー、および少なくとも1つの第2成分分子を含み;該リンカーは、酵素切断部位を含み、ここで、少なくとも第1リンカーは、第1成分分子および第2成分分子に作動可能に連結して、天然に存在しない連結および該第1構成部分と該第2構成部分との間の切断部位を生成し;
ここで、該切断部位は、処置される宿主酵素によるインビボの切断のために操作され、そして任意の産生宿主において切断に対し抵抗性であり;
ここで、該切断部位における該キメラ分子の切断において、少なくとも1つの該成分分子が機能的に活性であり;そして
ここで、少なくとも1つの該第1成分分子および第2成分分子は、ペプチド、タンパク質、あるいはこれらのアナログまたは活性フラグメントもしくは誘導体からなる群から選択される1つを含む、
キット。
【請求項61】
前記切断部位が、前記処置される宿主の消化管内のインビボの切断のために操作される、請求項60に記載のキット。
【請求項62】
前記切断部位が、エンテロキナーゼによるインビボの切断のために操作される、請求項60に記載のキット。
【請求項63】
前記切断部位が、前記処置される宿主における細胞表面上を除く細胞外でのインビボの切断のために操作される、請求項60に記載のキット。
【請求項64】
前記切断部位が、前記処置される宿主における細胞表面上でのインビボの切断のために操作される、請求項60に記載のキット。
【請求項65】
前記切断部位が、内因性宿主酵素による、前記処置される宿主における細胞内でのインビボの切断のために操作される、請求項60に記載のキット。
【請求項66】
前記第1成分分子と前記第2成分分子との組み合わせが、タンパク質形質転換ドメインと細胞傷害性ドメインとの組み合わせではない、請求項65に記載のキット。
【請求項67】
前記切断部位が、前記処置される宿主における細胞内でのインビボの切断のために操作され、そして該切断部位が、ウイルス病原活性切断部位ではない、請求項60に記載のキット。
【請求項68】
前記切断部位が、前記処置される宿主における細胞内でのインビボの切断のために操作され、そして前記第2成分分子が、細胞傷害性分子以外である、請求項60に記載のキット。
【請求項69】
A(xの式を有するキメラ分子であって、ここで、Aが第1成分分子を、xがリンカーを、Bが第2成分分子を、iおよびnがそれぞれ自然数を表し、ここで、該キメラ分子は、少なくとも1つの第1成分分子、少なくとも1つのリンカー、および少なくとも1つの第2成分分子を含み;該リンカーは、酵素切断部位を含み、そして少なくとも第1のリンカーは、第1成分分子と第2成分分子に作動可能に連結して、天然に存在しない連結および該第1成分分子と該第2成分分子との間に切断部位を生成し;
ここで、該切断部位は、宿主酵素によるインビボの切断のために操作され、そして産生宿主において切断を受けにくく;
ここで、該切断部位における該キメラ分子の切断において、少なくとも1つの該成分分子が機能的に活性であり;そして
ここで、少なくとも1つの該第1成分分子および第2成分分子は、ペプチド、タンパク質、あるいはこれらのアナログまたは活性フラグメントもしくは誘導体からなる群から選択される1つを含む、
キメラ分子。
【請求項70】
請求項69に記載のキメラ分子であって、前記式が、以下:
(a) A(x);
(b) A(x)(x)、ここでxおよびxは、同一であるかまたは異なり得、そしてBおよびBは、同一であるかまたは異なり得る;
(c) A(x)(x)(x)、ここでx、xおよびxは、それぞれ同一であるかまたは異なり得、そしてB、BおよびBは、それぞれ同一であるかまたは異なり得る;
(d) A(x)(x)(x)(x)、ここでx、x、xおよびxは、それぞれ同一であるかまたは異なり得、そしてB、B、BおよびBは、それぞれ同一であるかまたは異なり得る;および
(e) A(x)(x)(x)(x)(x)、ここでx、x、x、xおよびxは、それぞれ同一であるかまたは異なり得、そしてB、B、B、BおよびBは、それぞれ同一であるかまたは異なり得る;
からなる群より選択される、キメラ分子。
【請求項71】
前記キメラ分子がポリタンパク質である、請求項69に記載のキメラ分子。
【請求項72】
請求項71に記載のキメラ分子をコードする核酸分子。
【請求項73】
請求項72に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項74】
請求項72に記載の核酸分子を含む宿主細胞。
【請求項75】
処置される宿主に投与するために、産生宿主においてキメラ分子の調製のための方法であって、該方法は、以下:(a)キメラ分子をコードする核酸分子を提供する工程;(b)産生宿主を、該核酸分子で形質転換する工程;(c)該産生宿主に該キメラ分子を産生させる工程;(d)該キメラ分子を該産生宿主から回収する工程;および(e)該回収したキメラ分子に対して品質管理を実行し、規制当局の許可に適合させる工程を包含し、
ここで該キメラ分子が、第1成分分子、切断部位を含むリンカー、および第2成分分子を含む成分分子を含み、
少なくとも1つの該第1成分分子および該第2成分分子が、ペプチド、タンパク質またはこれらの活性フラグメントを含み;
該リンカーが、該第1成分分子および該第2の成分分子に作動可能に連結して、天然に存在しない連結および切断部位を生成し;
ここで該切断部位は、処置細胞酵素によるインビボ切断のために操作される、
方法。
【請求項76】
前記酵素が、前記処置される宿主の消化管に存在する、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記酵素が、前記処置される宿主において細胞外で作用するが、細胞表面上では作用しない酵素である、請求項75に記載の方法。
【請求項78】
前記酵素が、前記処置される宿主において細胞表面上で作用する酵素である、請求項75に記載の方法。
【請求項79】
前記酵素が、前記処置される宿主において細胞内で作用する酵素である、請求項75に記載の方法。
【請求項80】
前記キメラ分子が、タンパク質低湿転換ドメインと細胞傷害性ドメインとの組み合わせ以外である、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記酵素が、前記処置される宿主において細胞内で作用する酵素であり、そして前記切断部位がウイルス病原活性化切断部位ではない、請求項75に記載の方法。
【請求項82】
前記酵素が、前記処置される宿主において細胞内で作用する酵素であり、そして前記第2成分分子が細胞傷害性分子以外である、請求項75に記載の方法。
【請求項83】
前記産生宿主が、細菌細胞、真菌細胞、哺乳動物細胞、植物細胞、植物の種子、昆虫細胞、植物、真菌類、および動物からなる群から選択される、請求項75に記載の方法。
【請求項84】
処置される宿主に投与するためのキメラ分子および薬学的に受容可能なキャリアを含有する組成物であって、ここで、該キメラ分子は、少なくとも1つの第1成分分子、少なくとも1つのリンカー、および少なくとも1つの第2成分分子を含む成分分子を含み;該リンカーは、酵素切断部位を含み、そして少なくとも第1のリンカーは、第1成分分子と第2成分分子に作動可能に連結して、天然に存在しない連結および該第1成分分子と該第2成分分子との間に切断部位を生成し;
ここで、該切断部位は、処置される宿主酵素によるインビボの切断のために操作され、そして産生宿主において切断に対して抵抗性であり;
ここで、該切断部位における該キメラ分子の切断において、少なくとも1つの該成分分子が機能的に活性であり;そして
ここで、少なくとも1つの該第1成分分子および第2成分分子は、ペプチド、タンパク質、またはこれらの活性フラグメントからなる群から選択される1つを含む、
組成物。
【請求項85】
前記切断部位が、前記処置される宿主の消化管内の酵素によるインビボの切断のために操作される、請求項84に記載の組成物。
【請求項86】
前記酵素が、エンテロキナーゼである、請求項84に記載の組成物。
【請求項87】
前記切断部位が、前記処置される宿主の炎症性組織内の酵素によるインビボの切断のために操作される、請求項84に記載の組成物。
【請求項88】
前記炎症性組織が、炎症性の腸または炎症性の滑膜である、請求項87に記載の組成物。
【請求項89】
前記切断部位が、前記処置される宿主における、細胞表面上以外の細胞外でのインビボの切断のために操作される、請求項84に記載の組成物。
【請求項90】
前記切断部位が、前記処置される宿主における細胞表面でのインビボの切断のために操作される、請求項84に記載の組成物。
【請求項91】
前記切断部位が、内因性処置される宿主酵素による、前記処置される宿主における細胞内でのインビボの切断のために操作される、請求項84に記載の組成物。
【請求項92】
前記切断部位が、前記処置される宿主における細胞内でのインビボの切断のために操作され、前記第1成分分子と前記第2成分分子との組み合わせが、タンパク質形質転換ドメインと細胞傷害性ドメインとの組み合わせではない、請求項84に記載の組成物。
【請求項93】
前記切断部位が、前記処置される宿主における細胞内でのインビボの切断のために操作され、そして前記第2成分分子が、細胞傷害性分子ではない、請求項84に記載の組成物。
【請求項94】
前記組成物が、カプセル化される、請求項84に記載の組成物。
【請求項95】
前記成分分子の1つが、前記処置される宿主において、細胞外マトリックスに結合する、請求項84に記載の組成物。
【請求項96】
前記キメラ分子が、2つの切断部位を含み、そのうちの1つが、産生宿主における発現の後のインビトロでの切断のために操作され、そしてもう1つが、前記処置される宿主におけるインビボでの切断のために操作される、請求項84に記載の組成物。
【請求項97】
前記組成物が、経口送達のために処方される、請求項84に記載の組成物。
【請求項98】
前記組成物が、非経口送達のために処方される、請求項84に記載の組成物。
【請求項99】
非経口送達が、皮下送達、静脈内送達、動脈内送達、心室内送達、頭蓋内送達、経皮(percutaneous)送達および経皮(transdermal)送達からなる群から選択される、請求項98に記載の組成物。
【請求項100】
前記キメラ組成物が、経鼻送達または吸入送達のために処方される、請求項84に記載の組成物。
【請求項101】
前記キメラ分子が、ワクチンである、請求項84に記載の組成物。
【請求項102】
前記キメラ分子が、前記成分分子の1つとしてアジュバントを含む、請求項84に記載の組成物。
【請求項103】
前記ワクチンが、病原生物体の成分を含む、請求項101に記載の組成物。
【請求項104】
前記ワクチンが、癌のワクチンであり、前記成分分子が、癌細胞において過剰発現される分子である、請求項101に記載の組成物。
【請求項105】
必要とする被験体における、疾患または状態の診断、予防、処置のため、または栄養の増強のための、医薬の調製におけるキメラ分子の使用であって、ここで、該キメラ分子は、少なくとも1つの第1成分分子、少なくとも1つのリンカー、および少なくとも1つの第2成分分子を含み;ここで、該リンカーは、酵素切断部位を含み、少なくとも第1のリンカーは、第1成分分子および第2成分分子と作動可能に結合して、該第1成分分子と該第2成分分子との間に、天然に存在しない連結および天然に存在しない切断部位を生成し;ここで、該切断部位は、処置される宿主の酵素によるインビボの切断のために操作され、そして産生宿主において切断されにくく;ここで、該切断部位における該キメラ分子の切断の際に、該成分分子の少なくとも1つが、機能的に活性であり;そしてここで、該第1成分分子および第2成分分子の少なくとも1つが、ペプチド、タンパク質、またはこれらの活性なフラグメントからなる群から選択される1つを含む、使用。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2006−503545(P2006−503545A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−568049(P2003−568049)
【出願日】平成15年2月14日(2003.2.14)
【国際出願番号】PCT/US2003/004482
【国際公開番号】WO2003/068934
【国際公開日】平成15年8月21日(2003.8.21)
【出願人】(504310294)
【Fターム(参考)】