説明

出力取り出し運転を伴う変速機の後進ギヤのための中間ギヤのシステム

本発明は、動力軸と、当該動力軸に対して同軸に位置決めされた出力軸(2)と、前記動力軸及び前記出力軸(2)に平行な出力取り出しのための少なくとも一つの中間軸(4)と、を備えたギヤボックスにおける、後進ギヤのための中間ギヤシステム(1)に関している。前記後進ギヤのための中間ギヤ(1)は、軸(3)によって駆動され、出力軸(2)を駆動する。本発明によれば、後進ギヤのための中間ギヤ(1)は、駆動軸(3)と出力軸(2)の軸を通って広がる仮想平面(A)の上方に位置される。ここで、駆動軸(3)は、平面(A)が水平に調整される時、出力軸(2)の右側にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求の範囲の請求項1の上位概念に従う、同軸の動力軸及び出力軸と、出力取り出しのための少なくとも一つの追加の中間軸と、を備えた変速機、とりわけ多段切替変速機、における後進ギヤのための中間ギヤのシステム、に関する。
【背景技術】
【0002】
同軸の動力軸及び出力軸を備えた自動車の多段切替変速機において、一般的に、1または複数の後進ギヤ段が、いわゆる後進ギヤ−中間ギヤを介して、走行方向の反転のために、実現される。それは、例えば、本件出願人によるDE19954130A1に記載されている。この後進ギヤ−中間ギヤは、ギヤハウジング内の所定位置において、自由に回転可能に軸受けされており、通常、カウンターシャフト乃至駆動軸上の走行歯、及び、主軸乃至被駆動軸上の走行歯、に係合している。
【0003】
あるいは、後進ギヤ−中間ギヤは、出力軸の歯、及び、被駆動軸としてのカウンターシャフトの歯にも、係合し得る。
【0004】
今日知られている全ての変速機は、後進ギヤ−中間ギヤのために、ある位置(配置)を有している。それは、後進ギヤ−引張運転においてギヤハウジングの軸受け反力を最小限に留め、かつ、後進ギヤ−押出運転(短い運転時間)においてはハウジングのより大きい軸受け力を通常示す。
【0005】
従来技術によれば、後進ギヤ−中間ギヤのための当該位置(配置)は、以下のように規定される。
【0006】
人が、駆動軸及び出力軸の回転軸を通る仮想の平面を広げて、当該平面が水平に調整されて、駆動軸が出力軸の駆動方向(走行方向)右側にある時、従来技術によれば、後進ギヤ−中間ギヤのための有利な位置は、常に当該平面の下方である。
【0007】
所定の自動車部分において、従来技術によれば、出力取り出しの駆動(始動)は、追加の中間軸によって行われる。それは、同様に、後進ギヤ−中間ギヤに係合している。この種の構成の変速機の例は、本件出願人による変速機シリーズ「ECOMID」である。それは、典型的には、「Looman,Zahnradgetriebe,3.Auflage,Springer−Verlag」263頁から知られる。
【0008】
従来技術による後進ギヤ−中間ギヤのための前記位置(配置)の欠点は、それによって、出力取り出しが駆動される(始動される)時に、とても大きい軸受け反力がギヤハウジングに生じることである。この高い軸受け反力は、最大許容トルクを制限し、期待される出力取り出し運転のための寿命を制限する。これにより、変速機に対して、機能的な欠点が生じる。この場合、出力取り出しは、例えば、カウンターシャフトを介して直接に同軸に駆動される。それは、本件出願人による「ECOSPLIT」シリーズ及び「ASTRONIC」シリーズにおいて、あてはまる。これに関連して、要求される出力取り出し運転の寿命が、要求される後進ギヤ運転の寿命よりも、何倍にも高い、ということに注意が喚起される。
【0009】
カウンターシャフトを介しての同軸の出力取り出しの直接の駆動は、しかし、多くの場合、例えば遊星構造の後置のレンジ切替装置を有するレンジ切替変速機において、主軸とカウンターシャフトとの間の軸間距離が十分に大きい時にだけ、可能である。十分に大きい軸間距離は、一方で、結果として、それに対応して大きく重い構造の変速機を招く。それは、対応して、高い生産コストを伴う。
【発明の開示】
【0010】
本発明の課題は、出力取り出しの寿命を最適にするような、同軸の動力軸及び出力軸と、出力取り出しのための少なくとも一つの追加の中間軸と、を備えた多段切替変速機における、後進ギヤ−中間ギヤの構成を示すことである。とりわけ、出力取り出しが駆動される際、ギヤハウジング上の大きな軸受け反力が回避されるべきである。
更には、出力取り出し運転の際の最大許容トルクが、高められるべきである。
【0011】
前記の課題は、特許請求の範囲の請求項1の特徴によって解決される。更なる実施の形骸が、下位請求項から明らかである。
【0012】
すなわち、後進ギヤのための中間ギヤを、駆動軸と出力軸との軸を通って広がる仮想の平面の上方に配置すること、が提案される。ここで、前記平面を仮に水平に調整した際、駆動軸は、出力軸の走行方向(駆動方向)右側にある。
【0013】
本発明の配置によれば、後進ギヤのための中間ギヤは、出力取り出し運転の際、明らかに小さいギヤハウジングの軸受け反力が伝達される。これにより、出力取り出し運転の寿命が顕著に高められる。更に、出力取り出し運転の際、より高いトルクが伝達され得る。
【0014】
更に、小さい軸間距離と小さい重量とを有する小型で最適コストの基本変速機が実現され得る。それは、高い伝達トルク及び大きい寿命を伴う出力取り出し運転を可能にする。
【0015】
本発明は、以下の実施の形態について、添付の図面に基づいてより詳細に説明される。当該図面は、本発明に従う好適な実施の形態の概略断面図である。
【0016】
当該図面において、本発明に従う同軸の動力軸及び出力軸と出力取り出しのための少なくとも一つの追加の中間軸とを有する基本変速機における後進ギヤのための中間ギヤの構成の断面が示されている。後進ギヤ1のための中間ギヤによって駆動される主軸2と、カウンターシャフト3と、が図示されている。それは、中間ギヤ1を駆動する。出力取り出しのための中間ギヤ4は、後進ギヤ−中間ギヤ1に係合している。動力軸は図示されていない。それは、その主軸2に対する同軸の配置に基づいており、走行方向の当該断面の範囲では、図示不可能である。主軸2は、基本変速機の出力軸として利用される。
【0017】
本発明によれば、後進ギヤ1のための中間ギヤは、前記仮想平面Aの上方に配置される。当該仮想平面は、駆動軸3と出力軸2との回転軸を通って広がっている。その際、平面Aが水平に調整され、駆動軸3は出力軸2の走行方向の右側にある。
【0018】
本発明に従うコンセプトにより、出力取り出し運転の寿命は、高い伝達トルクにおいて、顕著に高められる。更に、小型かつコストにおいて有利な変速機ないし基本変速機が実現される。また、後進ギヤのための中間ギヤのここでの仮想の配置は、軸平行に配置された動力軸及び出力軸を有する変速機の場合にも転用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に従う好適な実施の形態の概略断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力軸と、当該動力軸に対して同軸の出力軸(2)と、前記動力軸及び前記出力軸(2)に平行に配置された出力取り出しのための少なくとも一つの追加の中間軸(4)と、を備えた変速機における後進ギヤのための中間ギヤ(1)のシステムであって、
前記後進ギヤのための中間ギヤ(1)は、軸(3)によって駆動されると共に、出力軸(2)を駆動するようになっており、
前記後進ギヤのための中間ギヤ(1)は、駆動軸(3)と出力軸(2)との軸を通って広がる仮想平面(A)の上方に配置されており、
当該平面(A)が水平に調整される時には、駆動軸(3)は出力軸(2)の駆動方向右側にある
ことを特徴とする後進ギヤのための中間ギヤ(1)のシステム。
【請求項2】
後進ギヤのための中間ギヤ(1)を駆動する軸(3)は、カウンターシャフトである
ことを特徴とする請求項1に記載の後進ギヤのための中間ギヤ(1)のシステム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力軸と、当該動力軸に対して同軸の出力軸(2)と、前記動力軸及び前記出力軸(2)に平行に配置された出力取り出しのための少なくとも一つの追加の中間軸(4)と、を備えた変速機における後進ギヤのための中間ギヤ(1)のシステムであって、
前記中間軸(4)は、前記後進ギヤのための中間ギヤ(1)によって駆動され、
前記後進ギヤのための中間ギヤ(1)は、軸(3)によって駆動されると共に、出力軸(2)を駆動するようになっており、
前記後進ギヤのための中間ギヤ(1)は、駆動軸(3)と出力軸(2)との軸を通って広がる仮想平面(A)の上方に配置されており、
当該平面(A)が水平に調整される時には、駆動軸(3)は出力軸(2)の駆動方向右側にある
ことを特徴とする後進ギヤのための中間ギヤ(1)のシステム。
【請求項2】
後進ギヤのための中間ギヤ(1)を駆動する軸(3)は、カウンターシャフトである
ことを特徴とする請求項1に記載の後進ギヤのための中間ギヤ(1)のシステム。

【図1】
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【公表番号】特表2006−500519(P2006−500519A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−526794(P2004−526794)
【出願日】平成15年7月26日(2003.7.26)
【国際出願番号】PCT/EP2003/008274
【国際公開番号】WO2004/015303
【国際公開日】平成16年2月19日(2004.2.19)
【出願人】(500045121)ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト (312)
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
【Fターム(参考)】