説明

刃の薄膜コーティング

本発明は、カミソリ刃を形成する方法に関する。本方法は、a)基板を準備する工程と、b)30°未満の夾角及び1,000オングストローム未満の先端半径を有する楔形の鋭利な縁部を基板上に形成する工程と、c)この基板を真空チャンバ内に配置する工程と、d)第1の固体ターゲットをこの真空チャンバ内に配置する工程と、e)イオン化されるガスをこの真空チャンバ内に供給する工程と、f)負電圧を第1の固体ターゲットにパルスで印加することによって、基板上の楔形の鋭利な縁部上に薄膜コーティングを形成するイオンを第1の固体ターゲットから生成する工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善されたカミソリ及びカミソリ刃並びに鋭利で耐久性のある切削縁部を有するカミソリ刃又は同様の切削器具を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カミソリ刃は典型的に、金属又はセラミックなどの好適な基板材料から形成される。縁部は、約1,000オングストローム未満の半径を有する最終的な縁部又は先端部を有する、楔形の構成でカミソリ刃内に形成され、この楔形の表面は、30°未満の夾角を有する。髭剃り行為が激しくなると、しばしば刃縁部のダメージとなるので、剃り能力(shavability)を強めるために、補足的なコーティング材料の1つ以上の層の使用が、髭剃りの容易化並びに/又は髭剃り縁部の硬度、強度及び/又は耐腐食性を増加させるために提案されてきた。高分子材料、金属及び合金、並びにダイヤモンド及びダイヤモンド様カーボン材料を含む他の材料などの、多くのこのようなコーティング材料が提案されてきた。ダイヤモンド及びダイヤモンド様カーボン材料は、sp3炭素結合、2.5グラム/cmを超える質量密度及び約133cm−1付近(ダイヤモンド)又は約1550cm−1付近(ダイヤモンド様カーボン)でのラマンピークを有するとして、特徴付けられることがある。髭剃り縁部の形状及び切削効率に悪影響を与えることなく、その一方で、それぞれのこのような層又は補足的材料の層は、望ましくは、改善された剃り能力、改善された硬度、縁部の強度及び/又は耐腐食性などの特徴をもたらす。しかしながら、このような提案は、ダイヤモンド又はダイヤモンド様コーティングされた縁部が、接着性に乏しく、基板の楔形の縁部から剥がれ落ちるという傾向のため、満足できるものではなかった。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、カミソリ刃を形成する方法を目的とする。本方法は、
a)基板を準備する工程と、
b)30°未満の夾角及び1,000オングストローム未満の先端部半径を有する楔形の鋭利な縁部をこの基板上に形成する工程と、
c)この基板を真空チャンバ内に配置する工程と、
d)第1の固体ターゲットをこの真空チャンバ内に配置する工程と、
e)イオン化されるガスをこの真空チャンバ内に供給する工程と、
f)負電圧をこの第1の固体ターゲットにパルスで印加することによって、基板上の楔形の鋭利な縁部上に薄膜コーティングを形成するイオンを第1固体ターゲットから生成する工程と、を含む、方法。
【0004】
第1の固体ターゲットは、金属、炭素又はホウ素であってもよい。金属は、Al、Nb、Zr、Cr、V、Ta、Ti、W、Ni、Hf、Si、Mo、及び、これらの元素のいずれかの組み合わせを含む合金からなる群より選択されてもよい。
【0005】
本方法は、g)第2のより低い負電圧を第1の固体ターゲットにパルスで印加することによって、基板上の楔形の鋭利な縁部上に薄膜コーティングを形成する追加のイオンを第1の固体ターゲットから生成する追加の工程、を含んでもよい。
【0006】
本方法は、g)この基板を工程f)中にある軸線を中心として回転させる追加の工程、を含んでもよい。
【0007】
本方法は、g)第2の固体ターゲットを真空チャンバ内に配置する工程と、h)負電圧をこの第2のターゲットにパルスで印加することによって、基板上の楔形の鋭利な縁部上に薄膜コーティングを形成するイオンを第2の固体ターゲットから生成する追加の工程と、を含んでもよい。第2の固体ターゲットは、この基板に対してこの第1の固体ターゲットとは異なる位置に配置されてもよい。
【0008】
工程f)のパルスは、ピーク電力密度が上昇して0.1kW/cm〜20kW/cmの範囲のパルスとなるような方法で供給されてもよい。工程f)のパルスは、5Hz〜10,000Hzの範囲のパルス周波数で供給されてもよい。工程f)のパルスは、−100V〜−10000Vの範囲の電圧を有するように生成されてもよい。工程f)のパルスは、10μs〜10000のμsの範囲の持続時間を有するように生成されてもよい。工程f)のパルスは、ターゲット上に0.1〜10A/cmの範囲の電流密度を有するように生成されてもよい。
【0009】
基板は、−20V〜−1000Vの範囲でバイアスされてもよい。14。
【0010】
ガスは、Ar、Ne、Kr、Xeなどの不活性ガス、N、CH、C、0などの反応性ガス並びに不活性及び反応性ガスを含む全ての可能な組み合わせからなる群より選択されてもよい。ガスは、0.13〜1.3(1〜10ミリトール)の範囲の圧力であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本明細書は、本発明を構成するとみなされる対象を具体的に指摘し、明確に請求する請求項をもって結論とするが、本発明は添付の図面とともに考慮される次の説明からよりよく理解されるものと考えられる。
【図1】本発明による髭剃りユニットの斜視図。
【図2】本発明による別の髭剃りユニットの斜視図。
【図3】本発明によるカミソリ刃の縁部の形状の一実施例を示す概略図。
【図4】本発明の方法を実施する装置の概略図。
【図5】本発明の方法を実施する代替装置の概略図。
【図6】本発明の方法を実施する別の代替装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を参照すると、髭剃りユニット10は、カミソリのハンドルに取り付けるための構造体及び、前方の横に延在する皮膚に接触する面14を画定する構造体を含む耐衝撃性プラスチックで成形されたプラットフォーム部材12を含む。プラットフォーム部材12に実装されているのは、鋭利な縁部18及び鋭利な縁部22を有する次の刃20を有する先導刃16である。成形されたプラスチックのキャップ部材24は、皮膚に接触する面26を画定する構造体を有し、これは刃の縁部22の後方に配置され、髭剃り補助合成物28であるキャップ部材24に取り付けられる。
【0013】
図2に示されている髭剃りユニット30は、ジェイコブソン(Jacobson)の米国特許第4,586,255号に示されているタイプであり、前側部分34及び後側部分36を有する成形された本体32を含む。本体32に弾力的に固定されているのは、ガード部材38、先導刃ユニット40及び後続刃ユニット42である。刃ユニット40、42はそれぞれ、鋭利な縁部46を有する刃部材44を含む。髭剃り補助合成物48は、後側部分36の凹部内で、摩擦で固定されている。
【0014】
刃16、20及び44の縁部領域の概略図が、図3に示されている。刃は、研削作業、粗砥石作業及び仕上げ砥石作業を含む一連の縁部形成作業で形成される楔形の鋭利な縁部を有するステンレス鋼の本体部分50を含み、この一連の作業は、約30°未満の角度で分岐し、粗砥石ファセット58、60と融合する仕上げ砥石ファセット54及び56を有する、典型的に1,000オングストローム未満の半径を有する先端部分52を形成する。より好ましくは、先端部分52は750オングストローム未満の半径及び約30°未満の夾角(includes angle)の半径を有し、最も好ましくは、先端部分52は、500オングストローム未満の半径及び約25°未満の夾角を有する。先端52及びファセット54〜60上に配置されているのは、約3,000オングストローム未満の、より好ましくは約2,000オングストローム未満の、そして最も好ましくは約1,000オングストローム未満の厚さを有する、窒化クロムの薄膜層又はコーティング62である。薄膜層62上に配置されているのは、任意の接着性テロマー層68である。
【0015】
図3に示されているタイプの刃を加工する装置70が、図4に概略的に示されている。装置70は、壁構造体72、ドア73及び基本構造体74を有するステンレス鋼の真空チャンバ71を含み、その中に、適した真空ポンプシステム(図示せず)に連結されたポート76が形成されている。真空チャンバ71内に実装されているのは、直立した支持部材80を有する支持体78であり、その上には、それらの鋭利な縁部84が整列され、支持部材80から外側に面するカミソリ刃の積み重ね82が配置されている。また、真空チャンバ71内に配置されているのは、クロム(Cr)のターゲット部材86用の支持構造体85である。ターゲット86は、幅約12cm及び長さ約37cmの、垂直に配置されたプレートである。支持構造体78及び85は、真空チャンバ71から電気的に絶縁されており、電気的接続は、刃の積み重ね82をスイッチ93を介してバイアス電源92に、ターゲット86をスイッチ95を介して電源98に接続するために供給される。シャッター構造体100は、開放位置とその隣接するターゲットを覆う位置との間の動きのために、ターゲット86に隣接して配置される。
【0016】
支持部材80は、対向するターゲット86から約7cm離間して、刃の縁部84を有する刃の積み重ね82を支持する。支持部材80は、鋭利な刃縁部が、ターゲット部材86に関して異なる角度で配置されることができるように、軸線の周囲で回転可能であってもよい。
【0017】
特別な加工シーケンスでは、刃の積み重ね82(高さ30cm)は、支持部材80に固定されている。真空チャンバ71は、排気される。ターゲット86は、高電力パルススパッタ(HIPIMS)によって5分間、清浄化される。HIPIMSは、高電力を使用する短パルス(インパルス)スパッタリング方法である。ターゲット86の清浄化は、0.4Pa(3ミリトール)のアルゴン雰囲気で実施される。スイッチ95が開かれ、電力は、−1200Vの電圧、1600Aの電流及びこのプロセス中に徐々に上昇される1.6kW/cmのピーク電力で電源98によって供給される。パルス周波数は、40μsのパルス持続時間で100Hzに設定される。
【0018】
ターゲット86の清浄化は、0.13〜0.67Pa(1〜5ミリトール)の範囲の気圧、−500V〜−2500Vの範囲の電圧、500A〜2500Aの範囲の電流、0.1kW/cm〜20.0kW/cmの範囲のピーク電力、50Hz〜200Hzの範囲のパルス周波数及び10μs〜500μsの範囲のパルス持続時間など他の設定で実施されてもよい。
【0019】
刃82は、次いで、アルゴン雰囲気で、0.13Pa(1ミリトール)の気圧で5分間前処理される又はイオンエッチングされる。シャッター100は、開放位置にある。電力は、−1000Vの電圧、1500Aのパルス電流及び、この加工中に徐々に上昇される1.25kW/cmのピーク電力で電源98によってターゲット86に供給される。パルス周波数は、50μsのパルス持続時間で105Hzに設定される。刃は、電源92から供給される電力によって、低い値から、−500V〜−1000Vの範囲まで及び平均電流2.5Aまで上昇され得る高電圧までバイアスされる。シャッター100は、開放されたままである。これらの条件で、刃へのイオン電流密度は、ピークで0.2Acm−2である。スパッタされた金属フラックスの大部分が、30%に到達する金属イオン分率でイオン化される。金属イオンの有意な部分が、二重にイオン化される。これらの条件下で、刃縁部の高エネルギー金属イオン衝撃が発生する。イオン衝撃は、エッチング金属、すなわちクロムを刃縁部の中に、約30nmの深さまで組み込む効果を有する。このような組み込みは、刃縁部の個々の結晶粒上で局部化されたエピタキシャルコーティング成長のメカニズムを通じて、刃縁部へのコーティングのより良好な接着につながる。スイッチ93及び95は次いで、イオンエッチングサイクルの終わりに閉じられる。
【0020】
イオンエッチングは、0.067〜0.67Pa(0.5〜5ミリトール)の範囲の気圧で、1〜10分間などの他の設定で実施されてもよい。電力は、−500V〜−3000Vの範囲の電圧、500A〜3000Aの範囲の電流、0.1〜20kW/cmの範囲のピーク電力、50〜300Hzの範囲のパルス周波数及び1〜1000μsの範囲のパルス持続時間で、電源98によってターゲット86に供給されてもよい。刃は、低い値から−500V〜−1000Vの範囲まで上昇され得る高電圧まで、1.0〜2.5Aの範囲の電流まで、電源92から供給される電力によってバイアスされてもよい。刃へのピークイオン電流密度は、0.01〜0.5Acm−2であってもよい。
【0021】
刃82は、次いで、CrNの薄膜コーティングで、アルゴン及び窒素雰囲気でコーティングされる。基板洗浄化サイクル後、シャッターは開放されたままであり、窒素ガス200sccm及びアルゴンガス150sccmが、チャンバ71内に流れ始め、カソード電力及びバイアス電圧は、同時にスイッチが入れられる。アルゴンは、0.27Pa(2ミリトール)の分圧であり、窒素は、0.13Pa(1ミリトール)の分圧である。シャッター100は、開放位置では、クロムターゲット86の前にある。電力は、−700Vの電圧、700Aの電流及び0.5MWのピーク電力で、このプロセス中、一定でクロムターゲット86に電源98によって、供給される。パルス周波数は、100μsのパルス持続時間で200Hzに設定される。刃は、電源92から供給される電力によって、−50V〜−1000Vの範囲の高圧及び平均電流1Aまでバイアスされる。これらの条件では、刃へのピークイオン電流密度は、0.4Acm−2である。イオンフラックスの相当な部分が、15%に到達する金属イオン分率でイオン化される。金属イオンの有意な部分が二重にイオン化され、窒素分子の有意な部分が解離する。これらの条件下で、刃縁部の高エネルギー金属イオンの衝撃が発生する。イオン衝撃は、刃縁部の上に金属をコーティングする。刃縁部上の金属コーティングの厚さは、50〜5,000オングストロームであってもよい。
【0022】
刃のコーティングは、窒素ガス25〜500sccm、アルゴンガス25〜500sccm、0.13〜1.3Pa(1〜10ミリトール)の範囲のアルゴン圧、0.13〜1.3Pa(1〜10ミリトール)の範囲の窒素圧など他の設定で実施されてもよい。電力は、−100V〜10000Vの範囲の電圧、100A〜5000Aの範囲の電流、0.1〜20kW/cmの範囲のピーク電力、5〜10000Hzの範囲のパルス周波数及び10〜10000μsの範囲のパルス持続時間で、クロムターゲット86に、電源98によって供給されてもよい。刃は、電源92から供給される電力によって、−20V〜−1000Vの範囲の高圧及び0.1A〜10Aの範囲の電流まで、バイアスされてもよい。刃へのイオン電流密度は、ピークで0.01〜0.5Acm−2の範囲であってもよい。
【0023】
ターゲット部材86は金属、炭素又はホウ素からなってもよい。ターゲット部材86用の金属は、Al、Nb、Zr、Cr、V、Ta、Ti、W、Ni、Hf、Si、Mo、及び、これらの元素のいずれかの組み合わせを含む合金からなる群より選択されてもよい。
【0024】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の任意のコーティングは、米国特許第3,518,110号の教示に従って、刃のCrNコーティングされた縁部に塗布することができる。この方法は、アルゴンの中性雰囲気で刃を加熱する工程と、刃の切削縁部上に接着及び摩擦を低減する固体PTFEのポリマーコーティングを供給する工程と、を含む。テロマーコーティングは、100〜2,000オングストロームの範囲の厚さを有してもよい。
【0025】
次に、図5を参照すると、図3に示されている種類の刃を加工する代替装置170が示されている。装置170は、壁構造体172、ドア173及び基本構造体を有するステンレス鋼の真空チャンバ171を含み、その中に、適した真空システム(図示せず)に連結されたポート176が形成されている。真空チャンバ171内に実装されているのは、直立した支持部材180を有する支持体178であり、その上には、支持部材180から外側に面する、それらの鋭利な縁部184を有するカミソリ刃の積み重ね182が配置されている。また、真空チャンバ171内に配置されているのは、ターゲット部材186用の支持構造体185である。ターゲット186は、幅約12cm及び長さ約37cmの、垂直に配置されたプレートである。支持構造体178及び185は、真空チャンバ171から電気的に絶縁されており、電気的接続は、刃の積み重ね182をスイッチ193を介してバイアス電源192に、ターゲット186をスイッチ195を介して電源198に接続するために提供される。シャッター構造体200は、開放位置とその隣接するターゲットを見えなくする位置との間の動きのために、ターゲット186に隣接して配置される。
【0026】
支持部材180は、対向するターゲット186から約7cm離間して、刃縁部184を有する刃の積み重ね182を支持する。支持部材180は、鋭利な刃縁部が、ターゲット部材186に関して異なる角度で位置決めされることができるように、回転軸線179の周囲で回転可能である。矢印202及び203は、回転軸線179の周囲で刃縁部184を有する刃の積み重ね182を運ぶ支持部材180の回転の動きの方向を示す。刃縁部184を回転軸線179の周囲で回転させることによって、楔形の鋭利な縁部の複数のファセットを、CrNの薄膜コーティングでコーティングすることができる。回転はイオンエッチング又は薄膜コーティング作業の1つ又は両方で行われてもよい。
【0027】
次に、図6を参照すると、図3に示されている種類の刃を加工する代替装置270が示されている。装置270は、壁構造体272、ドア273及び基本構造体274を有するステンレス鋼真空チャンバ271を含み、その中には適した真空システム(図示せず)に連結されたポート276が形成されている。真空チャンバ271内に実装されているのは、直立した支持部材280を有する支持体278であり、その上には、支持部材280から外側に面しているそれらの鋭利な縁部284を有するカミソリ刃の積み重ね282が配置されている。また、真空チャンバ271内に配置されているのは、ターゲット部材286用の2つの支持構造体285である。それぞれのターゲット286は、幅約12cm及び長さ約37cmの垂直に配置されたプレートである。支持構造体278及び285は、真空チャンバ271から電気的に絶縁されており、電気的接続は、刃の積み重ね282をスイッチ293を介して電源292に、ターゲット286をスイッチ295を介して電源298に接続するために供給される。シャッター構造体300は、開放位置とその隣接したターゲットを覆う位置との間の動きのために、それぞれのターゲット286に隣接して配置される。
【0028】
それぞれのターゲット286は、楔形の鋭利な縁部のファセットに関して異なる角度であるように、チャンバ271内で、刃の積み重ね282に対して異なる位置で配置される。両方のターゲットは、イオンエッチング及び薄膜コーティング作業の両方で使用される。
【0029】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳しく限定されるものとして理解されるべきではない。それよりむしろ、特に規定がない限り、こうした各寸法は、列挙された値とその値周辺の機能的に同等の範囲との両方を意味することを意図している。例えば、「40mm」として開示した寸法は、「約40mm」を意味することを意図したものである。
【0030】
「発明を実施するための形態」で引用した全ての文献は、その関連部分において本明細書に参照により組み込まれ、いかなる文献の引用も、それが本発明に対する先行技術であることを認めるものと解釈すべきではない。本書における用語のいずれかの意味又は定義が、参考として組み込まれた文献における同一の用語のいずれかの意味又は定義と相反する限りにおいては、本書においてその用語に与えられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0031】
本発明の特定の諸実施形態を図示し、記載したが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を実施できることは当業者には自明であろう。したがって、本発明の範囲内にあるそのような全ての変更及び修正を、添付の特許請求の範囲で扱うものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カミソリ刃を形成する方法であって、
a)基板を準備する工程と、
b)30°未満の夾角及び1,000オングストローム未満の先端部半径を有する楔形の鋭利な縁部を前記基板上に形成する工程と、
c)前記基板を真空チャンバ内に配置する工程と、
d)第1の固体ターゲットを前記真空チャンバ内に配置する工程と、
e)イオン化されるガスを前記真空チャンバ内に供給する工程と、
f)負電圧を前記第1の固体ターゲットにパルスで印加することによって、前記基板上の前記楔形の鋭利な縁部上に薄膜コーティングを形成するイオンを前記第1固体ターゲットから生成する工程と、を含む、方法。
【請求項2】
前記第1固体ターゲットが、金属、炭素又はホウ素である、請求項1の方法。
【請求項3】
前記金属が、Al、Nb、Zr、Cr、V、Ta、Ti、W、Ni、Hf、Si、Mo、及び、これらの元素のいずれかの組み合わせを含む合金からなる群より、選択される、請求項2の方法。
【請求項4】
g)第2のより低い負電圧を前記第1固体ターゲットにパルスで印加することによって、前記基板上の前記楔形の鋭利な縁部上に薄膜コーティングを形成する追加のイオンを前記第1固体ターゲットから生成する工程を、更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
g)前記基板を工程f)中にある軸線を中心として回転させる工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
g)第2の固体ターゲットを前記真空チャンバ内に配置する工程と、
h)負電圧を前記第2の固体ターゲットにパルスで印加することによって、前記基板上の前記楔形の鋭利な縁部上に薄膜コーティングを形成するイオンを前記第2の固体ターゲットから生成する工程と、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の固体ターゲットが、前記基板に対して前記第1の固体ターゲットとは異なる位置に配置される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
電力密度が上昇して0.1kW/cm〜20kW/cmの範囲のパルスとなるような方法で、工程f)の前記パルスが供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
工程f)の前記パルスが、5Hz〜10000Hzの範囲のパルス周波数で供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
工程f)の前記パルスが、−100V〜−10000Vの範囲の電圧を有するように生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
工程f)の前記パルスが、10μs〜10000μsの範囲の持続時間を有するように生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
工程f)の前記パルスが、ピークで前記ターゲット上に0.01〜0.5A/cmの範囲の電流密度を有するように生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記基板が、−20V〜−1000Vの範囲でバイアスされる、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−533050(P2010−533050A)
【公表日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516632(P2010−516632)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【国際出願番号】PCT/IB2008/052842
【国際公開番号】WO2009/013667
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(593093249)ザ ジレット カンパニー (349)
【Fターム(参考)】