説明

分光モジュール及びその製造方法

【課題】 回折格子パターンの形成を安定化させることができる分光モジュール及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 分光モジュール1においては、回折層6よりも厚くなるように回折層6の周縁6aに沿って鍔部7が一体的に形成されている。これにより、マスタモールドを用いて回折層6及び鍔部7を形成する場合の離型時に、レンズ部3の凸状の曲面3aに沿うように形成された回折層6がマスタモールドに持っていかれて曲面3aから剥離するのを防止することができる。更に、回折層6の中心に対して所定の側に偏るように回折格子パターン9が形成されている。これにより、回折層6の所定の側に対してその反対側を先行させるように離型を行うことで、回折層6が剥離したり、回折格子パターン9が損傷したりするのを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を分光して検出する分光モジュール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の分光モジュールとして、光を透過させる基板と、基板上に形成された回折格子パターンと、回折格子パターン上に形成された反射層と、を備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−204401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような分光モジュールにおいて信頼性を向上させるためには、回折格子パターンの形成の安定化が極めて重要である。特に近年、分光モジュールの小型化を図るべく回折格子パターンが微細化・薄型化されており、回折格子パターンの形成の安定化に対する要求は、ますます強くなっている。
【0005】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、回折格子パターンの形成を安定化させることができる分光モジュール及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る分光モジュールは、一方の側から入射した光を透過させる本体部と、本体部の他方の側に形成された凸状の曲面上に設けられ、本体部に入射した光を分光すると共に本体部の一方の側に反射する分光部と、本体部の一方の側に配置され、分光部によって分光された光を検出する光検出素子と、を備え、分光部は、曲面に沿うように形成された回折層、回折層よりも厚くなるように回折層の周縁に沿って一体的に形成された鍔部、及び回折層の他方の側に形成された反射層を有し、回折層には、回折層の中心に対して所定の側に偏るように回折格子パターンが形成されていることを特徴とする。
【0007】
この分光モジュールでは、回折層よりも厚くなるように回折層の周縁に沿って鍔部が一体的に形成されている。これにより、例えば型を用いて回折層及び鍔部を形成する場合の離型時に、本体部の凸状の曲面に沿うように形成された回折層が型に持っていかれて曲面から剥離するのを防止することができる。更に、回折層の中心に対して所定の側に偏るように回折格子パターンが形成されている。これにより、前述した離型時に、回折層の所定の側に対してその反対側を先行させるように離型を行えば(すなわち、型との密着性が相対的に高くなる回折格子パターンに対する離型を相対的に遅らせれば)、回折層が剥離したり、回折格子パターンが損傷したりするのを防止することができる。よって、この分光モジュールによれば、回折格子パターンの形成を安定化させることが可能となる。
【0008】
本発明に係る分光モジュールにおいては、反射層は、円形状に形成されていることが好ましい。回折層の他方の側に反射層を形成する際には、分光部が本体部の凸状の曲面上に形成されることもあって、回転方向への位置ずれが生じ易くなるが、反射層が円形状に形成されているので、回転方向への位置ずれが吸収される。従って、分光モジュールの個体差を少なくして、感度のばらつきを抑えることが可能となる。
【0009】
本発明に係る分光モジュールにおいては、反射層は、回折格子パターンが形成された領域に含まれるように形成されていることが好ましい。この場合、回折層において回折格子パターンが形成されていない領域に反射層が存在しないため、その回折格子パターンが形成されていない領域に到達した光が分光されずに本体部内に反射されて光検出素子で検出されたり、迷光となったりするのを抑制することができる。しかも、回折格子パターンが形成された領域であって且つ反射層が存在しない領域に到達した光は、僅かながら分光されると共に反射されて光検出素子で検出されることになるので、感度の向上を図ることができる。
【0010】
このとき、回折層の他方の側には、反射層を含み且つ覆うように保護層が形成されていることが好ましい。この場合、回折格子パターンが形成された領域であって且つ反射層が存在しない領域に保護層が接触することになるので、アンカー効果によって、回折層から保護層が剥離するのを防止することができる。
【0011】
本発明に係る分光モジュールにおいては、回折格子パターンは、所定の側において鍔部上に達していることが好ましい。この場合、所定の側における鍔部との境界まで、回折層に回折格子パターンを精度良く形成することができる。また、鍔部において回折格子パターンの状態を容易に検査することが可能となる。
【0012】
また、本発明に係る分光モジュールの製造方法は、上述した分光モジュールの製造方法であって、本体部の他方の側に形成された凸状の曲面上に、樹脂材を載置する工程と、樹脂材に型を押し当て、樹脂材を硬化させることにより、回折格子パターンが形成された回折層、及び鍔部を形成する工程と、所定の側に対してその反対側を先行させるように、樹脂材から型を離す工程と、を含むことを特徴とする。
【0013】
この分光モジュールの製造方法では、離型時には、回折層よりも厚くなるように回折層の周縁に沿って鍔部が一体的に形成されている。これにより、本体部の凸状の曲面に沿うように形成された回折層が型に持っていかれて曲面から剥離するのを防止することができる。更に、回折層の所定の側に対してその反対側を先行させるように離型が行われるので、型との密着性が相対的に高くなる回折格子パターンに対する離型が相対的に遅らせられることになる。これにより、回折層が剥離したり、回折格子パターンが損傷したりするのを防止することができる。よって、この分光モジュールの製造方法によれば、回折格子パターンの形成を安定化させることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、回折格子パターンの形成を安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る分光モジュールの一実施形態の平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿っての断面図である。
【図3】図1の分光モジュールのレンズ部の斜視図である。
【図4】図1の分光モジュールの分光部の断面図である。
【図5】図1の分光モジュールの分光部の下面図である。
【図6】本発明に係る分光モジュールの製造方法の一実施形態を説明するための図である。
【図7】本発明に係る分光モジュールの製造方法の一実施形態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
図1,2に示されるように、分光モジュール1は、光L1を透過させる基板(本体部)2及びレンズ部(本体部)3と、レンズ部3の曲面3a上に設けられた分光部4と、基板の前面2a上に配置された光検出素子5と、を備えている。分光モジュール1は、光L1を分光部4で複数の光L2に分光し、その光L2を光検出素子5で検出することにより、光L1の波長分布や特定波長成分の強度等を測定するものである。
【0018】
基板2は、BK7、パイレックス(登録商標)、石英等の光透過性ガラスや、光透過性モールドガラス、或いは光透過性プラスチック等によって長方形板状に形成されている。レンズ部3は、基板2と同一の材料、光透過性樹脂、光透過性の無機・有機ハイブリッド材料、或いはレプリカ成形用の光透過性低融点ガラス等によって半球状に形成されている。より具体的には、図3に示されるように、レンズ部3は、曲面3a及び前面3bを有する半球状のレンズが前面3bに略垂直で且つ互いに略平行な2つの平面で切り落とされて側面3cが形成された形状となっている。曲面3a上に設けられた分光部4によって分光された光L2は、光検出素子5の光検出部5aに結像される。
【0019】
図1,2に示されるように、基板2の後面2bとレンズ部3の前面3bとは、基板2の長手方向とレンズ部3の側面3cとが略平行となった状態で、光学樹脂やダイレクトボンディングによって接合されている。これにより、基板2及びレンズ部3は、前側(本体部の一方の側)から入射した光L1を透過させることになる。また、分光部4は、基板2及びレンズ部3の後側(本体部の他方の側)に形成された凸状の曲面3a上に設けられ、光検出素子5は、基板2及びレンズ部3の前側に配置されることになる。
【0020】
分光部4は、反射型グレーティングとして構成されており、基板2及びレンズ部3に入射した光L1を分光すると共に、分光された光L2を前側に反射する。より具体的には、図4,5に示されるように、分光部4は、曲面3aに沿うように形成された回折層6、回折層6よりも厚くなるように回折層6の周縁6aに沿って一体的に形成された鍔部7、及び回折層6の外側(後側)の表面に形成された反射層8を有している。
【0021】
回折層6には、回折格子パターン9が形成されている。回折格子パターン9は、例えば、鋸歯状断面のブレーズドグレーティング、矩形状断面のバイナリグレーティング、正弦波状断面のホログラフィックグレーティング等であって、基板2の長手方向に沿って複数の溝が並設されることによって構成されている。回折格子パターン9は、回折層6の中心Cに対して所定の側(ここでは、基板2の長手方向に沿った一方の側)に偏っている。つまり、回折格子パターン9の中心(重心)は、鍔部7に包囲された回折層6の中心(重心)に対して所定の側にずれている。
【0022】
回折層6は、後側から見た場合に円形状に形成され、鍔部7は、後側から見た場合に円環状に形成されている。そして、回折格子パターン9が形成された領域Gは、後側から見た場合に長方形状となっており、偏った所定の側において鍔部7の後面7a上に達している。また、反射層8は、後側から見た場合に円形状に形成されており、回折格子パターン9が形成された領域Gに含まれている。更に、回折層6の外側(後側)の表面には、後側から見た場合に反射層8を含み且つ覆うように円形状の保護層11が形成されている。
【0023】
なお、各部分の寸法の一例は、次の通りである。まず、回折層6は、外径2mm〜10mm、厚さ1μm〜20μmであり、鍔部7は、幅0.1mm〜1mm、厚さ10μm〜500μmである。また、反射層8は、外径1mm〜7mm、厚さ10nm〜2000nmである。更に、回折格子パターン9が形成された領域Gは、一辺の長さ1.5mm〜8mmである。
【0024】
図1,2に示されるように、光検出素子5は、分光部4によって分光された光L2を検出する光検出部5aを有している。光検出部5aは、長尺状のフォトダイオードがその長手方向に略垂直な方向に1次元に配列されて構成されている。光検出素子5は、フォトダイオードの1次元配列方向が基板2の長手方向と略一致し且つ光検出部5aが基板2の前面2a側を向くように配置されている。なお、光検出素子5は、フォトダイオードアレイに限定されず、C−MOSイメージセンサやCCDイメージセンサ等であってもよい。
【0025】
光検出素子5には、分光部4に進行する光L1を基板2及びレンズ部3に入射させる光通過孔12が設けられている。光通過孔12は、フォトダイオードの1次元配列方向に沿って光検出部5aと並設されている。光通過孔12は、基板2の長手方向に略垂直で且つ基板2の前面2aに略平行な方向に延在するスリットであり、光検出部5aに対して高精度に位置決めされた状態でエッチング等によって形成されている。
【0026】
基板2の前面2aには、AlやAu等の単層膜、或いはCr−Pt−Au、Ti−Pt−Au、Ti−Ni−Au、Cr−Au等の積層膜からなる配線13が形成されている。配線13は、複数のパッド部13a、複数のパッド部13b、及び対応するパッド部13aとパッド部13bとを接続する複数の接続部13cを有している。配線13に対して基板2の前面2a側には、CrO等の単層膜、或いはCr−CrO等の積層膜からなる光反射防止層14が形成されている。
【0027】
更に、基板2の前面2aには、CrO等の単層膜、CrO等を含む積層膜、或いはブラックレジスト等からなる光吸収層15が形成されている。光吸収層15は、配線13のパッド部13a,13bを露出させる一方で、配線13の接続部13cを覆っている。光吸収層15には、分光部4に進行する光L1を通過させるスリット15b、及び光検出素子5の光検出部5aに進行する光L2を通過させる開口15aが設けられている。スリット15bは、光検出素子5の光通過孔12と対向しており、開口15aは、光検出部5aと対向している。
【0028】
光吸収層15から露出するパッド部13aには、バンプ16を介したフェースダウンボンディングによって光検出素子5の外部端子が電気的に接続されている。そして、光検出素子5の基板2側(ここでは、光検出素子5と基板2又は光吸収層15との間)には、少なくとも光L2を透過させるアンダーフィル材17が充填されている。なお、図に示された構成においては、光検出素子5と基板2との間の全体にアンダーフィル材17が充填されているが、アンダーフィル材17をバンプ16の周辺のみに充填する構成としてもよい。また、光吸収層15から露出するパッド部13bは、分光モジュール1の外部端子として機能する。すなわち、光吸収層15から露出するパッド部13bには、外部配線等が電気的に接続される。
【0029】
次に、上述した分光モジュール1の製造方法について説明する。
【0030】
まず、レンズ部3に分光部4を形成する。より具体的には、図6(a)に示されるように、レンズ部3の曲面3aの頂部付近に、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂又は有機・無機ハイブリッド樹脂等からなる光硬化性のレプリカ用光学樹脂材21を塗布する。続いて、図6(b)に示されるように、樹脂材21に、石英等からなる光透過性のマスタモールド(型)22を押し当てる。マスタモールド22には、レンズ部3の曲面3aと略同一の曲率を有する凹状の曲面22aが設けられており、曲面22aには、回折格子パターン9に対応する複数の溝22bが形成されている。
【0031】
そして、図6(b)に示されるように、樹脂材21にマスタモールド22を押し当てた状態で、マスタモールド22を介して樹脂材21に紫外線UVを照射し、樹脂材21を硬化させることにより、回折格子パターン9が形成された回折層6、及び鍔部7を一体的に形成する。
【0032】
続いて、図6(c)に示されるように、回折層6において回折格子パターン9が偏った所定の側Aに対し、その反対側Bを先行させるように、樹脂材21からマスタモールド22を離す。つまり、マスタモールド22との密着性が相対的に高くなる回折格子パターン9に対する離型を相対的に遅らせる。なお、離型させた後は、加熱キュア行うことによって樹脂材21を安定化させることが好ましい。
【0033】
続いて、図7(a)に示されるように、マスク23の開口23aを介して、回折格子パターン9内の所定の領域Gに、AlやAu等の金属Mを蒸着することにより、反射層8を膜状に形成する。そして、図7(b)に示されるように、反射層8を含み且つ覆うように、パッシベーション膜である保護層11を形成し、分光部4を得る。
【0034】
以上のように分光部4を形成する一方で、基板2に光検出素子5を実装する。より具体的には、まず、基板2の前面2aに、光反射防止層14と配線13とをパターニングして形成し、更に、光吸収層15を全面に形成した後、パターニングしてパッド部13a,13bを露出させると共に、スリット15b及び開口15aを形成する。続いて、基板2の前面2aに、フェースダウンボンディングによって光検出素子5を実装する。
【0035】
そして、光検出素子5の光検出部5a及び光通過孔12に対し分光部4を高精度に位置決めした状態で、光検出素子5が実装された基板2の後面2bと、分光部4が形成されたレンズ部3の前面3bとを光学樹脂やダイレクトボンディングによって接合し、分光モジュール1を完成させる。
【0036】
以上説明したように、分光モジュール1及びその製造方法においては、回折層6よりも厚くなるように回折層6の周縁6aに沿って鍔部7が一体的に形成されている。これにより、マスタモールド22を用いて回折層6及び鍔部7を形成する場合の離型時に、レンズ部3の凸状の曲面3aに沿うように形成された回折層6がマスタモールド22に持っていかれて曲面3aから剥離するのを防止することができる。更に、回折層6の中心Cに対して所定の側に偏るように回折格子パターン9が形成されている。これにより、回折層6の所定の側に対してその反対側を先行させるように離型を行うことで(すなわち、マスタモールド22との密着性が相対的に高くなる回折格子パターン9に対する離型を相対的に遅らせることで)、回折層6が剥離したり、回折格子パターン9が損傷したりするのを防止することができる。よって、分光モジュール1及びその製造方法によれば、回折格子パターン9の形成を安定化させることが可能となる。
【0037】
なお、マスタモールド22との密着性が相対的に高くなる回折格子パターン9が回折層6の一部のみに形成されていることも、回折格子パターン9が回折層6の全体に形成されている場合に比べ、マスタモールド22の離型をスムーズにすることに寄与している。
【0038】
また、回折層6に反射層8を形成する際には、分光部4がレンズ部3の凸状の曲面3a上に形成されることもあって、マスク23の回転方向への位置ずれが生じ易くなる。ここで、光検出素子5の光通過孔12の断面形状と略相似形となるように(例えば、長方形状となるように)反射層を形成すると、形成された反射層にも回転方向への位置ずれが生じるので、そのように製造された分光モジュールには個体差が生じてしまう。ところが、分光モジュール1では、反射層8が円形状に形成されているので、マスク23の回転方向への位置ずれが吸収されることになる。従って、分光モジュール1の個体差を少なくして、感度のばらつきを抑えることが可能となる。
【0039】
また、回折格子パターン9が形成された領域Gに含まれるように反射層8が形成されている。この場合、回折層6において回折格子パターン9が形成されていない領域に反射層8が存在しないため、その回折格子パターン9が形成されていない領域に到達した光が分光されずに基板2及びレンズ部3内に反射されて光検出素子5で検出されたり、迷光となったりするのを抑制することができる。しかも、回折格子パターン9が形成された領域Gであって且つ反射層8が存在しない領域Geに到達した光は、僅かながら分光されると共に反射されて光検出素子5で検出されることになるので、感度の向上を図ることができる。
【0040】
また、回折層6には、反射層8を含み且つ覆うように保護層11が形成されている。これにより、回折格子パターン9が形成された領域Gであって且つ反射層8が存在しない領域Geに保護層11が接触することになるので、アンカー効果によって、回折層6から保護層11が剥離するのを防止することができる。
【0041】
更に、回折格子パターン9が所定の側において鍔部7の後面7a上に達しているので、
所定の側における鍔部7との境界まで、回折層6に回折格子パターン9を精度良く形成することができる。また、鍔部7の後面7aにおいて回折格子パターン9の状態を容易に検査することが可能となる。
【0042】
なお、分光部4を凸状の曲面3a上に設けることで、厚さ1μm〜20μmというように、回折層6を極薄く形成することができる。これにより、回折層6での光吸収を抑制して、光の利用効率を向上させることが可能となる。しかも、回折層6を極薄く形成することで、熱や水分に起因した回折層6の変形(伸縮等)を抑制することができ、安定した分光特性、及び高い信頼性を確保することが可能となる。その一方で、分光部4を凸状の曲面3a上に設けることにより、回折層6よりも鍔部7を確実且つ容易に厚くすることができ、曲面3aから回折層6が剥離するのを防止することが可能となる。
【0043】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、分光部が設けられる凸状の曲面は、球面以外の曲面であってもよい。また、基板2及びレンズ部3は、一体的に形成されたものであってもよい。更に、光通過孔が設けられていない光検出素子を採用し、例えば、光吸収層15のスリット15bから光L1を入射させてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1…分光モジュール、2…基板(本体部)、3…レンズ部(本体部)、3a…曲面、4…分光部、5…光検出素子、6…回折層、6a…周縁、7…鍔部、8…反射層、9…回折格子パターン、11…保護層、21…樹脂材、22…マスタモールド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の側から入射した光を透過させる本体部と、
前記本体部の他方の側に形成された凸状の曲面上に設けられ、前記本体部に入射した光を分光すると共に前記本体部の一方の側に反射する分光部と、
前記本体部の一方の側に配置され、前記分光部によって分光された光を検出する光検出素子と、を備え、
前記分光部は、前記曲面に沿うように形成された回折層、前記回折層よりも厚くなるように前記回折層の周縁に沿って一体的に形成された鍔部、及び前記回折層の他方の側に形成された反射層を有し、
前記回折層には、前記回折層の中心に対して所定の側に偏るように回折格子パターンが形成されていることを特徴とする分光モジュール。
【請求項2】
前記反射層は、円形状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の分光モジュール。
【請求項3】
前記反射層は、前記回折格子パターンが形成された領域に含まれるように形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の分光モジュール。
【請求項4】
前記回折層の他方の側には、前記反射層を含み且つ覆うように保護層が形成されていることを特徴とする請求項3記載の分光モジュール。
【請求項5】
前記回折格子パターンは、前記所定の側において前記鍔部上に達していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の分光モジュール。
【請求項6】
請求項1記載の分光モジュールの製造方法であって、
前記本体部の他方の側に形成された凸状の曲面上に、樹脂材を載置する工程と、
前記樹脂材に型を押し当て、前記樹脂材を硬化させることにより、前記回折格子パターンが形成された前記回折層、及び前記鍔部を形成する工程と、
前記所定の側に対してその反対側を先行させるように、前記樹脂材から前記型を離す工程と、を含むことを特徴とする分光モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−43360(P2011−43360A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190340(P2009−190340)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】