説明

分光モジュール

【課題】 大型化を防止しつつ、広い波長域の光や異なる波長域の光を精度良く検出し得る分光モジュールを提供する。
【解決手段】 分光モジュール1では、分光部7と光検出素子4とに加えて、分光部8と光検出素子9とが設けられているので、広い波長域の光や異なる波長域の光に対して検出感度を高めることができる。更に、光検出部4aと光検出部9aとの間に光通過孔4bが設けられており、光吸収性の基板2の領域Rと対向するように反射部6が設けられているので、大型化を防止することができる。また、外乱光Lは、基板2の領域Rで吸収される。そして、外乱光Lの一部が基板2における領域Rを透過したとしても、その一部の光は、領域Rと対向するように設けられた反射部6によって、領域R側に反射されるので、外乱光Lの入射に起因した迷光の発生を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を分光して検出する分光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の分光モジュールとして、両凸レンズであるブロック状の支持体を備えており、支持体の一方の凸面にブレーズド回折格子等の分光部が設けられ、支持体の他方の凸面側にフォトダイオード等の光検出素子が設けられたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような分光モジュールでは、他方の凸面側から入射した光が分光部で分光され、分光された光が光検出素子で検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−294223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような分光モジュールにあっては、小型化は図れるものの、広い波長域の光や異なる波長域の光に対して検出感度を高めることは困難である。それは、ブレーズド回折格子が特定波長域の光に対して高効率になるという特徴を有しているからである。
【0005】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、大型化を防止しつつ、広い波長域の光や異なる波長域の光を精度良く検出することができる分光モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る分光モジュールは、凹状の曲面を有し且つ一方の側に開口する凹部が設けられた本体部と、曲面に形成され、凹部に入射した光を分光すると共に本体部の一方の側に反射する第1の分光部と、曲面と対向するように支持され、第1の分光部によって分光された第1の次数の第1の光を検出する第1の光検出素子と、第1の分光部によって分光された第2の次数の第2の光を反射する反射部と、曲面に形成され、反射部によって反射された第2の光を分光すると共に本体部の一方の側に反射する第2の分光部と、曲面と対向するように支持され、第2の分光部によって分光された第3の光を検出する第2の光検出素子と、を備え、本体部の一方の側において、第1の光検出素子の第1の光検出部と第2の光検出素子の第2の光検出部との間には、凹部に光を入射させる光入射部、及び光を吸収する光吸収層が設けられており、反射部は、第1の光検出部及び第2の光検出部並びに光吸収層に対して第1の分光部及び第2の分光部側に位置し、光吸収層と対向していることを特徴とする。
【0007】
この分光モジュールでは、凹部に入射した光は、第1の分光部によって分光されると共に本体部の一方の側に反射される。第1の分光部によって分光された光のうち、第1の光は、本体部の一方の側に進行して第1の光検出素子で検出される。また、第1の分光部によって分光された光のうち、第2の光は、本体部の一方の側に進行して反射部によって本体部の他方の側に反射される。そして、反射部によって反射された第2の光は、第2の分光部によって分光されると共に本体部の一方の側に反射される。第2の分光部によって分光された光のうち、第3の光は、本体部の一方の側に進行して第2の光検出素子で検出される。このように、第1の分光部と第1の光検出素子とに加えて、第2の分光部と第2の光検出素子とが設けられているので、広い波長域の光や異なる波長域の光に対して検出感度を高めることができる。更に、第1の光検出素子の第1の光検出部と第2の光検出素子の第2の光検出部との間に光入射部及び光吸収層が設けられており、光吸収層と対向するように反射部が設けられている。このように、第1の光検出部と第2の光検出部との間の領域を利用することで、分光モジュールの大型化を防止することができる。また、光入射部から凹部に光を入射させる際に光入射部の周辺には外乱光が到達し易いが、そのような外乱光は光吸収層によって吸収される。そして、外乱光の一部が光吸収層を透過したとしても、その一部の光は、光吸収層と対向するように設けられた反射部によって光吸収層側に反射される。これにより、外乱光の入射に起因した迷光の発生を抑制することができる。以上により、この分光モジュールによれば、大型化を防止しつつ、広い波長域の光や異なる波長域の光を精度良く検出することが可能となる。
【0008】
また、光吸収層における第1の光検出素子と第2の光検出素子との間の領域は、本体部の一方の側から見た場合に反射部に含まれていることが好ましい。この構成によれば、光吸収層を透過した外乱光の一部を光吸収層側により確実に反射することができる。
【0009】
また、凹部を覆うように本体部の一方の側に配置された基板を更に備え、第1の光検出素子及び第2の光検出素子は、基板の一方の面に設けられ、反射部は、基板の他方の面に設けられていることが好ましい。この構成によれば、光吸収層に対して第1の分光部及び第2の分光部側であって光吸収層と対向する位置に、反射部を容易に且つ精度良く形成することができる。なお、基板の他方の面に反射部を設けるに際し、反射特性のよい反射層、及び基板に対して馴染みのよい下地層を含む積層構造として反射部を形成することが必要となる場合がある。このとき、基板の他方の面に下地層を形成し、その下地層上に反射層を形成することにより、反射部を設け、その反射部が凹部の曲面と対向するように基板と本体部とを接合する。これにより、反射層が第1の分光部及び第2の分光部側に臨むので、第2の光を確実に反射することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、大型化を防止しつつ、広い波長域の光や異なる波長域の光を精度良く検出することができる分光モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る分光モジュールの第1の実施形態が適用された分光器の平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿っての分光モジュールの断面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿っての断面図である。
【図4】図2の分光モジュールの要部拡大断面図である。
【図5】図2の分光モジュールの製造工程を示す断面図である。
【図6】図2の分光モジュールの製造工程を示す断面図である。
【図7】図2の分光モジュールの製造工程を示す断面図である。
【図8】本発明に係る分光モジュールの第2の実施形態が適用された分光器の断面図である。
【図9】本発明に係る分光モジュールの他の実施形態の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[第1の実施形態]
【0013】
図1に示されるように、分光器20は、分光モジュール1と、分光モジュール1を収容するパッケージ21と、を備えている。パッケージ21は、直方体箱状の箱体22及び長方形板状の蓋体23を有している。箱体22及び蓋体23は、光吸収性を有する樹脂やセラミック等の光吸収性材料からなる。蓋体23には、光を外部から箱体22内に入射させるための光入射孔23aが形成されており、光入射孔23aには、光透過性の光入射窓板23bが固定されている。箱体22には、前側に開口しており、その開口部には、蓋体23が嵌め合わされる断面長方形状の凹部22aが形成されている。箱体22における長手方向と平行な両側面には、複数のリード24が埋設されている。各リード24の基端部は、箱体22内に露出し、各リード24の先端部は、箱体22の外部に延在している。
【0014】
図1,2に示されるように、分光モジュール1は、凹状の曲面3bを有し且つ前側(一方の側)に開口する半球状の凹部3aを有する直方体状の本体部3と、凹部3aを覆うように本体部3の前側に配置された基板(光吸収層)2と、基板2を介して凹部3aに入射した光Lを分光すると共に前側に反射する分光部(第1の分光部)7と、分光部7によって分光された−1次光である光(第1の次数の第1の光)L1を検出する光検出素子(第1の光検出素子)4と、を備えている。更に、分光モジュール1は、分光部7によって分光された0次光である光(第2の次数の第2の光)L2を後側(他方の側)に反射する反射部6と、反射部6により反射された光L2を分光すると共に前側に反射する分光部8と、分光部8によって分光された光(第3の光)L3を検出する光検出素子(第2の光検出素子)9と、を備えている。
【0015】
基板2は、例えば、ブラックレジスト、フィラー(カーボンや酸化物等)が入った有色の樹脂(シリコーン、エポキシ、アクリル、ウレタン、ポリイミド、複合樹脂等)、CrやCo等の金属又は酸化金属、或いは、その積層膜、ポーラス状のセラミックや金属又は酸化金属等の光吸収性の材料からなり、開口部2c,2dを有している。開口部2cは、基板2の長手方向における一方の側に位置し、開口部2dは、基板2の長手方向における他方の側に位置している。開口部2cは、本体部3の凹部3aに入射する光L、及び分光部7によって分光された光L1が通過する孔である。開口部2dは、分光部8によって分光された光L3が通過する孔である。
【0016】
基板2の前面(一方の面)2aには、AlやAu等の単層膜、或いはCr−Pt−Au、Ti−Pt−Au、Ti−Ni−Au、Cr−Au等の積層膜からなる配線10が形成されている。配線10は、複数のパッド部10a、複数のパッド部10b、及び対応するパッド部10aとパッド部10bとを接続する複数の接続部10cを有している。複数のパッド部10bは、箱体22に埋設された各リード24の基端部と対応するように配置されている。なお、配線10に対して基板2の前面2a側には、CrO等の単層膜、或いはCr−CrO等の積層膜からなる光反射防止層が形成されている。
【0017】
パッド部10aには、バンプ11を介したフェースダウンボンディングによって、長方形板状の光検出素子4,9の外部端子が接続されている。光検出素子4は、光検出部4aが基板2の開口部2cと対向するように基板2の長手方向における一方の側に位置している。光検出素子9は、光検出部9aが基板2の開口部2dと対向するように基板2の長手方向における他方の側に位置している。なお、光検出素子4,9と基板2の前面2aとの間には、パッド部10a及びバンプ11を覆うようにアンダーフィル材が塗布されている。
【0018】
光検出素子4の光検出部4aは、長尺状のフォトダイオードがその長手方向に略垂直な方向に1次元に配列されて構成されている。光検出素子4は、フォトダイオードの1次元配列方向が基板2の長手方向と略一致し且つ光検出部4aが基板2の前面2a側を向くように配置されている。なお、光検出素子4は、フォトダイオードアレイに限定されず、C−MOSイメージセンサやCCDイメージセンサ等であってもよい。
【0019】
光検出素子4には、本体部3の凹部3aに入射する光Lが通過する光通過孔(光入射部)4bが設けられている。光通過孔4bは、基板2の長手方向において光検出部4aの他方の側に位置しており、基板2の開口部2cと対向している。光通過孔4bは、基板2の長手方向に略垂直で且つ基板2の前面2aに略平行な方向に延在するスリットであり、光検出部4aに対して高精度に位置決めされた状態でエッチング等によって形成されている。
【0020】
光検出素子9の光検出部9aは、光検出素子4の光検出部4aと同様に、長尺状のフォトダイオードがその長手方向に略垂直な方向に1次元に配列されて構成されている。光検出素子9は、フォトダイオードの1次元配列方向が基板2の長手方向と略一致し且つ光検出部9aが基板2の前面2a側を向くように配置されている。なお、光検出素子9は、光検出素子4と同様に、フォトダイオードアレイに限定されず、C−MOSイメージセンサやCCDイメージセンサ等であってもよい。
【0021】
なお、パッド部10bは、分光モジュール1の外部端子として機能している。すなわち、パッド部10bは、ワイヤ25によりリード24の基端部と電気的に接続されている。これにより、光検出素子4の光検出部4aが光L1を受光することにより発生する電気信号は、光検出素子4側のバンプ11、配線10、ワイヤ25及びリード24を介して分光器20の外部に取り出される。同様に、光検出素子9の光検出部9aが光L3を受光することにより発生する電気信号は、光検出素子9側のバンプ11、配線10、ワイヤ25及びリード24を介して分光器20の外部に取り出される。
【0022】
図2に示されるように、基板2の後面(他方の面)2bには、直方体状の本体部3が接合されている。本体部3は、遮光性又は吸光性を有する樹脂、例えば、液晶性全芳香性ポリエステル樹脂、ポリカーボネ―ト、又は黒エポキシ等からなる。なお、基板2によって覆われる凹部3aの曲面3bは、非球面であってもよい。
【0023】
図2〜4に示されるように、凹部3aの曲面3bの底部周辺には、分光部7,8が設けられている。分光部7は、光検出素子4と対向するように基板2の長手方向における一方の側に位置している。分光部8は、光検出素子9と対向するように基板2の長手方向における他方の側に位置している。分光部7は、回折層5に形成された回折格子パターン7a、及び回折格子パターン7aを覆うように形成された反射層12を有している。同様に、分光部8は、回折層5に形成された回折格子パターン8a、及び回折格子パターン8aを覆うように形成された反射層13を有している。
【0024】
回折層5は、前側から見た場合に円形状に形成されている。また、各反射層12,13は、前側から見た場合に円形状に形成されており、それぞれに対応する回折格子パターン7a,8aが形成された領域に含まれている。
【0025】
回折層5は、凹部3aの曲面3bに沿うように膜状に形成されている。回折層5は、光硬化性のエポキシ樹脂、アクリル樹脂、又は有機無機ハイブリッド樹脂等のレプリカ用光学樹脂を光硬化させることよって設けられている。回折格子パターン7a,8aは、鋸歯状断面のブレーズドグレーティングであって、基板2の長手方向に沿って複数の溝が並設されることによって構成されている。反射層12,13は、膜状であって、例えば、AlやAu等を蒸着することで形成されている。
【0026】
図2に示されるように、反射部6は、凹部3aの曲面3bと対向するように基板2の後面2bに設けられている。これにより、反射部6は、光検出素子4の光検出部4a及び光検出素子9の光検出部9a並びに基板2に対して後側(すなわち、分光部7,8側)に位置することになる。更に、反射部6は、基板2における光検出部4aと光検出部9aとの間の領域Rと対向しており、前側から見た場合に、基板2における光検出素子4と光検出素子9との間の領域R1(すなわち、基板2のうち、光検出素子4と光検出素子9との間から前側に露出する部分)を含んでいる。
【0027】
以上のように構成された分光モジュール1では、光検出素子4の光通過孔4bから基板2の開口部2cを介して凹部3aに入射した光Lは、分光部7によって分光されると共に前側に反射される。分光部7によって分光された光のうち、光L1は、前側に進行して光検出素子4で検出される。また、分光部7によって分光された光のうち、光L2は、前側に進行して反射部6によって後側に反射される。そして、反射部6によって反射された光L2は、分光部8によって分光されると共に前側に反射される。分光部8によって分光された光のうち、光L3は、前側に進行して光検出素子9で検出される。このように、分光部7と光検出素子4とに加えて、分光部8と光検出素子9とが設けられているので、広い波長域の光や異なる波長域の光に対して検出感度を高めることができる。
【0028】
更に、光検出素子4の光検出部4aと光検出素子9の光検出部9aとの間に、光通過孔4bが設けられ、基板2の領域Rと対向するように反射部6が設けられている。このように、光検出部4aと光検出部9aとの間の領域を利用することで、分光モジュール1の大型化を防止することができる。
【0029】
また、光通過孔4bから凹部3aに光Lを入射させる際に光通過孔4bの周辺には外乱光Lが到達し易いが、そのような外乱光Lは、基板2の領域Rで吸収される。そして、外乱光Lの一部が、基板2の領域Rを透過したとしても、その一部の光は、基板2の領域Rと対向し且つ基板2の領域R1を含むように設けられた反射部6によって、基板の領域R側に確実に反射される。これにより、外乱光Lの入射に起因した迷光の発生を抑制することができる。
【0030】
ここで、外乱光Lの一部(特に長波長光成分)が、光吸収性の材料による基板2における領域Rを透過して凹部3aに入射してしまうと、迷光の一部として、凹部3a内でノイズを発生させる。光L2は、長波長光であることが多いので、光L2,L3は、光の強度がそれほど大きくないことが大半である。すなわち、光L2,L3は、外乱光Lによるノイズの影響を多大に受けやすい。このような事態を軽減するために上記のように反射部6を設けることは、極めて有効である。
【0031】
以上により、分光モジュール1によれば、大型化を防止しつつ、広い波長域の光や異なる波長域の光を精度良く検出することが可能となる。
【0032】
上述した分光モジュール1の製造方法について説明する。
【0033】
まず、図5(a)に示されるように、凹部3aを有する本体部3を樹脂成型する。続いて、図5(b)に示されるように、凹部3aの曲面3bの底部周辺に、光硬化性の樹脂材14を塗布する。続いて、図6(a)に示されるように、塗布された樹脂材14に、回折格子パターン7a,8aを形成するための型であるマスターグレーティング15を押し当てると共に、光を照射して樹脂材14を硬化させ、回折格子パターン7a,8aが形成された回折層5を設ける。このとき、必要に応じて、回折層5に熱処理を加えてこれを強化してもよい。更に、図6(b)に示されるように、回折格子パターン7a,8aを覆うように、AlやAu等を蒸着することにより反射層12,13を形成する。これにより、分光部7,8が形成される。
【0034】
その一方で、図7(a)に示されるように、開口部2c,2dを有する基板2の前面2aに、配線10を形成する。続いて、図7(b)に示されるように、基板2の後面2bに、下地層6a、中間層6b及び反射層6cを積層することにより、積層構造からなる反射部6を形成する。反射部6は、例えば、下地層6aがTi又はCrからなり、中間層6bがPtからなり、反射層6cがAuからなる積層構造である。続いて、図7(c)に示されるように、光検出部4a及び光通過孔4bが基板2の開口部2cに対向するように、バンプ11を介したフェースダウンボンディングによって光検出素子4を配線10のパッド部10a上に実装する。同様に、光検出部9aが基板2の開口部2dに対向するように、バンプ11を介したフェースダウンボンディングによって光検出素子9を配線10のパッド部10a上に実装する。
【0035】
最後に、光検出素子4及び光検出素子9が実装された基板2を、凹部3aを覆うように本体部3に接合することにより、図2に示されるように、分光モジュール1を得る。
【0036】
以上説明したように、分光モジュール1の製造方法においては、反射部6を基板2の後面2bに設ける。これにより、光検出素子4の光検出部4a及び光検出素子9の光検出部9a並びに基板2に対して分光部7,8側であって、基板2の領域Rと対向する位置に、反射部6を容易に且つ精度良く形成することができる。しかも、基板2の後面2bに下地層6aを形成し、その下地層6a上に反射層6cを形成することにより、反射部6を設ける。これにより、反射層6cが分光部7,8側に臨むので、光L2を確実に反射させることができる。
[第2の実施形態]
【0037】
図8に示されるように、分光器30の分光モジュール1において、本体部3には、蓋体23が嵌め合わされる断面長方形状の凹部3cが形成されており、凹部3cの底面には、断面長方形状の凹部3dが形成されている。本体部3における長手方向と垂直な両側面には、複数のリード24が埋設されている。各リード24の基端部は、凹部3dの底面に接触した状態で凹部3d内に露出しており、各リード24の先端部は、本体部3の外部に延在している。このように、分光器30では、分光モジュール1の本体部3がパッケージとして機能している。
【0038】
更に、凹部3dの底面には、断面長方形状の凹部3eが形成されており、凹部3eの底面には、凹状の曲面3bを有し且つ前側(一方の側)に開口する半球状の凹部3aが形成されている。曲面3bには、分光部7,8が設けられている。本体部3の凹部3eには、BK7、パイレックス(登録商標)、石英等の光透過性ガラスや、光透過性モールドガラス、或いは光透過性プラスチック等によって、長方形板状に形成された光透過性の基板2が嵌め合わされている。
【0039】
なお、本体部3の底面には、一対の溝29が設けられている。溝29は、回折格子パターン7a,8aが配列される方向において分光部7,8の両側に位置し、且つ、回折格子パターン7a,8aの溝が配列される方向と直交する方向に沿って延在している。この溝29は、本体部3を形成する際に一体的に形成されるが、その樹脂成型の際に生じるひけは、この一対の溝29によって回折格子パターン7a,8aの溝の配列方向において緩和され、その方向において回折格子パターン7a,8aの溝の位置ズレがより一層抑制される。回折格子パターン7a,8aの溝に、その配列方向に関する位置ズレが生じた場合、分光する光の波長がシフトしてしまうおそれがある。ここでは、回折格子パターン7a,8aの溝の配列方向、すなわち、光の分光方向に関する回折格子パターン7a,8aの溝の位置ズレが抑制されるため、分光特性の低下を抑制することができる。
【0040】
光透過性の基板2の前面2aには、複数のパッド部10a、複数のパッド部10b、及び対応するパッド部10aとパッド部10bとを接続する複数の接続部10cを有する配線10が形成されている。複数のパッド部10bは、本体部3に埋設された各リード24の基端部と対応するように配置されている。なお、配線10に対して基板2の前面2a側には、CrO等の単層膜、或いはCr−CrO等の積層膜からなる光反射防止層が形成されている。
【0041】
基板2の前面2aには、光吸収層27が形成されている。光吸収層27は、配線10のパッド部10a,10bを露出させる一方で、配線10の接続部10cを覆っている。光吸収層27には、開口部27a,27b,27cが設けられている。開口部27bは、基板2の長手方向における一方の側に位置し、開口部27cは、基板2の長手方向における他方の側に位置している。開口部27aは、開口部27bと開口部27cとの間に位置している。開口部27aは、基板2及び凹部3aに入射する光Lが通過する孔である。開口部27bは、分光部7によって分光された光L1が通過する孔であり、開口部27cは、分光部8によって分光された光L3が通過する孔である。光吸収層27の材料としては、ブラックレジスト、フィラー(カーボンや酸化物等)が入った有色の樹脂(シリコーン、エポキシ、アクリル、ウレタン、ポリイミド、複合樹脂等)、CrやCo等の金属又は酸化金属、或いはその積層膜、ポーラス状のセラミックや金属又は酸化金属が挙げられる。
【0042】
基板2の前面2aと光吸収層27との間には、絶縁層26が形成されている。絶縁層26は、配線10のパッド部10a,10bを露出させる一方で、配線10の接続部10cを覆っている。絶縁層26の一部である絶縁部26aは、基板2の長手方向における開口部27b内の一方の側の部分を覆っている。絶縁層26の一部である絶縁部26bは、基板2の長手方向における開口部27c内の他方の側の部分を覆っている。絶縁部26a,26bは、所定の波長域の光をカットする光学フィルタとして機能する。
【0043】
絶縁層26及び光吸収層27から露出するパッド部10aには、バンプ11を介したフェースダウンボンディングによって、長方形板状の光検出素子4,9の外部端子が接続されている。光検出素子4の基板2側(ここでは、光検出素子4と、基板2、絶縁層26又は光吸収層27との間)には、少なくとも光L1を透過させるアンダーフィル材28が充填されている。同様に、光検出素子9の基板2側(ここでは、光検出素子9と、基板2、絶縁層26又は光吸収層27との間)には、少なくとも光L3を透過させるアンダーフィル材28が充填されている。図8に示された構成においては、光検出素子4,9と基板2との間の全体にアンダーフィル材28が充填されているが、アンダーフィル材28がバンプ11の周辺のみに充填される構成であってもよい。なお、絶縁層26及び光吸収層27から露出するパッド部10bは、外部端子として機能する。すなわち、パッド部10bは、ワイヤ25によりリード24の基端部とワイヤボンディングされ、電気的に接続されている。
【0044】
以上のように構成された分光モジュール1では、光検出素子4の光通過孔4b及び光吸収層27の開口部27aから基板2を介して凹部3aに入射した光Lは、分光部7によって分光されると共に前側に反射される。分光部7によって分光された光のうち、光L1は、前側に進行して光検出素子4で検出される。また、分光部7によって分光された光のうち、光L2は、前側に進行して反射部6によって後側に反射される。そして、反射部6によって反射された光L2は、分光部8によって分光されると共に前側に反射される。分光部8によって分光された光のうち、光L3は、前側に進行して光検出素子9で検出される。このように、分光部7と光検出素子4とに加えて、分光部8と光検出素子9とが設けられているので、広い波長域の光や異なる波長域の光に対して検出感度を高めることができる。
【0045】
更に、光検出素子4の光検出部4aと光検出素子9の光検出部9aとの間に、光通過孔4bが設けられ、光吸収層27において光検出部4aと光検出部9aとの間の領域Rと対向するように反射部6が設けられている。このように、光検出部4aと光検出部9aとの間の領域を利用することで、分光モジュール1の大型化を防止することができる。
【0046】
また、光通過孔4bから凹部3aに光Lを入射させる際に光通過孔4bの周辺には外乱光Lが到達し易いが、そのような外乱光Lは、光吸収層27の領域Rで吸収される。そして、外乱光Lの一部が、光吸収層27の領域Rを透過したとしても、その一部の光は、光吸収層27の領域Rと対向し且つ光吸収層27の領域R1(光吸収層27において光検出素子4と光検出素子9との間の領域)を含むように設けられた反射部6によって、光吸収層27の領域R側に確実に反射される。これにより、外乱光Lの入射に起因した迷光の発生を抑制することができる。
【0047】
以上により、分光モジュール1によれば、大型化を防止しつつ、広い波長域の光や異なる波長域の光を精度良く検出することが可能となる。
【0048】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0049】
例えば、図9に示されるように、本体部3の凹部3aの曲面3bに、直接(回折層5を設けずに)、回折格子パターン7a,8aを形成してもよい。また、回折格子パターン7a,8aの種類は、図9(a)に示されるように、鋸歯状断面のブレーズドグレーティングであってもよいし、図9(b)に示されるように、矩形状断面のバイナリグレーティングであってもよい。
【0050】
また、光通過孔4bを光検出素子4に設けずに、凹部3aに光Lを入射させる光入射部として、光吸収層としての基板2の領域R1や、光吸収層27の領域R1に、光通過孔を設けてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…分光モジュール、2…基板、3…本体部、3a…凹部、3b…曲面、4…光検出素子(第1の光検出素子)、4a…光検出部(第1の光検出部)、4b…光通過孔、6…反射部、7…分光部(第1の分光部)、8…分光部(第2の分光部)、9…光検出素子(第2の光検出素子)、9a…光検出部(第2の光検出部)、R…領域(第1の光検出部と第2の光検出部との間の領域)、R1…領域(第1の光検出素子と第2の光検出素子との間の領域)、L…被測定光、L1…光(第1の光)、L2…光(第2の光)、L3…光(第3の光)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹状の曲面を有し且つ一方の側に開口する凹部が設けられた本体部と、
前記曲面に形成され、前記凹部に入射した光を分光すると共に前記本体部の一方の側に反射する第1の分光部と、
前記曲面と対向するように支持され、前記第1の分光部によって分光された第1の次数の第1の光を検出する第1の光検出素子と、
前記第1の分光部によって分光された第2の次数の第2の光を反射する反射部と、
前記曲面に形成され、前記反射部によって反射された前記第2の光を分光すると共に前記本体部の一方の側に反射する第2の分光部と、
前記曲面と対向するように支持され、前記第2の分光部によって分光された第3の光を検出する第2の光検出素子と、を備え、
前記本体部の一方の側において、前記第1の光検出素子の第1の光検出部と前記第2の光検出素子の第2の光検出部との間には、前記凹部に光を入射させる光入射部、及び光を吸収する光吸収層が設けられており、
前記反射部は、前記第1の光検出部及び前記第2の光検出部並びに前記光吸収層に対して前記第1の分光部及び前記第2の分光部側に位置し、前記光吸収層と対向していることを特徴とする分光モジュール。
【請求項2】
前記光吸収層における前記第1の光検出素子と前記第2の光検出素子との間の領域は、前記本体部の一方の側から見た場合に前記反射部に含まれていることを特徴とする請求項1記載の分光モジュール。
【請求項3】
前記凹部を覆うように前記本体部の一方の側に配置された基板を更に備え、
前記第1の光検出素子及び前記第2の光検出素子は、前記基板の一方の面に設けられ、
前記反射部は、前記基板の他方の面に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の分光モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−215074(P2011−215074A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85204(P2010−85204)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】