説明

分光モジュール

【課題】 大型化を防止しつつ、広い波長域の光や異なる波長域の光を精度良く検出し得る分光モジュールを提供する。
【解決手段】 分光モジュール1では、分光部4と光検出素子5とに加えて、分光部8と光検出素子9とが設けられているので、広い波長域の光や異なる波長域の光に対して検出感度を高めることができる。更に、光検出部5aと光検出部9aとの間に光通過孔5b及び光吸収層12が設けられており、その光吸収層12(すなわち、領域R)と対向するように反射部7が設けられているので、大型化を防止することができる。また、外乱光Lは、光吸収層12に吸収される。そして、外乱光Lの一部が光吸収層12の領域Rを透過したとしても、その一部の光は、領域Rと対向するように設けられた反射部7によって領域R側に反射されるので、外乱光Lの入射に起因した迷光の発生を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を分光して検出する分光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の分光モジュールとして、両凸レンズであるブロック状の支持体を備えており、支持体の一方の凸面にブレーズド回折格子等の分光部が設けられ、支持体の他方の凸面側にフォトダイオード等の光検出素子が設けられたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような分光モジュールでは、他方の凸面側から入射した光が分光部で分光され、分光された光が光検出素子で検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−294223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような分光モジュールにあっては、小型化は図れるものの、広い波長域の光や異なる波長域の光に対して検出感度を高めることは困難である。それは、ブレーズド回折格子が特定波長域の光に対して高効率になるという特徴を有しているからである。
【0005】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、大型化を防止しつつ、広い波長域の光や異なる波長域の光を精度良く検出することができる分光モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る分光モジュールは、一方の側から入射した光を透過させる本体部と、本体部の他方の側に設けられ、本体部に入射した光を分光すると共に本体部の一方の側に反射する第1の分光部と、本体部の一方の側に配置され、第1の分光部によって分光された第1の次数の第1の光を検出する第1の光検出素子と、第1の分光部によって分光された第2の次数の第2の光を反射する反射部と、本体部の他方の側に設けられ、反射部によって反射された第2の光を分光すると共に本体部の一方の側に反射する第2の分光部と、本体部の一方の側に配置され、第2の分光部によって分光された第3の光を検出する第2の光検出素子と、を備え、本体部の一方の側において、第1の光検出素子の第1の光検出部と第2の光検出素子の第2の光検出部との間には、本体部に光を入射させる光入射部、及び光を吸収する光吸収層が設けられており、反射部は、第1の光検出部及び第2の光検出部並びに光吸収層に対して第1の分光部及び第2の分光部側に位置し、光吸収層と対向していることを特徴とする。
【0007】
この分光モジュールでは、本体部に入射した光は、第1の分光部によって分光されると共に本体部の一方の側に反射される。第1の分光部によって分光された光のうち、第1の光は、本体部の一方の側に進行して第1の光検出素子で検出される。また、第1の分光部によって分光された光のうち、第2の光は、本体部の一方の側に進行して反射部によって本体部の他方の側に反射される。そして、反射部によって反射された第2の光は、第2の分光部によって分光されると共に本体部の一方の側に反射される。第2の分光部によって分光された光のうち、第3の光は、本体部の一方の側に進行して第2の光検出素子で検出される。このように、第1の分光部と第1の光検出素子とに加えて、第2の分光部と第2の光検出素子とが設けられているので、広い波長域の光や異なる波長域の光に対して検出感度を高めることができる。更に、第1の光検出素子の第1の光検出部と第2の光検出素子の第2の光検出部との間に光入射部及び光吸収層が設けられており、光吸収層と対向するように反射部が設けられている。このように、第1の光検出部と第2の光検出部との間の領域を利用することで、分光モジュールの大型化を防止することができる。また、光入射部から本体部に光を入射させる際に光入射部の周辺には外乱光が到達し易いが、そのような外乱光は光吸収層によって吸収される。そして、外乱光の一部が光吸収層を透過したとしても、その一部の光は、光吸収層と対向するように設けられた反射部によって光吸収層側に反射される。これにより、外乱光の入射に起因した迷光の発生を抑制することができる。以上により、本発明によれば、大型化を防止しつつ、広い波長域の光や異なる波長域の光を精度良く検出することが可能となる。
【0008】
また、光吸収層における第1の光検出素子と第2の光検出素子との間の領域は、本体部の一方の側から見た場合に反射部に含まれていることが好ましい。この構成によれば、光吸収層を透過した外乱光の一部を光吸収層側により確実に反射することができる。
【0009】
また、本体部は、第1の部分と、第1の部分に対して第1の光検出素子及び第2の光検出素子側に位置し、第1の部分と接合された第2の部分と、を有し、反射部は、第1の部分と第2の部分との間に設けられていることが好ましい。この構成によれば、光吸収層に対して第1の分光部及び第2の分光部側であって光吸収層と対向する位置に、反射部を容易に且つ精度良く形成することができる。なお、第1の部分と第2の部分との間に反射部を設けるに際し、反射特性のよい反射層、及び本体部に対して馴染みのよい下地層を含む積層構造として反射部を形成することが必要となる場合がある。このとき、第2の部分に下地層を形成し、その下地層上に反射層を形成することにより、反射部を設け、その反射部を挟むように、第1の部分と第2の部分とを接合する。これにより、反射層が第1の分光部及び第2の分光部側に臨むので、第2の光を確実に反射することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、大型化を防止しつつ、広い波長域の光や異なる波長域の光を精度良く検出することができる分光モジュールを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る分光モジュールの一実施形態の平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿っての断面図である。
【図3】図1の分光モジュールの下面図である。
【図4】図1の分光モジュールの製造方法を説明するための断面図である。
【図5】図1の分光モジュールの製造方法を説明するための断面図である。
【図6】図1の分光モジュールの製造方法を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1,2に示されるように、分光モジュール1は、前側(一方の側)から入射した光Lを透過させる基板(本体部、第2の部分)2及びレンズ部(本体部、第1の部分)3と、基板2及びレンズ部3に入射した光Lを分光すると共に前側に反射する分光部(第1の分光部)4と、分光部4によって分光された−1次光である光(第1の次数の第1の光)L1を検出する光検出素子(第1の光検出素子)5と、を備えている。更に、分光モジュール1は、分光部4によって分光された0次光である光(第2の次数の第2の光)L2を後側(他方の側)に反射する反射部7と、反射部7により反射された光L2を分光すると共に前側に反射する分光部8と、分光部8によって分光された光(第3の光)L3を検出する光検出素子(第2の光検出素子)9と、を備えている。
【0014】
基板2は、BK7、パイレックス(登録商標)、石英等の光透過性ガラスや、光透過性モールドガラス、或いは光透過性プラスチック等によって、長方形板状に形成されている。基板2の前面2aには、AlやAu等の単層膜、或いはCr−Pt−Au、Ti−Pt−Au、Ti−Ni−Au、Cr−Au等の積層膜からなる配線10が形成されている。配線10は、複数のパッド部10a、複数のパッド部10b、及び対応するパッド部10aとパッド部10bとを接続する複数の接続部10cを有している。なお、配線10に対して基板2の前面2a側には、CrO等の単層膜、或いはCr−CrO等の積層膜からなる光反射防止層が形成されている。
【0015】
基板2の前面2aには、光吸収層12が形成されている。光吸収層12は、配線10のパッド部10a,10bを露出させる一方で、配線10の接続部10cを覆っている。光吸収層12には、開口部12a,12b,12cが設けられている。開口部12bは、基板2の長手方向における一方の側に位置し、開口部12cは、基板2の長手方向における他方の側に位置している。開口部12aは、開口部12bと開口部12cとの間に位置している。開口部12aは、基板2及びレンズ部3に入射する光Lが通過する孔である。開口部12bは、分光部4によって分光された光L1が通過する孔であり、開口部12cは、分光部8によって分光された光L3が通過する孔である。光吸収層12の材料としては、ブラックレジスト、フィラー(カーボンや酸化物等)が入った有色の樹脂(シリコーン、エポキシ、アクリル、ウレタン、ポリイミド、複合樹脂等)、CrやCo等の金属又は酸化金属、或いはその積層膜、ポーラス状のセラミックや金属又は酸化金属が挙げられる。
【0016】
基板2の前面2aと光吸収層12との間には、絶縁層11が形成されている。絶縁層11は、配線10のパッド部10a,10bを露出させる一方で、配線10の接続部10cを覆っている。絶縁層11の一部である絶縁部11aは、基板2の長手方向における開口部12b内の一方の側の部分を覆っている。絶縁層11の一部である絶縁部11bは、基板2の長手方向における開口部12c内の他方の側の部分を覆っている。絶縁部11a,11bは、所定の波長域の光をカットする光学フィルタとして機能する。
【0017】
絶縁層11及び光吸収層12から露出するパッド部10aには、バンプ13を介したフェースダウンボンディングによって、長方形板状の光検出素子5,9の外部端子が接続されている。光検出素子5は、光検出部5aが光吸収層12の開口部12bと対向するように基板2の長手方向における一方の側に位置している。光検出素子9は、光検出部9aが光吸収層12の開口部12cと対向するように基板2の長手方向における他方の側に位置している。
【0018】
光検出素子5の光検出部5aは、長尺状のフォトダイオードがその長手方向に略垂直な方向に1次元に配列されて構成されている。光検出素子5は、フォトダイオードの1次元配列方向が基板2の長手方向と略一致し且つ光検出部5aが基板2の前面2a側を向くように配置されている。なお、光検出素子5は、フォトダイオードアレイに限定されず、C−MOSイメージセンサやCCDイメージセンサ等であってもよい。
【0019】
光検出素子5には、基板2及びレンズ部3に入射する光Lが通過する光通過孔5bが設けられている。光通過孔5bは、光吸収層12の開口部12aと対向するように、フォトダイオードの1次元配列方向に沿って光検出部5aと並設されている。
光通過孔5bは、基板2の長手方向に略垂直で且つ基板2の前面2aに略平行な方向に延在するスリットであり、光検出部5aに対して高精度に位置決めされた状態でエッチング等によって形成されている。
【0020】
光検出素子9の光検出部9aは、光検出素子5の光検出部5aと同様に、長尺状のフォトダイオードがその長手方向に略垂直な方向に1次元に配列されて構成されている。光検出素子9は、フォトダイオードの1次元配列方向が基板2の長手方向と略一致し且つ光検出部9aが基板2の前面2a側を向くように配置されている。なお、光検出素子9は、光検出素子5と同様に、フォトダイオードアレイに限定されず、C−MOSイメージセンサやCCDイメージセンサ等であってもよい。
【0021】
光検出素子5の基板2側(ここでは、光検出素子5と、基板2、絶縁層11又は光吸収層12との間)には、少なくとも光L1を透過させるアンダーフィル材20が充填されている。同様に、光検出素子9の基板2側(ここでは、光検出素子9と、基板2、絶縁層11又は光吸収層12との間)には、少なくとも光L3を透過させるアンダーフィル材20が充填されている。図2に示された構成においては、光検出素子5,9と基板2との間の全体にアンダーフィル材20が充填されているが、アンダーフィル材20がバンプ13の周辺のみに充填される構成であってもよい。なお、絶縁層11及び光吸収層12から露出するパッド部10bは、分光モジュール1の外部端子として機能する。すなわち、光吸収層12から露出するパッド部10bには、外部配線等が電気的に接続される。
【0022】
図2,3に示されるように、基板2の後面2bには、反射部7を挟んで、球面状の外側表面3aを有するレンズ部3が設けられる。レンズ部3は、基板2と同一の材料、光透過性樹脂、光透過性の無機・有機ハイブリッド材料、或いはレプリカ成形用の光透過性低融点ガラス、プラスチック等によって、半球状のレンズがその底面3bと略直交し且つ互いに略平行な2つの平面で切り落とされて側面3cが形成された形状となっている。レンズ部3は、基板2の後面2bに形成されたレジスト層15の開口部15aに嵌め合わされ、少なくとも光L,L1,L3を透過させる光学樹脂材19によって基板2の後面2bに接着されている。なお、レンズ形状は、球面レンズに限らず、非球面レンズであってもよい。
【0023】
レンズ部3の後側には、分光部4,8が設けられている。分光部4は、光検出素子5と対向するように基板2の長手方向における一方の側に位置している。分光部8は、光検出素子9と対向するように基板2の長手方向における他方の側に位置している。分光部4は、回折層6に形成された回折格子パターン4a、及び回折格子パターン4aを覆うように形成された反射層17を有している。同様に、分光部8は、回折層6に形成された回折格子パターン8a、及び回折格子パターン8aを覆うように形成された反射層18を有している。
【0024】
回折層6は、レンズ部3の外側表面3aに沿うように膜状に形成されており、回折層6には、その周縁6aに沿って、回折層6よりも厚くなるように鍔部16が一体的に形成されている。回折層6及び鍔部16は、光硬化性のエポキシ樹脂、アクリル樹脂、又は有機無機ハイブリッド樹脂等のレプリカ用光学樹脂を光硬化させることによって設けられている。回折格子パターン4a,8aは、例えば、鋸歯状断面のブレーズドグレーティング、矩形状断面のバイナリグレーティング、正弦波状断面のホログラフィックグレーティング等であって、基板2の長手方向に沿って複数の溝が並設されることによって構成されている。反射層17,18は、膜状であって、例えば、AlやAu等を蒸着することで形成されている。
【0025】
回折層6は、後側から見た場合に円形状に形成され、鍔部16は、後側から見た場合に円環状に形成されている。また、各反射層17,18は、後側から見た場合に円形状に形成されており、それぞれに対応する回折格子パターン4a,8aが形成された領域に含まれている。なお、回折層6の外側(後側)の表面には、後側から見た場合に反射層17,18を含み且つ覆うようにパッシベーション膜等の保護層14が形成されている。保護層14は、膜状であって、例えば、MgFやSiО等の蒸着膜、或いは、防水性、防湿性を有する有機膜等で形成されている。
【0026】
反射部7は、光検出素子5の光検出部5a及び光検出素子9の光検出部9a並びに光吸収層12に対して後側(すなわち、分光部4,8側)に位置している。更に、反射部7は、光吸収層12における光検出部5aと光検出部9aとの間の領域Rと対向しており、前側から見た場合に、光吸収層12における光検出素子5と光検出素子9との間の領域R1(すなわち、光吸収層12のうち、光検出素子5と光検出素子9との間から前側に露出する部分)を含んでいる。
【0027】
以上のように構成された分光モジュール1では、基板2及びレンズ部3に入射した光Lは、分光部4によって分光されると共に前側に反射される。分光部4によって分光された光Lのうち、光L1は、前側に進行して光検出素子5で検出される。また、分光部4によって分光された光Lのうち、光L2は、前側に進行して反射部7によって後側に反射される。そして、反射部7によって反射された光L2は、分光部8によって分光されると共に前側に反射される。分光部8によって分光された光Lのうち、光L3は、前側に進行して光検出素子9で検出される。このように、分光部4と光検出素子5とに加えて、分光部8と光検出素子9とが設けられているので、広い波長域の光や異なる波長域の光に対して検出感度を高めることができる。
【0028】
更に、光検出素子5の光検出部5aと光検出素子9の光検出部9aとの間に光通過孔5b及び光吸収層12が設けられており、その光吸収層12(すなわち、領域R)と対向するように反射部7が設けられている。このように、光検出部5aと光検出部9aとの間の領域を利用することで、分光モジュール1の大型化を防止することができる。
【0029】
また、光通過孔5bから基板2及びレンズ部3に光Lを入射させる際に光通過孔5bの周辺には外乱光Lが到達し易いが、そのような外乱光Lは、光吸収層12における光検出部5aと光検出部9aとの間の領域Rで吸収される。そして、外乱光Lの一部が光吸収層12の領域Rを透過したとしても、その一部の光は、光吸収層12の領域Rと対向し且つ光吸収層12における領域R1を含むように設けられた反射部7によって光吸収層12の領域R側に確実に反射される。これにより、外乱光Lの入射に起因した迷光の発生を抑制することができる。
【0030】
ここで、外乱光Lの一部(特に長波長光成分)が、領域Rを透過してレンズ部3に入射してしまうと、迷光の一部として、レンズ部3内でノイズを発生させる。光L2は、長波長光であることが多いので、光L2及び光L3は、光の強度がそれほど大きくないことが大半である。すなわち、光L2,L3は、外乱光Lによるノイズの影響を多大に受けやすい。このような事態を軽減するために上記のように反射部7を設けることは、極めて有効である。
【0031】
以上により、本発明によれば、大型化を防止しつつ、広い波長域の光や異なる波長域の光を精度良く検出することが可能となる。
【0032】
更に、光吸収層12において、光検出素子5と光検出素子9との間に設けられた領域R1は、基板2の前側から見た場合に反射部7に含まれている。これにより、領域R1を透過した外乱光Laの一部を領域R側により確実に反射することができる。
【0033】
なお、分光部4,8をレンズ部3の外側表面3a上に設けることで、厚さ1μm〜20μmというように、回折層6を極薄く形成することができる。これにより、回折層6での光吸収を抑制して、光の利用効率を向上させることが可能となる。しかも、回折層6を極薄く形成することで、熱や水分に起因した回折層6の変形(伸縮等)を抑制することができ、安定した分光特性、及び高い信頼性を確保することが可能となる。その一方で、分光部4,8を外側表面3a上に設けることにより、回折層6よりも鍔部16を確実且つ容易に厚くすることができ、外側表面3aから回折層6が剥離するのを防止することが可能となる。
【0034】
上述した分光モジュール1の製造方法について説明する。
【0035】
まず、図4(a)に示されるように、基板2を準備する。その後、図4(b)に示されるように、基板2の前面2aに配線10を形成する。更に、図4(c)に示されるように、基板2の前面2aに、配線10のパッド部10a,10bとなる部分を前側に露出させ、配線10の接続部10cとなる部分を覆うようにして、絶縁層11を形成する。絶縁層11を形成する際に、絶縁層11の一部として絶縁部11a,11bを同時に形成する。なお、絶縁部11aと絶縁部11bとは、それぞれ別の材料で形成し、2種類の光学フィルタとして機能させてもよい。
【0036】
続いて、図5(a)に示されるように、基板2の前面2aに、パッド部10a,10bとなる部分を前側に露出させ、接続部10cとなる部分を覆うようにして、光吸収層12を形成する。その後、図5(b)に示されるように、基板2の後面2bに、後面2b側から順に下地層7a、中間層7b、反射層7cとする積層構造からなる反射部7を形成する。例えば、下地層7aをTi層又はCr層とし、中間層7bをPt層とし、反射層7cをAu層とした積層構造である。更に、図5(c)に示されるように、基板2の後面2bに、開口部15aを有するレジスト層15を形成する。
【0037】
続いて、図6(a)に示されるように、光検出部5aが開口部12b内に対向し、光通過孔5bが開口部12a内に対向するように、バンプ13を介したフェースダウンボンディングによって光検出素子5を配線10のパッド部10a上に実装する。同様に、光検出素子9は、光検出部9aが開口部12c内に対向するように、バンプ13を介したフェースダウンボンディングによって配線10のパッド部10a上に実装する。続いて、光検出素子5,9の基板2側に、アンダーフィル材20を充填する。
【0038】
その一方で、レンズ部3に分光部4,8を形成する。具体的には、レンズ部3の外側表面3aの頂点付近に滴下したレプリカ用光学樹脂に対し、回折格子パターン4a,8aそれぞれに対応するグレーティングが刻まれた光透過性のマスターグレーティングを押し当てる。そして、この状態で光を照射することによりレプリカ用光学樹脂を硬化させ、好ましくは、安定化させるために加熱キュアを行うことで、回折層6及び鍔部16を形成する。その後、マスターグレーティングを離型して、回折層6の外側表面にAlやAuなどをマスク蒸着や全面蒸着することで、反射層17,18をそれぞれ形成する。更に、回折格子パターン4a、8a及び反射層17,18の外側表面にMgFやSiOなどをマスク蒸着や全面蒸着、あるいは樹脂を塗布することで保護層14を形成する。
【0039】
続いて、図6(b)に示されるように、基板2の後面2bに形成しているレジスト層15の開口部15a内に、光学樹脂材19を塗布し、分光部4,8が形成されたレンズ部3を、開口部15aに嵌め合わせるように基板2の後面2bに接合する。そして、光を照射することにより光学樹脂材19を硬化させて、分光モジュール1を得る。
【0040】
なお、レジスト層15の開口部15aは、基板2に光検出素子5,9を位置決めするための基準部となる基板2上のパターン(図示せず)に対して所定の位置関係を有するようにフォトエッチングによって形成されている。このとき、分光部4,8は、レンズ部3に対して高精度に位置決めされているため、レンズ部3を開口部15aに嵌め合わせるだけで、分光部4,8が基板2に位置決めされる。その一方で、光検出素子5,9は、基準部である基板2上のパターン(図示せず)によって基板2に位置決めされる。よって、レンズ部3を開口部15aに嵌め合わせるだけで、分光部4と光検出素子5とに加えて、分光部8と光検出素子9とのアライメントが実現される。
【0041】
以上説明したように、反射部7は、基板2とレンズ部3との間に設ける。この構成によれば、光吸収層12における領域Rに対して分光部4,8側であって光吸収層12における領域R1と対向する位置に、反射部7を容易に且つ精度良く形成することができる。しかも、基板2の後面2bに下地層7aを形成し、その下地層7a上に反射層7cを形成することにより、反射部7を設け、その反射部7を挟むように、基板2とレンズ部3とを接合する。これにより、反射層7cが分光部4,8側に臨むので、光L2を確実に反射することができる。
【0042】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0043】
例えば、反射部7を金属片等として基板2の内部やレンズ部3の内部に埋め込むことで設けてもよい。また、光通過孔5bを光検出素子5に設けずに、基板2及びレンズ部3に光Lを入射させる光入射部として、光吸収層12における領域R1に光通過孔を設けてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1…分光モジュール、2…基板(第2の部分)、3…レンズ部(第1の部分)、4…分光部(第1の分光部)、5…検出素子(第1の光検出素子)、5a…検出部(第1の光検出部)、5b…光通過孔(光入射部)、7…反射部、8…分光部(第2の分光部)、9…検出素子(第2の光検出素子)、9a…検出部(第2の光検出部)、12…光吸収層、R…領域(光吸収層における第1の光検出部と第2の光検出部との間の領域)、R1…領域(光吸収層における第1の光検出素子と第2の光検出素子との間の領域)、L…光、L1…光(第1の光)、L2…光(第2の光)、L3…光(第3の光)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の側から入射した光を透過させる本体部と、
前記本体部の他方の側に設けられ、前記本体部に入射した光を分光すると共に前記本体部の一方の側に反射する第1の分光部と、
前記本体部の一方の側に配置され、前記第1の分光部によって分光された第1の次数の第1の光を検出する第1の光検出素子と、
前記第1の分光部によって分光された第2の次数の第2の光を反射する反射部と、
前記本体部の他方の側に設けられ、前記反射部によって反射された前記第2の光を分光すると共に前記本体部の一方の側に反射する第2の分光部と、
前記本体部の一方の側に配置され、前記第2の分光部によって分光された第3の光を検出する第2の光検出素子と、を備え、
前記本体部の一方の側において、前記第1の光検出素子の第1の光検出部と前記第2の光検出素子の第2の光検出部との間には、前記本体部に光を入射させる光入射部、及び光を吸収する光吸収層が設けられており、
前記反射部は、前記第1の光検出部及び前記第2の光検出部並びに前記光吸収層に対して前記第1の分光部及び前記第2の分光部側に位置し、前記光吸収層と対向していることを特徴とする分光モジュール。
【請求項2】
前記光吸収層における前記第1の光検出素子と前記第2の光検出素子との間の領域は、前記本体部の一方の側から見た場合に前記反射部に含まれていることを特徴とする請求項1記載の分光モジュール。
【請求項3】
前記本体部は、第1の部分と、前記第1の部分に対して前記第1の光検出素子及び前記第2の光検出素子側に位置し、前記第1の部分と接合された第2の部分と、を有し、
前記反射部は、前記第1の部分と前記第2の部分との間に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の分光モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−215075(P2011−215075A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85206(P2010−85206)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】