説明

分光光度計を用いたデジタル印刷制御

【課題】インライン分光光度計(ILS)または同様の装置を用いて印刷用紙上での測定に基づいた、ゼログラフィックDmax制御の新しいシステム及び方法を提供する。
【解決手段】方法は、作動装置の感度で色を直接測定することに基づいている。分解のそれぞれは、この色分解に特有の作動装置を用いて、独立して制御される。本方法は、主要な固体の色を制御することにおいて効果的である。変化のベクトルが領域において見られるソリッドカラーの変化に高度に関連付けられているという事実は、この技術思想がソリッドカラーの安定性を効果的に増加させているということを示している。ソリッドカラーの安定性が増すことにより、プリンタの色域全体の色の安定性、および、色域の境界の安定性が増し、色域マッピングアルゴリズムの頑強性が増す。本方法が、従来のILSに基づいたメンテナンスアーキテクチャと組み合わせ可能であることが、有効である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
現在のプロダクションプリンタに関して、それぞれ(最初の)分解のソリッドカラーは、光受容体(通常、ベルトまたはドラム)において測定されるような名目上のDMA(単位面積あたりの現像量)の達成に基づいて制御される。通常、反射性測定は、光学センサ、例えばETAC(強化されたトナーカバー範囲)濃度計を用いて行われ、反射性に応じた、言い換えれば2つの量を関連付けるモデルを介してDMAを推測し、名目上のDMAをこのモデルに置き換えることによって、目標DMAが決定される。次に、印刷中、文書間区間においてパッチの反射性を測定し、ゼログラフィックプロセス制御ループが、反射性が目標値を追跡するようにゼログラフィック作動装置を調整する。一般的なゼログラフィック作動装置は、例えば、ROS(ラスタ出力スキャナ)露光、光受容体電圧(帯電したおよび/または放電した電圧)、ドナー電圧および/または磁気ロール電圧およびトナー濃度を含む。機能上のことであるが、現在iGen3システムおよびiGen4システムに用いられているこのタイプのプロセス制御システムは、環境、媒体、センサ、ゼログラフィックプロセス、動作状態、転写および融解からの下流への影響などの変化のゆえに、色の変化の影響を受けやすい。
【0002】
固体領域レベルにおいて測定されたマーキング装置の出力色を較正するための本方法は、初めに、n個の分解マーキング装置の色分解を選択するステップを含む。マーキング装置は、固体領域レベルにおいて基板に堆積された着色剤の量を規定する、少なくとも1つの調整可能な作動装置を備え、作動装置は、予め、所定の第1動作基点に設定されている。固体領域レベルにおいて目標色パラメータベクトルTを選択する。目標色パラメータベクトルTの固体領域パッチを、第1動作基点に設定された作動装置を備えたマーキング装置を用いて、基板に印刷する。次に、印刷されたパッチを測定して、名目上の測定された色パラメータベクトルNを獲得する。目標色パラメータベクトルT、名目上の測定された色パラメータベクトルN、および、高速で変化する勾配
【数1】

に基づいて、オフセットの総数を決定する。次に、決定されたオフセットの総数を、作動装置が第2動作基点に適合するように作動装置の調節点に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0003】
ここに開示された本発明の上述および他の特徴および利点は、添付図面と共に以下の詳細な説明から明らかになる。
【図1】量に基づいたゼログラフィックプロセス制御ループ(実行時)を用いた本方法の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】高速で変化する勾配(一定の感度)に基づいて最適な作動装置の調節点を決定するための、本方法の例示的な一実施形態の流れ図である。
【図3】図2の流れ図に関して記載した、作動装置の調節点を決定する様々な態様を説明する図である。
【図4】図3の色パラメータ空間と同様の、測定された色パラメータ407(M)を加えた図である。
【図5】n個の分解における色再現が可能なネットワーク化された構成に配置された、色マーキング装置の機能ブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0004】
固体領域レベルでの媒体基板において測定されたような、n個の分解マーキング装置の出力色を較正するためのインライン分光光度計(ILS)ゼログラフィックDmax制御アルゴリズムの新しいシステムおよび方法を開示する。変化のベクトルがソリッドカラーの変化と高度に関連付けられるという事実は、ここでの技術思想がソリッドカラーの安定性を増加させ、安定性がプリンタの色域全体の色の安定性および色域の境界の安定性を増加させるということを示している。このことが、ひいては、用いられる色域マッピング方法の頑強性を増加させる。さらに、従来のILSに基づいたメンテナンスルーチンと組み合わせられた場合、付加的な測定(印刷)は必要ではなくなる。
【0005】
当業者には、色彩、画像処理、他の技術、および、通常色彩技術およびゼログラフィック技術において検出されるアルゴリズム、といった多くのファセットに非常に精通している、と理解されたい。また、当業者は、“Digital Color Imaging Handbook(デジタル色画像処理ハンドブック)”(第1版、CRC Press(2003)、ISBN‐13:97808‐4930‐9007)、および、”Control of Color Imaging Systems: Analysis and Design(色画像処理システムの制御:分析および設計)”(CRC Press(2009)、ISBN‐13:97808‐4933‐7468)といったテキストに精通しているはずである。これらの全体は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0006】
「色パラメータ空間」は、例えばCIE XYZ、CIE L、CIE L、sRGBなどの色を規定または説明するために通常用いられる、あらゆる標準的な色空間である。
【0007】
「装置に依存した色空間」は非標準的な色空間であり、レンダリング装置の特性などの付加的な情報なしに色を通常規定するためには用いられない。
【0008】
「単一の分解色」とは、目標マーキングシステム用の色分解のうちのただ1つによって指定された色のことである。例えば、CMYKプリンタについては、Cのみの試験パッチが単一の分解色パッチである。
【0009】
「多分解色」は、目標マーキングシステム用の1つよりも多い色分解によって指定された色のことである。例えば、CMYKプリンタについては、赤の試験色は、所定のいくつかのレベルにおけるM分解とY分解との組み合わせを用いた、多分解色試験パッチである。
【0010】
「n個の分解マーキング装置」は、画像データまたは画像データから生成されたデータを用いて多分解色でカラー画像を生成できる、色マーキング装置または色マーキングシステムである。
【0011】
「着色剤」は、スペクトル全体にわたって画像色を得るために、多色の画像形成において1つ以上の他の着色剤と組み合わせられる、特定の色分解のレンダリングに用いられる媒体である。従って、各色分解は、それ自体に対応した着色剤を有することができる。
【0012】
「基板」は、1つ以上の作動装置を必要とするプロセスを用いてトナーが堆積される表面のことである。このような表面は、さらに、画像を形成するために帯電したトナー粒子が堆積される光受容体ベルトまたは光受容体ドラムの形状をしていてもよい。トナー粒子は、一成分現像プロセスまたは二成分現像プロセスにおいて、摩擦電気によって帯電している。
【0013】
「媒体基板」は、画像用の最終的な出力面として用いられる、紙または透明フィルムといった基板である。
【0014】
「作動装置」は、ESV(静電電圧計)、ETAC、濃度計、比色計、または、分光光度計から受信された測定値が電圧目標値または電圧設定値に向かっていくように調整可能な、例えばコロトロンワイヤ電圧またはスコロトロンワイヤ電圧、または、スコロトロン格子電圧ROS電力、あるいは、現像バイアス電圧といった、コントローラまたは装置の要素のことである。作動装置の調節点を調整し、または別のやり方では、作動装置の動作基点の変更は、媒体基板の表面に堆積されたトナーの量を制御することによって画像を暗くまたは明るくする。
【0015】
「反射性検出装置」は、サンプルから反射された光の量を測定できる装置である。反射性検出装置は、全幅検出アレイ、分光光度計、比色計、または、濃度計のうちのいずれかであってもよい。
【0016】
「分光光度計」は、多くの波長を覆う反射性を測定し、複数の通信路を用いてそれぞれの様々な照度波長帯から受信された反射光の様々なレベルに相当する、異なる電気信号を供給する反射性検出装置である。
【0017】
「比色計」は、通常3つの照度通信路を備え、表面から反射光を受信するセンサによって読み取られるようなRGB(赤、緑、青)として知られている3原色量の出力色値を供給する、反射性検出装置である。
【0018】
「濃度計」は、もう1つの反射性検出装置である。通常単一の通信路のみを備え、幅の広いまたは幅の狭い波長の範囲を覆う選択された角度で、光受容体における現像されたトナー試験パッチといった試験表面からの光反射性の大きさを簡単に測定する。濃度計の出力は、試験サンプルの光学密度である。
【0019】
「目標色パラメータベクトル」は、一組の座標によって色パラメータ空間における所望の色の点を規定する。色パラメータ空間がL空間であれば、例えば、目標色xは、座標{L、a、b}の色パラメータベクトルを有している。
【0020】
「名目上の色パラメータベクトル」は、名目上の動作基点に設定されたこの色分解用の作動装置を備えた色マーキング装置を用いて基板に印刷された固体領域パッチの測定から得られた、色パラメータ空間の色を規定する。
【0021】
「測定された色パラメータベクトル」は、この色分解用の作動装置の動作基点を用いて印刷された固体領域パッチの反射性検出装置を用いた測定から得られた、色パラメータ空間の色を規定する。
【0022】
「固体領域レベル」は、予測される状態でのプリンタのハードウェアの特性を前提とした、適度な最大密度での調節点またはカバー範囲の総計を示す。固体領域レベルでの印刷は、基板のこの領域内での全ての位置に着色剤の量を連続的に転写することを含む。ハーフトーン処理を用いたデジタルプリンタでは、例えば、固体領域レベルは100%カバー範囲であり、網点が完全に充填される。ハーフトーンの世界では、「固体領域」は100%カバー範囲と同義である。
【0023】
「ゼログラフィックを集中させる」ことは、ゼログラフィック装置が、ここでなされる決定に応じて1つ以上の作動装置によってなされた変化に適応することができるようにすることである。
【0024】
「ゼログラフィック装置」は、カラー画像の信号を受信でき、その信号を表示可能な形態に低減できる、あらゆるシステムまたは装置のことである。
【0025】
ILSゼログラフィックDmax制御方法をここに示す。最大印刷可能密度(Dmax)および結果として生じたプロダクションプリンタ(例えば、iGen3/iGen4)のソリッドカラーは、今や、紙上の色測定値よりもむしろ、各分解用のベルト上の(光受容体)量測定値を用いて設定される。ゼログラフィックプロセス制御ループは、各分解用に動作し、ROS露光のようなゼログラフィック作動装置および各分解を制御するための現像領域を用いて、名目上の目標において光受容体にDmaxを維持する。しかし、背景部分において論じたように、環境、媒体、センサ、ゼログラフィックプロセス、動作状態、転写および融解からの下流への影響などの変化のゆえに、特定の機械の色は、個別の分解の量がどのくらい十分に光受容体において制御されるかにかかわらず、色域中の、および、陰影領域においてさえ、大きく変化できる。このような色の変化によって、色の安定性の問題が生じてしまい、色域マッピングの効果を危うくしてしまう。色を直接測定することにより、ベルト上の測定方法と比べた場合、色の安定性および色域マッピングの頑強性が増加する。ETACまたは同様の装置を用いて光受容体上でなされた測定を、インライン分光光度計(ILS)または同様の装置を用いて印刷用紙上でなされた測定に基づいて最適化できる。現在の量に基づいた方法と同様に、本方法は、装置がオフラインである間に実行可能な設定ルーチンを含む。実行時に色を安定させるために、現在の量に基づいた手法(図1)が用いられる。制御ループは、ILSゼログラフィックDmax制御アルゴリズムによって設定された基準値を維持するために、各色分解で動作する。
【0026】
高速で変化する勾配の基本的な手法は、高速で変化する勾配が既知であり、安定性していると認められる場合に、付加的な直接の測定を必要とせずに線形モデルを作り出すために、名目上の点と組み合わせ得ると仮定する。本実施形態は、色測定値を検査する動作に続くステップを含む。各分解の測定された色が指定された閾値内にない場合、手法は繰り返される。指定された閾値は、以下のような状態を含んでいてもよい。
・現在の色は、最後に予測された色の閾値距離内にある(望ましいモデル)。
・現在の色は、次に予測される色の閾値距離内にある(小さい次の段階)。
・現在の色は、目標色の閾値距離内にある(望ましい最初の色)。
【0027】
各分解の色が指定された閾値内にはない場合、ILSによって測定されたような原型(名目上の)色および調整された(測定された)色から、新たな勾配
【数2】

を決定できる。新たな勾配を決定することについて、図4および方程式7に関してここでさらに論じる。次に、方程式8に関してここでさらに論じるように、(方程式7の)新たな勾配を用いて、新たな作動装置オフセット値を作り出す。
【0028】
高速で変化する勾配(一定の感度)に基づいて作動装置の調節点を決定するための本方法の例示的な一実施形態を示す図2の流れ図を参照する。本実施形態は、高速で変化する勾配
【数3】

がすでに決定されていると仮定する。処理が200で始まり、直ちにステップ202へと進む。本実施形態の様々な態様について、図3のL色空間300と共に論じる。
【0029】
ステップ202では、処理のためにn個の分解マーキング装置の第1色分解を選択する。マーキング装置は、固体領域レベルにおいて基板に堆積された着色剤の量を規定する色分解ごとに、少なくとも1つの調整可能な作動装置を備えている。この色分解用に使用できる1つ以上の作動装置は、名目上の動作基点に従来設定されてきた。このような動作基点を、当業者によって容易に決定できる。
【0030】
ステップ204では、固体領域レベルにおいて目標色パラメータベクトルTを選択する。目標色パラメータベクトルは、色パラメータ空間における点を含む。1つの例示的な目標色パラメータベクトルTを302(T)に示す。図3の色点のそれぞれがL色空間300の基点から伸びるベクトルを含むことを、理解する必要がある。
【0031】
ステップ206では、目標色を含む固体領域パッチを、マーキング装置を用いて基板に印刷し、印刷されたパッチを、反射性検出装置を用いて測定して、名目上の測定された色パラメータベクトルNを得る。このような1つの反射性検出装置が、インライン分光光度計(ILS)である。1つの例示的な名目上の色パラメータベクトルNを305(N)に示す。測定の表示(およびこれによって決定された制御)が、インライン、オフライン、または、例えばハンドヘルド反射性検出装置を用いて手動で得られる。
【0032】
ステップ208では、全ての最初の固体が所望の範囲にあるかどうかの決定がなされる。この決定は、名目上の測定された色パラメータベクトルNおよび目標色パラメータベクトルTとの色差の量を計算するためのメトリクを用いてなされ、高速で変化する勾配に対する差のベクトルをも、決定の一部として認めてもよい。この色差(または距離)は、309では、ユークリッド、デルタE2000、または、他の全ての同様の色距離メトリクCIECAM02であってもよい。概して、例えば{L、a、b}に関して表された座標を有するL空間における、2つの色のユークリッド距離は、
【数4】

によって得られる。
【0033】
空間の円筒型の座標表示において、座標{L、h、C}および{L、h、C}を有する2つの色xとxとのユークリッド距離は、それぞれ、
【数5】

によって得られる。
【0034】
ステップ208において、最初の固体の全てが所望の範囲内にある場合、このn個の分解装置におけるより多くの色分解を処理し続けるかの決定がなされるステップ214において処理が続く。ステップ208において最初の固体の全てが所望の範囲内にない場合、ステップ210での処理が続く。
【0035】
ステップ210では、新たな作動装置レベルを計算し、装置を新たな作動装置の調節点に設定する。1つの例示的な高速で変化する勾配
【数6】

を304(G)に示す。交点310(B)は最良の色である。目標色パラメータベクトル302(T)からのベクトル311(T‐B)は、名目上の色パラメータベクトル305(N)にて始まる線に対して直角であり、304(G)の方向に伸びる。線311(T‐B)は、最良の点310(B)と交わる線に対して直角である。
【0036】
以下の方程式は、作動装置オフセット値xを導き出すために用いられる。
【数7】

【0037】
ここで、図3に示したように、Bは、310(B)に相当し、Nは、305(N)に相当し、
【数8】

は高速で変化する勾配304(G)であり、
【数9】


【数10】

である。
【数11】

【0038】
ここで、Tは302(T)に相当し、ベクトル(T‐B)は、311(T‐B)に相当し、記号「・」は、点乗積演算である。311(T‐B)は線(303)に対して直角であり、305(N)から310(B)を介して
【数12】

の方向に伸びていることを理解する必要がある。
【0039】
方程式3の方程式4への代入から、以下の式が生じる。
【数13】

【0040】
方程式5の操作は、以下の式によって得られるように、最良の色310(B)を作り出す作動装置オフセットを規定する関係を作り出す。
【数14】

【0041】
ステップ212では、ゼログラフィックを新たな作動装置の調節点に集中させる。
【0042】
ステップ214では、このn個の分解色マーキング装置用のこれ以上の色分解を処理するつもりであるかどうかの決定がなされる。そうであれば、次に、ステップ202では処理を繰り返し、処理するために次の色分解を選択する。このように、色マーキング装置用の全ての色分解が結果的に処理されるまで、処理を繰り返す。その後、処理を終了する。
【0043】
流れ図が説明に役立つと理解されたい。有効なステップの1つ以上を様々な順序で実行してもよい。例えば、他の操作を加えてもよいし、あるいは、確立してもよい。この変形形態は、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれる。流れ図の全てまたは一部を、このようなシステムの様々な構成要素と通信しながら機械実行可能命令と共にハードウェアにおいて部分的にまたは完全に実施してもよい。
【0044】
以下は、測定された色点を加えた図3の色パラメータ空間と同様の図4の色パラメータ空間400に関して得られる。方程式6を用いて作動装置を新たな(第2)操作レベルに設定すると、407(M)において、印刷されたパッチのILS測定から得られた、マーキング装置および測定された色パラメータを用いて基板に目標色パラメータ402(T)の固体領域パッチを印刷できる。図3と同様に、名目上の色パラメータを405(N)に示し、最良の色点は410(B)であり、線411(T‐B)は、405(N)から伸びて410(B)および407(M)を
【数15】

の方向に通過する線403に対して直角であり、
【数16】

はベクトルである。
【0045】
測定された色値407(M)を、次に、目標色402(T)と比較でき、印刷されたパッチが所定の閾値内にあるかどうかを決定する。閾値内になかった場合、次に、新たな勾配が決定され、プロセスが反復される。新たな勾配の決定は、したように、方程式3‐6によって導かれる。この新たな勾配は、以下の式によって得られる。
【数17】

【0046】
Mは407(M)に相当し、Nは402(N)に相当し、zは第1動作基点と第2動作基点との差である。
【0047】
この新たな勾配を用いて、新たな作動装置オフセットyを次のように規定できる。
【数18】

【0048】
Tは402(T)に相当し、Mは407(M)に相当し、
【数19】

は新たな勾配
【数20】

である。
【0049】
次に、新たな作動装置オフセットを用いて、もう1つの作動装置オフセットをマーキング装置作動装置の調節点に適応させ、第3の動作基点を得る。第3の動作基点を用いて、再び測定でき、測定された色値が所定の閾値によって規定されたような容認可能なレベル内になるまで、所望のようにしたステップが繰り返される。
【0050】
図5に示したシステムでは、複数の色マーキングエンジン530、532は、通信バス534を介してネットワーク535に接続されて示されたシステム514に組み込まれる。マーキングエンジンのそれぞれは、概して512に示された、コンピュータシステム510または遠隔装置から受信された印刷画像データに関して選択可能である。複数のマーキングエンジンのうちの1つ以上は、個々のプリンタシステムに関連していてもよい。マーキングエンジンを2つだけ図示したが、図示したシステムがn個のマーキングエンジンを備えており、n>2であることを理解する必要がある。
【0051】
マーキング装置530、532は、ゼログラフィックマーキング装置、インクジェットマーキング装置、または同様のもの、といった印刷媒体に画像を適用するためのあらゆる適切な装置を含む。マーキング装置は、電子写真プロセスによって所望の画像の生成に用いられる多くのハードウェア要素を含む。580において、ベルトまたはドラムの形態をした回転する光受容体といった電荷保持面を有するマーキング装置を示す。画像を光受容体の表面に生成する。光受容体の周囲に位置する様々な点に配置されるのは、洗浄装置と、帯電コロトロンといった、用いられる各色のための帯電位置(単色のマーキング装置の場合には1つ、CMYKマーキング装置の場合には4つ)と、光受容体に潜像を形成する露光位置と、トナー画像を得るために、トナーを適用することによって光受容体の表面に形成された潜像を現像するための各帯電位置に関連した現像剤ユニットと、一枚の紙等の印刷媒体の基板表面にこうして形成されたトナー画像を転写する転写コロトロンといった転写ユニットと、画像を紙に融解させる定着器582とを含んだ、ゼログラフィックサブシステムである。定着器は、概して、熱および圧力のうちの少なくとも1つを紙に加えて、トナーを物理的に付着させ、適宜、印刷された媒体に光沢のレベルを供給する。図示したこれら2つのマーキングエンジン530、532は同様に較正されているが、マーキング装置が1つ以上個所異なっていてもよいということも想定される。マーキングエンジンは、ベルト上のセンサ586を含む。マーキングエンジン530、532は、印刷媒体に画像をレンダリングするためのあらゆる装置を含有できる。マーキング装置は、単一の着色剤(単色の、例えば、ブラック)マーキング装置、または、CMYK装置といった複数の着色剤(色)マーキング装置であってもよい。複数のマーキングエンジンを組み込んだ画像レンダリング装置514は、複写機、レーザープリンタ、製本機械、ファクシミリ装置、または、複合機であってもよい。印刷される画像は、概して、画像形成装置によって印刷媒体にレンダリングされ、テキスト、図形、絵などを含んでいてもよい、電子的形態をした情報を含む。例えば図形、テキスト、写真などの画像を印刷媒体に適用する操作は、概して、印刷またはマーキングと呼ばれる。この技術において知られているように、印刷の操作は、装置に依存した着色剤値にマッピング着色剤値を含む。
【0052】
分光光度計516は、例示的な試験パッチ568から画像データを収集し、直接または中間にある処理構成要素を介して、ILS Dmax制御システム560にカラー画像測定値を供給する。紙上のセンサ516は、画像568に対して光を向ける、LEDバーまたは他の光源といった光源572を含み、さらに、反射光を検出する検出器574を含む。分光光度計516は、用紙搬送路を横断する、間隔が近接した複数のLED照明源の1つまたは2つのほぼ線形の細長いアレイと、それに対応した、間隔が近接した様々な色の感度の高い複数の光検出器のアレイとを含む。細長いアレイは、用紙搬送路において移動する印刷されたシートを横断する横断帯を照射するために、順次照射され、光検出器のアレイは、シートから反射された光を検出および分析するために配置されている。センサ516は、さらに、光学密度を測定するように構成されていてもよい。センサ516からの受信情報に加えて、カラー画像測定値は、制御システム560によってベルト上のセンサ586から受信される。さらに、仮想センサが、センサ516またはベルト上のセンサ586によって得られた情報を補うために用いられてもよい。一実施形態では、ベルト上のセンサ586および紙上のセンサ516は、各走査線用のデジタル化された画像データを生成する全幅アレイ(FWA)を含む。ベルト上のセンサ586および/または紙上のセンサ516が、排出トレイにおいて例えばプリンタ内に設置されたセンサといった、インラインセンサであってもよいし、あるいは、自立型装置であってもよく、または、例えば専用のスキャナおよび診断システムに組み込まれた装置であってもよい、ということを理解する必要がある。各マーキング装置は、それ自体の専用のセンサに関連していてもよい。センサ516が複数の着色剤の値を検出してもよいが、センサは、単一の着色剤のみを検出してもよく、あるいは、画像の光度を検出してもよい。センサは、画像の正反射を測定する光沢計を含んでいてもよい。ベルト上のセンサ586および/または紙上のセンサ516は、複数のシートから測定の全てを完了した後、データを伝送してもよい。あるいは、ベルト上のおよび/または紙上のセンサは、配線式接続またはワイヤレス接続を介した各シートのマーキング中、または、マーキング後に、データを伝送する。
【0053】
ILS Dmax制御システム560は、センサ516、複数のマーキングエンジン530、532のそれぞれ、および、そこに含まれる構成要素の全てと通信する。さらに、制御システム560は、通信バス534を介して、ワークステーション510、および、ネットワーク535を介して遠隔装置512とも通信する。ILS Dmax制御システムは、したように本方法を実行する。制御システムは、勾配プロセッサ576、メモリ578、および、プロセッサ564を含む。メモリ578は、RAM、ROM、磁気ディスクまたは磁気テープ、光ディスク、フラッシュ、ホログラフィックなどといった、あらゆるタイプの機械読取り可能媒体を表している。一実施形態では、メモリ578は、RAMとROMとを組み合わせたものを含む。様々な実施形態では、作動装置制御システム560は、専用コンピュータシステムである。勾配プロセッサ576は、様々な実施形態において説明したように、色測定値および目標色を得て受け取り、最適な作動装置動作基点を計算して、予測された印刷された色パラメータベクトルと目標色パラメータベクトルとの距離を最小化する。
【0054】
さらに、制御システム560は、受信されたカラー画像信号をレンダリング用の適切な形態に変換してもよく、さらに、マーキング装置の動作を監視するための機能性を有していてもよい。制御システムは、センサ516から獲得された画像データを含む、直接または装置530、532から間接的に受信された情報を処理する印刷モデル発生器を含んでいてもよい。制御システム560はまた、マーキングエンジンに実行依頼されたジョブの印刷される色をリアルタイムに変更するための情報を利用してもよく、あるいは、この機能性は、個々の処理構成要素によって実行されてもよい。制御システム560はまた、試験パターン用の画像データを生成する試験画像発生器を含む。試験パターンは、1つ以上の色試験パッチを含んでいてもよい。
【0055】
ILS Dmax制御システム560はさらに、例えばフーリエ変換分析、ヒストグラミング、不具合検出などといった、通常知られている画像処理技術を実行するための専用のハードウェアおよび/または専用のソフトウェアを組み込んでもよい。さらに、センサ516によって持ち込まれた不具合の少なくともいくつかを処理するために、較正回路が含まれていてもよい。このような回路は、画質パラメータを決定し、および/または、画質の不具合の存在を検出し、調整を行う。このような不具合およびパラメータは、線、帯、縞、斑点などを含むが、それらに限定されるものではない。制御システム560は、診断に役立つために自動化された画質診断(AIQD)技術を実行可能なシステムと通信するように設置されていてもよい。このような診断ツールは、それ自体で画像からのデータ、さらには、プリンタの内部の診断システムからのデータを収集および分析する。量的な分析と質的な推論とを組み合わせることによって、次に、AIQDプログラムは、診断および勧告を受け取る。さらに、例えば静的な不具合の補償に用いられる階調再現曲線訂正モデルといった情報を生成するために、他の画像不具合の評価技術が用いられてもよい。
【0056】
図5のブロック図に関して示し説明したモジュールおよび処理ユニットのすべて、および、これらのモジュールのすべてに関して説明された機能性のいくつかまたは全てを、ワークステーション510内で、または、専用コンピュータシステムによって、全体的にまたは部分的に実行してもよいということを理解されたい。複数のモジュールは、単一の機能を集合的に実行してもよい。モジュールが、機械によって実行可能なプログラム命令を読み取ることができる専門のプロセッサを備えていてもよい。モジュールが、ASIC、電子回路、または、専用プロセッサといった、一体成形のハードウェアを含んでいてもよい。複数のモジュールを、単一の専用コンピュータシステムによって、あるいは、同時に複数の専用コンピュータシステムによって、実行してもよい。モジュール間の接続は、物理的および論理的な接続の両方を含んでいる。モジュールが、さらに、1つ以上のソフトウェア/ハードウェアモジュールを含んでいてもよく、モジュールは、さらに、オペレーティングシステム、ドライバ、装置コントローラ、および、他の装置(それらのいくつかまたは全ては、ネットワークを介して接続されている)を含んでいてもよい。さらに、本方法の1つ以上の態様を専用のコンピュータシステムまたはワークステーションにおいて実施してもよく、通信ネットワークを介して連係される遠隔処理装置によってタスクが実行される分散型コンピュータ環境において実行されてもよいということが意図される。分散型コンピュータ環境では、本システムおよび本方法の様々な態様を実行するためのプログラムモジュール。他の実施形態は、ここに開示した方法を実行するために設計された専用コンピュータを含む。
【0057】
上記開示した機能および代替例、他の特徴および機能または代替例が、多くの他の様々なシステムまたは用途と組み合わされることが望ましいということを理解されたい。現在は思いつかないまたは予期しない様々な代替例、変形例、変更例、または、改良例が、明らかになってもよく、および/または、続いて当業者によってなされてもよく、例は、以下の請求項によって含まれることが意図される。従って、実施形態は、説明に役立つと認められ、限定を加えるためのものではない。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、実施形態に対する様々な変更が、なされてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体領域レベルにおいて測定されたマーキング装置の出力色を較正するための方法であって、前記方法は、
試験用のn個の分解マーキング装置の色分解を選択するステップであって、前記マーキング装置は、前記固体領域レベルにおいて基板に堆積された着色剤の量を規定する、少なくとも1つの調整可能な作動装置を備え、前記作動装置は、予め、所定の第1動作基点に設定されている、前記選択するステップと、
色パラメータ空間における点を含む前記固体領域レベルにおいて、目標色パラメータベクトルTを選択するステップと、
前記目標色パラメータベクトルTの固体領域パッチを、前記第1動作基点に設定された前記作動装置を備えた前記マーキング装置を用いて基板に印刷し、前記印刷されたパッチを測定して、名目上の測定された色パラメータベクトルNを獲得するステップと、
前記目標色パラメータベクトルT、前記名目上の測定された色パラメータベクトルN、および、高速で変化する勾配
【数1】

に基づいて、オフセットの総数を決定するステップと、
前記決定されたオフセットの総数を、前記作動装置が第2動作基点に適合するように前記作動装置の調節点に適用するステップとを含む。
【請求項2】
前記オフセットは、
【数2】

を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記目標色パラメータベクトルTの固体領域パッチを、前記マーキング装置を用いて基板に印刷し、前記印刷されたパッチを測定して、測定された色パラメータベクトルMを獲得するステップと、
前記測定された色パラメータベクトルMを前記目標色パラメータベクトルTと比較するステップと、
前記比較の結果が所定の閾値外であることに応じて、前記作動装置を第3の動作基点に適応させるステップとをさらに含む、前記作動装置を前記第2動作基点に適応させた、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
さらに、新たな勾配
【数3】

を決定するステップを含み、前記新たな勾配は、
【数4】

を含み、zは、前記第1動作点と前記第2動作点との差である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記作動装置が第3の作動装置の動作基点に適合するように、前記作動装置に用いられる適合量を決定するステップをさらに含み、前記適合量は、
【数5】

を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
固体領域レベルにおいて測定されたマーキング装置の出力色を較正するためのシステムであって、前記システムは、
メモリと、
非一時的な記憶媒体と、
前記記憶媒体および前記メモリと通信するプロセッサとを含み、前記プロセッサは、
試験用のn個の分解マーキング装置の色分解を選択するステップであって、前記マーキング装置は、前記固体領域レベルにおいて基板に堆積された着色剤の量を規定する、少なくとも1つの調整可能な作動装置を備え、前記作動装置は、予め、所定の第1動作基点に設定されている、前記選択するステップと、
色パラメータ空間における点を含む前記固体領域レベルにおいて、目標色パラメータベクトルTを選択するステップと、
前記目標色パラメータベクトルTの固体領域パッチを、前記第1動作基点に設定された前記作動装置を備えた前記マーキング装置を用いて基板に印刷し、前記印刷されたパッチを測定して、名目上の測定された色パラメータベクトルNを獲得するステップと、
前記目標色パラメータベクトルT、前記名目上の測定された色パラメータベクトルN、および、高速で変化する勾配
【数6】

に基づいて、オフセットの総数を決定するステップと、
前記決定されたオフセットの総数を、前記作動装置が第2動作基点に適合するように前記作動装置の調節点に適用するステップとの方法を行うために機械読取り可能プログラム命令を実行する、システム。
【請求項7】
前記オフセットは、
【数7】

を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記目標色パラメータベクトルTの固体領域パッチを、前記マーキング装置を用いて基板に印刷し、前記印刷されたパッチを測定して、測定された色パラメータベクトルMを獲得するステップと、
前記測定された色パラメータベクトルMを前記目標色パラメータベクトルTと比較するステップと、
前記比較の結果が所定の閾値外であることに応じて、前記作動装置を第3の動作基点に適応させるステップとをさらに含む、前記作動装置を前記第2動作基点に適合させた、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
さらに、新たな勾配
【数8】

を決定するステップを含み、前記新たな勾配は、
【数9】

を含み、zは、前記第1動作点と前記第2動作点との差である、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記作動装置が第3の作動装置の動作基点に適合するように、前記作動装置に用いられる適合量を決定するステップをさらに含み、前記適合量は、
【数10】

を含む、請求項9に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−124894(P2012−124894A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256860(P2011−256860)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】