説明

分光測定装置

【課題】 正確で安定した分光特性を得ることができる分光測定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】分光測定装置(100)は、対象物体をヴィネッティング無しで且つテレセントリックに結像可能な対物光学系(11)と、所定方向に沿って透過波長が異なるように形成された第1透過波長選択フィルタ(12)と、第1透過波長選択フィルタを移動させる駆動部と、対象物体の像の共役像をヴィネッティングなしで投影する投影光学系(15)と、対物光学系または投影光学系(15)に設置されて、第1透過波長選択フィルタ上に物体像を結像し透過する光束のうち、撮像に使う成分をヴィネッティング無しで且つテレセントリックとする開口絞り(153)と、共役像を撮像する二次元撮像素子(16)と、共役像を記憶する記憶部と、対象物体の分光特性を測定する測定部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長選択フィルタを介して得られる分光画像を用いて対象物の反射分光特性や透過分光特性を測定する分光測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示された分光測定装置は、分光測定装置の撮影レンズの画像結像位置にフォーカシングスクリーンを設置し、フォーカシングスクリーンに投影された像を分光測定装置内の受光素子が撮像する。撮影レンズとフォーカシングスクリーンの間には、連続的に透過波長が変化する波長選択フィルタが配設されており、波長選択フィルタの透過波長が変化する方向に波長選択フィルタを移動できるように駆動装置を介して取り付けられている。波長選択フィルタを任意の波長間隔に対応した移動距離で波長選択フィルタを透過波長が変化する方向に移動させ、波長選択フィルタの各々の移動位置において、分光測定装置内の受光素子が複数の画像を得る。これら複数の画像ファイルをコンピュータによって処理して各画像の同一位置に対応した対象物体の部位の各測定波長に対応した画像信号を抽出、組み合わせて所定の波長間隔による分光反射率又は分光透過率を算出することによって対象物の分光特性を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−300509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示された分光測定装置では、波長選択フィルタを透過する光束にヴィネッティングが存在し、又はテレセントリックでないような透過の仕方をすることが有り得る。そのような場合、光線成分の波長選択フィルタ透過角度が像高によって変動してしまうことにより、波長選択フィルタ上同一箇所であっても分光透過特性が変化し、正確な分光特性が得られないこともある。
そこで、本発明は正確で安定した分光特性を得ることができる分光測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本態様の分光測定装置は、対象物体像をヴィネッティング無しで且つテレセントリックに結像可能な対物光学系と、対物光学系による対象物体像の結像面に配置され第1波長から第1波長より長い波長の第2波長までの光を透過させるとともに所定方向に沿って透過波長が異なるように形成された第1透過波長選択フィルタと、結像面内で所定方向に第1透過波長選択フィルタを所定ピッチごとに移動させる駆動部と、第1透過波長選択フィルタをテレセントリックに透過した光束成分だけで対象物体の像の共役像をヴィネッティングなしで投影する投影光学系と、対物光学系または投影光学系内に設置され、第1透過波長選択フィルタ上に対象物体像を形成して透過する光束のうち撮像に使う成分をヴィネッティング無しで且つテレセントリックとする開口絞りと、所定方向におよび所定方向と直交する直交方向に配置された複数の画素からなり投影光学系により投影された共役像を二次元で撮像する二次元撮像素子と、二次元撮像素子で撮像された共役像を記憶する記憶部と、所定ピッチごと第1透過波長選択フィルタが移動した際に、移動毎に二次元撮像素子で共役像を撮像して記憶部に記憶し対象物体の分光特性を測定する測定部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明の分光測定装置は、対物光学系が対象物体像をヴィネッティング無しで且つテレセントリックに波長選択フィルタ上に結像するので、正確で安定した分光特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】分光測定装置100の概略構成図である。
【図2】分光測定装置100の概略光路図である。
【図3】ヴィネッティング現象を説明するための図である。
【図4】透過波長が変化する第1透過波長選択フィルタ12Aの特性の説明図である。
【図5】ピッチ毎における第1透過波長選択フィルタ12Aと二次元撮像素子16の受光面161との相対関係を示した図である。
【図6】ピッチ毎における第1透過波長選択フィルタ12Aと二次元撮像素子16の受光面161との相対関係を示した図である。
【図7】制御部17及び画像処理部18を示した概略図である。
【図8A】透過波長と二次元撮像素子16の受光面161との対応関係を示した説明図である。
【図8B】第1透過波長選択フィルタ12AをピッチSでずらしながらF1、F2、F3、F4、F5、F6の6回の撮影で得られた分光特性を示したグラフである。
【図9】第1実施形態の第1透過波長選択フィルタ12Aの平面図である。
【図10】画像処理部18によってモニターに表示された分光特性の一例を示した図である。
【図11】第2実施形態の第2フィルタ保持部13Bと二次元撮像素子16の受光面161との相対関係を示している図である。
【図12】第3実施形態の第3フィルタ保持部13Cと二次元撮像素子16の受光面161との相対関係を示している図である。
【図13】第4実施形態の第4フィルタ保持部13Dと二次元撮像素子16の受光面161との相対関係を示している図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
<分光測定装置100の概要>
図1は、分光測定装置100の概略構成図である。図2は、分光測定装置100の概略光路図である。図1に示されたように、分光測定装置100は光軸Axに沿って対物光学系11、第1透過波長選択フィルタ12A、投影光学系15及び二次元撮像素子16が順に配置されている。また、第1透過波長選択フィルタ12Aは第1フィルタ保持部13Aに保持されている。第1フィルタ保持部13Aは一次元の直線駆動機構を持つ駆動ステージ14に搭載され、矢印AR1(光軸Axに垂直)に沿って移動することができる。制御部17は、駆動ステージ14と二次元撮像素子16とを制御する。また制御部17は画像処理部18と接続されている。制御部17及び画像処理部18は、撮像された画像を記憶し、対象物体の分光特性を測定する。
【0009】
対物光学系11は、図2に示されたように光軸Axに沿って配置された対物レンズ111、112を備えている。ここで、対物レンズ111、112は凸レンズに描かれているが、複数のレンズにより構成されたレンズ群である。この対物光学系11は、倍率を調整するために交換式であってもよい。また、対物光学系11はヴィネッティング無しで且つテレセントリックに物体像Im1を結像面Miに結像することができる。なお対象物体は図示していない。ここでヴィネッティングは、レンズ枠などによって画像周辺部を形成する光束の一部がけられる現象で、結像された画像中心部と画像周辺部とに明るさの差が発生することの一つの原因となる。
【0010】
ヴィネッティングが波長選択フィルタ透過分光特性に与える影響について、図2及び図3を参照しながら説明する。図3は、ヴィネッティング現象を説明するための図である。ヴィネッティングのない軸上光束FLとヴィネッティングが発生している軸外光束FL’を描いてある。なお、波長選択フィルタ12Aに対してテレセントリック結像しているとする。図3(a)では波長選択フィルタ12A上の点Hを軸外光束FL’が透過している。この状態から波長選択フィルタ12Aを移動させたのが図3(b)であり、点Hを軸上光束FLが通過している。軸外光束FL’ではヴィネッティングによって光束端の一部がなくなっているため、軸上光束FLに比べて波長選択フィルタ12Aを傾いた角度で通過する光線成分が相対的に少なくなる。波長選択フィルタ12A上の干渉フィルタ膜122の分光特性は、光線通過角度によって変動する。通常は光線が斜めになるほど透過帯域が短波長側に広がる。したがって、点Hが示す分光透過特性は図3(a)と図3(b)との場合で等しくするほうが望ましいが、実際には差異が生ずることとなる。その結果、分光測定装置100で得られる分光特性に影響を与える。
【0011】
分光測定装置100の対物光学系11は物体像Im1を第1透過波長選択フィルタ12A上に形成し、投影光学系15は二次元撮像素子16上に物体像Im1の共役像Im2を形成するが、開口絞り153の働きにより第1透過波長選択フィルタ12Aを透過する物体像Im1結像光束のうち二次元撮像素子16まで到達する成分は、第1透過波長選択フィルタ12Aをヴィネッティング無し且つテレセントリックに透過する。このため、分光測定装置100で正確な分光特性が得られる。
【0012】
また、図1に示されたように第1透過波長選択フィルタ12Aは第1フィルタ保持部13Aによって保持され、一次元の直線駆動する駆動ステージ14に搭載されて矢印AR1(X軸方向)に沿って移動することができる。ここで、第1フィルタ保持部13Aは第1透過波長選択フィルタ12Aの光透過領域だけ窓が開いており、そのほかの部分は遮光するように構成されている。駆動ステージ14は、第1透過波長選択フィルタ12Aを所定のピッチS(図5を参照)ずつ矢印AR1(X軸方向)に移動させることができる。
【0013】
また、第1透過波長選択フィルタ12Aは平行平面板121の片面に多層膜の干渉フィルタ層122を有する多層膜の光学素子であり、所定の波長帯域の光に対して選択的に透過させることができる。第1透過波長選択フィルタ12AはY軸方向の所定の位置では、X軸方向に直線的に透過波長が変化している(図4を参照)。
【0014】
図4は、透過波長が変化する第1透過波長選択フィルタ12Aの特性の説明図である。詳しく説明すると、例えば第1透過波長選択フィルタ12Aがその移動方向で透過領域A〜Gを有する場合、透過領域Aの波長帯域がλ1〜λ2で、透過領域Bの波長帯域がλ2〜λ3で、…、透過領域Gの波長帯域がλ7〜λ8である。また、透過波長λ1〜λ8は図4に示されたようにリニアに変化する。例えば、透過波長λ1〜λ8が可視光の400nm〜750nmの波長帯域に対応すれば、透過領域Aがもっとも短い透過波長帯域400nm〜450nmに対応され、透過領域Gがもっとも長い透過波長帯域700nm〜750nmに対応される。
【0015】
つまり、干渉フィルタ層122の厚さが第1透過波長選択フィルタ12Aの移動方向(図1の矢印AR1の方向)に沿って変化することで、第1透過波長選択フィルタ12Aを透過する光の透過波長が第1透過波長選択フィルタ12Aの移動方向に沿って直線的に変化する。第1透過波長選択フィルタ12Aはその透過波長帯域内に含まれるすべての波長の光が、矢印AR1方向のいずれかの干渉フィルタ層122で必ず透過するように成膜されている。
なお、理解を容易にするため、第1透過波長選択フィルタ12Aの干渉フィルタ層122が図1、図5及び図6に示されたように、透過波長帯域をY軸方向に伸びX軸方向に複数に分割された領域として描かれている。
【0016】
図2に戻り、第1透過波長選択フィルタ12Aは干渉フィルタ層122を対象物体の結像面Miに合わせるように配置される。これにより、第1透過波長選択フィルタ12Aの干渉フィルタ層122には対物レンズ11により物体像Im1が形成される。
【0017】
投影光学系15は、図2に示されたように光軸Axに沿って配置された一対の投影レンズ151、152を備えている。ここで、投影レンズ151、152は凸レンズに描かれているが、複数のレンズにより構成されたレンズ群である。また、投影光学系15は投影レンズ151と投影レンズ152との間に開口絞り153を有している。また、投影光学系15は対物レンズ11により結像された物体像Im1の共役像Im2をヴィネッティング無しで二次元撮像素子16の受光面161に投影することができる。なお、開口絞り153は対物光学系11の対物レンズ111と対物112との間に設けてもよい。
【0018】
二次元撮像素子16は、モノクロの画像センサであり、例えば二次元CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、または二次元CMOSイメージセンサであればよい。
【0019】
投影光学系15により結像される共役像Im2は対象物体の物体像であると同時に第1透過波長選択フィルタ12Aの共役像でもある。このため、二次元撮像素子16の受光面161上で共役像Im2を形成する光の波長はX軸方向の位置によって異なる。すなわち、共役像Im2のいずれかの部位に着目したとき、この部位に共役な第1透過波長選択フィルタ12A上の部位を透過する波長帯域の光によって、共役像Im2の該当部位が形成される。また、駆動ステージ14によって第1透過波長選択フィルタ12AをX軸方向に移動させると、受光面161上に結像された第1透過波長選択フィルタ12Aの像も動く。このため、二次元撮像素子16が受光する光の波長も変化する。
【0020】
上述した第1透過波長選択フィルタ12Aの分光透過特性は、透過光束の角度によって変化する。つまり、第1透過波長選択フィルタ12Aに斜めから光束が入射すると、透過波長が変わってしまう。一方、第1透過波長選択フィルタ12Aが駆動ステージ14によって矢印方向AR1(図1:X軸方向)に移動する際に、第1透過波長選択フィルタ12Aと物体像Im1との相対位置(Z軸方向)が変化することがある。上述のように、対物光学系11はテレセントリックに対象物体の物体像Im1を結像面Miに結像するため、干渉フィルタ層122がZ軸方向に変化した場合であっても、XY面の同一位置を透過する光束の透過波長帯域はほとんど変化しない。
【0021】
対物光学系11はテレセントリックであるため、物体像Im1を形成する光束はいずれかの集光点でも集光角度がほとんど半角θを保ち、主光線LL1、すなわち開口絞り153の中心Oを通過する主光線LL1がいずれも第1透過波長選択フィルタ12Aに対して垂直透過する。このため、第1透過波長選択フィルタ12Aを透過する光束の角度特性がいずれも等価となる。したがって、主光線が第1透過波長選択フィルタ12Aに対して斜めに透過する場合に比べてより正確な分光特性が得られる。
【0022】
また、第1透過波長選択フィルタ12Aの透過波長帯域の分光特性の形は、第1透過波長選択フィルタ12Aの設計と開口絞り153の径Rとによって決まる。一般的には、開口絞り153の径Rを大きく取るほど集光角度が広がり、透過波長帯域が短波長側に広がってしまうので、要求仕様に応じた径に設定する。
【0023】
分光測定装置100に使用される対物光学系11および投影光学系15は、幅広い波長帯域の光束を集光したり投影したりするため、第1透過波長選択フィルタ12Aの波長帯域、例えば400nm〜800nmに対して、色収差が補正されている光学系が用いられることが好ましい。
【0024】
<分光測定装置100の撮像経過>
図5および図6は、分光測定装置100による撮像経過の説明図で、光軸Ax方向(Z軸方向)から見た平面図である。図5(a)〜(g)および図6(h)〜(m)は、第1透過波長選択フィルタ12Aが駆動ステージ14により所定のピッチSで移動するときのピッチS毎における第1透過波長選択フィルタ12Aと二次元撮像素子16の受光面161との関係を示した図である。
【0025】
第1透過波長選択フィルタ12Aは図4で示されたように直線的に透過波長が変化するが、図5および図6では、第1透過波長選択フィルタ12Aを透過波長が異なる7つの透過領域A〜Gに分けて説明する。透過領域Aの透過波長帯域が例えば400nm〜450nm、透過領域Bの透過波長帯域が例えば450nm〜500nm、…、透過領域Gの透過波長帯域が例えば700nm〜750nmである。第1フィルタ保持部13Aは第1透過波長選択フィルタ12Aが配置された窓を除いて遮光部である。
【0026】
以下の説明では、図5又は図6で描かれた受光面161上の四角形印を付けてある画素領域Pおよび画素領域Qに着目する。
図5(a)において、第1透過波長選択フィルタ12Aが+X軸方向に移動し始め、透過領域Aを透過した光束のみが二次元撮像素子16の受光面161に入り、共役像Im2が形成される。このため、受光面161の画素領域Pには、波長帯域400nm〜450nmの光が入射する。
【0027】
図5(b)において、第1透過波長選択フィルタ12Aが図5(a)の状態から+X軸方向にピッチSだけ移動する。すると、透過領域A、Bを透過した光のみが二次元撮像素子16の受光面161に入り、共役像Im2が形成される。また、受光面161の画素領域Pは透過領域Bに対応し、受光面161の画素領域Pには波長帯域450nm〜500nmの光が入射する。
【0028】
図5(c)において、第1透過波長選択フィルタ12Aが図5(b)の状態から+X軸方向にピッチSだけ移動する。すると、透過領域A〜Cを透過した光のみが二次元撮像素子16の受光面161に入り、共役像Im2が形成される。また、受光面161の画素領域Pは透過領域Cに対応し、受光面161の画素領域Pには波長帯域500nm〜550nmの光が入射する。
【0029】
第1透過波長選択フィルタ12Aが+X軸方向にピッチSずつ移動を続く。このため、図5(d)において受光面161の画素領域Pは透過領域Dに対応し、受光面161の画素領域Pでは波長帯域550nm〜600nmの光が入射する。図5(e)において受光面161の画素領域Pは透過領域Eに対応し、受光面161の画素領域Pには波長帯域600nm〜650nmの光が入射する。図5(f)において受光面161の画素領域Pは透過領域Fに対応し、受光面161の画素領域Pは波長帯域650nm〜700nmの光が入射する。
【0030】
図5(g)において、第1透過波長選択フィルタ12Aが図5(f)の状態から+X軸方向にピッチSだけ移動する。受光面161の画素領域Pは透過領域Gに対応し、受光面161の画素領域Pには波長帯域700nm〜750nmの光が入射する。また、受光面161の画素領域Qは透過領域Aに対応し、受光面161の画素領域Qには波長帯域400nm〜450nmの光が入射する。この図5(g)に描かれた第1透過波長選択フィルタ12Aと受光面161との関係では、第1透過波長選択フィルタ12Aの全ての透過領域A〜Gを透過した光が二次元撮像素子16の受光面161に共役像Im2として形成されている。
【0031】
上述のように、図5(a)から図5(g)までに示されたように第1透過波長選択フィルタ12Aが+X軸方向に1ピッチずつ移動することで、受光面161の画素領域Pは、第1透過波長選択フィルタ12Aの全ての波長領域400nm〜750nmによる撮像が完了する。
【0032】
その後、第1透過波長選択フィルタ12Aが図5(g)の状態から+X軸方向に沿ってピッチSずつさらに6ピッチ移動すると、図6(h)から図6(m)までで描かれた状態になる。つまり受光面161の画素領域Qには波長帯域450nm〜500nm……波長帯域700nm〜750nmの光が入射する。これにより、受光面161全面で第1透過波長選択フィルタ12Aの全ての波長領域400nm〜750nmによる撮像が完了する。
【0033】
図5および図6では、第1透過波長選択フィルタ12AがピッチS(例えば10mm)毎移動すると、波長帯域が50nmずつ変化した。しかし分光特性をより正確に測定する場合には、第1透過波長選択フィルタ12Aが移動するピッチSを細かくすることが好ましい。つまり、例えば第1透過波長選択フィルタ12Aが小さなピッチS(例えば2mm)毎移動するとき波長帯域が10nmずつ変化する。したがって、より細かい分光特性を測定することができる。一方、図5および図6では二次元撮像素子16が13回の撮影を行ったが、ピッチSを5分の1にすれば60回以上の撮影が必要となる。このため、分光特性の測定時間が長くなる。
【0034】
<制御部17及び画像処理部18の概要>
図7は、制御部17及び画像処理部18を示した概略図である。
図7に示されたように制御部17は駆動部171及び記憶部172を備えている。駆動部171は、駆動ステージ14に接続されている。駆動部171は、第1透過波長選択フィルタ12Aを保持している第1フィルタ保持部13Aを所定のピッチSずつ矢印AR1(図1を参照)に沿って移動するように駆動ステージ14をコントロールする。記憶部172は二次元撮像素子16に接続されている。記憶部172は二次元撮像素子16により撮像された対象物体の共役像Im2を記憶する。
【0035】
制御部17は、第1補正部173をさらに有する。第1補正部173は、所定のピッチSが矢印AR1(図1を参照)に沿って配置された二次元撮像素子16の1画素piを超える際、所定のピッチSに対応する矢印AR1方向の複数の画素piで撮像された共役像Im2に対して透過波長のずれを補正する。
【0036】
図8Aは上述の透過波長のずれを示した説明図で、第1透過波長選択フィルタ12Aの透過領域Dに対して説明する図である。第1透過波長選択フィルタ12Aの透過領域Dにおける波長帯域はλ4〜λ5である(図4を参照)。波長帯域λ4〜λ5は、例えば波長帯域550nm〜600nmである。
【0037】
図8Aに示されたように、所定のピッチS(10mm)は二次元撮像素子16の5画素piの幅(一つの画素幅2mm)に対応する。すなわち透過領域Dに対応される二次元撮像素子16の受光面161には5つの画素列P1〜P5を有している。なお、実際の二次元撮像素子16の画素列の幅は数μm〜数十μmであるが、説明のため幅2mmとして説明する。
【0038】
画素列P1が波長帯域λ4〜λ41(550nm〜560nm)に、画素列P2が波長帯域λ41〜λ42(560nm〜570nm)に、画素列P3が波長帯域λ42〜λ43(570nm〜580nm)に、画素列P4が波長帯域λ44〜λ44(580nm〜590nm)に、画素列P5が波長帯域λ44〜λ5(590nm〜600nm)に対応する。ここで、波長λ4〜λ41、λ41〜λ42……λ44〜λ5の間であっても直線状に透過波長は変化している(図4を参照)。
【0039】
つまり、図8Aの状態で画素列P1における画素piでは波長帯域λ4〜λ41の光束が入射する。同様に、画素列P2では波長帯域λ41〜λ42の光束が入射し、画素列P3では波長帯域λ42〜λ43の光束が入射し、画素列P4では波長帯域λ43〜λ44の光束が入射し、画素列P5では波長帯域λ44〜λ5の光束が入射する。したがって、第1透過波長選択フィルタ12Aが図8Aの状態から所定のピッチSだけ移動すると、画素列P1には第1透過波長選択フィルタ12Aの波長帯域λ41〜λ5(560nm〜600nm)を透過した光束が入射しない。同様に、画素列P2では第1透過波長選択フィルタ12Aの波長帯域λ4〜λ41(550nm〜560nm)、λ42〜λ5(570nm〜600nm)を透過した光束が入射しない。画素列P3では第1透過波長選択フィルタ12Aの波長帯域λ4〜λ42(550nm〜570nm)、λ43〜λ5(580nm〜600nm)を透過した光束が入射しない。画素列P4では第1透過波長選択フィルタ12Aの波長帯域λ4〜λ43(550nm〜580nm)、λ44〜λ5(590nm〜600nm)を透過した光束が入射しない。画素列P5では第1透過波長選択フィルタ12Aの波長帯域λ4〜λ44(550nm〜590nm)を透過した光束が入射しない。
【0040】
図8Aに示す画素列P1、P2、P3、P4、P5が第1透過波長選択フィルタ12AをピッチSでずらしながらF1、F2、F3、F4、F5、F6の6回の撮影で得られた分光特性例を図8Bに示す。図8Bでは実際に得られたデータは黒丸で示してある。横軸の波長値は第1透過波長選択フィルタ12Aの透過波長帯域中心波長である。図8Bに示すように、画素列に応じて1回の撮影にあたる第1透過波長選択フィルタ12Aの透過波長帯域の中心波長はずれている。複数回の撮影で得られたディスクリートなデータ列を補間することによって、画素ごとに連続的な分光特性測定結果が得られるが、補間計算の際には画素列に応じたグラフ横軸における第1透過波長選択フィルタ12A透過波長帯域中心波長のずれを加味する。この第1透過波長選択フィルタ12A透過波長帯域中心波長のずれを加味した分光特性補間計算は第1補正部173によって行われる。
【0041】
第1補正部173は、二次元撮像素子16の画素piの幅および図4に示された第1透過波長選択フィルタ12Aの波長分布に基づいて、画素piに対する第1透過波長選択フィルタ12A透過波長帯域中心波長ずれ量を演算する。また、波長較正用対象物体を撮影して画素piに対する補正量をルックアップテーブルで記憶していてもよい。
【0042】
なお、所定のピッチSが二次元撮像素子16の1画素piの幅と一致しない場合は第1補正部173により上述の波長ずれを補正する必要があるが、所定のピッチSが二次元撮像素子16の1画素piと一致する場合は上述の補正が必要でない。
【0043】
再び図7に戻り、制御部17について説明する。制御部17は、第2補正部174をさらに有し、第2補正部174は、第1透過波長選択フィルタ12A自体による波長ずれを補正する。図8Bまでの説明では、第1透過波長選択フィルタ12AはX軸方向に直線的に透過波長が変化していると説明し、Y軸方向には変化しないことを前提として説明してきた。しかし、第1透過波長選択フィルタ12Aに干渉フィルタ層122を形成する際に、Y軸方向に透過波長が変化してしまうことがある。
【0044】
図9は、第1透過波長選択フィルタ12Aの平面図である。第1透過波長選択フィルタ12Aは矩形の平行平面板121の片面に多層膜の干渉フィルタ層122を有する多層膜の光学素子である。一般に平行平面板121に干渉フィルタ層122を形成すると、透過波長の分布が図9に示されたように同じ透過波長を有する領域が、例えばX側に向かって膨らんだ点線で示される分布となっている場合がある。このため、例えば同じX軸方向の位置M1において、そのY軸方向に異なった点、例えば点T1及び点T2、においては、透過波長が異なっている。第2補正部174は、このような第1透過波長選択フィルタ12A自体に生じる波長ずれを補正する。
【0045】
第1透過波長選択フィルタ12A自体が有している波長ずれ補正のため、波長較正用対象物体を撮影して第1透過波長選択フィルタ12Aの波長ずれを予め測定しておき、その波長ずれ量をルックアップテーブルに記憶しておく。第2補正部174は、Y0軸を基準として例えば点T1に対して3nmの波長補正を行い、点T2に対して9nmの波長補正を行う。
【0046】
もちろん、第1透過波長選択フィルタ12Aを大きな平行平面板121で制作し、例えば図9の破線に示されたようなフィルタ12Zを切り出してもよい。そうすれば、フィルタ12Z自体の波長ずれはかなり小さくなる。このような場合には必ずしも第2補正部174がフィルタ自体の波長補正を行う必要はない。
【0047】
また、図7では第1補正部173が波長の補正を行った後で第2補正部174が波長の補正を行っているが、最初に第2補正部174が波長補正を行い、次に第1補正部173が波長補正を行ってもよい。
【0048】
制御部17は測定部175を有する。測定部175は、所定のピッチS毎に第1透過波長選択フィルタ12Aが移動する際、ピッチS毎に二次元撮像素子16で撮像された共役像Im2の画像データを取得する。測定部175は、その画像データに基づいて対象物体の分光特性を測定する。
【0049】
また、分光測定装置100は、測定部175が取得した画像データに基づいて、画像要素毎の分光強度分布を処理できる画像処理部18をさらに有する。ここで画像要素とは、第1透過波長選択フィルタ12AがピッチS毎で移動した際に、そのピッチSに対応する二次元撮像素子16の画素領域からの画像データである。なお、制御部17と画像処理部18とは、パーソナルコンピュータなどであってもよい。画像処理部18は接続されたモニターCRTに画像データなどの測定結果を表示させる。
【0050】
また図10は、画像処理部18により処理されてモニターCRTに表示された分光特性の一例を示した図である。なお、例えば分光測定装置100が医学分野に使用され、図10がある臓器を観察した場合の分光特性を示している。観察者は分光特性を示したグラフでこの臓器に病気があるか否かを判断できる。例えばこの臓器が正常である際、各波長帯域A〜Gでの分光特性グラフは図10の実線で示されたとおりである。しかし、この臓器が病気であると、波長帯域A〜D、F、Gでの分光特性I1〜I4、I6、I7はほとんど変化しないが、波長帯域Eでの分光特性I5は大幅に減少して分光特性I5’となる。波長帯域Eが変化しているだけでは、観察者の眼では正常な臓器の色彩と病気の臓器の色彩とを明確に区別できないおそれがある。臓器の分光特性をモニターCRTに表示させることにより、観察者はこの臓器に病気があるか否かを判断することができる。
【0051】
(第2実施形態)
第2実施形態の分光測定装置100は、第1透過波長選択フィルタ12Aに加えて、透明平行平板121aおよび遮光平行平板121bを有する第2フィルタ保持部13Bを使用する。以下は第2フィルタ保持部13Bについて図11を参照しながら説明する。
【0052】
図11は、第2フィルタ保持部13Bと二次元撮像素子16の受光面161との相対関係を示している図である。図11に示されたように、第2フィルタ保持部13Bはその中央部に第1実施形態で説明された第1透過波長選択フィルタ12Aが設けられている。また、第1透過波長選択フィルタ12Aの矢印AR1方向の両側には第1透過波長選択フィルタ12Aの平行平板121と同一素材、同一厚さからなる透明平行平板121a、遮光平行平板121bが第1透過波長選択フィルタ12Aと接着するようにそれぞれ設けられている。透明平行平板121aの面には何も形成されておらず透明である。遮光平行平板121bの面には例えばクロムメッキされ、対物レンズ11からの光束を遮光する。
【0053】
図11(a)に示されたように、透明平行平板121aが受光面161全てを覆う位置で停止している。そのため二次元撮像素子16は第1透過波長選択フィルタ12Aを透過しない物体像を撮像することができる。この状態において、物体像はモノクロ像として撮像されるので、撮像構図決めや焦点合わせに利用される。透明平行平板121aは、第1透過波長選択フィルタ12Aと同一屈折率および同一厚さであるため、焦点合わせた後、第2フィルタ保持部13Bが移動しても焦点位置が変化することがない。
【0054】
次に、第2フィルタ保持部13Bを矢印AR1の方向にピッチS毎に移動しながら二次元撮像素子16で撮像すると、図5及び図6で説明したように分光測定を行うことができる。ピッチS毎の移動が行われていくと、受光面161は遮光平行平板121bで覆われてくる。遮光平行平板121bは第1フィルタ保持部13A(図1)の遮光枠の役目を行う。
【0055】
(第3実施形態)
第3実施形態の分光測定装置100は、2枚の第1透過波長選択フィルタ12Aを有する第3フィルタ保持部13Cを用いている。以下は第3フィルタ保持部13Cについて図12を参照しながら説明する。
【0056】
図12は、第3フィルタ保持部13Cと二次元撮像素子16の受光面161との相対関係を示している図である。図12に示されたように、第3フィルタ保持部13Cは第1実施形態で説明された第1透過波長選択フィルタ12Aを2枚有している。すなわち、2枚の第1透過波長選択フィルタ12Aが第3フィルタ保持部13Cの移動方向(矢印AR1の方向)に沿って接着するように形成されている。
【0057】
まず、第2実施形態で説明されたように透明平行平板121aを使って焦点合わせが行われる。次に、第3フィルタ保持部13Cが図12(a)に示される位置まで移動される。この移動量は7ピッチ分であり、1つ目の第1透過波長選択フィルタ12Aが受光面161全てを覆う位置まで移動する。この状態で二次元撮像素子16により1回目の撮像が行われる。二次元撮像素子16の受光面161全面で、波長帯域Aから波長帯域Gまで同時に撮像する。その後、第3フィルタ保持部13CがピッチS毎に移動する。
【0058】
図12(b)は、図12(a)の状態から第3フィルタ保持部13Cが3ピッチ分に移動した状態を示した図である。二次元撮像素子16の受光面161は、1つの第1透過波長選択フィルタ12Aにおける波長帯域A、B、Cと別の第1透過波長選択フィルタ12Aにおける波長帯域D、E、F、Gとに同時に撮像している。
【0059】
図12(c)は、図12(a)の状態から第3フィルタ保持部13Cが6ピッチ分に移動した状態を示した図である。1つの第1透過波長選択フィルタ12Aにおける波長帯域Gと別の第1透過波長選択フィルタ12Aにおける波長帯域A〜Fとが、が受光面161を覆っている。二次元撮像素子16の受光面161は、波長帯域Aから波長帯域Gまで同時に撮像する。つまり、図12(a)から(c)に至るまで1ピッチ毎、6回第3フィルタ保持部13Cが移動することで、二次元撮像素子16の受光面161全面で、波長帯域Aから波長帯域Gまでを撮像することができる。
【0060】
第1実施形態では、図5および図6で示されたように二次元撮像素子16が13回の撮影を行った。第3実施形態によれば、二次元撮像素子16が7回の撮影を行えばよい。このため撮像時間を短縮することもできる。
【0061】
(第4実施形態)
第4実施形態の分光測定装置100は、第1透過波長選択フィルタ12Aと波長域が異なる第2透過波長選択フィルタ12Bとを有する第4フィルタ保持部13Dを用いている。以下は第4フィルタ保持部13Dについて図13を参照しながら説明する。
【0062】
図13は、第4フィルタ保持部13Dと二次元撮像素子16の受光面161との相対関係を示している図である。図13に示されたように、第4フィルタ保持部13Dは図の右側から順に透明平行平板121a、第1透過波長選択フィルタ12A、第2透過波長選択フィルタ12Bおよび遮光平行平板121bを有している。
【0063】
ここで、第2透過波長選択フィルタ12Bは第1実施形態で説明された第1透過波長選択フィルタ12Aと同じ種類の光学素子であるが、その透過波長の波長帯域が異なる。例えば、第1透過波長選択フィルタ12Aは波長帯域400nm〜750nmまでの可視光を透過するが、第2透過波長選択フィルタ12Bは波長帯域750nm〜1100nmまでの赤外光を透過する。例えば第2透過波長選択フィルタ12Bがその移動方向に透過領域H〜Nを備える場合、透過領域Hの波長帯域は750nm〜800nm、透過領域Iの波長帯域は800nm〜850nm、透過領域Jの波長帯域は850nm〜900nm、透過領域Kの波長帯域は900nm〜950nm、透過領域Lの波長帯域は950nm〜1000nm、透過領域Mの波長帯域は1000nm〜1050nm、透過領域Nの波長帯域は1050nm〜1100nmである。
【0064】
このような構成にすれば、例えば図13(b)の状態において、二次元撮像素子16の受光面161全面は第1透過波長選択フィルタ12Aにおける波長帯域D、E、F、Gと第2透過波長選択フィルタ12Bにおける波長帯域H、I、Jとに同時に対応することができる。
【0065】
また、例えば図13(c)の状態では、二次元撮像素子16の受光面161は、波長帯域Hから波長帯域Nまで同時に撮像する。このように、第4実施形態の分光測定装置100は第1〜第3実施形態より広い波長帯域に対して分光特性が得られる。第2透過波長選択フィルタ12Bは赤外光領域で説明したが、第2透過波長選択フィルタ12Bが紫外光領域であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上、本発明の最適な実施形態について説明したが、当業者に明らかなように、本発明はその技術的範囲内において実施例に様々な変更を加えて実施することができる。例えば、第2実施形態における透明平行平板121a、遮光平行平板121bおよび第1透過波長選択フィルタ12Aは、一枚の透明平行平板を3つの部分に分けて構成してもよい。また第3実施形態における2つの第1透過波長選択フィルタ12Aを一枚の透明平行平板に形成してもよい。さらに第4実施形態では、第1透過波長選択フィルタ12Aと第2透過波長選択フィルタ12Bとを一枚の透明平行平板に構成してもよい。
【0067】
また、例えば、第2〜第4実施形態において、第1透過波長選択フィルタ12A、第2透過波長選択フィルタ12B、透明平行平板121a及び遮光平行平板121bは互いに直接に接着してフィルタ保持部に保持されていた。しかし、1枚1枚別々の板で構成し、複数の窓を有するフィルタ保持部で保持された構成としてもよい。
【符号の説明】
【0068】
11 … 対物光学系
12A、12B … 第1透過波長選択フィルタ
13A、13B、13C、13D … フィルタ保持部
14 … 駆動ステージ
15 … 投影光学系
16 … 二次元撮像素子
17 … 制御部
18 … 画像処理部
19a、19b … 平行平面板
100 … 分光測定装置
111、112、151、152 … レンズ
121、121a、121b … 平行平面板
122 … 干渉フィルタ層
153 … 開口絞り
161 … 受光面
171 … 駆動部
172 … 記憶部
173 … 第1補正部、 174 … 第2補正部
175 … 測定部
Ax … 光軸
Im1 … 物体像、 Im2 … 共役像
CRT … モニター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物体像をヴィネッティング無しで且つテレセントリックに結像可能な対物光学系と、
前記対物光学系による前記対象物体像の結像面に配置され、第1波長から第1波長より長い波長の第2波長までの光を透過させるとともに所定方向に沿って透過波長が異なるように形成された第1透過波長選択フィルタと、
前記結像面内で前記所定方向に前記第1透過波長選択フィルタを所定ピッチごとに移動させる駆動部と、
前記第1透過波長選択フィルタをテレセントリックに透過した光束成分だけで、前記対象物体の像の共役像をヴィネッティングなしで投影する投影光学系と、
前記対物光学系または前記投影光学系内に設置され、前記第1透過波長選択フィルタ上に対象物体像を形成して透過する光束のうち撮像に使う成分をヴィネッティング無しで且つテレセントリックとする開口絞りと、
前記所定方向におよび前記所定方向と直交する直交方向に配置された複数の画素からなり、前記投影光学系により投影された前記共役像を二次元で撮像する二次元撮像素子と、
前記二次元撮像素子で撮像された前記共役像を記憶する記憶部と、
前記所定ピッチごと前記第1透過波長選択フィルタが移動した際に、移動毎に前記二次元撮像素子で共役像を撮像して前記記憶部に記憶し、前記対象物体の分光特性を測定する測定部と、
を備える分光測定装置。
【請求項2】
前記第1透過波長選択フィルタは、平行平面板の片面に多層膜の干渉フィルタ層を有し、前記多層膜の厚さが前記所定方向に沿って変化することによって、前記第1透過波長選択フィルタを透過する光の前記透過波長が前記所定方向に沿って前記第1波長から前記第2波長まで直線的に変化する請求項1に記載の分光測定装置。
【請求項3】
前記所定ピッチが前記所定方向に配置された前記二次元撮像素子の1画素を超えて移動する際、前記所定ピッチに対応する前記所定方向の複数の画素で撮像された共役像に対して、前記透過波長のずれを補正する第1補正部を備える請求項1又は請求項2に記載の分光測定装置。
【請求項4】
前記第1透過波長選択フィルタの前記直交方向に異なる位置では、前記透過波長が異なる請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の分光測定装置。
【請求項5】
前記直交方向に異なる位置に対応する前記画素で撮像された前記共役像に対して、前記透過波長のずれを補正する第2補正部を備える請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の分光測定装置。
【請求項6】
さらに、多層膜の干渉フィルタ層が形成されておらず前記平行平面板と同じ材質及び厚さの基準平面板を備え、
前記駆動部は、前記基準平面板を前記結像面まで移動させる請求項2に記載の分光測定装置。
【請求項7】
前記第1透過波長選択フィルタが前記所定方向に沿って少なくとも2つ配置され、
前記測定部は、前記所定ピッチごと2つの前記第1透過波長選択フィルタを移動させ、移動毎に前記二次元撮像素子で前記共役像を撮像して前記記憶部に記憶する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の分光測定装置。
【請求項8】
前記第1透過波長選択フィルタと前記所定方向に沿って配置され、前記第2波長から前記第2波長より長い波長の第3波長までの光を透過させるとともに前記所定方向に沿って透過波長が異なるように形成された第2透過波長選択フィルタを有し、
前記測定部は、前記所定ピッチごと前記第1透過波長選択フィルタ及び前記第2透過波長選択フィルタを移動させ、移動毎に前記二次元撮像素子で前記共役像を撮像して前記記憶部に記憶する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の分光測定装置。
【請求項9】
前記第2透過波長選択フィルタは、平行平面板の片面に多層膜の干渉フィルタ層を有し、前記多層膜の厚さが前記所定方向に沿って変化することによって、前記第2透過波長選択フィルタを透過する光の前記透過波長が前記所定方向に沿って前記第2波長から前記第3波長まで直線的に変化する請求項8に記載の分光測定装置。
【請求項10】
前記第2透過波長選択フィルタの前記直交方向に異なる位置では、前記透過波長が異なる請求項8又は請求項9に記載の分光測定装置。
【請求項11】
前記所定ピッチごと前記記憶部に記憶された前記共役像の画像データに基づいて、前記共役像を前記所定ピッチごとの画像要素に変換した上で前記画像要素毎の分光強度分布を表示させる画像処理部を有する請求項1から請求項10に記載の分光測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−226876(P2011−226876A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95692(P2010−95692)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】