分光測定装置
【課題】精度の高い分光特性の測定ができる分光測定装置を提供すること。
【解決手段】分光測定装置1は、可視光の波長域にピーク波長を有さず、短波長から長波長に向かうに従って光量が増大する光を射出するタングステンランプ211と、可視光の波長域にピーク波長を有する光を射出する紫色LED212と、タングステンランプ211及び紫色LED212から射出される光を混合する光混合器22と、光混合器22で混合された光が入射され、混合された光の入射光のうち、特定波長の光を透過させるエタロン5と、エタロン5を透過した光を受光する受光部31と、エタロン5の透過する光の波長を切り替え、受光部31により受光された光に基づいて、エタロン5を透過した光の分光特性を測定する測定制御部42とを備える。
【解決手段】分光測定装置1は、可視光の波長域にピーク波長を有さず、短波長から長波長に向かうに従って光量が増大する光を射出するタングステンランプ211と、可視光の波長域にピーク波長を有する光を射出する紫色LED212と、タングステンランプ211及び紫色LED212から射出される光を混合する光混合器22と、光混合器22で混合された光が入射され、混合された光の入射光のうち、特定波長の光を透過させるエタロン5と、エタロン5を透過した光を受光する受光部31と、エタロン5の透過する光の波長を切り替え、受光部31により受光された光に基づいて、エタロン5を透過した光の分光特性を測定する測定制御部42とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光の分光特性を測定する分光測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入射光の各波長光の光特性(色度や明るさなど)を測定する分析装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載の分析装置は、光源から射出され、試料により反射された光を、波長可変干渉フィルターに入射させ、波長可変干渉フィルターを透過した光をフォトダイオードで受光する。そして、フォトダイオードから出力される電流を検出することで、測定を実施する装置である。このような分析装置では、波長可変干渉フィルターを制御することで、波長可変干渉フィルターを透過する光を可変でき、入射した光から所望の波長の光を順次切り替えてフォトダイオードで受信させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−106753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、光源に可視光の波長域内にピーク波長を有さないタングステンランプ等の白色光を用いる場合には、短波長域における光量が低下するため、波長可変干渉フィルターにおける分光可能な波長域のうち、短波長域の光の光量が低下するおそれがある。このため、フォトダイオードで受光する光量が低下して、短波長域における分光特性の測定精度が悪くなる。これにより、入射光に対する正確な分光特性の測定を実施できないという課題がある。
【0006】
本発明の目的は、精度の高い分光特性の測定ができる分光測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の分光測定装置は、可視光の波長域における光を分光する分光測定装置であって、前記可視光の波長域にピーク波長を有さず、短波長から長波長に向かうに従って光量が増大する光を射出する第1光源と、前記可視光の波長域にピーク波長を有する光を射出する第2光源と、前記第1光源及び前記第2光源から射出される光を混合する光混合器と、前記光混合器で混合された光が入射され、前記混合された光の入射光のうち、特定波長の光を透過させる波長可変干渉フィルターと、前記波長可変干渉フィルターを透過した光を受光する受光部と、前記波長可変干渉フィルターの透過する光の波長を切り替え、前記受光部により受光された光に基づいて、前記波長可変干渉フィルターを透過した光の分光特性を測定する測定制御部とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、可視光の波長域にピーク波長を有さず、短波長から長波長に向かうに従って光量が増大する光を射出する第1光源、及び可視光の波長域にピーク波長を有する光を射出する第2光源と、各光源から射出された光を混合する光混合器とを備える。そして、光混合器が各光源から射出される光を混合し、受光部が波長可変干渉フィルターを透過した検査対象光を受光して、測定制御部が検査対象光の分光特性を測定する。ここで、上述したように、可視光の波長域にピーク波長を有さない第1光源のみを用いた場合、可視光の波長域において、所定の波長域内で光量が著しく低下する。しかし、本発明によれば、第2光源が、例えば短波長域(第1光源の光量が少ない波長域)において、ピーク波長を有する光を射出すれば、第1光源の光量が著しく低下する短波長域の光量を効果的に補うことができる。従って、光量が低下する波長域における分光特性の測定精度を高めることができ、ひいては、精度の高い分光特性の測定をすることができる。
【0009】
本発明の分光測定装置では、前記第2光源は、385nm以上450nm以下の範囲内にピーク波長を有することが好ましい。
【0010】
ところで、波長可変干渉フィルターの波長可変域を380nm〜780nmとし、タングステンランプ等の短波長域の光量が小さい第1光源を用いた場合では、第1光源は特に短波長域の光量が低下する。そこで、精度の高い分光特性の測定を行うには、短波長域の光量を補う必要がある。本発明によれば、385nm以上450nm以下の範囲内にピーク波長を有する第2光源を用いたので、短波長域の光量を第2光源で補うことが可能となる。従って、短波長域においても光量を十分得ることが可能となり、精度の高い分光特性の測定を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る第1実施形態の分光測定装置の概略構成図。
【図2】前記第1実施形態の光源部のスペクトル分布を示すグラフ。
【図3】前記第1実施形態のエタロンの概略構成を示す断面図。
【図4】前記第1実施形態のエタロンの波長校正の処理を示すフローチャート。
【図5】前記第1実施形態の受光部で生成した電気信号の電流値と駆動電圧との関係を示すグラフ。
【図6】前記第1実施形態のエタロンの波長校正を説明するための図。
【図7】本発明に係る第2実施形態の分光測定装置の概略構成図。
【図8】前記第2実施形態の光源部のスペクトル分布を示すグラフ。
【図9】前記第2実施形態のエタロンの波長校正を説明するための図。
【図10】本発明の変形例に係る光源部のスペクトル分布を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1実施形態]
以下、本発明に係る第1実施形態を図面に基づいて説明する。
〔1.分光測定装置の概略構成〕
図1は、第1実施形態の分光測定装置1の概略構成を示す図である。
分光測定装置1は、図1に示すように、検査対象Aに光を射出する光源装置2と、検査対象Aで反射された検査対象光を分光するエタロン5(波長可変域380nm〜780nm)を備えた分光装置3と、分光測定装置1の全体動作を制御する制御装置4とを備える。そして、この分光測定装置1は、光源装置2から射出される光を検査対象Aにて反射させ、反射された検査対象光を分光装置3にて分光し、分光装置3から出力される検出信号に基づいて、分光した各波長の光の光量をそれぞれ測定する分光特性測定を実施する装置である。
また、この分光測定装置1は、光源装置2の後述する紫色LED212のみを点灯させて、エタロン5の波長校正を行う装置でもある。この場合には、検査対象Aとして、白色の標準反射板が用いられる。なお、エタロン5の波長校正の詳細については、後述する。
【0013】
〔2.光源装置の構成〕
光源装置2は、図1に示すように、光源部21と、光混合器22と、レンズ23とを備えて、これらが一体化された装置である。
光源部21は、白色光を射出するタングステンランプ211(第1光源)と、紫色LED(Light Emitting Diode)212(第2光源)と、タングステンランプ211及び紫色LED212から射出された光を反射するリフレクター213とを備える。そして、光源装置2は、検査対象光の分光測定を行う場合、タングステンランプ211及び紫色LED212の双方を点灯させ、エタロン5の波長校正を行う場合、紫色LED212のみを点灯させる。
光混合器22は、石英ガラスやアクリル樹脂等で筒状に形成され、リフレクター213で反射された光を内部で多重反射させて、タングステンランプ211及び紫色LED212から射出された光を混合、すなわち合成させる。
レンズ23は、光混合器22で多重反射された光を平行光とし、平行化された光を検査対象Aに入射させる。
【0014】
図2は、本実施形態のおける光源部21のスペクトル分布を示すグラフである。
タングステンランプ211は、図2に示す破線部分のスペクトル分布を有している。すなわち、タングステンランプ211は、短波長から長波長に向かうに従って、光量が増大するので、波長400nm近傍の短波長域において、光量が小さい。
一方、紫色LED212は、図2に示す実線部分のスペクトル分布を有している。このため、紫色LED212は、波長約385nm〜約430nmの範囲でスペクトル分布を有し、波長405nmに光量が最大となるピーク波長を有している。
以上により、タングステンランプ211及び紫色LED212から射出された光が光混合器22で混合されることで、図2の二点鎖線に示すスペクトル分布となる。すなわち、紫色LED212は、タングステンランプ211の光量が小さい波長400nm近傍の光量を効果的に補うことができる。
【0015】
〔3.分光装置の構成〕
分光装置3は、図1に示すように、検査対象Aで反射された検査対象光を所定方向へ反射させてエタロン5に集光させる凹面鏡3Aを有した装置本体30を備える。この装置本体30は、凹面鏡3Aから入射された検査対象光を分光するエタロン5(波長可変干渉フィルター)と、エタロン5で分光された各波長の光を受光する受光部31とを備える。
【0016】
〔3−1.受光部の構成〕
受光部31は、光検出器として動作する受光素子であり、例えば、フォトダイオード、フォトIC等で構成される。この受光部31は、エタロン5にて透過された検査対象光を受光すると、受光した検査対象光の光量に応じた電気信号を生成する。そして、受光部31は、制御装置4に接続されており、生成した電気信号を受光信号として制御装置4に出力する。
なお、一般的な受光素子では、短波長域の受信感度が長波長域の受信感度よりも悪いため、本実施形態では、図2に示すように、特に短波長域にピーク波長を有する紫色LED212を用いたことで、短波長域の受信感度を向上させている。
【0017】
〔3−2.エタロンの構成〕
図3は、エタロン5の概略断面図である。
エタロン5は、例えば、平面視略正方形状の板状の光学部材であり、一辺が例えば10mmに形成されている。このエタロン5は、図3に示すように、固定基板51と、可動基板52とを備える。そして、これらの基板51,52は、例えば、プラズマ重合膜を用いたシロキサン接合などにより接合層53を介して互いに接合されて一体的に構成される。これらの2枚の基板51,52は、それぞれ例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス等の各種ガラスや、水晶等により形成されている。
【0018】
また、固定基板51と可動基板52との間には、固定ミラー54及び可動ミラー55が設けられる。ここで、固定ミラー54は、固定基板51における可動基板52に対向する面に固定され、可動ミラー55は、可動基板52における固定基板51に対向する面に固定されている。また、これらの固定ミラー54及び可動ミラー55は、ギャップGを介して対向配置されている。
さらに、固定基板51と可動基板52との間には、固定ミラー54及び可動ミラー55の間のギャップGの寸法を調整するための静電アクチュエーター56が設けられている。
【0019】
固定基板51は、厚みが例えば500μmのガラス基材をエッチングにより加工することで形成される。この固定基板51には、図3に示すように、エッチングにより電極形成溝511が形成され、電極形成溝511には、静電アクチュエーター56を構成する第1電極561が形成される。この第1電極561は、図示しない電極引出部を介して制御装置4(図1参照)に接続されている。
【0020】
可動基板52は、厚みが例えば200μmのガラス基材をエッチングにより加工することで形成される。この可動基板52には、第1電極561に所定のギャップを介して対向する、静電アクチュエーター56を構成する第2電極562が形成されている。この第2電極562は、図示しない電極引出部を介して制御装置4(図1参照)に接続されている。
そして、制御装置4から出力される電圧により、第1電極561及び第2電極562の間に静電引力が働き、ギャップGの寸法が調整され、当該ギャップGの寸法に応じて、エタロン5を透過する光の透過波長が決定される。すなわち、静電アクチュエーター56によりギャップ間隔を適宜調整することで、エタロン5を透過する光が決定されて、エタロン5を透過した光が受光部31で受光される。
【0021】
〔4.制御装置の構成〕
制御装置4は、分光測定装置1の全体動作を制御する。この制御装置4としては、例えば汎用パーソナルコンピューターや、携帯情報端末、その他、測色専用コンピューターなどを用いることができる。
そして、制御装置4は、図1に示すように、光源制御部41と、測定制御部42と、校正部43とを備えて構成されている。また、制御装置4は、図示しないメモリーやハードディスクなどの記録媒体である記憶部を備え、当該記憶部には、駆動電圧に対する透過光の透過波長を示す透過特性データ(V−λデータ)が記憶されている。
【0022】
光源制御部41は、光源部21に接続されている。そして、光源制御部41は、例えば分光特性の測定処理を行うという、利用者の設定入力に基づいて、光源部21に所定の制御信号を出力し、光源部21のタングステンランプ211及び紫色LED212から所定の明るさの光を射出させる。また、光源制御部41は、例えば、エタロン5の波長校正を行うという、利用者の設定入力に基づいて、光源部21に所定の制御信号を出力し、光源部21の紫色LED212のみから光を射出させる。
【0023】
測定制御部42は、上述したように、エタロン5の第1電極561、及び第2電極562に接続されている。そして、測定制御部42は、第1電極561、及び第2電極562に駆動電圧を印加することで、エタロン5のギャップGの寸法を変化させ、エタロン5を透過する光の波長を切り替える。
また、測定制御部42は、受光部31に接続され、検査対象光の分光特性の測定処理を実施する。
分光特性の測定処理の際、測定制御部42は、受光部31から入力された受光信号に基づいて、各波長に対する受光量を算出し、検査対象光の分光特性の測定処理を実施する。
【0024】
校正部43は、受光部31に接続され、エタロン5の波長校正処理を実施する。
エタロン5の波長校正の際、校正部43は、受光部31から入力される駆動電圧毎の受光信号を受信に基づいて、受光信号、及び駆動電圧の関係を算出する。そして、校正部43は、紫色LED212のピーク波長である、405nmにおける駆動電圧を算出し、エタロン5の波長校正(上述した透過特性データの補正)を実施する。
【0025】
〔5.エタロンの校正について〕
分光測定装置1は、上述したように、エタロン5を透過した検査対象光の分光特性の測定の他、紫色LED212のみを点灯させてエタロン5の波長校正を行う。ここでは、エタロン5の波長校正について、図4に示すフローを参照して説明する。
エタロン5では、環境温度の変化により、ミラー54,55や電極561,562の温度に依存する線膨張係数が変動するため、ミラー54,55や電極561,562の内部応力が変動し、基板51,52が撓むおそれがある。これにより、ミラー間ギャップGの寸法が変動し、所望の透過波長を得られないという問題がある。そこで、エタロン5を所定の環境温度下に設置した際において、駆動電圧に対するギャップGの寸法(透過波長)を予め設定しておくことが好ましい。
【0026】
具体的に、光源制御部41により、紫色LED212のみを点灯させる(ステップS1)。そして、測定制御部42は、駆動電圧を例えば、0.1V単位で変化させていく(ステップS2)。次に、受光部31は、駆動電圧毎に検査対象Aで反射された検査対象光を受光し、受光した検査対象光の光量に応じた電気信号を生成する。これにより、校正部43は、受光部31で生成した電気信号の電流値と電圧(駆動電圧)との関係を示した図5のデータを取得する(ステップS3)。
そして、校正部43は、図5のデータに基づいて、最大電流値となる電圧値V1を取得し(ステップS4)、この電圧値V1を印加した場合における波長は、405nm(紫色LED212のピーク波長)である。
【0027】
次に、校正部43は、記憶部からV−λデータを読み出して校正する(ステップS5)。
ところで、環境温度の変化やこの他の要因(エタロン5の配設位置の変化による重力の変動等)に応じて、V−λデータの変動パターンがシミュレーションにより予め分かっている。
図6では、環境温度の変化により波長変動が一定となる場合を示しており、具体的に、破線部分は校正前のデータであり、実線部分は校正後のデータを示している。図6によれば、V−λデータの1点を補正すればよいため、校正部43は、前記所定の環境温度下において、駆動電圧V1における波長を405nmと校正する。
【0028】
〔6.本実施形態の作用効果〕
本実施形態によれば、可視光の波長域にピーク波長を有さないタングステンランプ211、及び可視光の波長域にピーク波長を有する紫色LED212と、各光源211,212から射出された光を混合する光混合器22とを備える。そして、光混合器22が各光源211,212から射出される光を混合し、受光部31がエタロン5を透過した検査対象光を受光して、測定制御部42が検査対象光の分光特性を測定する。ここで、上述したように、可視光の波長域にピーク波長を有さないタングステンランプ211のみを用いた場合、可視光の波長域において、短波長域で光量が著しく低下する。しかし、本実施形態によれば、可視光の波長域において、特に短波長域にピーク波長を有する紫色LED212を備えるので、各光源211,212から射出される光を混合することで、タングステンランプ211の光量が著しく低下する短波長域の光量を効果的に補うことができる。従って、光量が低下する短波長域における分光特性の測定精度を高めることができ、ひいては、精度の高い分光特性の測定をすることができる。
【0029】
また、波長405nmにピーク波長を有する紫色LED212を用いたので、短波長域の光量を紫色LED212で補うことが可能となる。従って、短波長域においても光量を十分得ることが可能となり、精度の高い分光特性の測定を実施することができる。
【0030】
[第2実施形態]
図7は、第2実施形態の分光測定装置1Aの概略構成を示す図である。
前記第1実施形態では、光源部21は、2つの光源であるタングステンランプ211、及び紫色LED212を備えていたが、本実施形態では、光源部21Aは、さらに2つの光源である青色LED214、及び緑色LED215を備え、4つの光源211,212,214,215を備える点で相違する。
【0031】
図8は、本実施形態における光源部21Aのスペクトル分布を示すグラフである。
青色LED214は、図8に示す実線L1のスペクトル分布を有している。このため、青色LED214は、波長約420nm〜約525nmの範囲でスペクトル分布を有し、波長470nmに光量が最大となるピーク波長を有している。
緑色LED215は、図8に示す実線L2のスペクトル分布を有している。このため、緑色LED215は、波長約480nm〜約610nmの範囲でスペクトル分布を有し、波長530nmに光量が最大となるピーク波長を有している。
また、紫色LED212、青色LED214、及び緑色LED215のピーク波長の強度は、波長が高くなるにつれて小さくなるように設定される。
以上により、タングステンランプ211、紫色LED212、青色LED214、及び緑色LED215から射出された光が光混合器22で混合されることで、図8の二点鎖線に示すスペクトル分布となる。すなわち、紫色LED212は、タングステンランプ211の光量が小さい波長400nm近傍の光量を補いつつ、青色LED214及び緑色LED215は、短波長から長波長に向かうに従って、タングステンランプ211の光量を補う。すなわち、前記第1実施形態に比べて、可視光域における光量がより増加している。
【0032】
次に、上述した光源部21Aを有する分光測定装置1Aでは、以下のように、エタロン5の波長校正を実施する。以下では、本実施形態では、環境温度の変化に加えて、エタロン5の配設位置の変化(重力の変動)等により波長変動が生じる場合に対するエタロン5の波長校正について説明する。
上述したように、V−λデータの変動パターンがシミュレーションにより予め分かっているため、環境温度の変化に加えて、重力の変動等により波長変動が生じる場合には、図9に示すように、V−λデータの少なくとも3点を補正する必要がある。そこで、校正部43は、紫色LED212に加えて、青色LED214及び緑色LED215を用いて、エタロン5の波長校正を実施する。
【0033】
具体的に、前記第1実施形態と同様に、図4に示すステップS1からステップS5を実施するが、本実施形態では、紫色LED212の他、青色LED214及び緑色LED215においても同様に、図4に示すステップS1からステップS5をそれぞれ実施する。
これにより、校正部43は、図9に示すように、破線部分の校正前のデータにおいて、駆動電圧V1における波長を405nmと校正する他、青色LED214における最大電流値となる駆動電圧V2における波長をλ2(青色LED214のピーク波長)と校正し、緑色LED215における最大電流値となる駆動電圧V3における波長をλ3(緑色LED215のピーク波長)と実線部分の校正後のデータに校正する。
【0034】
上述した第2実施形態によれば、前記第1実施形態と同様の効果を奏する他、以下の効果を奏する。
本実施形態によれば、光源部21Aに4つの光源211,212,214,215を設けたので、エタロン5の波長変動による校正を行う際、可視光の波長域にピーク波長を有する3つの光源212,214,215を用いて、より精度の高い校正を実施できる。
また、波長が高くなるにつれて、紫色LED212、青色LED214、及び緑色LED215のピーク波長の強度が小さくなるように設定されるので、光混合器22により各波長において光量が著しく低下することを防止できる。従って、より精度の高い分光特性の測定をすることができる。
【0035】
[実施形態の変形]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記各実施形態では、本発明に係る第2光源として、紫色LED212を用いたが、波長385nm以上450nm以下の範囲内にピーク波長を有する光源であればよく、例えば、ピーク波長が385nmの紫外線LEDを用いてもよい。この場合には、図10に示すようなスペクトル分布となるため、前記実施形態と同様に、タングステンランプ211の光量が小さい波長400nm近傍の光量を効果的に補うことができる。
【0036】
前記実施形態では、静電アクチュエーター56により、ミラー間ギャップGを調整可能なエタロン5の構成を例示したが、例えば、電磁コイルと永久磁石とを有する電磁アクチュエーターや、電圧印加により伸縮可能な圧電素子を設ける構成としてもよい。
前記実施形態において、各基板51,52は、接合層53により接合されるとしたが、これに限られない。例えば、接合層53が形成されず、各基板51,52の接合面を活性化し、活性化された接合面を重ね合わせて加圧することにより接合する、いわゆる常温活性化接合により接合させる構成などとしてもよく、いかなる接合方法を用いてもよい。
前記実施形態では、可動基板52の厚み寸法を例えば200μmとしたが、固定基板51と同じ500μmとしてもよい。この場合には、可動部521の厚み寸法も500μmとなって厚くなるため、可動ミラー55の撓みを抑制でき、各ミラー54,55をより平行に維持できる。
【0037】
前記実施形態では、検査対象光を分光した各波長の光の光量をそれぞれ測定する分光測定装置1を例示したが、このような分光測定装置1を検査対象光の色度、すなわち検査対象Aの色を分析して測定する測色装置や、分光カメラや、分光分析器に用いてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1…分光測定装置、5…エタロン(波長可変干渉フィルター)、22…光混合器、31…受光部、42…測定制御部、211…タングステンランプ(第1光源)、212…紫色LED(第2光源)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光の分光特性を測定する分光測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、入射光の各波長光の光特性(色度や明るさなど)を測定する分析装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載の分析装置は、光源から射出され、試料により反射された光を、波長可変干渉フィルターに入射させ、波長可変干渉フィルターを透過した光をフォトダイオードで受光する。そして、フォトダイオードから出力される電流を検出することで、測定を実施する装置である。このような分析装置では、波長可変干渉フィルターを制御することで、波長可変干渉フィルターを透過する光を可変でき、入射した光から所望の波長の光を順次切り替えてフォトダイオードで受信させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−106753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、光源に可視光の波長域内にピーク波長を有さないタングステンランプ等の白色光を用いる場合には、短波長域における光量が低下するため、波長可変干渉フィルターにおける分光可能な波長域のうち、短波長域の光の光量が低下するおそれがある。このため、フォトダイオードで受光する光量が低下して、短波長域における分光特性の測定精度が悪くなる。これにより、入射光に対する正確な分光特性の測定を実施できないという課題がある。
【0006】
本発明の目的は、精度の高い分光特性の測定ができる分光測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の分光測定装置は、可視光の波長域における光を分光する分光測定装置であって、前記可視光の波長域にピーク波長を有さず、短波長から長波長に向かうに従って光量が増大する光を射出する第1光源と、前記可視光の波長域にピーク波長を有する光を射出する第2光源と、前記第1光源及び前記第2光源から射出される光を混合する光混合器と、前記光混合器で混合された光が入射され、前記混合された光の入射光のうち、特定波長の光を透過させる波長可変干渉フィルターと、前記波長可変干渉フィルターを透過した光を受光する受光部と、前記波長可変干渉フィルターの透過する光の波長を切り替え、前記受光部により受光された光に基づいて、前記波長可変干渉フィルターを透過した光の分光特性を測定する測定制御部とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、可視光の波長域にピーク波長を有さず、短波長から長波長に向かうに従って光量が増大する光を射出する第1光源、及び可視光の波長域にピーク波長を有する光を射出する第2光源と、各光源から射出された光を混合する光混合器とを備える。そして、光混合器が各光源から射出される光を混合し、受光部が波長可変干渉フィルターを透過した検査対象光を受光して、測定制御部が検査対象光の分光特性を測定する。ここで、上述したように、可視光の波長域にピーク波長を有さない第1光源のみを用いた場合、可視光の波長域において、所定の波長域内で光量が著しく低下する。しかし、本発明によれば、第2光源が、例えば短波長域(第1光源の光量が少ない波長域)において、ピーク波長を有する光を射出すれば、第1光源の光量が著しく低下する短波長域の光量を効果的に補うことができる。従って、光量が低下する波長域における分光特性の測定精度を高めることができ、ひいては、精度の高い分光特性の測定をすることができる。
【0009】
本発明の分光測定装置では、前記第2光源は、385nm以上450nm以下の範囲内にピーク波長を有することが好ましい。
【0010】
ところで、波長可変干渉フィルターの波長可変域を380nm〜780nmとし、タングステンランプ等の短波長域の光量が小さい第1光源を用いた場合では、第1光源は特に短波長域の光量が低下する。そこで、精度の高い分光特性の測定を行うには、短波長域の光量を補う必要がある。本発明によれば、385nm以上450nm以下の範囲内にピーク波長を有する第2光源を用いたので、短波長域の光量を第2光源で補うことが可能となる。従って、短波長域においても光量を十分得ることが可能となり、精度の高い分光特性の測定を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る第1実施形態の分光測定装置の概略構成図。
【図2】前記第1実施形態の光源部のスペクトル分布を示すグラフ。
【図3】前記第1実施形態のエタロンの概略構成を示す断面図。
【図4】前記第1実施形態のエタロンの波長校正の処理を示すフローチャート。
【図5】前記第1実施形態の受光部で生成した電気信号の電流値と駆動電圧との関係を示すグラフ。
【図6】前記第1実施形態のエタロンの波長校正を説明するための図。
【図7】本発明に係る第2実施形態の分光測定装置の概略構成図。
【図8】前記第2実施形態の光源部のスペクトル分布を示すグラフ。
【図9】前記第2実施形態のエタロンの波長校正を説明するための図。
【図10】本発明の変形例に係る光源部のスペクトル分布を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1実施形態]
以下、本発明に係る第1実施形態を図面に基づいて説明する。
〔1.分光測定装置の概略構成〕
図1は、第1実施形態の分光測定装置1の概略構成を示す図である。
分光測定装置1は、図1に示すように、検査対象Aに光を射出する光源装置2と、検査対象Aで反射された検査対象光を分光するエタロン5(波長可変域380nm〜780nm)を備えた分光装置3と、分光測定装置1の全体動作を制御する制御装置4とを備える。そして、この分光測定装置1は、光源装置2から射出される光を検査対象Aにて反射させ、反射された検査対象光を分光装置3にて分光し、分光装置3から出力される検出信号に基づいて、分光した各波長の光の光量をそれぞれ測定する分光特性測定を実施する装置である。
また、この分光測定装置1は、光源装置2の後述する紫色LED212のみを点灯させて、エタロン5の波長校正を行う装置でもある。この場合には、検査対象Aとして、白色の標準反射板が用いられる。なお、エタロン5の波長校正の詳細については、後述する。
【0013】
〔2.光源装置の構成〕
光源装置2は、図1に示すように、光源部21と、光混合器22と、レンズ23とを備えて、これらが一体化された装置である。
光源部21は、白色光を射出するタングステンランプ211(第1光源)と、紫色LED(Light Emitting Diode)212(第2光源)と、タングステンランプ211及び紫色LED212から射出された光を反射するリフレクター213とを備える。そして、光源装置2は、検査対象光の分光測定を行う場合、タングステンランプ211及び紫色LED212の双方を点灯させ、エタロン5の波長校正を行う場合、紫色LED212のみを点灯させる。
光混合器22は、石英ガラスやアクリル樹脂等で筒状に形成され、リフレクター213で反射された光を内部で多重反射させて、タングステンランプ211及び紫色LED212から射出された光を混合、すなわち合成させる。
レンズ23は、光混合器22で多重反射された光を平行光とし、平行化された光を検査対象Aに入射させる。
【0014】
図2は、本実施形態のおける光源部21のスペクトル分布を示すグラフである。
タングステンランプ211は、図2に示す破線部分のスペクトル分布を有している。すなわち、タングステンランプ211は、短波長から長波長に向かうに従って、光量が増大するので、波長400nm近傍の短波長域において、光量が小さい。
一方、紫色LED212は、図2に示す実線部分のスペクトル分布を有している。このため、紫色LED212は、波長約385nm〜約430nmの範囲でスペクトル分布を有し、波長405nmに光量が最大となるピーク波長を有している。
以上により、タングステンランプ211及び紫色LED212から射出された光が光混合器22で混合されることで、図2の二点鎖線に示すスペクトル分布となる。すなわち、紫色LED212は、タングステンランプ211の光量が小さい波長400nm近傍の光量を効果的に補うことができる。
【0015】
〔3.分光装置の構成〕
分光装置3は、図1に示すように、検査対象Aで反射された検査対象光を所定方向へ反射させてエタロン5に集光させる凹面鏡3Aを有した装置本体30を備える。この装置本体30は、凹面鏡3Aから入射された検査対象光を分光するエタロン5(波長可変干渉フィルター)と、エタロン5で分光された各波長の光を受光する受光部31とを備える。
【0016】
〔3−1.受光部の構成〕
受光部31は、光検出器として動作する受光素子であり、例えば、フォトダイオード、フォトIC等で構成される。この受光部31は、エタロン5にて透過された検査対象光を受光すると、受光した検査対象光の光量に応じた電気信号を生成する。そして、受光部31は、制御装置4に接続されており、生成した電気信号を受光信号として制御装置4に出力する。
なお、一般的な受光素子では、短波長域の受信感度が長波長域の受信感度よりも悪いため、本実施形態では、図2に示すように、特に短波長域にピーク波長を有する紫色LED212を用いたことで、短波長域の受信感度を向上させている。
【0017】
〔3−2.エタロンの構成〕
図3は、エタロン5の概略断面図である。
エタロン5は、例えば、平面視略正方形状の板状の光学部材であり、一辺が例えば10mmに形成されている。このエタロン5は、図3に示すように、固定基板51と、可動基板52とを備える。そして、これらの基板51,52は、例えば、プラズマ重合膜を用いたシロキサン接合などにより接合層53を介して互いに接合されて一体的に構成される。これらの2枚の基板51,52は、それぞれ例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス等の各種ガラスや、水晶等により形成されている。
【0018】
また、固定基板51と可動基板52との間には、固定ミラー54及び可動ミラー55が設けられる。ここで、固定ミラー54は、固定基板51における可動基板52に対向する面に固定され、可動ミラー55は、可動基板52における固定基板51に対向する面に固定されている。また、これらの固定ミラー54及び可動ミラー55は、ギャップGを介して対向配置されている。
さらに、固定基板51と可動基板52との間には、固定ミラー54及び可動ミラー55の間のギャップGの寸法を調整するための静電アクチュエーター56が設けられている。
【0019】
固定基板51は、厚みが例えば500μmのガラス基材をエッチングにより加工することで形成される。この固定基板51には、図3に示すように、エッチングにより電極形成溝511が形成され、電極形成溝511には、静電アクチュエーター56を構成する第1電極561が形成される。この第1電極561は、図示しない電極引出部を介して制御装置4(図1参照)に接続されている。
【0020】
可動基板52は、厚みが例えば200μmのガラス基材をエッチングにより加工することで形成される。この可動基板52には、第1電極561に所定のギャップを介して対向する、静電アクチュエーター56を構成する第2電極562が形成されている。この第2電極562は、図示しない電極引出部を介して制御装置4(図1参照)に接続されている。
そして、制御装置4から出力される電圧により、第1電極561及び第2電極562の間に静電引力が働き、ギャップGの寸法が調整され、当該ギャップGの寸法に応じて、エタロン5を透過する光の透過波長が決定される。すなわち、静電アクチュエーター56によりギャップ間隔を適宜調整することで、エタロン5を透過する光が決定されて、エタロン5を透過した光が受光部31で受光される。
【0021】
〔4.制御装置の構成〕
制御装置4は、分光測定装置1の全体動作を制御する。この制御装置4としては、例えば汎用パーソナルコンピューターや、携帯情報端末、その他、測色専用コンピューターなどを用いることができる。
そして、制御装置4は、図1に示すように、光源制御部41と、測定制御部42と、校正部43とを備えて構成されている。また、制御装置4は、図示しないメモリーやハードディスクなどの記録媒体である記憶部を備え、当該記憶部には、駆動電圧に対する透過光の透過波長を示す透過特性データ(V−λデータ)が記憶されている。
【0022】
光源制御部41は、光源部21に接続されている。そして、光源制御部41は、例えば分光特性の測定処理を行うという、利用者の設定入力に基づいて、光源部21に所定の制御信号を出力し、光源部21のタングステンランプ211及び紫色LED212から所定の明るさの光を射出させる。また、光源制御部41は、例えば、エタロン5の波長校正を行うという、利用者の設定入力に基づいて、光源部21に所定の制御信号を出力し、光源部21の紫色LED212のみから光を射出させる。
【0023】
測定制御部42は、上述したように、エタロン5の第1電極561、及び第2電極562に接続されている。そして、測定制御部42は、第1電極561、及び第2電極562に駆動電圧を印加することで、エタロン5のギャップGの寸法を変化させ、エタロン5を透過する光の波長を切り替える。
また、測定制御部42は、受光部31に接続され、検査対象光の分光特性の測定処理を実施する。
分光特性の測定処理の際、測定制御部42は、受光部31から入力された受光信号に基づいて、各波長に対する受光量を算出し、検査対象光の分光特性の測定処理を実施する。
【0024】
校正部43は、受光部31に接続され、エタロン5の波長校正処理を実施する。
エタロン5の波長校正の際、校正部43は、受光部31から入力される駆動電圧毎の受光信号を受信に基づいて、受光信号、及び駆動電圧の関係を算出する。そして、校正部43は、紫色LED212のピーク波長である、405nmにおける駆動電圧を算出し、エタロン5の波長校正(上述した透過特性データの補正)を実施する。
【0025】
〔5.エタロンの校正について〕
分光測定装置1は、上述したように、エタロン5を透過した検査対象光の分光特性の測定の他、紫色LED212のみを点灯させてエタロン5の波長校正を行う。ここでは、エタロン5の波長校正について、図4に示すフローを参照して説明する。
エタロン5では、環境温度の変化により、ミラー54,55や電極561,562の温度に依存する線膨張係数が変動するため、ミラー54,55や電極561,562の内部応力が変動し、基板51,52が撓むおそれがある。これにより、ミラー間ギャップGの寸法が変動し、所望の透過波長を得られないという問題がある。そこで、エタロン5を所定の環境温度下に設置した際において、駆動電圧に対するギャップGの寸法(透過波長)を予め設定しておくことが好ましい。
【0026】
具体的に、光源制御部41により、紫色LED212のみを点灯させる(ステップS1)。そして、測定制御部42は、駆動電圧を例えば、0.1V単位で変化させていく(ステップS2)。次に、受光部31は、駆動電圧毎に検査対象Aで反射された検査対象光を受光し、受光した検査対象光の光量に応じた電気信号を生成する。これにより、校正部43は、受光部31で生成した電気信号の電流値と電圧(駆動電圧)との関係を示した図5のデータを取得する(ステップS3)。
そして、校正部43は、図5のデータに基づいて、最大電流値となる電圧値V1を取得し(ステップS4)、この電圧値V1を印加した場合における波長は、405nm(紫色LED212のピーク波長)である。
【0027】
次に、校正部43は、記憶部からV−λデータを読み出して校正する(ステップS5)。
ところで、環境温度の変化やこの他の要因(エタロン5の配設位置の変化による重力の変動等)に応じて、V−λデータの変動パターンがシミュレーションにより予め分かっている。
図6では、環境温度の変化により波長変動が一定となる場合を示しており、具体的に、破線部分は校正前のデータであり、実線部分は校正後のデータを示している。図6によれば、V−λデータの1点を補正すればよいため、校正部43は、前記所定の環境温度下において、駆動電圧V1における波長を405nmと校正する。
【0028】
〔6.本実施形態の作用効果〕
本実施形態によれば、可視光の波長域にピーク波長を有さないタングステンランプ211、及び可視光の波長域にピーク波長を有する紫色LED212と、各光源211,212から射出された光を混合する光混合器22とを備える。そして、光混合器22が各光源211,212から射出される光を混合し、受光部31がエタロン5を透過した検査対象光を受光して、測定制御部42が検査対象光の分光特性を測定する。ここで、上述したように、可視光の波長域にピーク波長を有さないタングステンランプ211のみを用いた場合、可視光の波長域において、短波長域で光量が著しく低下する。しかし、本実施形態によれば、可視光の波長域において、特に短波長域にピーク波長を有する紫色LED212を備えるので、各光源211,212から射出される光を混合することで、タングステンランプ211の光量が著しく低下する短波長域の光量を効果的に補うことができる。従って、光量が低下する短波長域における分光特性の測定精度を高めることができ、ひいては、精度の高い分光特性の測定をすることができる。
【0029】
また、波長405nmにピーク波長を有する紫色LED212を用いたので、短波長域の光量を紫色LED212で補うことが可能となる。従って、短波長域においても光量を十分得ることが可能となり、精度の高い分光特性の測定を実施することができる。
【0030】
[第2実施形態]
図7は、第2実施形態の分光測定装置1Aの概略構成を示す図である。
前記第1実施形態では、光源部21は、2つの光源であるタングステンランプ211、及び紫色LED212を備えていたが、本実施形態では、光源部21Aは、さらに2つの光源である青色LED214、及び緑色LED215を備え、4つの光源211,212,214,215を備える点で相違する。
【0031】
図8は、本実施形態における光源部21Aのスペクトル分布を示すグラフである。
青色LED214は、図8に示す実線L1のスペクトル分布を有している。このため、青色LED214は、波長約420nm〜約525nmの範囲でスペクトル分布を有し、波長470nmに光量が最大となるピーク波長を有している。
緑色LED215は、図8に示す実線L2のスペクトル分布を有している。このため、緑色LED215は、波長約480nm〜約610nmの範囲でスペクトル分布を有し、波長530nmに光量が最大となるピーク波長を有している。
また、紫色LED212、青色LED214、及び緑色LED215のピーク波長の強度は、波長が高くなるにつれて小さくなるように設定される。
以上により、タングステンランプ211、紫色LED212、青色LED214、及び緑色LED215から射出された光が光混合器22で混合されることで、図8の二点鎖線に示すスペクトル分布となる。すなわち、紫色LED212は、タングステンランプ211の光量が小さい波長400nm近傍の光量を補いつつ、青色LED214及び緑色LED215は、短波長から長波長に向かうに従って、タングステンランプ211の光量を補う。すなわち、前記第1実施形態に比べて、可視光域における光量がより増加している。
【0032】
次に、上述した光源部21Aを有する分光測定装置1Aでは、以下のように、エタロン5の波長校正を実施する。以下では、本実施形態では、環境温度の変化に加えて、エタロン5の配設位置の変化(重力の変動)等により波長変動が生じる場合に対するエタロン5の波長校正について説明する。
上述したように、V−λデータの変動パターンがシミュレーションにより予め分かっているため、環境温度の変化に加えて、重力の変動等により波長変動が生じる場合には、図9に示すように、V−λデータの少なくとも3点を補正する必要がある。そこで、校正部43は、紫色LED212に加えて、青色LED214及び緑色LED215を用いて、エタロン5の波長校正を実施する。
【0033】
具体的に、前記第1実施形態と同様に、図4に示すステップS1からステップS5を実施するが、本実施形態では、紫色LED212の他、青色LED214及び緑色LED215においても同様に、図4に示すステップS1からステップS5をそれぞれ実施する。
これにより、校正部43は、図9に示すように、破線部分の校正前のデータにおいて、駆動電圧V1における波長を405nmと校正する他、青色LED214における最大電流値となる駆動電圧V2における波長をλ2(青色LED214のピーク波長)と校正し、緑色LED215における最大電流値となる駆動電圧V3における波長をλ3(緑色LED215のピーク波長)と実線部分の校正後のデータに校正する。
【0034】
上述した第2実施形態によれば、前記第1実施形態と同様の効果を奏する他、以下の効果を奏する。
本実施形態によれば、光源部21Aに4つの光源211,212,214,215を設けたので、エタロン5の波長変動による校正を行う際、可視光の波長域にピーク波長を有する3つの光源212,214,215を用いて、より精度の高い校正を実施できる。
また、波長が高くなるにつれて、紫色LED212、青色LED214、及び緑色LED215のピーク波長の強度が小さくなるように設定されるので、光混合器22により各波長において光量が著しく低下することを防止できる。従って、より精度の高い分光特性の測定をすることができる。
【0035】
[実施形態の変形]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記各実施形態では、本発明に係る第2光源として、紫色LED212を用いたが、波長385nm以上450nm以下の範囲内にピーク波長を有する光源であればよく、例えば、ピーク波長が385nmの紫外線LEDを用いてもよい。この場合には、図10に示すようなスペクトル分布となるため、前記実施形態と同様に、タングステンランプ211の光量が小さい波長400nm近傍の光量を効果的に補うことができる。
【0036】
前記実施形態では、静電アクチュエーター56により、ミラー間ギャップGを調整可能なエタロン5の構成を例示したが、例えば、電磁コイルと永久磁石とを有する電磁アクチュエーターや、電圧印加により伸縮可能な圧電素子を設ける構成としてもよい。
前記実施形態において、各基板51,52は、接合層53により接合されるとしたが、これに限られない。例えば、接合層53が形成されず、各基板51,52の接合面を活性化し、活性化された接合面を重ね合わせて加圧することにより接合する、いわゆる常温活性化接合により接合させる構成などとしてもよく、いかなる接合方法を用いてもよい。
前記実施形態では、可動基板52の厚み寸法を例えば200μmとしたが、固定基板51と同じ500μmとしてもよい。この場合には、可動部521の厚み寸法も500μmとなって厚くなるため、可動ミラー55の撓みを抑制でき、各ミラー54,55をより平行に維持できる。
【0037】
前記実施形態では、検査対象光を分光した各波長の光の光量をそれぞれ測定する分光測定装置1を例示したが、このような分光測定装置1を検査対象光の色度、すなわち検査対象Aの色を分析して測定する測色装置や、分光カメラや、分光分析器に用いてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1…分光測定装置、5…エタロン(波長可変干渉フィルター)、22…光混合器、31…受光部、42…測定制御部、211…タングステンランプ(第1光源)、212…紫色LED(第2光源)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光の波長域における光を分光する分光測定装置であって、
前記可視光の波長域にピーク波長を有さず、短波長から長波長に向かうに従って光量が増大する光を射出する第1光源と、
前記可視光の波長域にピーク波長を有する光を射出する第2光源と、
前記第1光源及び前記第2光源から射出される光を混合する光混合器と、
前記光混合器で混合された光が入射され、前記混合された光の入射光のうち、特定波長の光を透過させる波長可変干渉フィルターと、
前記波長可変干渉フィルターを透過した光を受光する受光部と、
前記波長可変干渉フィルターの透過する光の波長を切り替え、前記受光部により受光された光に基づいて、前記波長可変干渉フィルターを透過した光の分光特性を測定する測定制御部と、を備える
ことを特徴とする分光測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の分光測定装置において、
前記第2光源は、385nm以上450nm以下の範囲内にピーク波長を有する
ことを特徴とする分光測定装置。
【請求項1】
可視光の波長域における光を分光する分光測定装置であって、
前記可視光の波長域にピーク波長を有さず、短波長から長波長に向かうに従って光量が増大する光を射出する第1光源と、
前記可視光の波長域にピーク波長を有する光を射出する第2光源と、
前記第1光源及び前記第2光源から射出される光を混合する光混合器と、
前記光混合器で混合された光が入射され、前記混合された光の入射光のうち、特定波長の光を透過させる波長可変干渉フィルターと、
前記波長可変干渉フィルターを透過した光を受光する受光部と、
前記波長可変干渉フィルターの透過する光の波長を切り替え、前記受光部により受光された光に基づいて、前記波長可変干渉フィルターを透過した光の分光特性を測定する測定制御部と、を備える
ことを特徴とする分光測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の分光測定装置において、
前記第2光源は、385nm以上450nm以下の範囲内にピーク波長を有する
ことを特徴とする分光測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−112839(P2012−112839A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262758(P2010−262758)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]