説明

分光計測装置

【課題】 最適な加算数を短時間に求め、高精度の計測を短時間で行うことが可能な分光計測装置を提供する。
【解決手段】 光源12と、光源からの光を分光しサンプル14に照射する分光手段13と、複数個の受光画素からなり、サンプルを経た分光光を受光してその光強度に応じた信号を出力するCCDイメージセンサ21と、CCDイメージセンサから出力される連続するS個の受光画素に対応する各出力を加算して出力するフローティングディフュージョンアンプ34と、計測に用いる波長に係る計測用分光光のエネルギーE(x) ,受光画素の感度をA(x) ,分光手段による減衰率をm(x) ,及びサンプルによる減衰率は仮の値n(x) として、各パラメータE(x) ,A(x) ,m(x) ,n(x) 及びSの積がフローティングディフュージョンアンプの出力値に対して予め設定された値となるようにパラメータSを設定する制御回路22とを有して分光計測装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は分光計測装置に関し、特に高精度の計測を短時間で行うことの可能な分光計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
サンプルの光の反射率あるいは透過率を計測する分光計測装置の例が、特開2000−65643号公報に開示されている。図12に該公報開示の分光計測装置の基本構成を示す。このサンプルの光の反射率あるいは透過率を計測する分光計測装置は、光源112 と、該光源112 が照射する光を波長毎に空間的に分散させる分光手段113 と、分光した各波長の光が測定対象の物質(サンプル114 )を反射もしくは透過した光を受光すべく配置された光検出手段111 とで構成されている。
【0003】
図13は、光検出手段111 の構成を、図14は、光検出手段を構成するCCDイメージセンサ121 の駆動タイミングを、図15は、CCDイメージセンサ121 に照射する光のエネルギーを示す。図12に示すように、上記公報に開示されている分光計測装置は、上記のように、光源112 ,分光手段113 ,分光手段113 で得られる光がサンプル114 を透過した成分を検出する光検出手段111 で構成されている。光源112 は、図面上の奥行き方向が長いライン形状である。分光手段113 は、図面上の左右方向に波長の異なる光が分散するように配置されている。
【0004】
図13に示すように、光検出手段111 は制御回路122 とCCDイメージセンサ121 で構成され、CCDイメージセンサ121 では垂直転送路133-vが図12の図面の奥行き方向に一致するよう配置される。このように配置すると、CCDイメージセンサ121 の垂直方向に並ぶ複数の画素131 には同一の波長の光が入射する。
【0005】
図14に示すタイミングチャートには、制御回路122 で生成する信号φVとφHを示してあり、φVは垂直転送路133-vの、φHは水平転送路133-hの制御信号である。画素131 での電荷の蓄積は、図示されていないタイミングから始まり、φVが高い電圧XSGと成った時点で終了し、このとき、画素131 に蓄積された電荷が、トランスファーゲート132 を介して垂直転送路133-vに移される。この後に、垂直転送路133-vに移された電荷は、φVを低い電圧に設定する回数に相当する数だけ、垂直転送路133-vの上を水平転送路133-hまで移される。
【0006】
図14に示すタイミングチャートでは、転送数をステップ1では1回、ステップ2では3回、ステップ3では10回と切り替えており、それぞれの設定により水平転送路133-hに1画素、3画素、10画素分の電荷が転送される。垂直転送路133-vの電荷を移す間、水平転送路133-hは止めてあり、水平転送路133-hに垂直転送路133-vを動かした回数分の電荷が加算され、保持される。この後、φHを駆動することで、水平転送路133-hに保持された電荷がフローティングディフュージョンアンプ134 まで移され、ここで電圧に変換される。なお、図13において、135 はオーバーフロー制御ゲート、136 はオーバーフロードレインである。
【0007】
図15は、サンプル114 を透過した光のエネルギーを示している。波長が短いAはエネルギーが大きく、B,Cはこれに比べエネルギーが小さい。
【特許文献1】特開2000−65643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記公報開示の従来技術には、画素信号の最適な加算数を如何にして短時間に求め、高精度の計測を行うかについては、何ら考慮がなされていない。本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、最適な加算数を短時間に求め、高精度の計測を短時間で行うことが可能な分光計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、光源と、前記光源からの光を分光し、計測対象物たるサンプルに照射する分光手段と、複数個の受光画素からなり、前記サンプルを経た分光光を受光してその光強度に応じた信号を出力するCCDイメージセンサと、前記CCDイメージセンサから出力される連続するS個の前記受光画素に対応する各出力を加算して出力する加算回路と、計測に用いる波長に係る計測用分光光のエネルギーをE(x) ,前記計測用分光光に対する前記受光画素の感度をA(x) ,及び前記計測用分光光に対する前記分光手段による減衰率をm(x) とし、且つ、前記計測用分光光に対する前記サンプルによる減衰率は仮の値n(x) として、前記各パラメータE(x) ,A(x) ,m(x) ,n(x) 及びSの積が、前記加算回路の出力値に対して予め設定された値となるように前記パラメータSを設定する制御回路とを有して分光計測装置を構成するものである。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る分光計測装置において、前記制御回路は、前記パラメータn(x) を減衰率が採り得る最小値として、及び前記加算回路の出力値に対して予め設定された値を前記加算回路の飽和出力値として、前記パラメータSを設定することを特徴とするものである。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1に係る分光計測装置において、前記制御回路は、前記パラメータn(x) を減衰率が採り得る平均値として、及び前記加算回路の出力値に対して予め設定された値を前記加算回路の平均出力値として、前記パラメータSを設定することを特徴とするものである。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1に係る分光計測装置において、前記CCDイメージセンサは、前記受光画素単位で信号を順次転送する転送路と、前記受光画素からの出力を転送路に転送するトランスファーゲートとを備え、前記加算回路は、前記転送路からの出力が入力されるフローティングディフュージョンアンプよりなり、ここで、前記制御回路は、前記パラメータSに応じたタイミングにて前記フローティングディフュージョンアンプにリセット信号を印加することを特徴とするものである。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項1に係る分光計測装置において、前記CCDイメージセンサは、前記受光画素単位で信号を順次転送する転送路と、前記受光画素からの出力を転送路に転送するトランスファーゲートとを備え、前記加算回路は、前記転送路からの出力が入力されるフローティングディフュージョンアンプよりなり、ここで、前記制御回路は、前記分光手段と、前記サンプル及び前記CCDイメージセンサとの位置関係に応じて、前記フローティングディフュージョンアンプに印加するリセット信号のタイミングを変更することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、加算数に係るパラメータS(出力信号が連続出力される受光画素数)が、サンプルの減衰率が仮の値n(x) を採ったときに加算回路の出力値に対して予め設定された値となるように決定されるので、最適な加算数(パラメータ)Sが短時間に求められ、高精度の計測を短時間で行うことが可能となる。また請求項2に係る発明によれば、加算回路からの出力を飽和させることなくパラメータSを得ることができ、より高精度の計測を行うことが可能となる。また請求項3に係る発明によれば、平均出力値を中心とした加算回路による実測定値が出力されるので、出力値の飽和やノイズによる検出不能が抑えられ、より高精度の計測を行うことが可能となる。また請求項4に係る発明によれば、アナログ空間上で、前記転送路からの出力の加算が可能となる。また請求項5に係る発明によれば、分光手段と、サンプル及びCCDイメージセンサとの間に位置ずれがあっても、その位置ずれに応じてフローティングディフュージョンアンプに印加するリセット信号のタイミングを変更し得るので、より高精度の計測を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【実施例】
【0016】
(実施例1)
まず、本発明に係る分光計測装置の実施例1について図1〜図8を用いて説明する。図1は、実施例1に係る分光計測装置の基本構成を示している。この実施例に係る分光計測装置は、光源12と分光手段13と光検出手段11とで構成されており、そして分光手段13と光検出手段11の間に置くサンプル14を透過する光の透過率nから、サンプル14の組成、状態などを調べる分光計測を行うようになっている。以下の説明では、波長毎の各値を(x)(x=1,2,3)を付して表現する。xは入射光の波長を示す番号で、ここでは波長が最も短い光を1,それより波長が長い光を2,一番波長の長い光を3で表現している。
【0017】
光検出手段11はCCDイメージセンサ21と制御回路22とで構成されている。光源12,例えばハロゲンランプで発生した式(1)に示す光は、分光手段13に照射される。
E=∫E(x) (x=1,2,3) ・・・・・・・・・・・・(1)
【0018】
分光手段13は、図面で左から右の方向に短波長〜長波長と並ぶ複数の光K0 (x) 〔K0 (1) ,K0 (2) ,K0 (3) 〕を生成する。分光手段13の出力、K0 (1) 〜K0 (3) は計測するサンプル14に照射され、計測するサンプル14を透過した光が光検出手段11を構成するCCDイメージセンサ21に照射される。CCDイメージセンサ21は、複数の画素31,トランスファーゲート32,転送路33,フローティングディフュージョンアンプ34で構成されている。各画素31に付記した番号N=1,2,3,・・・は、動作を説明する際に使う各画素の番号である。
【0019】
分光手段13の出力、K0 (1) 〜K0 (3) は、式(1)に示した光源12の出力との間に式(2)に示す関係があるものとする。分光手段13の透過率に相当するm(x) は、1以下の定数で既知の値である。
0 (x) =m(x) ×E(x) (x=1,2,3) ・・・・・・(2)
また、分光手段13の出力K0 (1) 〜K0 (3) と、サンプル14の光の透過率n(x) と、サンプル14を透過した光K1(1)〜K1 (3) の間には、式(3)に示す関係がある。
1 (x) =n(x) ×K0 (x) (x=1,2,3) ・・・・・(3)
【0020】
図1で、光検出手段11を構成する制御回路22は、3つの端子、RST,TG,φを有する。CCDイメージセンサ21は制御回路22に接続される3つの端子、RST,TG,φと、出力端子Vout を有する。制御回路22で生成するRST端子に加える信号は、CCDイメージセンサ21のフローティングディフュージョンアンプ34をリセットする信号であり、同様にTG端子に加える信号は電荷を各画素31から転送路33に移すトランスファーゲート32を制御する信号であり、φ端子に加える信号は転送路33を制御する信号である。
【0021】
各画素31で発生する電荷を蓄積し転送する動作を、図2〜図5を用いて説明する。図2は、フローティングディフュージョンアンプ34の構成を示している。図3は、トランスファーゲート32の構成を示している。図4は、トランスファーゲート32の制御タイミングチャートを示している。図5は、転送路33の構成並びに制御タイミングチャートを示している。
【0022】
図2に示すフローティングディフュージョンアンプ34は、半導体のPN接合に逆バイアスを印加した状態で実現される容量51と、リセットSW52と、ソースフォロワ回路53とで構成されている。容量51の一端とリセットSW52の一端とソースフォロワ回路53の入力端との接続点は、転送路33の末端に接続されている。リセットSW52はMOSトランジスタで構成され、先に説明した共通接続端子ではない他方の端子は電源電圧に接続され、ゲートにはRST端子が接続されている。ソースフォロワ回路53の出力端子は、Vout 端子に接続されている。RST端子をHレベルにしたとき、転送路33の末端に接続された容量51に電源電圧が供給される。
【0023】
この後、RST端子をLレベルにすると、容量51にはセットSW52を構成するMOSトランジスタの寄生容量で決まる電荷が加えられる。この後に転送路33がφ端子に加えられる信号で駆動されると、転送路33で運ばれる電荷が容量51に送られ、電圧に変換される。RST端子→φ端子→RST端子のように、RST端子をHにする間に、1回φ端子を駆動すると、出力端子Vout には転送路33の一つにある電荷を示す電圧が現れる。同様にして、RST端子→φ端子(1回目)→φ端子(2回目)・・・φ端子(Sum回目)・・・→RST端子のように、RST端子をHにする間に、Sum回φ端子を駆動すると、出力端子Vout には転送路33のSumヶ分の電荷の和を示す電圧が現れる。
【0024】
次に、図3と図4を用いてトランスファーゲート32の働きについて説明する。トランスファーゲート32は、複数の画素31と転送路33の間に配置され、TG端子に加えられる電圧で決まるポテンシャルにより、電荷を各画素31から転送路33に移す働きをする。図3の(A)は、TG端子をLレベルにしたときのトランスファーゲート32のポテンシャルを、図3の(B)は、TG端子をHレベルにしたときのトランスファーゲート32のポテンシャルを示す。図4に示すタイミングチャートは、TG端子に加える電圧の制御により、画素31で一定期間、光電荷を蓄積する動作を説明している。図4において、上段からTG端子の電圧、RST端子の電圧、φ端子の電圧、Vout 端子の電圧を並べて示している。画素31で一定期間、電荷を蓄積する動作と、画素31の信号を読み出す動作は並行して行われるが、y番目の電荷を蓄積する動作の間には、(y-1)番目に蓄積した電荷の読み出し動作を行っている。図4において、RST端子とφ端子に加える信号についてグレーで示した期間は任意である。この部分の動作は後で説明する。図3の(B)に示すように、TG端子にHレベルを加えると、各画素31と転送路33に間のポテンシャルが下がり、各画素31にある電荷は転送路33に移る。この動作で画素31の電荷がなくなり、次にTG端子にHレベルが加わるまでの間、画素31に照射された光で生じた電荷がここにたまる。次にTG端子にHレベルが加わる際に、先に画素31にたまった電荷が転送路33に移る。
【0025】
最後に図5を用いて転送路33の構成並びに動作タイミングを説明する。なお、ここで説明する転送路33は、二層パルス駆動と呼ぶ方式に対応する構成のもので、図1〜図5でφで表現している駆動信号を、互い逆層の二つの信号φ1とφ2で示している。図5の(A)に示すように、転送路33は、N型半導体基板81上のP型半導体層82と、この中に一定間隔をあけて配置さるN型半導体層83と、N型半導体83の上面に置かれた第1の電極84と、P型半導体層82の上面に置かれた第2の電極85とで構成されている。図5の(A)上に最小ユニットとして示したN型半導体83の上面に置かれた第1の電極84と、P型半導体層82の上面に置かれた第2の電極85が一つのペアーとなり、ここに信号φ1を加える場合、隣に位置する最小ユニットには信号φ2を加える。このように信号φ1とφ2を交互に加えるように第1の電極84と第2の電極85を接続する。この状態で、図5の(C)に示すように、互いに逆位相の信号φ1,φ2を加えると、時間t=1,時間t=2及び時間t=3のタイミングでのポテンシャルが図5の(B)に示すようになり、電荷は右から左へ転送される。なお、図3に示したトランスファーゲート32は図5に示した転送路33の紙面の手前か背後に配置され、更にそのトランスファーゲート32の手前か背後に画素31が配置される。
【0026】
次に、図6に示すタイミングチャートについて説明する。図6において上から順番に、複数画素の配置の模式図、RST端子の信号、φ端子の信号、出力端子の出力信号Vout 〔Sum(x) で示す電荷の加算数〕を並べて示している。画素配置の模式図は、図1に示した複数の画素31と1対1に対応する。図6では、画素31で蓄積した電荷を、トランスファーゲート32を介して転送路33に移した後の動作を説明している。画素31で電荷を蓄積する動作は、図2〜図5を用いて説明済みである。入射光E(x) (x=1)の読み出しでは、フローティングディフュージョンアンプ34をRST端子への入力信号でリセットする間に信号φが5回立ち上がり、入射光E(x) (x=2)の読み出しでは、フローティングディフュージョンアンプ34をリセットする間に信号φが3回立ち上がり、入射光E(x) (x=3)の読み出しでは、フローティングディフュージョンアンプ34をリセットする間に信号φが5回立ち上がる態様を示している。図2を用いて説明したように、フローティングディフュージョンアンプ34をリセットする間に信号φが立ち上る回数は、フローティングディフュージョンアンプ34で転送路33から受けた電荷を加算する数、Sum(x) に相当する。
【0027】
出力信号Vout(x)は、電荷加算数Sum(x) に従った画素部の出力であり、式(4)で表される。
Vout(x)=A(x) ×K1 (x) ×Sum(x)
=A(x) ×m(x) ×n(x) ×E(x) ×Sum(x) (x=1,2,3)
・・・・・・・・・・(4)
A(x) :画素31の感度
E(x) :光源12のエネルギー
m(x) :既知の分光手段の光の透過率
n(x) :計測するサンプル14の光の透過率
Sum(x) :電荷の加算数
表1に式(4)を構成する各値の例を示す。
【0028】
【表1】

【0029】
表1の条件は、サンプル14の光の透過率n(x) を求めるのに、この値の最大値、nmax(x)が検出された場合に、式(5)が成り立つように各値を決めている。
Vsat =A(x) ×m(x) ×nmax(x)×E(x) ×Sum(x) (x=1,2,3)
・・・・・・・・・・(5)
式5は、電荷の加算数Sum(x) を、分光手段12の透過率m(x) と、画素31の感度A(x) と、光のエネルギーE(x) とから決めると、全ての波長(x=1,2,3)で、出力Vout が飽和レベルVsat となることを示している。実際には、n(x) =0〜1の測定を行うので、全波長の出力Vout (x=1,2,3)は飽和レベルVsat 以下となり、出力Vout が飽和レベルVsat を越えるために再測定する問題は起きない。表1で示した、分光手段12の光の透過率m(x) と、画素31の感度A(x) と、光のエネルギーE(x) の値は、説明のためのものであり、実際には、光学フィルター、画素、光源の組成、構成、実現手段で、それらの値は決まる。画素と光源については、次に具体例で説明する。
【0030】
図7に光源の色温度毎の波長単位のエネルギーE(x) の一例を示す。これは、ウシオ電機のHPで公開されている情報を転記したものである。図8に画素の分光感度A(x) の一例を示す。これは、日本理工出版社刊、映像情報メディア学会編、「固体撮像素子の基礎」(p133 ,図5−1)に示されたシリコンフォトダイオードの分光感度を転記したものである。なお、図8において、縦軸は分光感度R(mA/W),LD は空乏層幅、各曲線は少数キャリアの拡散長Ln を示している。なお上記の説明においては、減衰率を透過率に対応させて、光の透過率m(x) 及びn(x) として説明したが、減衰率を反射率に対応させて、反射率として説明してもよい。以下の実施例でも同様である。
【0031】
(実施例2)
次に、図9を用いて本発明に係る実施例2について説明する。実施例1に関して、図1に示した分光計測装置の基本構成、並びに図2〜図5及び図7,図8に示した技術内容については、実施例2においても同様であり、その説明を省略する。図9に示すタイミングチャートは図6に示したタイミングチャートと同じように、上から順番に複数画素の配置の模式図、RST端子の信号、φ端子の信号、出力端子の出力信号Vout 〔Sum(x) で示す電荷の加算数〕を並べて示している。図9に示す本実施例のタイミングチャートと図6に示す実施例1のタイミングチャートとはRST端子とφ端子の信号で決まる加算数Sum(x) が異なる。本実施例は表2に示す各値で設定した際の動作に相当する。
【0032】
【表2】

【0033】
表2の条件は、サンプル14の光の透過率n(x) を求めるのに、この値の平均値、nave(x)が検出された場合に、式(6)が成り立つように各値を決めている。
Vave =A(x) ×m(x) ×nave(x)×E(x) ×Sum(x) (x=1,2,3)
・・・・・・・・・・(6)
式(6)は、電荷の加算数Sum(x) を、分光手段12の透過率m(x) と、画素31の感度A(x) と、光のエネルギーE(x) とから決めると、全ての波長(x=1,2,3)で、出力Vout が平均値Vave となることを示している。実際には、n(x) =0〜1の測定を行うので、全波長の出力Vout (x=1,2,3)は平均値Vave を中心に分布し、ノイズレベル以上で飽和レベル以下となる確率が高く、出力がノイズに埋もれたり、飽和レベルを越えるために再測定する問題の発生確率が低くなる。表2で示した、分光手段12の光の透過率m(x) と、画素31の感度A(x) と、光のエネルギーE(x) の値は説明のためのものであり、実際には、光学フィルター、画素、光源の組成、構成、実現手段で、そられの値は決まり、実施例1で示した具体例が適用できる。
【0034】
(実施例3)
次に、実施例3について説明する。図6以外の実施例1に関する説明は、実施例3に適用される。図10は、実施例3の動作を説明するための図6に対応するタイミングチャートである。表1における式(4)を構成する各パラメータの値に対応する、実施例3における値を表3に示す。表3において表1と異なる箇所には*印を付して示してある。図10に示すタイミングチャートでは、x=3の波長の画素31の加算値、Sum(3) が4である。x=3の波長の加算値、Sum(3) が、5の場合と4の場合の違いは、RST端子に加える信号とφ端子に加える信号の関係で決まる。
【0035】
【表3】

【0036】
(実施例4)
次に、実施例4について説明する。図6以外の実施例1に関する説明は、実施例4にも適用される。図11は、実施例4の動作を説明するための図6に対応するタイミングチャートである。表4に、式(4)を構成する各パラメータ値に対応する、実施例4における設定値を示す。表4において表1と異なる箇所には*印を付して示してある。図11に示すタイミングチャートでは、x=1,2,3の波長の光を受ける画素(31)の位置が一画素分右方向にシフトしている。入射光がシフトしてもRST端子に加える信号とφ端子に加える信号の関係により、式(4)に示す信号が得られる。入射光のシフトは、光源12,分光手段13,光検出手段11の何れか一つか複数の位置関係で決まるものである。なお、図11で、RST端子及びVout 端子の電圧において、ドットパターン部分は不確定信号領域を示している。
【0037】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る分光計測装置の実施例1の基本構成を示す図である。
【図2】実施例1におけるフローティングディフュージョンアンプの構成を示す図である。
【図3】実施例1におけるトランスファーゲートの構成を示す概略図である。
【図4】実施例1におけるトランスファーゲートの動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図5】実施例1における転送路の構成及び動作のタイミングチャートである。
【図6】実施例1の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図7】実施例1に関連する光源の波長単位のエネルギーの一例を示す図である。
【図8】実施例1に関連する画素の分光感度の一例を示す図である。
【図9】実施例2の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図10】実施例3の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図11】実施例4の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図12】従来の分光計測装置の構成例を示す図である。
【図13】図12に示した従来例の光検出手段の構成を示す図である。
【図14】図13に示した光検出手段の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図15】図12においてサンプルを通過した光のエネルギーを示す図である。
【符号の説明】
【0039】
11 光検出手段
12 光源
13 分光手段
14 サンプル
21 CCDイメージセンサ
31 画素
32 トランスファーゲート
33 転送路
34 フローティングディフュージョンアンプ
51 容量
52 リセットSW
53 ソースフォロワ回路
81 N型半導体基板
82 P型半導体
83 N型半導体
84 第1の電極
85 第2の電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源からの光を分光し、計測対象物たるサンプルに照射する分光手段と、
複数個の受光画素からなり、前記サンプルを経た分光光を受光してその光強度に応じた信号を出力するCCDイメージセンサと、
前記CCDイメージセンサから出力される連続するS個の前記受光画素に対応する各出力を加算して出力する加算回路と、
計測に用いる波長に係る計測用分光光のエネルギーをE(x) ,前記計測用分光光に対する前記受光画素の感度をA(x) ,及び前記計測用分光光に対する前記分光手段による減衰率をm(x) とし、且つ、前記計測用分光光に対する前記サンプルによる減衰率は仮の値n(x) として、前記各パラメータE(x) ,A(x) ,m(x) ,n(x) 及びSの積が、前記加算回路の出力値に対して予め設定された値となるように前記パラメータSを設定する制御回路とを有する分光計測装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記パラメータn(x) を減衰率が採り得る最小値として、及び前記加算回路の出力値に対して予め設定された値を前記加算回路の飽和出力値として、前記パラメータSを設定することを特徴とする請求項1に係る分光計測装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記パラメータn(x) を減衰率が採り得る平均値として、及び前記加算回路の出力値に対して予め設定された値を前記加算回路の平均出力値として、前記パラメータSを設定することを特徴とする請求項1に係る分光計測装置。
【請求項4】
前記CCDイメージセンサは、前記受光画素単位で信号を順次転送する転送路と、前記受光画素からの出力を転送路に転送するトランスファーゲートとを備え、前記加算回路は、前記転送路からの出力が入力されるフローティングディフュージョンアンプよりなり、ここで、前記制御回路は、前記パラメータSに応じたタイミングにて前記フローティングディフュージョンアンプにリセット信号を印加することを特徴とする請求項1に係る分光計測装置。
【請求項5】
前記CCDイメージセンサは、前記受光画素単位で信号を順次転送する転送路と、前記受光画素からの出力を転送路に転送するトランスファーゲートとを備え、前記加算回路は、前記転送路からの出力が入力されるフローティングディフュージョンアンプよりなり、ここで、前記制御回路は、前記分光手段と、前記サンプル及び前記CCDイメージセンサとの位置関係に応じて、前記フローティングディフュージョンアンプに印加するリセット信号のタイミングを変更することを特徴とする請求項1に係る分光計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−128215(P2009−128215A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−304212(P2007−304212)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】