説明

分子毒性学モデリング

【課題】多細胞生物に対する、化合物、薬剤または毒素の毒性を評価する方法を提供する。
【解決手段】既知の毒素にさらされた組織もしくは細胞における、さらされない組織もしくは細胞と比較してのタンパク質の活性、遺伝子発現の全体的な変化の解明、ならびに毒素にさらすことにより示差的に発現された個々の遺伝子の同定に基づき、マイクロアレイおよびその他の固相プローブと共に使用するように設計された、毒素誘発性の示差的な発現によって特徴づけられる遺伝子のデータベースを含むことからなる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(関連出願)
本出願は、米国仮出願60/222,040、60/244,880、60/290,029、60/290,645、60/292,336、60/295,798、60/297,457、60/298,884および60/303,459に関連があり、これら全ては全体として関連付けにより本明細書に取り入れられる。
【0002】
(発明の背景)
細胞または生物体に対する、化合物、薬剤または環境汚染物質の有毒な影響力を評価する方法の必要性により、生物学的モニターとして生物体を利用する手法の開発につながってきた。これらの系統の最も単純であり、そして最も便利なものは、酵母やバクテリアのような単細胞の微生物を利用する、というのは、それらが最も簡単に維持され、そして操作されるからである。また、単細胞のスクリーニング系は、細胞に対する試験化合物の効果をモニターするために、たびたび表現型の簡単に検知できる変化を使用する。しかしながら、単細胞の生物は、それらがより高等な生物で見られる範囲、またはレベルで生体内変化を実行する能力を有しないので、複雑な多細胞の動物に対する多くの化合物の潜在的な効果を評価するための適当なモデルではない。
【0003】
多細胞生物による化合物の生体内変化は、それらがさらされる薬剤の全体的な毒性を決定する上での重要なファクターである。したがって、多細胞のスクリーニング系が、化合物の毒作用を検知するのに、好まれるか、または要求される。しかしながら、毒性学スクリーニングツールとして多細胞生物を使用することは、酵母またはバクテリアの系で利用できるような、便利なスクリーニングメカニズムまたはエンドポイントの欠如によって、かなり阻害されてきた。さらに、毒性学的予測系を作成する以前からの試みによっては、必要なモデリング情報を提供することができなかった(例えば、WO0012760、WO0047761、WO0063435、WO0132928A2、WO0138579A2およびAffymetrix(登録商標)Rat Tox Chip)。
【0004】
(発明の概要)
本発明は、既知の毒素(毒性物質)(特に、肝臓毒)にさらされた組織若しくは細胞における、さらされない組織若しくは細胞と比較しての遺伝子発現の全体的な変化の解明、ならびに毒素にさらすことにより、示差的に発現された個々の遺伝子の同定に基づく。
【0005】
様々な側面で、本発明は化合物の少なくとも1つの毒作用を予測し、化合物の毒作用の進行を予測し、そして化合物の肝臓毒性を予測する方法を含む。また、本発明は、毒性反応の発症または進行を調節(変調)する薬剤を同定する方法をも含む。さらに、化合物が細胞で調節する細胞経路を予測する方法も、また提供される。本発明は、タンパク質活性を調節する薬剤を同定する方法を含む。
【0006】
さらなる側面で、本発明は表1〜3中の遺伝子に特異的にハイブリダイズする配列を含むプローブを提供する。また、以前に言及されたプローブのうちの少なくとも2つを含む担体(固体支持体)も提供される。また、本発明は、肝臓毒にさらされた組織若しくは細胞試料において表1〜3中の少なくとも2個の遺伝子を含む遺伝子セットの発現レベルを同定する情報を含んでいるデータベースをもつコンピューターシステムをも含む。
【0007】
(詳細な説明)
多くの生物学的機能は、転写(例えば、開始の制御、RNA前駆体の供給、RNAプロセッシング等を通して)および/または翻訳制御を通して、様々な遺伝子の発現を変化させることによって達成される。例えば、細胞周期、細胞分化および細胞死のような基本的生物学的プロセスは、遺伝子群の発現レベルにおける変化によって、しばしば特徴づけられる。
【0008】
遺伝子発現の変化は、また生物若しくは細胞に対する様々な化学物質、医薬、毒素、薬剤および汚染原物質の影響と関連する。例えば、薬剤にさらされた後、機能的な腫瘍サプレッサー遺伝子の十分な発現の欠如、および/また癌遺伝子/癌原遺伝子の過剰発現によって、腫瘍発生または細胞の過形成増殖がもたされるであろう(Marshall, Cell, 64:313−326(1991);Weinberg, Science, 254:1138−1146(1991))。このように、特定の遺伝子(例えば、癌遺伝子または腫瘍サプレッサー)の発現レベルの変化は、特定の化合物にさらされたときの毒性の存在および進行またはその他の細胞の応答の指標として役に立つであろう。
【0009】
遺伝子発現の変化をモニターすることによって、医薬スクリーニングおよび開発の間、ある種の利点が提供されるであろう。しばしば、医薬はそれが細胞に対して持つ他の作用を無視して、主要な標的と相互に作用する能力についてスクリーンされる。これらの細胞への作用は、動物の全体において毒性を引き起こすかもしれないし、そして、それは可能性のある医薬の開発と臨床への使用を妨げる。
【0010】
本発明者は、有害な肝臓への影響を誘発する既知の肝臓毒にさらされた動物から、組織を調べて、これらの化合物によって誘発される遺伝子発現の全体的な変化を確認した。遺伝子発現の全体的な変化は、発現プロフィルの作成によって検出することができるが、試験化合物による毒性および/または毒性進行をモニターするのに用いることができる有用な毒性マーカーを提供する。また、これらのマーカーの一部は、様々な病気、若しくは生理的状態、病気の進行、医薬の効能および薬物代謝をモニターまたは検出するのに用いることができる。
【0011】
毒性マーカーの同定
毒性を予測できる遺伝子発現変化を評価して、確認するために、本発明者らは、よく特徴付けられた毒性を有する選択化合物を用いる研究を実施して、インビボおよびインビトロでの暴露の間、変化した遺伝子発現のカタログを作った。本研究では、アミトリプチリン(amitryptiline)、α−ナフチルイソチオシアネート(ANIT)、アセトアミノフェン、四塩化炭素、酢酸シプロテロン(CPA)、ジクロフェナク、17α−エチニルエストラジオール、インドメサシン、バルプロエートおよびWY−14643を既知の肝臓毒として選択した。
【0012】
急性CCl4誘発性の肝毒性の病因は、ヒトおよび実験動物でよく特徴付けられたコースをたどり、小葉中心の壊死と脂肪症に終わり、そして、肝臓の再生と組織修復が続く。肝細胞障害の重症度は、用量依存性でもあり、種、年齢、性および常食によって影響を受ける。
【0013】
CCl4肝毒性への感受性の違いは、主にCCl4を反応中間体に代謝する、動物モデルの能力と関連がある。CCl4誘発性の肝毒性は、主に中心静脈周囲肝細胞に局所化しているチトクロームP450酵素(CYP2E1)による、トリクロロメチル遊離基へのCCl4生理的活性化に依存している。遊離基の生成は、膜脂質過酸化とタンパク質変性に至らしめ、肝細胞損傷または死に終わる。
【0014】
雄ラットへのCCl4の急性投与に続いて、肝臓障害の発症は素早い。形態学的研究によって、投与の1〜3時間以内に、肝細胞で脂質の細胞質蓄積が示され、そして、5〜6時間までに、肝細胞の巣状の壊死と浮腫性の腫張が明らかである。投与後、24〜48時間までに、小葉中心の壊死と炎症性の浸潤がピークとなる。回復の始まりも、この時間フレームまでに、増加したDNA合成と有糸分裂形態の出現によって明らかである。48時間までに壊死破片の除去が開始され、1週間までに通常完了し、14日までに肝臓が全面的に回復する。
【0015】
血清トランスアミナーゼレベルの増加も、CCl4誘発性の肝臓の組織変化と平行している。SD系雄性ラットでは、CCl4投与後(0.1、1,2、3、4mL/kg、ip;2.5mL/kg,po)3時間以内にアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびアミノトランスフェラーゼ(AST)のレベルが増加し、投与後48時間以内にピークレベル(約5−10倍の増加)に達する。SD系雄性ラットへのCCl4投与後(25μL/kg,po)、早くて2時間で血清α−グルタチオン−s−トランスフェラーゼ(α−GST)レベルのかなりの増加もまた検出された。
【0016】
分子レベルでは、増殖に関連した癌原遺伝子であるc−fosおよびc−junの誘導は、報告されているところによるとCCl4誘発性の肝毒性の急性モデルで検出される最も初期の事象である(Schiaffonatoら、(1997) Liver 17:183−191)。これらの初期、即時の応答遺伝子の発現は、マウスへのCCl4の単一用量投与後(0.05〜1.5mL/kg(ip))、30分以内に、そしてラットでは投与後(2mL/kg,po;5mL/kg,po)、1〜2時間までに検出された(Schiaffonatoら、(1997) Liver 17:183−191およびHongら、(1997) Yonsei Medical. J. 38:167−177)。同様に、肝臓のc−myc遺伝子発現は、SD系雄性ラットへのCCl4の急性用量投与(5mL/kg,po)に続いて、1時間までに増加する(Hongら、)。CCl4にさらされた後でのこれらの遺伝子の発現は、素早くて一過性である。CCl4の急性的投与後、c−fos、c−junおよびc−mycの肝臓のmRNAのピークレベルは、投与後1〜2時間、3時間、および1時間のそれぞれで報告されている。
【0017】
CCl4にさらされた齧歯動物の肝臓では、腫瘍壊死因子α(TNF−α)の発現も増加し、TNF−αは、肝臓の修復プロセスの開始に関与している。抗TNF−α抗体による前処置は、c−junおよびc−fos遺伝子発現のCCl4媒介増加を防ぐことが示されたのに対して、TNF−αの投与はこれらの遺伝子の迅速な発現を誘発した(Bruccoleriら、(1997) Hepatol. 25:133−141)。修復プロセスの後期(CCl4投与後、24および48時間)での形質転換増殖因子β(TGF−β)および形質転換増殖因子受容体(TBRI−III)のアツプレギュレーションによって、TGF−βがアポトーシスを誘導して、再生応答を制限する役割を演ずるかもしれないことが示唆される(Grasl−Krauppら、(1998) Hepatol. 28:717−7126)。
【0018】
アセトアミノフェンは、肝臓および腎臓の不全を引き起こすN−アセチル−pベンゾキノンイミン(NAPQI)に、治療以上の用量で代謝され得る、広く使用されている鎮痛薬である。分子レベルでは、本発明があるまで、アセトアミノフェンの作用についてほとんど知られていなかった。
【0019】
アミトリプチリンは、肝臓に毒作用を及ぼすと認められるけれども、一般に使用されている抗うつ薬である(Physicians Desk Reference, 47版, Medical Economics Co., Inc., 1993;Balkin, 米国特許5,656,284号)。それにもかかわらず、うつ病、また同様に睡眠と消化不良(H. Mertzら、Am J Gastroenterol 93(2): 160−165, 1998)、偏頭痛(E. Beubler, Wien Med Wochenschr 144(5−6):100−101, 1994)、動脈性高血圧(T. Bobkiewiczら、Arch Immunol Ther Exp (Warsz) 23(4):543−547, 1975)、早漏(スミスら、米国特許5,923,341号)に対する、アミトリプチリンの有益な効果によって、その継続する使用が要求されている。
【0020】
アミトリプチリン毒性に対する感受性の違いは、異なる代謝に関連があるとみなされている。アミトリプチリン誘発性の肝毒性は、主に胆汁うっ滞の発症(肝臓が胆汁を分泌できなくなることに起因する症状)によって媒介され、胆汁−ビリルビンと胆汁酸塩に通常分泌される物質の血漿における蓄積がもたらされる。胆汁うっ滞は、肝細胞壊死と胆管障害によっても特徴づけられる。小管膜の管腔側での圧力増加と通常小管膜上に局所化される酵素(アルカリホスファターゼ、5’−ヌクレオチダーゼ、γ−グルタミルトランスペプチダーゼ)の放出に至る。これらの酵素もまた血漿に蓄積し始める。胆汁うっ滞の典型的な徴候は、一般的な倦怠、虚弱、吐き気、食欲不振および重度の掻痒である(Cecil Textbook of Medicine, 20版, XII部, pp.772−773, 805−808, J. C. BennettおよびF. Plum編, W. B. Saunders Co., Philadelphia, 1996)。
【0021】
ラット肝臓中のリン脂質代謝に対するアミトリプチリンまたはフェノバルビタール(PB)の作用が研究されてきた。1つの研究では、SD系雄ラットが、600mg/kgの1回用量で、アミトリプチリンの経口投与を受けた。PBは、80mg/kgの用量で腹腔内に与えられた(IP)。動物は、6、12、18および24時間で、断頭により犠牲にされた。肝臓中のリン脂質レベルは、酵素アッセイおよびガスクロマトグラフィー‐質量分析によって測定された。両方の薬剤とも、ミクロソーム性ホスファチジルコリン含有量の増加を引き起こした。グリセロリン酸アシルトランスフェラーゼ(GAT)とホスファチダーゼ・シチジリルトランスフェラーゼ(PCT)のレベルはアミトリプチリンによってわずかに影響を受けたが、PBによってはかなりの影響を受けた。ホスファチダーゼ・ホスホハイドロラーゼ(PPH)とコリンホスホトランスフェラーゼ(CPT)のレベルは、アミトリプチリンによって、そしてPBによってもかなり変化を受けた(K. Hoshiら、「ラット肝臓に関与する酵素の活性に対するアミトリプチンまたはフェノバルビタールの影響」 Chem Pharm Bull 38:3446−3448, 1990)。
【0022】
別の実験では、アミトリプチリンが600mg/kgの単一用量で、SD系雄ラット(4−5週齢)に経口で与えられた。動物は、12時間後または24時間後に、犠牲にされた。両方の時間点で、これはδ−アミノレブリン酸(δ−ALA)の著しい増加を引き起こした。全ヘムとチトクロームb5のレベルは、増加したが、チトクロームP450(CYP450)は、同じままだった。肝臓のヘム合成が、δ−ALAの長期間誘発を通して、増加するが、これはチトクロームb5と全ヘムの増加によって、説明され、CYP450含量によっては説明されえないと、著者らは結論した(K. Hoshiら、「δ−アミノレブリン酸シンセターゼ、ヘムオキシゲナーゼおよびミクロソーム性ヘム含量に対するアミトリプチリン、フェノバルビタールまたは塩化コバルト(II)の急性作用とラット肝臓での薬剤代謝」(Jpn J Pharmacol 50:289−293)1989)。
【0023】
アミトリプチリンは、過敏性反応候群を引き起こすことがありえるが、それは皮膚、肝臓、関節および血液学的な異常状態によって特徴づけられるある種の重度の特異質反応である(H. J. Milionisら, Postgrad Med 76(896):361−363, 2000)。アミトリプチリンは、薬剤誘発性の肝炎を引き起こすことも示され、それは損なわれたカタラーゼ機能を有する肝臓ペルオキシソームの結果となる(D. De Creaemerら, Hepatology 14(5):811−817, 1991)。そのペルオキシソームは、数がより大きいが、大きさにおいて小さく、そして形が変形している。培養した肝細胞を用いて、アミトリプチリンの細胞毒性が調べられて、そして他の向精神薬と比較された(U. A. Boelsterliら, Cell Biol Toxicol 3(3):231−250, 1987)。観察される影響は、生合成、タンパク質、胆汁酸や糖脂質の分泌の障害と同様に、細胞質ゾルからの乳酸デヒドロゲナーゼの放出であった。
【0024】
芳香剤や脂肪族イソチオシアネートは、一般に使用されている土壌の燻蒸剤および殺虫剤である(E. Shaayaら, Pesticide Science 44(3):249−253, 1995;T. Cairnsら, J Assoc Official Analytical Chemists 71(3):547−550, 1988)。しかしながら、有毒な残留物として植物中に、そのままの形態または代謝された形態で残り(M. S. Cernyら, J Agricultural and Food Chemistry 44(12):3835−3839, 1996)、そして土壌から周囲の大気に放出されるので(J. Ganら, J Agricutural and Food Chemistry 46(3):986−990, 1998)、これらの化合物は環境障害でもある。ANITのアミノ−置換形であるα−ナフチルチオ尿素は、既知の殺鼠剤であるが、その主要な毒性は、肺毛管へのこの化合物の作用から生じる肺浮腫や胸水である。肺や肝臓からのミクロソームは、原子状硫黄を放出する(GoodmanおよびGilmanのThe Pharmacological Basis of Therapeutics, 9版, 67章, 1690頁, J. G. Hardmanら,編, McGraw−Hill, New York, NY, 1996)。
【0025】
ラットにおける1つの研究で、ANIT(80mg/kg)はオリーブ油に溶かされて、雄ウィスターラット(180−320g)に経口で与えられた。全ての動物は、ANIT処置前、24時間断食させ、そして24時間後に血液と胆汁分泌が分析された。総ビリルビン、アルカリホスファターゼ、血清グルタミン酸オキサル酢酸トランスアミナーゼおよび血清グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼのレベルがかなり増加することが見出されたが、ANITが全体の胆汁の流れを減少させた。これら全ては、重度の胆管不全の兆候である。その損傷が再生可能で用量に依存するので、このモデルは、黄疽を伴う胆汁うっ滞を誘発するために用いられる。ANITは、ミクロソームの酵素によって代謝され、代謝産物がその毒性に基本的な役割を果たす(M. Tanakaら、「ラットにおいて、α−ナフチルイソチオシアネートによって誘発された肝内胆汁うっ滞に対する新規な環状ジスルフィド化合物であるSA3443の阻害効果」、Clinical and Experimental Pharmacology and Physiology 20:543−547(1993))。
【0026】
ANITは、大規模な壊死を起こすことができないが、肝門の導管で炎症や浮腫を起こすことがわかった(T. J. Maziasaら、「ラットの硫酸化経路に対する肝毒物の示差的な効果」、Toxicol Appl Pharmacol 110:365−373、1991)。ANITで処理された肝臓は、対照処理された対応物よりも有意に重く、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、γ−グルタミルトランスペプチダーゼ(γ−GTP)、総ビリルビン、過酸化脂質および総胆汁酸の血清レベルは、かなりの増加を示した(匿名、「ラットでの脂質過酸化とα−ナフチルイソチオシアナート誘発性の肝臓障害との関連性」(Toxicol Lett 105:103−110)2000)。
【0027】
ANITによって誘発された肝毒性は、胆細管炎症性の肝炎および胆管損傷によっても特徴づけられるかもしれない。ラットにおいてANITに起因する急性肝毒性は、胆管上皮細胞(BDECs)および肝臓実質細胞の好中球に依存する壊死として現れる。これらの変化は、ヒトに見出される胆細管炎症性の肝炎を反映している(D. A. Hill, Toxicol Sci 47:118−125, 1999)。
【0028】
ANITへ暴露は、胆汁うっ滞の発症(胆汁を分泌できなくなることに起因する症状)によって肝臓障害をも引き起こし、胆汁に、通常分泌される物質(例えば、ビリルビンと胆汁酸塩)の血漿における蓄積がもたらされる。胆汁うっ滞は、胆管上皮細胞壊死を含む肝細胞壊死や胆管障害によっても特徴づけられる。小管膜の管腔側での圧力増加、小管内の減少した流れおよび通常小管膜上に局所化される酵素(アルカリホスファターゼ、5’−ヌクレオチダーゼ、γ−グルタミルトランスペプチダーゼ)の放出に至る。これらの酵素もまた血漿に蓄積し始める。胆汁うっ滞の典型的な徴候は、一般的な倦怠、虚弱、吐き気、食欲不振および重度の掻痒である(Cecil Textbook of Medicine, 20版, XII部, pp.772−773, 805−808, J. C. BennettおよびF. Plum編, W. B. Saunders Co., Philadelphia, 1996、そしてD. C. Kossorら、「α−ナフチルイソチオシアナート(ANIT)投与後のラットでの肝胆管機能の変化と形態の変化との一時的な関係」(Toxicol Appl Pharmacol 119:108−114)1993)。
【0029】
ANIT誘発性の胆汁うっ滞は、アラニンアミノトランスフェラーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼおよび総ビリルビンの異常な血清レベルによっても特徴づけられる。それに加えて、肝臓の脂質過酸化が増加し、ミクロソームの膜流動性が減少する。組織学的変化は、多形核好中球の浸潤およびアポトーシス性肝細胞の上昇した数を含む(J. R. Calvoら, J Cell Biochem 80(4):461−470, 2001)。ANITへの暴露の他の知られている肝毒作用には、損なわれた抗酸化剤防御系、スーパーオキシドジスムターゼとカタラーゼの活性の低下(Y. Ohtaら. Toxicology 139(3):265−275, 1999)、および肝細胞を殺す手助けをする、浸潤した好中球からのある種のプロテアーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ、カテプシンG、エラスターゼの放出が含まれる(D. A. Hillら, Toxicol Appl Pharmacol 148(1):169−175, 1998)。
【0030】
インドメサシンは、慢性関節リューマチ、骨関節炎、強直性脊椎炎、痛風および多くの毎日の出来事であり、ジャブするような苦痛によって特徴づけられるひどい慢性クラスター頭痛の一種を治療するために一般に使われる、非ステロイド系抗炎症剤、解熱鎮痛薬である。この薬は、プロスタグランジン合成の強力な阻害剤の働きを行い、プロスタグランジンへのアラキドン酸の変換のために必要なシクロオキシゲナーゼ酵素を阻害する(PDR第47版、Medical Economics Co., Inc., Montvale、NJ、1993;Goodman & GilmanのThe Pharmalogical Basis of Therapeutics 第9版, J. G. Hardmanら編, McGraw Hill, New York, 1996、pp.1074−1075, 1089−1095;Cecil Textbook of Medicine, 20版, XII部, pp.772−773, 805−808, J. C. BennettおよびF. Plum編, W. B. Saunders Co., Philadelphia, 1996)。
【0031】
例えば出血、潰瘍および穿孔のようなより重度な状態も起こり得るが、インドメサシン治療の最も頻繁な副作用は、通常軽度な消化不良である胃腸障害である。肝臓への関連性は珍しいが、肝炎および黄疽の致死的な症例が報告されている。特に長期間投与の後、腎毒性も起こりうる。腎臓の乳頭壊死はラットにおいて観察されており、ヒトでは血尿を伴う間質性腎炎、タンパク尿症およびネフローゼ症候群が報告されている。腎臓プロスタグランジンが腎臓の灌流で重要な役割を果たすので、腎不全を患う患者は、腎臓の血液流の減少を発現する危険がある。
【0032】
ラットにおいて、インドメサシンは肝臓よりも胃腸管でより重度の副作用を起こすけれども、それは肝細胞性チトクロームP450の変化を誘発することが示された。1つの研究では、肝臓の広範囲にわたる変化は観察されなかったが、穏やかな、局所性の小葉中心の応答が注目された。尿素の血清レベルが増加した一方で、アルブミンおよび総タンパクの血清レベルはかなり減少した。クレアチニンまたはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の変化は、観察されなかった(M. Falzonら、「ラットでの肝酵素および組織変化並びに肝臓や腎臓機能の血清指標に対するインドメサシンの比較効果」、Br J ex. Path 66:527−534(1985))。ラットでの別の研究では、インドメサシンの単一用量が24時間以内に、CYP450を含む肝臓および腎臓ミクロゾーム酵素を減少させることが示された。臨床病理学的な変化は、モニターされなかったが、胃腸管に病変があった。肝臓への影響は、48時間までに漸減するようであった(M. E. Fracassoら、「インドメサシンは、ラットにおいてモノオキシゲナーゼ系で肝臓の変調と糞便中Clostridium perfringensエンテロトキシンを誘発した」(Agents Actions 31:313−316, 1990)。
【0033】
5つの非ステロイド系抗炎症剤の相対的な毒性を比較した肝細胞の研究により、インドメサシンが他のものより有毒であることが示された。乳酸デヒドロゲナーゼ放出および尿素のレベルが、生存度や形態と同様に調べられた。高レベルのインドメサシンにさらされた細胞は、細胞壊死、核の多形化、膨張したミトコンドリア、より少なめの微絨毛、円滑な小胞体増殖および細胞質の空胞化を示した(E. M. Sorensenら、「ラット肝細胞の一次培養物でのいくつかの非ステロイド系抗炎症化合物の相対的な毒性」J Toxicol Envirn Health 16(3−4);425−440, 1985)。
【0034】
合成のエストロゲンである、17α−エチニルエストラジオールは、しばしばプロゲステロン性化合物であるノルエチンドロンと組合せられる経口避妊薬の成分である。また、その薬は、閉経後のエストロゲン置換療法に使用される(PDR第47版、pp.2415−2420, Medical Economics Co., Inc., Montvale、NJ、1993;Goodman & GilmanのThe Pharmalogical Basis of Therapeutics 第9版, pp.1419−1422, J. G. Hardmanら編, McGraw Hill, New York, 1996)。
【0035】
17α−エチニルエストラジオール使用の最も頻繁な副作用は、循環器疾患の危険が増すことである。すなわち、心筋梗塞、血栓塞栓症、脈管病および高血圧であり、さらに炭水化物代謝(特に、グルコース不耐性および損なわれたインシュリン分泌)の変化の危険が増すことである。この病気の発生率は非常に低いけれども、良性の肝臓過形成を発症する危険が増加することもある。この薬は肝臓での代謝率を減少させるので、肝臓からゆっくりとなくなり、そして発癌の結果(例えば、腫瘍増殖)が起こるかもしれない。
【0036】
最近の研究で、17α−エチニルエストラジオールが、主に胆汁流中の胆汁酸塩に依存しないフラクション(BSIF)を減らすことによって雄ラットにおいて可逆的な肝臓内胆汁うっ滞を引き起こすことが示された(N. R. Koopenら、「胆汁小管有機アニオン輸送体(Mrp2/cmoat)の損なわれた活性は、ラットでのエチニルエストラジオール誘発性の胆汁うっ滞の主な原因でない」(Hepatology 27:537−545)1998)。この研究で、ビリルビン、胆汁酸塩、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の血漿レベルは、変わらなかった。また、この研究により、17α−エチニルエストラジオールは、薬物投与の3日後、血漿コレステロールと血漿トリグリセリドのレベルの減少を起こしたが、胆汁流の減少と共に、肝臓の重量の増加を起こすことが示された。この研究からのさらなる結果は、次の通りである。肝臓酵素であるロイシンアミノペプチダーゼとアルカリホスファターゼの活性は、初めにかなりの増加を示したが、酵素レベルは3日以後減少した。グルタチオン(GSH)の排出量は減少したけれども、ビリルビン排出量は増加した。血漿レベルに影響を及ぼすことのない、胆汁へのビリルビンの増加した分泌によって、増加したビリルビン産生がヘム含有タンパク質からヘムの分解の増加に関連しているに違いがないことが示唆される。同様な結果は、別の実験で得られたが、そこでは肝臓が光学および電子顕微鏡でも調べられた(G. Bouchardら、「ラットでのエストロゲン誘発性の胆汁うっ滞に対するウルソデオキシコール酸およびタウロウルソデオキシコール酸の経口投与の影響:胆汁形成と肝臓細胞膜への効果」(Liver 13:193−202)1993)。薬の作用にもかかわらず、肝臓組織の見える変化は観察されなかった。
【0037】
雄ラットの別の研究では、17α−エチニルエストラジオールを毎日、5日間皮下注射することによって胆汁うっ滞が誘発された。胆汁の流量を測定することによって、胆汁うっ滞が評価された。薬物治療の終了から5日間回復させておかれたラットは、通常の胆汁流量を示した(Y. Hamadaら、「ホルモン誘発性の胆汁流および肝胆汁性のカルシウム流量は、インビボでエチニルエストラジオールを用いて、インビトロでファロイジンを用いて胆汁うっ滞性にされたラット灌流肝臓において、減衰する」(Hepatology 21:1455−1464)1995)。
【0038】
雄と雌ラットを用いる実験によって、17α−エチニルエストラジオールは処置の2日後に、急性肝臓過形成(分裂指数とBrdU染色での増加)を誘発するが、治療の最初の数日以内に増殖の退縮が起きることが見出された(X.Mayol、「エチニルは、ラット肝臓におけるエチニルエストラジオール誘発性の細胞増殖。肝細胞の特定個体群の関与」(Carcinogenesis 13:2381−2388, 1992)。長期間の処置では、長続きする過形成が薬物投与の、3〜6ヵ月後に、再び観察された。アポトーシスは、3日目頃に増加して、1週までに正常に戻った。この同じ研究の更なる実験は、増殖している肝細胞が空胞となった肝細胞(これも処置によって誘発された)の入口周辺区域のまわりに、主に位置することを示した。慢性の誘発された活性化は、雄ラットから単離された肝細胞のフローサイトメトリーによって特徴づけられた。肝細胞の細胞懸濁液の倍数関係解析は、二倍体肝細胞のかなり増えた割合を示した。これらの二倍体細胞は、薬物によって誘発された増殖に最も感受性があった。この研究からの結果によって、発癌プロモーターの作用に応答する細胞標的個体群が存在するという理論が支持される。処置の間の増殖への二倍体肝細胞の感受性は、肝臓での17α−エチニルエストラジオールの発癌プロモーターとしての挙動を少なくとも部分的には説明するかもしれない。
【0039】
肝臓で作用する腫瘍誘導性化合物である、Wy−14643は、癌を検出、診断および治療するための方策を開発することを目的として、癌発症の様々な段階の間、細胞の遺伝子プロフィルを研究するために使用されてきた(J. C. Rockettら、「ペルオキシゾーム増殖因子であり、かつ非遺伝子毒性な肝癌誘発物質である、Wy−14,643への曝露に続いて、雄ラットおよびモルモット肝臓での変化した発現を示す遺伝子を確認するために、サプレッション−PCRサブトラクティブ・ハイブリダイゼーションの使用」(Toxicology 144(1−3):13−29, 2000)。他の発癌物質とは対照的に、Wy−14643は直接DNAを変異させない。その代わりに、増殖を調節する他のシグナル経路と同様に、ペルオキシゾーム増殖因子により活性化された受容体α(PPARalpha)に作用する(T. E. Johnsonら、「ペルオキシゾーム増殖因子と脂肪酸は、肝臓X受容体によって媒介される活性とステロール生合成をネガティブに調節する」(J Steroid Biochem Mol Biol。77(1):59−71, 2001)。その影響は、アポトーシスの減少を伴う、上昇し、かつ維持された細胞複製である(I. Rusynほか、「ラットとマウス肝臓での塩基除去修復酵素の発現は、ペルオキシゾーム増殖因子によって誘発され、発癌性力価に依存する」(Carcinogenesis 21(12)):2141−2145, 2000)。これらの著者(Rusynほか)は、塩基除去によってDNAを修復する酵素の発現の増加に気付いたが、DNAへの酸化的な損傷を修復しない酵素の増加した発現には気付かなかった。齧歯動物の研究で、Johnsonらは、Wy−14643が用量に依存する様式で、肝臓X受容体によって媒介される転写、並びにデノボステロール合成も同様に抑制することに注目した。
【0040】
マウス肝細胞の実験で、Wy−14643への曝露は、アシルCoAオキシダーゼおよび細胞増殖に関与するタンパク質(CDK−1、2と4、PCNAおよびc−myc)の増加したレベルをもたらした(J. M. Petersら、「マウス肝臓での変化した細胞周期調節におけるペルオキシゾーム増殖因子により活性化された受容体αの役割」、Carcinogenesis 19(11):1989−1994、1998)。上昇レベルは、PPARalphaによって直接または間接的に調節される、速められた転写に起因するかもしれない。ペルオキシゾーム増殖因子の発癌性は、細胞周期調節タンパク質レベルにおけるPPARalpha依存性変化によるらしい。
【0041】
齧歯動物でのもう一つの研究によって、Wy−14643がラット肝臓ミトコンドリアで酸化的リン酸化をアンカップリングできることが示された(B. J. Kellerら、「いくつかの非遺伝毒性である発癌性物質は、ミトコンドリアでの酸化的リン酸化をアンカップリングする」(Biochim Biophys Acta 1102(2)):237−244、1992)。2つのエネルギー依存性プロセスである、アンモニアからの尿素合成速度と胆汁流量が減少したが、これは毒素への細胞曝露の結果としてこれらのプロセスへのエネルギー供給が中断したことを示す。
【0042】
また、Wy−14643は、クッパー細胞で核因子κ―B、NADPHオキシダーゼおよびスパーオキサイド産生を活性化することが示された(I. Rusynら、「ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸オキシダーゼからの酸化物質が、ペルオキシゾーム増殖因子による肝臓での細胞増殖を引き起こすことに関係している」、Cancer Res 60(17):4798−4803, 2000)。NADPHオキシダーゼは、肝臓細胞の増殖を引き起こすマイトジェンを誘発すると知られている。
【0043】
CPAは、強力なアンドロゲン拮抗剤であり、にきび、男性のパターンはげ、早熟の思春期、前立腺の過形成および癌を治療するために使用されてきた(Goodman & GilmanのThe Pharmacological Basis of Therapeutics, 9版, 67章, 1690頁, J. G. Hardmanら,編, McGraw−Hill, New York, 1996)。さらに、CPAは、ホルモン置換療法(HRT)に臨床的に使われてきた。CPAは子宮内膜を保護して、更年期の徴候を減少させて、骨粗鬆症性骨折の危険を軽減するので、HRTで役に立つ(H. P. Schneider、「ホルモン置換療法での抗アンドロゲンの役割」、Climacteric 3(Suppl 2):21−27, 2000)。
【0044】
CPAは多数の臨床上の適応症を持つけれども、それは腫瘍形成性、有糸分裂促進性、および催奇性である。CPAは、前立腺の腺癌をもつ患者を治療するために使用されてきた。しかしながら、報告された2つの症例では、CPA治療に続いて患者が大腿骨頭の無血管性壊死を発症した(A. G. MacdonaldおよびJ. D. Bissett、「酢酸シプロテロンと放射線療法で治療した、前立腺癌をもつ患者における大腿骨頭の無血管性壊死」、Clin Oncol 13:135−137、2001)。1つの研究では、Big BlueトランスジェニックF344ラットが用量を変化させたCPAを与えられた(O. Krebsら、「DNA損傷薬である酢酸シプロテロンは、雌Big BlueトランスジェニックF344ラットの肝臓で遺伝子突然変異を引き起こして、グルタチオン−SトランスフェラーゼPを誘導する。」、Carcinogenesis 19(2):241−245、1998)。CPAの用量が増やされると、突然変異頻度もそうであったが、限界用量は決定されなかった。別の研究は、CPAがヒト肝細胞の一次培養でDNA付加体の形成を引き起こすことを示した(S.Wernerら、「ヒト肝細胞の一次培養での酢酸シプロテロンによるDNA付加体およびいくつかの構造的同族体の形成」、Muta Res 395(2−3):179−187、1997)。その著者らは、CPAと関連する遺伝子毒性がステロイドの6−7位二重結合によるかもしれないと示唆している。
【0045】
ラットを用いる更なる実験で、CPAは予定外のインビトロDNA合成を誘発することが示された(P. KasperおよびL. Mueller、「酢酸シプロテロンでのインビボ処理に続く、ラット肝細胞でのDNA修復合成の時間に関連した誘発」、Carcinogenesis 17(10):2271−2274、1996)。100mgCPA/kg体重の単一用量の経口投与後、連続するDNA修復活性は、16時間以後に観察された。さらに、CPAはS期細胞の出現を増加させ、それはラット肝臓においてのCPAの有糸分裂可能性を確実なものとした。
【0046】
CPAが肝硬変を起こすことも示された(B. Z. Gartyら、「酢酸シプロテロンで治療された、視床下部症候群と性的早熟もつ子供における肝硬変」、Eur J Pediatr 158(5):367−370, 1999)。視床下部症候群と性的早熟について、4年以上の間CPAで治療された1人の子供は、肝硬変になった。薬物療法は中止されたけれども、子供は4年後に結局、敗血症と多重臓器不全に倒れた。
【0047】
CPAで処置されたラット肝臓に関する1つの研究では、アポトーシスのためのマーカーである、クラステリン(clusterin)の発現が調べられて、ノーザンおよびスロットブロット解析によって測定された(W. Burschほか、「ラット肝臓の増大と再生の間、クラステリン(テストステロンで抑制された前立腺のメッセージ2)mRNAの発現」、Arch Toxicol 69(4):253−258、1995)。Bursch等は、CPA投与後、クラステリンmRNA濃度レベルが増加することを示した。さらに、インサイチュハイブリダイゼーションによって、クラステリンが全ての肝細胞で発現され、したがって、それはアポトーシスによる死のプロセスにある細胞に限られていないことが実証された。
【0048】
非ステロイド系の抗炎症薬である、ジクロフェナクは、しばしば慢性関節リューマチ、骨関節炎および強直性脊椎炎で苦しんでいる患者に投与されてきた。経口投与に続いて、ジクロフェナクは速く吸収されて、肝臓中でCYC2CサブファミリーのチトクロームP450イソ酵素によって、代謝される(Goodman & GilmanのThe Pharmacological Basis of Therapeutics, 9版, 637頁, J. G. Hardmanら,編, McGraw−Hill, New York, NY, 1996)。さらに、ジクロフェナクは角膜の損傷による痛みを処置するために局所的に塗布されてきた(D. G. Jayamanneら、「外傷性角膜の摩耗に続いて起こる不快感を軽減する局所用のジクロフェナクの有効度」、Eye 11(Pt.1):79−83, 1997;D. I. Dornicら、「麻酔の乱用角膜症の処置における局所用ジクロフェナクナトリウム」、Am J. Ophthalmol 125(5):719−721, 1998)。
【0049】
ジクロフェナクは、数多くの臨床適用を有するけれども、反対の副作用がその薬と関連されてきた。1つの研究では、ジクロフェナク使用に関係する角膜合併症に苦しむ16人の患者のうち、6人が角膜または強膜のメルトを経験し、3人が潰瘍化を経験し、2人が重度の角膜症を経験した(A. C. Guideraら、「局所用非ステロイド系の抗炎症剤と関連する角膜炎、潰瘍化および穿孔」(Opthalmology 108(5)):936−944, 2001)。別の報告によれば、ジクロフェナクでの母親の治療の結果、動脈管の早すぎる閉鎖を有する出産予定日の新生児が記載されている(M. Zenkerら、「ジクロフェナクでの母親の治療に続く動脈管の早すぎる閉鎖によって引き起こされる新生児における、重度の肺の高血圧:症例報告」(J Perinat Med 26(3)):231−234, 1998)。出産前のたった2週間であったけれども、新生児はひどい肺の高血圧に罹かっていて、吸入一酸化窒素の高用量での22日間の治療を要した。
【0050】
もう一つの研究は、食品医薬品局にジクロフェナクに副作用を報告した患者の180の症例を調査した(A. T. Banksら、「ジクロフェナク関連の肝毒性:副作用として食品医薬品局に報告された180の症例の解析」(Hepatology 22(3)):820−827, 1995)。180の報告された症例のうち、最も共通した徴候は、黄疽であった(症候に関する患者の75%)。肝臓切片が取られて、分析された。薬物治療後、1ヶ月で肝臓障害は明白であった。追加の報告は、患者が骨関節炎のためにジクロフェナク治療を開始した後、5週間で重度の肝炎を発症したことを示した(A. Bhogarajuら、「ジクロフェナク付随の肝炎」、South Med J 92(7):711−713, 1999)。ジクロフェナク治療の休止後、2、3ヵ月以内に、肝臓機能の完全な回復があった。
【0051】
ジクロフェナクで処置されたウィスターラットに関する1つの研究(P. E. Ebongら、「ラット中のいくつかの生化学的パラメーターに対する、アスピリン(アセチルサリチル酸)およびカタフラム(カリウムジクロフェナク)の効果」、Afr J Med Med Sci 27(3−4):243−246、1998)で、ジクロフェナク処置は、アラニンアミノトランスフェラーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、メテモグロビンおよび共役された全ビリルビンの血清化学レベルの増加を誘発した。さらに、ジクロフェナクは、アルカリホスファターゼと5’ヌクレオチダーゼの活性を強化した。もう一つの研究によれば、ジクロフェナクを与えられたヒトは、対照群と比較して、肝臓トランスアミナーゼと血清クレアチンの増加を示した(F. Mckennaら、「ひざの骨関節炎の治療におけジクロフェナク対セレコーブ(Celecoxib)、Scand J Rheumatol 30(1):11−18, 2001。
【0052】
毒性予測とモデリング
表1〜3に提供される遺伝子のポートフォリオおよびサブセットと同様に、遺伝子および遺伝子発現情報を用いて、試験化合物若しくは未知化合物の肝毒性を含む、少なくとも1つの毒作用を予測する。本明細書で使用する場合、少なくとも1つの毒作用には、限定はされないが、細胞若しくは生物の生理的状態の有害な変化が含まれる。その応答は、特定の病理学的状態(例えば、組織壊死)と関連するかもしれないが、そうあることを要求されない。したがって、毒作用は、分子と細胞レベルでの効果を含む。本明細書で使用される、肝毒性とは効果であり、そして肝臓壊死、肝炎、脂肪肝およびタンパク質付加体形成の病理学的状態を含むが、これらには限られていない。
【0053】
一般に、試験薬剤(すなわち、化合物または多重成分組成物)の毒性または肝毒性を予測するアッセイは、細胞集団(個体群)を試験化合物にさらすこと、表1〜3の遺伝子の1個若しくはそれ以上の相対的若しくは絶対的な遺伝子発現のレベルをアッセイしまたは測定すること、同定した発現レベルを前記表およびそこに開示されたデータベースに開示された発現レベルと比較するステップを含む。アッセイは、表1〜3から約2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、50、75、100個若しくはそれ以上の遺伝子の発現レベル測定を含むかもしれない。
【0054】
本発明の方法では、試験薬剤、化合物または組成物によって誘導される、遺伝子若しくは遺伝子類の発現レベルが約2倍、約1.5倍または約1.0倍の係数の範囲内で変化するならば、本明細書に開示される表またはデータベースに見出されるレベルに匹敵する。いくつかのケースでは、薬剤が参照毒素と同じ方向(例えば、アップまたはダウン)に、遺伝子の発現変化を誘発するならば、それらの発現レベルは匹敵する。
【0055】
試験薬剤、化合物または組成物にさらされる細胞集団は、インビトロまたはインビボでさらされてもよい。例えば、培養または新たに単離された肝細胞(特に、ラット肝細胞)は、標準的な実験室および細胞培養条件の下でその薬剤にさらされる。別のアッセイ様式では、インビボの曝露は、生きている動物(例えば、研究室ラット)に、その薬剤を投与することによって達成できる。
【0056】
インビトロおよびインビボ系で、毒性試験を設計および実施するための手順は、周知であり、その主題に関しては多くの教科書に記載されている。例えば、Loomisら、Loomis’s Essentials of Toxicology Testing, 4版 (Academic Press, New York, 1966)、Echobichon, The basics of Toxicity Testing (CRC Press, Boca Raton, 1992)、Frazier編、In Vitro Toxicity Testing (Marcel Dekker, New York, 1992)などである。
【0057】
インビトロ毒性試験では、2つのグループの試験生物が通常使用される。1つのグループは、対照であり、他のグループは単一用量で(急性毒性試験用)、または1つの投薬計画の用量で(長くなるか慢性毒性試験用)、試験化合物を受ける。いくつかのケースでは、本発明の方法で要求される組織の抽出が、試験動物を犠牲にする必要があるので、実験の継続期間を通して遺伝子発現のダイナミックスを観察することが望ましいならば対照グループおよび化合物を受けているグループの両方とも、組織サンプリングのために動物の取り除くことを可能にするように十分大きくなければならない。
【0058】
毒性研究を計画するに際して、試験される化合物のために適切な試験生物を選ぶこと、投与経路、用量の範囲などについて広範囲な指針が文献で提供されている。水または生理的食塩水(水中0.9%NaCl)が、試験化合物のために選択される溶質である。というのは、これらの溶剤が様々な経路による投与を許容するからである。溶解性の限界のために、これが可能でないとき、トウモロコシ油のような植物油、またはプロピレングリコールのような有機溶剤が使用できる。
【0059】
投与経路に関係なく、所与の用量を投与するのに要する容積は、使われる動物の大きさによって制限される。動物のグルーフ内またはグループ間で各用量の容積を均一に保つことが望ましい。ラットまたはマウスを使用するとき、一般に経口経路で投与される容積は、動物のグラム当たり0.005mlを超えてはならない。水性または生理的食塩水が非経口的注入のために使われるときでも、そのような溶液は通常無害である考えられているが、許容される容積は制限される。マウスでの蒸留水の静脈LD50は、マウスグラム当たり約0.044mlであり、等張塩類液のそれはマウスグラム当たり0.068ml。ある場合には、試験動物への投与経路は、治療目的のためのヒトへの該化合物の投与経路と同一、またはできるだけ似通っているべきである。
【0060】
化合物が吸入によって投与されることになっているとき、試験空気を発生する特殊な手法が必要である。その方法は、通常化合物を含む液のエーロゾル状散布または噴霧化を含む。試験される薬剤が感知できる蒸気圧を持つ液であるならば、それは制御された温度条件下で空気を溶液に通すことによって投与できる。これらの条件下で、用量は単位時間当たりに吸入される空気の容積、溶液の温度および関与する薬剤の蒸気圧から見積もられる。ガスは、ガス溜めからメーターで測られる。溶液の粒子が投与されることになっているとき、粒径が約2μmより小さくなければ、粒子は肺で末端の肺胞の嚢に達しない。吸入によって投与されるとき、様々な装置やチャンバーが、刺激物質またはその他の有毒なエンドポイントの効果を検出するための研究を実行するために利用できる。動物に薬剤を投与する好ましい方法は、挿管によるかまたは飼料に薬剤を取り入れることによる、経口経路を通してある。
【0061】
薬剤がインビトロで、細胞または細胞培養物にさらされるとき、例えば、薬剤にさらされる細胞集団は、その集団を2つ以上の同一のアリコートに分割することによって、2つ以上の副集団に分割されるかもしれない。本発明の方法の好適ないくつかの実施の形態で、薬剤にさらされる細胞は、肝臓組織に由来する。例えば、培養されたか、または新たに単離されたラット肝細胞が使われる。
【0062】
本発明の方法は、一般に少なくとも1つの毒性反応を予測するのに使用でき、そして、実施例に記載されているように、化合物または試験薬剤が肝臓壊死、脂肪肝疾患、タンパク質付加体形成または肝炎などの様々な特定肝臓病理を誘発するという見込みを予測するのに使用できる。また、本発明の方法を用いて、1つ若しくはそれ以上の個々の化合物に対する、毒性反応の類似性を決定できる。それに加えて、本発明の方法を用いて、既知の毒素(表3A〜3Sを参照)によって誘発されるプロフィルと比較しての、発現プロフィルの類似性のために、前記化合物または試験薬剤によって影響、誘発または調節される可能性のある細胞経路を予測するか、または解明できる。
【0063】
毒性マーカーの診断用途
上述のように、化合物にさらされた組織若しくは細胞試料(標本)の生理的状態の予測または同定のための診断マーカーとして、或いは化合物または薬剤の毒作用を同定するか、予測するのに表1〜3に提供されたような遺伝子や遺伝子発現情報、またはそれらの発現情報を備える遺伝子のポートフォリオを使用することができる。例えば、末梢血液細胞の試料のような組織試料または他の簡単に得ることができる若干の組織試料を上記の方法のいずれによってアッセイでき、そして、表1〜3からの遺伝子または遺伝子類の発現レベルが本明細書に記載される毒素にさらされた組織若しくは細胞で見出される発現レベルと比較できる。これらの方法は、細胞での生理的状態の診断をもたらし、ある化合物(例えば、新しいか未知の化合物または薬剤)の潜在的な毒性を確認するために使用することができる。利用できる配列または他の情報と同様に、発現データの比較は、研究者または診断者が行ってもよいし、下記のようにコンピューターやデータベースの助けを借りてもなし得る。
【0064】
別の様式では、試料(例えば、身体の組織若しくは体液試料)中、表1〜3の遺伝子(遺伝子類)のレベル、それがコードするタンパク質(タンパク質類)、または該コードされたタンパク質によって生産されるいかなる代謝産物でも、モニターまたは検出して、生物体の生理的状態を確認するか、診断することができる。そのような試料としては、尿、血液および簡単に取得できる細胞(例えば、末梢リンパ球)を含む、いかなる組織または液試料でも挙げられる。
【0065】
毒性進行をモニターするためのマーカーの使用
上述のように、医薬、候補薬、毒素、汚染原物質、その他に最初にさらされた後に見出されるような毒性進行をモニターするためのマーカーとして、表1〜3に提供される遺伝子や遺伝子発現情報を使用することもできる。例えば、組織試料または細胞試料を上記の方法のいずれによってアッセイでき、そして、表1〜3の遺伝子または遺伝子類の発現レベルが本明細書に記載される肝毒素にさらされた組織若しくは細胞で見出される発現レベルと比較できる。利用できる配列または他の情報と同様に、発現データの比較は、研究者または診断者が行ってもよいし、下記のようにコンピューターやデータベースの助けを借りてもなし得る。
【0066】
医薬スクリーニングのための毒性マーカーの使用
本発明によれば、表1〜3で同定された遺伝子を、マーカーまたは薬標的として使用して、細胞または組織試料に対する、候補薬、化合物または他の薬剤の効果を評価することができる。遺伝子をその発現や活性を調節する薬剤をスクリーニングするための薬標的として使用することもできる。様々な様式で、候補薬または薬剤は、転写または所定のマーカーまたはマーカー類をシミュレーションする能力、或いはマーカーまたはマーカー類の転写または発現をダウンレギュレートまたは妨げる能力をスクリーニングできる。本発明によれば、薬が誘発するマーカーの数を見て、そしてそれらを比較することによって、薬の効果の特異性を比較することもできる。より特異的な薬は、より少ない転写標的を持つ。2つの薬のために確認されたマーカーの類似したセットは、効果の類似性を示すかもしれない。
【0067】
表1〜3に定義するようなマーカーまたはマーカー類の発現をモニターするためのアッセイは、本発明の核酸の発現レベル変化をモニターするのに利用可能ないかなる手段を利用してもよい。本明細書で使用する場合、それが細胞で核酸の発現をアップまたはダウンレギュレーションできるならば、薬剤は本発明の核酸の発現を調節するという。
【0068】
1つのアッセイ様式で、表1〜3からの1個、2個若しくはそれ以上の遺伝子に対するプローブを含む遺伝子チップを使用して、処理されたか、さらされた細胞で、遺伝子発現の変化を直接モニターまたは検出することができる。細胞系、組織または他の試料を最初に試験薬剤にさらし、そして、いくつかの場合には、既知の毒素にさらして、表1〜3の遺伝子のうちの1個若しくはそれ以上、または好ましくは2個若しくはそれ以上の検出した発現レベルを既知の毒素に単独でさらされた、それらと同じ遺伝子の発現レベルと比較する。既知の毒素(毒素類)の発現パターンを調節する化合物は、インビボで潜在的に有毒な生理作用を調節することが期待されるだろう。表1〜3中の遺伝子は、既知の肝臓毒にさらされたとき、細胞で示差的に発現されるので、これらのアッセイにおいて特に適切な指標である。
【0069】
別の様式では、表1〜3の遺伝子のオープンリーディングフレームおよび/または転写調節領域間のリポーター遺伝子融合を含む細胞株とアッセイ可能な融合パートナーのいずれかを調製する。多数のアッセイ可能な融合パートナーが、知られており、容易に入手可能であるが、ホタルルシフェラーゼ遺伝子およびクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子を含む(Alamら、(1990) Anal. Biochem. 188:245−254)。リポーター遺伝子融合を含む細胞株を、それから適切な条件と時間で、試験される薬剤にさらす。薬剤にさらされた試料と対照試料との間のリポーター遺伝子の示差発現は、核酸の発現を調節する薬剤を確認する。
【0070】
追加のアッセイ様式を用いて、表1〜3中で同定された遺伝子の発現を調節する薬剤の能力をモニターできる。上述のように、例えば、mRNA発現は、本発明の核酸に対するプローブのハイブリダイゼーションによって直接モニターできる。細胞株を適切な条件と時間で、試験される薬剤にさらして、トータルRNAまたはmRNAをSambrookら(Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)に開示されているもののような標準的な手順によって単離する。
【0071】
もう一つのアッセイ様式では、本発明の遺伝子産物を発現する細胞または細胞系をまず同定する。そのように同定された細胞や細胞株は、転写機構の調節の忠実度が適当な表面伝達機構および/または細胞質カスケードと薬剤の外因性接触に関して、維持されるように必要な細胞機構を含むと期待されるだろう。さらに、そのような細胞または細胞株は、表1〜3の遺伝子産物をコードする構造遺伝子の端を含んでいる操作可能な非翻訳性の5’−プロモーターが1つ以上の抗原性フラグメントまたは他の検出可能なマーカーであり、これらは本発明の遺伝子産物に特有であり、さらに前記フラグメントは、該プロモーターの転写調節の下にあり、ポリペプチドとして発現される(その分子量が天然に存在するポリペプチドから区別できるか、またはさらに免疫学的に識別される若しくは他の検出可能なタグを含む)ものに融合されたものを含んでなる発現ビヒクル(例えば、プラスミドまたはウィルス性ベクター)構築体で形質導入または形質転換できる。そのようなプロセスは、当該技術において周知である(Maniatisを参照)。
【0072】
上記で概説したような細胞または細胞株を、それから適切な条件下で薬剤と接触させる。例えば、その薬剤は薬学的に許容される佐薬を含み、そして生理的pHでのリン酸緩衝食塩水(PBS)、生理的pHでのイーグルス均衡塩類溶液(BSS)、PBS、または血清若しくはPBSまたはBSSおよび/または血清を含む調節された媒体などの水性の生理的緩衝液に含まれる細胞と接触され、37℃でインキュベートされる。前記条件は、当業者が必要と思えば調節されるかもしれない。細胞を前記薬剤に接触させるのに続いて、該細胞を粉砕して、細胞溶解液のポリペプチドを、ポリペプチド画分がプールされ、免疫アッセイ(例えば、ELISA、免疫沈澱またはウエスタンブロット)によってさらに処理されることになっている抗体と接触させられるように分画する。薬剤と接触された試料から単離したタンパク質のプールはを次いで対照試料と比較するが、そこでは佐薬のみが細胞と接触され、そしてその対照と比較して薬剤と接触された試料からの免疫学的に発生されたシグナルにおける増加または減少を用いて、前記薬剤の有効性および/または毒作用を識別する。
【0073】
本発明の別の実施の形態は、表1〜3の遺伝子によってコードされるタンパク質(類)の少なくとも1つの活性を調節する薬剤を同定するための方法を提供する。そのような方法またはアッセイは、所望の活性をモニターするか、検出するいかなる手段をも利用できる。
【0074】
1つの様式では、さらされていない対照細胞集団と比較しての試験される薬剤にさらされた細胞集団と既知の毒素にさらされた細胞集団との間のタンパク質(表1〜3)の相対的な量をアッセイする。この様式の中で、特異的抗体のようなプローブを用いて、異なる細胞集団でのタンパク質の示差的な発現をモニターする。細胞株または細胞集団を、適切な条件と時間の下で、試験される薬剤にさらす。さらされた細胞系または集団、対照、さらされていない細胞株または集団から細胞溶解液(ライゼート)を調製する。ひの細胞溶解液は、それからプローブ(例えば、特異的抗体)で分析される。
【0075】
上記の方法でアッセイした薬剤を無作為に選ぶことができるか、または合理的に選ぶか若しくは設計することができる。本明細書で使用する場合、薬剤が本発明のタンパク質の会合に単独で、またはその関連する基質、結合パートナーなどと共に関与する特異的配列を考慮することなく無作為に選ばれるとき、その薬剤は無作為に選ばれるという。無作為に選ばれた薬剤の例は、化学的なライブラリ若しくはペプチドのコンビナトリアルライブラリ、または生物の増殖培養液の使用である。
【0076】
本明細書で使用する場合、薬剤がその作用と関連して、標的部位の配列および/またはその配座を考慮する、無作為な基準ではなく選ばれるとき、その薬剤は合理的に選ばれるとか、設計されるという。薬剤は、これらの部位を構成するペプチド配列を利用することによって合理的選ぶか、設計することができる。例えば、合理的に選ばれたペプチド薬剤は、そのアミノ酸配列がどのような機能のコンセンサス部位と同一であるか、またはその誘導体でありえる。
【0077】
本発明の薬剤は、例えば、ペプチド、小分子、ビタミン誘導体、同様に炭水化物でありえる。ドミナントネガティブなタンパク質、これらのタンパク質をコードするDNA、これらのタンパク質に対する抗体、これらのタンパク質のペプチドフラグメント、またはこれらのタンパク質の模擬体は、機能に影響を及ぼすために細胞に導入される。本明細書で使用する、「模擬体」とは、化学的に親ペプチドと異なるが、トポロジカルに、そして、機能的に親ペプチドと類似な構造を提供するためのペプチド分子の1つの領域またはいくつかの領域の改変を指す(Grant GA. Meyers (編) Molecular Biology and Biotechnology (New York, CH Publishers, 1995)中, 659−664頁を参照)。当業者は、本発明の薬剤の構造上の性質に関して、制限がないと容易に認識できる。
【0078】
核酸アッセイ様式
既知の肝臓毒(表1〜3)にさらされると、示差的に発現されると同定した遺伝子を様々な核酸検出アッセイで使用して、与えられた試料中、遺伝子または多重遺伝子の発現レベルを検出または定量できる。表1〜3に記載した遺伝子は、その示差的な発現が細胞または組織での毒性に関連する、1つ以上の追加の遺伝子と組合せても使用されるかもしれない。好ましい実施の形態では、表1〜3中の遺伝子は、関連出願60/222,040、60/244,880、60/290,029、60/290,645、60/292,336、60/295,798、60/297,457、60/298,884および60/303,459に記載される遺伝子の1つ以上と組合せられるかもしれない。これら全ては、本出願の1頁で関連付けによって取り入れられる。
【0079】
遺伝子発現を検出するいかなるアッセイ様式を使用してもよい。例えば、伝統的なノーザンブロッティング、ドットまたはスロットプロット、ヌクレアーゼ保護、プライマー指示された増幅、RT−PCR、半定量的若しくは定量的PCR、枝分かれ鎖DNAおよび示差的な表示方法が、遺伝子発現レベルを検出するために使われるかもしれない。それらの方法は、本発明のいくつかの実施の形態に有用である。より少ない数の遺伝子が検出される場合には、増幅に基づくアッセイが最も効率的であるかもしれない。しかしながら、本発明の方法およびアッセイは、多数の遺伝子の発現を検出するハイブリダイゼーションに基づく方法で、最も能率的に設計される。
【0080】
いかなるハイブリダイゼーションアッセイ様式を用いてもよいが、これには溶液に基づくアッセイ様式および担体に基づくアッセイ様式が含まれる。本発明の示差的に発現された遺伝子用オリゴヌクレオチドプローブを含む担体は、フィルター、ポリ塩化ビニルディシュ、粒子、ビーズ、微粒子またはシリコン、或いは、ガラス基盤チップ等であり得る。そのようなチップ、ウエハーおよびハイブリダイゼーション法は、広く利用でき、例えばBeattie(WO 95/11755)によって開示されたものである。
【0081】
オリゴヌクレオチドが、直接的にか、または間接的にかのいずれかで、共有結合的にか、または非共有結合的にかで、結合され得るいかなる固体の表面でも、使用することができる。好ましい担体は、高密度アレイまたはDNAチップである。これらは、アレイ上で予め決められた位置に特定のオリゴヌクレオチドプローブを含む。予め決められた位置は、各々プローブの複数分子を含むかもしれないが、その予め決められた位置内の各分子は同一の配列を持つ。そのようなあらかじめ決められた位置は、特徴と呼ばれる。例えば、単一の担体上に2、10、100、1000から10,000、100,000または400,000個までのこのような特徴があるかもしれない。プローブが取り付けられる担体または面積は、約1平方センチメートル程度である。表1〜3の遺伝子に対応するプローブ、また上記の関連出願からのプローブは、単一のまたは多重担体に取り付けることができる。例えば、それらのプローブは、単一のチップまたは1つのチップセットを構成する多重チップに取り付けることができる。
【0082】
発現モニター用のオリゴヌクレオチドプローブアレイは、当該技術で知られているいかなる手法によっても製作し、かつ用いることができる(例えば、Lockhartら、Nat. Biotechnol.(1996) 14,1675−1680;McGallら、Proc. Nat. Acad. Sci. USA(1996)93, 13555−13460)。そのようなプローブは、表1〜3に記載した2個若しくはそれ以上の遺伝子に相補的である、またはクイブリダイズする少なくとも2個以上のオリゴヌクレオチドを含む。例えば、そのようなアレイは、本明細書に記載される少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、50、70、100個若しくはそれ以上の遺伝子に相補的であるか、またはハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含んでよい。好ましいアレイは、表1〜3にリストされた遺伝子の全てまたはほぼ全て、或いは個別的には、表3A〜3Sの遺伝子セットを含む。好ましい実施の形態では、単一の担体基質(例えば、チップ)上に表1〜3のいずれか1個または全てにある遺伝子の全て、またはほぼ全てを検出するためのオリゴヌクレオチドを含むように、アレイが構築される。
【0083】
表1〜3の発現マーカー遺伝子の配列は、公共のデータベースにある。表1は、配列の各々についてGenBank登録番号(www.ncbi.nlm.nih.gov/を参照)を提供する。本出願の出願日現在でのGenBank中の遺伝子の配列は、明示により本明細書にそれらの全体が関連付けにより組み入れられる、さらに関連する配列、例えば、異なる長さの同一遺伝子からの配列、変異体配列、多形配列、該遺伝子のゲノム配列および異なる種(適当な場合、ヒトに対応)からの遺伝子および関連配列も同様である。これらの配列は、本発明の方法に用いることができるか、或いは本発明のプローブまたはアレイを作製するのに用いることができる。ある実施の形態では、以前から毒性反応に関連する遺伝子またはフラグメントに一致する表1〜3中の遺伝子は、その表から除外してよい。
【0084】
上述のように、表1〜3に開示されたGenBank登録番号の配列に加えて、天然に起こっている変異体または多形の配列のような配列を本発明の方法および組成で使用してもよい。例えば、表1〜3に開示された1つの遺伝子の様々なアレレ体または相同体の発現レベルをアッセイできる。表1〜3にリストされている1つの遺伝子の機能的活性を変えない、いかなるおよび全てのヌクレオチド変異、本明細書に開示された遺伝子の天然に起こっているアレレ変異体を含むが、それらを本発明の方法に用いて、本発明の組成(例えば、アレイ)を作ることができる。
【0085】
上記の遺伝子の配列に基づくプローブは、一般に利用できるいかなる方法によっても調製できる。組織若しくは細胞試料をスクリーニングまたはアッセイするためのオリゴヌクレオチドプローブは、好ましくは、適当な、相補的遺伝子または転写物のみに特異的にハイブリダイズするのに十分な長さである。典型的には、オリゴヌクレオチドプローブが、長さで少なくとも10、12、14、16、18、20若しくは25個のヌクレオチドである。ある場合には、少なくとも30、40若しくは50個のヌクレオチドのより長いプローブが望ましいこともある。
【0086】
本明細書で使用する場合、表1〜3に記載された遺伝子の1個若しくはそれ以上に相補的であるオリゴヌクレオチド配列とは、ストリンジェントな条件下、該遺伝子のヌクレオチド配列の少なくとも一部にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドを指す。そのようなハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドは一般的に、該遺伝子にヌクレオチドレベルで、少なくとも約75%の配列一致性、好ましくは約80%または85%の配列一致性、また好ましくは該遺伝子に約90%または95%以上の配列一致性を示すことになる。
【0087】
「実質的に結合する」とは、プローブ核酸と標的核酸間の相補的なハイブリダイゼーションを指し、標的ポリヌクレオチド配列の望ましい検出を達成するためにハイブリダイゼーション培地のストリンジェンシーを減らすことによって、適応することができる重要でないミスマッチを包含する。
【0088】
「バックグランド」または「バックグランドシグナル強度」という用語は、ラベルされた標的核酸とオリゴヌクレオチドアレイ(例えば、オリゴヌクレオチドプローブ、対照プローブ、アレイ基質等)の成分との間で、非特異的な結合、またはその他の相互作用から生じるハイブリダイゼーションシグナルを指す。バックグランドシグナルも、また、アレイ成分それら自身の内部けい光によって生成されるかもしれない。単一のバックグランドシグナルは、全アレイのために計算することができる、或いは、異なるバックグランドシグナルを各標的核酸のために計算してもよい。好ましい実施の形態では、バックグランドはアレイ中のプローブの最も低い5%〜10%に対する平均ハイブリダイゼーションシグナル強度として計算されるか、或いは、異なるバックグランドシグナルを各標的遺伝子のため計算する場合、各遺伝子のプローブの最も低い5%〜10%に対する平均ハイブリダイゼーションシグナル強度として計算される。当然ながら、当業者は、特定の遺伝子へのプローブがよくハイブリダイズして、標的配列に特異的に結合しているようにみえる場合は、それらをバックグランドシグナル計算に使用してはならないと理解するであろう。別法として、試料中に見出されるいかなる配列(例えば、反対方向の核酸に、或いは試料が哺乳類の核酸であるとき、バクテリア遺伝子のような試料中に見出されない遺伝子に指向されているプローブ)にも相補的でないプローブへのハイブリダイゼーションによって生成されるハイブリダイゼーションシグナル強度として計算してもよい。また、バックグランドは、全くプローブを欠くアレイの領域によって発生される平均シグナル強度として計算されることもできる。
【0089】
「特異的にハイブリダイズしている」という表現は、配列が複雑な混合物(トータル細胞DNAまたはRNA)に存在するとき、ストリンジェントな条件下、ある特定のヌクレオチド配列または配列類に実質的に、またはそれらだけに、ある分子が結合、デュプレキシングまたはハイブリダイズすることを指す。
【0090】
本発明のアッセイおよび方法は、入手可能な形態を利用して、同時に少なくとも100個、好ましくは約1000個、より好ましくは約10,000個、最も好ましくは約1,000,000個の異なる核酸ハイブリダイゼーションをスクリーンできる。
【0091】
本明細書で使用する場合、「プローブ」は、1つ以上のタイプの化学結合を通して、通常相補的な塩基の対合(通常、水素結合形成)を通して、相補配列の標的核酸に結合することができる核酸として定義される。本明細書で使用する場合、プローブは天然型(すなわち、A、G、U、CまたはT)または修飾塩基(7−デアザグアノシン、イノシン等)を含む。加えて、それがハイブリダイゼーションを妨げない限り、プローブ中の塩基は、ホスホジエステル結合以外の結合でつながれていてもよい。このように、プローブは、成分塩基がホスホジエステル結合よりむしろペプチド結合でつながれているペプチド核酸であってもよい。
【0092】
「完全なマッチプローブ」という用語は、特定の標的配列に、完全に相補的である配列を持つプローブを指す。試験プローブは、一般に標的配列の部分(副配列)に対して完全に相補的である。完全なマッチ(PM)プローブは、「試験プローブ」、「標準(正規)対照」プローブ、発現レベル対照プローブなどあり得る。しかしながら、完全なマッチ対照または完全なマッチプローブは、「ミスマッチ対照」または「ミスマッチプローブ」から区別される。
【0093】
「ミスマッチ対照」または「ミスマッチプローブ」という用語は、その配列が特定の標的配列に完全には相補的でないように故意に選ばれるプローブを指す。高密度アレイ中の各ミスマッチ(MM)対照に対して、同じ特定の標的配列に、完全に相補的である対応する完全なマッチ(PM)プローブが典型的には、存在する。そのミスマッチは、1つ以上の塩基を含むかもしれない。
【0094】
ミスマッチは、ミスマッチプローブでどこにでも位置するかもしれないが、末端ミスマッチはより望ましくない。なぜなら、末端ミスマッチは標的配列のハイブリダイゼーションを防ぎそうにないからである。特に好ましい実施の形態では、ミスマッチは、試験ハイブリダイゼーション条件下、そのミスマッチが最も標的配列との二重ラセンを不安定にしそうな、プローブの中央またはその近くに位置する。
【0095】
「ストリンジェント条件」という用語は、プローブがその標的副配列にハイブリダイズするが、他の配列へは実体のないハイブリダイゼーションだけか、または違いが確認される程度に他の配列にハイブリダイズする条件を指す。ストリンジェントな条件は、配列に依存しており、異なる状況において異なることになる。より長い配列は、より高温で特異的にハイブリダイズする。通常、ストリンジェントな条件は、定められたイオン強度とpHで特異的配列の熱融解点(Tm)より約5℃低く選ばれる。
【0096】
典型的に、ストリンジェントな条件は、その塩濃度が少なくともpH7.0〜8.3での0.01〜1.0MのNa+イオン濃度(または他の塩)であり、そして、温度が少なくとも短いプローブ(例えば、10〜50個のヌクレオチド)用には約30℃であるものであろう。ストリンジェントな条件は、ホルムアミドのような不安定化剤の添加で達成することもできる。
【0097】
「配列一致性のパーセント」または「配列一致性」は、比較ウィンドウまたはスパンにまたがって、2つの最適に整列した配列または副配列を比較することによって決定されるが、そこで比較ウィンドウ中のポリヌクレオチド配列の部分が、該2つの配列の最適な整列のための基準配列(それは、付加または欠失を含まない)と比較して、随意に付加若しくは欠失(すなわち、ギャプ)を含むかもしれない。同一のサブユニット(例えば、核酸塩基またはアミノ酸残基)が両方の配列で起こる位置の数を決定し、マッチした位置の数をだす、マッチした位置の数を比較ウィンドウ中にある位置の全数で割り、そしてその結果に100を乗じて、配列一致性のパーセントを出すことにより、前記パーセントを計算する。GAPまたはBESTFITプログラム(下記参照)使用して計算したとき、配列一致性パーセントは、デフォルトギップの加重値を用いて計算する。
【0098】
プローブ設計
配列設計の莫大な数が本発明の実施に適切であることを当業者は理解するであろう。高密度アレイは、一般的に興味ある配列に特異的にハイブリダイズする数多くの試験プローブを含む。プローブは、表中および付随する代表的な配列表で同定されている遺伝子のいかなる領域から作製してもよい。その表中の遺伝子参照がESTである例では、プローブはその配列から、または配列データベース(例えば、本明細書に記載されたもの)のどれかで入手可能であろう、対応する全長転写物の他の領域から設計されてもよい。与えられた遺伝子または遺伝子類のためのプローブを作製する方法については、WO99/32660を参照。それに加えて、利用できるソフトウェアならなんでも用いて、特定のプローブ配列を作成することができるが、これは例えば、Molecular Biology Insights, オリンパス光学工業(株)およびBiosoft Internationalから入手可能なソフトウェアを含む。好ましい実施の形態では、そのアレイはまた、1個若しくはそれ以上の対照プローブを含む。
【0099】
本発明の高密度アレイチップは、「試験プローブ」を含む。その試験プローブは、長さで約5〜約50個、または約7〜約50個のヌクレオチド、より好ましくは約10〜約40個のヌクレオチド、そして、最も好ましくは約15〜約35個のヌクレオチドの範囲にあるオリゴヌクレオチドであってもよい。他の特に好ましい実施の形態では、プローブが長さで20個または25個のヌクレオチドである。好ましいもう一つの実施の形態では、試験プローブが二本鎖または一本鎖DNA配列である。DNA配列は、自然源から単離されるか、クローンされるか、或いはネイティブな核酸をテンプレートに使用して、増幅される。これらのプローブは、その発現を検出するように設計した遺伝子の特定の副配列に相補的な配列を有する。このように、前記試験プローブは、それが検出するはずである標的核酸に、特異的にハイブリダイズすることができる。
【0100】
興味ある標的核酸(核酸類)を結合する試験プローブに加えて、高密度アレイは、数多くの対照プローブを含むことができる。その対照プローブは、ここで1)標準対照、2)発現レベル対照、そして3)ミスマッチ対照と呼ばれる3つのカテゴリーに分類されるかもしれない。
【0101】
標準対照は、ラベルされた参照オリゴヌクレオチド、またはスクリーンされる核酸試料に加えられた他の核酸配列に相補的であるオリゴヌクレオチド、または他の核酸配列に相補的である他の核酸プローブである。ハイブリダイゼーション後、標準対照から得られるシグナルは、ハイブリダイゼーション条件の変化、ラベル強度、「読む効率」および完全ハイブリダイゼーションのシグナルをアレイ間で変化させる他の因子のための対照を提供する。好ましい実施の形態において、アレイ中全ての他のプローブから読まれるシグナル(例えば、蛍光強度)は、対照プローブからのシグナル(例えば蛍光強度)によって割られ、かくして、測定を標準化(正規化)している。
【0102】
実質的に、いかなるプローブでも、標準対照として役に立つかもしれない。しかしながら、ハイブリダイゼーション効率は、塩基組成およびプローブ長さとともに変化すると認められている。好ましい標準プローブは、アレイに存在する他のプローブの平均長を反映するように選ばれるが、それらはある範囲の長さをカバーするように選ばれることができる。標準対照も、またアレイ中の他のプローブの塩基組成(平均値)を反映するように選ばれ得るが、好ましい実施の形態では、1個か、数個のみのプローブを使用し、それらはよくハイブリダイズし(すなわち、二次構造でない)、そしていかなる標的特異的プローブにもマッチしないように選択される。
【0103】
発現レベル対照は、生物学的試料中の構成的に発現した遺伝子に特異的にハイブリダイズするプローブである。実質的に、構成的に発現した遺伝子はどれも、発現レベル対照に対して適当な標的を提供する。一般的に、発現レベル対照プローブは、アクチン遺伝子、トランスフェリンレセプター遺伝子、GAPDH遺伝子などを含むがこれらに限らない、構成的に発現した遺伝子「家事遺伝子(housekeeping gene)」の副配列に相補的な配列を有する。
【0104】
標的遺伝子に対するプローブ、発現レベル対照、または標準対照として、ミスマッチ対照が提供される。ミスマッチ対照は、1個以上のミスマッチした塩基の存在を除いて、対応する試験プローブ若しくは対照プローブと同一なオリゴヌクレオチドプローブまたは他の核酸プローブである。ミスマッチ塩基とは、そのプローブがさもなければ特異的にハイブリダイズするであろう標的配列中の対応する塩基に相補的でないように、選ばれる塩基である。適切なハイブリダイゼーション条件下(例えば、ストリンジェントな条件)、試験プローブまたは対照プローブがその標的配列にハイブリダイズすると期待されるが、ミスマッチプローブはハイブリダイズしないであろう(または、かなり少ない程度でしかハイブリダイズしないであろう)ように、1個以上のミスマッチが選択される。好ましいミスマッチプローブは、中央ミスマッチを含む。このように、例えばプローブが20merである場合、対応するミスマッチプローブは、6位から14位(中央ミスマッチ)のどの位置でも単一の塩基ミスマッチ(例えば、G、CまたはTをAのかわりとする)を除いて、同一の配列を持つことになる。
【0105】
かくして、ミスマッチプローブは、試料中でそのプローブが指向する標的以外の核酸に非特異的に結合するか、またはクロスハイブリダイゼーションするための対照を提供する。例えば、標的が存在するならば、完全なマッチプローブはミスマッチプローブより絶えず明るいはずである。それに加えて、全ての中央ミスマッチが存在するならば、ミスマッチプローブを使用して、突然変異(例えば、添付の表1〜3の遺伝子の突然変異)を検出することができる。完全なマッチとミスマッチプローブの間の強度の違いは、ハイブリダイズする材料の濃度の良い尺度を提供する。
【0106】
核酸試料
細胞若しくは組織試料は、インビトロまたはインビボで薬剤にさらされる。培養細胞または組織が使用されるとき、適当な哺乳動物の肝臓エキスを、試験薬剤と共に加え、毒性を示すのに生体内変化を要するかもしれない薬剤を評価してもよい。好ましい様式では、すでに薬物代謝酵素の適切な補体を発現する動物またはヒト肝細胞の一次単離株が、哺乳動物の肝臓エキスの添加なしで、試験薬剤にさらされる。
【0107】
本発明によってアッセイされる遺伝子は、典型的にはmRNAまたは逆転写されたmRNAの形態である。その遺伝子は、クローン化されてもよいし、されなくてもよい。遺伝子は、増幅されてもよいし、されなくてもよい。クローニングや増幅は、集団内での遺伝子の表現にバイアスをかけるようには見えない。しかし、いくつかのアッセイでは、より少ないプロセッシングステップで使用できるので、材料としてpolyA+RNAを用いることが好ましいかもしれない。
【0108】
当業者にとって明らかであるように、本発明の方法およびアッセイにおいて使われる核酸試料は、どのような利用できる方法またはプロセスによって調製されてもよい。トータルmRNAを単離する方法は、当業者に周知である。例えば、核酸の単離と精製の方法は、「生化学と分子生物学における研究室手法:核酸プローブとのハイブリダイゼーション、1部、理論と核酸調製、P. Tijssen、編、Elsevier, N.Y.(1993)」の第3章に詳しく記載されている。そのような試料は、RNA試料を含むが、興味ある細胞若しくは組織から分離されるmRNA試料から合成されるcDNAをも含む。また、そのような試料は、cDNAから増幅されるDNA、およびその増幅されたDNAから転写されるRNAをも含む。当業者は、ホモゲネートが使われる前に、ホモゲネートに存在するRNアーゼを阻害または破壊することが、望ましいと認めるだろう。
【0109】
生物学的試料は、どんな生物並びにインビトロで育てられた細胞(例えば、細胞株および組織培養細胞)からのいかなる生体組織、液体または細胞のものでもよい。しばしば、その試料は、化合物、薬剤、医薬、薬学的組成物、潜在的な環境汚染物質または他の組成にさらされた組織若しくは細胞試料である。ある様式では、試料が患者に由来する試料である「臨床試料」であるだろう。典型的な臨床試料には、唾液、血液、血液細胞(例えば、白血球)、組織若しくは細針バイオプシーの試料、尿、腹膜液や肋膜液、或いはそれらからの細胞が含まれるが、これらには限定されない。
【0110】
生物学的試料は、組織学目的で取られた凍結切片またはホルマリン固定された切片のような、組織の切断片をも含むかもしれない。
【0111】
高密度アレイの作成
合成のステップの最小数で、オリゴヌクレオチドの高密度アレイを作成する方法は、知られている。オリゴヌクレオチド類似体のアレイは、様々な方法で単一または多重の固体基質上に合成することができる、これらは限定はされないが光指向された化学的カップリングおよび機械的に指向されたカップリングを含む。Pirrung(米国特許第5,143,854号)を参照。
【0112】
手短に言えば、ガラス表面上でのオリゴヌクレオチドアレイの光指向されたコンビナトリアル合成は、自動化されたホスホアミダイト化学とチップマスキング手法を用いて進む。1つの特定的実施において、ガラス表面を、官能基を含むシラン試薬(例えば、光反応性保護基によってブロックされているヒドロキシル若しくはアミン基)で誘導体化する。光リソグラフ性マスクを通しての光化学分解を使用して、導入する5’光保護されたヌクレオシドホスホアミダイトと化学反応する準備ができている官能基を選択的に露出する。そのホスホアミダイトは、照射された(かくして、光反応性ブロック基の除去によってさらされる)部位のみと反応する。このように、ホスホアミダイトは前のステップで選択的にさらされるそれらの領域にのみ付加する。所望の配列アレイが固体表面上に合成されるまで、これらのステップが繰り返される。アレイ上の異なる位置での異なるオリゴヌクレオチド類似体のコンビナトリアル合成は、合成の間の照射パターンとカップリング試薬の添加の順序によって決定される。
【0113】
前述のことに加えて、単一基質上でオリゴヌクレオチドのアレイを生成するために使用できる追加の方法は、PCT公開WO93/09668号とWO01/23614号に記載されている。高密度核酸アレイは、予め調製した、または天然の核酸を予め決められた位置に置くことによって組み立てることもできる。合成または天然の核酸は、光指向ターゲティングおよびオリゴヌクレオチド指向ターゲティングによって、基質の特定位置に置かれる。別の実施の形態は、区域から区域に移動し、核酸を特定スポットに置くディスペンサーを使用する。
【0114】
ハイブリダイゼーション
核酸ハイブリダイゼーションは、単にプローブとその相補的な標的が相補的な塩基の対合を通して、安定した複合型二重ラセンを形成することができる条件下、そのプローブと標的核酸を接触させることを含む。WO99/32660を参照。その後、複合型二重ラセンを形成しない核酸は、洗い流されて、ハイブリダイズした核酸が検出されるのにまかせる(典型的には、検出可能なラベルの検出を通して)。核酸を含む緩衝液の温度を上昇させるか、またはその塩濃縮を減少させることによって、該核酸が変性すると一般に認められている。低いストリンジェンシー条件下では(例えば、低温および/または高濃度塩)、複合型二重ラセン(例えば、DNA:DNA、RNA:RNA或いはRNA:DNA)が、アニールした配列が完全に相補的でない場合でも形成される。このように、ハイブリダイゼーションの特異性は、低いストリンジェンシーで減少する。逆に、より高いストリンジェンシー(例えば、より高い温度および/または低濃度塩)では、うまくゆくハイブリダイゼーションは、より少ないミスマッチしか許容しない。ハイブリダイゼーション条件を選択して、どのような程度のストリンジェンシーをも提供できると当業者は認識するであろう。
【0115】
好ましい実施の形態では、ハイブリダイゼーションを確実にするために低いストリンジェンシー(この場合、37℃で6×SSPET(0.005% Triton X−100))で、ハイブリダイゼーションを実行し、それから、ミスマッチした複合型二重ラセンを除去するためにより高いストリンジェンシー(例えば、37℃でI×SSPET)で、続く洗浄を実行する。続く洗浄はハイブリダイゼーション特異性の要求されるレベルが得られるまで、ストリンジェンシーをより高くに増加しながら(例えば、37℃から50℃で0.25×SSPETまで低く落として)、実行されるかもしれない。ストリンジェンシーは、ホルムアミドのような薬剤の添加によっても増加することができる。存在することがありえる様々な対照(例えば、発現レベル対照、標準対照、ミスマッチ対照など)へのハイブリダイゼーションと試験プローブへのハイブリダイゼーションを比較することによって、ハイブリダイゼーション特異性を評価できる。
【0116】
一般に、ハイブリダイゼーション特異性(ストリンジェンシー)とシグナル強度の間には兼ね合いがある。このように、好ましい実施の形態では、一貫した結果を生む、そして、バックグランド強度のおよそ10%を超えるシグナル強度を与える最も高いストリンジェンシーで、洗浄を実行する。このように、好ましい実施の形態では、ハイブリダイズしたアレイは、継続してより高いストリンジェンシー溶液で洗浄され、各洗浄の間に読み取られる。このようにでてきたデータセットの解析により、それ以上ではハイブリダイゼーションパターンが認めうるほどに変化せず、適切なシグナルを興味ある特定のオリゴヌクレオチドプローブのために適切なシグナルを提供する洗浄ストリンジェンシーが明らかとなる。
【0117】
シグナル検出
ハイブリダイズした核酸は、一般に試料核酸に付けられた1つ以上のラベルを検出することによって検出される。ラベルは、当業者に周知である数多い手段のどれによって取り込込んでもよい。WO99/32660を参照。
【0118】
データベース
本発明には、配列情報(例えば、表1〜3の遺伝子)と同様に、様々な標準的毒素にさらされた組織若しくは細胞からの遺伝子発現情報(本明細書に記載のもの、表3A〜3Sを参照)を含んでいる関連あるデータベースが含まれる。データベースは、与えられた配列または組織試料に関連する情報をも含むかもしれないが、これは例えば、配列情報と関連する遺伝子についての記載的な情報(表1を参照)、或いは組織試料の臨床状態またはその試料が由来する動物に関する記載的な情報である。前記データベースは、例えば配列データベースと遺伝子発現データベースというような異なる部分を含むようになっているかもしれない。そのようなデータベースの構成と構築のための方法は、広く利用できる。例えば、その全体が関連付けにより本明細書に取り入れられている、米国特許5,953,727号を参照されたい。
【0119】
本発明のデータベースは、外部のデータベースとリンクされていてもよいが、これらは例えば、GenBank(www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez.index.html)、KEGG(www.genome.ad.jp/kegg)、SPAD(www.grt.kyushu−u.ac.jp/spad/index.html)、HUGO(www.gene.ucl.ac.uk/hugo)、Swiss−Prot(www.expasy.ch.sprot)、Prosite(www.expasy.ch/tools/scnpsit1.html)、OMIM(www.ncbi.nlm.nih.gov/omim)、GDB(www.gdb.org)およびGeneCard(bioinformatics.weizmann.ac.il/cards)である。好ましい実施の形態では、表1〜3に記載されているように、外部データベースはGenBankおよびthe National Center for Biotechnology Information(NCBI) (www.ncbi.nlm.nih.gov)によって維持されているそれに関連するデータベースである。
【0120】
配列情報、遺伝子発現情報およびデータベース中のその他の情報または入力として提供された他の情報の間の必要な比較を実行するためには、適当なコンピュータープラットホームならどれを用いてもよい。例えば、多数のコンピューターワークステーションが様々な製造業者から入手可能であり、そのようなものは シリコングラフィックス(Silicon Graphics)から入手可能ものを有する。クライアント/サーバー環境、データベースサーバーおよびネットワークも、本発明のデータベースのために広く利用できて、適当なプラットホームである。
【0121】
本発明のデータベースを用いて、とりわけ、ユーザーがその中で与えられた遺伝子が発現する細胞基型または組織を決定することを可能にする、電気的なノーザンを生成し、そして特定の組織若しくは細胞中の与えられた遺伝子の存在率および発現レベルを決定することが可能となる。
【0122】
組織若しくは細胞において表1〜3の遺伝子の1個若しくはそれ以上からなる遺伝子セットの発現レベルを同定する情報であって、1つの試験薬剤にさらされた細胞若しくは組織中で表1〜3中の少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを、データベース中のその遺伝子の発現レベルと比較するステップを含む、ものを提供するために、本発明のデータベースを用いることができる。そのような方法を用いて、前記試験薬剤にさらされた組織若しくは細胞試料から、表1〜3の遺伝子若しくは遺伝子類の発現のレベルを、対照試料或いは標準毒素または肝臓毒(例えば、本明細書に記載されたもの)にさらされた細胞試料と比較することによって、与えられた化合物の毒性ポテンシャルを予測するために、そのような方法を用いることができる。また、そのような方法は、下記のように薬または薬剤スクリーニングアッセイでも使われるかもしれない。
【0123】
キット
本発明は、さらに異なる組合せで、高密度のオリゴヌクレオチドアレイ、アレイと使用する試薬、表の遺伝子によってコードされるタンパク質試薬、シグナル検出とアレイ−プロセッシング機器、遺伝子発現データベースおよび上記の解析とデータベース管理ソフトウェアを組合せたキットを含む。例えば、前記キットを用いて、試験化合物の毒性反応を予測し、モデリングし、肝臓の病気状態の進行をモニターし、新しい薬標的としての見込みを示す遺伝子を同定し、そして上記で議論したように既知および新しく設計された薬をスクリーニングすることができる。
【0124】
前記キットとパッケージされるデータベースは、ヒトまたは実験動物遺伝子および遺伝子フラグメント(表1〜3の遺伝子に対応する)からの発現パターンの編集体である。特に、データベースソフトウェアとパッケージされた情報には、試験薬剤によって誘発される表1〜3の遺伝子の発現レベルを表3A〜3Sで提示される発現レベルと比較することによって、試験薬剤の毒性を予測するために使用することができる、表1〜3の発現結果が含まれる。別の様式では、データベースとソフトウェア情報は、例えば、ウェブサイトのようにアドレスがキットとパッケージされた、離れた電子フォーマットで提供されるかもしれない。
【0125】
前記キットは、製薬業界で使用されるが、そこでは医薬開発と関連する高いコストのために早期の医薬試験への要求が強いが、バイオインフォマティクス、特に遺伝子発現情報がまだ欠落している。これらのキットは、細胞培養と実験動物を使用する伝統的な新薬スクリーニングに伴う時間と危険性を削減するであろう。予め集められた患者集団、薬理学的遺伝学試験の大規模な医薬スクリーニングの結果も、またより大きい効能とより少ない副作用を備える薬を選ぶために応用できる。そのような大規模試験を実施するための施設を持たないより規模の小さいバイオテクノロジー会社および研究機関によっても前記キットは、使用されるであろう。
【0126】
マイクロアレイと使用するように設計されたデータベースとソフトウェアは、Balabanらの米国特許第6,229,911号(少数または多数のマイクロアレイから収集され、表1〜3にインデックスされたように、保存されている情報を管理するためのコンピューターで実行される方法)および第6,185,561号(遺伝子発現レベルデータを集め、追加の計数値を加え、そしてそのデータをフォーマットし直して様々な質問に対する答えを出すデータ採掘能力を有する、コンピューターベースの方法)で議論されている。Cheeらの米国特許第5,974,164号には、参照配列にハイブリダイズする野生型および突然変異型配列間のプローブ蛍光強度の差異に基づいて、核酸配列中の突然変異を同定するためのソフトウェアベースの方法が開示されている。
【0127】
さらに説明することなく、当業者は前の記載と以下の例示的な実施例を使って、本発明の化合物を作りそして利用することができると考えられる。したがって、以下の実施例は、本発明の好適な実施の形態を特定的に指摘するものであり、開示の残りをいかようにも制限するもとは解釈されるべきではない。
【実施例】
【0128】
(実施例1) 毒性マーカーの同定
肝臓毒であるアミトリプチリン、ANIT、アセトアミノフェン、四塩化炭素、CPA、ジクロフェナク、エストラジオール、インドメサシン、バルプロエート、WY−14643および対照組成物を、当該技術分野で以前に記載され、そして上記で議論した優先権出願に記載されているような投与希釈剤、プロトコルや投与計画を用いて、様々な時間点において、SD系雄ラットに投与した。
【0129】
投与後、投与された動物を観察し、そして、組織を以下に記載したように収集した。
【0130】
動物の観察
1.臨床観察 毎日2回、死亡率と瀕死性をチェックする。ケージ側面観察(皮膚や毛、目と粘膜、呼吸系、循環器系、自律および中心神経系、体性運動パターンと挙動パターン)。震え、痙攣、唾液分泌、下痢、無気力、昏睡または異常な挙動若しくは外見を含む、毒性の可能性のある兆候が起こったときに、発症の時間、程度および持続時間を記録した。
2.身体検査 ランダム化の前、最初の処置前に、そして犠牲(屠殺)の前に。
3.体重 ランダム化の前、最初の処置前に、そして犠牲の前に。
臨床病理学
1.頻度 検死の前に。
2.動物の数 全ての生き残っている動物。
3.出血手順 70%CO2/30%O2麻酔下にあるあいだに、眼窩副鼻洞に穴を開けて血液を得た。
4.血液試料の採取 血液学パラメーターの評価のために、約0.5mlの血液をEDTAチューブに集めた。臨床化学分析のために、約1mlの血液を血清セパレーターチューブに集めた。試験化合物/代謝産物の推定のために、約200uLの血漿を取得して、−80℃で凍結した。追加の2 mLの血液を15ml円錐状ポリプロピレン・バイアルに収集して、直ちに3 mLのTrizolを加えた。内容物を直ぐにボルテックスおよび繰り返し逆さまにして混合した。それらチューブを液体窒素中で凍結して、−80℃で保存した。
【0131】
終結手順
終結犠牲 最初の投与から、約1時間後、3時間後、6時間後、24時間後、48時間後および5〜7日後、ラットを計量し、身体検査して、断頭によって犠牲にし、放血させた。犠牲の約5分以内に動物を検死した。頭蓋帽を開くのに使用した骨切断機を除いては、別々の滅菌した、使い捨ての機器を各々の動物のために使用した。その骨切断機は、動物と動物の間に殺菌剤溶液に浸した。委員会に認証された病理学者に承認された手順に従って、各動物の検死を実施した。終結犠牲まで生き残っていない動物は、検死(もし瀕死であるなら、二酸化炭素仮死状態による安楽死に続いて)することなく捨てられた。瀕死または死んでいるのが見つかった動物の死のおおよその時間を記録した。
【0132】
検死解剖手順
新しくそして滅菌した使い捨て機器を使用して組織を収集した。組織またはバイアルを取り扱うときは、手袋をいつでも着用した。全ての組織は、動物の死のおよそ5分以内に回収して、凍結した。肝臓切片および腎臓は、動物の死のおよそ3〜5分以内に凍結した。安楽死の時間、肝臓切片および腎臓の凍結の中間の時間点、および検死完了の時間点を記録した。組織を約−80℃で保存するか、或いは10%中性緩衝ホルマリンに保存した。
【0133】
組織収集およびプロセッシング
肝臓
1.右の中心葉(液体窒素で瞬時に凍結し、そして−80℃で保存した)。
2.左の中心葉(10%中性緩衝ホルマリン(NBF)に保存し、全体のおよび顕微鏡での病理検査のために評価した)。
3.左の横の葉(液体窒素で瞬時に凍結し、そして−80℃で保存した)。
心臓
2つの心房の部分および2つの心室の部分を含んでいる矢状方向の横断面を10%NBFに保存した。残っている心臓を液体窒素で凍結して、−80℃で保存した。
腎臓(両方)
1.左: 半分に切開した。半分を10%NBFに保存して、そして残っている半分を液体窒素中で凍結して、−80℃で保存した。
2.右: 半分に切開した。半分を10%NBFに保存して、そして残っている半分を液体窒素中で凍結して、−80℃で保存した。
精巣(両方)
各精巣の矢状方向の横断面を10%NBFに保存した。残っている精巣を液体窒素中、一緒に凍結して、−80℃で保存した。
脳(全部)
大脳半球および間脳の横断面を10%NBFに保存し、そして脳の残りを液体窒素中で凍結して−80℃で保存した。
【0134】
マイクロアレイ試料の調製は、アフイメトリックスジーンチップ発現解析マニュアル(Affymetrix GeneChip Expression Analysis Manual)に記載されているプロトコルに従って、小さい修正で実施した。凍結した組織は、Spex Certiprep 6800 Freezer Millを使用して、粉末へすりつぶした。トータルRNAは、製造業者のプロトコルを利用してTrizol(GibcoBRL)で抽出した。各試料用のトータルRNA収率は、300mgの組織重量あたり200〜500μgであった。Oligotex mRNA Midiキット(Qiagen)を使用してmRNAを単離し、エタノール沈殿を続けた。SuperScript Choice System(GibcoBRL)を使用して、mRNAから二本鎖cDNAを生成させた。第1鎖cDNA合成をT7−(dT24)オリゴヌクレオチドでプライムした。そのcDNAをフェノール−クロロホルムで抽出して、終濃度1μg/mlにエタノール沈殿した。2μgのcDNAからAmbionT7 MegaScript in vitro Transcription Kitを使用してcRNAを合成した。
【0135】
cRNAをビオチンラベルするために、ヌクレオチドBio−11−CTPとBio16−UTP(Enzo Diagnostics)を反応液に加えた。6時間37℃でインキュベーションに続いて、不純物はRneasy Mini kitプロトコル(Qiagen)に従って、ラベルされたcRNAから取り除いた。cRNAを94℃で35分間、フラグメント化した(200mMTris−acetate、pH 8.1、500mm KOAc、150mm MgOAcからなるフラグメンテーション緩衝液)。アフィメトリックスプロトコルに従って、55μgのフラグメント化したcRNAを、45℃のハイブリダイゼーション・オーブン中で、60rpmで24時間セットしたアフィメトリックスラットアレイ上にハイブリダイゼーションブリダイズさせた。チップを洗浄して、アフイメトリックス流体工学ステーション中、ストレプトアビジンフィコエリトリン(SAPE)(Molecular Probe)で染色した。染色を増幅するために、抗ストレプトアビジン ビオチン化抗体(Vector Laboratories)染色ステップを間に挟んで、SAPE溶液を2回加えた。プローブアレイへのハイブリダイゼーションは、蛍光測定スキャンニング(Hewlett Packard Gene Array Scanner)によって検出した。データは、Affymetrix GeneChipバージョン3.0およびExpression Data Minig(EDMT)ソフトウェア(バージョン1.0)、GeneExpress2000およびS−Plusを使用して解析した。
【0136】
表1には、名を挙げられた毒素にさらされると示差的に発現される遺伝子、それらの該当するGenBank登録番号や配列識別番号、それら遺伝子が機能する代謝経路の身元、知られているならば遺伝子名およびユニジーンクラスター名称が開示されている。比較コードは、各遺伝子が識別できる、様々な毒性または肝臓の病理学状態、また同様に各遺伝子が関連する個々の毒性タイプを表す。それらコードは、表2に定義されている。GLGC IDは、ジーンロジック(Gene Logic)の内部識別番号である。
【0137】
表2は、表1に使用した比較コードを定義する。
【0138】
表3A〜3Bは、実行された比較の各々について統計概要を開示している。各遺伝子は、そのジーンロジック識別番号によって確認され、そして表1で遺伝子名と代表的なSEQ ID番号(配列番号)に相互参照され得る。グループ平均(例えば、毒性グループ)は、その特定の比較においてアッセイされている試料で、様々なチップパラメーターに対して正規化された平均シグナル強度である。非グループ平均(例えば、非毒性グループ)は、その特定の比較においてアッセイされていない試料で、様々なチップパラメーターに対して正規化された平均シグナル強度である。それらの平均値は、対応する試料にわたって平均値化された、特定遺伝子の平均差値(AveDiff)から導かれる。各個々の平均差値は、特定のフラグメントのためにタイルされた多重プローブ対からの強度情報を積分することによって計算される。AveDiffを計算するのに使用する正規化アルゴリズムは、単一のチップ実験からの発現強度値が、小さいまたは大きい発現値が考慮されるかどうかに依存して、異なる分布を持つという観察に基づくものである。大部分はノイズであると仮定される、小さい値は、平均ゼロで近似的に正規分布されるが、一方より大きい値は、おおよそ対数正規分布に従う。すなわち、それらの対数が、ゼロ以外の若干の平均で正規分布される。
【0139】
正規化プロセスは、「非エキスプレッサー(expressors)」(小さい値)と「エキスプレッサー(expressors)」(大きい値)のために別々の換算係数を計算する。そのアルゴリズムへの入力は、予め正規化された平均差値であり、トリム平均値を100に等しくセットするためにすでに縮尺されている。アルゴリズムは、非エキスプレッサーから来ると仮定される、負値の標準偏差SDノイズを計算する。それから、それは1/SDノイズと比例する換算係数によって、2.0* SDノイズより小さい全ての負値と同様に全ての正値を乗ずる。
【0140】
2.0* SDノイズより大きい値は、エキスプレッサーから来ると仮定される。これらの値に対して、対数の標準偏差SD対数(シグナル)を計算する。次いでそれら対数に、1/SD対数(シグナル)に比例する、累乗した換算係数を乗ずる。結果として生じる値をそれからもう一つ換算係数、2.0* SDノイズの両側のスケールされていない値から正規化した値に不連続がないように選択されたものによって乗ずる。若干のAveDiff値は、核酸ハイブリダイゼーション実験に関係している一般的なノイズのための負であるかもしれない。GeneChipプラットホームでの負値に対応して、多くの結論がされ得るけれども、個々のフラグメントに対する負値のうらの意味を査定することは難しい。本発明者らの観察によって、負値が予測遺伝子セットの範囲内でときどき観察されるけれども、これらの値は測定がなされた全ての試料にわたって、非常に再生可能である真の生物学的現象を反映することが示される。この理由のために、負値を示すそれらの遺伝子が予測セットに含まれている。遺伝子発現測定の他のプラットホームが対応する遺伝子の負数を解決することができるかもしれない点に留意する必要がある。しかしながら、それらの遺伝子の各々の予想能力は、プラットホームを超えなければならない。各平均値には、その平均値に対する標準偏差が伴う。LDAは、試料に毒性があるかどうかを予測する各遺伝子の能力を評価する線形の判別分析である。それらLDAスコアは、以下のステップによって計算される。
【0141】
判別スコアの計算
Xiがグループ1試料、i=1・・・nにわたる、与えられた遺伝子のAveDiff値を表わすとする。
Yiがグループ2試料、i=1・・・tにわたる、与えられた遺伝子のAveDiff値を表わすとする。
【0142】
前記計算を次のように進める。
1.XiとYiに対する平均値と標準偏差を計算して、そして、これらをmX、mY、sX、sYと表示する。
2.全てのXiとYiに対して、関数f(z)=((1/sY)*exp(−.5*((z−mY)/sY)2))/(((1/sY)*exp(−.5*((z−mY)/sY)2))+((1/sX)*exp(−.5*((z−mX)/sX)2)))の数値を求める。
3.正しい予測(例えば、P)の数は、f(Yi)>.5であるYiの数プラスf(Xi)<.5であるXiである。
4.判別式スコアは、それからP/(n+t)である。
【0143】
線形判別解析は、試料を分類するのに、各遺伝子の個々の測定値と遺伝子の全ての組合せの計算された測定値の両方を使用する。各遺伝子については、加重値は毒性グループと非毒性グループの平均と標準偏差から導かれる。あらゆる遺伝子に加重値が乗ぜられ、そして、これらの値の合計が集合的な判別スコアをもたらす。この判別スコアは、それから毒性グループと非毒性グループの集合的な中心(重心)に対して比較される。これらの中心は、それぞれ毒性と非毒性全ての試料の平均値である。したがって、各遺伝子は、全体的な予測に貢献する。この貢献は、その遺伝子に対する毒性と非毒性試料の間の相対的な間隔が大きいならば、大きい正値または負値であり、相対的な間隔が小さいならば、小さい数値である加重値に依存している。各未知試料の判別スコアと中心値を使用して、その未知試料がどのグループに属しているかについて、0と1の間の確率を計算することができる。
【0144】
(実施例2) 一般的な毒性モデリング
PCAで各研究を個々に調べて、どの処置が観察され得る応答を有しているかを決定し、試料を毒性反応グループと非毒性反応反応グループにグループ分けするのに選択した。毒性反応状態と毒性非応答状態が自信をもって確立されたグループのみを一般的な毒性モデルを構築するのに含めた。
【0145】
一般的な毒性決定のために、2つの一般的なモデルを構築した。第1のモデルは、各遺伝子の発現パターンからの情報を個々に使用し、そしてそれから各遺伝子に対しての線形加重値を用いて、全ての情報を組合わせた。第2のタイプは、全ての発現情報を集合的に記述する直角のベクターを決定して、毒性を予測するためにこれらの合成ベクターを使用した。
【0146】
有毒および非毒性の試料を説明するために、500以上の線形判別モデルを作成した。各遺伝子の貢献を分散の均一分散と不等分散処理で計算することにより毒性、さらに遺伝子の間で相互の情報の包含と除外を決定するために、上位の10、25、50および100個の判別型遺伝子を使用した。データベースの範囲内での試料の予測は、大部分のモデルについて90%を上回った。それに加えて、最良のディスクリミネーターから始めて、反復なしで最悪のディスクリミネーターまで進み、2、5、10、25および50個の遺伝子を連続して使用してモデルを構築した。全ての判別型遺伝子および/またはESTは、少なくとも70%の判別能力を有していたが、それは以前に、ランダム化実験を通して有意であると決定した。遺伝子の組合せが個々の遺伝子より一般により良い予測能力を提供し、そして、遺伝子が多いほど、予測能力がよいことが分かった。また、最悪の50個の判別型遺伝子を組合わせることは、最良の単一遺伝子と比べてより良い予測を提供し、そして2個若しくはそれ以上の遺伝子の数多くの組合せは、最良の個々の遺伝子と比べてより良い予測を提供することも分かった。好ましい実施の形態は、50個若しくはそれ以上の遺伝子を含むけれども、遺伝子の多くのペアまたはより多くの組合わせが個々の遺伝子よりうまく働くことができる。選ばれたリストからの2個若しくはそれ以上の遺伝子の全ての組合わせを、毒性を予測するために使用することができる。これらの組合わせは、順序づけて、集団として、区別的に、または無作為なアプローチによる、対合によって選ぶことができた。さらに、未同定の遺伝子を本明細書に記載された遺伝子の個々または組合わせと一緒にして、予測能力を増加することができるだろう。しかしながら、本明細書に記載された遺伝子は、そのようなどんな未定の組合わせの予測能力のほとんどに貢献するかもしれない。
【0147】
使用した第2のアプローチは、米国仮出願60/_______に記載されている。このアプローチに従い、全527個の遺伝子および/またESTを使用して、15個の成分を用いたとき、94%を超える正確度で非毒性の試料からの毒性を予測した。最初の15個の成分を使うことは好ましいモデルを提供したけれども、この方法の他の変形版は、適切な予測能力を提供することができる。これらには、集団として、区別的に、または無作為なアプローチ或いはローディングの抽出を通しての成分の選択的な包含および順序づけて、集団として、区別的に、または無作為なアプローチでそれらを組合せることが含まれる。試料の分類を決定するためにロジスティック回帰でのこれらの複合変数を用いることは、線形判別解析、ニューラルネットワークまたはベイジアンネットワーク、或いは分類変数、または継続的な依存性および独立した変数に基づく回帰と分類の他の形態を用いて達成することができる。
【0148】
(実施例3) モデリング方法
上記のモデリング方法は、遺伝子の発現を組合せて、試料毒性を予測する、広いアプローチを提供する。1つの方法は、各変数を個々に用いて、それらに加重値を与える。他の方法は、合成尺度として変数を組合せ、そして新しい変数に組合せた後に加重値を加える。当業者は、単純な投票voting methodで加重値を提供しないか、集団として、区別的に、または無作為なアプローチを用いる監督された、或いは監督されなかった方法で加重値を決定する。遺伝子の全てまたは選ばれた組合わせを、分類のための未知試料と、順序づけた、集団として、または区別的に、監督されているか、監督されていないクラスターイングアルゴリズムと組合わせることができる。未知試料を分類するために相関行列のどんな形でも用いることができる。グループ分布と判別スコアの広がり単独で、当業者に個別遺伝子の判別能力を超えうる正確さをもって上記のモデルタイプの全てを作成することを可能にする十分な情報を提供できる。個別にまたはデータタイプを変換した後に組合わせて用いることができる方法のいくつかの例には、以下のものが含まれるが、これらには限定されない。すなわち、判別分析、多重判別分析、ロジスティック回帰、多重回帰分析、線形回帰分析、共同解析、正準相関、階層的なクラスタ解析、k−手段クラスタ解析、自己編成マップ、多次元尺度解析、構造方程式モデリング、サポートベクトルマシン決定境界、ファクター解析、ニューラルネットワーク、ベイシアン分類およびリサンプリング方法である。
【0149】
(実施例4) 個々の化合物と病理学的クラスのグループ化
既知の毒性学的反応と観察された臨床化学および病理学測定に基づく、個々の病理学的クラスへ、或いは1つの化合物(表3A〜3S)の範囲内で、観察される毒性の早期または後期に、試料を分類した。1つのモデルにおいて個々の判別スコアに基づく上位10、25、50、100個の遺伝子を使用して、遺伝子の組合わせが個々の遺伝子に比べてより良い予測を提供することを確実にした。上記で説明したように、どのような順序で、或いは順序づけて、集団として、区別的に、または無作為なアプローチによって、選択されるとき、このリストからの2個若しくはそれ以上の遺伝子の全ての組合わせは、潜在的に個々の遺伝子に比べてより良い予測を提供することができた。それに加えて、これらの遺伝子を他の遺伝子と組合わせることは、より良い予測能力を提供することができたが、この予測能力の大部分は、本明細書にリストされた遺伝子から来るだろう。
【0150】
それらがここで表示された、病理学的なまたは個々の化合物クラスで、或いはデータから獲得できる個々の毒性化合物の投与量グループ分けと個々の時間との組合わせに基づく、一般的な毒性学モデルの項で言及されるいかなるモデリング方法において、正を記録する場合、試料は毒性があるみなされる。病理学的なグループ化および早期や後期モデルは、試料時間と用量時間点との全ての得られうる組合わせの好ましい例である。1個若しくはそれ以上の遺伝子および1つ若しくはそれ以上の試料用量と時間点を備えるほとんどの論理的なグループ化は、個々の遺伝子と比べて、一般的な毒性、病理的な特異的毒性または既知の毒素への類似性のより良い予測を出すはずである。
【0151】
本発明は、上記の実施例に関連して詳述されてきたが、本発明の精神から逸脱することなく、様々な改変をなし得ることが理解される。したがって、本発明は以下の特許請求の範囲のみによって限定される。本出願で言及された全ての引用特許、特許出願および刊行物は、それらの全体が関連付けによって本明細書に取り入れられる。


【表1−1】

















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【表3−43】
























【表3−44】























【表3−45】























【表3−46】
























【表3−47】























【表3−48】























【表3−49】
























【表3−50】
























【表3−51】























【表3−52】
























【表3−53】
























【表3−54】
























【表3−55】























【表3−56】
























【表3−57】























【表3−58】























【表3−59】























【表3−60】























【表3−61】
























【表3−62】
























【表3−63】























【表3−64】























【表3−65】























【表3−66】
























【表3−67】























【表3−68】























【表3−69】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表1〜3中の遺伝子によってコードされるタンパク質の少なくとも1つの活性を調節する薬剤を同定する方法であって、
(a)前記タンパク質を該薬剤にさらし、そして
(b)該タンパク質の少なくとも1つの活性をアッセイする、
ことを含む前記方法。
【請求項2】
前記薬剤がタンパク質を発現する細胞にさらされることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
細胞が既知の毒素にさらされることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記毒素が前記タンパク質の発現を調節することを特徴とする、請求項3に記載の方法。

【公開番号】特開2008−148706(P2008−148706A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335148(P2007−335148)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【分割の表示】特願2002−516369(P2002−516369)の分割
【原出願日】平成13年7月30日(2001.7.30)
【出願人】(500254446)オア・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】Ore Pharmaceuticals Inc.
【Fターム(参考)】