説明

分析物の検出

本発明は、分析物の検出分野、特に液晶アッセイ形式を用いた各種分析物有機リン酸塩の検出、ならびに報告システムの一部として液晶を利用したスタンドオフ検出形式での各種分析に関する。本装置は、エアロゾル相での有機リン酸塩への累積暴露の検出に使用を見い出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NIH-NIEHSが与えるSBIR Grant No,5 R43 ES11217-02の政府の援助を一部受けて成されたものである。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0002】
発明の分野
本発明は、分析物検出の分野、特に液晶アッセイ形式を用いた有機リン酸塩、および報告システムの一部として液晶を利用するスタンドオフ検出形式での様々な分析物の検出に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
有機リン酸塩(OP)は、農薬として世界中で広く用いられている。1998〜1999年に米国では、9,100万ポンドの有機リン酸塩殺虫剤が使用されたが、これはその年に用いられた全殺虫剤72%に相当した。利用度1〜5にランクされる、最も一般的に使用されているOP農薬の活性成分は次の通りである:マラチオン(Malathion)、クロルピリホス(Chlorpyrifos)、テブホス(Tebufos)、ダイアジノン(Diazinon)およびメチルパラチオン(methyl Prathion)(EPA、1998〜1999)である。EPAには37種類の有機リン酸塩農薬が登録されている。米国内での使用のほぼ1/4は、非農業用途である;園芸用、商業用建築物および蚊の防除。
【0004】
OPは、食物の残留物、土壌汚染物、地下水および飲料水の溶解物として環境内に存在し、また大気中に揮発する。OPは、吸入、皮膚貫通および経口接種によって効率よく吸収される(Cherimisinoff and King, 1999, Hallenbeck and Cunningham, 1985)。田舎、郊外および都市居住者のあらゆる人々が一様にこれら化合物に曝されている。The National Health and Nutrition Examination Survey (NHANES III, 1988-1994)は、検査した国内全域の成人ボランティア900例の82%の尿から2種類のOP農薬の代謝物を検出した。
【0005】
これらOPの登録使用の数は、特に住居処理へのこれらOPの使用は、健康リスクへの危惧から近年大幅に減少している。しかしながら、マラチオンおよびダイアジノンは、いまだに農業で広く用いられており、屋外住宅用途に多く用いられている。マラチオンは、例えば、下記のために認可されている:100種類より多い食物および飼料穀物(野菜、果実、穀粒および飼料)への商業的農業の使用;家屋周辺の野菜、芝、果実および観葉樹のための使用、ならびに屋外居住施設向け害虫駆除;地域の害虫防除プログラム(ワタミハナゾウムシ、チチュウカイミバエ、および蚊の防除)による使用、ならびにアタマジラミとそれらの卵の処理用(USEPA 2003)。EPAは、パラチオンをあらゆる農業でほとんど使用しない「使用制限対象農薬」と見なしている。
【0006】
子供の健康に及ぼす農薬の潜在的影響への関心が高まっている。関心の多くは、子供および成人が低レベルの有機リン酸塩(OP)およびその他農薬に慢性的に暴露することから健康に悪影響を受けているのではないかという、動物の毒性学的研究および疫学的調査の両方からの山のような証拠に拠るものである。さらにまた、子供は成人より多く暴露し、また生物学的により感受性であることから、健康リスク評価を特に子供に対し行うべきだということが現在、広く認識されている(Guzelian et al. 1992; NRC 1993)。子供で潜在的にリスクがより高いとする理由としては、体重が軽いこと、器官が発育中であること、代謝率が高いこと、および特有の行動パターンがあげられる。
【0007】
1996年のFood Quality Protection Act (FQPA) (P.L., 104-170)は、農薬への子供の暴露は、考えられるすべての経路、食事(すなわち食物および飲料物の消費)および食事以外(すなわち、空気、水および土壌もしくは塵中の農薬の摂取)の経路の両方について評価することを求めている。FQPAは、リスクに基づく政策決定のプロセスを支援するために、より多くのかつ良質のデータが必要であると成文化し、集合的(考え得るすべての暴露経路)および累積的(共通のメカニズムを有するすべての化合物)暴露の調査を命じた。これは、環境リスク評価担当者は、複数の経路:すなわち吸入;皮膚吸収;食物および食物以外(土壌おおびハウスダスト)による吸入を介した農薬暴露を定量化しなければならないことを意味している。
【0008】
これらの評価を完遂する上での大きな問題の一つは、食物以外の経路からの暴露を評価するためのモニタリングデータが無いことである。
【発明の開示】
【0009】
発明の概要
本発明は、分析物の検出、特に液晶アッセイ形式を用いた有機リン酸塩、および報告システムの一部として液晶を利用するスタンドオフ検出形式での多様な分析物の検出に関する。したがって、いくつかの態様では、本発明は下記を含む、分析物を遠隔から検出する方法を提供する:a)認識成分を表示する第一表面を含み、この第一表面が液晶と接触している複数の液晶アッセイ装置を提供する工程;b)複数の液晶アッセイ装置を、分析物を含有すると思われる試料に暴露する工程;およびc)複数の液晶アッセイ装置から返された放射線が、分析物と認識成分との相互作用が引き起こしたアッセイ装置内の液晶配向の変化を表示する条件の下に、複数の液晶アッセイ装置に放射線を同時照射する工程。いくつかの態様では、放射線照射工程は、電磁放射線への暴露によって実施される。本発明は、任意の特定の電磁放射線の使用に限定されない。実際、可視光、X線照射、紫外線、赤外線、および高周波を含む、様々なタイプの電磁放射線の使用が想定されているが、これらに限定されない。いくつかの態様では、装置から返された放射線は、検出器によって測定される。本発明は、任意の特定タイプの検出器に限定されない。実際、赤外分光法、ラマン分光法、X線分光法、可視光分光法、紫外線分光法、高周波の分光法およびそれらの組み合わせを含む様々なタイプの検出が有用であるが、これらに限定されない。いくつかの態様では、装置から返された放射線は、分析物が存在する場合としない場合で異なるピーク波長を示す。別の態様では、装置から返された放射線は、分析物が存在する場合としない場合で異なるスペクトルを示す。さらに別の態様では、装置から返された放射線は、装置から放射されたスペクトルのピーク強度の変化を示している。
【0010】
いくつかの態様では、液晶アッセイ装置は、蛍光団を含む。さらなる態様では、照射工程は蛍光団を励起し、ここで、蛍光団により放射される光の波長は分析物が存在する場合としない場合で異なる。いくつかの態様では、表面は放射線に暴露したときに蛍光を発する半導体量子ドットを含む。さらなる態様では、表面に紫外線を放射した時、表面が放射する光の波長は、分析物が存在する場合としない場合で異なる。いくつかの態様では、表面は、認識成分を表示する周期的なラインを含む。さらなる態様では、認識成分への分析物の結合は、放射線照射により装置から返される光に変化を引き起こす。
【0011】
本発明の方法は、任意の特定の認識成分の使用に限定されない。実際、金属イオン、金属結合リガンド、核酸、ポリペプチド、タンパク質、酸、塩基、抗体、酵素およびそれらの組み合わせを含むが、これに限定されない様々な種類の認識成分の使用が想定されている。本発明の方法は、任意の特定の分析物の検出に限定されない。実際、有機リン酸塩、爆発剤、化学兵器、ペプチド、ポリヌクレオチド、毒素、揮発性有機化合物、ウイルスおよび微生物を含むがこれらに限定されない、様々な分析物の検出が想定されている。いくつかの好ましい態様では、有機リン酸塩は、農薬および化学兵器からなる群より選択される。
【0012】
本発明は、特定タイプの表面を有する装置の使用に限定されない。実際、金およびシリコンを含むが、これらに限定されない様々な表面材料の使用が想定されている。本発明は、任意の特定の液晶アッセイ装置の形式に限定されない。実際、平面、球および円筒形式を含むが、これに限定されない様々な形式が想定されている。いくつかの態様では、液晶アッセイ装置は、多孔質シリコンを含み、ここで、認識成分および液晶は多孔質シリコンの細孔内に納められている。本発明は、特定タイプのメソゲンの使用に限定されない。実際、E7、MLC、5CB(4-n-ペンチル-4'-シアノビフェニル)および8CB(4-シアノ-4'オクチルビフェニル)を含むが、これらに限定されない様々なメソゲンの使用が想定されている。本発明は、任意の特定サイズのアッセイ装置に限定されない。実際、様々なサイズが想定されている。いくつかの態様では、液晶アッセイ装置は、幅および長さがそれぞれ1cm未満である。別の態様では、液晶アッセイ装置は、幅および長さがそれぞれ1mm未満である。
【0013】
いくつかの好ましい態様では、液晶アッセイ装置は、遠隔放射線源から照射を受ける。本発明は、任意の特定の距離からの遠隔検出に限定されない。いくつかの態様では、遠隔放射線源は、液晶アッセイ装置から10メートルを超えている。別の態様では、遠隔放射線源は、液晶アッセイ装置から100メートルを超えている。よりさらなる態様では、遠隔放射線源は、液晶アッセイ装置から1000メートルを超えている。いくつかの態様では、複数の液晶アッセイ装置は、大気中に配備されて照射を受ける。本発明は、任意の特定の配備方法に限定されない。実際、航空機、ロケット、気球およびヘリコプターを含むが、これに限定されない様々な配備方法が想定されている。本発明は、任意の特定タイプの試料の分析に限定されない。実際、大気、ガス、蒸気、もや、および液体からなる群より選択される試料を含むが、これに限定されない様々な試料の分析が想定されている。
【0014】
いくつかの態様では、液晶アッセイ装置は、第1表面に対向する第2表面を含む。さらなる態様では、第1および第2表面は反射性である。よりさらなる態様では、第2表面は認識成分を表示する。さらなる別の態様では、第1および第2表面は、Febry-Perotフィルターを形成する。
【0015】
別の態様では、本発明は、内柱面および外柱面を含み、内および外柱面が互いに対向して、その間にチャンバーを形成しており、内および外柱面の少なくとも一つが認識成分を表示し、チャンバーは実質的に液晶で満たされているアッセイ装置を提供する。いくつかの態様では、内表面および外柱面は反射性である。いくつかの好ましい態様では、内表面は、金を含む。さらに好ましい態様では、外表面は、ナノ多孔性金を含む。本発明は、任意の特定タイプのメソゲンの使用に限定されない。実際、E7、MLC、5CB(4-n-ペンチル-4'-シアノビフェニル)および8CB(4-シアノ-4'オクチルビフェニル)を含むが、これに限定されない様々なメソゲンの使用が想定されている。本発明の装置は、任意の特定の認識成分の使用に限定されない。実際、金属イオン、金属結合リガンド、核酸、ポリペプチド、タンパク質、酸、塩基、抗体、酵素およびそれらの組み合わせを含むが、これに限定されない様々な種類の認識成分の使用が想定されている。本発明は、任意の特定の寸法の円柱に限定されない。いくつかの好ましい態様では、円柱の軸に沿って測定したアッセイ装置の長さは、約1cm未満である。さらに好ましい態様では、円柱の軸に対し垂直方向に測定したアッセイ装置の幅は、約2000ミクロンより小さい。よりさらに好ましい態様では、内および外柱面は、Fabry-Perotフィルターを形成する。
【0016】
よりさらなる態様では、本発明は内球面および外球面を含み、内および外球面が互いに対向して、その間にチャンバーを形成ており、内および外柱面の少なくとも一つが認識成分を表示し、チャンバーは実質的に液晶で満たされているアッセイ装置を提供する。いくつかの好ましい態様では、内表面は、金を含む。さらに好ましい態様では、外表面は、ナノ多孔性金を含む。本発明は、任意の特定タイプのメソゲンの使用に限定されない。実際、E7、MLC、5CB(4-n-ペンチル-4'-シアノビフェニル)および8CB(4-シアノ-4'オクチルビフェニル)を含むが、これらに限定されない様々なメソゲンの使用が想定されている。本発明の装置は、任意の特定の認識成分の使用に限定されない。実際、金属イオン、金属結合リガンド、核酸、ポリペプチド、タンパク質、酸、塩基、抗体、酵素およびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない様々な種類の認識成分の使用が想定されている。本発明は、任意の特定の寸法の円柱に限定されない。いくつかの好ましい態様では、装置の直径は、約1cm未満である。さらに好ましい態様では、内および外柱面は、Fabry-Perotフィルターを形成する。
【0017】
さらに別の態様では、本発明は、その中に細孔を有する多孔質シリコンを含み、ここで、細孔は認識成分を表示する細孔表面を有し、かつ細孔は実質的に液晶で満たされているアッセイ装置を提供する。いくつかの好ましい態様では、細孔表面は反射性である。本発明は、任意の特定タイプのメソゲンの使用に限定されない。実際、E7、MLC、5CB(4-n-ペンチル-4'-シアノビフェニル)および8CB(4-シアノ-4'オクチルビフェニル)を含むが、これらに限定されない様々なメソゲンの使用が想定されている。本発明の装置は、任意の特定の認識成分の使用に限定されない。実際、金属イオン、金属結合リガンド、核酸、ポリペプチド、タンパク質、酸、塩基、抗体、酵素およびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない様々な種類の認識成分の使用が想定されている。本発明は、任意の特定の寸法の装置に限定されない。いくつかの好ましい態様では、アッセイ装置の表面積は、約1cm未満である。いくつかの好ましい態様では、細孔はルゲート(rugate)フィルターを形成する。
【0018】
別の態様では、本発明は下記を含む、分析物を遠隔的に検出するためのシステムを提供する:a)認識成分を表示する第1表面を含み、第1表面が液晶と接触している複数の液晶アッセイ装置;b)複数の液晶アッセイ装置から遠く離れている放射線源;およびc)複数のアッセイ装置へ放射線源からの放射線による、複数のアッセイ装置からの信号を受け取るように形作られた検出器。
【0019】
いくつかの態様では、放射線源は電磁放射線を放射する。本発明は、任意の特定のタイプの電磁放射線の使用に限定されない。実際、可視光、X線照射、紫外線、ならびに赤外線および高周波を含むが、これらに限定されない様々なタイプの電磁放射線の使用を想定している。本発明は、任意の特定のタイプの検出器に限定されない。実際、赤外分光器、ラマン分光器、X線分光器、可視光分光器、紫外線分光器、およびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない様々なタイプの検出器が有用である。いくつかの態様では、装置から返される放射線は、分析物が存在する場合としない場合で異なるピーク波長を示す。別の態様では、装置から返される放射線は、分析物が存在する場合としない場合で異なるスペクトルを示す。さらに別の態様では、装置から返される放射線は、装置から放射されるスペクトルのピーク強度に変化を示す。
【0020】
いくつかの態様では、液晶アッセイ装置は蛍光団を含む。さらなる態様では、放射線照射工程は蛍光団を励起し、ここで、蛍光団により放射される光の波長は、分析物が存在する場合としない場合で異なる。いくつかの態様では、表面は放射線に暴露したときに、蛍光を発する半導体量子ドットを含む。さらなる態様では、表面に紫外線を放射した時、表面が放射する光の波長は、分析物が存在する場合としない場合で異なる。いくつかの態様では、表面は認識成分を表示する周期的なラインを含む。さらなる態様では、認識成分への分析物の結合は、放射線照射により装置から返される光に変化を引き起こす。
【0021】
本発明のシステムは、任意の特定の認識成分の使用に限定されない。実際、金属イオン、金属結合リガンド、核酸、ポリペプチド、タンパク質、酸、塩基、抗体、酵素およびそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない様々な種類の認識成分の使用が想定されている。本発明のシステムは、任意の特定の分析物の検出に限定されない。実際、有機リン酸塩、爆発剤、化学兵器、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、毒素、揮発性有機化合物、ウイルスおよび微生物を含むがこれらに限定されない、様々な分析物の検出が想定されている。いくつかの好ましい態様では、有機リン酸塩は、農薬および化学兵器からなる群より選択される。
【0022】
本発明は、特定のタイプの表面を有する装置の使用に限定されない。実際、金およびシリコンを含むが、これに限定されない様々な表面材料の使用が想定されている。本発明は、任意の特定の液晶アッセイ装置形式に限定されない。実際、平面、球および円柱形式を含むが、これに限定されない様々な形式が想定されている。いくつかの態様では、液晶アッセイ装置は、多孔質シリコンを含み、このとき認識成分および液晶は多孔質シリコンの細孔内に納められる。本発明は、任意の特定タイプのメソゲンの使用に限定されない。実際、E7、MLC、5CB(4-n-ペンチル-4'-シアノビフェニル)および8CB(4-シアノ-4'オクチルビフェニル)を含むが、これに限定されない様々なメソゲンの使用が想定されている。本発明は、任意の特定サイズのアッセイ装置に限定されない。実際、様々なサイズが想定されている。いくつかの態様では、液晶アッセイ装置は、幅および長さがそれぞれ1cm未満である。別の態様では、液晶アッセイ装置は、幅および長さがそれぞれ1mm未満である。
【0023】
いくつかの好ましい態様では、放射線源は液晶アッセイ装置から遠く離れている。本発明は、任意の特定の距離からの遠隔検出に限定されない。いくつかの態様では、遠隔放射線源は、液晶アッセイ装置から10メートルを超えている。別の態様では、遠隔放射線源は、液晶アッセイ装置から100メートルを超えている。よりさらなる態様では、遠隔放射線源は、液晶アッセイ装置から1000メートルを超えている。いくつかの態様では、複数の液晶アッセイ装置は、大気中に配備されて照射を受ける。本発明のシステムは、任意の特定の配備方法に限定されない。実際、航空機、ロケット、気球およびヘリコプターを含むが、これらに限定されない様々な配備システムの方法が想定されている。本発明は、任意の特定タイプの試料の分析に限定されない。実際、大気、ガス、蒸気、もやおよび液体からなる群より選択される試料を含むが、これらに限定されない様々な試料の分析が想定されている。
【0024】
いくつかの態様では、液晶アッセイ装置は、第1表面に対向する第2表面を含む。さらなる態様では、第1および第2表面は反射性である。よりさらなる態様では、第2表面は認識成分を表示する。さらに別の態様では、第1および第2表面は、Febry-Perotフィルターを形成する。
【0025】
いくつかの態様では、本発明は、下記の工程を含む、有機リン酸塩への累積暴露をアッセイする方法であって、有機リン酸塩への累積暴露が、開口部から出る波面として同定される液晶の配向の変化によって示される方法を提供する:a)液晶を含み、液晶が第1表面と第2表面の間にあり、第1表面が第1表面に接する有機層を含み、有機層はその上に固定された、少なくとも一つの金属イオンを有する装置であって、その中に開口部を有する装置を提供する工程;およびb)装置を、有機リン酸を含有すると思われる試料に暴露する工程。本発明は、任意の特定の金属イオンの使用に限定されない。実際、Al3+、Ag1+、Ba3+、Cd2+、Ce3+、Co2+、Cr3+、Eu3+、Fe2+、Fe3+、Ga3+、In3+、Mn2+、Ni2+、Pb2+、Pr3+およびZn2+からなる群より選択される金属イオンを含むが、これに限定されない様々な金属イオンの使用を想定している。いくつかの態様では、金属イオンは、装置表面上にアレイとして配置される。いくつかの好ましい態様では、特定のリン酸塩の独自性は、アレイ上の液晶配向のパターンから識別される。いくつかの態様では、有機リン酸塩を含有すると思われる試料は、気相状態の有機リン酸塩を含有する。さらに別の態様では、暴露工程は、約1時間から約30日の長さである。
【0026】
別の態様では、本発明は下記の工程を含む、特定の有機リン酸塩を同定する方法を提供する:a)その上に固定された少なくとも2種類の金属イオンを有する少なくとも2ヵ所の検出領域を含む支持体を提供する工程;およびb)有機リン酸塩を含有すると思われる試料に装置を暴露する工程;ならびにc)該検出領域の液晶配向の変化を調べることによって有機リン酸塩の独自性を決定する工程。いくつかの態様では、検出領域の表面を覆っている液晶は、有機リン酸塩存在時に不規則化する。さらなる態様では、検出領域は、Al3+、Ag1+、Ba3+、Cd2+、Ce3+、Co2+、Cr3+、Eu3+、Fe2+、Fe3+、Ga3+、In3+、Mn2+、Ni2+、Pb2+、Pr3+およびZn2+からなる群より選択される複数種類の金属イオンをその上に固定している。いくつかの態様では、有機リン酸塩を含有すると思われる試料は、エアロゾル相状態の有機リン酸塩を含有する。さらなる態様では、暴露工程は、約1時間から約30日の長さである。よりさらなる態様では、配向の変化は、進行波面によって示される。さらに別の態様では、波面の前進は、有機リン酸塩への暴露と相関する。いくつかの態様では、検出領域は有機層を含み、該金属イオンは該有機層を介して固定されている。さらなる態様では、有機層は、11-メルカプトウンデカン酸、4-アミノチオフェノールおよびメルカプト安息香酸からなる群より選択されるメンバーを含む。別の態様では、方法は、該第1支持体に対向する第2支持体をさらに提供する工程であって、該第1および第2支持体が液晶を受けるためのチャンバーを形成する工程を含む。
【0027】
本発明のいくつかの態様では、少なくとも表面を有する第1支持体を含み、支持体が表面上に少なくとも第1および第2検出領域を含む装置であって、第1および第2検出領域が有機層および有機層に固定された金属イオンを含み、第1および第2検出領域上の該金属イオンが異なっている、装置が提供される。いくつかの態様では、有機層は、11-メルカプトウンデカン酸、4-アミノチオフェノールおよびメルカプト安息香酸からなる群より選択されるメンバーを含む。さらなる態様では、第1検出領域は、Al3+、Ag1+、Ba3+、Cd2+、Ce3+、Co2+、Cr3+、Eu3+、Fe2+、Fe3+、Ga3+、In3+、Mn2+、Ni2+、Pb2+、Pr3+およびZn2+からなる群より選択される金属イオンを含み、かつ第2検出領域は、Al3+、Ag1+、Ba3+、Cd2+、Ce3+、Co2+、Cr3+、Eu3+、Fe2+、Fe3+、Ga3+、In3+、Mn2+、Ni2+、Pb2+、Pr3+およびZn2+からなる群より選択される異なる金属イオンを含む。さらに別の態様では、検出領域は液晶を含有するように形作られる。いくつかの好ましい態様では、検出領域は壁内に在る。いくつかの態様では、装置はさらに該第1支持体に対向する第2支持体を含み、このとき該第1および第2支持体は、液晶を収納するためのチャンバーを形成する。
【0028】
よりさらなる態様では、本発明は下記を含む装置を提供する:少なくとも表面を有する第1支持体であって、該支持体が該表面上に少なくとも第1検出領域をさらに含み、該検出領域が認識成分を含む第1支持体;第1支持体と接触している液晶;およびその中に開口部を有するハウジングであって、該支持体が、該検出領域が該開口部を通して外気に露出するように該ハウジング内に形作られているハウジング。いくつかの態様では、ハウジングは、検出領域が開口部を通して外気に露出する露出位置と、該検出領域が実質的に外気から遮断されている読みとり位置との間を移動可能である。いくつかの態様では、装置は、開口部内にフィルターをさらに含む。いくつかの好ましい態様では、フィルターはエアロゾルフィルターである。いくつかの態様では、認識成分は金属イオンである。さらなる態様では、金属イオンは、Al3+、Ag1+、Ba3+、Cd2+、Ce3+、Co2+、Cr3+、Eu3+、Fe2+、Fe3+、Ga3+、In3+、Mn2+、Ni2+、Pb2+、Pr3+およびZn2+からなる群より選択される。いくつかの好ましい態様では、金属イオンは、有機層を介して検出領域上に固定される。いくつかの態様では、有機層は、11-メルカプトウンデカン酸、4-アミノチオフェノールおよびメルカプト安息香酸からなる群より選択されるメンバーを含む。いくつかの好ましい態様では、検出領域は、液晶を含有するように形作られる。いくつかの態様では、検出領域は壁内に在る。さらに別の態様では、装置は第1支持体に対向する第2支持体をさらに含み、ここで、第1および第2支持体は液晶を受けるためのチャンバーを形成する。いくつかの態様では、第1支持体は、複数の相異なる検出領域を含む。さらなる態様では、複数の相異なる検出領域は、少なくとも2種類の認識成分を含む。
【0029】
定義
本明細書で使用する用語「有機リン酸塩」とは、リン含有有機化合物を指す。
【0030】
本明細書で使用する用語「波面」とは、配向した液晶の領域と非配向性液晶の領域との間に観察することができる、境界線を指す。多くの例では、波面は視覚的に検出できる。しかしながら、波面の位置は、イメージ分析法によっても検出できる。
【0031】
本明細書で使用する用語「リガンド」は、別の分子に結合できる、または別の分子によって結合され得る任意の分子を指す。
【0032】
本明細書で使用する用語「検出領域」とは、試料中の分析物(例えば有機リン酸塩)の検出のために指定された支持体上の独立領域を指す。
【0033】
本明細書で使用する用語「固定化」とは、ある物質を、別の実体(例えば固体支持物)に、化学的またはその他方法のいずれかにより、物質の運動を制限する方法で結合または捕捉することを指す。
【0034】
本明細書で使用する用語「物質」とは、広義の意味において、問題の任意の組成物を指す。
【0035】
本明細書で使用する用語「フィールド試験」とは、研究室環境の外で行われる試験を指す。このような試験は、屋内もしくは屋外、例えば、仕事場、事業所、公有地または私有地、あるいは車内で行うことができる。
【0036】
本明細書で使用する用語「ナノ構造」とは、典型的にはナノメートルのスケールで測定される微視的構造を指す。このような構造としては、リポソーム、フィルム、多層、網目、層、螺旋、管および繊維様形態、ならびにそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない様々な三次元アッセンブリが挙げられる。このような構造は、いくつかの態様では、溶媒和ポリマーとして、ロッドおよびコイルといった集合状態で存在できる。このような構造は、固体表面への金フィルムの物理的沈積によって調製されたような無機物質、機械的に擦られた表面に固定化されたタンパク質、かつ電子ビームリソグラフによって調製されたシリコンテンプレートを用いてトポグラフィーにより成形もしくはインプリントされたポリマー材料から形成することもできる。
【0037】
本明細書で使用する用語「自己集合モノマー」および「脂質モノマー」とは、自発的に会合して分子アッセンブリを形成する分子を指す。一つの意味では、本用語は、会合して界面活性分子アッセンブリを形成する界面活性分子を指し得る。用語「自己集合モノマー」は、単一分子(例えば単一脂質分子)および小分子アッセンブリ(例えば重合脂質)を含み、これによって個々の小分子アッセンブリはさらに凝集して(例えば集合および重合して)、より大きな分子アッセンブリになることができる。
【0038】
本明細書で使用する用語「リンカー」または「スペーサー分子」とは、一つの実体を別の実体に連結する物質を指す。一つの意味では、2個またはそれ以上の別の分子に共有結合する(例えば自己集合モノマーへのリガンドの連結)分子または分子群はリンカーであり得る。
【0039】
本明細書で使用する用語「結合」とは、分子中の原子間および結晶内でのイオンと分子間の連結を指す。用語「単結合」とは、結合軌道を2つの電子が占有している結合を指す。分子表記における原子間の単結合は、2つの原子の間に引かれた1本の線で表される(例えばC-C)。用語「二重結合」とは、2組の電子対を共有する結合を指す。二重結合は、単結合より強く、かつより反応性である。用語「三重結合」とは、3電子対の共有を指す。本明細書で使用する用語「ene-yne」は、二重結合および三重結合の反復を指す。本明細書で使用する用語「アミン結合」、「チオール結合」および「アルデヒド結合」とは、アミン基(すなわち、アンモニアから、その1または複数の水素原子を炭化水素基で置換することで生じる化学基)、チオール基(すなわち、アルコールの硫黄類似物)、およびアルデヒド基(すなわち、別の炭素原子に直接接合した化学基-CHO)それぞれの間、および別の原子もしくは分子との間に形成される任意の結合を指す。
【0040】
本明細書で使用する用語「共有結合」とは、2つの電子を共有することによる2原子の連結であって、各原子が関係する連結を指す。
【0041】
本明細書で使用する用語「スペクトル」とは、波長の順番に並べられた光エネルギーの分布を指す。
【0042】
本明細書で使用する用語「可視スペクトル」とは、約360nmから約800nmの波長を含む、光放射線を指す。
【0043】
本明細書で使用する用語「支持体」とは、その上に別の物質を層状に重ねるか、または取り付ける固体の物体または表面を指す。固体支持体としては、とりわけガラス、金属、ゲルおよび濾紙が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
本明細書で使用する用語「アレイ」および「パターン化したアレイ」とは、材料または装置内への要素(すなわち実体)の配置を指す。例えば、複数のタイプの金属イオンを合わせて分析物検出装置にすることは、アレイを構成することになるだろう。
【0045】
本明細書で使用する用語「インサイチュー」とは、それにとって自然な環境の範囲内で存在するか、または起こるプロセス、事象、対象または情報を指す。
【0046】
本明細書で使用する用語「試料」は、広義の意味で用いられている。一つの意味では、それは生体高分子物質を指す。別の意味では、それは任意の供給源から得た検体または培養物、ならびに生物学的および環境的試料を包含することを意味する。生物学的試料は、動物(ヒトを含む)より得てもよく、液体、固体、組織および気体を包含する。生物学的試料としては、血漿、血清等の血液生成物が挙げられる。環境試料としては、表面物質、土壌、水、結晶および工業試料のような環境物質が挙げられる。これらの例から、本発明に適用できる試料のタイプが限定されると解釈してはならない。
【0047】
本明細書で使用する用語「液晶」とは、一般的には固体と等方性の液相との間の温度範囲に存在している、三次元の結晶格子が存在しない異方特性を特徴とする、熱力学的に安定な相を指す。
【0048】
本明細書で使用する用語「メソゲン」とは、液晶物質の成分であるロッド状またはディスク状分子を含む、液晶を形成する化合物を指す。
【0049】
本明細書で使用する用語「熱屈折性液晶」とは、温度の上昇によって固体メソゲンが溶解して生ずる液晶を指す。純粋物質および混合物の両方が、熱屈折性液晶を形成する。
【0050】
「リオトロピック」とは、本明細書で使用する場合、溶媒中において、配向性および/または位置秩序を持つ相を形成する分子を指す。リオトロピック液晶は、両親媒性分子(例えばラウリル酸ナトリウム、ホスファチジルエタノールアミン、レシチン)を用いて形成できる。溶媒は水であり得る。
【0051】
本明細書で使用する用語「異質表面」とは、液晶を、勾配を横切るように、少なくとも2つの別々の平面または方向に向いている表面を指す。
【0052】
本明細書で使用する用語「ネマティック」とは、分子の長軸が実質的に平行を保つが、質量中心の位置は無秩序に分布している液晶を指す。ネマティック液晶は、近接面によって実質的に配向させることができる。
【0053】
「キラルネマティック」とは、本明細書で使用する場合、メソゲンが光学的に活性である液晶を指す。ネマティック例では、配向子は局所に一定に保持されるのに代わって、配向子は試料全体で螺旋状に回転する。キラルネマティック結晶は、個々のメソゲンの回転力を基に説明できるものより遙かに高い、強力な光学活性を示す。配向子のピッチに等しい波長の光が液晶に衝突すると、配向子は回折格子として働き、そこに入射したほとんど、時にはすべての光を反射する。このような物質に白色光が入射すると、単色光のみを反射し、円偏光が起こる。この減少は、選択反射として知られ、これがキラルネマティックにより生成される玉虫色に関与している。
【0054】
「スメクチック」とは、本明細書で使用する場合には、「ネマティック」とは、配向秩序に加えて、より強い位置秩序が存在することで区別される液晶を指す;分子は、平面と相の間よりも、その平面および相の中により長く存在する。「極性スメクチック」層は、メソゲンが永久双極子運動している場合に生ずる。スメクチックA2相では、例えば、連続する層が反強誘電性秩序を示し、同時に永久双曲子の方向は層から層に交替する。分子が分子の長軸に対し直角方向の永久双極子運動を含む場合には、キラルスメクチック層は強誘電性である。この相を利用したデバイスは、本質的に双安定的である。
【0055】
「フラストレート相」とは、本明細書で使用する場合には、キラル分子が形成する別のクラスの相を指す。しかし、これらの相はキラルではないが、結晶境界線のアレイによって相内に捻りが挿入される。立方格子の欠損(配向子が画定されていない部分)が、複雑な、配向秩序が捻れた構造内に存在する。これら欠損間の距離は、数百ナノメートルであるため、これらの相は光を結晶がX線を反射するのと同じように反射する。
【0056】
「ディスコチック相」は、細長よりもディスク型の分子から形成される。通常、これらの分子は芳香族の核および6つの側方置換基を有している。分子がキラルであるか、またはキラルドーパントがディスコチック液晶に加えられている場合には、キラルネマティックディスコチック相を形成することができる。
【0057】
発明の説明
本発明は、分析物の検出の分野に関係し、特に、報告システムの一部として液晶アッセイ形式および各種分析物を用いて、液晶を利用したスタンドオフ検出形式での有機リン酸塩の検出に関する。液晶をベースにしたアッセイシステムおよび装置(LCアッセイ)は、米国特許第6,284,197号;国際公開公報第01/61357号; 国際公開公報第01/61325号;国際公開公報第99/63329号;Gupta et al, Science 279:2077-2080 (1998); Seung-Ryeol Kim, Rahul R. Shah, and Nicholas L. Abbott; Orientations of Liquid Crystals on Mechanically Rubbed Films of Bovine Serum Albumin: A Possible Substrate for Biomolecular Assays Based on Liquid Crystals, Analytical Chemistry; 2000; 72(19); 4646-4653; Justin J. Skaife and Nicholas L. Abbott; Quantitative Interpretation of the Optical Textures of Liquid Crystals Caused by Specific Binding of Immunoglobulins to Surface-Bound Antigens, Langmuir; 2000; 16(7); 3529-3536; Vinay K. Gupta and Nicholas L. Abbott ; Using Droplets of Nematic Liquid Crystal To Probe the Microscopic and Mesoscopic Structure of Organic Surfaces, Langmuir; 1999; 15(21): 7213-7223; and Shah and Abbott, Principals for Measurement of Chemical Exposure Based on Recognition-Driven Anchoring Transitions in Liquid Crystals, Science 293:1296-99 (2001)に記載されている;これらはすべて参照により本明細書に組み入れる。
【0058】
米国特許第6,284,197号および前記、Saha and Abbottは、液晶アッセイ形式による有機リン酸塩を含む化学分子の検出を記載している。驚くべき事に、液晶アッセイは特定の有機リン酸塩化合物の検出に合わせて調節できること、各種金属イオンをアッセイに用い、有機リン酸塩と各種金属イオンとの相互作用が創り出す特別な「フィンガープリント」から有機リン酸塩を同定できることが発見された。さらには、本発明の液晶アッセイ装置は、有機リン酸塩に対する累積暴露の測定にも用いることができる。
【0059】
実際には、従来技術の農薬暴露の評価は、定量的なモニタリングデータ(利用可能な場合)、または定性的データ(ラベル使用率および移動、変形およびヒトの行動に対する仮定に基づくシナリオ)を使用して、人体への接触および侵入を描写することを含んでいる。これらの評価においては、「判断基準」は個人暴露の測定である。個人(または接点)サンプラーは、ヒトと環境媒体の間の接点における農薬濃度を測定することにより、暴露が起こった時にそれを記録する。例えば、現在の参照方法の農薬サンプラーは、ポンプとバックアップ吸着剤の付いたフィルターを組み合わせ、吸引ゾーン付近の大量の農薬(例えばμg/m3)を集めるか、または綿もしくはその他材料からできた皮膚用パッチを使って皮膚への沈積を測定(例えばμg/cm2)する。個人モニタリングの主たる強みは、典型的にはおおよそ分、時間または、たいていの場合には、日単位のモニタリング期間中の暴露を直接測定することである。これらのタイプの個人測定の問題点は、コストと時間がかかること、比較的高価な化学分析が必要であることであり、研究参加者にとって負担になることがあり、かつ関心対象となる農薬および経路すべてについて好適なモニタリング装置が準備されていないことである(Adgate and Sexton 2001, Emerging Issues: Children's Exposure to Pesticides in Residential Settings. Handbook of Pesticide Toxicology, Second Edition. R. I. Krieger. San Diego, Academic Press. 1: 887-904)。これらの問題は、小児の場合にはさらに顕著となるため、この集団に個人モニタリングが試されることは稀である(Weaver et al., Approaches to environmental exposure assessment in children. Environ Health Perspect 1998: 106 Suppl 3: 827-32.1998)。
【0060】
健康に及ぼす農薬暴露、特に農業地域の子供への影響について関心が高まり、かつ個人暴露の拡大モニタリングへの関心と必要性が高まりつつある一方で(例えば、20年間にわたり100,000名の子供をモニタリングしようというThe National Children's Studyが計画されている)、個人モニタリング法に内在する問題、特に子供に適用した場合の問題が、実施可能な研究の数および性質を制限している。Human Exposure Assessment from the International Programme on Chemical Safetyに関するレポートによれば、「暴露評価への個人モニタリング使用についての主な制限は、高感度で、操作が容易な、十分な時間解像力を提供でき、妨害がなく、かつ経済的な試料収集法の可能性である。」(Macintosh and Spengler, Human Exposure Assessment. Environmental Health Criteria 214. World Health Orgnization, Geneva, 2000)。
【0061】
OPへの暴露の定量化では、特定の化合物および調合物の物理的および化学的性質を調べることが重要である。OP農薬暴露の測定では、これら化合物が半揮発性であることから、特に難しい。半揮発性有機化合物(SVOC)は、周囲温度範囲では10-4〜10-11気圧の蒸気圧を示し、気相と粒子相が共存することがある。
【0062】
蒸気相および粒子相の両方を測定しようとする方法が開発されているが、暴露を過小評価または過大評価するサンプリングの人為的結果を伴うことがあり得る。サンプリング中および後に沈積粒子が蒸発すると過小評価が起こることがあるが、これは物質の蒸気圧および粒子表面積が十分に大きい場合に起こり得る。気相SVOCがサンプリング中にフィルターに吸着すると、過大評価が起こることがある。これらいずれの可能性の発現も、化合物の分配係数、温度ならびにエアロゾル中に存在する粒子の大きさ、およびタイプに依存する。農薬測定の標準であるNIOSH法は、フィルターおよび吸着剤の両方を測定し、したがって全濃度測定からこの人為的結果を排除する。
【0063】
好ましい態様では、本発明の装置は、蒸気相の農薬を測定するが、これは抽出操作を必要としない連続的モニタリングに役立つ。本発明は任意の特定の作用機序に限定されない。実際には、作用機序の理解は、本発明の実施に必要ない。それでもなお蒸気相の測定は、蒸気相が環境中の粒子および固形物と比例関係にあることから、主たる暴露経路の正確な測定を提供し、かつ別経路の農薬暴露を反映する。蒸気相内の農薬の量は、他の形状の農薬の量が増加するにつれて増加することが考察される。監視装置はまた、それらを収集して蒸気相に変換すれば、エアロゾル相の農薬も測定する。
【0064】
したがって、本発明は、有機リン酸塩検出のための改良支持体および装置を提供する。便宜上、本発明の記載は、次のセクションに分ける:I.有機リン酸塩;II.認識成分;III.支持体;IV.支持体の官能化;V.メソゲン;VI.病原体の検出;VII.キット
【0065】
I. 有機リン酸塩
本発明は、各種有機リン酸塩の検出における使用を見い出す。いつかの態様では、有機リン酸塩はアセフェート(Orthene)、アジンホス-エチル、アジンホス-メチル(Guthion)、アジンホス-メチルオキソン、ブロモホス-メチル、カルボフェノチオン(Trithion)、クロルフェンビンホス(Supona)、クロロピリホス(Dursban/Lorsban)、クロルピリホス-メチル、クロルチオホス、クマホス(Co-Ral)、クロトキシホス(Ciodrin)、シアノホス、DEF (Butifos)、デメトン(Systox)、デメトン-ジアリホル(Torak)、ダイアジノン(O Analog)、ダイアジノン(Spectracide)、ジクロルボス-DDVP (Vapona)、ジクロトホス(Bidrin)、ジメトエート(Cygon)、ジオキサチオン(Delnav)、ジスルホトン(Disyston)、ジスルホトンスルホン、エジフェンホス、EPN、エチオン(Nialate)、エトプロプ(Mocap)、エチルパラチオン、フェナミホス(Nemacur)、フェニトロチオン(Sumithion)、フェンスルホチオン(Dasanit)、フェンチオン(Baytex)、ホノホス(Dyfonate)、ホルモチオン、ヘプテノホス、イミダン(Phosmet)、イサゾホス(Triumph)、イソフェンホス(Amaze)、レプトホス(Phosvel)、マラオキソン、マラチオン(Celthion)、メルホス(Tribufos)、メタミドホス(Monitor 4)、メチダチオン、メチルパラチオン(Metacide)、メビンホス(Phosdrin)、モノクロトホス、ナレッド、オメトエート(Dimethoate O analog)、パラチオン(Alkron)、パラオキソン、ホレート(Thimet)、ホレート-o、ホレートスルホン、ホレートスルホキシド、ホサロン、ホスファミドン(Dimecron)、ピペロホス、ピリミホス-エチル、ピリミホス-メチル、プロフェノホス(Curacron)、プロペタンホス(Safrotin)、ピラゾホス(Afgan)、キナルホス、ロンネル(Ectoral) (Fenchlorphos)、スルプロホス(Bolstar)、テルブホス(Counter)、テトラクロルビンホス(Gardona)、チオナジン(Zinophos)、およびトリアゾホス(Hostathion)を含むが、これらに限定されない農薬として用いられる有機リン酸塩である。いくつかの態様では、有機リン酸塩は、G剤(G agent)(GD、ソマン;GB、サリン;およびGA、タブン)およびV剤(V agent)(VX)を含むが、これらに限定されない神経作用物質(例えば毒ガス)である。
【0066】
II. 認識成分
本発明では、様々な認識成分の使用を見い出す。好ましい態様では、認識成分は支持体(以下に、さらに詳しく説明する)の検出領域上に固定されている。好ましい態様では、有機リン酸塩用の認識成分としては、金属イオンが挙げられる。本発明は、任意の特定の金属イオンの使用に限定されない。実際には、様々な金属イオンの使用が想定されており、Al3+、Ag1+、Ba3+、Cd2+、Ce3+、Co2+、Cr3+、Eu3+、Fe2+、Fe3+、Ga3+、In3+、Mn2+、Ni2+、Pb2+、Pr3+およびZn2+、ならびにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様では、有機層は金属塩(前記イオンを含有する)のエタノール溶液で処理され、有機層の表面に金属受容体を形成する。特に好ましい態様では、金属イオンは、一または複数の、関心対象の有機リン酸塩化合物(例えばマラチオン、パラチオンまたはジアザノン)と相互作用するが、内燃機関からの排気、台所の臭気、木からでる煙、香水、ガソリン、ディーゼル燃料、肥料、アンモニア、ベビーローション、ヘアースプレー、ネイルポリシャー(アセトン)、殺虫剤、タバコの煙、NOx、CO、床用クリーナー、家具用光沢剤および家庭用脱臭剤のような妨害物質とは実質的に相互作用しない(例えば、少なくとも95%未満の反応、または標的の有機リン酸塩との反応より99%低い反応を示す)。
【0067】
III. 支持体
本発明の実施に有効な支持体は、事実上、任意の物理化学的に安定な物質で作ることができる。好ましい態様では、支持体材料はメソゲン層の成分に対し非反応性である。支持体は、硬質でも可撓性のいずれでもよく、光学的に透明でも、または光学的に半透明のいずれでもよい。支持体は、絶縁体、伝導体または半導体であり得る。さらには、支持体は、液体、蒸気、および/または支持体に対し実質的に不透過性であり得、あるいは支持体は、一つまたは複数のこれら部類の材料に対し透過性であり得る。例示的支持体材料としては、無機結晶、無機ガラス、無機酸化物、金属、有機ポリマー、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい態様では、支持体は、非等方性でない平面金コーティングを含む。いくつかの態様では、支持体は、その中に、試料および/またはその他試薬を支持体表面またはその上の検出領域に送るためのマイクロチャンネルを有している。マイクロチャンネルのデザインおよび使用は、例えば米国特許第6425972号、第6418968号、第6447727号、第6432720号、第5976336号、第5882465号、第5876675号、第6186660号、第6100541号、第6379974号、第6267858号、第6251343号、第6238538号、第6182733号、第6068752号、第6429025号、第6413782号、第6274089号、第6150180号、第6046056号、第6358387号、第6321791号、第6326083号、第6171067号、および第6167910号に記載されており、これらはすべて参照により本明細書に組み入れられる。
【0068】
A. 無機結晶およびガラス
本発明のいくつかの態様では、支持体材料として無機結晶および無機ガラス(例えばLiF、NaF、NaCl、KBr、KI、CaF2、MgF2、HgF2、BN、AsS3、ZnS、Si3N4等)が利用される。結晶およびガラスは、当技術分野の標準的技術によって調製できる(例えば、Goodman, C.H.L., Crystal Growth Theory and Techniques, Plenum Press, New York 1974参照)。または、結晶は、市販品を購入できる(例えばFischer Scientific)。結晶は、支持体の唯一の構成要素になり得、またはそれらを、一もしくは複数の追加支持体成分でコーティングすることもできる。したがって、例えば一もしくは複数の金属フィルム、あるいは一金属フィルムおよび一有機ポリマーでコーティングされた結晶を利用することも、本発明の範囲内である。加えて、結晶は、異なる材料、または異なる物理的形状をした同一材料(例えばガラス)から出来た、支持体の別の部分と接触する支持体部分を構成できる。無機結晶および/またはガラスを利用した他の有用な支持体の構成は、当業者には明らかであろう。
【0069】
B. 無機酸化物
本発明の別の態様では、支持体として無機酸化物が利用される。本発明に用いられる無機酸化物としては、例えばCs2O、Mg(OH)2、TiO2、ZrO2、CeO2、Y2O3、Cr2O3、Fe2O3、NiO、ZnO、Al2O3、SiO2(ガラス)、水晶、In2O3、SO2、PbO2等が挙げられる。無機酸化物は、フィルム、支持散剤、ガラス、結晶等の様々な物理形状で利用できる。支持体は、単一の無機酸化物または一種類より多い無機酸化物の組成物からなることができる。例えば、無機酸化物の組成物は、層状構造(すなわち第一酸化物の上に第二酸化物が沈積したもの)からなるか、または二種類またはそれ以上の酸化物を、連続する非層状構造に配置することができる。加えて、一または複数種類の酸化物を、様々なサイズの粒子として混合し、ガラスまたは金属シートのような支持体の上に沈積するこができる。さらには、一または複数種類の無機酸化物の単層を、別の二つの支持体層の間に挿入することもできる(例えば、金属−酸化物−金属、金属−酸化物−結晶)。
【0070】
いくつかの態様では、支持体は液体および気体に対し不透過性な硬質構造である。この態様では、支持体は、その上に金の様な金属が蒸着によって層を形成しているガラス板からなる。よりさらに好ましい態様では、支持体は、その上にチタンもしくは金のような第一金属層が層を形成しているガラス板(SiO2)である。次に、第二金属(例えば金)の層が、第一金属層(例えばチタン)の上に層形成される。
【0071】
C. 金属
本発明のよりさらなる態様では、金属が支持体として利用される。金属は、結晶、シートまたは粉末として用いることができる。金属は、蒸着、スパッタリング、無電解メッキ、電着および吸着、または金属ナノ粒子を含む事前に形成された金属粒子の沈積を含むが、これらに限定されない、当業者に公知の任意の方法によって裏材に沈積することができる。
【0072】
メソゲン層に対し化学的に不活性である任意の金属は本発明の支持体として有用であろう。メソゲン層に対し反応性であるか、または相互作用性である金属も、本発明において有用であろう。現時点において支持体として好ましい金属として、金、銀、白金、パラジウム、ニッケルおよび銅が挙げられるが、これらに限定されない。一つの態様では、一種類より多い金属を使用する。一種類より多い金属は、合金として存在するか、または層状の「サンドイッチ」構造にすることができ、あるいはそれらを互いの横に隣接させることもできる。好ましい態様では、支持体に使用する金属は金である。特に好ましい態様では、使用する金属は、チタンの上に層を形成した金である。
【0073】
金属層は、液体、溶液、蒸気および気体といった物質に透過性か不透過性かのいずれでもあり得る。
【0074】
D. 有機ポリマー
本発明のさらに別の態様では、有機ポリマーが支持体材料として利用される。本発明の支持体として有用な有機ポリマーとしては、気体、液体および溶液中の分子に対し透過性であるポリマーが挙げられる。別の有用ポリマーは、これら同一クラスの化合物の一または複数種類に対し不透過性であるポリマーである。
【0075】
有用な支持体を形成する有機ポリマーとしては、例えばポリアルケン(例えば、ポリエチレン、ポリイソブテン、ポリブタジエン)、ポリアクリル類(例えばポリアクリラート、ポリメチルメタクリラート、ポリシアノアクリラート)、ポリビニル(例えばポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチラール、ポリビニルクロリド)、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリシロキサン、多複素環式化合物、セルロース誘導体(例えばメチルセルロース、セルロースアセテート、ニトロセルロース)、ポリシラン、フッ素化ポリマー、エポキシ、ポリエーテルおよびフェノール樹脂が挙げられる(Cognard, J. ALIGNMENT OF NEMATIC LIQUID CRYSTALS AND THEIR MIXTURES, in MoI. Cryst. Liq. Cryst. 1:1-74 (1982)参照)。現在好ましい有機ポリマーとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル、セルロース物質、ポリカーボネート、およびポリビニルピリジニウムが挙げられる。
【0076】
いくつかの態様では、支持体は透過性であり、かつ金の層または金を被せたチタンからなり、それらはポリマー膜、または液体、蒸気および/もしくは気体に対し透過性であるその他物質に沈積される。液体および気体は、純粋化合物(例えばクロロホルム、一酸化炭素)であり得、またはそれらは他の分子内に分散している化合物(例えば、タンパク質水溶液、空気中の除草剤、低有機分子のアルコール溶液)でもあり得る。有用な透過膜としては、可撓性のセルロース材(例えば再生セルロース透析膜)、硬質セルロース材(例えばセルロースエステル透析膜)、硬質ポリビニリデンフロリド膜、ポリジメチルシロキサンおよび条痕が刻まれたポリカーボネート膜が挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
さらに好ましい態様では、透過膜上の金の層は、それ自体が透過性である。よりさらなる態様では、透過性金層は、約70オングストロームまたはそれ未満の厚みを有する。
【0078】
支持体の透過性が問題にならず、かつ金属フィルム層を使用する態様では、フィルムは具体的な用途に必要な厚みでよい。例えば、フィルムを電極として使用する場合、フィルムは、フィルムが光に対し透明または半透明である必要がある態様の厚みに比べ、より厚くできる。
【0079】
このように、好ましい態様では、フィルムは約0.01ナノメートル〜約1マイクロメートルの厚さである。さらに好ましい態様では、フィルムは約5ナノメートル〜約100ナノメートルの厚さである。よりさらに好ましい態様では、フィルムは約10ナノメートル〜約50ナノメートルの厚さである。
【0080】
IV. 支持体の官能化
いくつかの態様では、支持体の表面は、認識成分(例えば金属イオン)を支持体表面上に固定できるように官能化され、それにより検出領域を形成する。いくつかの態様では、多数の検出領域は支持体表面上に形成される。いくつかの態様では、多数の検出領域の2ヵ所またはそれ以上に同一金属イオンを提供し、一方、別の態様では、少なくとも二種類の異なる金属イオンが、多数の検出領域の1ヵ所または複数ヵ所に固定される。いくつかの態様では、金属イオンは、以下により詳しく記載する方法によって支持体表面上の目立たない検出領域に配列される。
【0081】
A. 有機単層
いくつかの態様では、支持体の表面は、自己集合単層(SAM)のような有機層を支持体表面上に形成することによってまず官能化される。自己集合単層は、一般に、組織化された、密に充填された線状分子の集合物として描かれる。固体の支持体に分子単層を沈積するための、広く用いられている二つの方法がある:ラングミュア−ブロジェット(Langmuir-Blodgett)転移法および自己集合法がある。その他の方法としては、単層前駆体の蒸気を支持体表面に蒸着させる技術、ならびにポリマーおよび高分子電解質の層ごとの沈積の技術が上げられる(Ladam et al., Protein Adsorption onto Auto-Assembled Polyelectrolyte Films, Langmuir; 2001; 17(3); 878-882)。好ましい態様では、有機層は、11-メルカプトウンデカノン酸、4-アミノチオフェノールまたはメルカプト安息香酸から形成される。
【0082】
本発明に有用なSAMの層の組成は、広い範囲にわたり、化合物構造およびモル比を変えることができる。一つの態様では、SAMは一種類の化合物だけから形成される。いくつかの好ましい態様では、SAMは二種類またはそれ以上の成分から形成される。別の好ましい態様では、二種類またはそれ以上の成分を用いる場合には、一つの成分は、10〜25個の炭素の鎖長を有する長鎖炭化水素であり、第二成分は、1〜9個の炭素原子の鎖長を有する短鎖炭化水素である。特に好ましい態様では、SAMは、CH3(CH2)15SHおよびCH3(CH2)4SHまたはCH3(CH2)15SHおよびCH3(CH2)9SHから形成される。上記態様のいずれかについて、炭素鎖は、ω-末端で(例えばNH2、COOH、OH、CN)、鎖の内部位置で(例えばアザ、オキサ、チア)、またはω-末端および鎖の内部位置で官能化できる。
【0083】
B. 官能化SAM
支持体表面への反応性SAM成分の取り付けに焦点を当てて、以下論議する。これに焦点をあてるのはただ便宜上のことであり、当業者は、この論議が、SAM成分−認識成分が支持体へ取り付けられる前に事前形成される態様に等しく当てはまることを了解するだろう。本明細書で使用する「反応性SAM成分」とは、成分を支持体に取り付けた後に、認識成分または他の種との反応に利用可能な官能基を有する成分を指す。
【0084】
現在好まれている、反応性SAM成分について利用できる反応の分類は、比較的緩やかな条件の下に進行する反応である。これらの反応としては、求核性置換反応(例えばアミンおよびアルコールとハロゲン化アシルとの反応)、求電子性置換反応(例えばエナミン反応)、ならびに炭素−炭素および炭素−ヘテロ原子多重結合への付加反応(例えば、Michael反応、Diels-Alder付加)が挙げられるが、これらに限定されない。これら、およびその他有用な反応は、March, ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY, Third Ed., John Wiley & Sons, New York, 1985の中で論じられている。
【0085】
本発明のいくつかの態様では、支持体表面は、支持体表面を多数の利用可能な反応性官能基で誘導化するように支持体表面に反応性SAM成分を共有結合させることによって、SAM、成分およびその他の種で官能化される。本発明の実施に用いることができる反応基としては、例えばアミン、ヒドロキシル基、カルボン酸、カルボン酸誘導体、アルケン、スルフヒドリル、シロキサン等が挙げられる。
【0086】
支持体表面の官能化には、広範なタイプの反応が利用できる。例えば、ポリプロピレンのようなプラスチックで作られた支持体は、クロム酸酸化によって表面を誘導化し、続いてヒドロキシル化またはアミノメチル化表面に転化できる。強く架橋結合したジビニルベンゼンから作られた支持体は、クロロメチル化により表面を誘導化してから官能基を操作することができる。加えて、官能化された支持体を、エッチング処理した、還元ポリテトラフルオロエチレンから作ることができる。
【0087】
支持体をガラスのようなシリカ(siliaceous)物質から作る場合は、表面は、表面のSi-OH、SiO-H、および/またはSi-Si基を官能化剤と反応させることによって誘導体化できる。支持体を金属フィルムから作る場合は、表面は、金属に対する結合活性を示す物質で誘導体化できる。
【0088】
好ましい態様では、支持体がガラスから作られる場合は、次のようなシリコン変性剤によって支持体表面上の基を転化することにより、ガラス表面に反応基を共有結合させることができる:
(RO)3-Si-R1-X1 (1)
式中、Rは、メチルまたはエチルのようなアルキル基であり、R1は、シリコンとXとの間の連結基であり、かつXは、反応基または保護された反応基である。反応基は、以下に論ずる認識成分であり得る。ハロゲン、または表示されているアルコキシ基以外のその他脱離基を有するシラン誘導体も、本発明において有用である。
【0089】
複数のシロキサン官能化剤を用いることができ、例えば:
1. ヒドロキシアルキルシロキサン類(表面をシリル化し、ジボランで官能化し、H2O2によりアルコールを酸化する)
a. アリルトリクロロシラン→→3-ヒドロキシプロピル
b. 7-オクト-1-エニルトリクロロシラン→→8-ヒドロキシオクチル
2. ジオール(ジヒドロキシアルキル)シロキサン類(表面をシリル化し、加水分解してジオールにする)
a. (グリシジルトリメトキシシラン→→(2,3-ジヒドロキシプロピルオキシ)プロピル
3. アミノアルキルシロキサン類(中間の官能化段階を必要としないアミン類)
a. 3-アミノプロピルトリメトキシシラン→アミノプロピル
4. 二量化された第二級アミノアルキルシロキサン類
a. ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン→ビス(シリルオキシプロピル)アミン。
【0090】
シロキサン以外のSAM成分を用いる時には、一連の、類似の有用な官能化の化学が利用できることが、当業者には明らかであろう。したがって、例えば、同様に官能化されたアルキルチオールを金属フィルムに付着させ、続いて反応させて、上記例示したような官能基を作り出すことができる。
【0091】
別の好ましい態様では、支持体は、少なくとも部分的に、金フィルムのような金属フィルムであり、その表面に対して結合活性を示す作用物質によって反応基が金属表面につながれる。現時点で好ましい態様では、支持体は少なくとも一部が金フィルムであり、金属表面と反応する基は、下記のようにチオール、スルフィド、またはジスルフィドを含む:
Y-S-R2-X2 (2)
R2は、硫黄とX2との間の連結基であり、かつX2は、反応基または保護された反応基である。X2は、また以下に論ずる認識成分であり得る。Yは、H、R3、およびR3-S-からなる群より独立に選択され、ここで、R2とR3が独立して選択される。R2およびR3は、同一の場合は、対称性スルフィドおよびジスルフィドが得られ、それらが異なる場合には、非対称性スルフィドおよびジスルフィドが得られる。
【0092】
非常に多数の官能化チオール、スルフィド、およびジスルフィドが市販されている(Aldrich Chemical Co., St. Louis)。加えて、当業者は、それらを多種多様な合成経路にかけ、追加のこのような分子を入手することもできる。たとえば、アミン官能化チオールは、対応するハロアミン、ハロカルボン酸等から、これらハロ前駆体とスルフヒドリルナトリウムとの反応によって生成することができる。例えば、Reid, ORGANIC CHEMISTRY of BIVALENT SULFUR, VOL 1, pp. 21-29, 32-35, vol. 5, pp. 27-34, Chemical Publishing Co., New York, 1.958, 1963参照されたい。加えて、官能化スルフィドは、メルカプタン塩を用いたアルキルチオ−脱ハロゲン化を介しても調製できる(Reid, ORGANIC CHEMISTRY OF BIVALENT SULFUR, vol. 2, pp. 16-21, 24-29, vol. 3, pp. 11-14, Chemical Publishing Co., New York, 1960)。本発明の実施に有用な化合物を生成するための別の方法は、当業者に明らかであろう。
【0093】
別の好ましい態様では、官能化試薬は、試薬分子当たり一つより多い反応基を提供する。下記化合物3のような試薬を用いると、支持体表面上の各反応部位は、本質的に、2またはそれ以上の官能基に「増幅」される:
(RO)3-Si-R2-(X2)n (3)
ここで、Rは、メチルのようなアルキル基であり、R2は、シリコンとX2の間の連結基であり、X2は、反応基または保護された反応基であり、かつnは、2〜50の整数であり、より好ましくは2〜20の整数である。
【0094】
分子の同様な増幅は、基体が少なくとも部分的に金属フィルムである態様でも役に立つ。これらの態様では、金属表面と反応する基は、式(4)のようなチオール、スルフィドまたはジスルフィドを含む:
Y-S-R2-(X2)n (4)
上で論じたように、R2は、硫黄とX2との間の連結基であり、かつX2は、反応基または保護された反応基である。X2はまた認識成分であり得る。Yは、H、R3およびR3-S-からなる群より選択されるメンバーであり、ここで、R2およびR3は、独立に選択される。
【0095】
本発明の上記態様でのR1、R2およびR3に用いられるR基としては、アルキル、置換アルキル、アリール、アリールアルキル、置換アリール、置換アリールアルキル、アシル、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、アシルアミノ、アルコキシ、アシルオキシ、アリールオキシ、アリールオキシアルキル、メルカプト、飽和環状炭化水素、不飽和環状炭化水素、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、置換ヘテロアリール、置換ヘテロアリールアルキル、ヘテロ環式、置換ヘテロ環式およびヘテロ環式アルキル基を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0096】
上記の各式1〜4では、R1、R2およびR3はそれぞれ安定であっても、またはそれらは化学反応または光化学反応によって開裂できるかのいずれでもよい。例えば、エステルもしくはジスルフィド結合を含むR基は、それぞれ加水分解および還元によって開裂できる。また、例えばニトロベンジル誘導体、フェナシル基、ベンゾインエステル等などの光で開裂されるR基を使用することも、本発明の範囲内である。このような開裂可能なその他の基は、当業者に周知である。
【0097】
他の好ましい態様では、有機硫黄化合物は、一部または全部がハロゲン化される。この態様において有用な化合物の例としては、次式の化合物が挙げられる:
X1Q2C(CQ12)mZ1(CQ22)nSH (5)
式中X1は、H、ハロゲン反応基および保護された反応基からなる群より選択されるメンバーである。反応基はまた、以下論ずるように認識成分であり得る。Q、Q1およびQ2は、Hおよびハロゲンからなる群より独立に選択されるメンバーである。Z1は、-CQ2-、-CQ12-、-CQ22-、-O-、-S-、NR4-、-C(O) NR4およびR4NC(O0-からなる群より選択されるメンバーであり、ここで、R4は、H、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリールおよびヘテロ環式基からなる群より選択されるメンバーであり、かつmおよびnは、独立に0〜40の間の数である。
【0098】
さらに別の好ましい態様では、有機層は上式5の化合物を含み、ここで、Q、Q1およびQ2は、Hおよびフッ素からなる群より独立に選択されるメンバーである。よりさらに好ましい態様では、有機層は、式(6)および(7)の構造を含む:
CF3(CF2)mZ1 (CH2)nSH (6)
CF3(CF2)0Z2(CH2)PSH (7)
式中Z1およびZ2は、-CH2-、-O-、-S-、NR4、-C(O)NR4およびR4NC(O)- からなる群より独立に選択され、ここで、R4は、H、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリールおよびヘテロ環式基からなる群より選択されるメンバーである。現在好ましい態様では、隣接する分子のZ基は、引力的(例えば水素結合)または反発的(例えばvan der Waals)相互作用のいずれかに関与する。
【0099】
式7では、mは、0〜40の数であり、nは、0〜40の数であり、oは、0〜40の数であり、pは、0〜40の数である。
【0100】
さらに好ましい態様では、式6および7の化合物は、認識成分を担持する、ハロゲン化されているかまたはハロゲン化されていないいずれかの有機硫黄化合物と組み合わせて用いられる。
【0101】
有機層がハロゲン化有機硫黄化合物から形成される場合には、有機層は単一のハロゲン化化合物または異なる構造を有する1つより多いハロゲン化化合物を含むことができる。加えて、これらの層は、非ハロゲン化有機硫黄化合物を含むことができる。
【0102】
反応性官能基(X1およびX2)は、例えば下記である:
(a)カルボキシル基ならびに、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、N-ヒドロキシベンズトリアゾールエステル、酸性ハロゲン化物、アシルイミダゾール、チオエステル、p-ニトロフェニルエステル、アルキル、アルケニル、アルキニルおよび芳香族エステルを含むが、これらに限定されないその誘導体;
(b)エステル、エーテル、アルデヒド等に転換可能なヒドロキシル基;
(c)ハロゲン化物が後に、例えばアミン、カルボキシラートアニオン、チオールアニオン、カルバニオンまたはアルコキシドイオンのような求核基で置換でき、それによってハロゲン原子部位の新規の基に共有結合を生じることができるハロアルキル基;
(d)Diels-Alder反応に関与できる、例えばマレイミド基のようなジエノフィル基;
(e)例えば、イミン、ヒドラジン、セミカルバゾンもしくはオキシムの形成を介するか、またはグリニャール(Grignard)付加もしくはアルキルリチウム付加を介して、続いて誘導化が可能なアルデヒド基またはケトン基;
(f)続いてアミンと反応し、例えばスフホンアミドを形成するスルホニルハロゲン化基;
(g)ジスルフィドに変換可能であるか、またはアシルハロゲン化物と反応できるチオール基;
(h)例えばアシル化またはアルキル化可能なアミン基またはスルフリドリル基;
(i)例えば、付加環化、アシル化、ミカエル(Michael)付加等を経ることができるアルケン;ならびに
(j)例えば、アミンおよびヒドロキシル化合物と反応できるエポキシド。
【0103】
反応成分はまたは認識成分であり得る。これらの基の性質を以下に詳しく論ずる。
【0104】
反応官能基は、官能化されたSAM成分の支持体表面への付着を制御する反応に関与しないか、または妨害しないように選別することができる。または、反応官能基は、保護基の存在によって、反応への関与から保護できる。当業者は、反応条件の選択したセットによる妨害から特定の官能基をどのようにして保護するか了解しているだろう。有用な保護基の例については、Greeneら、PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS, John Wiley & Sons, New York, 1991を参照されたい。
【0105】
2種類またはそれ以上の構造的に異なる成分をSAMの成分として用いる場合は、成分をSAM成分の混合物として支持体と接触させることができ、または成分は個別に加えることもできる。SAM成分を混合物として加える態様では、溶液中の成分混合物のモル比は、混合されたSAMでも同一の比率となる。SAMが集合する様式に応じて、2つの成分は相分離してアイランド(island)を形成する(Bain and Whitesides, J. Am. Chem. Soc. 111:7164 (1989)を参照されたい)。このSAMの特徴を利用して、立体障害といった、これら分子環の特定の相互作用を最小化するように認識成分または嵩高調整基を固定することができる。
【0106】
SAMの個別成分もまた、連続的な様式で支持体に結合できる。したがって、一つの態様では、第1 SAM成分は、第1成分の化学量論的平衡よりも少ない表面官能基を「下張り」することによって支持体表面に取り付けられる。第1成分は、末端反応基または認識基、スペーサーアーム、あるいは単価成分に連結したSAM成分であり得る。続いて、第2成分を支持体に接触させる。この第2成分は、化学量論的平衡状態、化学量論的に過剰のいずれでも加えることができ、または再度下張りを用いて第3成分のために開放部位を残すこともできる。
【0107】
いくつかの態様では、金属イオンは、所望金属イオンの塩のエタノール液で有機層を処理することによって、有機層に取り付けられる。このような金属イオン塩の例は、過塩素酸アルミニウム、過塩素酸銀、過塩素酸バリウム、過塩素酸カドミウム、過塩素酸セリウム、過塩素酸コバルト、過塩素酸クロム、過塩素酸銅、過塩素酸ユーロピウム、過塩素酸鉄(II)、過塩素酸鉄(III)、過塩素酸ガリウム、過塩素酸インジウム、過塩素酸マンガン、過塩素酸ニッケル、過塩素酸鉛、過塩素酸プラセオジニウム、および過塩素酸亜鉛が挙げられが、これらに限定されない。
【0108】
C. アレイ
いくつかの態様では、認識成分(例えば金属イオン)は、スタンピング、マイクロコンタクトプリンティングまたはインクジェットプリンティングを用いて、支持体上に配列される。よりさらなる態様では、認識成分は好適支持体の上に点状に配置される。このような点状配置は、キャピラリーチューブまたはマイクロピペットを用いて手動で、あるいはAffymetrix and Gilson (例えば米国特許第5,601,980号;第6,242,266号;第6,040,193号;および第5,700,637号を参照されたい;これらは、それぞれ参照により本明細書に組み入れられる)から入手可能な自動スポッティング装置を用いて実施できる。
【0109】
V. メソゲン
メソゲン層を形成する任意の化合物または化合物の混合物も、本発明と組み合わせて用いることができる。メソゲンはサーモトロピックまたはリオトロピック液晶を形成できる。サーモトロピックおよびリオトロピック液晶は共に、ネマティック、キラルネマティック、スメクチック、極性スメクチック、キラルスメチック、フラストレート相およびディスコチック相を含む、様々な形態で存在できる。
【0110】
(表1)液晶アッセイ装置での使用に好適なメソゲンの分子構造

【0111】
現在好ましいメソゲンを表1に示す。特に好ましい態様では、メソゲンは、E7、5CB(4-ペンチル-4'-シアノビフェニル)、MLCおよび8CB(4-シアノ-4'オクチルビフェニル)ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択されるメンバーである。
【0112】
メソゲン層は、実質的に純粋化合物であり得、あるいは、それはメソゲンの特性を高めるか、または変更するその他化合物を含有してもよい。このように一つの好ましい態様では、メソゲン層は、第2化合物、例えばアルカンをさらに含み、それはネマティックおよび等方性相が存在する温度の範囲を拡張する。この組成物のメソゲン層を有する装置を用いると、より広い温度範囲について分析物認識成分の相互作用を検出できる。
【0113】
いくつかの好ましい態様では、メソゲン層はさらに、二色性色素または蛍光化合物を含む。本発明で有用な二色性色素および蛍光化合物の例としては、アゾベンゼン、BTBP、ポリアゾ化合物、アントラキノン、ペリレン色素等が挙げられるが、これらに限定されない。特に好ましい態様では、液晶の配向依存性を補完し、アッセイ読み取りに偏光を必要としない蛍光化合物の二色性色素が選ばれる。いくつかの好ましい態様では、液晶の吸収が可視域にない場合、配向の変化を、直交偏光器を使わずに周辺光を用いて観察することができる。別の好ましい態様では、二色性色素または蛍光化合物は、蛍光測定計と組み合わせて用いられ、蛍光の変化を利用して液晶の配向の変化を検知する。
【0114】
VI. 有機リン酸塩の検出
本発明は、試料中の有機リン酸塩の検出のための方法および装置を提供する。本発明の装置は、メソゲン層と、認識成分(例えば金属イオン)が取り付けられた有機層または無機層(例えば金属、金属塩、または金属酸化物)との接触を可能にするいかなる構成でもよい。サイズおよび形状に関する唯一の制限は、装置を使用する状況、またはそれが意図する目的から生ずる制限である。いくつかの態様では、装置は光学セルを含み、その中には第1官能化支持体が、官能化されていてもいなくともよい第2支持体と対向して配置されおり、その中に液晶を入れることができるチャンバーを形成している。別の態様では、一方の表面で環境に開口している単一支持体が用いられる。装置は、平坦でも平坦でなくともあり得る。さらには、本発明を実施するために任意の数の偏光子、レンズ、フィルター、光等を用いることも、本発明の範囲内である。
【0115】
本発明は、いずれかの特定の作用メカニズムに限定されない。実際、作用メカニズムを理解することは本発明を実行するために必要ではない。それでもやはり本発明の装置の液晶を形成するメソゲンは、有機層上に表示された金属イオンに対し親和性を有している。この親和性は、液晶のホメオトロピック配向をもたらす。特定の有機リン酸塩分析物は、メソゲンよりも特定の金属イオンに対し高い親和性を有している。本発明の装置は、有機リン酸塩が試料中に存在するとき、有機リン酸塩が、金属イオンが配列している装置の検出領域内に入り、メソゲンを置換することによってメソゲンと金属イオンとの相互作用を破壊できるように設計されている。この破壊は、液晶内に、様々な方法で検出できる無秩序領域(すなわちホメオトロピック規則的領域とは逆の不規則な領域)を作製する。
【0116】
それゆえに、いくつかの態様では、本発明は有機リン酸塩に結合、またはそれ以外の形で相互作用する認識成分(例えば金属イオン)を含む検出領域を少なくとも一ヵ所含む支持体を提供する。好ましい態様では、検出領域は分散しており、支持体表面上に認識成分を少なくとも一つ配列することによって作製される。好ましい態様では、詳しく上述したようにして、認識成分は支持体または有機層に固定される。いくつかの態様では、各種有機リン酸塩について多重アッセイを行なうことができるか、または各種金属イオンとの様々な相互作用を、ある特定有機リン酸塩のサインとして用いることができるように、複数の金属イオンが支持体表面上に配列されている。いくつかの好ましい態様では、スタンプを用いて金属塩またはイオンを検出領域に転移する。いくつかの特に好ましい態様では、スタンプはPDMSスタンプである。
【0117】
いくつかの態様では、セルを形成するように第1支持体と対向するように形作られている第2支持体が提供される。いくつかの態様では、第2支持体にも認識成分が配列されるが、別の態様では、第2支持体には認識成分はない。いくつかの好ましい態様では、認識成分は、第1および第2支持体が互いに対向して置かれたときに、配列が一致して目立たない検出領域が形成するように第1および第2支持体の上に配列される。
【0118】
いくつかの態様では、第1および第2支持体によって形成されたセルは、第1および第2支持体の間に空間を含んでいる。いくつかの態様では、空間は、第1および第2支持体の間にスペーサーを置くことによって形成される。いくつかの態様では、次に空間は所望の液晶で満たされる。さらに別の態様では、支持体は、試料が検出領域と接触するか、その中に入ることができるように配置されている。いくつかの態様では、支持体はもう一方の支持体に(例えば永久的または取り外し可能に)固定されている。本発明は、任意の特定の固定様式に限定されない。実際、様々な固定様式が想定されている。いくつかの態様では、支持体は、接着テープによってもう一方の支持体に固定されている。好ましい態様では、接着テープは8141圧感接着テープ(3M, Minneapolis, MN)である。別の態様では、支持体はUV硬化接着剤によってもう一方に固定される。いくつかの好ましい態様では、UV硬化接着剤は、PHOTOLEC(登録商標) A704またはA720 (Sekisui, Hong Kong)である。いくつかの態様では、ガラス製スペーサーロッドをUV硬化接着剤と一緒に利用して、2つの支持体の間に空間をもたらす。いくつかの態様では、ガラス製スペーサーロッドは、約5μM〜約100μMの範囲であり、好ましくは約25μMである。いくつかの例については、接着テープが液晶と相互作用することから、UV硬化接着剤の方が好ましいことが見い出されている。
【0119】
さらなる態様では、支持体はハウジング内に配置される。ハウジングは、任意の好適材料を含むことができ、好ましくはプラスチック製である。好ましい態様では、ハウジングは、検出領域に隣接する開口部を除いて、環境に対し密封されている。開口部は、好ましくは、検出領域への空気の拡散を可能にする。いくつかの態様では、開口部は、検出領域への空気の拡散は可能だが、塵、汚損物および昆虫などの粒状物質の検出領域への侵入は許さないフィルター材料で覆われている。いくつかの態様では、フィルターは、検出領域へのエアロゾルの導入は実質的に阻止するが、蒸気形態のOPのような分析物の検出流域への侵入は許すエアロゾルフィルターである。さらにより好ましい態様では、装置は、2ヵ所またはそれ以上に置かれたフィルターを含み、装置を通る空気交換を、特に検出領域を通る空気交換を可能にしている。例えば、フィルターは、検出領域のいずれかの端部に配置できる。さらなる態様では、ハウジングは暴露モードと読みとりモードとの間を移動可能である。暴露モードでは、検出領域は環境に暴露しており、一方読みとりモードでは、環境への暴露は実質的または完全に除外されている。装置を環境に暴露した後、ハウジングを読みとりモードに移動して、読みとり前に環境へのさらなる暴露を防ぐこともできる。
【0120】
よりさらなる態様では、本発明の装置は、固有の識別子を含む。いくつかの態様では、固有識別子はバーコードである。別の態様では、固有識別子はRFIDチップである。固有識別子は、連続番号、使用者認識証明、供給源識別証明等の情報を提供できることが想定される。
【0121】
使用時には、装置は有機リン酸塩がおそらく存在すると疑われる場所に配置するか、個人用モニターとしてヒトに取り付けることが好ましい。装置は、一定期間(暴露期間、例えば1日〜4週間)一ヵ所に起き続けることができる。
【0122】
暴露時間後、セルを、一ヵ所または複数ヵ所の検出領域全体で液晶の変化が起こっているかアッセイする。メソゲン層の多くの変化は、周辺光下での肉眼による観察で見つけることができるが、メソゲン層内の変化を検出するために任意の方法を装置内と組み合わせるか、または装置と一緒に用いることもできる。このように、光、顕微鏡、分光計、電気技術等を用いて、メソゲン層内の変化の検出を補助することは、本発明の範囲内である。いくつかの態様では、有機リン酸塩の存在は、液晶の色と肌目の変化で検出される。
【0123】
したがって、可視領域のスペクトルを持つ光を利用する態様では、光はメソゲン層を詳細に照明するためにだけ用いることができる。または、光はメソゲン層を通過させることができ、透過、吸収または反射された光の量を測定することができる。装置は、例えば、参照によって本明細書に組み入れられる米国特許第5,739,879号に記載のようなバックライト装置を利用できる。紫外領域および赤外領域の光もまた、本発明に役立つ。別の態様では、装置は、特に検出領域内は、単色光源(例えば660nm LED)で照明される。いくつかの態様では、セルは直交偏光レンズの間に置かれ、光はレンズおよびセルを通過する。さらに別の態様では、検出領域は、装置全体を覆うテンプレートまたはマスクによって、装置の残りの部分から露顕される。
【0124】
本発明の装置は、有機リン酸塩への累積暴露の測定に有用である。いくつかの態様では、累積暴露は、検出領域への波面の進行を決定することによってアッセイする。波面は検出領域と関係する開口部から前進すると考察される。前進距離は、有機リン酸塩への暴露の程度に相関しており、したがって定量的である。特に、検出領域内への波面の進行速度は、装置が暴露している有機リン酸塩の濃度に依存すると考察される。好ましい態様では、ミリメートル単位の正面運動が、時間単位の遅延時間に対してプロットされる。得られたプロットは、試料(例えば局所大気)中の有機リン酸塩の濃度を特徴付ける直線近似(0.95より高い相関係数をもつことが好ましい)に従う。いくつかの好ましい態様では、波面の進行は、検出領域のデジタル画像を捕獲し、かつ開口部からの波面の面積および長さを画素単位で決定することによって測定される。いくつかの好ましい態様では、画像はScion Image (NIH無料ソフト)のようなプログラムを用いて解析される。画素は、必要であれば、その後ミリメートルに変換できる。別の態様では、画像は、有機リン酸塩によって液晶が破壊された領域は白色になって現れるように%ホワイトコマンドを用いた画像に変換することによって解析される。波面進行度は、画素強度を測定し、画像が高強度(白色)から低強度(黒)に変化する場所を決定することによって決定できる。
【0125】
本発明の装置は、特定の有機リン酸塩を識別するのにも用いることができる。いくつかの態様では、装置の検出領域は、少なくとも2種類の異なる金属イオンのアレイを含む。少なくとも2種類の異なる金属イオンに対する反応のパターンを用いて、特定化合物を識別できる。
【0126】
VIII. スタンドオフ検出
別の態様では、本発明は、遠隔距離からの分析物の検出(すなわちスタンドオフ検出)に使用する方法および装置を提供する。このような態様は、広い面積または環境全体での分析物の存在の決定、特に分析物が大気中に存在するかしないかの決定に特に有用である。それゆえに、いくつかの好ましい態様では、大気中に分散でき、遠隔、例えば10メートル、100メートル、1キロメートルまたは10キロメートルから、人工衛星の場合の約1000キロメートルまたはそれ以上まで探測できる液晶アッセイ装置が提供される。装置は、上記のような有機リン酸塩、または以下にさらに詳しく記載するような複数の追加分析物を検出するように形作ってもよい。
【0127】
いくつかの態様では、以下にさらに詳しく記載する本発明の装置は、認識成分を表示する表面を少なくとも一つ含む。好ましい態様では、装置は、チャンバーを作製するように第1表面に対向する、第2表面を含む。好ましい態様では、チャンバーは液晶を含有する。いくつかの態様では、第2表面も認識成分を表示する。上に詳しく記載した表面を含め、様々な表面が利用できる。いくつかの好ましい態様では、第1表面は金であり、第2表面はナノポーラス金である。別の態様では、表面は、多孔質シリコンの細孔の表面であり、液晶が細孔を満たしている。
【0128】
いくつかの態様では、装置は、装置に電磁放射線を照射することによって遠隔から探測される。本発明は、任意の特定の作用メカニズムに限定されない。実際、本発明を実施するために本発明の作用メカニズムを理解することは必要ではない。しかしながら標的分析物が認識成分に結合し、液晶の配向遷移を誘導した場合、液晶(LC)が含浸している官能化ナノ構造と電磁放射線との相互作用が変化すると考察される。いくつかの態様では、これら装置は空気中で混転するように十分に小さい(例えば1〜500ミクロン;好ましくは1〜100ミクロン)。別の態様では、装置は若干重く、その結果、それらは地表に定着する。装置内の液晶の配向の変化は、探測放射線の電磁スペクトル(波長または強度)の変化として現れると考察される。
【0129】
さらに、ナノ構造と電磁放射線間との相互作用の性質は、ナノ構造の誘電性環境に強く依存していることが考察される。分析物がナノ構造の表面に結合すると、誘電特性に極わずかな小さな変化が起こるが、この変化を検出することは非常に難しい。しかしながら、官能化したナノ構造にLCを含浸させると、レセプターへの分析物の結合がLCの配向遷移を誘導し、これがナノ構造全体に伝播する。これがナノ構造の誘電特性に大きな変化をもたらし、その結果探測の電磁スペクトルに大きな変化を引き起こす。
【0130】
例えば、いくつかの態様では、ナノ構造を持つ小さな変換素子片(例えば本発明の装置)は、飛行機、ヘリコプター、気球、ロケット等の空輸手段を用いて空気中に播かれる。用いる粒子のサイズおよび読み取り優先度によっては、これらナノ構造質は空気中で混転するか、または野外に定着する。好ましい態様では、これら変換素子へは、人工衛星、飛行機またはその他の移動照射源を介して電磁放射線を用いて遠隔地から命令信号が送られる。発信器は、規則的に電磁放射線を送り、検出器はこれら素子から送り返された反応を集める。標的分析物が受容器に結合すると、探測電磁スペクトルが変化する。この変化は、関係するメカニズムの違いに基づいて大きく3つのカテゴリーに分けられる、様々な方法で探測できる。いくつかの態様では、電磁放射線は、標的分析物がナノ構造に結合すると反射され、反射スペクトルが変化する。別の態様では、装置が入射放射線を吸収して、異なる波長の電磁放射線を再放射する。分析物が受容器に結合すると、放射スペクトルが変化する。別の態様では、装置は電磁放射線を特定方向に回折する。標的分析物が受容器に結合すると、回折スペクトルの特性が変化する。いくつかの態様では、異なる分析物を検出するように形作られた素子を、一緒に分散させて、重複型のスタンドオフアッセイを提供する。これらの態様では、第1分析物を検出するように形作られた第1素子から放射されたスペクトルは、第2分析物を検出するように形作られた第2素子の放射スペクトルと異なることが好ましい。
【0131】
本発明のスタンドオフ検出法は、ポリペプチド(例えばタンパク質)、毒素、ポリヌクレオチド(例えばRNAおよびDNA)、炭水化物、ウイルス、マイコプラズマ、真菌、細菌および原生動物を含む生体分子、特に大痘瘡(Variola major)(天然痘)、炭疽菌(Bacillus anthracis)(炭疽菌)、ペスト菌(Yersinia pestis)(ペスト)、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)(ボツリヌス中毒)、野兎病菌(Francisella tularensis)(野兎病)、アレナウイルス(Arenaviruses)(アレナウイルス)、エボラ出血熱ウイルス、マールブルグ出血熱、ラッサ熱ウイルス、フニンおよび関連ウイルス(アルゼンチン出血熱ウイルス、ボリビア出血熱ウイルス、ブラジル出血熱ウイルス、ベネズエラ出血熱ウイルス)、デング出血熱ウイルスなどのクラスA病原体、およびボツリヌスおよびトリコテセン(T2)マイコトキシンの様な毒素;コクシエラブルネッティ(Coxiella burnetti)(キュー熱)、ブルセラ種(Brucella sp.)(ブルセラ症)、バークホルデリアマレイ(Burkholderia mallei)(鼻疽)、サルモネラ種(Salmonella sp.)、志賀(赤痢)菌(Shigella dysenteria)、大腸菌圧力(Escherichia coli strain)O 157:H7、クリプトスポリジウム・パラバム(Cryptosporidium parvum)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、西ウマ脳炎ウイルスなどのアルファウイルス(Alphaviruses)(トガウイルス科)ならびにリシン毒素、ウェルシュ菌(Clostridium perfigens)由来のエプシリン毒素、ブドウ球菌エンテロトキシンBなどのクラスB病原体;多剤耐性結核菌、ニパウイルス、ハンタウイルス、ダニ介在出血熱ウイルス、および黄熱病ウイルスなどのクラスC病原体を含むが、これらに限定されない様々な分析物の検出にとって有用である。
【0132】
その他分析物としては、酸、塩基、有機イオン、無機イオン、医薬品、除草剤、農薬、化学兵器、および毒ガスが挙げられるが、これらに限定されない。これら作用物質は、構造的に関連性のない化合物の混合物、立体異性体のラセミ混合物、立体異性体の非ラセミ混合物、ジアステレオマーの混合物、位置異性体の混合物の成分として、または純粋化合物として存在できる。混合物内のその他物質からの妨害を受けずに、関心対象の粒状分析物を検出する装置および方法は、本発明の範囲内である。有機リン酸塩分析物の例としては、アセフェート(Orthene)、アジンホス-エチル、アジンホス-メチル(Guthion)、アジンホス-メチルオキソン、ブロモホス−メチル、カルボフェノチオン(Trithion)、クロルフェンビンホス(Supona)、クロロピリホス(Dursban/Lorsban)、クロルピリホス−メチル、クロルチオホス、クマホス(Co-Ral)、クロトキシホス(Ciodrin)、シアノホス、DEF (Butifos)、デメトン(Systox)、デメトン-ジアリホール(Torak)、ダイアジノン(O Analog)、ダイアジノン(Spectracide)、ジクロルボス-DDVP (Vapona)、ジクロトホス(Bidrin)、ジメトエート(Cygon)、ジオキサチン(Delnav)、ジスルホトン(Disyston)、ジスルホトンスルホン、エジフェンホス、EPN、エチオン(Nialate)、エトプロプ(Mocap)、エチルパラチオン、フェナミホス(Nemacur)、フェニトロチオン(Sumithion)、フェンスルホチオン(Dasanit)、フェンチオン(Baytex)、ホノホス(Dyfonate)、ホルモチオン、ヘプテノホス、イミダン(Phosmet)、イサゾホス(Triumph)、イソフェンホス(Amaze)、レプトホス(Phosvel)、マラオキソン、マラチオン(Celthion)、メルホス(Tribufos)、メタミドホス(Monitor 4)、メチダチオン、メチルパラチオン(Metacide)、メビンホス(Phosdrin)、モノクロトホス、ナレッド、オメトエート(Dimethoate O analog)、パラチオン(Alkron)、パラオキソン(Paroxon)、ホレート(Thimet)、ホレート-o、ホレートスルホン、ホレートスルホキシド、ホサロン、ホスファミドン(Dimecron)、ピペロホス、ピリミホス−エチル、ピリミホス−メチル、プロフェノホス(Curacron)、プロペタンホス(Safrotin)、ピラゾホス(Afgan)、キナルホス、ロンネル(Ectoral) (Fenchlorphos)、スルポロホス(Bolstar)、テルブホス(Counter)、テトラクロルビンホス(Gardona)、チオナジン(Zinophos)、およびトリアゾホス(Hostathion)を含むが、これらに限定されない農薬として用いられる有機リン酸塩、およびG剤(G agent)(GD、ソマン;GB、サリン;およびGA、タブン)およびV剤(V agent)(VX)を含むが、これらに限定されない神経作用物質(例えば毒ガス)が挙げられる。
【0133】
他の分析物としては、フェノキシアルカン酸、ビピリジニウム、ベンゾニトリル、ジニトロアニリン、酸性アミド、カルバメート、チオカルバメート、(トリアジン、ピリジン、ピリダジノン、スルホニル尿素、イミダゾール)を含む複素環式窒素化合物、置換領域、ハロゲン化脂肪族カルボン酸、無機物、有機金属および生物学的に重要なアミノ酸の誘導体のような利用可能な除草剤を含む、置換トリアジン、ハロアセトアニリド、カルバメート、トルイジンおよびジフェニルエーテルのような除草剤;HD、Q、T、HN1、HN2、HN3、イソプロピルメチルホスホノフルオリダート、ソマンピナコリル、およびメチルホスホノフルオリド酸として知られる薬物を含むマスタードおよび関連発疱剤からなる群のメンバーである化学兵器;BZ、3-キヌクリジニルベンジラートのような麻痺剤、および暴動鎮圧剤CSのような刺激剤、殺菌剤(例えばホルムアルデヒド)、燻蒸剤(例えばブロモメタン)、殺真菌薬(例えば2フェニルフェノール、ビフェニル、酸化第二水銀、イマザリル)、殺ダニ剤(例えばアバメクチン、ビフェントリン);CO、CO2、SO3、H2SO4、SO2、NO、NO2、N2O4のような有毒ガスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0134】
よりさらなる態様では、本明細書に開示されているシステムにより検出できる分析物としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、2-ブテナール、エタノール、3-メチルブタナール、4-メチルペンタノン、ヘキサナール、ヘプタナール、2-ペンチルフラン、およびオクタナールやVOCのような揮発性有機化合物、ならびにガソリンの成分および添加物、ベンゼン、ジクロロメタン(メチレンクロリド);トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン(ペルクロロエチレン)、メチル第三級ブチルエーテル、クロロホルム、ブボルモジクロロメタン、クロロジブロモメタン、ブロモホルム、モノクロロ酢酸(onochloroacetic acid)、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、モノブロモ酢酸、ジブロモ酢酸、四塩化炭素、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン、1,2-ジクロロエタン、cis-ジクロロエチレン、trans-ジクロロエチレン、ジクロロメタン、1,2-ジクロロプロパン、エチルベンゼン、スチレン、テトラクロロエチレン、1,1,1-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、トルエン、1,2,4-トリクロロベンゼン、1,1-ジクロロエチレン、1,1,2-トリクロロエタン、塩化ビニル、キシレン、2,3,7,8-TCDD(ダイオキシン)、2,4-D、2,4,5-TPアラクロル、ヘプタクロル、ヘプタクロルエポキシド、ヘキサクロロベンゼン、ヘキサクロロシクロペンタジエン、リンダン、メトキシクロル、オキサミル、PCB類(デカクロロビフェニルのような)、PCB類(アロクロルのような)、ペンタクロロフェノール、ピクロラム、シマジン、およびトキサフェンのような産業用化学物質、溶媒および脱脂剤、が挙げられる。
【0135】
他の分析物としては、過酸化アセトン、アリルヒドロペルオキシド、硝酸アンモニウム、ピクリン酸アンモニウム、アストロライト、硝酸ベンザルアミノグアニジン、a-ベンゼンジアゾベンジルヒドロペルオキシド、DADNBU、DADNPE、DDNP、ジニトロベンゼン、ジニトロクロロベンゼン、ジニトロポリスチレン、DNPA、EGDN(エチレングリコールジナトラート)、FOX-7、炭酸グアニジン、硝酸グアニジン、1,1,1,3,5,5,5-ヘプタニトロペンタン、二硝酸ヘキサメチルエネテラアミン、ヘキサニトロカルバニリド、ヘキサニトロジフェニルアミン、HMTD、HMX(オクトゲン)、HNIW、HNO、IPN、アジ化鉛、ニトラトホスフィット鉛、ピクリン酸鉛、スチフニン酸鉛、2,4,6-トリニトロ-3鉛、オキシベンゾアート、マルトースオクタニトレート、六硝酸マンニトール、MEDINA、MEDNA、MeEDNA、ニトラトホスフィット水銀(Mercurous Nitratophosphite)、雷酸水銀、2-メチル-2-ニトロ-1 プロパノールニトレート、三硝酸メトリオール、MMAN、NIBGkDN、NIBGTN、硝化石油、m-過塩素酸ニトロベンゼンジアゾニウム、二硝酸2-ニトロ-2-(3,5-ジニトロフェニル)-プロパンジオール-1,3、硫化窒素、三塩化窒素、三ヨウ化窒素、ニトログリセリン、ニトログアニジン、二硝酸2-ニトロ-2-(m-ニトロフェニル)-プロパンジオール-1,3、ニトロソグアニジン、ニトロ化デンプン、過塩素酸ニトロシル、NONA、NPN、NTN、過塩素酸塩、N-ペルクロリルピペラジン、PETN(四硝酸ペンタエリスリトール、データシートを含む)、ペトリン、ペトリンアクリラート、PGDN、1-フェニル-2-ニトロ-1-プロペン、ピクリン酸、m-ピクリルピクリルクロリド、ピクリン酸カリウム、ピクリン酸プロピル、PVN、RDX (ヘキソゲン、C-4を含む)、セムテックス、(RDXプラスPETN)、雷酸銀、TACC、TATB(1,3,5-トリアミノ-2,4,6-トリニトロベンゼン)、TeNN、テトラセン、テトラニトロメタン、テトリル、TNO、TNPEN、TNPht、三過酸化トリアセトン、トリニトロアニソール、トリニトロベンゼン、トリニトロ-m-クレゾール、トリニトロメタン、2,4,6-トリニトロ-m-フェニレンジアミン、1,1,1-トリニトロ-2-プロピルアクリラート、トリニトロスチルベン、トリニトロトルエン、Tris[1,2-ビス(ジフルオロアミノ)-エチル]イソシアヌレート、および尿素硝酸塩を含むが、これらに限定されない爆薬、ならびにEGDN(二硝酸エチレングリコール)、DMNB (2,3-ジメチル-2,3-ジニトロブタン)、o-MNT、p-MNT、2,4-ジニトロトルエン、1,3-ジニトロベンゼン、3,5-ジニトロトルエン、1,4-ジニトロベンゼン、1,2-ジニトロベンゼン、エチルベンゼン、m-キシレン、スチレン、ノナン、アルファ-ピネン、デカン、エチルヘキサノール、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、シクロヘキサノン、トルエンおよび2-エチル-1-ヘキサノールを含むが、これらに限定されない爆発性化合物のタグが挙げられるが、これらに限定されない。
【0136】
他の検出可能な分析物としては、アクロレイン、臭化ベンジル、塩化ベンジル、ヨウ化ベンジル、ブロモアセトン、ブロモアセトフェノン、ブロモベンジルシアニド、ブロモピクリン、一酸化炭素、臭化カルボニル、クロロアセトン、クロロアセトフェノン、クロロフォルムオキシム、クロロメチル、クロロホルメート、クロロピクリン、クロロスルホン酸、臭化シアン、塩化シアン、フッ化シアン、ヨウ化シアン、シクロサリン、シクロソマン、ジブロモアセチレン、ジブロモメチルエーテル、ジブロモメチルスルフィド、ジクロロエチルスルフィド、ジクロロホルムオキシム、ジクロロメチルクロロホルメート、ジクロロメチルエーテル、ジヨードアセチレン、ジヨードエチルスルフィド、硫酸ジメチル、ジフェニルクロロアルシン、ジフェニルシアノアルシン、エチルブロモアセタート、エチルクロロアセタート、エチルジクロロアルシン、エチルヨードアセタート、ヘキサクロロメチルカーボネート、シアン化水素酸、ルイサイト、メチルクロロホルメート、メチルクロロスルホネート、メチルジクロロアルシン、メチルフルオロスルホネート、メチルホルメート、メチル硫酸、塩化オキサリル、ペルクロロメチルメルカプタン、塩化フェナルサジン、フェニルカルビルアミンクロリド、フェニルジクロロアルシン、ホスゲン、塩化スルフリル、テトラクロロジニトロエタン、チオホスゲン、チオサリン、チオソマン、トリクロロメチルクロロホルメート、トリクロロニトロソメタン、および臭化キシリルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0137】
本発明の装置は、上記の分析物を検出するために複数種類の認識成分を利用することを意図する。いくつかの態様では、装置は、単一タイプの認識成分を含むが、一方、別の態様では、装置は、二つまたは異なるタイプの認識成分を含み、多重アッセイ装置を提供する。
【0138】
本発明のいくつかの態様では、支持体に取り付けられるか、または会合している「認識成分」を用いて、別の分子(例えば分析物)と結合、またはそうでなければ相互作用する。例えば、いくつかの態様では、認識成分は、ω-官能化スペーサーまたはω-官能化SAM成分のいずれかに取り付けられ、つぎにこれが支持体に取り付けられるか、または会合する。さらには、認識成分は、ポリマー表面(例えば擦り磨かれたポリマー表面)に表示できる。
【0139】
いくつかの態様では、認識成分は有機官能基を含む。現在好ましい態様では、有機官能基は、アミン、カルボン酸、薬物、キレート剤、クラウンエーテル、シクロデキストリンまたはそれらの組み合わせからなる群から選択されるメンバーである。
【0140】
別の好ましい態様では、認識成分は、上記の金属イオンである。好ましい金属イオンとしては、Al3+、Ag1+、Ba3+、Cd2+ Ce3+、Co2+、Cr3+、Eu3+、Fe2+、Fe3+、Ga3+、In3+、Mn2+、Ni2+、Pb2+、Pr3+、Zn2+およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0141】
別の好ましい態様では、認識部位は生体分子である。よりさらに好ましい態様では、生体分子は、タンパク質、抗原結合タンパク質、ペプチド、核酸(例えば単一ヌクレオチドまたはヌクレオシド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、ならびに単鎖または多鎖核酸)あるいはそれらの組み合わせである。現在好ましい態様では、認識成分はビオチンである。本発明のいくつかの態様では、認識成分は抗原結合タンパク質である。このような抗原結合タンパク質としては、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、単鎖、Fab断片およびFab発現ライブラリーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0142】
ポリクローナル抗体の産生には、当技術分野公知の様々な方法を用いることができる。抗体の産生には、ウサギ、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ等を含むが、これらに限定されない様々な宿主動物を、エピトープに対応するペプチドを注射して免疫することができる。好ましい態様では、ペプチドは、免疫原性キャリア(例えばジフテリア類毒素、牛血清アルブミン(BSA)またはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH))に接合させられる。宿主の種に応じて、フロイント(完全および不完全)アジュバント、ミネラルゲル(例えば水酸化アルミニウム)、表面活性剤(例えばリソレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳濁液、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、および潜在的に有用なBCG (Bacille Calmette-Guerin)およびコリネバクテリア・パラバム(Corynebacterium parvum)のを含むが、これらに限定されない様々なアジュバントを用いて、免疫応答を高めることができる。
【0143】
モノクローナル抗体の調製については、継続的な培養細胞株による抗体分子の産生を提供する任意の技術が本発明と共に使用することが考察される(例えばHarlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NYを参照されたい)。このようなものには、最初にKohlerおよびMilsteinが開発したハイブリドーマ技術(Kohler and Milstein, Nature 256:495-497 [1975])、ならびにトリオーマ(trioma)技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(例えばKozbor et al, Immunol. Tod., 4:72 [1983]を参照されたい)およびヒトモノクローナル抗体を産生するEBV-ハイブリドーマ技術(Cole et al., in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96 [1985]を参照されたい)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0144】
加えて、単鎖抗体の産生について記載された技術(米国特許第4,946,778号;参照により本明細書に組み入れられる)は、認識成分として役立つ特異的単鎖抗体の産生に使用を見い出されると考察される。さらには、抗体断片の産生に好適な任意の技術は、有用な認識成分である抗体断片の作成に使用を見い出されると考察される。例えば、このような断片としては、抗体分子のペプシン消化によって産生できるF(ab')2断片;F(ab')2断片のジスルフィド架橋を還元することによって作成できるFab'断片、および抗体分子をパパインおよび還元剤で処理することによって作成できるFab断片が挙げられるが、これらに限定されない。よりさらなる態様では、認識成分は、抗原結合タンパク質をディスプレイしているファージを含む。
【0145】
認識成分がポリヌクレオチドまたはポリペプチドであるいくつかの態様では、複数の認識成分が、光活性化化学、マイクロコンタクトプリンティグおよびインクジェットプリンティングを用いて支持体上に配列される(例えば、米国特許第6,045,996号;第5,925,525号;および第5,858,659号を参照されたい;それぞれ、参照により本明細書に組み入れられる)。工程は、一続きのフォトリソグラフマスクを用いて支持体の暴露位置を画定し、続いて特異的な化学合成段階を実施し、各プローブが事前に画定されたアレイ中の位置に在るように、高密度のオリゴヌクレオチドのアレイを構成する。多数のプローブアレイが、例えば大きなガラス製ウェーハ上に、同時に合成される。次にウェーハをさいの目に切り、個々のプローブアレイを、環境からそれらを保護し、ハイブリダイゼーションのためのチャンバーの役割を果たす、射出成形製造のプラスチックカートリッジ内に組み入れる。
【0146】
別の態様では、核酸認識成分は、好適支持体上に電気的に捕捉される(例えば、米国特許第6,017,696号;第6,068,818号;および6,051,380号を参照されたい;それぞれ参照により本明細書に組み入れられる)。本技術は、マイクロエレクトロニクスを用いることによって、半導体マイクロチップ上の指定試験部位に荷電分子を能動的に動かして、濃縮させることができる。所与の標的に固有であるDAN捕捉プローブは、マイクロチップ上の特異部位に電気的に配置されるか、または「向けられる」。DNAは強い負の電荷を有していることから、それは正に帯電した領域に向かって電気的に動くことができる。
【0147】
よりさらなる態様では、認識成分は、表面張力の差を利用することによって好適支持体の上に配列される(例えば、米国特許第6,001,311号、第5,985,551号;および第5,474,796号を参照されたい;それぞれ、参照によって本明細書に組み入れられる)。この技術は、流体を、化学的コーティングによって付与された表面張力の差を利用して、平坦表面上で分離することができるという事実に基づいている。ひとたびそのように分離したら、オリゴヌクレオチドプローブを、インクジェットプリンティング試薬によってチップ上に直接合成する。表面張力により画定された反応部位を持つアレイは、それぞれが4つある標準的なDNA塩基の一つを扱う、4本の圧電性ノズルのセットの下にあるX/Y並進ステージの上に据え付ける。並進ステージは、アレイの各横列にそって動き、各反応部位に適切な試薬が送られる。例えば、合成段階においてアミダイトAをカップリングしなければならい部位だけにAアミダイトが送られるといった具合である。共通試薬および洗浄剤は、表面全体を浸水させることにより送られ、次に回転によってそれらは取り除かれる。
【0148】
よりさらなる態様では、認識成分は好適支持体上にスポッティングされる。このようなスポッティングは、キャピラリー管またはマイクロピペットを用いて手動、またはAffymetrixおよびGilsonより入手できるような自動スポッティング装置 (例えば、米国特許第5,601,980号;第6,242,266号;第6,040,193号;および第5,700,637号:それぞれ、参照によって本明細書に組み入れられる)によって実施できる。
【0149】
認識成分がアミンの時は、好ましい態様では、認識成分は、アミンに結合することによって反応する、分析物上の構造と相互作用するだろう(例えば、カルボニル基、アルキルハロ基)。別の好ましい態様では、アミンは関心対象の分析物上の酸性成分(例えばカルボン酸、スルホン酸)によってプロトン化される。
【0150】
ある好ましい態様では、認識成分がカルボン酸の時、認識成分は複合体形成(例えば金属イオン)によって分析物と相互作用するだろう。さらに別の好ましい態様では、カルボン酸は分析物上の塩基性基(例えばアミン)をプロトン化するだろう。
【0151】
別の好ましい態様では、認識成分は薬物成分である。薬物成分は、臨床使用が既に承認されている薬物でよく、またはそれらは、その使用が実験的であっても、あるいはその活性もしくは作用機序が研究中のものである薬物でもあり得る。薬物成分は、所与の疾患状態について証明済みの作用を有しても、または所与の疾患状態において望ましい作用を示すと単に仮説がたてられているものでもよい。好ましい態様では、薬物成分は、選択された分析物と相互作用する能力についてスクリーニングを受けている最中の化合物である。このように、本発明の実施に有用な薬物成分としては、様々な薬理活性を有する、広範囲の薬物分類の薬物を挙げることができる。
【0152】
有用な薬物の分類としては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)が挙げられる。MAIDSは、例えば、次のカテゴリーから選択できる:(例えば、プロピオン酸誘導体、酢酸誘導体、フェナミック酸(fenamic acid)誘導体、ビフェニルカルボン酸誘導体およびオキシカム);ヒドロコルチゾン等を含むステロイド性抗炎症薬;抗ヒスタミン剤(例えばクロロフェニラナム、トリプロリジン);鎮咳薬(例えば、デキストロメトルファン、コデイン、カルミフェンおよびカルベタペンタン);鎮痒薬(例えば、メチジリジンおよびトリメプリジン):抗コリン作用薬(例えばスコポラミン、アトロピン、ホマトロピン、レボドーパ);制嘔吐剤および制吐薬(例えば、シクリジン、メクリジン、クロロプロマジン、ブクリジン);食欲抑制薬(例えば、ベンズフェタミン、フェンテルミン、クロロフェンテルミン、フェンフルラミン);中枢興奮薬(例えば、アンフェタミン、メトアンフェタミン、デキストロアンフェタミンおよびメチルフェニデート);不整脈治療薬(例えばプロパノロール、プロカインアミド、ジソピラミド(disopyraminde)、キニジン、エンカイニド);P-アドレナリン作動遮断薬(例えば、メトプロロール、アセブトロール、ベタキソロール、ラベタロールおよびチモロール);強心剤(例えば、ミルリノン、アムリノンおよびドブタミン);高血圧治療薬(例えば、エナラプリル、クロニジン、ヒドララジン、ミノキシジル、グアナドレル、グアネチジン);利尿剤(例えば、アミロリドおよびヒドロクロロチアジド);血管拡張薬(例えば、ジルタゼム、アミノダロン、イソスプリン、ニリドリン、トラゾリンおよびベラパミル);血管収縮剤(例えば、ジヒドロエルゴタミン、エルゴタミンおよびメチルセルジド);抗潰瘍薬(例えば、ラニチジンおよびシメチジン);麻酔薬(例えば、リドカイン、ブピバカイン、クロルプロカイン、ジブカイン);抗うつ薬(例えば、イミプラミン、デシプラミン、アミトリプチリン、ノルトリプチリン);トランキライザーおよび鎮静剤(例えば、クロルジアゼポキシド、ベナシチジン、ベンズキナミド、フルラザパン(flurazapam)、ヒドロキシジン、ロキサピンおよびプロマジン);抗精神病薬(例えばクロルプロチキセン、フルフェナジン、ハロペリドール、モリンドン、チオリダジンおよびトリフルオペラジン);抗菌剤(抗菌薬、抗真菌薬、抗原虫薬および抗ウイルス薬)。
【0153】
本組成物内への組み入れに好ましい抗菌薬としては、例えば、βラクタム系薬物の薬学的に許容される塩、キノロン系薬剤、シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、テトラサイクリン、エリスロマイシン、アミカシン、トリクロサン、ドキシサイクリン、カプレオマイシン、クロルヘキシジン、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、クリンダマイシン、エタンブトール、ヘキサミジンイソチオネート、メトロニダゾール;ペンタミジン、ゲンタマイシン、カナマイシン、リネオマイシン、メタサイクリン、メテナミン、ミノサイクリン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、ミコナゾール、およびアマンファジンが挙げられる。
【0154】
本発明の実施に使用する他の薬物成分としては、抗新生物薬(例えば抗アンドロゲン薬(例えば、ロイプロリドまたはフルタミド)、細胞破壊薬(例えば、アドリアマイシン、ドキソルビシン、タキソール、シクロホスファミド、ブスルファン、シスプラチン、a-2-インターフェロン)抗エストロゲン薬(例えば、タモキシフェン)、抗代謝薬(例えば、フルオロウラシル、メトトレキセート、メルカプトプリン、チオグアニン)が挙げられる。
【0155】
認識成分はまた、ホルモン(例えば、メドロキシプロゲステロン、エストラジオール、ロイプロリド、メゲストロール、オクトレオチド、またはソマトスタチン);筋弛緩剤(例えば、シンナメドリン、シクロベンザプリン、フラボキサート、オルフェナドリン、パパベリン、メベベリン、イダベリン、リトドリン、ジフェノキシレート(dephenoxylate)およびアズモレン);抗痙攣薬;骨活性薬(例えば、ジホスホネートおよびホスホノアルキルホスフィネート薬化合物);内分泌調節薬(例えば避妊薬(例えばエチノジオール、エチニルエストラジオール、ノルエチンドロン、メストラノール、デソゲストレル、メドロキシプロゲステロン)、糖尿病調節薬(例えば、グリブリドまたはクロルプロパミド)、テストラクトンまたはスタノゾロールのような同化薬、アンドロゲン(例えば、メチルテストステロン、テストステロン、またはフルオキシメステロン)、抗利尿薬(例えば、デスモプレシン)およびカルシトニン)も包含できる。
【0156】
本発明で同様に使用できるものは、エストロゲン(例えばジエチルスチルベステロール)、グルココルチコイド(例えばトリアムシノロン、ベタメタゾン等)、およびノルエチンドロン、エチナジオール、ノルエチンドロン、レボノルゲストレルのようなプロゲストゲン;甲状腺薬(例えばリオチロニンまたはレボチロキシン)または抗甲状腺薬(例えばメチマゾール);抗過プロラクチン血症薬(例えばカベルゴリン);ホルモン抑制薬(例えば、ダナゾールまたはゴセレリン)、陣痛促進剤(例えばメチルエルゴノビンまたはオキシトシン)、ならびにミオプロストール、アルプロスタジルであり、ジノプロストンのようなプロスタグランジンも使用できる。
【0157】
その他有用な認識成分としては、免疫調節剤(例えば、抗ヒスタミン剤、ロドキサミドおよび/またはクロモリンのような脂肪細胞安定化剤、ステロイド(例えばトリアムシノロン、ベクロメタゾン、コルチゾン、デキサメタゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ベクロメタゾン、またはクロベタゾール)、ヒスタミンH2アンタゴニスト(例えば、ファモチジン、シメチジン、ラニチジン)、免疫抑制剤(例えば、アザチオプリン、シクロスポリン)、等が挙げられる。スリンダク、エトドラク、ケトプロフェンおよびケトロラクのような抗炎症活性を持つ群も用いられる。本発明と関連して使用される他の薬物は、当業者には明らかであろう。
【0158】
認識成分がキレート化剤、クラウンエーテルまたはシクロデキストリンの場合、認識成分と分析物との間の相互作用は、ホスト−ゲスト化学が優勢である。ホスト-ゲスト化学は、発明の装置に設計する認識-成分-分析物の特異度を高くすることができる。これら化合物を用いた特定化合物への結合は、当業者に周知である。例えば、Pittら、「The Design of Chelating Agents for the Treatment of Iron Overload」、In, INORGANIC CHEMISTRY IN BIOLOGY AND MEDICINE; Martell, A.E., Ed.; American Chemical Society, Washington, D.C., 1980, pp. 279-312; Lindoy, L.F., THE CHEMISTRY OF MACROCYCLIC LIGAND COMPLEXES; Cambridge University Press, Cambridge, 1989; Dugas, H., BIOORGANIC CHEMISTRY; Springer-Verlag, New York, 1989、およびそこに含まれる参照を参照されたい。
【0159】
加えて、当業者は、キレート化剤、クラウンエーテルまたはシクロデキストリンを他の分子に取り付けられるようにする多種多様な経路を利用できる。例えば、Mearesら、「Properties of In Vivo Chelate-Tagged Proteins and Polypeptides」、In, MODIFICATION OF PROTEINS: FOOD, NUTRITIONAL, AND PHARMACOLOGICAL ASPECTS;「Feeney, R.E., Whitaker, 1.R., Eds., American Chemical Society, Washington, D.C, 1982, pp.370-387; Kasinaら、Bioconjugate Chem. 9:108-117 (1998); Songら、Bioconjugate Chem. 8:249-255 (1997)を参照されたい。
【0160】
現在好ましい態様では、認識成分は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)のようなポリアミノカルボキシラートキレート化剤である。これら認識成分は、市販されている二無水物(Aldrich Chemical Co., Milwaukee, WI)を利用して、任意のSAMのアミン末端成分またはスペーサーアームに取り付けることができる。
【0161】
よりさらに好ましい態様では、認識成分は、タンパク質、核酸、ペプチドまたは抗体のような生体分子である。本発明の実施に有用な生体分子は、いずれの供給源に由来し得る。生体分子は、天然供給源から単離でき、または合成法によって生成し得る。タンパク質は、天然タンパク質でも、または突然変異したタンパク質でもあり得る。突然変異は、化学的突然変異誘導、部位指定突然変異誘導、またはその他当業者公知の突然変異誘導法により起こすことができる。本発明の実施に有用なタンパク質としては、例えば、酵素、抗原、抗体およびレセプターが挙げられる。抗体は、ポリクローナルでもモノクローナルのいずれでもあり得る。ペプチドおよび核酸は、天然供給源から単離しても、または完全もしくは部分的合成起源のものでもあり得る。
【0162】
認識成分がタンパク質または抗体である態様では、タンパク質は、タンパク質表面上にあって利用可能な、任意の反応性ペプチド残基によってSAM成分またはスペーサーアームに繋ぐことができる。好ましい態様では、反応基はアミンまたはカルボキシラートである。特に好ましい態様では、反応基はリジン残基のe-アミン基である。さらにまた、これら分子は、支持体またはSAMの表面に、非特異的相互作用(例えば化学吸着、物理吸着)によって吸着できる。
【0163】
抗体である認識成分は、タンパク質、ペプチド、核酸、糖、または薬物、除草剤、農薬、工業化学薬品および化学兵器といった低分子である分析物を認識するのに用いることができる。特定分子に対する抗体作成方法は、当業者に周知である、例えば米国特許第5,147,786号;第5,334,528号;第5,686,237号;第5,573,922号を参照されたい;それぞれ参照によって、本明細書に組み入れられる。抗体を表面に取り付ける方法も、当技術分野では公知である(Delamarche et al. Langmuir 12:1944-1946 (1996)を参照されたい)。
【0164】
ペプチドおよび核酸は、SAM成分またはスペーサーアームに取り付けることができる。天然由来の、ならびに合成したペプチドおよび核酸の両方が、本発明に関連して役に立つ。これら分子は、SAM成分またはスペーサーアームに、任意の利用可能な反応基によって取り付けることができる。例えば、ペプチドは、アミン、カルボキシル、スルフヒドリルまたはヒドロキシル基を通じて取り付けることができる。そのような基は、ペプチド末端またはペプチド鎖への内部サイトに位置することができる。核酸は、反応基を通じて塩基(例えば環外アミン)に、または利用可能なヒドロキシル基を通じて糖成分(例えば3'-もしくは5'-ヒドロキシル)に取り付けることができる。ペプチドおよび核酸鎖は、一または複数の位置についてさらに誘導化でき、適切な反応基を鎖に取り付けられるようすることができる(Chrisey et al. Nucleic Acids Res. 24:3031-3039 (1996)を参照されたい)。
【0165】
ペプチドまたは核酸が完全または部分的に合成された分子の場合は、反応基もしくはマスクされた反応基を合成工程中に組み込むことができる。ペプチドおよび核酸の両方への反応基の組み込みに適した多くの誘導化モノマーが当業者に公知である(例えば、THE PEPTIDES: ANALYSIS, SYNTHESIS, BIOLOGY, Vol. 2: "Special Methods in Peptide Synthesis," Gross, E. and Melenhofer, J., Eds., Academic Press, New York (1980)を参照されたい)。多くの有用なモノマーが市販されている(Bachem, Sigma、等)。したがって、このマスクされた基は、合成後にマスクを外すことができ、SAM成分またはスペーサーアームとの反応に利用できるようになる。
【0166】
別の好ましい態様では、ペプチドは支持体に直接取り付けられる(Frey et al. Anal. Chem. 68:3187-3193 (1996)を参照されたい)。特に好ましい態様では、ペプチドは、システイン残基上のスルフヒドリル基を通じて金支持体に取り付けられる。別の好ましい態様では、ペプチドは、チオールを通じてヨードアセトアミド、クロロアセトアミド、ベンジルヨード、ベンジルブロミド、アルキルヨードまたはアルキルブロミドで終結するスペーサーアームに取り付けられる。同様の固定化技術は、当業者に公知である(例えば、ZuIl et al. J. Ind Microbiol. 13:137-143 (1994)を参照されたい)。
【0167】
別の好ましい態様では、認識成分は、関心対象の分析物と封入複合体を形成する。特に好ましい態様では、認識成分はシクロデキストリンまたは変性シクロデキストリンである。シクロデキストリンは、様々な微生物によって産生される環式オリゴ糖群である。シクロデキストリンは、バスケット様の形をした環構造を有している。この形状により、シクロデキストリンは様々な種類の分子を、それらの内部空隙に含むことができる(例えば、Szejtli, J., CYCLODEXTRINS AND THEIR INCLUSION COMPLEXES; Akademiai Klado, Budapest, 1982; and Bender et al, CYCLODEXTRIN CHEMISTRY, Springer-Verlag, Berlin, 1978を参照されたい)。
【0168】
シクロデキストリンは、例えば薬物、農薬、除草剤、および化学兵器を含む有機分子のアレイと封入複合体を形成できる(Tenjarla et al, J. Pharm. Sci. 87:425-429 (1998); Zughul et al, Pharm. Dev. Technol. 3:43-53 (1998); and Albers et al, Crit. Rev. Ther. Drug Carrier Syst. 12:311-337 (1995)を参照されたい)。重要なことだが、シクロデキストリンは、それら封入複合体の中の化合物のエナンチオマーを識別できる。したがって、一つの好ましい態様では、本発明は、エナンチオマーの混合物中での特定エナンチオマーの検出を提供する(Koppenhoefer et al. J. Chromatogr. A 793:153-164 (1998)を参照されたい)。
【0169】
シクロデキストリン認識成分は、スペーサーアームを通じてSAM成分に、または支持体に直接に取り付けることができる(Yamamoto et al, J. Phys. Chem. B 101:6855-6860 (1997)を参照されたい)。他の分子へシクロデキストリンを取り付ける方法は、クロマトグラフィーまたは製薬分野の当業者には周知である(Sreenivasan, Appl Polym. ScL 60:2245-2249 (1996)を参照されたい)。
【0170】
A. 反射に基づく探測
いくつかの態様では、本発明の装置は、Fabry-Perotフィルターを形成する。本発明は、特定のメカニズムに限定されない。実際、発明の実施のために本発明のメカニズムを理解することは必要ない。それでもなお、電磁放射線が二種類の誘電媒体の間の界面を通る場合には、それは界面で反射する。誘電材料が、空隙を形成している二枚の高反射鏡の間に挟まれている場合には、複数の放射線反射が空隙内で起こる。所与の厚みおよび誘電特性を持つ空隙では、反射された電磁放射線は構成的に干渉し、特定波長で最大となる。反射された放射線がピーク強度を示す波長は、空隙の厚みおよび空隙の誘電特性に依存する。空隙の反射係数を変えると、最大反射が起こる波長も変化する。もし鏡を、特定分析物を標的とするレセプターで官能化すれば、標的の結合がLCの配向遷移を誘発し、そのことが空隙の誘電特性の変化を誘発する。この誘電特性の変化は、反射強度が最大となる波長のシフトをもたらす。
【0171】
いくつかの態様では、Febry-Perotフィルター装置は、少なくとも一つの認識成分を表示する第1表面(例えば内部表面)を含む。いくつかの態様では、表面は反射性である。好ましい態様では、第1表面は金である。いくつかの好ましい態様では、金は、ガラスまたはシリコンのような支持表面上に沈積される。他の好ましい支持体は、先に詳しく説明している。いくつかの態様では、金表面は、認識成分が相互作用する有機層で官能化されている。好ましい有機層としては、アミノチオフェノール(ATP)、4-メルカプト安息香酸(MBA)、2-メルカプトエチルアミン-HCl(MEA)および11-メルカプトウンデカノン酸(MUA)が挙げられるが、これらに限定されない。さらに好ましい態様では、装置は、反射材料、好ましくは金でコーティングされた第2表面を含む。幾つかの態様では、第2表面も認識成分を表示する。いくつかの態様では、第1および第2表面は、互いに対向してその間にチャンバーを形成するように形作られている。好ましくは、チャンバーは液晶で充填できる。液晶を形成する好ましいメソゲンは、上記に掲載しており、E7(4-ペンチル-4'-シアノビフェニル)、MLC、5CB(4-n-ペンチル-4'-シアノビフェニル)および8CD(4-シアノ-4'オクチルビフェニル)を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0172】
さらに別の態様では、少なくとも一種類の認識成分が有機層に取り付けられるか、さもなければ有機層と相互作用する。本発明は、任意の特定の認識成分に限定されない。実際、アミン、カルボン酸、薬物、キレート化剤、クラウンエーテル、シクロデキストリンまたはそれらの組み合わせからなる群より選択される有機官能基、タンパク質、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、Fab断片、単鎖抗体等の抗原結合タンパク質、ペプチド、核酸(例えば単一ヌクレオチドもしくはヌクレオシド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、単鎖および多鎖核酸)またはそれらの組み合わせからなる群より選択される生体分子、かつAl3+、Ag1+、Ba3+、Cd2+、Ce3Co2+、Cr3+、Eu3+、Fe2+、Fe3+、Ga3+、In3+、Mn2+、Ni2+、Pb2+、Pr3+、およびZn2+ならびにその組み合わせからなる群より選択される金属イオンを含むが、これらに限定されない様々な認識成分を利用できる。
【0173】
本発明は、任意の特定の支持体形状に限定されない。実際、円盤、円柱、および球を含むがこれらに限定されない、様々な支持体形状が考察される。円盤形装置は、上記したように、互いに対向して、液晶で満たすことができるチャンバーを作製する二枚の平坦面から形作られるのが好ましい。好ましい態様では、円盤は、大気中に放出されると混転するように十分に小さい。例えば、いくつかの態様では、円盤は、約0.1mm〜10cm、好ましくは約1mm〜約100mmの間の直径である。いくつかの態様では、〜約500ナノメートルの厚みの金フィルムを、電子ビームエバポレータを用いて、清浄なガラススライド(またはプラスチックフィルム)の上に蒸着させることによって高反射鏡が調製される。さらに好ましい態様では、これら金鏡は、4-アミノチオフェノール(ATP)、4-メルカプト安息香酸(MBA)、2-メルカプトエチルアミン-HCl(MEA)または11-メルカプトウンデカノン酸(MUA)、すべて1mM濃度のエタノール溶液のような有機層で官能化される。よりさらに好ましい態様では、有機層は次に、標的分析物に特異的なレセプター(例えば、ジアジアノンについては過塩素酸ガリウムもしくは過塩素酸インジウム、ならびにマラチオンについては過塩素酸鉄および過塩素酸鉛)で処理される。さらなる態様では、イソプロパノールに混合した約25ミクロンの直径を持つガラス繊維ロッドを、官能化した鏡の一つの全体に均一に噴霧する。これらロッドは、誘電性間隙の厚みを画定する空間として機能する。光学セルは、二枚の反射鏡の間に空隙を形成するように作られる。いくつかの態様では、鏡は、UV硬化接着剤を用いて貼り合わされる。次に空隙は、4-n-ペンチル-4'-シアノビフェニル(5CB)のような液晶で満たされる。本発明は、特別な作用メカニズムに限定されない。実際、本発明の実施のために作用メカニズムを理解することは必要ない。それでも、標的分析物への暴露がない場合、液晶は鏡上のレセプターが定める一つの好ましい方向に整列する(例えば、上記処理では、表面に対し直交方向)。いくつかの態様では、分光光度計の光路内に鏡アッセンブリが配置される。最適化された厚みでは、ピークは、LC材料の通常反射係数によって決まる特定波長の透過強度に表れる。いくつかの態様では、分析物(マラチオンもしくはダイアジノンなど)への暴露によって、液晶分子が無秩序方向にある表面に対し平行に配列すると、液晶は無秩序な平面方向への配向遷移を起こす。いくつかの好ましい態様では、装置は光路内に置かれる。ピークは、無秩序平面方向の平均屈折率に対応する波長に現れる。遷移スペクトルのピーク位置のシフトは、表面上のレセプターに分析物が結合したことにより誘発される液晶の配向遷移により引き起こされた空隙の屈折率の変化を示す。
【0174】
別の好ましい態様では、中空のポリマー円柱(直径約100〜1000ミクロン、好ましくは約500ミクロン、長さ約1mm〜1cm、好ましくは約5mm)は、まず金のような反射材料でコーティングされる。好ましくは、コーティングは約50〜約1000nmの厚みであり、最も好ましくは約500nmの厚みである。次にスペーサーを円柱上に形成する。いくつかの態様では、スペーサーは、約50〜約200ミクロンの厚さであり、好ましくは約25ミクロンである。いくつかの好ましい態様では、スペーサーは、好ましくは25ミクロンの所望直径を持つガラス繊維ロッド(EM Industries製など)、または好ましくは25ミクロンの所望直径を持つプラスチックマイクロパール(球体)(Sekesui Chemicals, Hong Kong製品など)を含む。いくつかの好ましい態様では、これらのスペーサーは、イソプロピルアルコールと混合されてから、円柱に噴霧される。次に、これらシリンダーに約25ミクロンのフォトレジストの犠牲層をコーティングする。有用なフォトレジスト層の例としては、Michochem社製SU8 2010が挙げられるが、これに限定されない。犠牲層の上に、さらに薄い金のナノポーラス層を沈積させる。ナノポアを持つ金フィルムは強反射性であるが、小分子を浸透させる。次に犠牲層をアセトンで溶解する。二つの金表面間の空隙は、支持ストラットの役を果たす。次にこれら中空の円柱を、上記のようにして有機層およびレセプター化学で官能化し、液晶で満たす。よりさらなる態様では、第1表面は球であり、第2表面およびチャンバーは、円柱態様の記載のように形成される。
【0175】
別の態様では、本発明の装置はルゲートフィルターを形成する。この場合も、本発明は特定のメカニズムに限定されない。実際、本発明の実施のために作用メカニズムを理解することは必要ない。それでもなお、電磁放射線が誘電層間の複数の界面を伝播する時、各界面で複数の反射が起こり、放射線の一部は伝わり、その一部は反射される。媒体の誘電定数が、正弦変動を示す場合、反射強度は、平均誘電定数および誘電定数の正弦変動の振幅に依存して、ある波長の反射強度にピークを示す。電磁スペクトルの反射ピークの位置は、正弦変動の平均屈折率が変化するとシフトする。したがって、いくつかの態様では、深さに沿って正弦多孔性勾配を持つ多孔質シリコンを作製することにより、誘電特性に正弦変動を作製する。例えば、すべて参照により本明細書に組み入れられる、Liら、Science 299:2045-47 (2003); Sealsら、J. Applied. Phys. 91(4):2519-23 (2002); Schmedakeら、Adv. Mater. 14(18):1270-72 (2002); Link and Sailor, Proc. Nat'l. Acad. Sci USA 100(19):10607-10 (2003)を参照されたい。細孔を標的分析物に特異的なレセプターで官能化し、次にLCで満たす場合、それらはLCを特定方向に整列させる。標的分析物に暴露されると、LCは配向遷移を起こし、これが細孔の誘電定数に変化を誘導し、結果としてピーク位置がシフトする。
【0176】
本発明は、任意の特定のタイプのシリコン支持体の使用に限定されない。いくつかの態様では、シリコン支持体は約1mオームcm抵抗率を有し、100フェースで研磨されたp-タイプ、ホウ素ドープしたシリコンウェーハである。シリコン支持体は、好ましくはイソプロパノール中で超音波処理を受け、次に水ですすぎ洗いされる。いくつかの態様では、シリコンウェーハは、正弦変調電流密度を用いるテフロンセルの中で、48%フッ化水素酸および無水エタノール(1:3、容積)の混合液を用いた陽極酸化プロセスを用いてエッチングし、多孔性勾配に正弦変動を生成する。さらなる態様では、正弦電流密度の増幅度、期間および持続時間を調節して、最大多孔質サイズおよび分布を達成する。これらパラメータは、異なる分析物の検出に合わせて変更および最適化できることが認識されるだろう。よりさらなる態様では、次に電流密度を漸増して、多孔質シリコンの自立シートを支持体から剥がす。
【0177】
いくつかの態様では、シリコン支持体に作製された細孔は、有機層、好ましくは上記成分を含有するシランで官能化される。好ましい態様では、シリコンの多孔性フィルムは、ガラススライドに載せられて3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APES)のアセトン溶液(約2容積%)に入れられ、細孔内の内面を官能化する。好ましい態様では、好適認識成分(例えば、上記認識成分の一つ)を有機層と反応させるか、または付加する。いくつかの好ましい態様では、液晶は、付加した時に、細孔表面に対し直交方向に並ぶ。さらなる態様では、多孔質シリコンは分光光度計に載せられ、赤外および可視域をカバーする反射スペクトルが測定される。細孔の寸法に依存して、反射スペクトルは、細孔サイズ分布および細孔内材料の誘電定数に依存する特定波長にピークを示す。細孔上の液晶のアラインメントは細孔表面に対し直交方向であり、分子の分布は放射状である。さらなる態様では、多孔質シリコンは標的分析物に暴露される。本発明は、任意の特定の作用メカニズムに限定されない。実際、本発明の実施のために作用メカニズムを理解する必要ない。それにもかかわらず、標的分析物が細孔表面上の捕捉物質に結合すると、液晶は配向遷移を起こし、平坦方向に整列する(液晶分子は表面と平行に並ぶ)。これが細孔の誘電特性に変化をもたらす。いくつかの態様では、多孔質シリコンをさらに反射スペクトルについても分析する。反射プロフィールのピーク位置のシフトは、標的分析物のレセプターへの結合を示す。
【0178】
よりさらなる態様では、上記記載したような装置に、1KHzから10THzの周波数を含むがこれに限定されない高周波領域、ならびに電波スペクトルのVLF、LF、MF、HF、VHF、UHF、SHFおよびEHF領域を含む高周波領域からの電磁放射線を照射する。研究から、RF放射線の反射および/または透過スペクトルの分析を用いて、分析物を特定できることが証明されている。例えば、すべて参照により本明細書に組み入れられる、米国特許出願第2004086929号、Choiら、Int'l. J. High Speed Electronics and Systems 13(4):937-950 (2003); van der Weide, Springer Series in Optical Sciences (2003), 85:317-334 (2003)を参照されたい。発明のいくつかの好ましい態様では、液晶の配向の変化は、RF放射線の反射または透過スペクトルに変化を起こす。本発明のさらに好ましい態様では、放射線の周波数は0.1〜10THzの範囲である。当業者の公知の方法を用いて、液晶と相互作用後に検出器に返される放射線を分析する。
【0179】
B. フォトルミネセンス
いくつかの態様では、液晶の配向の変化は、フォトルミネセンスによって検出される。本発明は、特定の作用メカニズムに限定されない。実際、本発明を理解するために作用メカニズムを理解することは必要ではない。しかしながらナノメータースケールの細孔構造を持つシリコンを短波長、典型的には紫外線領域の電磁放射線に暴露する場合は、電子正孔対が作られる。これら過剰のキャリアは、放射される電磁放射線を実質的に再結合する。多孔質シリコンの構造の持つ特徴的なサイズがナノメータースケールまで小さくなると、シリコンナノ構造のバンドギャップは累進的に広がる。広いバンドギャプ内でのこれら量子拘束キャリア(電子正孔対)の再結合は、可視域の電磁放射線を放出させる。放出光の波長は、細孔そのものの詳細構造以外に、細孔を満たしている物質の誘電定数に依存する。細孔の表面を標的分析物に特異的なレセプターで官能化すると、液晶は細孔の表面に対し直交方向に整列する。すると多孔質シリコンは、液晶分子の放射状分布に対応した波長の光を放出する。標的分析物が細孔表面のレセプターと結合すると、液晶は細孔表面と平行に整列し、誘電定数を変化させる。これがピーク位置の変化をもたらす。本発明は、任意の特定タイプの液晶配向の変化に限定されるものではなく、直交方向から水平方向への記載の変化は例示であることに気づくだろう。例えば平行方向から直交方向、または、例えばキラルネマティック液晶を利用している場合には、捻れ量の変化を含む、他の変化も考察する。
【0180】
いくつかの態様では、多孔質シリコン支持体を上記のようにして作製、および官能化する。さらなる態様では、多孔質シリコンにUV光を照射する。UV光の正確な波長は、実際の孔サイズ、孔サイズ分布、および液晶材料の屈折率に依存する。多孔質シリコンのフォトルミネセンスは、UV-可視光分光度計を用いて測定する。スペクトルは、液晶の配向に対応する波長にピークを示す。いくつかの好ましい態様では、多孔質シリコンは次に、閉鎖チャンバー内で標的分析物に暴露される。本発明は、任意の特定の作用メカニズムに限定されない。実際、本発明を理解するために作用メカニズムを理解することは必要ではない。しかしながら標的分析物が細孔表面の捕捉物質に結合すると、LCは配向遷移を起こす。液晶の配向の変化は、多孔質シリコンが放出する放射線のスペクトルの変更に対応することが考察される。
【0181】
C. 蛍光に基づく検出
別の態様では、スタンドオフ検出は、蛍光レポーターシステムを用いて達成される。本発明は、任意の特定の作用メカニズムに限定されない。実際、本発明を理解するために作用メカニズムを理解することは必要ではない。しかしながら、4-(4-ジヘキサデシルスミノスチリル)-N-メチルピリジニウムヨード(DIA)、1,3,5,7,8-ペンタメチル-2,6-ジ-t-ブチルピロロメタン-ジフルオレボレートPM-597、4-(ジシアノメチレン)-2-メチル-6-(4-ジメチルアミノスチリル)-4H-ピラン(DCM)、ユーロビウム(III)テノイルトリフルオロアセトナートトリヒドラート[Eu(TTA)3.H2O]等の特定化合物は、液晶に溶解するとUV光の照射によって可視光を放出する。放出光の強度および波長は、液晶配向に対する色素分子の配向に依存する。色素分子を表面に、表面に対し一定方向に固定すると、液晶は配向変化を起こし、放出放射線の特徴が変化する。分析物がレセプターに結合すると、液晶は配向遷移を起こし、放出光の波長は変化する。
【0182】
それゆえに、いくつかの態様では薄い金フィルムを、電子ビームエバポレータを用いて支持体(UV透過性の水晶支持体またはプラスチックフィルムが好ましい)上に蒸着させる。金表面は官能化され、上記の認識成分により処理され、上記のようにして小型のガラス製スペーサーロッドを用いて液晶アッセイ装置に組み立てられる。次に装置は液晶で満たされる。本発明は、任意の特定の作用メカニズムに限定されない。実際、本発明を理解するために作用メカニズムを理解することは必要ではない。しかしながら標的分析物への暴露がないと、液晶は、表面上のレセプターが定める一つの好ましい方向、例えば上記処理を行う表面に対し直交方向に整列する。好ましい態様では、光学セルはUV光の照射を受け、それは、いくつかの好ましい態様ではレーザーにより提供される。分析物が存在しない場合には、蛍光分子は液晶のホメオトロピック配列に対応する波長の可視光を放出する。装置が分析物(例えばマラチオンもしくはダイアジノン)に暴露されると、液晶は、例えば無秩序な平面配置に配向遷移を起こし、液晶分子は無秩序方向の表面に対し平行に配位する。蛍光スペクトルのピーク位置のシフト(放出光の色の変化)は、表面上の蛍光分子の誘電環境の変化を示す。この変化は、分析物の表面レセプターへの結合によって誘発される液体の配位遷移によって引き起こされる。
【0183】
本発明の別の態様では、アクリジンオレンジベース、ローダミン6G、過塩素酸塩、5-デシル-4,4-ジフルオロ-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸、ナイルレッド、N,N'ビス(2,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,4,9,10-ペリレンジカルボキシミド等の蛍光色素分子を液晶に溶解し、ゲスト−ホストシステムを形成する。本発明は、任意の特定の作用メカニズムに限定されない。実際、本発明を理解するために作用メカニズムを理解することは必要ではない。しかしながら、色素分子の方向は、一般にはLCセル中のLC分子の並びに平行である。色素の遷移双極子モーメントに平行な偏光を持つ光線(典型的には可視域内)をゲストホストシステムに通すと、光線は色素分子によって吸収される。次に色素分子は、異なる波長の可視光を放射する。しかしながら、入射光が色素分子の遷移双極子モーメントに対し直交方向の偏光を有している場合には、光線は吸収されず、色素分子はいかなる放射線も放出しない。したがって標的分析物が存在しない状態では、ゲスト-ホストシステムが使用する色素の励起波長に対応する偏光によって応答関係を結ぶ場合、システムから出てくる光は励起波長でできている。もし周囲に分析物が存在すれば、それは官能化表面と相互作用し、液晶はホメオトロピックから無秩序な平面配置への配向遷移を起こす。これは色素分子の遷移モーメントの、励起光線の偏光方向に平行な回転を引き起こす。次に色素分子は、入射波長を吸収し、異なる波長の光を放出する。このように、セル表面に対し直交方向に伝わる偏光を用いて液晶−色素混合物を探測することによって、環境中の分析物の存在を調べることができる。液晶アッセイ装置セルは、液晶色素混合物を充填することを除いて、上記のように作製される。応答を目的として、液晶セルに偏光器を統合するか、または偏光を送ることによって探測することができる。
【0184】
よりさらなる態様では、分析物のスタンドオフ検出量子ドットの蛍光特性を利用する。本発明は、任意の特定の作用メカニズムに限定されない。実際、本発明を理解するために作用メカニズムを理解することは必要ではない。しかしながら、ナノメートルサイズのいくつかの半導体量子ドットは、UV照射をうけると可視光を放出する。量子閉じこめによって、表面に捕捉された電子正孔対は大きなバンドギャップを有する。この大きなバンドギャップ故に、これら半導体量子ドットはUV域の光を吸収する。これら蛍光粒子が放出する光の波長は、それらの大きさのほかに、周囲媒体の誘電定数のような、しかしこれに限定されない周囲媒体特性に依存する。いくつかの好ましい態様では、これら量子ドットは、分析物を標的とするレセプターで官能化されており、これらに接している液晶は、量子ドット表面に直交方向に配位すると予想される。UV光源からの照射を受けると、蛍光スペクトルは特定波長にピークを示す。これらのドットを分析物に暴露すると、液晶は配位遷移を起こし、これがピーク位置をシフトさせる。
【0185】
本発明は、任意の特定タイプの量子ドットに限定されない。いくつかの好ましい態様では、薄い硫化亜鉛およびポリマーでコーティングされた、カドミウムセレニド量子ドットは、カルボン酸で終止している有機層(例えば11-メルカプトウンデカン酸)で官能化され、次に処理を受けて上記のような認識成分を表示する(例えば鉛、インジウムまたは過塩素酸ガリウム塩)。いくつかの好ましい態様では、量子ドットは液晶(例えば5CB)内に分散する。官能化された量子ドットは、液晶を表面に対し直交方向に整列させる。さらに好ましい態様では、液晶アッセイ装置は、二つの未処理の、UV透過性水晶支持体の間に空隙を形成することによって作られる(好ましくは、5〜100ミクロン、最も好ましくは約25ミクロン)。支持体間の空隙は、官能化された量子ドットおよび液晶の混合物で満たされる。よりさらに好ましい態様では、光学セルは分析物(マラチオンまたはダイアジノンのような)に暴露され、次にレーザーのようなUV光源によって探測される。量子ドット上のレセプターに分析物が結合すると、液晶は量子ドット表面に平行に整列し、それによって、液晶から放出される光の色が変化する。
【0186】
D. 回折に基づく検出
さらに別の態様では、本発明は、回折に基づく探測を利用する、分析物のスタンドオフ検出のための装置および方法を提供する。本発明は、任意の特定の作用メカニズムに限定されない。実際、本発明を理解するために作用メカニズムを理解することは必要ではない。しかしながら、電磁放射線の平行光が規則的な屈折率を持つ媒体を通過する時、光線は回折する。回折スペクトルは、中心ピークおよび、その両側にある複数の規則性の高いピークとからなる。したがって、いくつかの態様では、本発明は、認識成分を表示する金フィルムの周期線を含む表面を少なくとも一つ有し、かつ液晶でみたされている液晶アッセイ装置を提供する。分析物が存在しない場合には、認識成分を表示していない領域は、液晶をホメオトロピックな構成に配列し、認識成分を表示していない領域は、支持体に平行な面に無秩序に配列する。これが屈折率の周期的構造を導入する。光学セルが分析物に暴露すると、液晶は、レセプターを表示している領域でのみ配向遷移を起こす。液晶は、認識成分を表示している流域では無秩序な平面配位をとり、それによって周期的な屈折率のプロフィールが消える。その結果、回折効果は存在しなくなる。
【0187】
したがって、いくつかの好ましい態様では、液晶アッセイ装置は、電子ビームエバポレータを用いて、支持体(例えばガラス)に金属の薄フィルム(例えば、約75nmの金)を蒸着させて作製する。さらに好ましい態様では、通常のフォトリソグラフィーを用いて、表面上に細い金線(例えば、幅約1ミクロン、間隔約1ミクロン)をエッチングする。次に支持体を、上記有機層を用いて官能化する。有機層は、金が存在する場合のみ、アッセンブルする。次に支持体を、上記のように処理して認識成分を表示させる。その中にチャンバーを有する装置は、処理した支持体を別の支持体(例えばトリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン(OTS)で処理したガラス)に接着することによって形成される。好ましくは、チャンバーの厚みは約25nmである。チャンバーは5CBのようなLCで満たされる。液晶は、レセプター化学が存在する領域内でのみ、表面に対し直交方向に並ぶ。レセプター化学を持たない領域は、無秩序に並ぶ。光源(例えば、630nmの単色光を放出するレーザー光源)からの照射を受けると、液晶フィルムの屈折率が周期的に変化して、入射光は回折し、複数のピークを示す。認識成分への分析物の結合は、液晶を平面に配向させるために、屈折率プロフィールの周期的変動は消され、その結果回折スペクトルは原理的最大に対応する単一ピークを示す。高い規則性を持った回折パターンが存在しないことは、分析物が存在することを表す。
【0188】
IX. キット
くつかの態様では、本発明は有機リン酸塩検出のためのキットを提供する。好ましい態様では、キットは一または複数の、上記に詳しく記載した支持体を含む。さらなる態様では、キットは、液晶セルを組み立てるための第二の支持体および材料を含む。いくつかの態様では、キットは、メソゲンの入ったバイアルを含む。さらに別の態様では、キットは、対照の有機リン酸塩の入ったバイアルを少なくとも一本含む。さらに別の態様では、キットは、少なくとも一種類の有機リン酸塩の検出のためキットに含有される試薬を使用するための取扱説明書を含む。いくつかの態様では、取扱説明書は、米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration: FDA)がインビトロ診断製品のラベリングに求める、使用目的の記載をさらに含む。FDAは、インビトロ診断製品を医療用具として分類し、それらは510(k)の手順にしたがって承認されることを要求している。510(k)に従った申請に求められる情報としては:1)商用または登録商標名、一般または通常名、および装置の分類名を含むインビトロ診断製品の名称;2)製品の使用目的;3)適用される場合には、510(k)提出物を提出した所有者または経営者の事業所登録番号;分かる場合には、インビトロ診断製品が属するFD&C Actの513項の分類、該当するパネル、または所有者または経営者が装置がそのような条項に分類されないと判断する場合には、インビトロ診断製品が分類されないと判断したことの説明とその根拠;4)計画されている、インビトロ診断製品であること、その使用目的、および使用に関する指示事項を十分に説明するラベル、ラベリング、および広告。該当する場合には、写真または設計図も提出しなければならない;5)装置が、米国内で市販されている同等タイプの、他のインビトロ診断製品との類似点および/または相違点を明らかにする説明、および説明を裏付けるデータを添える;6)実質的に同等物であると判断する根拠となった安全性および有効性データのA 510(k)の要約;または実質的に同等物であるとするFDAの見解を裏付ける510(k)安全性および有効性情報が、書面による請求から30日以内にいかなる者も入手可能であることの陳述文;7)提出者が、その知る限りにおいて、市販前届出書に提示したすべてのデータおよび情報が真実かつ正確であること、および重要事実が省略されていないことを確信していることの陳述文;8)FDAが実質同等であると判断するのに必要な、インビトロ診断製品に関するあらゆる追加情報が挙げられる。さらなる情報は、米国FDAのインターネットウェブから入手できる。
【0189】
実験
以下の実施例は、本発明の特定の好ましい態様および局面を例示し、さらに描写するために提供されるものであり、その範囲を制限するものと解釈してはならない。
【0190】
以下に開示する実験では、以下の略語が用いられる:eq (当量);M (モル);μM (マイクロモル);N (正常);mol (モル);mmol (ミリモル);μmol (マイクロモル);nmol (ナノモル);g (グラム);mg (ミリグラム);μg (マイクログラム);ng (ナノグラム);1 or L (リットル);ml (ミリリットル);μl (マイクロリットル);cm (センチメートル);mm (ミリメートル);μm (マイクロメートル);nm (ナノメートル);C (摂氏度);U (単位);mU (ミリ単位);min. (分);sec. (秒)。
【0191】
実施例1
本実施例は、OP化合物の検出に用いることができる金属イオンレセプターの同定について記載する。このスクリーニングは、図1に示すような、金属イオン処理された二表面を含む「閉鎖型」光学セルを用いて実施した。金属イオンを蒸着した二表面は、(I)電子ビーム蒸着により、ガラス製の顕微鏡スライドに超薄(光学的に透明な)金フィルムを蒸着すること、(II)金フィルム表面にメルカプトウンデカノン酸(MUA)の自己集合単層を形成すること、および(III)処理した金表面を金属塩のエタノール溶液に浸漬し、フィルム表面に金属カルボキシラートを形成させる、ことによって調製した。均一な金コーティングAlSiガラススライド(75オングストロームの金に15オングストロームのチタンが付いたもの)を1mMのMUAエタノール溶液に浸漬し、エタノールで20秒間すすぎ、窒素ガスで乾燥させる。これらの支持体を2.5×2.5cmの四角形に切り分け、1mMの金属過塩素酸塩(35マイクロリットル)で、3000rpm、20分間スピンコーティングする。これらの四角片を机上に45分間放置してエタノールを蒸発させる。これら二つの表面を、薄い(25μm)のMylarフィルムで隔てながら対合させて閉鎖型光学セルを作り、次に表面間の空隙をLCで満した。図1に示すように、LCと金属イオン蒸着表面との相互作用が、光学セル空隙内のLCの配向を確定する。気相からLC内へのOP化合物の拡散によって、セル表面の金属イオンへのOP化合物の結合によるLCの表面方向の配向に変化が起こる。LCの配向の変化は、OPのLCへの時間依存的な浸透を伴う、肉眼で明瞭に確認できるバンドを生じさせる。バンドの出現は、配向の変化を伴うLCの光学特性の変化によって引き起こされる。OPが存在しないと、LCはヘテロトロピックな配列をとり、そこを通過する光の偏光面は保存される。この状態では、光は、直交する極性方向に配置された偏光フィルターをほとんど通過しない。OPが金属イオンに結合すると、LCのメソゲンが転置し、LCは不規則になる。LCの不規則度が高いほど、より多くの光が偏光フィルターを通過する(図1参照)。各金属が報告することのできるDMMPの存在の大きさは、DMMPへの暴露によってLCの配向が変化する、方向光学セルの縁からの距離(浸透深度)を測定することによって特徴つけされた(図1)。
【0192】
上記の、様々な異なる金属レセプターを蒸着し、光学セルと一体化された検知面を用いて、17種類の金属イオンを、DMMPの存在およびその他可能性のある妨害化合物の存在の報告能力について調べた。結果を表1に要約する。結果は、図3にカテゴリー別に図示する。
【0193】
(表1)約300ppmの各種化合物に対する光学セルの定性的反応。

セルは、化学処理(1mM MUA/1mM 金属過酸化水素塩)した金コーティングガラススライドを用いて作製した。セルにはE7液晶を加えた。S=強、M=中、W=弱、VW=極弱、N=なし。
【0194】
表1を見ると、すべての金属がDMMPに対し強い反応を示すことが分かる。これに対し、試験した他の化合物は、各種金属イオンに対し様々な反応パターンを示した。一つの例外はDMSOであり(これはDMMPと非常に似た構造を持つ)、これも試験したすべての金属に対し強い反応を示した。これら化合物のスクリーニングは、比較的高濃度で行われた(300ppm)。DMMPおよびDMSOに対する金属の反応度は(すべて強と分類されたが)、金属間で大きく異なった。これらの差は、各化学物質とも低濃度でより顕著であり、光学セル作製方法を変更することでより顕著にできる(図8および12を参照)。
【0195】
任意の妨害化合物間を識別するための方策について、以下により詳しく説明する。各種化合物に対する反応パターンを図4に図示しているが、ここでは4種類のイオンレセプターを用いて6種類の化合物により生成したパターンをグラフにして示している。これらの結果は、金属イオンおよび金属イオンに対するLCの反応を組み合わせて用いることで、所与の化合物に固有のサインを生成することを示している。
【0196】
水は、ヒトおよび環境モニタリングに普遍的に存在することから、水の潜在的な妨害作用を確認するために特に努力した。表2を調べると、LC E7を使用した場合、6種類の金属が、75%の湿度に20時間暴露したときに、水に対しまったく反応しないことが分かる。唯一の金属、Zn2+だけが強反応を示した。加えて、LCを選択することで、すべての金属を水に対し耐性にすることが出来ることが示された。表2に示すように、LC 8CBを用いた時、20時間を通して75%の湿度の存在に反応した金属はまったく無かった。
【0197】
(表2)選択した金属を用いたセルの湿度に対する反応に及ぼす液晶の作用

各種金属で官能化した光学セルを75%の湿度に20時間暴露した。E7を使用したとき、高湿度に対する感受性は金属の選択に依存した。8CBを用いたセルは、使用した金属に関係なく湿気に対し感受性ではなかった。
【0198】
水の潜在的妨害作用について、「開放型」光学セルを調製してさらに研究した。この例では、薄い(約10μm)のLCフィルムを、金属レセプターを蒸着した検知面に向いた開口部に配置した。DMMPの拡散路は、開放型光学セルを使用した場合には実質的に短縮され、そのためDMMPに対する時間反応が加速される。この実験ジオメトリーの概略図を図5に示す。
【0199】
開放型光学セルを用いて行った実験の結果を、図6に示す。DMMPに対し高い感度を有するEu3+を用いて作製した開放型セルを、約80%の湿度に30分間暴露した。セルは水に対し非常に弱い反応を示し、反応表面積は約5%であった。85%の湿度に暴露した後、セルを4ppmのDMMPに再度暴露したところ、湿度に暴露する前とほぼ同じ感度が観察された。
【0200】
この開放型セルの構成を用いて、LCの特性を調節し、水のような妨害化合物に耐性に出来るようにすることも証明した。図7に示すように、E7およびMLC 15,000-000の1:1の混合フィルムを用いたが、これは開放型セルジオメトリーの湿気に対する安定性を有意に高めた。
【0201】
開放型セルジオメトリーを用いて、またすべて閉鎖型セルジオメトリーにおいてDMMPに対し強反応を示した3種類の金属の反応動態も調べた(表1)。開放型セルを用いて得た結果が数秒間かけて得たのに対し、閉鎖型セルのジオメトリーは数時間にわたる暴露を報告する。図8に示すように、In、EuおよびMnイオンについて、非常に短い期間のDMMPに対するLC反応の動態は非常に異なっている。長期間の暴露を、開放型セルジオメトリーを用いて行う場合、Mn(およびその他金属)は、閉鎖型セルのジオメトリーを用いた、表1に示したデータに一致する様式で反応することを述べておかねばならない。
【0202】
要約すると、金属イオンを選択することで、OPを含む標的分析物に対するLCの選択性を同調させることができる。特に、化合物に対し固有反応を提供する、金属イオンのセットを特定できる。DDMPに大して強反応を提供するが、湿度の変化の影響は受けない金属イオンを見つけることもできる。以下により詳細に記載するように、これら成果を農薬検出に拡大できる。
【0203】
実施例2
本実施例は、標的化合物への瞬時または累積暴露を測定するための液晶アッセイの使用について説明する。これら実験については、モデルOP分析物としてDMMPを使用した。
【0204】
図9は、24時間かけてDMMPの累積暴露に対する閉鎖型セルの反応を示している。図9を調べると、光学セルの縁から中央に向かう、ブライトフロント(bright front)の時間依存的な進行が分かる。フロントは、LC内にDMMPが拡散することによって起こり、図1に記載のように、LCの配向の変化を引き起こす。LC内へのDMMPの浸透距離を測定することは、累積暴露の定量的測定を提供する。
【0205】
図10に示す結果は、LC内へのフロントの進行速度は、DMMPの濃度に依存することを示している。それゆえに、フロントの浸透距離は、DMMP暴露の時間と濃度の重畳積分を示す。
【0206】
図10に示す結果の分析は、試験した全濃度について、データが相関係数>0.99で直線近似することを示している。
【0207】
表面の複数の金属イオンをパターン化でき、それによってDMMPに対する複数の金属の累積反応を同時に示すことができることが証明されている。実施例1に示した結果の中で記載したように、複数の金属イオンの反応パターンを用いて、特定の化合物を同定することができる。図11は、PDMSで作られたマイクロ流体チャンネルを用いて表面に送られた金属イオン溶液を用いて、表面にパターン化された5種類の金属イオンの概略図を示す。
【0208】
図12の結果は、4時間のDMMPへの暴露に対する、金属イオンの異なる反応を示している。これら反応は、5種類の金属イオンでパターン化した表面を用いて同時に得られた。
【0209】
分析物への累積暴露を示すための原理を証明することに加えて、瞬時的暴露を測定するための方法も証明されている。これら後者の実験は、開放型セル(図5を参照されたい)を用いて行われた。図13に示す結果は、80ppbのDMMPに暴露したLCの動的反応を表している。この図を調べると、反応が分析物へ暴露して数分以内に起こること、および反応が完全に可逆的であることが分かる。開始からLCの最初の反応までに、1分間の遅延時間があることを記しておく。この遅延時間は、すべての試料ではないが、いくつかの試料に見られる。いくつかの試料(本明細書には示していない)は、暴露数秒以内の反応を示した。
【0210】
図14は、様々なDMMP濃度に暴露した開放型セルの反応速度を示している。このグラフは、反応の動態を用いて、DDMPの濃度を示せることを表している。
【0211】
これらの結果は、液晶装置を用いて、DMMPへの累積暴露を測定できることを証明している。これら原理は、以下の実施例3に記載するように、農薬への累積暴露の測定に応用されている。加えて、開放型セルが、完全に可逆的反応である、DMMPへの瞬時的暴露を示すのにも用いることができることも証明されている。
【0212】
実施例3
本実施例は、液晶アッセイ装置を用いた有機リン酸塩をベースとする農薬への累積暴露の測定を説明する。表3の結果は、候補金属イオンのマラチオンおよびダイアジノンへの暴露に関するスクリーニングを要約したものである。農薬の市販製剤は、複数の添加物(例えば湿潤性制御のための界面活性剤)を含有しているため、市販製剤および純粋ダイアジノンに対するLCの反応を比較した(それらは類似していた)。表3の結果は、マラチオンおよびダイアジノン両方を報告する金属イオンを特定できたことを示している。マラチオンおよびダイアジノンの蒸気圧は、それぞれ、30℃で5.25×10-5atmおよび20℃で9.57×10-10atmであることを記しておく。
【0213】
(表3)20時間の農薬暴露に対する光学セルの定性的反応。

セルは、化学処理(1mM MUA/ 1mM金属過酸化水素塩)した金コーティングガラススライドを用いて作製した。セルにはE7液晶を加えた。5種類の金属Co2+、Cu2+、Mn2+、Ni2+およびZn2+は、農薬に対し反応をまったく示さなかった。
【0214】
図15の結果は、22日間のダイアジノンへの累積暴露がうまく測定できることを証明している。図15を見ると、金属レセプターとしてAg+イオンを使用することにより、反応がよく確定されることを示している。さらには、表面を調製する時に様々な金属イオン濃度を用いることにより、累積暴露が指示される時間を調節できた。これらの結果を図16に示す。図16の結果は、Ag+エタノール溶液の濃度を1mM〜10mMまで変えることによって、4日〜22日まで、ダイアジノンに対するLCの最大反応を調節できることを示している。
【0215】
対照実験を実施し、上記の時間依存的反応がダイアジノンに対する暴露のインジケータであり、研究室での汚染ではないことを証明した。図17の結果は、一つの、このような対照実験を示している。
【0216】
図18は、低濃度(0.5ppb)のマラチオン市販調製物の累積測定を示している。
【0217】
要約すると、これらの結果は、液晶アッセイ装置を用いた、OP農薬の累積暴露のアッセイを示す。さらには、モニター反応を数日から数週間まで、所望のサンプリング期間に調節できるようにするパラメータが特定されている。
【0218】
実施例4
本実施例は、液晶アッセイ装置の有機リン酸塩農薬を検出する能力を妨害する環境の化合物の潜在性の評価について記載する。上記の結果から、液晶アッセイ装置の金属レセプターとして使用できものとして、DMMP(モデルOP)に対する感度、および標的外化合物(酢酸、水酸化アンモニウム、ジメチルスルホキシド、エタノール、エチルアセテート、ペンタンエチオールおよびピリジン)に対する耐性に基づいて選択した5種類の金属イオン−すなわちIn3+、Eu3+、Mn2+、Ni2+、およびCo2+--を、成功裏に特定できた。ダイアジノン(例えばAg+)およびマラチオン(Pb2+)への累積暴露を報告できる金属イオンレポーターを特定した。三種類のOPをベースとした農薬(ダイアジノン、マラチオンおよびパラチオン)の金属レセプターは、農薬への累積暴露を報告でき、かつ標的外化合物に対し耐性を有する金属レセプターを追加スクリーニングすることによって特定されるだろう。特に、スクリーニングは、モニターが最終的に使用される住環境および農業環境で遭遇する可能性のある妨害化合物および化合物の混合物について行われるだろう。
【0219】
三種類のOP農薬(ダイアジノン、マラチオンおよびパラチオン)の内の一または複数の存在を報告できる金属イオンレセプターは、住環境または農業環境において遭遇する可能性のある化合物から妨害されずに特定されるだろう。これら化合物のいくつかは複雑な混合物であり:燃焼機関からの排気、厨房の臭気、木煙、香水、ガソリン、ディーゼル燃料、アンモニア、肥料、ベビーローション、ヘアースプレー、ネールポリシャー(アセトン)、殺虫剤、煙草の煙、NOx、CO、床用クリーナー、家具用ポリシャーおよび家庭用脱臭剤が挙げられる。
【0220】
上記実施例はメルカプトウンデカノン酸(MUA)を、表面に金属イオンを固定するためのリガンドとして利用しているが、実施した研究は、リガンドの選択を広げ、OPに対するLCの反応の感度および特異性を調節できることを示している(図19)。それゆえに、OP農薬向け金属イオンレセプターの選択の影響を、三種類のリガンド(4-アニノチオフェノール(ATP)、メルカプト安息香酸(MBA)およびMUAの選択と結びつけて評価するであろう。これらすべてのリガンドはメルカプタン官能性を有しており、したがってメルカプタンの金に対する強力な結合特性を利用して超薄金フィルム表面に集合できる(いわゆる自己集合単層となる)ことを記しておく。金属イオンは、これらリガンドのアミノ(ATP)またはカルボキシル基(MUAおよびMBA)との相互作用を介して固定されるだろう。
【0221】
以下に記載する実験は、図1に示したタイプの閉鎖型LC光学セルを使用する。これらセルは、上記の方法と同じ方法を用いて作られる。簡単に説明すると、金属イオンを蒸着した二つの表面は、(I)電子ビーム沈積により超薄(光学的に透明)金フィルムをガラス製顕微鏡スライドに沈積すること、(II)金フィル表面に金属イオン用リガンド(例えばMUA)の自己集合単層を形成すること、および(III)処理した金表面を金属塩のエタノール溶液に浸漬し、フィルム表面に金属レセプターを形成すること、によって調製される。光学セルは、25μmの厚みのMylarのフィルムを用いて間隔をあけながら二つのこのような表面を対合させ、次に表面間の空隙をLCで満たして作る。OP農薬のLC内への拡散は、セル表面の金属イオンへのOP農薬の結合によるLCの表面方向の配向に変化をもたらすだろう(図1)。LCの配向の変化は、LC内に、LC内へのOP農薬の時間依存的浸透を伴う視覚的に区別できるバンドを生む。LCの配向がOP農薬への暴露によって変化した、光学セル縁からの距離(浸透距離)を測定する(分析方法についてのさらなる詳細については以下を参照されたい)。
【0222】
以下の順番の実験を、これらアッセイ装置を用いて実施する:
a. 蒸着した超薄金フィルム表面の上に、ATP、BMAおよびMUAの自己集合単層を上記の方法を用いて形成する。
b. 金属イオンをこれら表面の上に、図12に記載の手順を用いてパターン化する。まずNi2+、Mn2+、In3+、Eu3+、Co2+、Ag1+およびPb2+ を処理済みの金フィルムの上にパターン化する。金属イオンをリガンドに結合させる際には、1mMから100mMの金属イオン濃度を使用する。金属イオンレセプターの選択は、硬/軟酸および塩基のコンセプトに従う。これらの実験では、金属イオンはルイス酸(電子受容体)であり、標的となる化合物はルイス塩基(電子供給体)である。1960年代にPearsonが最初に報告したように、硬酸(小さくコンパクトな、高荷電電子対受容体)は、典型的には硬塩基(小さい、高電気陰性電子対供給体)に結合し、軟酸は軟塩基(軟酸および塩基は、大きな、拡散した分極性の種)に強く結合する。OP化合物の酸素および有機窒素化合物の窒素は硬塩基であるため、最初のスクリーニングはこれら化合物と硬金属(上記金属のような)塩基間の強い結合について行われる。化合物の識別を可能にする追加の要素としては、分子の形状(形状調節)および極性度が挙げられる。
c. 以下の実施例7に記載の暴露法を用いて、1日〜3週間の期間について、パラチオン、マラチオンおよびダイアジノンへの累積暴露の指示を提供する金属をスクリーニングを実施する。これらの初回スクリーニングは、農薬の飽和蒸気濃度で行われるだろう。上記の結果は、Ag1+とMBAの組み合わせが、ダイアジノンの累積暴露の有用なインジケータを提供することを示している(図16)。加えて、Pb2+とMBAの組み合わせは、マラチオンへの累積暴露の有用なインジケータを提供する(図18)。これら初期研究では、技術等級の農薬を使用し、続いて市販の住居用製品を評価する。
d. 「c」において三種類の農薬の少なくとも一つに対する累積暴露を示すことが証明された金属/リガンドの組み合わせを、内燃機関の排気、厨房の臭気、木煙、香水、ガソリン、ディーゼル燃料、肥料、アンモニア、ベビーローション、ヘアースプレー、ネールポリシャー(アセトン)、殺虫剤、煙草の煙、NOx、CO、床用クリーナー、家具用ポリシャーおよび家庭用脱臭剤の妨害についてスクリーニングする。
e. 上記「d」において、単離した潜在的妨害化合物に反応しないことが見いだされた金属/リガンドの組み合わせを、三種類のOP農薬に対する金属イオン/リガンドの反応に対する潜在的妨害化合物の影響についての引き続きスクリーニングにかける。この実験は、潜在的妨害化合物存在下および非存在下で、LCの農薬に対する反応を比較して実施する。
【0223】
実施例5
本実施例は、液晶アッセイ装置の反応に対する、OP農薬分解生成物の潜在的影響についての試験を記載する。OP化合物が大気に曝されると、それらはしばしば酸化または加水分解される(Bavcon et al, 2002)。マラチオンは酸化されてマラオキソンになるが、ダイアジノンの主たる分解は、加水分解により2-イソプロピル-6-メチル-4-ピリミジノール(IMP)を形成する。試験を実施して、農薬保存試料中の、これら二種類の分解生成物の存在に対する上記特定した金属イオン/リガンドの組み合わせの反応を判定し、かつマラチオンおよびダイアジノン検出への影響を決定する。
【0224】
既知濃度のマラチオンおよびダイアジノン混合水溶液を調製し、液晶アッセイ装置の反応を測定擦る前に、1、3、5、7および14日間保存した。下記の方法を用いて蒸気を発生させる。各暴露から得たデータを、保存していないOPならびにマラオキソンおよびIMPを用いて調製した蒸気について得たデータと比較する。各時点での水溶液中に存在する分解生成物のパーセントは、Bavconらが記載したSPB-1カラムを用いた農薬およびそれらの二種類の代謝物の分離から決定する。
【0225】
実施例6
本実施例6は、液晶アッセイ装置によるOPの検出に及ぼす妨害環境化学物質の影響を軽減および排除する追加の方策について記載する。上記の結果は、液晶アッセイ装置の感度および特異性は、金属イオンの選択によって実質的に調節できること、かつ反応の強さは、ナノ構造支持体上に固定された金属イオンの濃度によって調整されることを証明した。上記のように、表面の金属イオンに結合して感度および選択性に影響するリガンドも特定されている。予備実験において、潜在的妨害化合物に対するシステムの耐性へのLC特性の影響について調べた。LCの選択は、それを通じて潜在的妨害化合物の影響を最小化する別の有用な自由度を提供する。例えばLCsE7とMLC 15,000-000との混合物は、開放型セルの湿気に対する安定性を、DMMPに対する反応を変えることなく有意に高めた。さらには、8CBのフィルムは湿気に対しまったく反応しない。LCの最適化は、上記特定された潜在的妨害化合物の性質に依存しており、ブロンステッドの酸−塩基理論に支配される。潜在的妨害化合物は、プロトン型(例えばアミン、アルコール、カルボン酸)、双極性非プロトン型(例えばDMSO、CH3CN、CH3NO2、ホスフェート、CH2Cl2)または非極性非プロトン型(例えばベンゼン、アルカン)に分類される。例えば、LCのフィルムを疎水性にデザインした場合、水素結合が重要であるプロトン型化合物のフィルム内への浸透は、E7およびMLC15,000-000を用いた実験で観察されるように、大きく低下する。
【0226】
潜在的妨害化合物の影響を評価して最小化する第二の方法は、高分子膜を利用し、OPがそこを貫通して拡散しなければならないようにする方法である。高分子膜は、感度を上げるために、気相センサーに広く用いられている(Digest of the 14th Chemical Sensor Symposium, 1992)ことの記しておく。例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)膜は、疎水性であり、水を通過させないが、極性の低い化合物(例えばOP)は通す。気相の分離および精製のための様々な膜材料が存在することを記しておく。最後に、図1に示すセルの二表面間への膜材料の薄片の挿入は、技術的に容易であり、塵および異物に対するLCの追加の保護を提供する。
【0227】
実施例7
本実施例は、University of Minnesotaの研究室で行われた一連の実験での、エアロゾル生成および測定に好ましい方法を記載する。すべての研究実験は、不活性物質を用いて作製されたサンプリングチャンバーを用いて、ラボフードの中で行われる。気相農薬を測定する最初の実験では、濃度レベルは、物理特性および液晶アッセイ装置の測定可能濃度の下限値といった実際的な考慮点、研究所職員の安全性ならびに実行可能性に基づいて決定される。例えばマラチオンは、30℃では5.3mPaの飽和蒸気圧を持つ。したがって、マラチオンの最大蒸気相濃度は、約50ppbである。それ以上の追加のマラチオンは、すべて滴として存在するか別の粒子もしくは表面の上に凝縮する。
【0228】
気相濃度は、技術等級のマラチオン/ダイアジノンに空気を泡立て、空気を飽和して作成するが、それらは次にフィルターにかけてエアロゾルを除去し、希釈気流と混合し、所望の気相濃度を得る。相対湿度(RH)レベル(15、50、85%)は、希釈空気をバブラーまたは吸着剤に通し、所望の状態を達成する必要に応じて、連続モニターを使用して集めたRHおよび温度に関するデータにより達成される。
【0229】
エアロゾル相実験は、これら同じ活性成分を使用する。ダイアジノンおよびマラチオンには、共に家庭での野外使用向けとして複数の形式があるが、大部分はエアロゾル缶、ホースエンド、または圧縮空気スプレーのような手動式スプレーを用いて使用されている。農薬のエアロゾルは、サンプリングチャンバーおよび上記に従い準備した希釈流を用いて発生させるが、エアロゾルは上向流として発生させて、チャンバー内に直接導く。研究所は、装置内で衝撃を加えて大きなスプレーの滴を取り除き、均一な小粒子サイズのエアロゾルを作る圧縮空気ネブライザーを複数所有している。ネブライザーの最終的な選択は、試験する具体的な農薬調合物に応じて、代表的な手動式スプレーにより産生される粒子サイズに合わせて行なう。この選択は、広い範囲の条件、調合物および活性成分に応用できる、特徴がよく分かっているエアロゾル発生器を選ぶことを主眼にして、一連の実験の初期に決定する。
【0230】
吸着チューブ(クオーツファイバーフィルター、XAD/PUF/XADサンドイッチで裏貼りされている)を用いたNIOSH method 5600を使用して、気相および各実験中のエアロゾル測定について、二重参照測定値を集める。我々は追加の実験を行い、これらの結果を、空気中の粒子を帯電プレートに集める装置である静電気沈殿装置を用いて得たデータと比較して、これらの方法の使用が許容できない試料のロスをもたらしていないか判定する。
【0231】
OP化合物は、University of MinnesotaのDivision of Environmental and Occupational Health Laboratoriesにおいて、水素炎イオン化検出器を備えたAgilent Model 6850ガスクロマトグラフィー(GC)を用いて測定する。我々は、吸着剤を使用するNIOSH method 5600(NIOSH 1994)を用いて集めるすべての農薬について分析する。試験化合物は、90%トルエン/10%アセトン溶液を用いて抽出し、温度およびキャリアーガス流は、研究室の標準的な作業パラメータに従う。
【0232】
実施例8
本実施例は、液晶アッセイ装置の形式の標準化について記載する。上記に使用した分析方法は、以下の手順を含んだ:(I)Mylarスペーサーを有する約1"×0.5"の光学セルを端部に作る工程;(II)光学セルをライトボックスそばの直交偏光リットの間に設置する工程。決められた距離、口径、およびシャッタースピードでのカメラを使って画像を得る工程;(III)サイズを800×600画素に縮小し、bmpファイルフォーマットに変換する工程;(IV)Scion Image(NIH無料ソフト)を用いて、波面の面積とその長さを手動測定し、LCへのOPの浸透距離を「画素」単位で計算する工程;ならびに(V)「画素」の単位を、LCセルの画像が獲得されたとき(工程II)に画像内に挿入した1mmのスケールバーの画像を利用して「mm」の単位に変換する工程。
【0233】
装置は、セルの寸法を0.5"×1"に標準化することによって作製され、ガラススライドのこの標準化されたサイズに正確にカットできるようにする(許容誤差50マイクロメートル)ための単純なテンプレートを組み立てる。図20と同様なテンプレートを作り、ガラススライドの縁を0.5"間隔で、直角に正確にカットできるようにする。LCセル上面および下面の縁は、許容誤差5マイクロメートルの範囲で揃え、OPがLCに入るLCセルの縁に再現性のあるジオメトリーを作製する。
【0234】
セルの画像を獲得する手順を標準化する。この作業は、均一な光分布を有する単色光源(660nm LED)(Edmond Scientific)を利用する。この波長は、LCアラインメントの変化を報告するのに最適な範囲内にある。カメラの設定を標準化して、セルの画像を獲得するたびに正確な画像レプリカを保証する。固定焦点Cosmicar(登録商標)レンズの焦点面、シャッタースピードおよび開口度は、各時点で同一の画像獲得条件を作り出すように設定する。毎回正確に同一な画像条件を作り出すことによって、OP農薬に対するLCの反応の分析を自動化することができるであろう。
【0235】
次に、セルの画像はセルの画定部分に限定する。この手順は、光学セルの上に被せて、画定した開口部を持ち、セルの中心に置かれて、光学セルの均一な画像を保証し、迷光による画像の汚染を減らすブラックマスクを使用する。
【0236】
波面(反応)のサイズの分析も自動化される。上記画定した条件を用いて、二つの異なる方法を、分析物濃度との最適相関性について試験した。Scion Image(NIH無料ソフト)または類似プログラムを用いて、画像をバイナリーコードに変換し、次に%ホワイトエリア(図21)を測定する。セルは同一サイズであることから、%ホワイトエリアは、毎回同じ式を用いて、フロント距離に容易に変換できる。Scion Imageを用いて、セル全体の光強度のプロフィールを作製し、各フロントの縁のドロップオフポイント間の距離を測定する(図22)。このプロセスでは、フロントの位置を最も正確に表すドロップオフの画素を決定する。
【0237】
実施例9
本実施例は、少なくとも二つの反射面を含む液晶アッセイ装置を用いたスタンドオフ検出を記載する。小型(サイズ約100ミクロン)のFabry-Perotフィルターを閉鎖チャンバーに分散させる。これらフィルターのサイズは十分小さく、それらはチャンバー内で混転する。近赤外線から可視域までの電磁放射線を放出する広域光源を、これらフィルターの分布に向ける。反射光を、コリメータシステムで集め、分光光度計を用いて分析する。チャンバー内に標的分析物がない場合には、反射強度は、使用したLCの通常の屈折率に対応する波長にピークを示す。次に、チャンバー内に標的分析物を放つ。標的分析物が各鏡の表面のレセプターに結合すると、直ちに液晶は配向遷移を起こし、それにより反射スペクトルのピーク位置をシフトさせる。
【0238】
実施例10
本実施例は、多孔質シリコンを含む液晶アッセイ装置を用いたスタンドオフ検出を記載する。多孔質シリコン液晶アッセイ装置(上記のようにして作製)を超音波処理により小片(約100ミクロン)に解体する(例えば、スマートダストを形成する)。これらの小片を、標的分析物を制御可能な形で放出できる閉鎖チャンバー内に分散させる。近IR〜可視域までの広帯域光源をこれら粒子の分布に向け、反射光をコリメータシステムで集め遠隔地にある分光光度計を用いて分析する。反射スペクトルに、液晶の放射分布に対応したピークが現れる。標的分析物は、ひとたびチャンバー内に放出されると、それはシリコンの細孔の壁に取り付けられたレセプターに結合し、液晶の配向遷移を誘発する。これが反射光のピーク位置をシフトさせる。
【0239】
実施例11
本実施例は、多孔質シリコンを含み、かつ照射用のUV光源を用いる液晶アッセイ装置を用いたスタンドオフ検出を記載する。上記同様に多孔質シリコン液晶アッセイ装置を、超音波処理によって小片(約100ミクロン)に解体する。これらの小片は、標的分析物を制御可能な形で放出できる閉鎖チャンバー内に分散させる。これらの粒子は、ほぼUVに透明である小さなクオーツの窓を通しレーザーからのUV光に曝される。照明光は、遠隔地のコリメート光学器を用いて集められ、UV可視域分光光度計を用いて分析される。液晶の動径分布に対応するピークは、光ルミネセンススペクトルに現れる。標的分析物は、ひとたびボックス内に放出されると、それはシリコンの細孔の壁に取り付けられたレセプターに結合し、LCの配向遷移を誘発する。これが反射光のピーク位置をシフトさせる。
【0240】
実施例12
本実施例は、蛍光成分を含む液晶アッセイ装置を用いたスタンドオフ検出を記載する。野外実験では、蛍光成分を含む小型(約100ミクロンのサイズ)の液晶アッセイ装置を閉鎖チャンバーに分散させる。蛍光分子の励起波長に光りを放出するレーザーで、これら粒子の分布を照らす。これら蛍光分子が放射する蛍光をコリメート光学器で集め、分光光度系で分析する。チャンバー内に標的分析物がない場合は、放射スペクトルは、使用したLCの通常の屈折率に対応する波長に強度ピークを示す。次に、チャンバー内に標的分析物を放つ。標的分析物が表面のレセプターに結合すると、直ちに液晶は配向遷移を起こし、それにより蛍光スペクトルのピーク位置におけるシフトを誘導する。
【0241】
実施例13
本実施例は、量子ドットを含む液晶アッセイ装置を用いたスタンドオフ検出を記載する。小型(サイズ約100ミクロン)の装置を閉鎖チャンバーに分散させる。量子ドットの励起波長に光を放出するレーザーで、これら粒子の分布を照らす。量子ドットから放出された蛍光を、コリメート光学器で集め、分光光度系で分析する。チャンバー内に標的分析物がない場合は、放射スペクトルは、検出器に、使用した液晶の通常の屈折率に対応する強度ピークを示す。次に、チャンバー内に標的分析物を放つ。標的分析物が量子ドット表面のレセプターに結合すると、直ちに液晶は配向遷移を起こし、それにより反射スペクトルのピーク位置におけるシフトを誘導する。
【0242】
同一原理の別の態様では、カドミウムセレニドの量子ドットをカルボン酸およびレセプター化学で官能化する。これら粒子を、次に高分子液晶でコーティングする。高分子液晶は、任意の分析物がない場合には、量子ドットの表面に対し直交方向に配列する。紫外線に暴露すると、これら量子ドットは特徴的な波長の光を放出し、これを遠隔地からモニタリングできる。これら量子ドットを分析物に暴露させると、液晶は配向を平面配置に変え、これら量子ドットが放出する光の波長はシフトする。
【0243】
実施例14
本実施例は、周期的ラインを含む液晶アッセイ装置を用いたスタンドオフ検出を記載する。周期的なライオンを含む小型(サイズ約100ミクロン)の装置を閉鎖チャンバーに分散させる。630nmの平行単色光線を全体に向ける。二つの光検出器を、一次ピークおよび入射光線に対する一次回折光線の位置に配置する。一次回折光線および主要最大値の相対強度を比較する。チャンバー内に標的分析物がない場合は、比は、1未満のゼロ以外の値となる。次に、チャンバー内に標的分析物を放つ。標的分析物が金線上のレセプターに結合すると、直ちに液晶は配向を平面配置に変え、屈折率の周期性は消失する。原理的最大値に対する一次屈折強度の比はゼロとなり、系内に分析物が在ることを示す。
【0244】
この特別な態様では、様々な方法を用いて野外実験を実施することもできる。光学セルは、固定位置に置かれ(野外にある様々なタワーの頂上のような)、レーザー光を使った照明で周期的に応答指令信号を送る。二つの検出器を固定位置に配置して、回折光を検出する。第1検出器は原理的最大値の位置に配置し、第2検出器は一次最大値の位置に配置する。一次最大値と原理的最大値の強度比を周期的に比較する。分析物が金表面のレセプターに結合すると、第2検出器の強度はゼロになる。これにより、環境中の標的分析物の存在を、受動的にモニタリングできる。
【図面の簡単な説明】
【0245】
【図1】有機リン酸塩に反応させる前および後のアッセイ装置の説明および図面。
【図2】DMMP、マラチオン、およびダイアジノンの構造図。
【図3】反応の強さの異なる液晶アッセイ装置を分類した図面。光学セルのイメージは、デジタルカメラによって捕捉され、Scionソフトウエアで分析された。結果は、前平面の長さに対応するピクセル数として表されている。強(S、41〜93ピクセル)、中(M、21〜40ピクセル)、弱(W、5〜20ピクセル)、極弱(VW、5ピクセル未満)または無。
【図4】各種化合物に関するマルチメタルアレイフィンガープリントの例。各化合物は、この金属群から異なる反応セットを誘発する。ほとんどの化合物に対する反応は、容易に相互識別できる。
【図5】分析物に対する反応前および後の、オープンセルを描いた図。オープンセルでは、分析物はセル上部を通り拡散する。分析物へ暴露した後、液晶は、セル全体で、ホメオトロピック配向から平面配向に迅速に変化する。
【図6】水およびDMMPに対する反応選択性を示すデータ。2mMのEu(ClO4)3のエタノール液に浸漬して前処理しておいたMUAのSAMに支持されたE7のフィルムの光学イメージ(A)製造後、(B)湿度85%、30分暴露後;(C)ひき続き4ppmDMMP、10秒間暴露後。
【図7】E7/MLC混合物による対高湿度安定性上昇を証明するデータ。LCフィルムは、湿度85%、20時間暴露に対し耐性であり、DMMPに対する反応性を維持する。2mMのIn(ClO4)3のエタノール液に浸漬して前処理しておいたMUAのSAMに支持されたE7およびMLCの1:1(v/v)混合物15000-000の光学イメージ(A)製造後、(B)湿度85%、1時間暴露後;(C)湿度85%、20時間暴露後;d) ひき続き4ppmDMMP、45秒間暴露後。
【図8】金属を選択することにより調整したDMMP反応の動態を示す図。オープンセルは4ppm DMMPに反応する。In3+およびEu3+は迅速に反応し、一方Mn2+は同一条件下でまったく反応を示さず、使用した3種類の金属のオープンセルジオメトリーでの選択性を証明している。
【図9】1mM In3+セルの4ppm DMMPに対する累積暴露を証明するデータ。
【図10】In3+セルの各種濃度のDMMPに対する累積暴露を示す図。
【図11】マルチメタルアレイセルの図。
【図12】4ppm DMMP、4時間に暴露に対するマルチメタルアレイの反応を表す図。
【図13】結合可逆性を証明するデータ。金コーティングスライドをMUAで1時間処理した。1mMのIn(ClO4)3エタノール溶液で表面をスピンコーティングし、E7フィルムを貼り、オープンセルを形成した。E7のアラインメントの可逆性を、セルを80ppbのDMMPに3分間暴露し、次にN2でパージして試験した。(A)DMMP反応の図;(B)暴露前;(C)3分時;(D)4.5分時。
【図14】各種DMMP濃度での反応速度Δ(ΔS/S)/Δtを示す図。2mMのIn(ClO4)3のエタノール液に浸漬して前処理しておいたMUAからSAMに支持されたE7のフィルムを形成し、連続的に各種DMMP濃度に暴露した。
【図15】Maxide(登録商標)ダイアジノンに長時間暴露した装置の反応を示すデータ。約5ppbの市販品Maxide(登録商標)ダイアジノンへの累積暴露。イメージ:(A)暴露前、(B)8日間暴露、(C)11日間暴露、(D)15日間暴露、および(E)22日間暴露。
【図16】アッセイ装置別の、反応速度に対する金属イオンおよび濃度の影響を示すデータ。
【図17】ダイアジノンへの陽性反応を確認するコントロールセルを示す図。(A)光学セルを周囲大気に10日間暴露したが反応を示さなかった。(B)光学セルを純粋なダイアジノンに6日間暴露したところ陽性結果を示した。セルはすべて約50%の湿度で暴露した。
【図18】Ortho(登録商標)マラチオンに長期、装置を暴露した時の反応を示すデータ。約0.5ppbの市販品Ortho(登録商標)マラチオンへの累積暴露。写真は(A)から(D)は、1mM MBAと共に1mM Pbを用いた暴露の結果を示している(A)暴露前、(B)7日間暴露、(C)12日間暴露、および(D)19日間暴露。
【図19】液晶のDMMPに対する反応への、金属イオン固定化に用いたリガンドの影響を示す図。自己集合単層内のリガンドを変化させることは、光学セルのDMMPに対する反応に大きな影響を与える。
【図20】カッティングガラススライド用テンプレートの投影図。ガラススライドはテンプレートの下に滑り落ちる。
【図21】%ホワイトコマンドを用いた分析用に、バイナリーに変換した装置のイメージ。
【図22】プロットプロフィール分析に用いたグラフと写真。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)認識成分を表示する第1表面を含み、該第1表面が液晶と接触している、複数の液晶アッセイ装置と、
b)複数の液晶アッセイ装置から遠く離れている放射線源と、
c)放射線源による複数のアッセイ装置への照射で該複数のアッセイ装置からの信号を受け取るよう構成された検出器とを含む、
分析物を遠隔的に検出するためのシステム。
【請求項2】
放射線源が電磁放射線を放射する、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
電磁放射線が、可視光、X線照射、紫外線、ならびに赤外線および高周波からなる群より選択される、請求項1〜2記載のシステム。
【請求項4】
検出器が、赤外分光器、ラマン分光器、X線分光器、可視光分光器、紫外線分光器、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1〜3記載のシステム。
【請求項5】
装置から返される信号が、分析物が存在する場合としない場合で異なるピーク波長を示す、請求項1〜4記載のシステム。
【請求項6】
装置から返される信号が、分析物が存在する場合としない場合とで異なるスペクトルを示す、請求項1〜5記載のシステム。
【請求項7】
認識成分が、金属イオン、金属結合リガンド、核酸、ポリペプチド、タンパク質、酸、塩基、抗体、酵素およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1〜6記載のシステム。
【請求項8】
分析物が、有機リン酸塩、爆発剤、化学兵器用剤、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、毒素、揮発性有機化合物、ウイルスおよび微生物からなる群より選択される、請求項1〜7記載のシステム。
【請求項9】
表面が、金およびシリコンからなる群より選択される、請求項1〜8記載のシステム。
【請求項10】
液晶が、E7、MLC、5CB(4-n-ペンチル-4'-シアノビフェニル)および8CB(4-シアノ-4'オクチルビフェニル)からなる群より選択されるメソゲンを含む、請求項1〜9記載のシステム。
【請求項11】
遠隔放射線源が液晶アッセイ装置から10メートルより遠く離れている、請求項1〜10記載のシステム。
【請求項12】
a)請求項1〜11記載のシステムを提供する工程と、
b)複数の液晶アッセイ装置を、該分析物を含有すると思われる試料に暴露する工程と、
c)該複数の液晶アッセイ装置を、該複数の液晶アッセイ装置から返された放射線が、該分析物と認識成分との相互作用によって引き起こされる該アッセイ装置内での該液晶の配向の変化を示すような条件で同時に照射する工程とを含む、
分析物を遠隔的に検出する方法。
【請求項13】
内柱面および外柱面を含み、該内および外柱面が互いに対向してその間にチャンバーを形成するアッセイ装置であって、該内および外柱面の少なくとも一つが認識成分を表示し、かつ該チャンバーが実質的に液晶で満たされている、アッセイ装置。
【請求項14】
内球面および外球面を含み、該内および外球面が互いに対向してその間にチャンバーを形成するアッセイ装置であって、該内および外柱面の少なくとも一つが認識成分を表示し、かつ該チャンバーが実質的に液晶で満たされている、アッセイ装置。
【請求項15】
中に細孔を有する多孔質シリコンを含むアッセイ装置であって、該細孔が、認識成分を表示している細孔表面を有し、該細孔が実質的に液晶で満たされている、アッセイ装置。
【請求項16】
a)液晶を含み、該液晶が第1表面および第2表面の間に在り、該第1表面は該第1表面と接触する有機層を含み、該有機層がその上に固定化された少なくとも一つの金属イオンを有し、該装置がその中に開口部を有している装置を提供する工程と、
b)該装置を、有機リン酸塩を含有すると思われる試料に暴露する工程であって、
有機リン酸塩への累積暴露が、該開口部から出る波面として同定される該液晶の配向の変化によって示される工程とを含む、
有機リン酸塩への累積暴露をアッセイする方法。
【請求項17】
a)上に固定化された少なくとも2種類の金属イオンを有する少なくとも2ヵ所の検出領域を含む支持体を提供する工程と、
b)装置を、有機リン酸塩を含有すると思われる試料に暴露する工程と、
c)該検出領域内の液晶の配向の変化を調べることによって該リン酸塩の識別を決定する工程とを含む、
特定の有機リン酸塩を同定する方法。
【請求項18】
少なくとも表面を有する第1支持体を含み、該第1支持体が該表面上に少なくとも第1および第2検出領域を含む装置であって、該第1および第2検出領域が有機層および該有機層上に固定された金属イオンを含み、かつ該第1および第2検出領域上の金属イオンが異なっている装置。
【請求項19】
少なくとも表面を有する第1支持体であって、該支持体が該表面上に少なくとも第1検出領域をさらに含み、該検出領域が認識成分を含む第1支持体と、
該第1支持体と接触している液晶と、
中に開口部を有するハウジングであって、該検出領域が該開口部を通し外気に露出するように該支持体が該ハウジング内に形作られているハウジングとを含む、装置。
【請求項20】
ハウジングが、検出領域が開口部を通して外気に露出する露出位置と、該検出領域が実質的に外気から遮断されている読みとり位置との間を移動可能である、請求項19記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2008−518196(P2008−518196A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−529845(P2007−529845)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/023517
【国際公開番号】WO2006/085971
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(507004680)プラティパス テクノロジーズ エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】