説明

分析装置用のガス導入装置のモニター装置

【課題】高真空下(10−2Pa以下)にある分析装置内に、正圧(10Pa以上)からガスを精密にかつ安定的に供給し、同一条件を維持し、かつ再現すること共に、所望のガスに短時間で切替えること。
【解決手段】複数の種類のガスをミキシング室で合成し、合成されたガスを導入して減圧ポンプで0.1Paから0.1MPaまでの範囲内の圧力となるまで減圧し、該減圧されたガスをガス切替弁による切替動作によりガス分析装置に導くガス導入装置及び方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TEM(Transmission Electron Microscope)透過型電子顕微鏡、SEM(Scanning Electron Microscope)走査型電子顕微鏡、XPS(X-ray Photoelectron Microscope)X線光電子分光法、AES(Auger Electron Spectroscopy)オージェ電子分光法、EPMA(Electron Probe Micro Analysis)電子線マイクロアナリシス等の分析装置に対して、圧力調整機構により圧力を調整したガスを供給する装置に関連して、それに用いられるガス成分モニター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の先行技術として、例えば特許文献1に記載された「X線回折装置及びそれに用いる位置敏感型ガス入りX線計数器」がある。
【0003】
図2は、上記の従来技術であるX線回折装置の模式図を示す。4は高真空雰囲気の測定室であり、その内部に位置敏感型ガス入りX線計数器5を備えている。2は試料である。入射X線1は、試料2に矢印の方向に入射する。回折X線3の方向は試料によって異なるが、例えば多結晶性の試料の場合には、図2に示すように同時に複数の方向に回折される。これら複数の回折X線3は位置敏感型X線計数器5により同時に計数される。
【0004】
位置敏感型X線計数器5は、所定の間隔(例えば10mm)で対向し、試料の測定位置を中心とする円弧(例えば角度120°の広がり)形状の2重のX線透過窓6、7を持ち、内側のX線透過窓7(第1の窓)の内部を計数器部11、外側のX線透過窓6(第2の窓)の内部を真空容器部10と呼ぶ。X線透過窓6には2.5μm厚の高分子有機膜を用い、X線透過窓7には7.5μm厚のベリリウム膜を用いている。計数器部11には動作ガスを充填し、電極8、9を配置してある。
【0005】
22は複数のガスボンベであり、減圧弁を通じてガス混合装置21に複数のガスを導入してガスの組成を設定する。18は圧力調整器であり、図示していない圧力計、可変リークバルブと制御装置よりなり、予め設定した圧力と図示していない圧力計による計測圧力の差に応じて、制御装置のPID(比例積分微分)制御により、可変リークバルブ19を開閉してコンダクタンスを調整し、一定のガス圧を保って計数器部11に動作ガスを供給する。20はロータリーポンプである。可変リークバルブ19と圧力調整装置18の制御装置のゲインと時定数を調整することにより、圧力制御を行うことができる。すなわち、動作ガス組成及び圧力制御(調整)機構を用いることにより、X線計数器の計数効率とX線透過率を、測定するX線のエネルギーに応じて最適の値に調節する。
【0006】
真空容器部10は、ターボ分子ポンプ14とロータリーポンプ15によって排気する。16は真空計であり、X線透過窓7が破損し真空容器部10の圧力が予め設定した閾値より高くなった場合、自動的に締切バルブ17を閉じることで、高真空雰囲気の測定室4への動作ガスのリークを防止する。
【0007】
計数器部11、真空容器部10、または高真空雰囲気の測定室4に大気圧のリークを行う際には、X線透過窓6、7の破損を防ぐために計数器部11、真空容器部10、測定室4各部の圧力を等しく保ちながらリークする必要がある。このためには、まず17のバルブを閉じて作動ガスの供給を遮断し、計数器部の圧力を下げた後23、24、25の各バルブを開いて前記11、10、4各部の圧力を等しくし、その後26のリークバルブを開き空気乾燥器27を経た乾燥空気を導入する。この場合X線透過窓6、7にかかる差圧をできるかぎり小さくするため、リークバルブ26からX線透過窓6、7両面へのコンダクタンスが等しくなるように留意する必要がある。
【0008】
【特許文献1】特開平5−332958号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の従来技術では、そのサンプルを設置する場は高真空である。しかし、実際の材料が使用される環境はこれとは異なるので、高真空下での分析結果と実材料の状態との間で相違が生じる。そこで、分析装置のサンプルを設置する場所にガスを供給することが望まれるが、ガス分析装置の内部は、高真空下(10−2Pa以下)であり、正圧(10Pa以上)からのガス圧力の制御は、7桁も異なるレベルでの制御が必要となるので、目標圧力へ到達することと、到達した一定圧力を保持することが容易ではないこと、また、ガスの種類を切り替える際に完全に切り替わるまでに時間に要すること、同一条件を再現することが容易でないことにより、安定した圧力操作による同一の条件下での分析と、同一条件を再現しての再分析を実施することが容易でないという問題に直面する。
【0010】
本発明は、本出願人の先願(特願2007−183292号)の発明において、導入ガス成分をモニターしてフィードバックすることにより、導入ガスを制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明のガス成分モニター装置は、複数の種類のガスをミキシング室で合成するガス合成部と、前記ガス合成部で合成されたガスを導入して減圧する圧力調整部と、前記圧力調整部からの減圧ガスを分析装置に導くように切替えるガス切替弁を備えたガス切替部と、合成されたガスの成分を分析するガス分析装置を備えたガス供給装置であって、前記ガス合成部は、複数のガス源から圧力弁を介して前記ミキシング室に通じる複数のガス導入経路と、前記ミキシング室から開閉弁を介して外部に排出する経路と、前記ミキシング室から前記圧力調整部に流量調整弁を介して導く経路とを備え、かつ前記圧力調整部は、前記ガス合成部からガスを導入する導入室と、該導入室で前記導入されたガスを0.1Paから0.1MPaまでの範囲内の圧力となるまで減圧するポンプを備えた経路と、該導入室から前記ガス切替部に通じる経路とを備え、かつ前記ガス切替部は、前記圧力調整部からのガスを、ガス切替弁を介して分析装置に通ずる経路と、ポンプを通じて外部に排出する経路とを備えた分析装置用のガス導入装置において、前記ガス導入装置に用いられるモニター装置であって、前記ガス導入装置内のガス成分をモニターすることを特徴とするものである。
【0012】
本発明のガス成分モニター装置は、上記の特徴に加えて、前記ガス導入装置は、ガス制御部を備え、前記ガス制御部は、前記ガス分析モニター装置からのガス成分分析結果に基づいて、前記ガス合成部で合成するガスを調整するように前記ガス合成部の前記圧力弁を制御し、前記圧力調整部で導入ガスを所望の圧力に減圧するように前記圧力調整部の前記ポンプを制御し、前記ガス切替弁を切替えて、所望の種類のガスを分析装置に供給する分析装置用のガス導入装置において、前記ガス導入装置に用いられるモニター装置であって、前記ガス導入装置内のガス成分をモニターすることを特徴とするものである。
【0013】
本発明のガス成分モニター装置は、上記の特徴に加えて、前記ガス切替弁は、複数の経路中の所望の経路からの所望のガスを前記分析装置に導くものである分析装置用のガス導入装置において、前記ガス導入装置に用いられるモニター装置であって、前記ガス導入装置内のガス成分をモニターし、ガス導入条件をフィードバックすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、上記のガス導入装置において、ガス導入装置内のガス成分をモニターしてガス導入条件をフィードバックすることにより、高真空下の分析装置に対して、ガス雰囲気下の物質変化を解明するような場合に、所望のガスを精密に生成し、かつ安定して供給することにより、同一条件を維持してその場解析を可能としたり、再現したりすることを可能とするという効果を奏する。
【0015】
また、本発明は、材料の高機能化において、ナノレベルでの組織変化を解明するニーズがあるところ、そのために必要となる雰囲気の精密な制御を可能とし、材料挙動の精密な分析に寄与するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明に係る分析装置用のガス導入装置の全体構成を示すものであり、図1に示すように、本発明に係るガス導入装置は、ガス合成部100、圧力調整部200およびガス切替部300から成るものである。
【0017】
ガス合成部100は、ガスボンベ等のガス供給源101、レギュレータ102、弁103、ミキシング室104、弁105、106から成る。それぞれ異なる種類のガスを充填したガスボンベ等のガス供給源101の圧力は、16MPa程度の高圧であり、これをレギュレータ102、弁103を通じて、ミキシング室104に導入して所望のガス成分からなるガスを合成する。ミキシング室104内のガス圧力は、大気圧に近い0.2〜0.4MPa程度となる。
【0018】
ミキシング室で合成されたガスは、流量調整弁106を通じて圧力調整部200の導入室201に導入される。この際の流量は、毎分100cc/min以下である。導入室には、弁202を介して減圧ポンプ203が接続され、導入室201内のガスを0.1Pa〜0.1MPa程度に減圧する。必要に応じて、この圧力調整部200を複数段で構成してもよい。その場合、圧力調整部の最後段において、導入されたガスを最終的に0.1Pa〜0.1MPa程度にまで減圧する。
【0019】
上記の装置において、ガス合成部で合成するガスの成分を変える場合、不活性ガスを充てんしたガス供給源101より不活性ガスをミキシング室内に導入するようにして、弁105を開放し、また、弁106、301を開放してガス切替部300のポンプ302を駆動する。このようにして、ミキシング室から切替弁303までのガス供給ライン内の古いガスを不活性ガスにより排出する。次に、弁105を閉じて、ミキシング室内に新たなガスを導入し、ガス供給ライン中の不活性ガスを新たなガスで置き換える。
【0020】
以上のようにして、ミキシング室内の古いガスを数秒の内に不活性ガスに交換し、また、新しいガスを数分の内に合成し、ガス分析装置に供給を開始することができる。
【0021】
また、上記のガスラインを、合成されるガスの種類に応じて、例えば酸化ライン、還元ライン、不活性ラインのように複数のラインを設けて、ガス切替部に設けられた切替弁303により、ガス切替弁の動作により、所望のガスを分析装置内に供給するようにしてもよい。
【0022】
ガス切替弁303は、分析装置本体に所望のガスを導入するように、適宜、経路を切り替える。分析装置本体への導入ラインには、ガス成分モニター装置を設け、この装置でモニターしたガス成分情報に基づいて、ミキシング室に導入するガスの弁103を調節して、ミキシング室で合成するガスの成分を調整する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る分析装置用のガス導入装置とガス成分モニター装置の配置の全体構成を示す説明図である。
【図2】図2は、従来技術であるX線回折装置の模式図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の種類のガスをミキシング室で合成するガス合成部と、前記ガス合成部で合成されたガスを導入して減圧する圧力調整部と、前記圧力調整部からの減圧ガスを分析装置に導くように切替えるガス切替弁を備えたガス切替部と、合成されたガスの成分を分析するガス分析装置を備えたガス供給装置であって、前記ガス合成部は、複数のガス源から圧力弁を介して前記ミキシング室に通じる複数のガス導入経路と、前記ミキシング室から開閉弁を介して外部に排出する経路と、前記ミキシング室から前記圧力調整部に流量調整弁を介して導く経路とを備え、かつ前記圧力調整部は、前記ガス合成部からガスを導入する導入室と、該導入室で前記導入されたガスを0.1Paから0.1MPaまでの範囲内の圧力となるまで減圧するポンプを備えた経路と、該導入室から前記ガス切替部に通じる経路とを備え、かつ前記ガス切替部は、前記圧力調整部からのガスを、ガス切替弁を介して分析装置に通ずる経路と、ポンプを通じて外部に排出する経路とを備えた分析装置用のガス導入装置において、
前記ガス導入装置に用いられるモニター装置であって、前記ガス導入装置内のガス成分をモニターするガス成分モニター装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたガス分析モニター装置であって、
前記ガス導入装置は、ガス制御部を備え、前記ガス制御部は、前記ガス分析モニター装置からのガス成分分析結果に基づいて、前記ガス合成部で合成するガスを調整するように前記ガス合成部の前記圧力弁を制御し、前記圧力調整部で導入ガスを所望の圧力に減圧するように前記圧力調整部の前記ポンプを制御し、前記ガス切替弁を切替えて、所望の種類のガスを分析装置に供給する分析装置用のガス導入装置において、
前記ガス導入装置に用いられるモニター装置であって、前記ガス導入装置内のガス成分をモニターするガス成分モニター装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたガス分析モニター装置であって、
前記ガス切替弁は、複数の経路中の所望の経路からの所望のガスを前記分析装置に導くものである分析装置用のガス導入装置において、
前記ガス導入装置に用いられるモニター装置であって、前記ガス導入装置内のガス成分をモニターするガス成分モニター装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−20062(P2009−20062A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−184696(P2007−184696)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】