説明

分枝状マルトデキストリンを含む腸のための抗炎症及び/又は鎮痛組成物

本発明は、15から35%の1→6グルコシド結合を有する分枝状マルトデキストリン、20%未満の還元糖含有量、5未満のポリモレキュラリティ指数、及び4500 g/mol以下の数平均分子量Mnを供えることを特徴とする、腸のための繊維を豊富に含む抗炎症及び/又は鎮痛組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分枝状マルトデキストリンを含むことを特徴とする、繊維を豊富に含む、腸のための抗炎症及び/又は鎮痛組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性炎症性腸疾患(又はIBD)は、特に、2つの異なる疾患:潰瘍性結腸炎(UC)及びクローン病を含む。これらの2つの疾患は、異なるものでありながら関連しており、特に原因不明の腸における免疫系の活性化過剰の状態による、いくらか広く分散した腸の炎症病変によって特徴付けられる。
【0003】
それらは、基本的には、下痢、腹痛、体重減少、及び組織の炎症と共に消化系において現れる。
【0004】
IBDの頻度は、過去数十年に亘って増大している。このことは、前記疾患をより容易に診断することを可能にする技術の進歩によって部分的に説明されているが、本質的には、食習慣における変化が、食物アレルギー、肥満、及び他の「文明病」のような疾患の発展に寄与しているようである。
【0005】
しばらくの間、適切な食餌を追加の従来の治療的処置と組み合わせることにかなり興味が注がれていた。
【0006】
プレバイオティクス及びプロバイオティクスは、これらの症状に影響を受けている個人の食事療法の一助として、彼らの生活の質を改善し、且つ、これらの疾患の予防的な面で重要な役割を担えるために、とりわけ研究されている。
【0007】
さらに特には、食餌への適当な繊維の導入が健康に対して有益な効果を有し、この繊維は結腸炎における保護効果を奏することが認識されている。
【0008】
この繊維は、一般的には、2つのカテゴリー:可溶性繊維及び不溶性繊維に分けられる。
【0009】
ヒトの酵素によって消化され得ない可溶性繊維、例えば、ペクチン及びイヌリンは、腸の細菌叢によって発酵させられる。この発酵によって、結腸内の短鎖脂肪酸が放出され、その効果として、結腸内のpHを低くし、且つ、結果として病原性バクテリアの発生を制限する。
【0010】
不溶性繊維、例えば、セルロース、難消化性デンプン、トウモロコシ繊維(スペントグレイン)、又はダイズ繊維は、胃腸管における重要な機械的な役割を有する。不溶性繊維は、腸の細菌叢及びによって非常に僅かにのみ発酵され、安定作用(ballast effect)によって、腸管輸送時間の低減に寄与する。
【0011】
複合糖類(ポリサッカリド、デンプン)と良好な結腸の生理機能との間に存在する関係は、結腸炎の予防における食餌の重要性を示すことを意図する多数の研究に起因する。
【0012】
複合糖類、特に難消化性デンプンは、小腸で消化されず、結腸の健康にとって重大な価値を有する。
【0013】
しかしながら、多数の研究は、その感覚刺激性の特性を変化させずに食料の難消化性デンプン組成物を修飾するため、いまだに完成に至っていない。
【0014】
1997年以来、Kanauchi et al.は、実験動物において誘導された結腸炎又は下痢に対する発芽オオムギに基づく食品の効果を記載している(Biosci. Biotech. Biochem. 1997, 61, 449-454及びJ. Gasteroenterol. 1998, 33, 179-188)。
【0015】
しかしながら、過去数年に亘って、これらの症状における専門家は、むしろ「腸内洗浄食品食品(colonic food)」、とりわけプレバイオティクスに取り組んでいる。
【0016】
これらのプレバイオティクスは、結腸にコロニー形成する健康にとって有益な細菌の肥料として規定される。
【0017】
プレバイオティクスは、多数の食用植物及び多数の食品に存在する機能性成分である。
【0018】
プレバイオティクスとして従来分類されている化合物は、フルクトオリゴサッカリド及びトランスガラクトオリゴサッカリドだけでなく、ラクツロース、イソマルトオリゴサッカリド、ダイズから抽出したオリゴサッカリド、キシロオリゴサッカリドなどでもある。
【0019】
それらの機能的な作用の標的は、それらが特異的及び選択的な基質として働き、それらを発酵する腸内細菌叢、胃腸管の生理機能、及び特に大腸の機能、免疫系、無機物のバイオアベイラビリティー、及び脂質代謝である。
【0020】
プレバイオティクスによって増殖が促進される有益な腸内細菌叢のうち、特に、ビフィドバクテリウム属及び乳酸桿菌属が挙げられる。
【0021】
乳酸桿菌属は、乳酸の産生による媒体のpHの低下をもたらすという利点を有し、このpHの低下は、クローン病又はある形態の潰瘍性結腸炎のような症状の病因である、プロテオバクテリア又は腸内細菌のような病原性細菌叢の増殖を妨げる。
【0022】
ビフィドバクテリウム属は、抗突然変異及び抗酸化作用を有するフラボノイドの放出を促進する、それらのグルコシダーゼタイプの酵素活性の産生について特に開示されている。
【0023】
炎症性疾患及びその個々の治療は、活発な研究の対象である。実験ラット又はマウスにおけるエタノール中にアレルゲン(トリニトロベンゼンスルホネート又はTNBS)を含有する溶液の投与による結腸炎の誘導のような、結腸炎誘導の実験モデルが開発されている。
【0024】
エタノールは、腸粘膜によって形成された障壁を破壊することを可能にし、かくして腸壁へのTNBSの浸透を促進し、このTNBSが、酸化的損傷による急性の、通常は経壁の、壊死を生じさせる。
【0025】
このモデルは、結腸の局所的な過敏症の研究が想定されており、このモデルによって生じる炎症がIBDの場合に投与される医薬に敏感であるという事実から、特に適切である。
【0026】
腸のための複数の抗炎症組成物が提案され、この動物モデルによって試験されている。
【0027】
フルクトオリゴサッカリド(FOS)は、ヒトの小腸で加水分解されないが、結腸の常在菌叢によって分解される短鎖フルクトース単位のポリマーである。
【0028】
FOSは、ヒト及び動物における腸の内因性の乳酸桿菌属及びビフィドバクテリウム属の増殖を誘導する。
【0029】
さらに、FOS発酵は、結腸のpHにおける低下を誘導し、揮発性脂肪酸及びラクテートの生産を誘導し、且つ、ブチレートの生産を二次的に増大する。
【0030】
American Society for Nutritional Sciences, vol 133, 21-27において2003年に発行されたレヴューにおいて、C. Cherbut et al.は、実験ラットおいてTNBSによって誘導された腸炎におけるFOSの予防効果を開示している。
【0031】
FOSの予防効果は、結腸の損傷の肉眼による採点における観察(TNBSにより生じた壊死及び潰瘍の視覚的な調査)及びミエロペルオキシダーゼ(腸炎のマーカーである、多形核好中性顆粒の特異的な酵素)活性の測定によって、測定する。
【0032】
FOSが腸炎を有意に低減させ、腸の損傷(壊死及び潰瘍)を制限し、ミエロペルオキシダーゼ活性及びTNBSにより誘導される体重減少も低減し得ることが、この文献において示されている。
【0033】
さらに、C. Cherbut et al.は、FOSが実際にプレバイオティクスとしての作用を有する、つまり、結腸における有益な細菌、適切には乳酸菌及び酪酸菌、の腸内における増殖を刺激し、結腸のpHにおける低下を生じさせ得ることも開示している。
【0034】
FOSによる予防のメカニズムは、明確には説明されていない。
【0035】
米国特許出願第2004/0219157号では、FOSは、非特異的な免疫学的パラメーターのホメオスタシスを刺激し、かつ、リンパ球の亜集団の増殖を刺激する。
【0036】
FOSによって増殖が刺激される乳酸菌は、抗菌物質の生成及び結腸のpHの低下によって病原菌の発生を妨げる、病原菌のアンタゴニストであると解されてもいる。
【0037】
乳酸菌は、腸壁に接着することも可能であり、かくして当該病原菌のコロニー形成を妨げる。
【0038】
さらに、FOSは、乳酸及び酪酸の産生誘導によって結腸のpHにおける低下にも作用する。
【0039】
しかしながら、この腸内のアシドーシスは、利点のみを有するわけではない。
【0040】
国際特許出願WO 04/026316では、当該アシドーシスは、特に乳酸菌の増殖によって促進され、究極的には結腸粘膜の侵食を生じさせ、潰瘍性結腸炎のリスクを増大するという事実が開示されている。
【0041】
さらに、結腸における乳酸の蓄積が、血液における過剰量の放出も生じさせ、かくして代謝的アシドーシスを生じさせる。
【0042】
イヌリン並びにFOSは、結腸で非常に急速に発酵されるという欠点を有し、かくして、結腸に対する保護作用に悪影響を及ぼす、微生物集団における不均衡を生じさせ得る。
【0043】
この有害な作用の打ち消すために、前記特許出願WO 04/026316では、結腸において徐々に発酵されることを特徴とするポリサッカリド、適切にはポリデキストロース、をFOSと組み合わせることを提案している。
【0044】
ポリデキストロースは、ソルビトール及び適当な酸触媒(例えば、クエン酸)の存在下における高温でのグルコースのランダム重合によって合成される。
【0045】
ポリデキストロースは、充填剤及び低カロリー成分として栄養学において広範に使用されている。ポリデキストロースは、小腸では消化も吸収もされず、大部分が便において認められる。
【0046】
特許出願WO 04/026316は、結腸の細菌集団において生じる前記不均衡、特にイヌリン及びFOSのようなプレバイオティクスによって誘導される不均衡によって誘導されるアシドーシス作用を妨げるためのポリデキストロースの使用を教示する。
【0047】
かくして、ポリデキストロースは、特異的な細菌叢による乳酸の消費を促進して、FOSによって誘導される過剰生産を打ち消すと解されている。
【0048】
上述した全ての事項から、本願の出願人の会社が知る限り、腸のための効果的な保護組成物の要件を全て満たす単独のポリサッカリドの組成物は存在しない。
【特許文献1】米国特許出願第2004/0219157号
【特許文献2】国際特許出願WO 04/026316
【非特許文献1】Biosci. Biotech. Biochem. 1997, 61, 449-454及びJ. Gasteroenterol. 1998, 33, 179-188
【非特許文献2】American Society for Nutritional Sciences, vol 133, 21-27
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0049】
したがって、本発明の目的は、従来技術の欠点を改善することにある。
【0050】
本願の出願人の会社は、かくして、上述の基準、つまり、結腸粘膜に対する保護作用、結腸のpHにおける適度の低下、及びプロピオン酸菌及び酪産菌、並びにより低い程度の乳酸菌の好ましい生産の全てを満足する、新規な繊維を豊富に含む、結腸のための抗炎症及び/又は鎮痛組成物を多数の試験研究を費やして具現化及び発達させることによって、分枝状マルトデキストリンの包含が、これまで通説では解決できていなかった全ての目的を満足させ得ることを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0051】
したがって、本発明の主題は、ヒト又は動物の身体の治療的処理方法において使用するための、15%から35%の間の1→6グルコシド結合、20%未満の還元糖含有量、5未満のポリモレキュラリティ指数、及び4500 g/mol以下の数平均分子量Mnを有する、分枝状マルトデキストリンである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
本発明の目的のために、用語「分子状マルトデキストリン」は、出願人の会社が有する特許EP 1.006.128に記載されているマルトデキストリンを意味することを意図する。
【0053】
特許EP 1.006.128に記載の分枝状マルトデキストリンの組成物は全て、本発明に係る腸の抗炎症及び/又は鎮痛組成物の調製に適切である。
【0054】
好ましい変形例によれば、前記分枝状マルトデキストリンは、2%から5%の間の還元糖含有量及び2000から3000 g/molの間の数平均分子量Mnを有する。
【0055】
分枝状マルトデキストリンは、AOAC法No. 2001-03(2001)によって測定されて、乾燥ベースで50%以上の全繊維含有量を有する。
【0056】
本発明の主題は、有効成分として分枝状マルトデキストリンを含むことを特徴とする、ヒト又は動物の治療的処置のための繊維を豊富に含む組成物である。
【0057】
本発明に係る繊維を豊富に含む抗炎症及び/又は鎮痛組成物は、結腸に繊維及び保護効果を十分に供給するように、0.5%から20%、好ましくは5%から10%の乾燥重量の前記分枝状マルトデキストリンを含む。
【0058】
本発明に係る腸のための抗炎症及び/又は鎮痛組成物における分枝状マルトデキストリンが0.5重量%未満では、繊維の供給が検出可能な効果を有するには不十分である。
【0059】
これらの分枝状マルトデキストリンは、小腸における吸収を妨げる難消化性の特性を有する。
【0060】
それらは、代謝及び腸内のバランスにとって有益な難消化繊維の供給源を提供する。
【0061】
酪産産生性の乳酸菌又はプロピオン酸菌が、高度に分枝状の化合物を代謝することが実際に明らかであり、それらの高含有量の1-6グルコシド結合は、非常に特異的であるプレバイオティクスの特性を実際にそれらに与える。
【0062】
これらの分枝状マルトデキストリンは、ビフィドバクテリウムの発達を促進し、望ましくない細菌に有害であり、かくしてα及びβ-グルコシダーゼ活性の発現も促進する。
【0063】
本発明に係る腸のための抗炎症及び/又は鎮痛組成物は、以下に例示するように、盲腸の内容物及び便のα-及びβ-グルコシダーゼ酵素活性を2から10、好ましくは3から8倍に刺激し得る。このことは、消費者の健康に非常に有益な特性を生じさせる。
【0064】
さらに、結腸の微生物による本発明に係る抗炎症及び/又は鎮痛組成物の分枝状マルトデキストリンの摂取は、盲腸、腸、及び便の内容物のpHを0.5から1単位低下させ、それにより前記微生物の増殖の調節を反映する。
【0065】
本発明に係る抗炎症及び/又は鎮痛組成物の使用は、酢酸、酪酸、及びプロピオン酸、好ましくはプロピオン酸及び酪酸からなる群から選択される、盲腸における揮発性有機酸の生産も増大させ得る。
【0066】
結腸粘膜に対する保護効果は、TNBSの投与後の動物において特に示され、以下に例示するように顕著な結果によって反映される。
【0067】
動物は通常通りに餌をとり続け、腸上皮においてアッセイしたミエロペルオキシダーゼ(又はMPO)活性における低下によって示されるように、TNBSによる炎症性壊死に対して有意に保護された。
【0068】
実際に、このMPO活性は、食胞及び細胞外領域への好中球の浸潤を反映し、直接的に相関する炎症プロセスを定量化させ得る。
【0069】
したがって、本発明に係る腸のための抗炎症及び/又は鎮痛組成物は、腸上皮のミエロペルオキシダーゼ活性を5%から40%、好ましくは7%から35%低減させ得る。
【0070】
この効果は、腸炎に対する前記組成物の保護効果を有意に反映し、ヒト及び動物の双方の患者の健康を改善する腸のための抗炎症及び/又は鎮痛組成物の調製を想起させ得る。
【0071】
さらに、本発明に係る分枝状マルトデキストリンは、高用量であっても、浸透圧性下痢を生じさせないことが認められた。
【0072】
浸透圧性下痢の現象は、例えばラクトース及びフルクトオリゴサッカリドのような、低分子量発酵性炭化水素を摂取する際に認められる。
【0073】
この現象は、便の内容物の浸透圧における増大に応じて、便の含水量における増大を反映し、この含水量における増大が下痢の発生まで進行する。驚くべきことに、且つ、予期せずに、本発明に係る分枝状マルトデキストリンは、発酵性ではあるが、この減少を生じさせない。
【0074】
食餌において、本発明に係る腸のための抗炎症及び/又は鎮痛組成物は、使用準備済みの形態、又は飲料、例えば、フルーツジュース又はスープなどの形態、ヨーグルトの形態であって良く、又は朝食用シリアルに配合されても良い。
【0075】
前記組成物は、さらに、動物、さらにとりわけ、ネコ、イヌ、ブタ、ウサギ、又は腸炎に罹りやすい他の家畜動物、免疫力が低下している動物において使用されて良い。
【0076】
この組成物は、IBDに罹っている個人だけでなく、過敏性腸症候群に罹っている個人、及び旅行者下痢、並びに多くの場合に病因が不明である腹痛に罹っている個人の食餌を補うために提案されても良い。
【0077】
薬学の観点からは、本発明に係る腸のための抗炎症及び鎮痛組成物は、検討中の有効成分の性質に依存する割合で、分枝状マルトデキストリン及び少なくとも1つの他の有効成分を含んで良い。
【0078】
この他の有効成分は、好ましくは、腸のための抗炎症剤である。
【0079】
IBDの治療において、例えば、2つのタイプの治療を提案し得る:
-サリチル化化合物、例えば、スルファサラジン又はその誘導体、5-アミノサリチレート(5-ASA)のようなものに由来する医薬を使用する治療、
-コルチコイド類、例えば、コルチゾン又はプレドニソロンの医薬に基づく治療。
【0080】
本発明の1つの実施態様は、スルファサラジン及びその誘導体並びにコルチコイド類からなる群から選択される少なくとも1つの有効成分も含むことを特徴とする、分枝状マルトデキストリンを含む上述のような組成物に関する。
【0081】
特定の実施態様によれば、本発明は、スルファサラジン又はその誘導体の1つの重量に対する分枝状マルトデキストリンの重量比が2から30の間であることを特徴とする、分枝状マルトデキストリンを含み、スルファサラジン及びその誘導体からなる群から選択される有効成分も含む、上述の組成物に関する。
【0082】
本発明の特定の実施態様は、コルチコイドの重量に対する分枝状マルトデキストリンの重量比が2から250の間であることを特徴とする、分枝状マルトデキストリンを含み、コルチコイド類からなる群から選択される有効成分も含む、上述の組成物に関する。
【0083】
典型的には、本発明に係る組成物は、液剤、粉末剤、シロップ剤、坐剤、錠剤、又はロゼンジの形態であって良い。
【0084】
本発明の1つの実施態様は、
a)分枝状マルトデキストリンを含む上述の第一の組成物
b)腸のための抗炎症剤を含む第二の組成物
を含む、ヒト又は動物の身体の治療的処置のためのキットに関する。
【0085】
本発明の1つの実施態様は、十分な治療量の分枝状マルトデキストリンの個人への投与を含む、腸炎を治療若しくは予防し、及び/又は腸の痛みを鎮静化するための方法である。
【0086】
本発明の特定の実施態様は、分枝状マルトデキストリンを含む上述の組成物の動物又は個人への投与を含む、腸炎を治療若しくは予防し、及び/又は腸の痛みを鎮静化するための方法である。
【0087】
分枝状マルトデキストリンを含む上述の組成物は、有利には、腸のための抗炎症剤を含む第二の組成物と組み合わせて、個人又は動物に投与されて良い。治療の間、2つの組成物は、同時に又は経時的に連続して投与して良い。第二の組成物の投与方法は、使用する腸のための抗炎症剤に依存する。
【0088】
本発明の特定の実施態様は、上述のキットにおいて記載した2つの組成物の同時又は経時的に連続した投与を含む、腸炎を治療又は予防し、及び/又は腸の痛みを鎮静化するための方法である。
【0089】
本発明の1つの実施態様は、腸炎を治療若しくは予防し、及び/又は腸の痛みを鎮静化するための組成物又はキットの製造のための分枝状マルトデキストリンの使用である。
【0090】
治療又は予防し得る疾患及び痛みのうち、慢性的炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、旅行者下痢、又は腹痛が挙げられて良い。慢性的炎症性腸疾患のうち、潰瘍性結腸炎及びクローン病が挙げられて良い。
【0091】
本発明の組成物の鎮痛的役割に関しては、PPARγ及びMOR受容体の発現に関して推定されている。
【0092】
PPARγ(又はペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ)は、核受容体のファミリーの一員である。それらは、特に、脂肪酸によって活性化され、転写応答への代謝及び栄養シグナルの伝達に関与する。それらは、腸粘膜の完全性の維持における主要な役割を担っている。
【0093】
PPARγが結腸炎の制御に多大に関与していることは、当業者には既知である。それらは結腸癌の場合にも発現しており、それらの活性化は細胞増殖及び細胞分化を阻害する。
【0094】
MOR(又はオピオイド受容体)は中枢神経系及び末梢神経系において認められ、特に結腸に存在し得る。MORの主要な機能は鎮痛作用である。第二の機能は、腸の運動性の阻害である。MORは、腸炎の調節にも関与する。
【0095】
以下に例示するように、本発明の組成物が、1.2から3倍、好ましくは1.6から2倍までペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)の活性を増大させ得ることは、注目に値する。
【0096】
同様に、本発明の組成物が、1.2から10倍、好ましくは2.5から7.5倍、さらに好ましくは4から5倍まで、μオピオイド受容体(MOR)の数を増大させ得る。
【0097】
最後に、前記組成物は、腸のレベルでストレスが表れているストレスを受けている個人に特に適切である。
【0098】
本発明は、制限すること無く説明するものである以下の実施例を読むことでより明確に理解されるであろう。
【実施例】
【0099】
(実施例1)
実験ラットを使用して、不溶性繊維(スペントコーングレイン又はセルロース)と共に、本発明の分枝状マルトデキストリン(MDB)又はグルコース(対照)を含む組成物の食餌における効果を、TNBS投与後の結腸粘膜の保護に関して試験した。
【0100】
保険当局の推奨による食餌におけるシリアル製品からの繊維の取り込みを摸倣するように、不溶性繊維(適切にはスペントコーングレイン)及び本発明のMDBを組み合わせる。
【0101】
さらに、スペントコーングレインは、カロテノイド及びポリフェノール(特に、フェノール酸及びフェルラ酸)を豊富に含むため選ばれた。
【0102】
本実施例において選ばれた本発明の分枝状マルトデキストリンは、15%から35%の間の1→6グルコシド結合、2%から5%の間の還元糖含有量、5未満のポリモレキュラリティ指数、及び2000から3000 g/molの間の数平均分子量Mnを有する。
【0103】
【表1】

【0104】
それらは、AOAC法(No. 2001-03)によって測定されて、乾燥ベースで90%の総繊維含有量を有する。
【0105】
64のOFAラット(Sprague-Dawley系)を、食料及び飲料において、以下の表Iに挙げた組成の特定の食餌を摂取する8つの群に分ける。
【0106】
グルコース及び分枝状マルトデキストリンが、5%(重量/重量)の割合において栄養摂取の飲料に存在した。セルロース及びスペントコーングレインは、5%(重量/重量)の割合において栄養摂取の食料に存在した。
【0107】
【表2】

【0108】
隔離して標準的な食料及び飲料水を動物が摂取していた一週間の後に、ラットは表Iに記載した食餌に従って食料及び飲料を20日間摂取する。
【0109】
次いで、それらを24時間絶食させる。
【0110】
D21では、表Iで特定した生産物を使用する直腸注入によって、動物を処置する。
【0111】
5から8群の動物は、40%ゲーリュサック(Gay Lussac)にエタノールに希釈した500μlのTNBSの直腸内注入を受け、一方、1から4群は、9%の500μl NaClの直腸内注入を受ける。
【0112】
TNBSは、1日あたり10 mg/kg(体重)の用量で注入する。
【0113】
この用量は、重度であるが可逆的な炎症反応を生じさせることが既知である。
【0114】
動物の体重における変化を、注入後3日間に亘って観察する。
【0115】
d24において、動物をCO2で窒息させて屠殺した。
【0116】
動物の体重を量り、次いで、解剖した後に結腸を取り出し、空にして、秤量した。
【0117】
その後、裸眼で観察して、Wallaceスコアを割り当てた。
【0118】
ミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性も、腸上皮においてアッセイする。
【0119】
この活性は、好中球の食胞及び細胞外領域への浸潤を反映するものであり、直接的に相関する炎症プロセスを定量することを可能にする。
【0120】
Wallaceスコアは、下表IIに示すようなWallaceスケールを使用して定められる。
【0121】
【表3】

【0122】
MPO活性のアッセイに関しては、以下のプロトコルに従って調製される結腸を必要とする。
【0123】
6 mlのヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド緩衝液(50 mMホスフェート緩衝液pH 7.0中の0.5%のHTAB)に、結腸の断片を懸濁する。かくして処理した断片をPolytronを10秒間使用して破砕し、均質化する。Sonics and Materials Inc., Danbury, Connecticut, USAからのVibra Cell 500 watts装置(500ワットの変換電力、プローブにおける30%の電力損失-つまり、150W/cm2、ポジション2におけるパルサー-つまり、1秒の66%)を使用して、各サンプルを超音波で処理する。
【0124】
その後、超音波処理したものを、再び同じ条件で超音波処理する前に、凍結融解を3サイクル実施する。その後、サンプルを15分間10000g、4℃で遠心分離する。
【0125】
MPOをアッセイするために、上清を回収する。MPO活性の測定は、酸化形態でオレンジ色になる、過酸化水素に依存する人工の水素供与体(guaiacol)の酸化に基づく。
【0126】
470 nm及び30℃における視覚的な不透明度の観察が、活性の値を与える(吸光度/分/結腸のグラムとして表わされる)。得られた全ての結果を、下表III及びIVに挙げる(各群8匹の動物に対して実施した測定結果の平均±標準偏差として表わされる値)。
【0127】
【表4】

【0128】
体重の漸進的な変化が、D20において全ての動物は同一の体重を有する事を示す。D21において、直腸内注入の前に絶食させたため、全ての動物が体重を損失した。
【0129】
D22において、9%のNaClの直腸内注入で処理された動物の全てが、有意に体重増加する。
【0130】
8群は、炎症を引き起こすTNBS投与を受けたなかで唯一、D22から体重が漸進的に増大する。
【0131】
5、6、及び7群の動物の体重の漸進的変化は、D23及びD24からのみ穏やかに進行する。
【0132】
8群の動物の体重曲線がTNBSを受けていない動物のものと一致するため、このことは、これらの動物がD21から再び食餌を摂取し始めたことを示す。したがって、これらの動物は、TNBSにより誘導された壊死性の炎症に対して保護された。
【0133】
【表5】

【0134】
Wallaceスコアの測定によってこの結果が認められた。事実、スペントグレイン及びTNBSと共に本発明に係る組成物を摂取した動物は、3.9のWallaceスコアを有する。これに対して、TNBSを摂取した他の群では5.8、5.9、及び6.5の平均スコアが得られた。
【0135】
3.9の平均スコアは、8群の動物についての優位に低い程度の炎症を示す。
【0136】
結腸の重量測定の結果は、まず第1に、TNBSの注入を受けた動物が、TNBSで処理されていない動物の結腸より重い結腸を有する。
【0137】
この現象は、特に、炎症を生じた結腸の粘膜を冒す浮腫による。
【0138】
8群の動物の結腸の平均重量を、TNBSを摂取しなかった群の動物の結腸の平均重量と比較してまだ高いが、TNBSで処理した動物の群の中では最も低い重量のままである。
【0139】
TNBSで処理していない群の動物については明らかに低いMPO活性の測定に関しても、同様に、TNBSで処理した動物の他の群と比較して最も低いMPOを示すのが8群であることは明らかである。
【0140】
8群の動物は、したがって、TNBSにより誘導された壊死性炎症に対して有意に保護される。
【0141】
(実施例2)
実験ラットを使用して、本発明の分枝状デキストロース(実施例1と同一)及びデキストロース(対照)の効果を、オスのWistarラットにおけるTNBS投与により誘導される結腸刺激に対して、及び嫌悪光刺激回避調節試験(aversive light stimulus avoidance conditioning test)におけるそれらの認識能力に対して試験した。
【0142】
この試験は、明るい光を当てられた環境に対するラットの嫌悪を使用する。その原理は、光を当てられた動物は、認識能力試験においてより遅く学習するところにある。
【0143】
まず、ラットは、認識能力試験を実施する場合において、嫌悪光環境を調節することを学習する:陽性強化としての30秒の暗闇の期間を得るために、動物はアクティブレバー(LA)を押すことを学習する。
【0144】
装置は、もう一方のレバーも備えており、それは作動された際に光を得ることを可能にしない:インアクティブレバー(LI)。
【0145】
アクティブレバー及びインアクティブレバーが押された総数が、ラットの操作機能のレベルの評価を可能にする。
【0146】
学習(2つのレバーの識別)の習得は、「光」の期間において2つのレバーの各々が押された回数を比較して評価する(LA vs LI)。
【0147】
48のオスのWistar/AF SPFラットは、以下の表Vに記載したように作製した食餌を、それらの栄養摂取において摂取する4つの群に分ける。
【0148】
【表6】

【0149】
動物が標準的な食料及び飲料水を摂取していた隔離期間の後に、動物は、5%の本発明の分枝状マルトデキストリン又は5%のデキストロースのいずれかを添加した食料を15日間摂取する。
【0150】
D15において、動物を48時間絶食させる。
【0151】
D17において、ラットに麻酔をかけて、4群のうち2つ(2及び4群)は、20%ゲーリュサックにおける500 μlのTNBS-エタノールの結腸内投与を3 mg/kg(体重)(すなわち、ラットごとに1 mg-この用量は、弱い腸刺激に関連する痛みを誘導することが認識されている)受ける。
【0152】
D17からD23において、動物は、MDB又はデキストロースを添加した食餌を摂取し続けている。
【0153】
D22において、認識試験を実施する:嫌悪光刺激回避試験(ALSAT)。
【0154】
下表VI及びVIIは、各種の群の動物に適用したALSAT試験の結果を与える。表VIIは、試験の経過に亘って押した総数を与える。
【0155】
【表7】

【0156】
表VIは、LA及びLIを押した数を与える。
【0157】
結果は有意に異なるものではないが、表VIは、食餌において本発明のMDBを摂取したラットがより頻繁にレバーを押しており、とりわけ、2群に対して4群で頻繁に押している。
【0158】
【表8】

【0159】
表VIIによれば、TNBSと共に又はTNBS無しで本発明のMDBを摂取した動物のみが、より有意にLAを押していることによって、LA及びLIの間の区別をすることができる。かくして、表VIIは、TNBSにより誘導された痛みに対する生産物の保護効果を表わしている。
【0160】
D23において、動物を屠殺する:結腸を取り除き、下表VIIIに挙げるスコアスケールに従って試験した。
【0161】
【表9】

【0162】
4つの群から取り除いた結腸を、Carson's液体固定剤中で固定化して、顕微鏡観察する。
【0163】
下表IXは、前記各種の群の結腸についてのスコアを与える。
【0164】
【表10】

【0165】
統計分析(ANOVA)は、3群の結腸のスコアが、1群のラットについてのスコアよりも有意に小さく、2群のものよりも有意に小さい傾向があることを示す。
【0166】
4群のラットについての結腸のスコアは、1群のラットについてのスコアよりも有意に小さく、2群のものよりも有意に小さい傾向がある。
【0167】
下表Xは、腸症(炎症及び壊死/潰瘍)の平均の程度において表わされる、Carson's液体固定剤中で固定化した結腸に対して実施した顕微鏡による試験(肉眼によるスコア)の結果を与える。
【0168】
【表11】

【0169】
表Xの肉眼によるスコアは、動物が本発明に係るMDBを摂取する際に、デキストロースを摂取した動物(対照)と比較してより低い。
【0170】
1.9のスコアが4群に割り当てられ、2群には2.8であることから、この観察は、顕微鏡観察と良好に相関している。
【0171】
したがって、全ての動物が炎症を示したが、重度において異なると結論付け得る。
【0172】
腸症は、動物が本発明に係るMDBを摂取した際により低い重度であり、そのため、上述した肉眼による結果が確認される。
【0173】
これらの結果は、より良好に学習することを示した動物は、TNBSにより誘導された痛みに対して保護されていたことを表わす学習試験の結果と相関するはずであり、本発明に係る組成物の鎮痛特性を示す。
【0174】
(実施例3)
子ブタにおける腸炎に対する、本発明の分枝状マルトデキストロース(実施例1のもの)の保護効果を血液のハプトグロビンをアッセイすることによって試験する。
【0175】
ハプトグロビンは、肝臓で合成される血漿の糖タンパク質(α2-グロブリン)であり、ヘモグロビンに結合することができる。ハプトグロビンの含有量は、当業者が利用し得る診断用キットを使用する免疫学的方法によって測定する。
【0176】
血液のハプトグロビン含有量は、原因に関係なく、炎症性症候群において増大する。その動態は遅く、ハプトグロビン含有量レベルが高い場合には、ある一定の期間に炎症が存在しているという事実を反映する。
【0177】
対照的に、血中におけるハプトグロビンの濃度の低減は、炎症に対する保護効果を反映する。
【0178】
試験開始時に7.2±1.04 kgの体重の128匹の離乳した子ブタの一群(同じ体重及び性別(16匹の去勢されたオス及び16匹のメス)の32匹ずつの4つのバッチに分ける)に対して、試験を実施する。
【0179】
実験の処置は以下のようなものである(全体で77日の期間):
バッチ1:従来の食餌を与えられた対照動物、
バッチ2:食料の2重量%の割合で本発明に係るMDBを摂取している動物、
バッチ3:試験期間(14日)の間、1000及び400 mg/kgの各々の割合で2種の抗生物質(クロロテトラサイクリン及びスピラマイシン)を含有する食料を摂取して医学的に処置され、次いで残りの試験期間(15から77日)の間、従来の食餌を再び摂取した動物、
バッチ4:試験期間(14日) の間、1000及び400 mg/kgの各々の割合で2種の抗生物質(クロロテトラサイクリン及びスピラマイシン)を含有する食料を摂取して医学的に処置され、次いで残りの試験期間(15から77日)の間、食料の2重量%の割合で本発明に係るMDBを摂取している動物。
【0180】
試験の終わりに、血栄サンプルを1亜群毎に6匹の子豚から採取して、ハプトグロビン含有量を測定する(血中のmg/mlで表わされる)。
【0181】
下表XIは得られた結果を与える。
【0182】
【表12】

【0183】
結果は、本発明に係る腸のための繊維を豊富に含む抗炎症及び鎮痛組成物を摂取した動物(バッチ2)の血液ハプトグロビン含有量は、従来の食餌を摂取した動物よりも有意に低いものであり、かくして、血中、及びそれにより全身の炎症レベルが対照よりも低いことを反映している。
【0184】
バッチ4では、結果は、有意ではないが、対照の群よりも低いものである。しかしながら、この低減は、所望の効果、つまりより低い抗炎症状態を支持する。
【0185】
(実施例4)
本発明の分枝状マルトデキストリン(実施例1のもの)の腸内発酵に対する効果を、実験ラットにおいて試験する。
【0186】
40のOFAラット(Sprague-Dawley系)を、下表XIIに詳細に挙げる食餌をその食料の摂取において受ける4つの群に分ける。
【0187】
4群は、フルクトオリゴサッカリド(Orafti社によって市販されているRaftilose(登録商標) P95)を添加した食料摂取を受けた。
【0188】
【表13】

【0189】
隔離されて標準的な食料摂取及び飲料水を摂取していた一週間の後に、ラットは36日間前記食料を摂取した。
【0190】
D0において、動物を24時間絶食させる。飲料は適宜与える。D1において、便を回収する。
【0191】
表XIIに記載した食餌を動物に与える。
【0192】
D28において、動物を24時間絶食させる。飲料は適宜与える。
【0193】
D29において、便を再び回収する。
【0194】
D36において、動物を屠殺する。
【0195】
器官の一般的な肉眼観察を実施する。盲腸を結紮して、取り除く。盲腸全体、盲腸の内容物、及び空の盲腸を秤量する。
【0196】
便及び盲腸の内容物のpH及び固体を測定する。
【0197】
便の酵素活性も評価する(α-グルコシダーゼ及びβ-グルコシダーゼ)。
【0198】
揮発性脂肪酸の分布を、盲腸内容物において試験する(酢酸、プロピオン酸、酪酸)。
【0199】
下表XIIIは、盲腸全体の重量、空の盲腸の重量、及び盲腸内容物のpHに関するデータを与える(バッチ当たり10の動物の平均値±標準偏差として表わされる)。
【0200】
【表14】

【0201】
表XIIIは、盲腸全体及び空の盲腸の重量が、標準的な食料摂取又は10%のデキストロースを含有する食料摂取を受けている動物と比較して、10%の本発明に係るMDB又は10%のRaftilose(登録商標) P95を摂取している動物について有意に大きいことを示す。
【0202】
対照バッチと比較して、10%のMDBを受けている動物の盲腸全体の重量は46%増大しており、10%のRaftilose(登録商標) P95を摂取している動物に関しては53%増大している。
【0203】
一方、空の盲腸の重量は、MDBを受けているバッチについては30%、及びRaftilose(登録商標) P95を受けているバッチに関しては50%変化している。
【0204】
これらの結果は、MDB及びRaftilose(登録商標) P95は盲腸の重量を増大させ、それにより盲腸の細菌量及び盲腸粘膜の重量を増大させ、かくして炎症に対する物理的な保護を生じさせることを示す。
【0205】
この表は、MDBを受けているバッチに関して盲腸の内容物のpHにおける優位な低減が存在し、かくして十分な盲腸発酵活性を反映していることも示す。
【0206】
このpHにおける低減は、より悪性であろう塩基性分子の低減を利益とする、酸性分子の増大を反映している。
【0207】
一方、Raftilose(登録商標) P95は、盲腸内容物のpHが有意に低減しないため、これらの特性を示さない。
【0208】
表XIVは、盲腸内容物の揮発性脂肪酸の分布に関するデータを与える。
【0209】
【表15】

【0210】
この表は、10%のMDBを添加した食料摂取が、盲腸内容物のプロピオン酸における有意な増大をもたらすことを示す。
【0211】
この結果は、Raftilose(登録商標) P95を受けているバッチに関しても得られているが、より少なく強化される様式で得られている。
【0212】
盲腸内容物における酢酸量に関しては、有意な差は認められない。
【0213】
表XVは、便のpHに関するデータを与える。
【0214】
【表16】

【0215】
これらの結果から、MDBを摂取している動物において便のpHにおける低減が観察されたが、前記便のpHにおける有意な低減を認めることはできない。
【0216】
一方、Raftilose(登録商標) P95を受けている動物についての便のpHは低減する。
【0217】
表XVI及びXVIIは、D0及びD29の各々において測定した便の酵素活性を与える。
【0218】
【表17】

【0219】
D0において、バッチ間において有意な差が認められないことは言うまでもない。
【0220】
【表18】

【0221】
D29において、グルコシダーゼ活性は、10%のMDBの投与によって非常に増大する。これは、10%Raftilose(登録商標) P95を受けた動物に関しても同様であるが、より少なく強化された様式で増大する。
【0222】
事実、対照バッチと比較して、MDBを摂取しているバッチにおいては、310%及び298%の増大がα-グルコシダーゼ及びβ-グルコシダーゼの各々について認められているが、一方でRaftilose(登録商標) P95のバッチについては各々172%及び63%のみ増大している
【0223】
便のグルコシダーゼ活性における増大は、存在するポリサッカリド基の結腸における消化を生じさせる。
【0224】
この高いグルコシダーゼ活性は、かくして、あるポリフェノール(血糖の炎症の修復における重要な因子)のバイオアベイラビリティーにおける低下、及び酸化ストレスにおける低下も生じさせる。
【0225】
(実施例5)
本発明の分枝状マルトデキストリン(実施例1と同じもの)の酪酸の生産に対する効果を、実験ラットにおいて試験する。
【0226】
18匹のFischer実験ラットを、食料摂取において、下表XVIIIに上げる食餌を、それらの食料摂取において摂取する3つの群に分ける。
【0227】
3群は、フルクトオリゴサッカリド(Beghin-Meiji社製のActilight(登録商標))を添加した食料摂取を受ける。
【0228】
【表19】

【0229】
標準的な食料摂取及び飲料水を受けて隔離された一週間の後に、ラットは14日間表XVIIIに記載した食料を摂取する。
【0230】
D14において、動物を屠殺する。器官の一般的な肉眼観察を実施する。盲腸を結紮して、取り除く。
【0231】
盲腸内容物中の揮発性脂肪酸の分布を試験する。
【0232】
下表XIXは、酪酸について得られた結果を与える。
【0233】
【表20】

【0234】
盲腸の酪酸量は、MDBを摂取した動物について増大し、かくして、MDBは動物における酪酸産生性の糖質に分類され得る。
【0235】
酪産は、細胞増殖及び分化、それによる結腸炎に対するMDBの保護作用の調整において重要な因子である。
【0236】
(実施例6)
本発明の分枝状マルトデキストリン(実施例1と同じもの)及びデキストロース(対照)の、腸炎に関与する各種の細胞受容体の産生及び鎮痛作用に対する効果を実験マウスにおいて試験する。
【0237】
20匹の7週齢のBalb/cマウスを2つの群に分ける。
【0238】
1つの群は、飲料水中の10%のデキストロース溶液からなる飲料を摂取する。他の群は、飲料水中の10%のMDB溶液を摂取する。
【0239】
動物は、この飲料及び標準的なマウスの食料の制限しない提供を29日間受ける。
【0240】
D29において、マウスを屠殺して、結腸を取り除き、以下のマーカー:
-ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPARγ)
-μオピオイド受容体(MOR)
について分析する。
【0241】
炎症の生理学的制御における本発明の分枝状マルトデキストリンの役割を評価するために、Clontech Laboratories Inc.社により市販されているNucleoSpin(登録商標) RNA IIキットを用いて、除去した結腸の総RNAを単離する。逆転写酵素を用いて、総RNAをcDNAに逆転写する。
【0242】
逆転写反応は、PPARγ及びMORについてのプライマーを用いてリアルタイムPCR(Applied Biosystems)によって増幅し、定量した。結果は、内部のβアクチン対照のmRNA分子毎のmRNA分子の数において表わす。
【0243】
下表XXは、ラットの結腸粘膜におけるPPARγ及びMORのアッセイに従って得られた結果の平均値を与える。
【0244】
【表21】

【0245】
これら2つの因子における大きな増大が、29日間の、10%の本発明のMDBの食料への導入を使用して認められる:
-PPARγについて1.72倍の増大
-MORについて4.43倍の増大。
【0246】
10%のMDBで処理したバッチの結果は、10%のデキストロースを使用する対照バッチについて得られた結果よりも優位に多量であることを示す(PPARγについてp<0.03及びMORについてp<0.04)。
【0247】
本発明のMDBは、かくして、特に腸粘膜の完全性を維持することによって、起こり得る炎症の調節の一助となり得る。
【0248】
事実、PPARγ分子数の増大は、動物がMDBを摂取している際に、結腸がより良好な抗炎症状態を有することを示す。
【0249】
一方、MOR痛み受容体の数における増大は、痛みに対する内臓の感受性における低減と同義である。これらの結果は、MDBの鎮痛作用が動物の認識行動に対する効果によって表わされた実施例2の結果と完全に一致している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
15%から35%の間の1→6グルコシド結合、20%未満の還元糖含有量、5未満のポリモレキュラリティ指数、及び4500 g/mol以下の数平均分子量Mnを有する、ヒト又は動物の身体の治療的処置方法において使用するための分枝状マルトデキストリン。
【請求項2】
2%から5%の間の還元糖含有量及び2000から3000 g/molの間の数平均分子量Mnを有することを特徴とする、ヒト又は動物の身体の治療的処置方法において使用するための、請求項1に記載の分枝状マルトデキストリン。
【請求項3】
乾物ベースで50%を超える、AOAC法No.2001-03によって測定される総繊維含有量を有することを特徴とする、ヒト又は動物の身体の治療的処置方法において使用するための、請求項1又は2に記載の分枝状マルトデキストリン。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の分枝状マルトデキストリンを有効成分として含むことを特徴とする、ヒト又は動物の身体の治療的処置のための繊維を豊富に含む組成物。
【請求項5】
0.5%から20%、好ましくは5%から10%の乾燥重量の前記分枝状マルトデキストリンを含むことを特徴とする、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
飲料、スープ、又はヨーグルトの形態であるか、あるいは朝食用シリアルに配合されることを特徴とする、請求項4又は5に記載の組成物。
【請求項7】
スルファサラジン及びその誘導体並びにコルチコイド類からなる群から選択される、少なくとも1つの有効成分も含むことを特徴とする、請求項4又は5に記載の組成物。
【請求項8】
スルファサラジン及びその誘導体からなる群から選択される有効成分も含み、スルファサラジン又はその誘導体の重量に対する分枝状マルトデキストリンの重量の比が2から30の間であることを特徴とする、請求項4又は5に記載の組成物。
【請求項9】
コルチコイド類からなる群から選択される有効成分も含み、コルチコイド類の重量に対する分枝状マルトデキストリンの重量の比が2から250の間であることを特徴とする、請求項4又は5に記載の組成物。
【請求項10】
液剤、粉末剤、シロップ剤、坐剤、錠剤、又はロゼンジの形態であることを特徴とする、請求項7から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
a)請求項4から10のいずれか一項に記載の第一の組成物;及び
b)腸のための抗炎症剤を含む第二の組成物
を含む、ヒト又は動物の身体の治療的処置のためのキット。
【請求項12】
腸炎を治療若しくは予防し、及び/又は腸の痛みを鎮静化するための組成物又はキットの製造のための、請求項1から3のいずれか一項に記載の分枝状マルトデキストリンの使用。
【請求項13】
慢性炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、旅行者下痢、又は腹痛を治療又は予防するための組成物又はキットの製造のための、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記慢性炎症性腸疾患が、潰瘍性結腸炎及びクローン病から選択されることを特徴とする、請求項13に記載の使用。

【公表番号】特表2008−536997(P2008−536997A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−507111(P2008−507111)
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【国際出願番号】PCT/FR2006/000736
【国際公開番号】WO2006/111624
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(592097428)ロケット・フルーレ (58)
【Fターム(参考)】