説明

分解時間を調整可能なステレオコンプレックスヒドロゲル

本発明は、薬物送達および組織工学用のステレオコンプレックスヒドロゲルに関する。これらのヒドロゲルは、少なくとも一つの親水性部位と、少なくとも二つの、グラフトまたは末端ブロックを代表する鏡像異性体濃度が高い分解性部位とを有するブロックまたはグラフト重合体を含んでなる。ヒドロゲル中、反対のキラリティーを有する分解性部位がラセミクリスタライトを形成し、重合体の物理的架橋を引き起こす。さらに、ヒドロゲルの分解性に対する、分解性ブロック末端基の重要性も開示する。分解性部位に末端水酸基が存在しないことを特徴とする重合体から得られるヒドロゲルは、特に安定しており、長寿命で長期間、例えば数週間または数ヶ月にわたる高い薬物徐放能力を有することが分かる。別の態様では、本発明は、ヒドロゲル組成物の製造方法、ヒドロゲルを調製できるキット、およびヒドロゲルの使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、物理的ヒドロゲル組成物に関し、とりわけ、薬物送達や組織工学に用いられるステレオコンプレックスヒドロゲルに関する。本発明の組成物は、重合体鎖が主として非共有結合により互いに架橋した、水和した三次元的重合体網目を示す。より詳しくは、本発明は、重合体が、ラセミクリスタライトであるステレオコンプレックスを形成することができる、キラリティーが反対の部位を有するステレオコンプレックスヒドロゲルに関する。別の態様では、本発明は、そのようなステレオコンプレックスヒドロゲル組成物の製造方法およびそれらの使用に関する。さらに、立体複合ヒドロゲル組成物を調製できるキットも提供する。
【背景技術】
【0002】
生物分解性ヒドロゲルは、組織工学用材料、および薬学的に活性な化合物、例えば治療学的タンパク質、を制御しながら放出させる材料の重要な区分である。ヒドロゲルは、親水性重合体の化学的または物理的架橋により製造される三次元的重合体網目である(Hennink WEおよびVan Nostrum CF. Novel crosslinking methods to design hydrogels. Adv. Drug Del. Rev. 54, 13-36, 2002)。化学的に架橋したゲルでは、重合体は主として共有結合により連結されている。物理的に架橋したゲルでは、異なった重合体鎖間の物理的または物理化学的相互作用により、網目が形成されている。近年、物理的に架橋したゲル、とりわけ穏やかな条件下で、有機溶剤の非存在下でゲル形成が行われるゲル組成物に関心が高まっている。この関心に対する主な理由は、上記のようなゲルを基材とする薬物送達系または組織工学マトリックスの製造では、ゲル中に活性物質として配合されることが多い生理活性タンパク質に対して悪影響を及ぼす傾向がある架橋剤や有機溶剤の使用を回避できるためである。これらの試剤や溶剤は、捕獲すべき活性物質に影響を及ぼすのみならず比較的毒性であることが多く、ゲルの使用前にそれらの残留物をゲルから注意深く除去する必要がある。
【0003】
物理的に架橋したゲルを形成するために、イオン系、疎水性および水素結合相互作用を使用する非常に様々な方法が応用されている。より最近の手法では、生理学的条件では水に不溶な結晶性領域、即ちクリスタライトを重合体網目中に形成する。この方法は、多数の水酸基を含む直鎖状重合体鎖、例えばポリ(ビニルアルコール)に関して開示されている。
【0004】
さらに、クリスタライトは、光学的に活性なキラルモノマー単位から構成された重合体から形成することができる。反対のキラリティーを有する重合体部位が混入すると、これらの部位は会合してラセミ結晶性領域を形成し、これはステレオコンプレックスと呼ばれる。ステレオコンプレックスヒドロゲルは、例えば、キラリティーが反対の鏡像異性体濃度が高い重合体を混合することにより形成することができる。あるいは、ステレオコンプレックスヒドロゲルは、キラリティーが反対の部位を有する一種のみの重合体状化学種から形成することもできる。
【0005】
例えば、国際特許第WO00/48576号には、相補的な、即ち反対のキラリティーを有する重合体の混合物から製造されたステレオコンプレックスヒドロゲルが開示されている。キラル部位は、乳酸由来の単位から主として構成されている。特に、オリゴ(ラクテート)グラフトがキラル部位を代表するグラフト重合体が記載されている。
【0006】
De Jongら (J. Controlled Release 72, 47-56, 2001)も、デキストラン骨格にグラフト化されたD−およびL−乳酸オリゴマー間のステレオコンプレックス形成に基づく生物分解性ヒドロゲルを開示している。Limら(Macromol. Rapid Commun. 21, 464-471, 2000)は、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)の骨格およびオリゴ(D−ラクチド)またはオリゴ(L−ラクチド)の側鎖を有する2種類の鏡像異性体両親媒性グラフト共重合体からヒドロゲルを形成している。これらのヒドロゲルでも、反対のキラリティーを有する側鎖間でステレオコンプレックスが形成されている。
【0007】
これらの、薬物送達用途に提案されているステレオコンプレックスヒドロゲルは、それらの加水分解可能なオリゴマー状ラクチド側鎖のために生分解性であり、その分解は、中速度で生理学的条件下で起こる。他の分解性構造も重合体中に存在し得る。例えば、重合体骨格とグラフトとの間の結合基は、ヒドロゲルの全体的な分解性に寄与することがある。
【0008】
これらの公知のステレオコンプレックスゲルの多くが示す加水分解は、数週間または数ヶ月にわたる程十分なゲル安定性を有さず、薬物を保持するには不十分である。しかし、多くの現在想定される制御された放出用途には、そのような遅い加水分解挙動が望ましい場合もある。
【0009】
従って、現在公知のステレオコンプレックスゲルよりも長い期間物理的に安定しており、生理学的条件下で非常にゆっくりと分解し、治療学的タンパク質等の配合した活性成分を数週間または数ヶ月にもわたって放出し得るステレオコンプレックスヒドロゲルが求希求されている。
【0010】
本発明の目的は、そのような化学的および物理的安定性が改良されたヒドロゲルを提供すること、およびそのようなヒドロゲルを含んでなる組成物を提供することである。別の目的は、そのようなヒドロゲルの使用およびそれらの製造方法を提供することである。本発明の他の目的は、下記の説明から明らかである。
【特許文献1】国際特許第WO00/48576号
【非特許文献1】De Jongら J. Controlled Release 72, 47-56, 2001
【非特許文献2】LimらMacromol. Rapid Commun. 21, 464-471, 2000
【発明の概要】
【0011】
本発明にしたがい、第一および第二重合体の混合物を含んでなるステレオコンプレックスヒドロゲル組成物を提供する。第一および第二重合体の両方が、個別に、少なくとも一つの親水性部位および少なくとも二つの、生理学的条件下で加水分解し得るオリゴマー状分解性部位を有する。これらの少なくとも二つの分解性部位は、鏡像異性体濃度が高いキラルモノマー単位を含んでなる。第一重合体の分解性部位の少なくとも一つ、および第二重合体の分解性部位の少なくとも一つが、主として反対のキラリティーを有する。本発明は、組成物中に存在する分解性部位の少なくとも一部には遊離末端水酸基が無い、即ち第一または第二重合体のいずれかを代表する少なくとも一部の重合体分子は、遊離末端水酸基を含まない分解性部位を含んでなることをさらに特徴とする。
【0012】
好ましくは、ヒドロゲルは、グラフトまたは末端ブロックを代表例することができる、少なくとも一つの親水性部位、および少なくとも二つの鏡像異性体濃度が高い分解性部位を含むブロックまたはグラフト重合体を含んでなる。
【0013】
ヒドロゲルでは、キラリティーが反対である分解性部位がラセミクリスタライトを形成し、重合体の物理的架橋を引き起こす。さらに、分解性ブロック末端基の、ヒドロゲルの分解性に対する重量性も開示する。末端水酸基が存在しないことを特徴とする分解性部位を含む重合体に由来するヒドロゲルは、特に安定しており、長寿命かつ長期間の、例えば数週間または数ヶ月にわたる高い薬物徐放能力を有することが分かる。
【0014】
第一および第二重合体は、好ましくは互いに異なっており、その違いは、それらの分解性部位のキラリティーである。つまり、2種類の重合体のそれぞれが、2種類のキラル化学種の一方だけをその分解性部位中に含んでなる。しかし、所望により、第一および第二重合体は、各重合体分子が両方のキラリティーの部位を含んでなる場合、同一でもよい。
【0015】
上記のように、重合体は、親水性部位が骨格であり、分解性部位が重合体のグラフト、側鎖であるグラフト重合体であるのが好ましい。あるいは、重合体は、重合体鎖の少なくとも末端ブロックが分解性部位により形成されているのに対し、親水性部位は、末端ブロック間に位置するブロック、またはブロックの一つである、ブロック重合体、例えばABA型ブロック重合体、を代表することができる。
【0016】
別の態様では、本発明のヒドロゲル組成物の製造方法を提供する。本方法は、第一および第二成分を、水および所望により他の添加剤の存在下で、混合する工程を含んでなる。第一成分は、請求項1に規定する第一および第二重合体の少なくとも一方を含んでなる。第一および第二重合体が互いに異なる場合、即ちこれらの重合体が、キラリティーが反対の分解性部位を含んでなる場合、第一成分が第一重合体を含んでなり、第二成分が第二重合体を含んでなるのが好ましい。
【0017】
別の態様では、そのようなステレオコンプレックスヒドロゲルおよびヒドロゲル組成物の薬物送達および組織工学における、特に治療学的タンパク質等の活性成分の制御された放出を行う、注入またはインプラント可能な薬学的処方物の成分としての使用を提供する。
【0018】
さらに別の態様では、本発明のステレオコンプレックスヒドロゲル組成物を調製できるキットを提供する。
【発明の詳細な説明】
【0019】
本発明は、薬物送達および組織工学用途向けの新規な、改良されたステレオコンプレックスヒドロゲルおよびヒドロゲル組成物を提供する。第一の態様により、第一および第二重合体の混合物を含んでなるステレオコンプレックスヒドロゲル組成物を提供する。第一および第二重合体の両方が、個別に、少なくとも一つの親水性部位および少なくとも二つの、生理学的条件下で加水分解し得るオリゴマー状分解性部位を有する。これらの少なくとも二つの分解性部位は、鏡像異性体濃度が高いキラルモノマー単位を含んでなる。第一重合体の分解性部位の少なくとも一つ、および第二重合体の分解性部位の少なくとも一つが、主として反対のキラリティーを有する。本発明は、組成物中に存在する分解性部位の少なくとも一部には遊離末端水酸基が無い、即ち第一または第二重合体のいずれかを代表する少なくとも一部の重合体分子は、遊離末端水酸基を含まない分解性部位を含んでなることをさらに特徴とする。
【0020】
ここで使用するように、ヒドロゲルは、水で膨潤した、三次元的重合体網目であり、そこでは重合体鎖が物理的または化学的に架橋している。架橋の性質に応じて、ヒドロゲルは、化学的または物理的ヒドロゲルと呼ぶことができる。室温または体温で、ヒドロゲルは基本的には水に不溶である。ヒドロゲル組成物は、ヒドロゲルおよび所望により他の構成成分を含んでなる組成物である。
【0021】
ステレオコンプレックスヒドロゲルは、ステレオコンプレックスが存在する「物理的」ヒドロゲルであり、その複合体は、関与する重合体分子間の架橋として機能する。ステレオコンプレックスは、反対のキラリティーを有する重合体状またはオリゴマー状部位(例えばグラフトまたはブロック)のような構造により形成されたラセミクリスタライトまたは結晶性部位である。ステレオコンプレックスに加えて、他の種類の架橋もステレオコンプレックスヒドロゲル中に存在し、その安定性に寄与する。
【0022】
反対のキラリティーを有する部位が、本明細書で第一および第二重合体と呼ぶ重合体中に存在することができる。第一および第二重合体は、好ましくは互いに異なっており、その違いは、少なくともそれらの分解性部位のキラリティーである。つまり、2種類の重合体のそれぞれが、2種類のキラル化学種の一方だけを、または主として一方を、その分解性部位中に含んでなる。
【0023】
しかし、所望により、第一および第二重合体は同一でもよい。これは、各重合体分子が両方のキラリティーの部位を含んでなる場合に可能である。
【0024】
ステレオコンプレックスは、光学活性的に相補的である、即ち主として反対のキラリティーを有する部位から形成される。つまり、これらの部位は、主としてキラルモノマー単位を含んでなければならず、鏡像異性体濃度が高くなければならない。ここで使用する「鏡像異性体濃度が高い」とは、そのキラルモノマー単位が一種のみの鏡像異性体のみから選択される構造、または一つの鏡像異性体の含有量が他の鏡像異性体の含有量よりも著しく高い構造を意味する。例えば、ラクテート単位を含んでなる部位は、(L)−または(D)−ラクテート単位だけを含む場合は鏡像異性体濃度が高いが、両方の鏡像異性体を、ステレオコンプレックス形成がなお可能である比率で含む場合も鏡像異性体濃度が高い。一般的に、一つの鏡像異性体で鏡像異性体濃度が高いとは、その鏡像異性体が、他の鏡像異性体に対して、少なくとも約8:2、好ましくは少なくとも9:1の比で存在することを意味する。つまり、用語「鏡像異性体濃度が高い」とは、鏡像異性体的に純粋ではない構造も含む。
【0025】
同様に、ある部位が鏡像異性体的に純粋ではない場合、その部位は、光学活性的に相補的である、または反対のキラリティーを有する、と呼ぶことができる。その上、これらの部位は、限られた数の、全くキラルではない単位を含んでなることができる。例えば、これらの用語は、ある程度のグリコレート、カプロラクトン、またはプロピオラクトン単位も含むオリゴマー状(L)−または(D)−ラクテート部位を包含するように使用される。
【0026】
分解性部位は、第一および/または第二重合体のグラフトまたはブロックを代表することができる。より好ましくは、本発明のヒドロゲル組成物の基材となる重合体は、親水性部位が骨格であり、分解性部位が重合体のグラフト、または重合体の側鎖であるグラフト重合体を代表する。本発明の専門用語では、グラフト重合体は、主鎖または骨格に側鎖として結合したブロックの一種以上の化学種を含む重合体として理解され、これらの側鎖は、骨格中の構成または構造的特徴とは異なった特徴を有する。分岐またはペンダント鎖とも呼ばれる側鎖は、主鎖から枝分かれしたものである。
【0027】
あるいは、ヒドロゲルの基材となる重合体は、重合体鎖の少なくとも末端ブロックが分解性部位により形成されているのに対し、親水性部位は、末端ブロック間に位置するブロック、またはブロックの一つである、例えばABA型ブロック重合体等のブロック重合体を代表することができる。ブロック重合体は、一般的に直線的な順序に配置されたブロックから構成される重合体として定義される。ブロック重合体のブロックは、そのブロックを隣接するブロックとは異なったものにする構成または構造的特徴を有する。所望により、そのようなブロックは、グラフトを含んでなり、従って、ブロック重合体およびグラフト重合体を同時に代表することもできる。
【0028】
上記のように、ヒドロゲルの基材となる重合体または重合体類の親水性部位は、それぞれの重合体がブロック重合体である場合には非末端ブロックにより、それぞれの重合体がグラフト重合体である場合には骨格により、代表される。親水性とは、その部位を構成するモノマー単位の単独重合体が水溶性または水分散性であることを意味する。あるいは、親水性部位が、様々なモノマー単位から不規則に、またはブロックとして構成される骨格である場合、主鎖全体(側鎖を含まない)が水溶性であるか、または水分散性である。
【0029】
誤解を避けるために、本明細書で定義する親水性部位も、ある程度分解性でよい。同様に、分解性部位は、ある程度の親水性を有するか、または親水性である置換基を含んでなる。しかし、本発明では、用語「親水性部位」および「分解性部位」が、一つの、同じ部位を指定することは決してない。
【0030】
好ましい実施態様では、本発明のヒドロゲルを構成する重合体は、好ましくはそれらの親水性部位に類似した親水性骨格を有するグラフト重合体である。好ましい実施態様では、三次元的ヒドロゲル網目に関与するグラフト重合体は、それらの側鎖は異なっていても、すべて同じ骨格組成を有する。例えば、骨格は、天然または合成された単独重合体鎖を代表することができる。あるいは、モノマー単位またはブロックの一部があまり親水性でなくてもよいが、実質的な親水性を有するランダムまたはブロック共重合体を使用できる。好ましい骨格としては、天然の変性されたまたは誘導体化された、例えばデキストラン等の多糖類、例えばメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ハイプロメロース(hypromellose)およびカルボキシメチルセルロース等の水溶性セルロースエーテルを包含するセルロース、ペクチン、アルジネート、カラジーナン、アカシア、キトサン、デンプン、アミロース、アミロペクチン、キサンタン、寒天、トラガカント、グアーガム、カラバガム、カロブビーンガム等が挙げられる。好ましい多糖骨格はデキストランである。他の骨格は、ポリペプチド、例えばカゼイン、ゼラチン、コラーゲン、水解タンパク質、アルブミン、卵白アルブミン、リゾチーム、ポリ(リシン)、ポリ(アルギニン)、ポリ(グルタミン酸)または他のポリ(アミノ酸)である。さらに、骨格または主要骨格ブロックは、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、水溶性ポリホスファゼン、ポリ(ビニルピロリドン)から選択することができる。本発明に好適な骨格または骨格ブロックの他の好ましい区分は、水溶性(メタ)アクリレート/(メタ)アクリルアミドの区分であり、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリレート)および対応するアクリルアミドを包含する。現在好ましいアクリル酸に由来する骨格は、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリルアミド)(pHPMAm)である。親水性部位を代表するブロックまたはブロック群に加えて、骨格は分解性または非分解性の疎水性ブロック、例えばポリ(プロピレンオキシド)を含んでなることができる。例えば、ポリ(エチレンオキシド)およびポリ(プロピレンオキシド)のブロック重合体であるプルロニックが好適な骨格を代表することができる。
【0031】
骨格の分子量は、その特定の化学的および物理化学的性質、水溶性に関する必要条件、側鎖による意図する置換度、その他のファクターを考慮して選択すべきである。一般的に、分子量は、1,000〜約500,000の範囲内にすべきである。非常に低い分子量は、安定したヒドロゲルを形成するのに高度の架橋を必要とするのに対し、非常に高い分子量は、水溶性が乏しく粘度が高いために、使用するのが困難であることが多いので、ほとんどの場合、平均分子量、および好ましくは重量平均分子量は約10,000〜約150,000であるのが好ましい。腎臓から排出し得るために、別の実施態様では、分子の形状に応じて、平均分子量が約80,000または100,000以下であるのが好ましい。
【0032】
骨格重合体は、一般的に公知の方法により製造する。どのようにして有用な重合体に到達するかの手短な説明に関しては、国際特許第WO00/48576号を参照する。
【0033】
本発明のヒドロゲルでは、ステレオコンプレックス形成および架橋に関与する部位は生分解性である。より詳しくは、これらのヒドロゲルは、生理学的条件下で加水分解可能である。ここで使用する、生理学的条件下で加水分解可能であるとは、生理学的pHおよび温度で、これらのヒドロゲルが、酵素的触媒を必要とせずに、薬物送達または組織工学用途で問題となる時間、例えば数時間、数日、数週間、数ヶ月、または数年間かけて、実質的な加水分解を示すことを意味する。
【0034】
重合体の鏡像異性体濃度が高い分解性部位は、好ましくはオリゴマー状である。オリゴマーは、小複数のモノマー単位を含む、中程度の相対的分子量を有する分子として定義することができる。ある分子または分子部位が、1個または数個のモノマー単位を除去することにより大きく変化する特性を有する場合、その分子または分子部位は、中程度の相対的分子量を有すると見なされる。絶対的な限度は一般的に適用できないが、オリゴマーは、典型的には約2〜25のモノマー単位をその部位に含む。
【0035】
重合体の鏡像異性体濃度が高い分解性部位は、好ましくは(L)−または(D)−ラクテート単位を基材とする。さらに、これらの部位は、比較的少ない数の、やはり好ましくは分解性である非キラル単位、例えばグリコール酸、カプロラクトン、またはプロピオラクトンに由来する単位、を含むことができる。
【0036】
オリゴマー状分解性単位は、一般的に公知の方法により製造することができる。特に、(D)−または(L)−ラクチドを重合させてオリゴ(D)−またはオリゴ(L)−ラクテートを製造する方法が公知であり、例えばDe Jong SJ, Van Dijk-Wolthuis WNE, Kettenes-van den Bosch JJ, Schuyl PJW、およびHennink WE、Monodisperse enantiomeric lactic acid oligomers: preparation, characterization and stereocomplex formation. Macromolecules 31, 6397-6402, 1998に記載されている。さらに、グリコール酸、カプロラクトン、またはプロピオラクトン単位をコモノマーとして配合する方法が公知である。
【0037】
例えば、分解性部位は、それぞれのモノマーをオリゴマー化することにより、形成することができ、これは、開始剤を使用して行うのが好ましい。開始剤は、オリゴマー中に配合することができる。そのような開始剤は、第一または第二水酸基を有する化合物、例えば乳酸エチルまたは他の脂肪族または芳香族乳酸エステル、ベンジルアルコール、ラウリルアルコール、1,4−ブタンジオール、アジピン酸、(モノメトキシ)PEG、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、またはそれらの混合物である。これらの開始剤の使用により、生体内に投与した時に、得られるゲル中のこれらの開始剤が毒性レベルにならないように注意すべきである。この理由から、内因性化合物または内因性化合物に由来する化合物を開始剤として使用するのが好ましい。開始剤としてそのような化合物を使用することにより、ゲルの分解中にこれらの化合物またはそれらの反応生成物の、許容できない(即ち毒性の)レベルが阻止される。好適な開始剤の例は、例えば哺乳動物中で比較的無害の化合物であるエタノールおよびラクテートに容易に加水分解される乳酸エチルである。
【0038】
開始剤を使用する場合、得られるオリゴマーが、開始剤またはその一部を末端基として含むことがある。グラフトモノマーの量に対する開始剤の量を使用し、目的に合わせて重合度(DP)を調整することができる(De Jong SJ, Van Dijk-Wolthuis WNE, Kettenes-van den Bosch JJ, Schuyl PJW、およびHennink WE、Monodisperse enantiomeric lactic acid oligomers: preparation, characterization and stereocomplex formation. Macromolecules 31, 6397-6402, 1998参照)。さらに、オリゴマー形成は、好適な触媒の存在下で行うことができる。そのような触媒は、例えばオクタン酸第一スズ、アルミニウムアルコキシド(例えばアルミニウムトリス(2−プロパノエート)、亜鉛粉末、CaH、Sn(IV)トリス2−エチルヘキサノエート、テトラフェニルポルフィナートアルミニウム、アルミニウムトリイソプロポキシド、キラルSchiff塩基/アルミニウムアルコキシド、Al(Acac)、SALEN-Al−OCH、t−BuOLi、BuSnOCH、PbO、酸化亜鉛、ジエチル亜鉛、塩化亜鉛、塩化第一スズ、マグネシウム塩、Zn(Acac)、ZnEt−Al(OiPr)、(ZnEt+AlEt+nHO)、酸化イットリウム、またはそれらの混合物から選択することができる。
【0039】
重合度は、ステレオコンプレックスヒドロゲルの設計で重要なパラメータである。分解性部位は、グラフトまたは骨格ブロックを構成するにしても、ステレオコンプレックスを形成し、架橋し、十分なゲル安定性を確保できるように、十分な長さを有していなければならない。他方、非常に長い側鎖は、比較的疎水性である、即ち十分に水和してヒドロゲルを形成することがない、グラフト重合体を誘起し易い。
【0040】
グラフトに関して望ましい重合度(DP)は、所望のゲル特性および使用するブロックまたはグラフト重合体の性質を考慮して決定すべきである。ほとんどのラクテートブロックに対して、少なくとも約7の平均DPが好ましい。公知のステレオコンプレックスヒドロゲルよりも潜在的に安定している本発明のヒドロゲルを製造するには、DPを約8〜15、特に約11〜14の範囲内に選択するのが好ましい。
【0041】
グラフト重合体の場合、グラフトは、それらの鎖長に関して、一般的に低い多分散度も有するべきである。強く、安定した、長寿命のヒドロゲルが望ましい場合、特にステレオコンプレックス形成に寄与しない短鎖は、排除すべきである(例えばグラフト化の前にオリゴマーをクロマトグラフィー精製することにより排除する)。多分散度は、重量平均分子量M(w)と数平均分子量M(n)の比である多分散指数PDIにより、表すことができる。工業用重合体は、典型的には多分散度が2以上である。対照的に、本発明では、多分散度が約1.5未満の比較的単分散系のオリゴマーをグラフトとして使用するのが好ましい。より好ましくは、グラフトは、主として同じ重合度を有する、即ちグラフトは実質的な単分散系である。他の実施態様は、重合度が11〜14、特に12〜13しかない乳酸オリゴマーから選択されたグラフトに関する。グラフトまたはブロック重合体の製造は、結合基を含むか、または結合基を含まない分解性オリゴマーおよび親水性ブロックまたは骨格重合体を好適な溶剤中で混合することにより、行うことができる。好ましくは、グラフトを結合基と混合する。好適な溶剤は、使用する重合体に応じて、非プロトン性溶剤から、例えばデキストランには例えばジメチルスルホキシドを選択することができ、その後、グラフト化反応を好適な条件下で行うが、その条件は、当業者は容易に決定することができる。その後、溶剤を除去する。置換度は、(コ−)オリゴマー状グラフトおよび水溶性重合体の量を変えることにより、調整することができる(De Jong SJ, Van Dijk-Wolthuis WNE, Kettenes-van den Bosch JJ, Schuyl PJW、およびHennink WE、Monodisperse enantiomeric lactic acid oligomers: preparation, characterization and stereocomplex formation. Macromolecules 31, 6397-6402, 1998を参照)。
【0042】
有用なグラフト重合体を合成するもう一つの例は、Limら(Macromol. Rapid Commun. 21, 464-471, 2000)により開示されている。ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)の骨格およびオリゴ(D−ラクチド)またはオリゴ(L−ラクチド)の側鎖を有するグラフト重合体を製造するには、第一工程で2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)をD−またはL−ラクチドと共重合させ、末端HEMA基を含むオリゴマー状D−またはL−ラクチド鎖を形成している。これらのマクロマーを第二工程でHEMAと共重合させ、所望のグラフト重合体を形成している。
【0043】
分解性部位は、グラフトまたは骨格ブロックでも、典型的にはリンカーを介して親水性部位に付加させる。そのような結合構造は、通常、比較的小さな化学基に代表されるが、より大きな存在、例えばオリゴマーも使用できる。無論、重合体中に存在するリンカーは、重合体の製造に使用する特定の化学反応によって異なる。結合基は、エステル、アミド、またはウレタン基であることが最も多い。本発明の好ましい実施態様の一つでは、鏡像異性体濃度が高い分解性側鎖を、エステル基を介して親水性骨格にグラフト化させる。
【0044】
様々な化学反応を使用して側鎖を骨格上にグラフト化させ、本発明のヒドロゲルを製造するのに有用なグラフト重合体を合成することができる。一般的に、基または重合体の反応性に応じて、グラフト構造を重合体に直接、または結合基を使用して結合することができる。そのような結合基の一例は、カルボニルジイミダゾール(CDI)である。そのような結合基は、グラフトが重合体に結合する時に、さらに転化される。結合基は、生成物の生物分解性を強化することにも応用できる。本発明の実施態様の一つにより、水溶性または水分散性重合体とオリゴマー状またはコ−オリゴマー状基との間に加水分解可能な結合基がある。
【0045】
他方、これまで公知の組成物と比較して安定性が改良されたヒドロゲルは、結合基の加水分解性が、鏡像異性体濃度が高い分解性部位自体の加水分解性を超えない場合に、より容易に達成される。従って、本発明により、結合基の少なくとも一部が、分解性部位における加水分解性結合よりも加水分解に関してより安定していることが好ましい。従って、結合基を、関連する安定したエステル、アミドまたはウレタンから選択するのが好ましい。対照的に、加水分解に敏感なエステル基、例えばカーボネートエステル基は、長期間の安定性が望ましい場合にはできるだけ避けるべきである。無論、中間のゲル安定性を達成するには、様々な安定性を有するリンカーを配合するのが有利であろう。
【0046】
重合体がグラフト重合体である場合、ステレオコンプレックス形成および架橋が起こり得るためには、少なくとも一つの鏡像異性体濃度が高い側鎖を第一グラフト重合体に付加させる必要があり、少なくとも一つの、反対のキラリティーを有する鏡像異性体濃度が高い側鎖をヒドロゲル中に存在する第二グラフト重合体に付加させる必要がある。ヒドロゲルの三次元的重合体網目を形成するには、グラフト重合体の大部分が、骨格あたり少なくとも2本の、架橋を形成し得る側鎖を有する必要がある。より典型的には、重合体分子ははるかに多い数の側鎖を含む。
【0047】
上記の別の実施態様では、第一および第二グラフト重合体は、所望により、それらの側鎖のキラル特性に関しても、各平均重合体分子が各キラル化学種の少なくとも一つの側鎖を有する限り、実質的に等しくてよい。つまり、ヒドロゲルは、この場合、ただ一種のグラフト重合体から構成されるが、このグラフト重合体は、両方の種類の側鎖を含んでなる。この実施態様では、架橋に寄与しない分子内ステレオコンプレックスがヒドロゲル中に存在し得る。あるいは、側鎖の2種類の相補的な化学種が異なった骨格に付加するので、ヒドロゲルが2種類の異なったグラフト重合体から構成される、即ち第一のグラフト重合体が一方のキラリティーを有する側鎖だけを有し、第二のグラフト重合体が反対のキラリティーを有する側鎖を有することになり、これが現在好ましい実施態様である。
【0048】
しかし、より好ましい実施態様では、ヒドロゲルは、反対のキラリティーを有する側鎖を含む2種類のグラフト重合体の混合物を基材とする。グラフト化密度、または置換度(DS)は、所望のゲル強度および安定性、薬物の性質および投与量、側鎖の長さ、等も考慮して選択すべきである。例えば、非常に低い置換度は、低い架橋密度につながる。従って、それぞれのヒドロゲルに対して、十分なゲル強度および安定性を与えるのに必要なDSの下限がある。一般的に、DSは、約1〜25%の範囲内にすべきである。より好ましくは、DSは、約2〜15%の範囲内で選択すべきである。約11〜14のDPとの組合せで、約4〜10%のDSが特に有用である。
【0049】
本発明の重要な特徴は、ステレオコンプレックス形成および架橋に関与する鏡像異性体濃度が高い分解性部位、または少なくともそれらの大部分が、遊離末端水酸基を持たないことである。対照的に、公知のステレオコンプレックスヒドロゲルのほとんどでは、加水分解可能な側鎖が末端水酸基を有する。驚くべきことに、本発明者らは、末端水酸基が存在しないことにより、生分解性オリゴまたはポリエステル側鎖の加水分解がはるかに遅くなることを見出した。理論に捕らわれたくはないが、現在、末端水酸基は、そのようなオリゴまたはポリエステル鎖が加水分解する機構の一つに関与しているものと考えられる。
【0050】
特に、本発明者らは、オリゴマー化されたヒドロキシ酸から製造された側鎖を含むステレオコンプレックスヒドロゲルが、末端水酸基が存在するか否かに応じて、非常に異なった挙動を示すことを見出した。例えば、ポリ(2−ヒドロキシプロピルメタクリルアミド(pHPMAm)から、平均DP約12(側鎖に対して)で構成されたゲルの分解時間は、側鎖の末端水酸基をアセチル化することにより、約3のファクターで増加し得る。
【0051】
遊離末端水酸基は側鎖の加水分解に関与し得るので、ヒドロゲル中のそのような基の相対的な数を制限することが重要である。本発明では、ヒドロゲル中に存在する側鎖のすべてではなく、側鎖の少なくとも一部が末端水酸基を含まなければよい。実際、ヒドロゲルの分解時間は、末端水酸基を含む側鎖と含まない側鎖の比を選択することにより、調整することができる。しかし、一実施態様では、側鎖のすべて、またはほとんどすべてが、末端水酸基を含まない。従って、最大の分解時間を有するゲルを目的に合わせて調製することができ、これは長時間薬物放出に有用である。
【0052】
一実施態様では、加水分解可能な側鎖の大部分(即ち、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%)が末端水酸基を含まない。別の実施態様では、実質的にすべての、より好ましくはすべての側鎖が末端水酸基を含まない。
【0053】
側鎖を形成する、例えばほとんどが乳酸で、所望により幾らかの他のコモノマーを含むモノマー単位のオリゴマー化により、典型的には末端水酸基が形成される。これらの基は、その後に続く工程で、無水酢酸のような試剤と反応させることができる。あるいは、オリゴマー化を、グラフトが遊離末端水酸基を含まない、即ち末端基がすでに保護またはブロックされているように行うことができる。水酸基を回避するか、または除去するための好ましい方法はアシル化である。
【0054】
遊離水酸基をアシル化する様々な方法が公知である。例えば、アシル化は、水酸基を酸無水物、ハロゲン化アシル、例えば塩化アシル、カルボン酸または活性化されたカルボン酸と反応させることにより、行うことができる。
【0055】
所望により、遊離水酸基を、アルコールと反応する他のいずれかの化学種でブロックすることもできる。例えば、遊離水酸基は、エーテル化、シリル化、アセタールに転化、イソシアネート等と反応させることができる。そのようなブロック反応を行う方法は、有機化学で一般的に公知である。
【0056】
ヒドロゲルは、上記の重合体から様々な方法で製造することができる。例えば、ヒドロゲルは、請求項1に規定するような第一重合体を含んでなる第一成分を、第二グラフト重合体を含んでなる第二成分と、水の存在下で組み合わせることにより、製造することができる。この方法は、第一および第二グラフト重合体が光学活性的に異なっている場合に使用することができる。例えば、第一成分は、主としてオリゴ(L−ラクチド)から構成される側鎖を含むグラフト重合体を含んでなり、第二成分は、側鎖が主としてオリゴ(D−ラクチド)を含む相補的なグラフト重合体を含んでなることができる。これらの2成分を水の存在下で(例えば混合により)組み合わせると、これらのグラフト重合体が架橋性ステレオコンプレックス、すなわちステレオコンプレックスヒドロゲルを形成する。水和および重合体の膨潤に必要な水は、第三成分の形態で加えることができるか、または水は、第一および第二成分のいずれか、もしくは両方に十分な量ですでに存在することができる。好ましい実施態様の一つでは、第一および第二成分は液体の水性組成物であり、これらを混合により組み合わせる。
【0057】
ヒドロゲルにただ1種類のグラフト重合体だけを使用する場合(即ち第一および第二グラフト重合体が同一である場合)、重合体は、水和により自然にヒドロゲルを形成する。この場合、ヒドロゲルを製造するための好適な方法は、グラフト重合体を含んでなる成分(例えば粉末または凍結乾燥物)を、水和に必要な水を含んでなる成分と組み合わせる工程を含んでなることができる。あるいは、ヒドロゲルは、重合体、水、およびステレオコンプレックスの形成を阻止する材料、例えば有機溶剤、糖または塩を含む溶液から、この材料を除去することにより、またはステレオコンプレックス形成が起こるような程度に希釈することにより、製造することができる。
【0058】
所望により、ヒドロゲルを製造する成分のいずれかに他の添加剤が存在することができる。上記のヒドロゲルを含んでなる組成物である本発明のヒドロゲル組成物は、好ましくはグラフト重合体および水以外の他の構成成分または添加剤を含む。これらの添加剤の一部または全部が、ヒドロゲルを形成する時にすでに存在していてよい。これらの添加剤は、例えば第一および第二グラフト重合体を含む第一および第二成分の一方または両方の構成成分として導入するか、または別個に加えることもできる。あるいは、ヒドロゲルが形成された後に、そこに加えることもできる。
【0059】
ヒドロゲルの、およびそのようなゲルを基材とする組成物の好ましい用途は、薬学的に活性な化合物の送達である。ここで使用する薬学的に活性な化合物(本明細書では、「活性化合物」とも互換的に使用される)とは、病気、症状、および体の他の状態の診断、予防または処置に、あるいは身体機能に影響を及ぼすために有用な、あらゆる化学的または生物学的物質もしくは物質の混合物である。例えば、ヒドロゲル組成物は、そのような活性化合物の一種以上を含んでなることができる。活性化合物を配合するために、その化合物は好ましくはヒドロゲルを形成する時に存在する。あるいは、例えばゲルを化合物の溶液中に浸漬することにより、ヒドロゲルに活性化合物を装填することもできる。
【0060】
好ましい活性化合物は、慢性または長期間処置管理で使用する物質、例えばホルモン、成長因子、ホルモン拮抗質、抗精神病薬、抗うつ薬、心臓血管薬等である。別の態様では、活性化合物の好ましい区分は、ペプチドおよびタンパク質、特にタンパク質であり、これらの化合物は、本発明のヒドロゲル組成物で効果的に送達でき、長期間にわたって薬物を放出し、典型的には経口投与では生理的に利用できない、これらの化合物の注射を頻繁に行う必要を無くすことができる。
【0061】
好ましいペプチドおよびタンパク質としては、エリトロポイエチン、例えばエポエチンアルファ、エポエチンベータ、ダルベポエチン、ヘモグロビンラフィマー、およびそれらの類似体または誘導体、インターフェロン、例えばインターフェロンアルファ、インターフェロンアルファ−2b、PEG−インターフェロンアルファ−2b、インターフェロンアルファ−2a、インターフェロンベータ、インターフェロンベータ−1aおよびインターフェロンガンマ、インスリン、抗体、例えばリツキシマブ、インフリキシマブ、トラスツズマブ、アダリムマブ、オマリズマブ、トシツモマブ、エファリズマブ、およびセツキシマブ、血液因子、例えばアルテプラーゼ、テネクテプラーゼ、因子VII(a)、因子VIII、コロニー刺激因子、例えばフィルグラスチム、ペグフィルグラスチム、成長ホルモン、例えばヒト成長因子またはソマトロピン、インターロイキン、例えばインターロイキン−2、成長因子、例えばベクラペルミン、トラフェルミン、アンセチズム、ケラチノサイト成長因子、LHRH類似体、例えばリュープロリド、ゴセレリン、トリプトレリン、ブセレリン、ナファレリン、ワクチン、エタネルセプト、イミグルセラーゼ、ドロトレコギンアルファがある。
【0062】
他の好ましい活性化合物は、多糖類およびオリゴまたはポリヌクレオチド、抗生物質、および生きている細胞である。所望により、活性化合物は、コロイド状キャリヤー系、例えば薬物装填したリポソーム、重合体状ミセル、重合体状ナノ粒子、微小球、ポリ/リポプレックス、ウイルス遺伝子送達ベクター、の形態で配合することができる。
【0063】
薬物送達用途には、ヒドロゲルを非経口投与向けに設計された処方物、例えば注射、インプラント、吸入、または粘膜投与形態、の成分として使用するのが好ましい。ヒドロゲルをそのような処方物中に配合するには、ヒドロゲル自体をそれに応じて、例えば微小粒子(本明細書では微小球およびマイクロカプセルも含む)、注射用ペレット、単回投与インプラント物、例えばロッド、シート、ウェハー、または他の、単一単位としてインプラントに有用な形状に成形することができる。現在最も好ましい実施態様の一つでは、ヒドロゲルを、平均直径約1〜約500μm、より好ましくは約25〜約150μmの注射用微小粒子として成形する。
【0064】
そのような微小球の製造は、一般的に公知の方法により、本発明のヒドロゲルに適合させるだけで、行うことができる。例えば、微小球を、国際特許第WO00/48576号に記載されているようなエマルション製法で形成することができる。好ましくは、有機溶剤を必要としない、エマルションに基づく方法を使用する。
【0065】
注射またはインプラント可能な処方物は、その場でゲル化または固化するように設計することもできる。例えば、グラフト重合体を、投与の直前に液体および/または固体の予備混合物から調製する、注射可能な液体の形態で与えることができる。ステレオコンプレックスの形成は、十分に長くかかるように調節し、混合物を注射できるようにすることができるので、ゲル化は体内で起こる。この方法の利点は、比較的大きな固体インプラント物を小さな針で、場合により麻酔薬を使用せずに、注入できることである。ゲル化する処方物をその場で調製する予備混合物または成分は、各成分が個別の一次包装物中に収容されているキットとして提供することができる。
【0066】
本発明のヒドロゲル組成物および薬学的処方物は、所望により他の添加剤を含んでなることができる。これらの添加剤は、好ましくは製薬または食品工業で一般的に使用されている添加剤から選択する。これらの添加剤は、主として処方物の性能、例えば放出プロファイル、粘度および注入性または許容性に影響を及ぼすように使用する。また、添加剤は、活性成分、例えば安定剤の性質から生じる特定の必要条件に応答するように使用することができる。ヒドロゲル処方物に有用な一般的な薬学的添加剤は、湿潤剤、増量剤(bulking agent)、安定剤、湿潤剤、細孔形成剤、酸化防止剤、着色剤、pHおよび/または張性を調節する物質等である。
【0067】
特に、注射、インプラント、および肺投与には、処方物は無菌でなければならない。無菌性は、適切な製造方法、例えば無菌処理および/または最終製品の殺菌により達成することができる。
【0068】
保存には、ヒドロゲルを乾燥させ、再湿潤可能な形態で提供することもできる。特にこの用途のために、本発明の一実施態様では、ヒドロゲル組成物、またはそのような組成物を含んでなる処方物を調製するためのキットを提供する。上記の、その場でゲル化させる処方物用のキットとは別に、製薬用キットを2処方物成分で設計することもできる。例えば、キットは、キセロゲルとも呼ばれる乾燥状態にあるヒドロゲル系組成物を含む固体状態の材料、例えば顆粒、粉末、または凍結乾燥物を含む第一の一次包装物と、キセロゲルを再湿潤(reconstituting)させヒドロゲル組成物を形成するための液体を含む第二の一次包装物とを含んでなることができる。液体は、水、および所望により添加剤、例えば塩、安定剤、界面活性剤等を含んでなる。活性化合物は、キセロゲル中に、または再湿潤用の液体中に、もしくはキットの第三成分中に存在することができる。しかし、活性成分は、好ましくは微小粒子に成形するキセロゲル中に配合し、その中に存在するのが好ましい。
【0069】
特にフィルム、シート、またはゲルの形態で、本発明のヒドロゲル組成物は、組織工学用途または傷包帯としても使用できる。これらの用途には、組成物は、上記のような薬学的活性化合物を含んでいてもよく、またいなくてもよい。例えば、ヒドロゲルシートの形態にある傷包帯は、傷を覆い、保護するのに有用であり、場合によってはそれで十分である。また、抗菌性化合物を配合し、局所的な感染を防止するのがより有用である場合もある。
【実施例】
【0070】
他の実施態様は、下記の例から明らかであるが、これらの例は、本発明をその主要な態様の幾つかで例示するためであり、本発明の範囲を制限するものではない。
【0071】
例1 N−(2−ヒドロキシプロピルメタクリルアミド)−オリゴ−(L−乳酸)(HPMAm−オリゴ−LLA)の合成
L−ラクチド10.0g(69.4mmol)、HPMAm1.66g(11.6mmol)およびヒドロキノンモノメチルエーテル1.5mg(0.012mmol)の混合物を120℃で、ラクチドが溶融するまで攪拌し、オクタン酸第一スズ(0.23g、0.58mmol)を加えた。混合物を130℃で4時間攪拌し、続いて室温に冷却し、HPMAm−オリゴLLAを得た。
【0072】
HNMR(CDCl):δ(ppm)=5.65(d,1H,C=C)、5.27(d,1H,HC=C)、4.90−5.20(m,C(=O)−C(−CH)−O,CH−C(−O)−CH)、4.35(q,1H,C(=O)−C(−CH)−OH)、3.6(m,1H,C−CH(−O)−CH)、3.25(m,H,CH−CH(−O)−CH)、1.90(s,3H,C=C(−C))、1.35−1.60(m,C(=O)−CH(−C)−O)、1.20(d,3H,CH−CH(−O)−C)。
【0073】
単分散(HPMAm−オリゴ−(L−乳酸)を、調製用HPLCカラム(Econosphere C8, 10μm、250x22mm、Alltech, Illinois, USA)を備えたAEKTA精製装置(Pharmacia Biotech AB、スエーデン)を使用し、分別により得た。多分散オリゴマー(1.0g)を水/アセトニトリル(5/95%w/w)1.5mLに溶解させ、45μmフィルター上で濾過した。この溶液1.5mLをカラム上に注いだ。120分間で50%B(水/アセトニトリル95:5(w/w))から100%B(アセトニトリル/水95:5(w/w))に勾配をつけた。流量は、10.0mL/分で、検出をUV(λ=215nm)で行った。クロマトグラムをUnicorn Analysisモジュール(2.30版)ソフトウエアで解析した。個々のオリゴマーを採集し、対応する重合度の画分を集めた。溶剤を減圧下で除去した。
【0074】
例2 N−(2−ヒドロキシプロピルメタクリルアミド)−オリゴ−(L−乳酸)(HPMAm−オリゴ−LLA)のアセチル化
実験を、最初は例1に記載するように行った。HPMAmによるL−ラクチドの開環重合の直後に、混合物を90℃に冷却し、冷却装置を反応フラスコ上に配置した。無水酢酸15mLを加え、混合物を1時間攪拌した。続いて、未反応無水酢酸を減圧下で除去した。転化は、HNMRにより定量的であった。
【0075】
HNMR(CDCl):δ(ppm)=5.65(d,1H,C=C)、5.27(d,1H,HC=C)、4.90−5.20(m,C(=O)−C(−CH)−O,CH−C(−O)−CH)、3.6(m,1H,C−CH(−O)−CH)、3.25(m,1H,CH−CH(−O)−CH)、2.07(s,3H,O−C(=O)−C))、1.90(s,3H,C=C(−C))、1.35−1.60(m,C(=O)−CH(−C)−O)、1.20(d,3H,CH−CH(−O)−C)。
【0076】
単分散HPMAm−オリゴ−(L−乳酸)を、例1に記載するように分別により得た。
【0077】
例3 アセチル化した、およびアセチル化していないN−(2−ヒドロキシプロピルメタクリルアミド)−オリゴ−(L−乳酸)(HPMAm−オリゴ−LLA)による分解の研究
例1および2で調製した単分散画分を、それらの加水分解挙動に関して比較した。この実験では、DP7および12を代表する画分を選択した。分解実験は、37℃にサーモスタット調節した水浴中に入れた20mLガラスビンで行った。pHは、実験温度で分解の前後に測定した。標準的な分解実験には、単分散のアセチル化した、およびアセチル化していないHPMAm−オリゴ(L−乳酸)をアセトニトリルに入れた原溶液(2mg/mL)5mLを、リン酸塩緩衝液(pH7.2、100mM、塩化ナトリウムでイオン強度(μ)を0.3に調節)5mLで最終濃度1mg/mLに希釈した。pHを固定値に維持するには、緩衝液濃度を少なくとも100mMにする必要がある。試料400μLを規則的な時間間隔で採取し、酢酸アンモニウム緩衝液(pH4、1M)150μLでpH4に調節し、それ以上の分解を抑えた。試料は、HPLCで分析する前に、4℃で保存した。
【0078】
アセトニトリル/PBS(1:1)中、7量体の半減期は、遊離末端水酸基を有するアセチル化していないオリゴマーでは3.1時間であり、アセチル化した7量体では55時間であった。12量体も、アセチル化していない形態では半減期3.1を示し、アセチル化したオリゴマーでは半減期35時間であった。
【0079】
例4 鏡像異性体濃度が高いオリゴ(乳酸)側鎖でグラフト化されたポリ(HPMAm)の製造
別の実験で、例1および2で調製した、分別した、またはしていない、アセチル化した、およびアセチル化していないHPMAm−オリゴ−(L−またはD−乳酸)(10.0g、9.5mmol)、およびHPMAm(様々なDSを達成するための様々な量で)を、新しく蒸留したジオキサン220mL中に温度80℃で溶解させた。次に、AIBN(156mg、0.95mmol)を加えた。この溶液を窒素雰囲気中、80℃で2時間攪拌した。形成されたグラフト重合体を氷冷ジエチルエーテル1L中で沈殿させた。次に、生成物を濾過により分離し、真空下、40℃で乾燥させ、pHPMA−グラフト−オリゴ(乳酸)を得た。生成物の同一性は、HNMR(CDCl)により確認した。こうして得られたグラフト重合体を表1に示す。
【0080】
【表1】

* 平均DP、分別は行わなかった
【0081】
例5 グラフト重合体からステレオコンプレックスヒドロゲルの製造および特性試験
例4から得た重合体を使用するグラフト重合体の酢酸塩緩衝液(pH4、100mM)溶液を製造した。DSおよびDPが類似した、等量のL−乳酸グラフト重合体およびD−乳酸グラフト重合体を混合し、2mLエッペンドルフ管中に移し、遠心分離(2分間、13000rpm)して材料を圧縮し、4℃で一晩保存し、ゲル形成させた。ゲル化の後、管からヒドロゲルを取り出し、円筒形状(長さ2cm、半径0.46cm)に切断し、正確に計量した(W約1g)。計量したゲルを、リン酸塩緩衝液(pH7.2、100mM、塩化ナトリウムでイオン強度を0.3に調節)10mLを含むバイアルに入れ、これを37℃の水浴中に入れた。規則的な時間間隔で、緩衝液溶液を完全に除去し、ゲルの重量(W)を測定し、膨潤比を計算した。計量の後、緩衝液の新しいアリコートをゲルに加えた。膨潤比(Z)は、W/Wとして定義する。ヒドロゲル溶解時間は、完全分解(Z=0)に要する時間として定義する。こうして得られたヒドロゲルおよびそれらの特性を表2に示す。
【0082】
【表2】

* 平均DP、分別は行わなかった
【0083】
ヒドロゲルh4およびh7は、側鎖の末端基以外は、同等のグラフト重合体組成(DPおよびDSを含む)を有する。ヒドロゲルの最大膨潤比に関する膨潤挙動も同等であるのに対し、末端アセチル基を含むゲル(h4)の寿命は、末端水酸基を含むゲル(h7)の寿命より3倍長い。ゲルの寿命は、重合体の架橋に関与する側鎖の加水分解速度により決定されると考えられる。
【0084】
ヒドロゲルh5は、末端水酸基が無いグラフト重合体を含んでなり、これまで見られている中で最も長い寿命を有するステレオコンプレックスヒドロゲルを代表するする。
【0085】
主としてグラフトの多分散度が異なっているヒドロゲルh4とh6を比較すると、本発明のステレオコンプレックスヒドロゲルの寿命を引き伸ばすのに、低い多分散度がさらに寄与し得ることが分かる。
【0086】
その上、表2に示すヒドロゲルは、本発明の開示を使用することにより、ステレオコンプレックスヒドロゲルの分解性をどのように調整し、数ヶ月までの期間にわたって活性化合物を制御しながら放出するように、目的に合わせて調製された組成物が得られるかを立証している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一および第二重合体の混合物を含んでなるステレオコンプレックスヒドロゲル組成物であって、前記第一および第二重合体のそれぞれが、少なくとも一つの親水性部位および少なくとも二つの、生理学的条件下で加水分解し得るオリゴマー状分解性部位を有し、前記分解性部位が、鏡像異性体濃度が高いキラルモノマー単位を含んでなり、前記第一重合体の分解性部位の少なくとも一つと、前記第二重合体の分解性部位の少なくとも一つとが、主として反対のキラリティーを有し、組成物中に存在する前記分解性部位の少なくとも一部に遊離末端水酸基が存在しない、ヒドロゲル組成物。
【請求項2】
前記第一および第二重合体の少なくとも一方がグラフト重合体であり、前記グラフト重合体の前記親水性部位が骨格であり、前記分解性部位が側鎖である、請求項1に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項3】
前記グラフト重合体が平均置換度(DS)約2〜約15%を有する、請求項2に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項4】
前記グラフト重合体の前記側鎖が平均重合度(DP)約7〜15を有する、請求項2または3に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項5】
前記グラフト重合体の前記側鎖が、約1.5以下の多分散度を有する、請求項2〜4のいずれか一項に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項6】
前記第一および第二重合体の少なくとも一方が、3個以上のブロックを含んでなるブロック重合体であり、前記分解性部位が、前記ブロック重合体の少なくとも末端ブロックを形成する、請求項1に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項7】
前記第一および第二重合体の少なくとも一方がABA型ブロック重合体であり、前記親水性部位が中央のBブロックを形成する、請求項6に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項8】
前記分解性部位が、好ましくはエステル基、アミド基、およびウレタン基からなる群から選択される結合基を介して、前記親水性部位に結合している、請求項1〜7のいずれか一項に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項9】
前記結合基が、前記分解性部位よりも、加水分解に対してより安定である、請求項8に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項10】
前記第一および第二重合体の少なくとも一方の親水性部位が、デキストラン、デンプン、セルロースおよびセルロース誘導体、アルジネート、ペクチン、キトサンを包含する多糖類、アルブミン、リゾチーム、ポリ(アミノ酸)、ポリ(リシン)および関連する共重合体、ポリ(グルタミン酸)および関連する共重合体を包含するポリペプチド、ポリ(メタクリレート)等のポリ(アルキルアクリレート)/(アルキルアクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリレート)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクルアミド)、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクルアミド)を包含するポリ(アクリレート)/(アクリルアミド)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレングリコール)、水溶性ポリホスファゼン、ならびにそれらの混合物からなる群の要素から誘導されたものである、請求項1〜9のいずれか一項に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項11】
前記第一および第二重合体の少なくとも一方の前記分解性部位が、主として鏡像異性体濃度が高い(L)−および/または(D)−ラクテート単位から構成される、請求項1〜10のいずれか一項に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項12】
主として、鏡像異性体濃度が高い(L)−および/または(D)−ラクテート単位から構成される前記分解性部位の少なくとも一部が、グリコレート、ε−カプロラクトン、およびプロピオラクトン単位から選択されるモノマー単位をさらに含んでなる、請求項11に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項13】
前記第一重合体の実質的にすべての分解性部位が、前記第二重合体の実質的にすべての分解性部位と反対のキラリティーを有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項14】
前記第一または第二重合体の分解性部位の少なくとも一部が、末端アシル基を有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項15】
シートとして、または単一のインプラント可能な単位として、複数の微小粒子に成形されている、請求項1〜14のいずれか一項に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項16】
薬学的に活性な化合物をさらに含んでなる、請求項1〜15のいずれか一項に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項17】
前記薬学的に活性な化合物がタンパク質である、請求項16に記載のヒドロゲル組成物。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項に記載のヒドロゲル組成物の製造方法であって、前記第一重合体および前記第二重合体を、水および所望により他の添加剤の存在下で組み合わせる工程を含んでなる、方法。
【請求項19】
前記第一重合体および前記第二重合体を組み合わせる工程が、薬学的に活性な化合物の存在下で行われる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1〜17のいずれか一項に記載のヒドロゲル組成物を製造するためのキットであって、前記第一重合体を含んでなる第一成分、および前記第二重合体を含んでなる第二成分を含んでなる、キット。
【請求項21】
請求項1〜17のいずれか一項に記載のヒドロゲル組成物を製造するためのキットであって、前記第一重合体および前記第二重合体を含んでなる第一成分、および水を含んでなる第二成分を含んでなる、キット。
【請求項22】
前記第一成分が、水和によりステレオコンプレックスヒドロゲルを形成し得るキセロゲルを含んでなる、請求項21に記載のキット。
【請求項23】
薬学的に活性な化合物をさらに含んでなる、請求項20〜22のいずれか一項に記載のキット。
【請求項24】
請求項1〜17のいずれか一項に記載のヒドロゲル組成物の、または請求項20〜23のいずれか一項に記載のキットの、注射および/またはインプラント可能な薬学的処方物の製造、傷包帯、もしくは組織工学における、使用。

【公表番号】特表2007−516323(P2007−516323A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−542519(P2006−542519)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【国際出願番号】PCT/NL2004/000845
【国際公開番号】WO2005/054318
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(500429217)ユニベルシテイト ユトレヒト (2)
【Fターム(参考)】