説明

切換機構

1つの主変速機部(6)と少なくとも1つの補助レンジ変速機部(10)とを備えた多段車両変速機(4)用の切換機構(2)が、主変速機部(6)内の切換要素(44、50、52、54)を操作するための切換手段(12、14、18、38)と補助レンジ変速機部(10)内の切換要素(42、46)を操作するための切換手段(12、14、18、38)とを含む。主変速機部(6)内の切換要素(44、50、52、54)を操作するための切換手段(12、14、18、38)が補助レンジ変速機部(10)内の切換要素(42、46)も操作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載された切換機構に関する。
【背景技術】
【0002】
商用車内の最新の多段車両変速機は、多段主変速機部の他に、多段補助レンジ変速機部および/または多段スプリッタ変速機部を有する。主変速機の変速段はスプリッタ変速機によって変速比をさらに分割することができ、連続する変速段において一層小さな変速ステップが生じる。補助レンジ変速機でもって、主変速機のすべての変速段を補助レンジ変速機の各変速段と一緒に利用することができ、補助レンジ変速機の少なくとも1つの変速段において主変速機変速段の本来の直接的変速比が減速もしくは増速されることによって、主変速機の総変速比を拡大することができる。
【0003】
そのような車両変速機が例えば独国特許出願公開DE4422900A1により公知となっている。このような車両変速機は主として主変速機部内では手動で切換えられる一方、スプリッタ変速機部および補助レンジ変速機部内でのシフトは、運転者が相応のシフトを引き起こした後、空圧式または液圧式アクチュエータによって行われる。
【0004】
冒頭に指摘した種類の車両変速機用自動切換機構も公知となっており、それが欧州特許EP0541035B1に述べられている。そこでは制御ユニット内にアクチュエータが並べてまとめられており、各一つのアクチュエータがスプリッタ変速機部、主変速機部および補助レンジ変速機部を操作する。これらのアクチュエータはそれぞれ切換ロッドを介して変速段の各切換機構に作用する。これの欠点としては、付属する弁、センサおよび切換ロッドを備えた個別のアクチュエータによって各変速機部が操作されねばならないということがある。このことは部品点数の多さ、それに起因する費用、さらには大きな重量を意味する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、補助レンジ変速機部の操作を簡素化する車両変速機用切換機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1の特徴を有する切換機構によって解決される。各実施形態が各従属請求項の対象である。
【0007】
一つの主変速機部と少なくとも一つの補助レンジ変速機部とを備えた多段車両変速機用の切換機構が、主変速機部内の切換要素を操作するための切換手段と補助レンジ変速機部内の切換要素を操作するための切換手段とを含む。本発明によれば、主変速機部内の切換要素を操作するための切換手段が補助レンジ変速機部内の切換要素も操作する。有利な一構成において、主変速機部内の切換要素を操作するための切換手段は単一の切換軸を含む。主変速機部内の切換要素を操作するための切換手段は、一実施形態において、切換指令を実行するための空圧式、液圧式または電気式アクチュエータを含む。有利な一実施形態において、主変速機部内の切換要素を操作するための切換手段は選択指令を実行するための空圧式、液圧式または電気式アクチュエータを含むこともできる。各アクチュエータの制御は、主に、制御機構内で所定の規則に従って処理される指令に基づいて自動的に行われる。好ましい一実施形態において、切換手段が自由空間を有し、所要の切換要素を選択するための選択過程の間、切換手段の切換要素、特に切換ロッドを操作する要素、例えば切換ロッド上の切換フィンガがこの自由空間内で一切換過程の方向に運動可能である。切換フィンガの運動は切換過程時と同じ方向に進むが、しかしこれとは異なり選択過程の一部を成している。これにより、本来は切換運動を実行しなければならないアクチュエータが特定範囲内で選択運動に寄与する。一構成態様では、一方で補助レンジ変速機部の一つの切換要素が、他方で主変速機部の一つの切換要素が、自由空間に隣接している。この自由空間内で切換フィンガはその運動時に、例えば主変速機部のシフトに役立つ切換ロッドから、補助レンジ変速機を切り換える切換ロッドに移る。切換要素は主に同期化切換要素である。他のやはり有利な一構成では、切換要素が同期要素なしのかみ合い係合部を含む。同期要素なしのかみ合い係合部がある場合、自由空間の横の切換要素は主に主変速機部の最高変速段および最低変速段用の切換要素である。有利な一実施形態において切換フィンガは切換軸上に配置しておくことができるだけでなく、切換手段に含まれるアクチュエータによって直接操作することもでき、このため切換手段と直接結合されている。
【0008】
図面を基に本発明が詳しく述べられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、主変速機部6とスプリッタ変速機部8と補助レンジ変速機部10とを備えた車両変速機4の切換機構2を示す。1つのアクチュエータ12が切換軸14もしくは切換フィンガ38を軸線方向で矢印方向16に沿って操作する。第2アクチュエータ18によって切換軸14はその回転軸線の周りを矢印方向20に沿って回動可能である。アクチュエータ12、18と接続された接続ライン22、24、26、28を介してアクチュエータ12、18は制御される。これは電気ラインとすることができるが、しかし液圧式または空圧式調整用の流体の態様の制御媒体用供給ラインとすることもできる。ここで述べられるのは空気を使った空圧式制御であり、これはしばしば商用車において車両に起因して設けられており、ブレーキ制御の他に変速機シフト用にも使用される。スプリッタ変速機部内に示してある切換フォーク30はスプリッタ変速機部8内のここには図示しない切換要素内に係合し、主変速機部6内の1つの変速ステップを細分するためにスプリッタ変速機の2つの変速段を分割する。切換フォーク30は切換ロッド32を介して軸線方向で矢印方向36に沿ってアクチュエータ34によって移動させられ、これによりスプリッタ変速機部8の異なる変速段は切り換えることができる。アクチュエータ12、18、34が制御機構37と接続されており、この制御機構内で所定の規則に従って切換信号が発生される。
【0010】
切換軸14が切換フィンガ38を有し、この切換フィンガは図1において切換ロッド42と切換ロッド44との間の自由空間40内に配置されている。この位置においてアクチュエータ12は、切換ロッド42または44が動かされることなく、切換軸14を従って切換フィンガ38を軸線方向で矢印方向16に沿って自由に移動させることができる。切換ロッド44と強固に結合された切換フォーク46は補助レンジ変速機部10内のここには図示しない摺動スリーブ内に係合する。切換ロッド42と強固に結合された切換フォーク50は主変速機部6内で2つの変速段をシフトするために設けられている。これら両方の変速段は特に主変速機部6の第1前進段と後退段である。切換ロッド42の自由空間40とは反対の側に他の切換ロッド52が設けられており、この切換ロッド内に切換フィンガ38はやはり係合できる。切換ロッド52が切換フォーク54と結合されており、この切換フォークは例えば主変速機部6内の第2、第3前進段を切り換える。
【0011】
図2を参考に主変速機部6および補助レンジ変速機部10におけるシフトの変速経過を説明する。この変更態様において補助レンジ変速機部10は同期機構を備えている。図1に相応して、この略図では切換フィンガ38が中央位置において示してあり、それがこの位置を占めるのは、空圧式シフトにおいてここには図示しない中央空気貯蔵部からアクチュエータ12、18のすべての入口22、24、26、28に空気が供給されるときである。車両変速機4の第4変速段から第3変速段にダウンシフトするときまず車両クラッチが開放され、中央空気供給部に空気が供給される。ここに示す車両変速機では主変速機部6内に3つの前進段と1つの後退段が設けられており、最初の3つの前進段は補助レンジ変速機部10の低速位置(GPL)で行われ、第4前進段は補助レンジ変速機部10の高速位置(GPS)と接続された主変速機部6の第1前進段の位置に一致する。
【0012】
ここには補助レンジ変速機部10の低速位置(GPL)における切換ロッド44が示してある。
【0013】
最初に説明するダウンシフト用出発位置としての第4変速段用位置において切換フィンガ38は切換ロッド42の領域において図示した位置よりも図2で左方向にずれた位置にあり、切換ロッド42は主変速機部6内で第1変速段を接続している。このためアクチュエータ12で接続ライン24が通気されている。同様に、切換フィンガをこの位置で矢印方向20に相応して保持するためにアクチュエータ18で接続ライン26、28が同時に通気されている。引き続き接続ライン22が付加的に通気され、これにより切換フィンガ38は図2に示す位置を占め、中立位置にある。その直後、車両クラッチが係合される。接続ライン28の排気によって切換フィンガ38は図2の図示平面において上方に移動され、切換ロッド44に突接するのでこの方向での進路を継続できなくなる。それに続く接続ライン22の付加的排気によって切換フィンガ38は切換ロッド44と切換ロッド42との間の自由空間40内で図2の図示平面を左方向に動き、位置GPSにおいて切換ロッド44の開口部内に係合できることになる。この開口部の方向への切換フィンガの運動はアクチュエータ18によって維持されたままとなり、開口部に達すると図示平面において上方への切換フィンガ38の運動継続の障害はなくなる。その直後、接続ライン22が再び通気され、切換フィンガ38は切換ロッド44をまず位置Nに達するまで移動させる。引き続き接続ライン24が排気され、切換フィンガは切換ロッド38を位置GPLに達するまで完全に移動させる。それとともに補助レンジ変速機部が低変速比位置に切換えられる一方、主変速機部6は引き続き中立位置にある。位置GPSとGPLとの間で切換フィンガの進むべき進路は、その都度接続された両方の切換端位置の間で一方の切換ロッド42、52の切換フィンガが進まねばならない進路に一致する。それとともに切換ロッド42、52上の接続された切換端位置の中立位置からの距離は、切換ロッド44の接続された切換端位置GPSまたはGPLの中立位置Nからの距離に一致する。主変速機部6内での最終的シフトのため、まず切換フィンガ38の運動と挟まって動かなくなることを防止するために、いまや接続ライン22が排気される。接続ライン28の付加的通気のゆえに、切換フィンガ38は図2の図示平面において下方に移動され、切換ロッド42に突接するのでこの方向でのその進路を継続できなくなる。それに続いて接続ライン22、24を通気することによって、切換フィンガ38は図2の図示平面において左方向に動き、位置Nにおいて切換ロッド42の開口部内に係合できることになる。この開口部の方向への切換フィンガの運動はアクチュエータ18によって維持されたままであり、開口部に達すると図示平面において下方への切換フィンガ38の運動継続の障害はなくなる。接続ライン26が排気され、これにより切換フィンガ38は切換ロッド52の開口部内に係合できる。この位置に切換フィンガ38が留まるのは、さしあたり、主変速機部6内でのシフト用に必要なエンジン回転数が達成されるまでである。所要の回転数に達したなら、まず接続ライン22も排気され、切換フィンガ38は切換ロッド52を図2の図示平面において左方向に移動させ、これにより第3変速段が接続される。最後に中央空気供給部が切られる。
【0014】
やはり図2を参考に次に主変速機部6および補助レンジ変速機部10における他のシフトの変速経過を説明する。この変更態様でも補助レンジ変速機部10が同期機構を備えている。車両変速機4の第3変速段から第4変速段にアップシフトするときまず車両クラッチが開放され、中央空気供給部に空気が供給される。既に先に述べたように、ここに示す車両変速機では主変速機部6内に3つの前進段と1つの後退段が設けられており、最初の3つの前進段は補助レンジ変速機部10の低速位置(GPL)で行われ、第4前進段は補助レンジ変速機部10の高速位置(GPS)と接続された主変速機部6内の第1前進段の位置に一致する。以下に説明するアップシフト用出発位置としての第3変速段用位置において切換フィンガ38は切換ロッド52の領域において図示位置よりも図2で左下方向にずれた位置にあり、切換ロッド52は主変速機部6内で第3変速段を接続している。このためアクチュエータ12で接続ライン24が通気されている。同様にアクチュエータ18で接続ライン28が通気されている。引き続き接続ライン22が付加的に通気され、これにより切換フィンガ38はまず、図2に示す位置よりも下方にずれた位置を占め、中立位置にある。その直後、車両クラッチが係合される。接続ライン28の排気と接続ライン26の通気とによって切換フィンガ38は図2の図示平面において上方に移動され、切換ロッド44に突接するのでこの方向でのその進路を継続できなくなる。それに続く接続ライン24の付加的排気によって切換フィンガ38は切換ロッド44と切換ロッド42との間の自由空間40内で図2の図示平面において右方向に動き、位置GPLにおいて切換ロッド44の開口部内に係合できることになる。この開口部の方向への切換フィンガの運動はアクチュエータ18によって維持されたままであり、開口部に達すると図示平面において上方への切換フィンガ38の運動継続の障害は再びなくなる。その直後接続ライン24が再び通気され、切換フィンガ38は切換ロッド44をまず位置Nに達するまで移動させる。引き続き接続ライン22が排気され、切換フィンガ38は切換ロッド44を位置GPSに達するまで完全に移動させる。それとともに補助レンジ変速機部10が高速変速比位置に切換えられている一方、主変速機部6は引き続き中立位置にある。主変速機部6内で最終的にシフトするために、まず切換フィンガ38の運動と挟まって動かなくなることを防止するためにいまや接続ライン22、24が排気される。接続ライン28の付加的通気の結果、切換フィンガ38は図2の図示平面において下方に移動され、切換ロッド42に突接するのでこの方向でのその進路を継続できなくなる。それに続く接続ライン22、24の通気によって切換フィンガ38は自由空間40内で図2の図示平面において右方向に動き、位置Nにおいて切換ロッド42の開口部内に係合できることになる。この開口部の方向への切換フィンガの運動はアクチュエータ18によって維持されたままとなり、開口部に達すると図示平面において下方への切換フィンガ38の運動継続の障害はなくなる。この位置に切換フィンガ38が留まるのは、さしあたり、主変速機6内でのシフト用に必要なエンジン回転数が達成されるまでである。所要の回転数に達したなら、接続ライン22が排気され、切換フィンガ38は切換ロッド42を図2の図示平面において左方向に移動させ、これにより主変速機部6内で第1変速段として第4変速段が切換えられる。最後に中央空気供給部が切られる。
【0015】
以上説明した両方の切換過程では、主変速機部6が中立位置にある限り、つまり主変速機部6内で変速段が接続されていない一方で車両エンジンが各接続回転数に調節される限り、補助レンジ変速機部10の切換は行われる。その場合、主変速機部6内でのシフトはシフト全体の最終部分として実施される。補助レンジ変速機部10内でかみ合い係合部が使用される場合、補助レンジ変速機部10内でのシフト用の回転数補償はエンジン同期機構によって行われる。それゆえに、補助レンジ変速機部10内でのシフトはこの場合最終シフトとして実行されねばならず、その場合主変速機部6内でのシフトは既に完了していなければならない。切換ロッド42が切換端位置にある間に切換フィンガ38を運動させるための自由空間40にも到達できるように、切換ロッド42によって切換えられる主変速機部6の変速段はこの変更態様において主変速機部6の最低変速比と最高変速比とを含まねばならない。その場合にのみ、補助レンジ変速機部10を調整するための切換ロッド44は切換端位置から切換フィンガで動き出し、補助レンジ変速機部10の低速変速比の最高段から補助レンジ変速機部10の高速変速比の最低段およびその逆へと切り換えることができる。
【0016】
図3では切換ロッド42に主変速機部6の第1変速段と第3変速段が配置される一方、切換ロッド52には第2変速段と後退段が配置されている。図3を参考に主変速機部6および補助レンジ変速機部10におけるシフトの変速経過を説明する。この変更態様では補助レンジ変速機部10がかみ合い係合部を備えている。図1に相応してこの略図では切換フィンガ38が中央位置で示してあり、それがこの位置を占めるのは、空圧式シフトの場合アクチュエータ12、18のすべての入口22、24、26、28でここには図示しない中央空気貯蔵部から空気が供給されるときである。
【0017】
ここでは切換ロッド44が補助レンジ変速機の高速位置(GPS)で示してある。これは図2の位置とは入れ替わっているが、しかし変速経過の最適化に役立つ。補助レンジ変速機の設計に応じて切換ロッドの位置はさまざまに形成することができる。図2による位置の配置では、以下に述べる切換経過は相応に適合することができる。
【0018】
車両変速機4の第4変速段から第3変速段にダウンシフトするときまず車両クラッチが開放され、中央空気供給部に空気が供給される。別の変更態様について既に述べたように、ここに示した車両変速機では主変速機部6内に3つの前進段と1つの後退段が設けられており、最初の3つの前進段は補助レンジ変速機部10の低速位置(GPL)で行われ、第4前進段は補助レンジ変速機部10の高速位置(GPS)と接続された主変速機6の第1前進段の位置に一致する。最初に説明するダウンシフト用出発位置としての第4変速段用位置において切換フィンガ38は切換ロッド42の領域において図示した位置よりも図3で右方向にずれた位置にあり、切換ロッド42は主変速機部6内で第1変速段を接続している。このためアクチュエータ12で接続ライン22が通気されている。同様に、切換フィンガをこの位置で矢印方向20に相応して保持するためにアクチュエータ18で接続ライン26、28が同時に通気されている。引き続き接続ライン22が排気される。接続ライン28の排気によって、切換フィンガ38は図3の図示平面において上方に移動され、位置GPSにおいて切換ロッド44の開口部内に係合できることになる。その直後、接続ライン22、24が再び通気され、切換フィンガ38は切換ロッド44を位置Nに達するまで移動させる。それとともに補助レンジ変速機部が中立位置に切換えられる一方、主変速機部6は引き続き第1変速段にある。接続ライン22、24が排気される。接続ライン28の付加的通気によって切換フィンガ38は図3の図示平面において下方に動き、切換ロッド42に突接するのでこの方向でのその進路を継続できなくなる。それに続いて接続ライン22を付加的に通気することによって切換フィンガ38は切換ロッド44と切換ロッド42との間の自由空間40内を図3の図示平面において右方向に動き、第1変速段用位置において切換ロッド42の開口部内に係合できることになる。この開口部の方向への切換フィンガの運動はアクチュエータ18によって維持されたままであり、開口部に達すると図示平面において下方への切換フィンガ38の運動継続の障害はなくなる。主変速機部6内でのシフト用に不可欠な切換回転数に到達後、接続ライン22が排気され、接続ライン24が通気され、切換ロッド42は図示平面において左方向に、主変速機部6内で第3変速段用切換端位置が達成されるまで切換える。その直後、車両クラッチが係合される。補助レンジ変速機部10内での最終的シフトのため、まず切換フィンガ38の運動を防止するために、いまや接続ライン22、24が排気される。接続ライン28の排気によって切換フィンガ38は図3の図示平面において上方に移動され、切換ロッド44に突接するのでこの方向でのその進路を継続できなくなる。それに続いて接続ライン22、24を同時に通気することによって、切換フィンガ38は切換ロッド44と切換ロッド42との間の自由空間40内で図3の図示平面において右方向に動き、位置Nにおいて切換ロッド44の開口部内に係合できることになる。この開口部の方向への切換フィンガの運動はアクチュエータ18によって維持されたままであり、開口部に達すると図示平面において上方への切換フィンガ38の運動継続の障害はなくなる。この位置に切換フィンガ38が留まるのは、さしあたり、補助レンジ変速機部10内でのシフト用に必要なエンジン回転数が達成されるまでである。所要の回転数に達したなら、接続ライン22が排気され、切換フィンガ38は切換ロッド44を位置GPLに達するまで移動させる。接続ライン24が排気される。接続ライン28の付加的通気のゆえに、切換フィンガ38は図3の図示平面において下方に移動され、主変速機部6の切り換えられた第3変速段の位置において切換ロッド42の開口部内に係合できることになる。最後に中央空気供給部が切られる。
【0019】
やはり図3を参考に次に主変速機部6および補助レンジ変速機部10における他のシフトの変速経過を説明する。この変更態様でも補助レンジ変速機部10がかみ合い係合部を備えている。車両変速機4の第3変速段から第4変速段にアップシフトするときまず車両クラッチが開放され、中央空気供給部に空気が供給される。以下に説明するアップシフト用出発位置としての第3変速段用位置において切換フィンガ38は切換ロッド42の領域において図示位置よりも図3で左方向にずれた位置にあり、切換ロッド42は主変速機部6内で第3変速段を接続している。このためアクチュエータ12で接続ライン24が通気されている。同様に、切換フィンガをこの位置で矢印方向20に相応して保持するためにアクチュエータ18で接続ライン26、28が同時に通気されている。引き続き接続ライン24が付加的に排気される。接続ライン28の排気によって切換フィンガ38は図3の図示平面において上方に移動され、位置GPLにおいて切換ロッド44の開口部内に係合できることになる。その直後、接続ライン22、24が再び通気され、切換フィンガ38は切換ロッド44を位置Nに達するまで移動させる。それともに補助レンジ変速機部が中立位置に切換えられている一方、主変速機部6は引き続き第3変速段用位置にある。接続ライン22、24が排気される。接続ライン28の付加的通気によって切換フィンガ38は図3の図示平面において下方に動き、切換ロッド42に突接するのでこの方向でのその進路を継続できなくなる。それに続く接続ライン24の付加的通気によって切換フィンガ38は切換ロッド44と切換ロッド42との間の自由空間40内で図3の図示平面において左方向に動き、第3変速段用位置において切換ロッド42の開口部内に係合できることになる。この開口部の方向への切換フィンガの運動はアクチュエータ18によって維持されたままとなり、開口部に達すると図示平面において下方への切換フィンガ38の運動継続の障害はなくなる。主変速機6内でのシフト用に不可欠な切換回転数に到達後、接続ライン24が排気され、接続ライン22が通気され、切換フィンガ42は、主変速機部6内で第1変速段用切換端位置が達成されるまで、図示平面において右方向に切り換わる。その直後、車両クラッチが係合される。補助レンジ変速機部10内での最終的シフトのため、まず切換フィンガ38の運動を防止するために、いまや接続ライン22、24が排気される。接続ライン28の排気によって切換フィンガ38は図3の図示平面において上方に移動され、切換ロッド44に突接するのでこの方向でのその進路を継続できなくなる。それに続いて接続ライン22、24を同時に通気することによって、切換フィンガ38は切換ロッド44と切換ロッド42との間の自由空間40内で図3の図示平面において左方向に動き、位置Nにおいて切換ロッド44の開口部内に係合できることになる。この開口部の方向への切換フィンガの運動はアクチュエータ18によって維持されたままであり、開口部に達すると図示平面において上方への切換フィンガ38の運動継続の障害はなくなる。この位置に切換フィンガ38が留まるのは、さしあたり、補助レンジ変速機部10内でのシフト用に必要なエンジン回転数が達成されるまでである。所要の回転数に達したなら、接続ライン24が排気され、切換フィンガ38は切換ロッド44を位置GPSに達するまで移動させる。接続ライン22が排気される。接続ライン28の付加的通気のゆえに、切換フィンガ38は図3の図示平面において下方に移動され、主変速機部6の切り換えられた第1変速段の位置において切換ロッド42の開口部内に係合できることになる。最後に中央空気供給部が切られる。
【0020】
以上述べた構造によって補助レンジ変速機部10のシフト用に、個別のアクチュエータと付属する制御系もしくは制御弁も、このアクチュエータと補助レンジ変速機部10内の切換フォークとの間に不可欠な機械式伝達も、省くことができる。このことが特別有利に作用するのは、主変速機部内の4つの変速段用に元々設計された変速機においてこれらの変速段の1つを省くことができ、そのことにより1つの切換ロッドを省くことができる場合である。車両変速機の変速段数がこれにより確かに減少しているが、しかしそのことによってシフトへの支出を節約することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】切換機構の図である。
【図2】同期シフト部の切換要素の略図である。
【図3】かみ合い係合部の切換要素の略図である。
【符号の説明】
【0022】
2 切換機構
4 車両変速機
6 主変速機部
8 スプリッタ変速機部
10 補助レンジ変速機部
12 アクチュエータ
14 切換軸
16 矢印方向
18 アクチュエータ
20 矢印方向
22 接続ライン
24 接続ライン
26 接続ライン
28 接続ライン
30 切換フォーク
32 切換ロッド
34 アクチュエータ
36 矢印方向
37 制御機構
38 切換フィンガ
40 自由空間
42 切換ロッド
44 切換ロッド
46 切換フォーク
50 切換フォーク
52 切換ロッド
54 切換フォーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの主変速機部(6)と少なくとも1つの補助レンジ変速機部(10)とを備えた多段車両変速機(4)用の切換機構(2)であって、当該切換機構が主変速機部(6)内の切換要素(44、50、52、54)を操作するための切換手段(12、14、18、38)と補助レンジ変速機部(10)内の切換要素(42、46)を操作するための切換手段(12、14、18、38)とを含むものにおいて、
主変速機部(6)内の切換要素(44、50、52、54)を操作するための切換手段(12、14、18、38)が補助レンジ変速機部(10)内の切換要素(42、46)も操作することを特徴とする切換機構。
【請求項2】
主変速機部(6)内の切換要素(44、50、52、54)を操作するための切換手段(12、14、18、38)が、切換指令を実行するための空圧式、液圧式または電気式アクチュエータ(12)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の切換機構(2)。
【請求項3】
主変速機部(6)内の切換要素(44、50、52、54)を操作するための切換手段(12、14、18、38)が、選択指令を実行するための空圧式、液圧式または電気式アクチュエータ(18)を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の切換機構(2)。
【請求項4】
制御機構(37)内で所定の規則に従って処理される指令に基づいてアクチュエータ(12、18)の制御が自動的に行われることを特徴とする、請求項2または3に記載の切換機構(2)。
【請求項5】
切換手段(12、14、18、38)が自由空間(40)を有し、所要の切換要素(42、44、46、50、52、54)を選択するための選択過程の間、切換手段の切換要素(42、44、46、50、52、54)を操作する要素(38)が前記自由空間内で一切換過程の方向に運動可能であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の切換機構(2)。
【請求項6】
切換指令を実行するためのアクチュエータ(12)が、切換過程の方向で選択過程を実行するために、選択指令の少なくとも諸部分で制御可能であることを特徴とする、請求項5に記載の切換機構(2)。
【請求項7】
一方で補助レンジ変速機部(10)の1切換要素(42)が、他方で主変速機部(6)の1切換要素(44)が、自由空間(40)に隣接していることを特徴とする、請求項5または6に記載の切換機構(2)。
【請求項8】
補助レンジ変速機部(10)の切換要素(42、46)が同期化切換要素であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の切換機構(2)。
【請求項9】
補助レンジ変速機部(10)の切換要素(42、46)が同期要素なしのかみ合い係合部を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の切換機構(2)。
【請求項10】
同期要素なしのかみ合い係合部がある場合、主変速機部(6)の自由空間(40)の横に配置される切換要素(44)が主変速機部(6)の最高変速段および最低変速段用の切換要素であることを特徴とする、請求項9に記載の切換機構(2)。
【請求項11】
主変速機部(6)内の切換要素(44、50、52、54)を操作するための切換手段(12、14、18、38)が単一の切換軸(14)を含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の切換機構(2)。
【請求項12】
切換フィンガ(38)が、切換運動および選択運動を実行するための切換手段(12、18)と直接結合されていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の切換機構(2)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの主変速機部(6)と少なくとも1つの補助レンジ変速機部(10)とを備えた多段車両変速機(4)用の切換機構(2)であって、切換機構が主変速機部(6)内の切換要素(42、50、52、54)を操作するための切換手段(12、14、18、38)と補助レンジ変速機部(10)内の切換要素(44、46)を操作するための切換手段(12、14、18、38)とを含み、主変速機部(6)内の切換要素(42、50、52、54)を操作するための切換手段(12、14、18、38)が補助レンジ変速機部(10)内の切換要素(44、46)も操作するものにおいて、
切換手段(12、14、18、38)が自由空間(40)を有し、所要の切換要素(42、44、46、50、52、54)を選択するための選択過程の間、切換手段の切換要素(42、44、46、50、52、54)を操作する要素(38)がこの自由空間内で一切換過程の方向に運動可能であることを特徴とする切換機構。
【請求項2】
主変速機部(6)内の切換要素(42、50、52、54)を操作するための切換手段(12、14、18、38)が、切換指令を実行するための空圧式、液圧式または電気式アクチュエータ(12)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の切換機構(2)。
【請求項3】
主変速機部(6)内の切換要素(42、50、52、54)を操作するための切換手段(12、14、18、38)が、選択指令を実行するための空圧式、液圧式または電気式アクチュエータ(18)を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の切換機構(2)。
【請求項4】
制御機構(37)内で所定の規則に従って処理される指令に基づいてアクチュエータ(12、18)の制御が自動的に行われることを特徴とする、請求項2または3に記載の切換機構(2)。
【請求項5】
切換指令を実行するためのアクチュエータ(12)が、切換過程の方向で選択過程を実行するために、選択指令の少なくとも諸部分で制御可能であることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか一項に記載の切換機構(2)。
【請求項6】
一方で補助レンジ変速機部(10)の1切換要素(44)が、他方で主変速機部(6)の1切換要素(42)が、自由空間(40)に隣接していることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の切換機構(2)。
【請求項7】
補助レンジ変速機部(10)の切換要素(44、46)が同期化切換要素であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の切換機構(2)。
【請求項8】
補助レンジ変速機部(10)の切換要素(44、46)が同期要素なしのかみ合い係合部を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の切換機構(2)。
【請求項9】
同期要素なしのかみ合い係合部がある場合、主変速機部(6)の自由空間(40)の横に配置される切換要素(42)が主変速機部(6)の最高変速段および最低変速段用の切換要素であることを特徴とする、請求項8に記載の切換機構(2)。
【請求項10】
主変速機部(6)内の切換要素(42、50、52、54)を操作するための切換手段(12、14、18、38)が単一の切換軸(14)を含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の切換機構(2)。
【請求項11】
切換フィンガ(38)が、切換運動および選択運動を実行するための切換手段(12、18)と直接結合されていることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の切換機構(2)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−504052(P2006−504052A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−545861(P2004−545861)
【出願日】平成15年10月16日(2003.10.16)
【国際出願番号】PCT/EP2003/011453
【国際公開番号】WO2004/038262
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(500045121)ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト (312)
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
【Fターム(参考)】