説明

切断機

【課題】 切断機において給水ホースが外側へ弛むことを防止する。
【解決手段】 切断機10は、円板刃12を回転駆動する本体14と、本体14に対して回転可能に支持されている刃物カバー46と、刃物カバー46に設けられている給水ノズル56と、給水ノズル56に接続されている給水ホース50と、本体14に取り付けられているとともに、給水ホース50を保持しているホースホルダ54を備えている。ホースホルダ54は、本体14に対して回転可能に支持されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断機に関し、特に、その給水ホースの保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、切断機が開示されている。この切断機は、円板刃と、円板刃を駆動する本体と、本体に対して回転可能に支持されている刃物カバーを備えている。刃物カバーには給水ノズルが設けられており、その給水ノズルには給水ホースが接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,591,826号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した切断機では、本体に対して刃物カバーを回転させた際に、給水ホースが外側へ大きく弛み、ユーザにとって邪魔になることがあった。この問題を鑑み、本発明は、切断機において給水ホースが外側へ弛むことを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る切断機は、円板刃を回転駆動する本体と、本体に対して回転可能に支持されている刃物カバーと、刃物カバーに設けられている給水ノズルと、給水ノズルに接続されている給水ホースと、本体に取り付けられているとともに、給水ホースを保持しているホースホルダを備えている。ホースホルダは、本体に対して回転可能に支持されていることを特徴とする。この構造によると、本体に対して刃物カバーを回転させた際に、ホースホルダも本体に対して受動的に回転することができる。給水ホースが強く曲げられることがないので、給水ホースが外側へ弛むことを効果的に防止することができる。
【0006】
前記した本体は、ホースホルダが着脱可能な穴を有し、ホースホルダは、その本体の穴に挿入される脚部を有することが好ましい。この場合、本体の穴の内部には回転するホースホルダの脚部に周方向から当接する突出部が形成され、ホースホルダの脚部が突出部を一方側へ乗り越えるとホースホルダが本体に対して回転可能に取り付けられ、ホースホルダの脚部が突出部を他方側へ乗り越えるとホースホルダが本体に対して取り外し可能となることが好ましい。この構造によると、ホースクリップを本体に対して容易に着脱することができる。
【0007】
上記した切断機の本体には、スクリュウドライバ等の棒材を挿入することによって円板刃の回転軸を機械的にロックするためのロック穴が形成されていることが好ましい。この場合、ホースホルダは、そのロック穴へ着脱可能に取り付けられることが好ましい。この構成によると、円板刃の交換をしないときは、ロック穴がホースホルダによって塞がれるので、ロック穴から粉塵や液体が侵入することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例のエンジンカッターを示す図。
【図2】図2(a)はホースホルダの平面図であり、図2(b)はホースホルダの正面図であり、図2(c)はホースホルダの側面図である。
【図3】ホースホルダの斜視図である。
【図4】図4(a)はベルトカバーの内面を示す背面図であり、図4(b)は図4(a)におけるB−B線断面図である。
【図5】図5(a)は図4(a)中のVA部を拡大して示しており、図5(b)は図4(b)中のVB部を拡大して示す。
【図6】ホースホルダをロック穴へ挿入する前の状態を示す図。
【図7】ホースホルダをロック穴へ挿入した直後の状態を示す図。
【図8】ホースホルダをロック穴に対して回転させた状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、エンジンを原動機とする切断機だけでなく、電気モータを原動機とする切断機にも適用することができる。
【0010】
本発明に係るホースホルダは、切断機に限られず、各種の装置や設備にも採用することができる。
【0011】
本発明の一実施形態では、少なくとも一つのホースホルダを、刃物カバーの回転中心又はその近傍に配置することが好ましい。この構成によると、本体に対して刃物カバーが回転したときに、給水ホースが弛むことを防止又は抑制することができる。
【実施例】
【0012】
図面を参照し、本発明の実施例であるエンジンカッター(カットオフソーとも称される)について説明する。図1は、エンジンカッター10を示している。エンジンカッター10は、円板刃12と、その円板刃12を駆動する本体14を備えている。円板刃12は、石質材料や金属材料を切断することができる。エンジンカッター10は、手持式作業機の一種であり、例えば建築現場においてコンクリートや鉄骨材料の切断に用いられる切断機である。
【0013】
本体14には、前方ハンドル16と後方グリップ24が設けられている。前方ハンドル16は、パイプ材で形成されており、ユーザによって把持される。前方ハンドル16は、本体14の右方側面から、本体14の上方及び左方を通り、本体14の下部へと伸びている。後方グリップ24は、本体14の後方下部に設けられている。後方グリップ24は、本体14からループ状に伸びている。後方グリップ24には、スロットルレバー26等の操作スイッチが設けられている。通常、ユーザは、左手によって前方ハンドル16を把持し、右手によって後方グリップ24を把持して、エンジンカッター10を保持する。
【0014】
本体14は、円板刃12を駆動するためのエンジン18を備えている。本実施例のエンジン18は、4ストローク型のレシプロエンジンである。なお、エンジン18は、4ストローク型のレシプロエンジンに限られず、2ストローク型のレシプロエンジンや、他の形式のエンジンであってもよい。
【0015】
本体14は、ケーシング20を備えている。ケーシング20は、樹脂材料で形成されている。ケーシング20の内部には、エンジン18へ供給される空気をろ過するフィルタや、フィルタによってろ過された空気に燃料を混合するキャブレタが設けられている。ケーシング20の下部22は、燃料を貯留する燃料タンクとなっており、燃料を給油する給油口30が設けられている。給油口30には、燃料キャップ28が着脱可能に取り付けられている。燃料キャップ28は給油口30を気密に閉塞する。
【0016】
本体14は、カッターアーム40を備えている。カッターアーム40は、本体14の一方側に位置しており、本体14の前方(図1中の右方)へ伸びている。カッターアーム40の基端(図1中の左端)はエンジン18に接続されており、カッターアーム40の先端(図1中の右端)には円板刃12及び刃物カバー46が設けられている。カッターアーム40は、エンジン18の出力トルクを円板刃12へ伝達する伝達機構である。カッターアーム40は、クラッチカバー42及びベルトカバー44を有し、その内側にクラッチ、駆動プーリー、ベルト及び従動プーリー等の伝達機構が配設されている。また、カッターアーム40には、エンジン18を始動するためのリコイルスタータ48が設けられている。
【0017】
刃物カバー46は、円板刃12を部分的に覆っており、切断時に粉塵の飛散を防止する。刃物カバー46には、給水ノズル56が設けられている。給水ノズル56は、刃物カバー46内へ水を噴射する。図1では一つの給水ノズル56のみが図示されているが、刃物カバー46には一対の給水ノズル56が円板刃12を挟んで設けられている。刃物カバー46は、カッターアーム40に対して回転可能に支持されている。
【0018】
給水ノズル56には、給水ホース50が接続されている。給水ホース50は、本体14のカッターアーム40に沿って配管されている。カッターアーム40には、給水ホース50を保持するホースホルダ52、54が設けられている。一方のホースホルダ52は、カッターアーム40のクラッチカバー42に取り付けられており、他方のホースホルダ54は、カッターアーム40のベルトカバー44に取り付けられている。各々のホースホルダ52、54は、一例ではあるが、樹脂材料で形成されている。
【0019】
ホースホルダ54は、ベルトカバー44に対して、回転可能に支持されている。ここで、ホースホルダ54の回転軸は、刃物カバー46の回転軸に平行である。ホースホルダ54が回転可能であると、カッターアーム40に対して刃物カバー46が回転し、給水ホース50が湾曲するときに、ホースホルダ54も受動的に回転することができる。ホースホルダ54が回転すると、給水ホース50が強く曲げられることが防止される。その結果、給水ホース50が外側へ弛むことが抑制される。ここで、ホースホルダ54は、刃物カバー46の回転中心又はその近傍に設けることが好ましい。
【0020】
以下では、ホースホルダ54とその取付構造について詳細に説明する。図2、図3はホースホルダ54を示しており、図4はベルトカバー44を示している。ホースホルダ54は、ベルトカバー44に形成された穴70へ着脱可能に取り付けられている。ベルトカバー44の穴70は、本来、スクリュウドライバ等の棒材を挿入することによって円板刃12の回転軸を機械的にロックするために設けられたロック穴である。ロック穴70にホースホルダ54を取り付ける構造とすると、円板刃12の交換をしないときは、ホースホルダ54によってロック穴70を塞ぐことができる。それにより、ロック穴70からベルトカバー44の内部へ粉塵が侵入することを防止することができる。
【0021】
図2、図3に示すように、ホースホルダ54は、クリップ部62と、ベース部64と、脚部66、68を備えている。クリップ部62は、給水ホース50を挟持する構造を有している。ベース部64は円板形状を有しており、ベルトカバー44の表面に接触する。脚部66、68は、ベルトカバー44のロック穴70に挿入される。脚部66、68は、ベース部64から伸びる支柱部66と、支柱部66から伸びる一対の梁部68を有しており、全体としてT字形状を有している。各々の梁部68はベース部64と略平行に伸びており、ベース部64と各々の梁部68との間に隙間Dが形成されている。
【0022】
図5に示すように、ベルトカバー44のロック穴70には、ホースホルダ54の脚部66、68の形状に合わせて、一対の切欠部72が形成されている。ロック穴70の内部(ベルトカバー44の内面44a)には、4箇所の突出部74が形成されている。4箇所の突出部74は、ロック穴70の周囲に等間隔で配置されており、回転するホースホルダ54の脚部66、68に周方向から当接する。突出部74の高さ寸法(厚み寸法)Hは、ホースホルダ54の脚部66、68に形成された隙間D(図2参照)よりも僅かに大きい。隣接する二つの突出部74の間には、平坦部76が形成されている。平坦部76の高さ寸法(厚み寸法)Tは、突出部74の高さ寸法Hよりも小さく、かつ、ホースホルダ54の脚部66、68に形成された隙間D(図2参照)よりも小さい。
【0023】
図6、図7、図8を参照して、ホースホルダ54をベルトカバー44のロック穴70へ取り付ける方法を説明する。図6、図7に示すように、先ず、ホースホルダ54の脚部66、68を、ベルトカバー44のロック穴70へ挿入する。このとき、ホースホルダ54の梁部68の位置を、ロック穴70の切欠部72の位置に合わせる。次に、ホースホルダ54を、ベルトカバー44に対して略90度回転させる。ホースホルダ54の梁部68は、弾性変形することによって、突出部74を平坦部76側へ乗り越える。それにより、ホースホルダ54がロック穴70へ取り付けられた状態となる。ホースホルダ54の梁部68は平坦部76に位置し、隣接する二つの突出部74の間で移動可能に保持される。その結果、ホースホルダ54は、ベルトカバー44に対して回転可能に支持される。ホースホルダ54が回転可能な角度範囲は、梁部68の両側に位置する二つの突出部74の角度間隔に応じて決まる。そのことから、ホースホルダ54に必要とされる回転角度範囲に応じて、二つの突出部74の角度間隔を設計するとよい。
【0024】
上記と逆の手順により、ホースホルダ54をベルトカバー44のロック穴70から取り外すことができる。即ち、ホースホルダ54をベルトカバー44に対して逆向きに回転させ、ホースホルダ54の梁部68が突出部74を切欠部72側へ乗り越えると、ホースホルダ54はベルトカバー44のロック穴70から取り外し可能となる。
【0025】
以上のように、本実施例のエンジンカッター10では、給水ホース50を保持するホースホルダ54が回転可能に支持されている。それにより、刃物カバー46を回転させた場合でも、給水ホース50が無理に曲げられることがなく、給水ホース50が外側へ弛むことを抑制することができる。また、ホースホルダ54は、工具を必要とすることなく、容易に着脱できる構造を有している。
【0026】
加えて、本実施例のエンジンカッター10では、ホースホルダ54を、ベルトカバー44に形成されたロック穴70に取り付けている。従来のエンジンカッターでは、ロック穴70が常に開放された状態となっており、ロック穴70から粉塵が侵入するという問題があった。それに対して本実施例では、円板刃12の交換をしないときは、ロック穴70がホースホルダ54によって塞がれるので、ロック穴70から粉塵が侵入することを防止することができる。
【0027】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0028】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0029】
10:エンジンカッター
12:円板刃
14:本体
18:エンジン
40:カッターアーム
42:クラッチカバー
44:ベルトカバー
44a:内面
46:刃物カバー
50:給水ホース
52、54:ホースホルダ
56:給水ノズル
66、68:ホースホルダの脚部
70:ロック穴
74:突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板刃を回転駆動する本体と、
本体に対して回転可能に支持されている刃物カバーと、
刃物カバーに設けられている給水ノズルと、
給水ノズルに接続されている給水ホースと、
本体に取り付けられているとともに、給水ホースを保持しているホースホルダを備え、
ホースホルダが本体に対して回転可能に支持されていることを特徴とする切断機。
【請求項2】
前記本体は、前記ホースホルダが着脱可能な穴を有し、
前記ホースホルダは、前記本体の穴に挿入される脚部を有し、
前記本体の穴の内部には、回転するホースホルダの脚部に周方向から当接する突出部が形成されており、
前記ホースホルダの脚部が前記突出部を一方側へ乗り越えると、前記ホースホルダが前記本体に対して回転可能に取り付けられ、前記ホースホルダの脚部が前記突出部を他方側へ乗り越えると、前記ホースホルダが前記本体に対して取り外し可能となることを特徴とする請求項1に記載の切断機。
【請求項3】
前記本体には、棒材を挿入することによって円板刃の回転軸を機械的にロックするためのロック穴が形成されており、
前記ホースホルダは、そのロック穴へ着脱可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の切断機。
【請求項4】
円板刃を回転駆動する本体と、
本体に対して回転可能に支持されている刃物カバーと、
刃物カバーに設けられている給水ノズルと、
給水ノズルに接続されている給水ホースと、
本体に取り付けられているとともに、給水ホースを保持しているホースホルダを備え、
前記本体には、棒材を挿入することによって円板刃の回転軸を機械的にロックするためのロック穴が形成されており、
前記ホースホルダは、そのロック穴へ着脱可能に取り付けられていることを特徴とする切断機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−121190(P2012−121190A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272456(P2010−272456)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】