説明

切替式二段過給機ターボシステム

【課題】加工工数及び部品点数の削減、生産性及び信頼性の向上並びにコストの低減が図れ、既存型の排気マニホールドにも適用可能な切替式二段過給機ターボシステムを提供する。
【解決手段】内燃機関1に高圧段の過給機T1及び低圧段の過給機T2を接続した切替式二段過給機ターボシステムSにおいて、前記内燃機関1の排気マニホールド3に単一の排気口16を設け、前記高圧段の過給機T1のタービン10の入口10a及び出口10bと隣接する排気バイパス用の入口12a及び出口12bを有する排気バイパス通路12を前記タービン10に一体に設け、前記タービン10の入口10a及び排気バイパス通路12の入口12aを有する端部と前記排気口16を互いに接続可能とし、前記排気バイパス通路12に該排気バイパス通路12の出口12bを開閉する切替弁14を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切替式二段過給機ターボシステムに係り、特にその構造の簡素化及び信頼性の向上を図る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
切替式二段過給機ターボシステムは、内燃機関から排出される排気ガスを二段階に設置された過給機のタービンにそれぞれ通すことにより、排気エネルギを有効に回収することができるようにしたものである。このターボシステムの場合、排気ガスを高圧段の過給機のタービンに通さずに、低圧段の過給機のタービンに直接送るといった態様の制御を行うためにバイパスポートが別途必要となる。
【0003】
そのため、従来のターボシステムの場合、図5に示すように内燃機関1の排気マニホールド3に高圧段の過給機のタービン(一段目のタービンともいう)10を接続するための第1の排気口26と、低圧段の過給機のタービン(二段目のタービンともいう)11を接続するための第2の排気口(バイパスポート)27とを設け、第1の排気口26には一段目のタービンの入口10aが接続され、第2の排気口27にはバイパス管28が接続され、このバイパス管28と一段目のタービン10の出口10bとが二段目のタービン11の入口11aに分岐管29を介して接続されている。一段目のタービン10の出口10bと分岐管29は接続管30を介して接続されている。前記バイパス管28の出口には切替弁14が設けられている。
【0004】
なお、関連する技術としては、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−229250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記切替式二段過給機ターボシステムにおいては、内燃機関の排気マニホールド3に二つの排気口26,27を設ける必要があるため、排気マニホールド3の形状が複雑化して鋳物成形の困難化や加工工数及びバイパス管28、分岐管29、接続管30並びにこれらの接続部を含む部品点数の増加を招き、生産性及び信頼性の低下やコストの増大を来すという問題がある。また、前記ターボシステムは、排気口が一つの既存型の排気マニホールドには適用することができない。
【0007】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、加工工数及び部品点数の削減、生産性及び信頼性の向上並びにコストの低減が図れ、既存型の排気マニホールドにも適用可能な切替式二段過給機ターボシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、内燃機関に高圧段の過給機及び低圧段の過給機を接続した切替式二段過給機ターボシステムにおいて、前記内燃機関の排気マニホールドに単一の排気口を設け、前記高圧段の過給機のタービンの入口及び出口と隣接する排気バイパス用の入口及び出口を有する排気バイパス通路を前記タービンに一体に設け、前記タービンの入口及び排気バイパス通路の入口を有する端部と前記排気口を互いに接続可能とし、前記排気バイパス通路に該排気バイパス通路の出口を開閉する切替弁を設けたことを特徴とする。
【0009】
前記高圧段の過給機のタービンの入口と前記排気バイパス通路の入口とが入口側隔壁を介して隣接して形成されていることが好ましい。
【0010】
前記高圧段の過給機のタービンの出口及び排気バイパス通路の出口を有する端部と前記低圧段の過給機のタービンの入口の端部を接続可能としていることが好ましい。
【0011】
前記高圧段の過給機のタービンの出口と前記排気バイパス通路の出口とが出口側隔壁を介して隣接して形成されていることが好ましい。
【0012】
前記高圧段の過給機のタービンの入口及び前記排気バイパス通路の入口を有する端部と前記排気口が第1のフランジ継ぎ手により接続され、前記高圧段の過給機のタービンの出口及び前記排気バイパス通路の出口を有する端部と前記低圧段の過給機のタービンの入口の端部とが第2のフランジ継ぎ手により接続されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、加工工数及び部品点数の削減、生産性及び信頼性の向上並びにコストの低減が図れ、既存型の排気マニホールドにも適用可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本願発明の実施形態に係る切替式二段過給機ターボシステムを概略的に示す図である。
【図2】同切替式二段過給機ターボシステムの全体構成を概略的に示す図である。
【図3】図1のターボシステムにおける一段目の過給機の構成を示す図である。
【図4】図1のA−A線端面図である。
【図5】従来の切替式二段過給機ターボシステムを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を実施するための形態を添付図面に基いて詳述する。
【0016】
先ず、切替式二段過給機ターボシステムSの全体構成について、図2に基いて説明すると、1は例えばディーゼルエンジン等の内燃機関であり、この内燃機関1の一側には吸気マニホールド2が設けられ、他側には排気マニホールド3が設けられている。吸気マニホールド2には吸気通路4が接続され、排気マニホールド3には排気通路5が接続されている。
【0017】
この吸気通路4には、高圧段の過給機T1のコンプレッサ6と、低圧段の過給機T2のコンプレッサ7(一段目のコンプレッサともいう)とが吸気マニホールド2側から順に設けられていると共に、高圧段のコンプレッサ(二段目のコンプレッサともいう)6をバイパスする吸気バイパス通路8が設けられ、この吸気バイパス通路8には吸気バイパス弁9が設けられている。
【0018】
また、前記排気通路5には、高圧段の過給機T1のタービン(一段目のタービンともいう)10と、低圧段の過給機T2のタービン(二段目のタービンともいう)11が排気マニホールド3側から順に設けられていると共に、一段目のタービン10をバイパスする大流量の排気バイパス通路12と、二段目のタービン11をバイパスする小流量のウエストゲート通路13とが設けられ、排気バイパス通路12には排気バイパス弁である切替弁14が設けられ、ウエストゲート通路13にはウエストゲート弁15が設けられている。
【0019】
この場合、図1に示すように、排気マニホールド3には単一の排気口16が設けられている。また、一段目のタービン10にはその入口10a及び出口10bと隣接する排気バイパス用の入口12a及び出口12bを有する排気バイパス通路12が一体に設けられ、この排気バイパス通路12の出口12bには切替弁(排気バイパス弁)14が設けられている。なお、具体的には、タービン10はタービンケーシング10xと、このタービンケーシング10x内に回転可能に支持されたタービン翼車10yとからなり、そのタービンケーシング10xに入口10a、出口10b及びバイパス通路12が設けられている。
【0020】
一段目のタービン10の入口10aと排気バイパス通路12の入口12aとが入口側隔壁17aを介して隣接して形成されている(図4参照)と共に、前記一段目のタービン10の出口10bと前記排気バイパス通路12の出口12bとが出口側隔壁17bを介して隣接して形成されている。
【0021】
一段目のタービン10の入口10a及び排気バイパス通路12の入口12aを有する端部と排気口16が同形(同じ大きさ及び形状)に形成され、互いに接続可能とされている。この場合、一段目のタービン10の入口10a及び排気バイパス通路12の入口12aを有する端部と排気口16の端部とが第1のフランジ継ぎ手18により接続されている。この第1のフランジ継ぎ手18として、前記排気口16の端部に一方のフランジ部18aが形成され、一段目のタービン10の入口10a及び排気バイパス通路12の入口12aを有する端部に他方のフランジ部18bが形成されている。
【0022】
また、前記一段目のタービン10の出口10b及び排気バイパス通路12の出口12bを有する端部と二段目のタービン11の入口11aが同形に形成され、互いに接続可能とされている。この場合、一段目タービン10の出口10b及び排気バイパス通路12の出口12bを有する端部と二段目のタービン11の入口11aの端部とが第2のフランジ継ぎ手19により接続されている。この第2のフランジ継ぎ手19として、一段目のタービン10の出口10b及び排気バイパス通路12の出口12bを有する端部に一方のフランジ部19aが形成され、二段目のタービン11の入口11aの端部に他方のフランジ部19bが形成されている。
【0023】
排気バイパス通路12の出口12b側にはその該出口12bを開閉する前記切替弁14が設けられている。本実施例では、切替弁14はバイパス通路12の出口12bに設けられている。この切替弁14は、図3に示すように支軸20を介して揺動開閉可能に設けられたスイング式弁からなり、切替弁14を操作ロッド21を介して開閉駆動するアクチュエータ22を備えている。このアクチュエータ22は、切替弁14を開弁方向に付勢するバネ23及び該バネ23の付勢力に抗して切替弁14を負圧により閉弁方向に駆動するダイアフラム24を備えている。前記アクチュエータ22は、高圧段過給機T1又は低圧段過給機T2の適当な個所にブラケット31を介して設置されている。
【0024】
そして、内燃機関の運転状態に応じて切替式二段過給機ターボシステムSを制御する制御部25は、二段過給を行う時には前記アクチュエータ22に負圧をかけることにより切替弁14を閉じ(図3の示す状態)、排気ガスを一段目及び二段目のタービン10,11に順に通すように構成されており、一段過給を行う時にはアクチュエータ22の負圧を開放することにより切替弁14を開け、排気マニホールド3からの排気ガスを排気バイパス通路12を介して二段目のタービン11に直接送るように構成されている。
【0025】
以上の構成からなる切替式二段過給機ターボシステムSによれば、内燃機関1に高圧段の過給機T1及び低圧段の過給機T2を接続した切替式二段過給機ターボシステムSにおいて、内燃機関1の排気マニホールド3に単一の排気口16を設け、高圧段の過給機T1のタービン10の入口10a及び出口10bと隣接する排気バイパス用の入口12a及び出口12bを有する排気バイパス通路12を前記タービン10に一体に設け、タービン10の入口10a及び排気バイパス通路12の入口12aを有する端部と排気口16の端部を互いに接続可能とし、排気バイパス通路12の出口12bに切替弁14を設けているため、加工工数及び部品点数の削減、省スペース化、生産性及び信頼性の向上並びにコストの低減が図れ、単一の排気口を有する既存型の排気マニホールドにも適用することができる。
【0026】
この場合、一段目のタービン10の入口10aと排気バイパス通路12の入口12aとが入口側隔壁17aを介して隣接して形成ており、また、一段目のタービン10の出口10bと排気バイパス通路12の出口12bとが出口側隔壁17bを介して隣接して形成されているため、一段目のタービン10に排気バイパス通路12を容易に設けることができ、バイパス通路12を有する一段目のタービン10を鋳物成形により容易に形成することができる。
【0027】
タービン10の出口10b及び排気バイパス通路12の出口12bを有する端部と低圧段の過給機T2のタービン11の入口11aの端部を接続可能としているため、部品点数の削減、組付性の向上及びコストの低減が図れる。
【0028】
一段目のタービン10の入口10a及び排気バイパス通路12の入口12aを有する端部と前記排気口16が第1のフランジ継ぎ手18により接続され、一段目のタービン10の出口10b及び排気バイパス通路12の出口12bを有する端部と第二段目のタービン11の入口11aの端部とが第2のフランジ継ぎ手19により接続されているため、接続点(フランジ数)を減らすことができ、組付性及び信頼性の向上が図れる。
【0029】
切替弁14がスイング式弁からなり、切替弁14を操作ロッド21を介して開閉駆動するアクチュエータ22は、切替弁14を開弁方向に付勢するバネ23及び該バネ23の付勢力に抗して切替弁14を負圧により閉弁方向に駆動するダイアフラム24を備えているため、バイパス通路12の開閉を確実に行うことができ、信頼性の向上が図れる。
【0030】
なお、切替弁は、バイパス通路の入口側もしくは二段目のタービンの入口に設けられていても良い。また、切替弁は、バタフライ弁からなっていても良い。また、切替弁を開閉駆動するアクチュエータは電制モータ式もしくは正圧制御のエアシリンダ式でもよい。
【符号の説明】
【0031】
S 切替式二段過給機ターボシステム
T1 高圧段の過給機
T2 低圧段の過給機
1 内燃機関
3 排気マニホールド
10 一段目のタービン
11 二段目のタービン
12 排気バイパス通路
14 切替弁
16 排気口
21 操作ロッド
22 アクチュエータ
23 バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に高圧段の過給機及び低圧段の過給機を接続した切替式二段過給機ターボシステムにおいて、前記内燃機関の排気マニホールドに単一の排気口を設け、前記高圧段の過給機のタービンの入口及び出口と隣接する排気バイパス用の入口及び出口を有する排気バイパス通路を前記タービンに一体に設け、前記タービンの入口及び排気バイパス通路の入口を有する端部と前記排気口を互いに接続可能とし、前記排気バイパス通路に該排気バイパス通路の出口を開閉する切替弁を設けたことを特徴とする切替式二段過給機ターボシステム。
【請求項2】
前記高圧段の過給機のタービンの入口と前記排気バイパス通路の入口とが入口側隔壁を介して隣接して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の切替式二段過給機ターボシステム。
【請求項3】
前記高圧段の過給機のタービンの出口及び排気バイパス通路の出口を有する端部と前記低圧段の過給機のタービンの入口の端部を接続可能としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の切替式二段過給機ターボシステム。
【請求項4】
前記高圧段の過給機のタービンの出口と前記排気バイパス通路の出口とが出口側隔壁を介して隣接して形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の切替式二段過給機ターボシステム。
【請求項5】
前記高圧段の過給機のタービンの入口及び前記排気バイパス通路の入口を有する端部と前記排気口が第1のフランジ継ぎ手により接続され、前記高圧段の過給機のタービンの出口及び前記排気バイパス通路の出口を有する端部と前記低圧段の過給機のタービンの入口の端部とが第2のフランジ継ぎ手により接続されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の切替式二段過給機ターボシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−140888(P2012−140888A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293711(P2010−293711)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】