説明

刈払機のギアボックス構造

【課題】 ギアボックスに内に充填されたグリスを、従動側ベベルギアと駆動側ベベルギアの噛み合い部に供給して両ベベルギアの磨耗を抑制して耐久性の向上を図り、噛み合い音の発生を防止し、グリスの寿命の延長を図り、さらに経済的なギアボックスを提供する。
【解決手段】 従動側ベベルギア10が設けられた刈刃6の回転軸5に、前記従動側ベベルギア10に隣接させて、該従動側ベベルギア10の方向に上昇する螺旋状の羽根12を周囲に形成した回転体13を設けたことを特徴とする刈払機のギアボックス構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈払機のギアボックス構造に関し、詳しくは、両ベベルギア間に潤滑油(以下「グリス」という。)を自動的及び強制的に供給する刈払機のギアボックス構造に関する。
【背景技術】
【0002】
刈払機は、図3及び図4に示すように、駆動源としての小型空冷2サイクル等のエンジン本体1と、該エンジン本体1から延長された伝動軸2と、該伝動軸2を内蔵した操作桿3と、それらの先端に設けられたギアボックス4と、該ギアボックス4から突出させられた回転軸5と、該回転軸5の先端に取り付けられた刈刃6と、前記操作桿3の適位置に設けられた操作ハンドル7等によって構成されている。
【0003】
前記ギアボックス4には、図3に示すように、前記操作桿3及び該操作桿3に内蔵された前記伝動軸2と所定角度を保って、前記回転軸5がベアリング8、ベアリング9によって支持され、該回転軸5の前記ベアリング8と前記ベアリング9との間に従動側ベベルギア10が設けられている。そして、該従動側ベベルギア10に前記伝動軸2の先端に設けられた駆動側ベベルギア11が噛み合わされて構成されている。
【0004】
前記構成にあっては、その構造上、前記ベアリング9と前記従動側ベベルギア10との間は前記回転軸5のみとなり、したがって、前記ギアボックス4内には前記回転軸5の周囲に比較的大きな空間Sが形成されていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記構成のギアボックス4の内部、すなわち、前記空間S部に、前記従動側ベベルギア10と前記駆動側ベベルギア11との噛み合い部の潤滑を高め、磨耗を低減するために前記空間S部にグリスGが充填されている。
【0006】
しかしながら、前記構成のギアボックス4では、前記回転軸5、前記従動側ベベルギア10及び前記駆動側ベベルギア11の回転に伴う遠心力等によって前記空間S部に充填されたグリスGが脇に追いやられて前記ギアボックス4の内側面に付着したままとなり、また、作業時の振動等により自然に垂下する等してグリスGが前記ギアボックス4内の定位置に静止された状態となり、さらに静止させられたグリスが経時変化により変色する等して、前記ギアボックス4に充填されたグリスGが十分に潤滑の機能を発揮せず磨耗低減に寄与しない現象が生じていた。
【0007】
本発明は、前記のような従来の問題を解決するものであり、前記ギアボックス4内に充填された前記グリスGを、前記回転軸5と一体に回転する回転体を設けて流動化させるとともに、前記従動側ベベルギア10と前記駆動側ベベルギア11との噛み合い部に自動的及び強制的に供給するように構成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的達成のために、本発明にかかる刈払機のギアボックス構造は、従動側ベベルギア10が設けられた刈刃の回転軸5に、前記従動側ベベルギア10に隣接させて、該従動側ベベルギアの方向に上昇する螺旋状の羽根12を周囲に形成した回転体13を設けたものである。
【0009】
前記構成のギアボックス4も、従来と同様に前記従動側ベベルギア10、前記駆動側ベベルギア11及び前記ベアリング8、前記ベアリング9によって囲まれた空間S部に前記従動側ベベルギア10と前記駆動側ベベルギア11との噛み合い分の潤滑を高め、磨耗を低減するためのグリスが充填される。
【0010】
つぎに、前記エンジン本体1の駆動により、前記伝動軸2、前記駆動側ベベルギア11、前記従動側ベベルギア10、前記回転軸5を介して前記刈刃6が回転させられると、前記回転軸5に設けられた前記回転体13も一体に回転させられる。なお、前記回転軸5の回転は、前記回転体13の螺旋状の羽根12が前記グリスGを上方に押し上げる方向に行われる。
【0011】
その結果、前記回転体13の前記螺旋状の羽根12によって、前記ギアボックス4の内部に充填された前記グリスGが、前記駆動側ベベルギア11と前記従動側ベベルギア10の噛み合い部に自動的及び強制的に供給されるものである。
【発明の効果】
【0012】
前記のごとく、前記ギアボックス4の内部に充填された前記グリスGが前記駆動側ベベルギア11と前記従動側ベベルギア10との間に強制的かつ自動的に供給されることにより、前記駆動側ベベルギア11と前記従動側ベベルギア10の磨耗が抑制されて耐久性が向上させられる。また、噛み合わせ音の発生も防止され、さらに流動化させることによりグリスGの寿命が延長される。
【0013】
さらに、前記回転体13を設けることにより、該回転体13及び螺旋状の羽根12の体積分だけ従来よりも前記空間Sが狭められる。したがって、前記ギアボックス4の内部に充填されるグリスGの量も従来よりも減少させられる。しかしながら、本発明によれば、従来以上の潤滑効果及び前記駆動側ベベルギア11及び前記従動側ベベルギア10の磨耗低減効果を継続して確保できるため経済的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施一形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の一形態を示すギアボックスの要部断面図、図2は、図1の要部の分解斜視図、図3は、従来のギアボックスの要部断面図、図4は、刈払機の斜視図である。
【0015】
本発明では、図1及び図2に示すように、従動側ベベルギア11が設けられた回転軸5の適位置に回転体13が設けられる。具体的には、前記従動側ベベルギア11と一方のベアリング9の間に、前記従動側ベベルギア10に隣接させて前記回転体13が設けられる。
【0016】
前記回転体13は、前記従動側ベベルギア10方向に上昇する螺旋状の羽根12が周囲に形成されている。なお、該螺旋状の羽根12を有する回転体13は、プラスチックの成形加工等により製造することができる。また、前記回転軸5に対する前記回転体13の組み付けは、前記従動側ベベルギア10の圧入に続いて前記回転軸5の係合部に圧入することにより行われる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明によれば、ギアボックス内部の駆動側ベベルギアと従動側ベベルギアとの噛み合わせ部に自動的及び強制的にグリスを供給することができ、両ベベルギアの磨耗を抑制して耐久性の向上を図り、噛み合い音の発生を防止でき、グリスの寿命の延長を図ることができ、さらに経済的であり、刈払機に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の一形態を示すギアボックスの要部断面図である。
【図2】図1の要部分解斜視図である。
【図3】従来のギアボックスの要部断面図である。
【図4】刈払機の斜視図である。
【符号の説明】
【0019】
5 回転軸
10 従動側ベベルギア
12 螺旋状の羽根
13 回転体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
従動側ベベルギアが設けられた刈刃の回転軸に、前記従動側ベベルギアに隣接させて、該従動側ベベルギアの方向に上昇する螺旋状の羽根を周囲に形成した回転体を設けたことを特徴とする刈払機のギアボックス構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−7742(P2010−7742A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−166700(P2008−166700)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000215187)追浜工業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】