説明

列車運転システム及び地上側運転装置

【課題】デッドマン装置が動作し運転士が操縦できなくなった列車に対して、乗客の安全を考え、地上からの遠隔操作により、列車を最寄りの駅や目的の位置まで移動できる手段を備えた列車運転システム及び地上側運転装置を提供する。
【解決手段】列車13を運行させる車上側運転装置1と、運転士23が操縦できないことを検出して車上側運転装置1による列車の運行を止めるデッドマン装置と、デッドマン装置が列車の運行を止めたときに、デッドマン装置動作信号を送信する車上側車両情報伝送装置16と、列車13を遠隔操縦する地上側運転装置20と、デッドマン装置動作信号を受信し、運転装置遠隔操作信号を送信する地上側車両情報伝送装置18と、を備え、運転士23の車上側運転装置の操縦による通常運転モード又は地上側運転装置20からの遠隔操縦信号による緊急運転モードで、列車の運行を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車運転システム及び地上側運転装置に係り、特に運転士が列車を操縦できなくなり、列車の運転台に搭載されたデッドマン装置が動作した場合に、乗客を乗せた列車を迅速にかつ安全に移動させ、早期に路線の運転再開をするためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の列車運転システムは、自動列車制御(ATC)装置と自動列車運転(ATO)装置からの指示により、運転士が主幹制御器及びブレーキ指令器を操作して列車を安全に運行させる。図1に示すように、ATC装置では、列車13が走るレール10がある長さごとに電気的に区分されたブロックが形成され、地上装置が、ブロックごとに列車に許容する速度情報を送出する。列車の車軸に結合された速度センサ7は、車軸の回転に応じて速度パルスを発信する。ATC車上装置であるATC制御部4では、ATCアンテナ5の出力,速度パルスに基づいてブレーキ指令を出力する。列車13は、駆動制御装置8及びブレーキ制御装置9により、走行し停止する(特許文献1参照)。
【0003】
ATO装置は、ATO地上装置からの指令に基づき、列車13の走行を自動運転する装置であり、出発指令を受信して列車を発車させ、減速指令を受信して列車を停止させる。
【0004】
主幹制御器には、デッドマン装置が装備されており、運転士が何らかの原因で運転操作をできなくなった状態(具体的には、運転士が主幹制御器のハンドルから手を離した時や、運転士が運転席の足元にあるペダルから足を離した時などをいう)になると、自動で非常ブレーキを作動させる。
【特許文献1】特開2001−258107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術では、デッドマン装置動作後、停止した列車を移動する機能はなく、列車停止後、速やかに通常の路線状態に回復することは困難であるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、列車を運行させる車上側運転装置と、運転士が前記列車を操縦できないことを検出して前記車上側運転装置による列車の運行を止めるデッドマン装置と、該デッドマン装置が列車の運行を止めたときに、デッドマン装置動作信号を送信する車上側車両情報伝送装置と、前記列車を遠隔操縦する地上側運転装置と、デッドマン装置動作信号を受信し、運転装置遠隔操作信号を送信する地上側車両情報伝送装置と、を備え、運転士の車上側運転装置の操縦による通常運転モード又は地上側運転装置からの遠隔操縦信号による緊急運転モードで、列車の運行を行う列車運転システムである。
【0007】
また、本発明は、前記地上側運転装置は、前記デッドマン装置動作信号を受け取ると、緊急運転モードでの列車の運行が可能となる列車運転システムである。
【0008】
そして、本発明は、前記地上側運転装置は、前記車上側情報伝達装置からの列車前方景色の映像を受信して表示し、操作者の操作を受けて前記列車の運転信号を前記車上側車両情報伝送装置へ送出する列車運転システムである。
【0009】
更に、本発明は、前記車上側運転装置は、前記地上側車両情報伝送装置から緊急指令情報を受け取ると、通常運転モードから緊急運転モードへ切り換える列車運転システムである。
【0010】
また、本発明は、デッドマン装置動作信号を受信し、車上側情報伝達装置からの列車前方景色の映像を受信して表示し、操作者の操作を受けて前記列車の運転信号を前記車上側車両情報伝送装置へ送出する地上側運転装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、運転士が列車を操縦できなくなり、デッドマン装置が動作したときに、地上側からの操作により列車を最寄り駅や目的の場所まで移動させる機能をもたせ、乗客を乗せた列車を安全かつ速やかに移動できるようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を実施するための最良の形態を説明する。
以下、本発明の列車運転システム及び地上側運転装置の実施例について、図面を用いて説明する。
【実施例】
【0013】
実施例を説明する。本実施例の列車運転システムを図2及び図3に示す。地上側に設置され、地上側車両情報伝送装置18と接続された運転モード切り換え指令装置19が『通常』位置にあるとき、従来の列車運転システムと同一の機能を有し、かつ動作する。
【0014】
運転士23が列車13を操縦できない状態になり、車上運転台1に設置されたデッドマン装置(図示せず)が動作すると、デッドマン装置動作信号を、車両側車両情報伝送装置16から送出する。地上側車両情報伝送装置18がデッドマン装置動作信号を受信すると、運転モード切り換え指令装置19を『通常』運転モード位置から『緊急』運転モード位置へ、手動で切り換えることが可能となる。運転モード切り換え指令装置19が『緊急』運転モード位置にあるとき、地上側車両情報伝送装置18から緊急指令情報を送出する。緊急指令情報は、車両側車両情報伝送装置16で受信され、ATC受信部2が検知する。緊急指令情報を受けた列車13は、緊急指令情報受信を検知したATC受信部2が、自列車が『緊急』運転モード状態であるか否かを判断し、『緊急』運転モード状態を検知した場合に、運転モード切り換え装置14へ、『通常』運転モード位置から『緊急』運転モード位置への切り換え指令(電気信号)を与える。運転モード切り換え装置14は、『緊急』運転モード位置への切り換え指令により、地上運転台20の操作による列車の運行が可能となるように電気回路(地上運転台指令回路)が構築されている。
【0015】
地上運転台20の詳細説明図を図4に示す。地上運転台20は、車上運転台1と同様な構成であり、モニタ装置24と地上主幹制御器25を備えている。地上主幹制御器25は、操作者の操作を受けて、例えば徐行運転指令及びブレーキ指令を与えることができる。
【0016】
列車13に地上運転台指令回路が構築されると、列車13の現在地から最寄り駅または目的の位置までの区間は、徐行速度で移動するように設定し、ATCにより列車の走行速度を制御する。
【0017】
また、列車13からデッドマン装置動作信号を送出すると、列車外に4箇所(列車13の前後左右各方向)と列車内に5箇所(運転室及び客室4方向)に設置されたカメラ15が周囲の状況を撮影する。撮影されたカメラ映像は、列車13に設置された車上側車両情報伝送装置16から地上側車両情報伝送装置18へ送られ、地上運転台20のモニタ装置24に映される。
【0018】
以上の状態が整備され、地上側運転装置側から、モニタ装置24により列車13の状況を確認しながら地上主幹制御器25を操作することで、最寄り駅や目的の位置まで列車13を移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来の列車運転システムの車上装置の系統構成を示すブロック図。
【図2】実施例の列車運転システムにおける車上装置の系統構成を示すブロック図。
【図3】実施例の列車側(車上)・地上装置全体の系統構成を示すブロック図。
【図4】実施例における地上運転台の構成要素を示す説明図。
【符号の説明】
【0020】
1 車上運転台
2 ATC受信部
3 ATO伝送部
4 ATC車上制御部
5 ATCアンテナ
6 台車
7 速度センサ
8 駆動制御装置
9 ブレーキ制御装置
10 軌道
11 ATC信号
12 列車無線装置
13 列車(車両)
14 運転モード切り換え装置
15 車外及び車内カメラ
16 車両情報伝送装置(車両側)
17 車両情報
18 車両情報伝送装置(地上側)
19 運転モード切り換え指令装置
20 地上運転台
21 ATC信号
22 ATC地上装置
23 運転士
24 モニタ装置
25 地上主幹制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車を運行させる車上側運転装置と、運転士が前記列車を操縦できないことを検出して前記車上側運転装置による列車の運行を止めるデッドマン装置と、該デッドマン装置が列車の運行を止めたときに、デッドマン装置動作信号を送信する車上側車両情報伝送装置と、前記列車を遠隔操縦する地上側運転装置と、デッドマン装置動作信号を受信し、運転装置遠隔操作信号を送信する地上側車両情報伝送装置と、を備え、運転士の車上側運転装置の操縦による通常運転モード又は地上側運転装置からの遠隔操縦信号による緊急運転モードで、列車の運行を行うことを特徴とする列車運転システム。
【請求項2】
請求項1記載の列車運転システムにおいて、
前記地上側運転装置は、前記デッドマン装置動作信号を受け取ると、緊急運転モードでの列車の運行が可能となることを特徴とする列車運転システム。
【請求項3】
請求項2記載の列車運転システムにおいて、
前記地上側運転装置は、前記車上側情報伝達装置からの列車前方景色の映像を受信して表示し、操作者の操作を受けて前記列車の運転信号を前記車上側車両情報伝送装置へ送出することを特徴とする列車運転システム。
【請求項4】
請求項1記載の列車運転システムにおいて、
前記車上側運転装置は、前記地上側車両情報伝送装置から緊急指令情報を受け取ると、通常運転モードから緊急運転モードへ切り換えることを特徴とする列車運転システム。
【請求項5】
デッドマン装置動作信号を受信し、車上側情報伝達装置からの列車前方景色の映像を受信して表示し、操作者の操作を受けて前記列車の運転信号を前記車上側車両情報伝送装置へ送出することを特徴とする地上側運転装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−29143(P2008−29143A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−200237(P2006−200237)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】