到来角推定システム、通信装置、並びに通信システム
【課題】近距離で十分な見通し可能な状況下で、複数のアンテナを装備した無線通信装置が簡素で小型、低コストな構成によりフレームの到来角を推定する。
【解決手段】指向特性が互いに偏向するように配置された2つの指向性アンテナからなる送信装置から、送信に用いるアンテナを短い間隔で交互に切り替えながらフレームを送信する。受信装置は、送信に用いたアンテナ毎に受信フレームの信号強度の平均値を求める。そして、送信装置の正面が受信装置の正面に正対しているときに差分ΔSが0となり、送信装置の受信装置のなす角度の差が大きくなるにつれてΔSは徐々に増加又は減少する性質を利用して到来角を推定する。
【解決手段】指向特性が互いに偏向するように配置された2つの指向性アンテナからなる送信装置から、送信に用いるアンテナを短い間隔で交互に切り替えながらフレームを送信する。受信装置は、送信に用いたアンテナ毎に受信フレームの信号強度の平均値を求める。そして、送信装置の正面が受信装置の正面に正対しているときに差分ΔSが0となり、送信装置の受信装置のなす角度の差が大きくなるにつれてΔSは徐々に増加又は減少する性質を利用して到来角を推定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波の到来角を推定する到来角推定システム、通信装置、並びに通信システムに係り、特に、例えばIEEE802.11などの無線LANを搭載した無線通信端末において利用される到来角推定システム、通信装置、並びに通信システムに関する。
【0002】
さらに詳しくは、本発明は、比較的近距離で十分な見通しを得ることができる状況下で用いられ、簡素で小型、低コストに構成される到来角推定システム、通信装置、並びに通信システムに係り、特に、複数のアンテナを装備した無線通信装置において利用される到来角推定システム、通信装置、並びに通信システムに関する。
【背景技術】
【0003】
旧来の有線通信方式における配線から解放するシステムとして、無線ネットワークが注目されている。例えば、IEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11a/b、gといった無線LAN(Local Area Network)規格が代表的である。無線LANによれば柔軟なインターネット接続が可能であり、既存の有線LANを置き換えるだけでなく、ホテルや空港ラウンジ、駅、カフェといった公共の場所でもインターネット接続手段を提供することができる。
【0004】
無線通信の多くは、受信装置では直接波と複数の反射波・遅延波の重ね合わせが到来するというマルチパス環境下でデータ伝送が行なわれるので、マルチパスにより遅延ひずみが生じ、通信に誤りが引き起こされるおそれがある。このため、IEEE802.11a/gなどの無線LANの標準規格では、マルチキャリア方式の1つであるOFDM変調方式が採用されている。OFDM伝送システムでは、送信データを周波数が直交する複数のキャリアに分配して伝送するので、各キャリアの帯域が狭帯域となり、周波数利用効率が非常に高く、周波数選択性フェージング妨害に強いという特徴がある。
【0005】
無線LANは既に広範に普及しているが、最近では、パーソナル・コンピュータ(PC)などの情報機器だけでなく、デジタルカメラや音楽プレーヤ、携帯電話などの小型軽量のCE(Consumer Electronics)機器にも無線LAN機能を搭載することが一般的となりつつある。無線通信の多くは無指向アンテナにより柔軟な接続を可能にする。これに対し、携帯機器に無線LANが搭載された場合にはアンテナが小型であることが求められ、また、指向性アンテナを用いて、比較的近い距離において機器をかざした特定の通信相手と接続するといったアプリケーションが想定される。このようなアプリケーションでは、電波の到来角を検出若しくは推定する技術が必要になってくる。
【0006】
電波の到来角を検出する技術はこれまでにも数多研究されており、代表的なものには、OFDM技術を利用した空間スペクトラムに基づく手法や、MUSIC((MUltiple SIgnal Classifcation)アルゴリズム、ESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Techinique)アルゴリズムが挙げられる。ここで、MUSIC法はアレーアンテナを利用し、アレーアンテナ受信信号から得られる相関行列の固有値、固有ベクトルを求め、角度スペクトラムを計算する。ESPRIT法も、MUSIC法と同様アレーアンテナ受信信号から得られる相関行列の固有値、固有ベクトルを求めるが、サブアレーアンテナ間の回転不変式の関係を基に電波の到来角を推測する点が異なる。また、ATR(Advanced Telecommunications Research Institute International:国際電気通信基礎技術研究所)により開発された電子走査導波器アンテナ(エスパアンテナ)は、円形に配置されたアンテナ素子に素子間相互結合により指向性ビームを生成し、電波の到来角を走査することができる。
【0007】
上記の信号到来方向推定技術はいずれも、マルチパス環境においても到来角の高い推測精度を得ることが可能であり、障害物が存在しても±3〜5度の精度で推定を行なうものである。しかしながら、これらは例えばビルなどの数十メートル離間した建物間での測定などを目的とするものであり、次元数の高く且つ大きなサイズのアレイアンテナなど特別な仕組みを持つアンテナを必要とするとともに、複雑な計算処理を伴う高価なシステムであり、小型機器へ搭載することは容易でない。
【0008】
無線LANを搭載した小型機器では、簡素、小型で低コストに構成される到来角推定方法が望ましい。電波の発信源と到来角の推測を行なうシステム間の距離は2メートル程度を想定しており、見通しが得られるときにはマルチパスの影響をそれほど考慮しないで済むので、概ね30〜40度程度の精度が得られればよい。
【0009】
また、2つシステム間の距離が十分に近ければ、2つのシステム間になんらかの障害物があっても人間は知覚を利用して見通しを得るための操作を行なうことができ、それを回避する手段をとることが可能である。例えば、電波の発信源が到来角の推測を行なうシステムのいずれか一方が携帯できる形状の装置である場合、2つのシステムの間に障害物があれば、システムの利用者は、携帯装置を持ったまま障害物の影響を受けない位置まで移動する、障害物を取り除く、あるいは到来角の推測が機能しないことを理解し推測操作を行なわないといった行動をとれば済む。
【0010】
例えば、2基の開口面アンテナをそれぞれリッジドウェーブガイドホーンとし、2基の開口面アンテナから入力された一対のアンテナ出力信号の和信号及び差信号を出力するハイブリッド回路を備え、2基の開口面アンテナの最大放射方向を含む平面に垂直で且つ2基の開口面アンテナの電気中心の2等分点を通る直線を回転軸として360度回転させることで到来方向を推定する信号到来方向推定装置について提案がなされている(例えば、特許文献1を参照のこと)。同装置によれば、和信号出力と差信号出力を別個の広帯域受信機で測定し、そのデータを時間領域又は周波数領域で積分することで各々の角度における総受信電力を求め、超広帯域信号に対する2つのパターンを得ると、これらの2パターンそれぞれの極大値と極小値が一致している方向を信号の到来方向と推定することができる。
【0011】
しかしながら、アンテナを回転駆動するような回転機構を小型の携帯機器に搭載することは困難であり、このような可動部の存在は装置の耐故障性、メンテナンスなどの問題を招来する。また、かかる信号到来方向推定方法は、受信側にしか適用することができない。
【0012】
【特許文献1】特開2005−156521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、IEEE802.11などの無線LANを搭載した無線通信端末において好適に利用される、優れた到来角推定システム、通信装置、並びに通信システムを提供することにある。
【0014】
本発明のさらなる目的は、比較的近距離で十分な見通しを得ることができる状況下で用いられ、簡素で小型、低コストに構成される、優れた到来角推定システム、通信装置、並びに通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記課題を参酌してなされたものであり、その第1の側面は、送信装置から無線送信されるフレームが受信装置に到来する到来角を推定する到来角推定システムであって、
前記送信装置は、当該装置の正面に対しそれぞれ±θ度だけ指向特性が傾くように配置された2つの指向性アンテナを備え、
前記受信装置は、当該装置の正面に指向特性を持つ指向性アンテナを備え、
前記送信装置から前記の指向性アンテナの各々から交互にフレームを送信した際の、送信アンテナ毎の前記受信装置側におけるフレームの各受信信号強度の比較に基づいて前記到来角を推定する、
ことを特徴とする到来角推定システムである。
【0016】
但し、ここで言う「システム」とは、複数の装置(又は特定の機能を実現する機能モジュール)が論理的に集合した物のことを言い、各装置や機能モジュールが単一の筐体内にあるか否かは特に問わない(以下、同様)。
【0017】
最近、小型の携帯機器にも無線LAN機能が搭載されることが一般的になりつつあるが、機器をかざした特定の通信相手と接続するといったアプリケーションを考慮すると、電波の到来角を検出若しくは推定する技術が必要になってくる。
【0018】
MUSICアルゴリズムやESPRITアルゴリズムといった高精度の信号到来方向推定技術は既に存在するが、これらは特別な仕組みを持つアンテナを必要とするとともに、複雑な計算処理を伴う高価なシステムであり、小型機器へ搭載することはできない。
【0019】
これに対し、本発明に係る到来角推定システムは、正面に対しそれぞれ±θ度だけ指向特性が傾くように配置された2つの指向性アンテナを備えた送信装置と、正面に指向特性を持つ指向性アンテナを備えた受信装置で構成される。
【0020】
無線LANカードを始めとしてほとんどすべての無線機器がダイバーシティを行なうために、2つ以上のアンテナ素子と送受信装置を装備している。このことを利用すれば、2つの指向性アンテナを備えた通信装置を構成することに特段のコスト増を招来することはない。
【0021】
また、主として携帯電話機などの小型機器への適用を考えると、概ね30〜40度程度の精度が得られれば十分であり、半値角40〜120度程度の小型指向性アンテナを用いることが相当である。例えば、1辺の長さが2cm程度の低コストで小型のマイクロストリップ・アンテナを利用することができる。
【0022】
送信装置が備える2つの指向性アンテナは、当該装置の正面に対しそれぞれ±θ度だけ指向特性が傾くように配置される。例えば、受信側との相対角度が0度で強い指向性を持つ2つの送信アンテナをそれぞれ±θ度だけ指向方向を傾けて取り付けるようにしてもよいし、あるいは受信側との相対角度がそれぞれ±θ度だけ傾いたところで強い指向性を持つ2つの送信アンテナを並列に取り付けるようにしてもよい。
【0023】
そして、本発明に係る到来角推定システムでは、前記送信装置の各指向性アンテナから交互にフレームを送信した際の、送信アンテナ毎の前記受信装置側におけるフレームの各受信信号強度の比較に基づいて前記到来角を推定する。
【0024】
具体的には、送信装置から、送信に用いるアンテナを短い間隔で交互に切り替えながらフレームを送信する。一方、受信装置では、受信したフレームに埋め込まれた情報を読み取ると、送信に用いたアンテナ毎に受信フレームの信号強度の平均値を求める。これら2通りの受信信号強度の平均値の差は、送信装置と受信装置間の相対角度の違いにより変化するという性質がある。
【0025】
したがって、送信装置と受信装置の間の角度をさまざまに変化させながら、各送信アンテナから受信したフレームの信号強度の差分ΔSを計測して、ΔSと送信装置及び受信装置間の角度との関係をあらかじめ記憶しておく。そして、送信装置や受信装置は通信を行ないながら、同時に送信アンテナ毎の信号強度からΔSを計測し、以前に計測しておいたデータを参照することにより、現在のΔSの値から送信装置と受信装置の間の角度を推測することができる。
【0026】
ここで、送信アンテナ毎の受信信号強度の差分ΔSには、送信アンテナ毎の送信信号電力に対し、送信アンテナ利得と受信アンテナ利得、伝搬損失が影響する。ここで、各送信アンテナからの送信電力を同一とし、各送信アンテナと受信アンテナ間の伝搬損失も同一であるとみなすと、送信アンテナ毎の受信信号強度の差分ΔSは各送信アンテナの利得の差であると考えることができる。よって、ΔSは2つの指向性アンテナの送信利得によって決定され、受信システムの利得や伝搬損失に依存しないことが分かる。したがって、あらかじめ計測に利用した受信装置と、実際に角度検出に利用する受信装置は同一のものでなくとも良い。また、受信システムと送信システム間の距離もΔSに影響を与えない。
【0027】
本発明で言う「送信装置」、「受信装置」はそれぞれデータ・フレームの送信側、受信側を意味するのではなく、到来角の推定に用いられるフレームの送信側、受信側を意味する。通信シーケンスによっては、データ・フレームの送信側でなく受信側(例えば、データ・フレームに対して確認応答フレームを返す通信機器)が「送信装置」となることもある。
【0028】
送信装置が主体となって到来角の推定に用いられるフレームの転送を行なう方式では、例えば、指向性アンテナを装備した通信装置が送信に用いるアンテナを交互に切り替えながらデータ・フレームを転送し、受信装置側で転送されたデータ・フレームの信号強度を計測する。送信装置側で上位層に転送すべき送信データがない場合には、データ・サイズが0のデータ・フレームを生成して送信する。また、データ・フレームを転送する際には、一定の周期で送信に利用する指向性アンテナを切り替えて、受信装置側で両方のアンテナからほぼ同じ頻度でフレームを受信できるようにする。
【0029】
一方、受信装置が主体となって到来角の推定に用いられるフレームの転送を行なう方式では、到来角を推定する受信装置側が一定間隔でデータ・フレームを送信し、これに対し2つ指向性アンテナを装備した送信装置から返送される確認応答フレームの信号強度を受信装置が計測する。また、受信装置側で上位層に転送すべきデータがない場合は、データ・サイズが0のデータ・フレームを生成し送信する。
【0030】
IEEE802.11では、データ・フレームの転送に対して、受信側からデータ・フレームを受信した際に必ず確認応答フレーム(ACK/NACK)を返送する仕様になっているので、一定間隔でデータ・フレームを送信すると、同様にほぼ一定間隔で確認応答フレームを受信することができる。したがって、このような通信手順を利用することによって、受信装置は、送信アンテナ毎に送信される確認応答フレームの受信信号強度に基づいて到来角の推定を行なうことができる。
【0031】
また、本発明の第2の側面は、送信装置から無線送信されるフレームが受信装置に到来する到来角を推定する到来角推定システムであって、
前記送信装置は、当該装置の正面に指向特性を持つ指向性アンテナを備え、
前記受信装置は、当該装置の正面に対しそれぞれ±θ度だけ指向特性が傾くように配置された2つの指向性アンテナを備え、前記送信装置から送信されるフレームを前記の指向性アンテナを交互に用いて受信した際の受信アンテナ毎のフレームの各受信信号強度の比較に基づいて前記到来角を推定する、
ことを特徴とする到来角推定システムである。
【0032】
このように受信装置において指向性アンテナを利用する場合には、送信装置側にそれぞれ±θ度だけ指向特性が傾くように配置された2つの指向性アンテナを装備した第1の側面に係るシステムとは相違し、送信装置側で送信フレーム中に送信アンテナの情報を格納するなどの特別な処理を必要としない。
【0033】
第2の側面に係る到来角推定システムにおいても、送信装置並びに受信装置のいずれもが主体となって到来角の推定に用いられるフレームの転送を行なうことができる。
【0034】
前者の場合、送信装置がデータ・フレームを転送し、受信装置側では受信アンテナを交互に切り替えながら、データ・フレームの信号強度を計測する。また、送信装置側で上位層に転送すべき送信データがない場合には、データ・サイズが0のデータ・フレームを生成して送信する。また、受信装置は、受信に利用する指向性アンテナを一定の周期で切り替え、両方の受信アンテナからほぼ同じ頻度でフレームを受信できるようにする。
【0035】
また、後者の場合、到来角を推定する受信装置側がいずれかの指向性アンテナを用いて一定間隔でデータ・フレームを送信し、これに対し送信装置から返送される確認応答フレームを受信装置が受信アンテナを交互に切り替えながら受信して、これらの信号強度を計測する。また、受信装置側で上位層に転送すべきデータがない場合は、データ・サイズが0のデータ・フレームを生成し送信する。
【0036】
また、本発明の第3の側面は、送信装置から無線送信されるフレームが受信装置に到来する到来角を推定する到来角推定システムであって、
前記送信装置は、当該装置の正面に対しそれぞれ±θ度だけ指向特性が傾くように配置された2つの指向性アンテナを備え、
前記受信装置は、当該装置の正面に対しそれぞれ±θ度だけ指向特性が傾くように配置された2つの指向性アンテナを備え、前記送信装置から送信されるフレームを前記の指向性アンテナを交互に用いて受信した際の受信アンテナ毎のフレームの各受信信号強度の比較に基づいて前記到来角を推定する、
ことを特徴とする到来角推定システムである。
【0037】
本発明の第3の側面に係る到来角推定システムでは、前記送信装置と前記受信装置の間の角度をさまざまに変化させながら、前記送信装置が送信アンテナを交互に切り替えながら前記受信装置にフレームの送信を行なう。これに対し、前記受信装置が受信アンテナを交互に切り替えながらフレームを受信した際の、受信アンテナ毎に各送信アンテナからの受信信号強度を計測し、その差分ΔSを計算すると、各受信アンテナについて送信アンテナ毎のΔSと前記送信装置及び前記受信装置間の角度との関係をあらかじめ記憶しておく。
【0038】
その後、前記送信装置が送信アンテナを交互に切り替えながら前記受信装置と通信を行なう際には、同時に前記受信装置が受信アンテナを交互に切り替えながら前記送信装置からフレームを受信したときの各受信アンテナにおける受信信号強度を計測する。そして、受信アンテナ毎に現在得られた送信アンテナ間の受信信号強度の差分ΔSを求めると、これらを以前に計測しておいたデータを比較することによって、前記送信装置と前記受信装置の間の角度を推測することができる。
【0039】
このように、受信装置は、受信アンテナ毎に、2つの送信アンテナから交互に送信されたフレームからΔSと送信装置及び受信装置間の角度との関係を得るとともに、2通りの送受信装置間の相対的な角度の判別結果を得ることができる。そして、これら2通りの判別結果に基づいて、よりロバストな到来角の推定を行なうことができる。
【0040】
第3の側面に係る到来角推定システムにおいても、第1及び第2の側面に係るシステムと同様に、送信装置並びに受信装置のいずれもが主体となって到来角の推定に用いられるフレームの転送を行なうことができる。
【0041】
また、本発明の第4の側面は、垂直偏波の性質を持つ2つの指向性アンテナを互いの偏波方向を略90度だけ傾きを以って正面に取り付けた送信装置と、正面に指向特性を持つ指向性アンテナを持つ受信装置を備え、前記送信装置から前記の指向性アンテナの各々から交互にフレームを送信した際の、送信アンテナ毎の前記受信装置側におけるフレームの各受信信号強度の比較に基づいて前記送信装置の水平方向に対する傾きを推定することを特徴とする通信システムである。
【0042】
本発明の第4の側面に係る通信システムによれば、送信装置の水平方向に対する傾きを、簡素で小型、且つ安価な構成により推定することができる。
【0043】
具体的には、前記送信装置の水平方向に対する傾きをさまざまに変化させながら、前記送信装置が送信アンテナを交互に切り替えて前記受信装置にフレームの送信を行なうとともに、前記受信装置がフレームを受信した際の各送信アンテナからの受信信号強度を計測して、送信アンテナ間の差分ΔPを求める。そして、ΔPと前記送信装置及び前記受信装置間の角度との関係をあらかじめ記憶しておく。
【0044】
その後、前記送信装置が送信アンテナを交互に切り替えながら前記受信装置と通信を行なう際に、同時に前記受信装置は前記送信装置の各送信アンテナからフレームを受信したときの受信信号強度を計測して、現在得られた送信アンテナ間の受信信号強度の差分ΔPを以前に計測しておいたデータを比較することにより、前記送信装置の水平方向に対する傾きを推測することができる。
【0045】
ここで、送信装置は、送信アンテナとして複数の給電点が設けられたマイクロストリップ・アンテナを用いることができる。この場合、各アンテナにおける給電点を切り替えることによって、2つの指向性アンテナの偏波の組合せを変更することができる。そして、信号処理の結果と、アンテナ切替制御機構と給電点切替制御機構からのアンテナ情報を基に、通信機器の傾きと相対角度の計測を行なう。このような構成のシステムを用いることにより、1組のアンテナだけで、受信装置と送信装置間の相対角度の検出とともに、送信装置の傾きを検出の2つの機能を行なうことが可能となる。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、比較的近距離で十分な見通しを得ることができる状況下で用いられ、複数のアンテナを装備した無線通信装置を用いて簡素で小型、低コストに構成される、優れた到来角推定システム、通信装置、並びに通信システムを提供することができる。
【0047】
本発明に係る到来角推定システムは、送信装置又は受信装置の少なくとも一方が、正面に対しそれぞれ±θ度だけ指向特性が傾くように配置された2つの指向性アンテナを備え、アンテナを交互に切り替えながらフレームを送信又は受信して、受信装置側において送信又は受信アンテナ間での受信信号強度の差分に基づいて到来角を推定することができる。
【0048】
無線LANカードを始めとしてほとんどすべての無線機器がダイバーシティを行なうために、2つ以上のアンテナ素子と送受信装置を装備していることを考量すると、2つの指向性アンテナを備えた送信装置又は受信装置を構成することに特段のコスト増を招来することはなく、簡素で小型、且つ安価にシステムを構成することができる。また、主として携帯電話機などの小型機器への適用を考えると、概ね30〜40度程度の十分な精度を得ることができる。
【0049】
本発明では、無線通信機器がIEEE802.11に基づく技術を利用することを想定しており、インフラストラクチャ・モード並びにアドホック・モードのいずれのネットワーキングにおいても好適に到来角の推定を行なうことができる。また、IEEE802.11のような既存の無線技術と簡素な指向性アンテナを組み合わせることで、±30度程度の十分な推定精度を実現することができる。
【0050】
本発明のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する本発明の実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳解する。
【0052】
A.アンテナの構成
本発明に係る到来角推定システムは、複数のアンテナを装備する無線通信装置の利用を前提としている。現在、ほとんどの無線通信装置はダイバーシティのための複数のアンテナを装備していることから、一般に入手可能な無線通信装置のほとんどがこの前提条件を満たしている。
【0053】
また、本発明に係る到来角推定システムは、主として携帯電話機などの小型機器への適用を想定しており、概ね30〜40度程度の精度が得られれば十分である。よって、半値角40〜120度程度の小型指向性アンテナを用いることが相当であり、例えば、1辺の長さが2cm程度の低コストで小型のマイクロストリップ・アンテナを利用することができる。
【0054】
図1には、マイクロストリップ・アンテナの構成例とそのインピーダンス整合回路を示している。マイクロストリップ・アンテナは、絶縁性物質を介在物として放射導体と導体地板とを対向して配置することにより構成される。放射導体の形状は、特に決まりはないが、大体において矩形若しくは円形が用いられている。図示の例では、矩形の放射導体板が用いられる。絶縁性物体には誘電体が用いられ、その厚みは概ね、無線周波数の波長λの1/10以下とされ、ゆえに薄型である。
【0055】
実際の製造においては、両面銅張りの誘電体基板をエッチング加工してマイクロストリップ・アンテナを製作されることが多いので、製造が容易であり、又は回路基板との一体化が容易である。最低次モード(矩形の場合はTM10−mode)で励振された場合の放射指向性は、概ねz軸方向の単方向性を示し、数dBi程度の指向性利得が得られる。また、励振させるために給電点は中心より若干オフセットした位置に設けられ、このオフセット長を調節することにより、50オームに整合をとることが可能である。また、給電点のオフセット方向により、アンテナの偏波方向を決定することができる。
【0056】
本発明に係る到来角推定システムは、2以上のアンテナを装備していることと、半値角が40〜120度程度の指向性があることという上述した条件を満たしていれば、送信側又は受信側として通信を行なういずれの通信機器に対しても適用することができる(後述)。
【0057】
図2には、半値角60度の指向性アンテナが持つ指向性の典型的な性質を示している。同図において、X軸は送信アンテナと受信装置間の相対角度を示し、Y軸は受信装置におけるフレームの受信信号強度(RSSI:Receiving Signal Strength Indicator)を示している。
【0058】
送信装置の指向性アンテナから送信された無線フレームを受信装置で受信し、その受信信号強度を計測することによって、指向性アンテナの角度を判別するという到来角を推定する方法が考えられる。単体の指向性アンテナでこの方法を実施する場合には、幾つかの困難がある。図3には指向性アンテナが受信装置に正対しているものの両者の距離はやや離れているシステム構成例を示し、図4では指向性アンテナと受信装置の距離は近いが、指向性アンテナが受信装置に正対していないシステム構成例を示している。これら2通りの状況では、受信側で計測される信号強度はほぼ同じ値となるとしても、信号強度だけからではどちらの状況かを判別することはできない。
【0059】
本発明では、無線LANカードを始めとしてほとんどすべての無線機器がダイバーシティを行なうため、2つ以上のアンテナ素子と送受信装置を装備していることを利用する。
【0060】
通常のダイバーシティでは、無線機器は2つのアンテナ素子と2つのフレーム送受信装置を装備し、複数の受信装置を同時に動作させ、無線フレームをすべての装置で受信する。このような方法をとることで、たとえ1つの受信装置で受信する信号強度が一時的に低下し、データの信頼性が劣化している場合であっても、別の受信装置における信号強度が十分であれば通信は安定して継続することができる。
【0061】
これに対し、本発明では、送受信装置はそれぞれ図2に示したような指向特性を持つ指向性アンテナを装備するが、送信装置10側では互いのアンテナの指向特性が角度を持つように、2つの平面アンテナを傾けて図5に示すように取り付け、受信装置20に対向して配置している。
【0062】
あるいは、図6に示すように偏向した指向特性を持つ各指向性アンテナを並列に配置する(例えば、指向性が互いに傾いた平面アンテナを同一平面上に配置する)ようにしもよい。
【0063】
図5に示した2つの指向性アンテナを傾けて配置したシステム、又は図6に示した指向特性からなる指向性アンテナを用いたシステムのいずれも、2つの指向性アンテナによる指向特性は、図7に示すようになる。同図では、2つのアンテナ素子間の干渉を考慮していないが、実際には、2つのアンテナ素子を近接させるときのアンテナ間の相互結合による影響によって、それぞれのアンテナの指向特性が中央寄りに若干偏向する。このため、それぞれのアンテナの指向特性を個別に計測するのではなく、2つの指向性アンテナを配置した状況で送信装置全体としての指向特性を計測することが好ましい。
【0064】
B.信号強度の計測方法
上述したように、本発明に係る到来角推定システムは、正面に対しそれぞれ±θ度(例えば、θ=30)だけ指向特性が傾くように配置された2つの指向性アンテナを備えた送信装置10と、正面に指向特性を持つ指向性アンテナを備えた受信装置20で構成される。
【0065】
送信装置か10らは、送信に用いるアンテナを短い間隔で交互に切り替えながらフレームを送信する。その際、どちらのアンテナから送信したかを判別するための情報を各送信フレームに付加する。
【0066】
受信装置20では、受信したフレームに埋め込まれた情報を読み取ると、フレームが送信装置10側のどちらのアンテナを利用して送信されたものかを判別する(但し、どちらのアンテナから送信されたものかを判別する具体的な手法については、後述に譲る)。そして、送信に用いたアンテナ毎に受信フレームの信号強度の平均値を求める。このとき、アンテナ1から送信されたフレームの受信信号強度の平均値をSig1、アンテナ2から送信されたフレームの受信信号強度の平均値をSig2とし、2つの信号強度の差ΔSは、ΔS=Sig1−Sig2で求めるものとする。ΔSは指向性アンテナを装着した送信装置10と受信装置20間の相対角度の違いにより変化する。
【0067】
したがって、送信装置10と受信装置20の間の角度をさまざまに変化させながら、各送信アンテナから受信したフレームの信号強度の差分ΔSを計測して、ΔSと送信装置10及び受信装置20間の角度との関係をあらかじめ記憶しておく。その後、送信装置10と受信装置20は通信を行なう際に、同時に信号強度からΔSを計測し、以前に計測しておいたデータを参照することにより、現在のΔSの値から送信装置10と受信装置20の間の角度を推測することができる。
【0068】
但し、本発明で言う「送信装置」、「受信装置」はそれぞれデータ・フレームの送信側、受信側を意味するのではなく、到来角の推定に用いられるフレームの送信側、受信側を意味する。通信シーケンスによっては、データ・フレームの送信側でなく受信側が「送信装置」となることもある。
【0069】
図8には、送信に用いたアンテナ間での受信信号強度の差分ΔSと送信装置10及び受信装置20間の角度との関係を実線で示している。但し、図1に示した指向特性を持つ2つの指向性アンテナを図5に示したようにそれぞれ送信装置10の正面から±30度だけ角度をつけて配置している。また、受信装置20のアンテナは正面方向に指向特性を持つものとする。ちなみに、アンテナ1から送信されたフレームの受信信号強度のSig1、並びにアンテナ2から送信されたフレームの受信信号強度Sig2は、図8中でそれぞれ破線、一点鎖線で示している。
【0070】
図8では、X軸は送信装置10側の各指向性アンテナと受信装置20の相対角度を示し、Y軸は信号強度を示している。同図より、送信装置10と受信装置20の相対角度が0度のとき、すなわち送信装置10の正面が受信装置20の正面に正対しているときには、アンテナ1及びアンテナ2の各々から受信したフレームの信号強度の差分ΔSは0となる。そして、向き合っている送信装置10の正面方向と受信装20置の正面方向のなす角度の差が大きくなるにつれて、ΔSは徐々に増加又は減少していく。
【0071】
本発明に係る到来角推定システムは、図5又は図6に示したように構成されるが、各送信アンテナから受信したフレームの信号強度の差分ΔSと送信装置10及び受信装置20間の角度との関係を利用することによって、送信装置10からの送信フレームが受信装置20に到来する到来角を推定する。まず、送信装置10と受信装置20の間の角度をさまざまに変化させながら、ΔSを計測し、そのデータをあらかじめ当該システムに記録しておく。そして、送信装置10や受信装置20は通信を行ないながら、同時に信号強度からΔSを計測し、以前に計測しておいたデータを参照することにより、現在のΔSの値から送信装置10と受信装置20の間の角度を推測するようにする。
【0072】
いま、受信装置20における受信信号強度をPr[dBm]とすると、Prは以下の式(1)で表すことができる。
【0073】
【数1】
【0074】
上式(1)において、Pt[dBm]は送信装置10における電波の送信電力、Gt[dBi]は送信アンテナの利得、Gr[dBi]は受信アンテナの利得である。また、Γは自由空間における電波の伝搬損失である。ここで、送信装置10に設置された指向性アンテナ1の利得をG1t、送信電力をP1t、伝搬損失をΓ1とし、さらに指向性アンテナ2の利得をG2t、送信電力をP2t、伝搬損失をΓ2とする。指向性アンテナ1及び2をそれぞれ単独で用いて送信された電波を受信装置20で受信したときの受信信号強度をそれぞれP1r[dBm]、P2r[dBm]とすると、これら受信信号強度P1r並びにP2rは以下の式(2)並びに(3)で表すことができる。
【0075】
【数2】
【0076】
送信装置10側で同一の電力を2つの指向性アンテナに与える場合、各送信1及び2からの送信電力P1tとP2tは同値となる。伝搬損失は、Γ1とΓ2は2つの送信アンテナと受信装置20間の距離や障害物、反射物の状況によって変化する値である。本発明では送信装置10側の2つの指向性アンテナの距離は3〜20cm程度であり、送信アンテナと受信アンテナとの距離は3m以内であることを前提としている。したがって、2つの送信アンテナと受信装置20との距離や障害物、反射物の状況はほぼ同一であると仮定することができ、それぞれの伝搬損失Γ1とΓ2も同値とみなすことができる。以上のことから、送信装置10側の2つの指向性アンテナから送られた電波の受信装置20における受信電力の差P1r−P2rは、以下の式(4)で表すことができる。
【0077】
【数3】
【0078】
このP1r−P2rが上述したΔSに相当する。上式(4)に示されるように、ΔSは2つの指向性アンテナの送信利得によって決定され、受信装置20の利得や伝搬損失に依存しないことが分かる。したがって、あらかじめ計測に利用した受信装置20と、実際に角度検出に利用する受信装置20は同一のものでなくとも良い。また、受信装置20と送信装置10間の距離もΔSに影響を与えない。
【0079】
勿論、上述したモデルは理想状況におけるものであり、実際にはΓ1とΓ2が同一とはならない場合が多い。しかしながら、送信装置10が受信装置20に対して、「ほぼ正対している」、「右を向いている」、「左を向いている」といった比較的低精度の判別には十分な精度を得ることができる。
【0080】
図12には、送信装置10の構成を模式的に示している。送信装置10は、指向特性が互いに偏向するように配置された2つの指向性アンテナ1及び2を備えている。以下では、送信装置10が持つ2つの指向性アンテナをそれぞれ「アンテナ1」、「アンテナ2」と呼ぶことにする。信号処理部3は、通信プロトコルの上位層から供給される送信データに対しベースバンドなどの所定の処理を施す。RF部4は、送信ベースバンド信号をアナログ信号に変換し、さらにRF信号にアップコンバートする。アンテナ切替制御機構5は、転送制御部6からの指示に従い、送信に用いるアンテナを短い一定の間隔で交互に切り替えながらフレームを送信する。その際、どちらのアンテナから送信したかを判別するための情報を各送信フレームに付加する。
【0081】
図10には、到来角の推定を行なう際に送信装置10が実行する処理手順をフローチャートの形式で示している。
【0082】
まず、信号処理部及びRF部においてフレーム送信の準備を行なう(ステップS1)。そして、転送制御部は、送信に用いるアンテナを短い一定の間隔で交互に切り替える(ステップS2)。
【0083】
フレームを送信するアンテナをアンテナ1に選択したときには、フレームにアンテナ1の情報を付加し、アンテナ切替機構を介してアンテナ1にRF送信信号を転送する(ステップS3)。また、フレームを送信するアンテナをアンテナ2に選択したときには、フレームにアンテナ2の情報を付加し、アンテナ切替機構を介してアンテナ2にRF送信信号を転送する(ステップS4)。
【0084】
また、図11には、到来角の推定を行なう際に受信装置が実行する処理手順をフローチャートの形式で示している。
【0085】
受信装置は、送信装置からのフレームを受信すると(ステップS11)、当該フレーム中に埋め込まれた情報を読み取って、送信装置側のどちらのアンテナを利用して送信されたものかを判別するとともに(ステップS12)、受信フレームの信号強度を計測する。
【0086】
受信フレームがアンテナ1から送信されたものである場合には、計測した受信信号強度をアンテナ1のデータとして保存し(ステップS13)、アンテナ2から送信されたものである場合には、該受信信号強度をアンテナ2のデータとして保存する(ステップS14)。
【0087】
そして、十分なデータが得られたときには(ステップS15のYes)、アンテナ1から送信されたフレームの受信信号強度の平均値Sig1と、アンテナ2から送信されたフレームの受信信号強度の平均値Sig2の差ΔSを求め、以前に計測しておいたデータを参照することにより、現在のΔSの値から送信装置と当該受信装置の間の角度を推測する(ステップS16)。
【0088】
C.送信アンテナの判別方法
受信装置では、受信したフレームが送信装置側のどちらのアンテナを利用して送信されたものかを判別する必要がある。ここでは送信アンテナの判別方法について説明する。
【0089】
本発明では、無線通信機器がIEEE802.11に基づく技術(802.11a、802.11b、802.11g)を利用することを想定している。
【0090】
図9には、IEEE802.11のフレーム・フォーマットを示している。IEEE802.11のフレームは、30バイトの大きさを持つMAC(Machine Access Control)ヘッダと0−2312バイトの大きさを持つFrame Body(フレーム・ボディ)と4バイトのFCS(フレーム・チェック・シーケンス)から構成される。30バイトのMACヘッダのうち先頭の2バイト(16ビット)は、Frame Controlと呼ばれ、フレームの制御情報を格納している。Frame Controlフィールドの16ビットは、図9中の下部分に示した構造を持つ。このうち2ビットのTypeと4ビットのSubtypeフィールドを用いてフレームの種別を指定する。例えば、Typeフィールドの値が1のときは当該フレームが制御用の情報を含むフレームであることを示し、Subtypeフィールドの値が13(2進数で1101)のときは当該フレームが制御用フレームのうち確認応答の情報を含むものであることを示す。
【0091】
図5に示した通信システムでは、送信装置10は、フレームがどちらからのアンテナから送信したかを識別するために、データ・フレームと確認応答フレームの2つの種類のフレームに送信アンテナの情報を付加する。データ・フレームの場合、Typeフィールドの値は2となる。このとき、Subtypeフィールドはデータ・フレームの種別を表すために利用され、0から3の値をとることにより(Subtypeの値により格納する情報が微妙に異なる)当該フレームがデータを格納するフレームであることを示す。また、Subtypeフィールドが8以上(2進数で1000)を越える値は現時点で定義されていない。送信アンテナの情報を伝達するために、この未定義のSubtypeフィールドの値を利用することができる。すなわち、Subtypeフィールドが8から11の値をとる場合(2進数で1000から1011)、このフレームがアンテナ1から送信されたものであることを示し、12から15の値をとる場合(2進数で1100から1111)、このフレームがアンテナ2から送信されたものであることを示す。
【0092】
確認応答フレームは、制御フレームの一種であるため、Typeフィールドの値は1となる。また、確認応答フレームで利用するSubtypeの値は13(2進数で1101)のみである。制御フレームにおけるSubtypeのうち、0−9(2進数で0000から1001)までの値は未定義であり、この部分を利用して送信アンテナを識別する情報を伝達することができる。すなわち、Subtypeフィールドの値が5の場合(2進数で0101)はアンテナ1を、同フィールドの値が6の場合(2進数で0110)はアンテナ2を利用して、フレームが送信されたものであることを示す。
【0093】
D.フレーム転送方式
本発明に係る到来角推定システムでは、指向性アンテナを装備した通信装置が送出したフレームを受信装置が観測することにより、指向性アンテナを装備した通信装置と受信装置の相対的な角度を推測する。このため、送信装置側のアンテナから受信装置に対して到来角の推定(すなわち受信信号強度の測定)に用いるフレームを定期的に転送する必要がある。
【0094】
但し、本発明で言う「送信装置」、「受信装置」はそれぞれデータ・フレームの送信側、受信側を意味するのではなく、到来角の推定に用いられるフレームの送信側、受信側を意味する。到来角の測定対象の機器を「送信装置」、到来角を測定する側の機器を「受信装置」と言い換えることもできる。通信シーケンスによっては、データ・フレームの送信側でなく受信側が「送信装置」となることもある。例えば、携帯端末(Mobile Device)が「送信装置」となり、PCなどの据え置き型の通信機器が「受信装置」すなわちSensing Deviceとなって、ユーザが振りかざす携帯端末からの到来角をPC側で推定する。
【0095】
IEEE802.11におけるネットワーキングは、BSS(Basic Service Set)の概念に基づいている。BSSは、アクセスポイント(AP)が存在する「インフラストラクチャ・モード」で定義されるBSSと、複数のMT(Mobile Terminal:移動局又は端末局)のみにより構成される「アドホック・モード」で定義されるIBSS(Independent BSS)の2種類で構成される。
【0096】
図23Aには、インフラストラクチャ・モードにおいて、携帯端末からの到来角をPC側で推定する様子を示している。アドホック・モード下で携帯端末とPCが直接通信を行なっている際に、PCは、携帯端末が自分宛てに送信したフレームの受信信号強度を計測して、到来角の推定を行なうことができる。
【0097】
また、図23Bには、インフラストラクチャ・モードにおいて、携帯端末からの到来角をPC側で推定する様子を示している。図示の例では、携帯端末とPCはアクセスポイント経由で通信しており、PCは携帯端末がアクセスポイントに宛てたフレームの受信信号強度を計測して、到来角の推定を行なっている。また、図23Cに示す例では、インフラストラクチャ・モードにおいて、携帯端末とPCがアクセスポイント経由で通信している際に、通信相手でないPCが携帯端末がアクセスポイントに宛てたフレームの受信信号強度を計測して、到来角の推定を行なっている。
【0098】
到来角の推定(すなわち受信信号強度の測定)に用いるフレームの転送方式には、送信側主体のフレーム転送方式と、受信側主体のフレーム転送方式の2通りの転送方式が考えられる。
【0099】
送信側主体のフレーム転送方式では、一定間隔で指向性アンテナを装備した通信装置10がデータ・フレームを転送し、受信装置20側で転送されたデータ・フレームの信号強度を計測する。上位層に転送すべき送信データがない場合には、データ・サイズが0のデータ・フレームを生成して送信する。また、データ・フレームを転送する際には、一定の周期で送信に利用する指向性アンテナを切り替えて、受信装置20側で両方の送信アンテナからほぼ同じ頻度でフレームを受信できるようにする。
【0100】
一方、受信側主体のフレーム転送方式では、到来角を推定する受信装置20側が一定間隔でデータ・フレームを送信し、これに対し2つ指向性アンテナを装備した送信装置10から返送される確認応答フレームの信号強度を計測する。上位層に転送すべきデータがない場合は、データ・サイズが0のデータ・フレームを生成し送信する。IEEE802.11では、データ・フレームの転送に対して、受信側からデータ・フレームを受信した際に必ず確認応答フレーム(ACK/NACK)を返送する仕様になっている。このため、一定間隔でデータ・フレームを送信すると、同様にほぼ一定間隔で確認応答フレームを受信することができる。したがって、IEEE802.11で策定されるこのような仕様を利用して、送信アンテナ毎に送信される確認応答フレームの受信信号強度に基づいて到来角の推定を行なうことができる。
【0101】
E.受信装置において2つの指向性アンテナを利用するシステム
ここまでの説明では、送信装置10側にそれぞれ±θ度だけ指向特性が傾くように配置された2つの指向性アンテナを装備したシステムについて説明してきたが、送信装置10ではなく受信装置20側に同様に2つの指向性アンテナを装備することによっても、送信装置10との相対的な角度を判別することができる。
【0102】
後者の到来角推定システムでは、受信装置20が、送信装置10からのフレーム受信時に、アンテナ1とアンテナ2を一定間隔で切り替えながら受信を行ない、それぞれのアンテナ毎にフレーム受信信号強度の平均値Sig1及びSig2を計測し、各受信信号強度の差ΔS=Sig1−Sig2を求め、あらかじめ記憶しておいたΔSと送信装置10及び受信装置20間の角度との関係としてあらかじめ記憶しておく。そして、到来角の推定時には、受信装置20は、アンテナ1とアンテナ2を一定間隔で切り替えながら送信装置10からのフレームの受信を行ない、その際に各受信信号強度の差ΔSを計測し、あらかじめ記憶しておいたΔSと到来角との関係に基づいて、送信装置10と受信装置20間の相対的な角度の判別を行なう。
【0103】
この場合の受信装置20の構成は図12に示したものと同様となるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0104】
図13には、±θ度だけ指向特性が傾くように配置された2つの指向性アンテナを装備した受信装置20が到来角の推定を行なう際に実行する処理手順をフローチャートの形式で示している。
【0105】
転送制御部6は、受信に用いる指向性アンテナを選択し(ステップS21)、送信装置からフレームが到来すると(ステップS22)、受信アンテナを確認する(ステップS23)。
【0106】
アンテナをアンテナ1に選択したときには、アンテナ切替機構5を介してアンテナ1で受信したRF信号をRF部に転送し、さらに信号処理部3で復号・復調処理を行なう。また、その際に計測した受信信号強度をアンテナ1のデータとして保存する(ステップS24)。一方、アンテナをアンテナ2に選択したときには、アンテナ切替機構5を介してアンテナ2で受信したRF信号をRF部に転送し、さらに信号処理部3で復号・復調処理を行なう。また、その際に計測した受信信号強度をアンテナ2のデータとして保存する(ステップS25)。
【0107】
そして、十分なデータが得られたときには(ステップS26のYes)、アンテナ1で受信したフレームの受信信号強度の平均値Sig1と、アンテナ2で受信したフレームの受信信号強度の平均値Sig2の差ΔSを求め、以前に計測しておいたデータを参照することにより、現在のΔSの値から送信装置10と当該受信装置20の間の角度を推測する(ステップS27)。
【0108】
このように受信装置20において指向性アンテナを利用する場合には、送信装置10側にそれぞれ±θ度だけ指向特性が傾くように配置された2つの指向性アンテナを装備したシステムとは相違し、送信装置10側で送信フレーム中に送信アンテナの情報を格納するなどの特別な処理を必要としない。
【0109】
また、受信装置20において指向性アンテナを利用する到来角推定システムにおいても、送信装置10並びに受信装置20のいずれもが主体となって到来角の推定に用いられるフレームの転送を行なうことができる。
【0110】
前者の場合、送信装置10がデータ・フレームを転送し、受信装置20側では受信アンテナを交互に切り替えながら、データ・フレームの信号強度を計測する。また、送信装置10側で上位層に転送すべき送信データがない場合には、データ・サイズが0のデータ・フレームを生成して送信する。また、受信装置20は、受信に利用する指向性アンテナを一定の周期で切り替え、両方のアンテナからほぼ同じ頻度でフレームを受信できるようにする。
【0111】
また、後者の場合、到来角を推定する受信装置20側がいずれかの指向性アンテナを用いて一定間隔でデータ・フレームを送信し、これに対し送信装置10から返送される確認応答フレームを受信装置20が受信アンテナを交互に切り替えながら受信して、これらの信号強度を計測する。また、受信装置20側で上位層に転送すべきデータがない場合は、データ・サイズが0のデータ・フレームを生成し送信する。
【0112】
F.送受信装置双方が2つの指向性アンテナを利用するシステム
ここまでの説明では、送信装置10又は受信装置20のいずれか一方のみがそれぞれ±θ度だけ指向特性が傾くように配置された2つの指向性アンテナを装備したシステムについて説明してきたが、送信装置10と受信装置20の双方が2つの指向性アンテナを装備することによっても、送信装置10との相対的な角度を判別することができる。
【0113】
送信装置10と受信装置20の双方が2つの指向性アンテナを利用するシステムでは、送信装置10は送信に用いるアンテナを一定間隔で切り替えながら、フレームを送信する。その際、フレームには送信アンテナに関する情報を付加する(同上)。一方、受信装置20は、送信装置10からのフレーム受信時に、アンテナ1とアンテナ2を一定間隔で切り替えながら受信を行ない、それぞれの受信アンテナ毎に、各送信アンテナから送信されたフレームの受信信号強度の平均値Sig1及びSig2を計測し、各受信信号強度の差ΔS=Sig1−Sig2を求め、あらかじめ記憶しておいたΔSと送信装置10及び受信装置20間の角度との関係としてあらかじめ記憶しておく。
【0114】
そして、到来角の推定時には、送信装置10は送信に用いるアンテナを一定間隔で切り替えながら、フレームを送信する。その際、フレームには送信アンテナに関する情報を付加する(同上)。これに対し、受信装置20は、2つの受信アンテナを一定間隔で切り替えながら送信装置10からのフレームの受信を行なう。その際に、受信アンテナ毎に、各送信アンテナから送信されたフレームの受信信号強度の差ΔSを計測し、あらかじめ記憶しておいたΔSと到来角との関係に基づいて、送信装置10と受信装置20間の相対的な角度の判別を行なう。
【0115】
したがって、本システムによれば、受信装置20は、受信アンテナ毎に、2つの送信アンテナから交互に送信されたフレームからΔSと送信装置10及び受信装置20間の角度との関係を得るとともに、2通りの到来角の判別結果を得ることができる。そして、これら2通りの判別結果に基づいて、よりロバストな到来角の推定を行なうことができる。
【0116】
この場合の送信装置10及び受信装置20の構成はともに図12に示したものと同様となるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0117】
図14には、送信装置10と受信装置20の双方が2つの指向性アンテナを利用するシステムにおいて、受信装置20が到来角の推定を行なう際に実行する処理手順をフローチャートの形式で示している。
【0118】
転送制御部6は、受信に用いる指向性アンテナを選択し(ステップS31)、送信装置からフレームが到来すると(ステップS32)、受信アンテナを確認する(ステップS33)。
【0119】
受信アンテナをアンテナ1に選択したときには、アンテナ切替機構5を介してアンテナ1で受信したRF信号をRF部4に転送し、さらに信号処理部3で復号・復調処理を行なう。また、その際に計測した受信信号強度をアンテナ1のデータとして保存する(ステップS34)。
【0120】
次いで、当該フレーム中に埋め込まれた情報を読み取って、送信装置10側のどちらのアンテナを利用して送信されたものかを確認する(ステップS36)。そして、受信フレームが送信装置10側のアンテナ1から送信されたものである場合には、計測した受信信号強度をアンテナ1のデータとして保存し(ステップS37)、送信装置10側のアンテナ2から送信されたものである場合には、該受信信号強度をアンテナ2のデータとして保存する(ステップS38)。
【0121】
一方、受信アンテナをアンテナ2に選択したときには、アンテナ切替機構5を介してアンテナ2で受信したRF信号をRF部4に転送し、さらに信号処理部3で復号・復調処理を行なう。また、その際に計測した受信信号強度をアンテナ2のデータとして保存する(ステップS35)。
【0122】
次いで、当該フレーム中に埋め込まれた情報を読み取って、送信装置10側のどちらのアンテナを利用して送信されたものかを確認する(ステップS39)。そして、受信フレームが送信装置10側のアンテナ1から送信されたものである場合には、計測した受信信号強度をアンテナ1のデータとして保存し(ステップS40)、送信装置10側のアンテナ2から送信されたものである場合には、該受信信号強度をアンテナ2のデータとして保存する(ステップS41)。
【0123】
そして、十分なデータが得られたときには(ステップS42のYes)、アンテナ1から送信されたフレームの受信信号強度の平均値Sig1と、アンテナ2から送信されたフレームの受信信号強度の平均値Sig2の差ΔSを求め、以前に計測しておいたデータを参照することにより、現在のΔSの値から送信装置10と当該受信装置20の間の角度を推測する(ステップS43)。
【0124】
また、受信装置20において指向性アンテナを利用する到来角推定システムにおいても、送信装置10並びに受信装置20のいずれもが主体となって到来角の推定に用いられるフレームの転送を行なうことができる。
【0125】
前者の場合、送信装置10が送信アンテナを交互にデータ・フレームを転送し、受信装置20側では受信アンテナを交互に切り替えながら、データ・フレームの信号強度を計測する。また、送信装置10側で上位層に転送すべき送信データがない場合には、データ・サイズが0のデータ・フレームを生成して送信する。また、受信装置20は、受信に利用する指向性アンテナを一定の周期で切り替え、両方のアンテナからほぼ同じ頻度でフレームを受信できるようにする。
【0126】
また、後者の場合、到来角を推定する受信装置20側がいずれかの指向性アンテナを用いて一定間隔で送信アンテナを交互に切り替えながらデータ・フレームを送信し、これに対し送信装置10から返送される確認応答フレームを受信装置20が受信アンテナを交互に切り替えながら受信して、これらの信号強度を計測する。また、受信装置20側で上位層に転送すべきデータがない場合は、データ・サイズが0のデータ・フレームを生成し送信する。
【0127】
G.偏波を応用した通信システムの傾きの推定
上述した到来角の推定方法を応用して、指向性アンテナを装備した携帯通信機器の傾きを検知することもできる。
【0128】
例えば、図15に示すように、垂直偏波の性質を持つ指向性アンテナを1つは垂直に、もう1つは90度の傾きをつけて、送信装置10の同じ面上に設置する。このとき、2つのアンテナが装着された面を同図中の矢印で示すように回転させながら、一定の間隔で交互にアンテナを切替えながらフレームを送信する。図16には、受信装置20側で受信するフレームの信号強度の変化を示している。同図において、X軸は送信装置10の水平方向に対する傾きの角度を示し、Y軸は受信フレームの信号強度を示している。
【0129】
受信装置20は、上述と同様に受信フレーム中に埋め込まれた情報を読み取って、送信装置がどちらのアンテナを利用して送信されたフレームかを逐次的に判別する。そして、送信アンテナ毎にフレームの受信信号強度の平均値を求める。このとき、送信装置10側でアンテナ1から送信されたフレームの信号強度の平均値をSigP1とし、アンテナ2から送信されたフレームの信号強度の平均値をSigP2とすると、2つの信号強度の差ΔPは、ΔP=SigP1−SigP2で表すことができる。ΔPは指向性アンテナを装着した送信装置10の水平方向に対する傾きの角度によって変化する。図17には、ΔPと送信装置10の水平方向に対する傾きの角度の関係を示している。同図中ではΔPを実線で示し、アンテナ1から送信されたフレームの受信信号強度のSig1、並びにアンテナ2から送信されたフレームの受信信号強度Sig2をそれぞれ破線、一点鎖線で示している。
【0130】
このΔPの値を利用して、送信装置10の水平方向に対する角度を推測することができる。すなわち、送信装置10の水平方向に対する角度を変化させながらフレームを送信し、受信装置20側では受信したフレームの信号強度を計測するとともに、送信アンテナ間での受信信号強度の差ΔPと送信装置10の水平方向に対する角度の関係を求め、あらかじめ記録しておく。
【0131】
送信装置10が送信アンテナを交互に切り替えながら受信装置20と通信を行なう際には、受信装置20は、送信装置10の各送信アンテナからのフレームを受信して信号強度を計測し、さらに送信アンテナ間での信号強度の差ΔPを求める。そして、これを以前に計測しておいたデータを参照することにより、現在のΔPの値から送信装置10の傾きの角度を推測することができる。
【0132】
偏波を利用して傾きを検出する方法の問題点は、受信装置20と送信装置10の相対角度によりΔPの値が変動してしまうことである。このため、傾きを検出する際には、送信装置10と受信装置20があらかじめ決めておいた角度(例えば正対した状態)になった後に傾き検出を行なうようにする必要がある。
【0133】
送信装置10と受信装置20の角度を特定のものにするには、あらかじめ利用者に対し、傾き検出を行なう場合の立ち位置、方向などの情報を示すことによって実現することができる。
【0134】
H.複数の給電点を利用した通信機器の傾き及び相対角度の検出
本発明は、低コストで小型のマイクロストリップ・アンテナの利用を想定している。マイクロストリップ・アンテナには、給電点を変更するだけでさまざまな偏波に対応できるメリットがある。
【0135】
例えば、図18に示すような、2つの給電点1及び2を持つマイクロストリップ・アンテナを利用し、給電点1から給電するときには、垂直偏波、給電点2から給電するときには水平偏波を生成するように設計することができる。そして、このようなアンテナを図15と同様に送信装置の同じ面上に設置すると、給電点を切り替えることによって、2つの指向性アンテナの偏波の組合せを自在に変更することができる。例えば、垂直偏波の性質を持つ2つの指向性アンテナの偏波方向が一致し、あるいは互いに直交するように組み合わせることができる。
【0136】
図19には、垂直偏波の性質を持つ2つの指向性アンテナの偏波の組み合わせを自在に変更可能に構成された送信装置10の構成を示している。
【0137】
信号処理部3は、通信プロトコルの上位層から供給される送信データに対しベースバンドなどの所定の処理を施す。RF部4は、送信ベースバンド信号をアナログ信号に変換し、さらにRF信号にアップコンバートする。給電点切替制御機構7は、転送制御部6からの指示に従い、各指向性アンテナの給電点を切り替える。また、アンテナ切替制御機構5は、転送制御部6からの指示に従い、送信に用いるアンテナを短い一定の間隔で交互に切り替えながらフレームを送信する。その際、どちらのアンテナから送信したかを判別するための情報を各送信フレームに付加する。
【0138】
各指向性アンテナにはそれぞれ2つの給電点が設けられており、転送制御部6は、給電点切替制御機構7によりどちらの給電点から給電を行なうかを制御することで、偏波の組合せを変更する。
【0139】
そして、信号処理の結果と、アンテナ切替制御機構5と給電点切替制御機構7からのアンテナ情報を基に、通信機器の傾きと相対角度の計測を行なう。このような構成のシステムを用いることにより、1組のアンテナだけで、受信装置20と送信装置10間の相対角度の検出とともに、送信装置10の傾きを検出の2つの機能を行なうことが可能となる。
【0140】
I.実施例
以下では、上述した到来角推定システムの具体的なアプリケーションについて詳解する。
【0141】
I−1.壁に設置されたスクリーンと携帯端末のインタラクション
この例では、指向性アンテナを装着した携帯端末として構成される送信装置を利用者が操作する。受信装置は壁に設置されたスクリーンの内部若しくは近傍に設置されており、利用者の持つ携帯端末と受信装置の相対角度を計測することができる。このとき、スクリーンに表示する内容を携帯端末の角度に応じて変化させる。図20には、その概念図を示している。
【0142】
また、この例の応用として、指向性アンテナを装着した携帯端末を持った複数の利用者がいる状況において、受信装置に対して正対している端末同士は、壁に設置された受信装置を介して情報の交換を行なうことができるシステムも実現できる。情報交換の間はスクリーンに正対している端末の情報を表示するなどの処理を行なう。
【0143】
I−2.携帯端末の位置計測
この例では、図21に示すように、指向性アンテナを装着した携帯端末を利用者が操作する。このとき、複数の受信装置を利用し、携帯端末との相対角度をそれぞれ計測する。計測した結果より、携帯端末の空間内の位置を推測する
【0144】
I−3.携帯端末間のインタラクション
この例では、図22に示すように、指向性アンテナを装着した携帯端末をそれぞれの利用者が操作する。このとき、各携帯端末では、一定間隔で自分の正対位置に他の通信機器が存在するか否かを確認する。そして、携帯端末を持った利用者がお互いの携帯端末を正対させたときには、データ転送処理を開始して、少なくとも一方の携帯端末において到来角を推定する。
【0145】
I−4.携帯端末の傾き検出
この例では、G項で既に述べた手法を利用して、携帯端末の傾きを検出する。2つの指向性アンテナのうち1つのアンテナを90度傾けた状態で装着した携帯端末を、利用者が操作する。受信装置は壁に設置されたスクリーンの内部や近傍に設置されており、利用者の持つ携帯端末の水平方向に対する傾き角度を計測することができる(図20を参照のこと)。携帯端末を持った利用者は、初期位置としてスクリーンに対して正対する位置で静止し、携帯端末を任意の傾きに変化させる。受信装置側では、携帯端末の傾きに応じてスクリーンに表示する内容を変化させる。
【産業上の利用可能性】
【0146】
以上、特定の実施形態を参照しながら、本発明について詳解してきた。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施形態の修正や代用を成し得ることは自明である。
【0147】
本明細書では、主にIEEE802.11に準拠した無線技術に適用した実施形態を中心に説明してきたが、本発明の要旨は必ずしもこれに限定されるものではない。±30度程度でも到来角の推定精度として十分となるさまざまな無線通信システムに同様に本発明を適用することができる。
【0148】
要するに、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本発明の要旨を判断するためには、特許請求の範囲を参酌すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】図1は、マイクロストリップ・アンテナの構成例とそのインピーダンス整合回路を示した図である。
【図2】図2は、半値角60度の指向性アンテナが持つ指向性の典型的な性質を示した図である。
【図3】図3は、指向性アンテナと受信装置の構成例を示した図である。
【図4】図4は、指向性アンテナと受信装置の構成例を示した図である。
【図5】図5は、2つの指向性アンテナからなるシステムの構成例を示した図である。
【図6】図6は、偏向した指向特性を例示した図である。
【図7】図7は、指向特性が互いに偏向する2つの指向性アンテナからなる送信装置の指向特性を示した図である。
【図8】図8は、指向特性が互いに偏向する2つの指向性アンテナからなる送信装置の各指向性アンテナからのフレームを受信装置で受信した際の信号強度の平均値と2つの信号強度の差と送信装置及び受信装置間の到来角との関係を示した図である。
【図9】図9は、IEEE802.11のフレーム・フォーマットを示した図である。
【図10】図10は、到来角の推定を行なう際に送信装置が実行する処理手順を示したフローチャートである。
【図11】図11は、到来角の推定を行なう際に受信装置が実行する処理手順を示したフローチャートである。
【図12】図12は、送信装置の構成を模式的に示した図である。
【図13】図13は、±θ度だけ指向特性が傾くように配置された2つの指向性アンテナを装備した受信装置が到来角の推定を行なう際に実行する処理手順を示したフローチャートである。
【図14】図14は、送受信装置双方が2つの指向性アンテナを利用するシステムにおいて、受信装置が到来角の推定を行なう際に実行する処理手順を示したフローチャートである。
【図15】図15は、垂直偏波の性質を持つ指向性アンテナを1つは垂直に、もう1つは90度の傾きをつけて設置した様子を示した図である。
【図16】図16は、図15に示した指向性アンテナが装着された面を同図中の矢印で示すように回転させながら、一定の間隔で交互にアンテナを切替えながらフレームを送信するときの、受信装置側で受信するフレームの信号強度の変化を示した図である。
【図17】図17は、それぞれ垂直偏波の性質を持つとともに偏波方向が互いに直交するように配置された2つの指向性アンテナからなる送信装置の各指向性アンテナからのフレームを受信装置で受信した際の信号強度の平均値と2つの信号強度の差と送信装置の傾きとの関係を示した図である。
【図18】図18は、2つの給電点1及び2を持つマイクロストリップ・アンテナの構成を示した図である。
【図19】図19は、垂直偏波の性質を持つ2つの指向性アンテナの偏波の組み合わせを自在に変更可能に構成された送信装置の構成を示した図である。
【図20】図20は、利用者が操作する送信装置と壁に接地されたスクリーンの内部又は近傍に接地された受信装置からなるシステムにおけるインタラクションを概念的に示した図である。
【図21】図21は、指向性アンテナを装着した携帯端末を利用者が操作し、複数の受信装置を利用し、携帯端末との相対角度をそれぞれ計測した結果より携帯端末の空間の位置を推測するシステムを概念的に示した図である。
【図22】図22は、携帯端末を持った利用者がお互いの携帯端末を正対させたときのインタラクションを概念的に示した図である。
【図23A】図23Aは、IEEE802.11のネットワーキングにおけるアドホック・モードに本発明を適用した例を示した図である。
【図23B】図23Bは、IEEE802.11のネットワーキングにおけるインフラストラクチャ・モードに本発明を適用した例を示した図である。
【図23C】図23Cは、IEEE802.11のネットワーキングにおけるインフラストラクチャ・モードに本発明を適用した例を示した図である。
【符号の説明】
【0150】
1、2…アンテナ
3…信号処理部
4…RF部
5…アンテナ切替機構
6…転送制御部
7…給電点切替制御機構
10…送信装置
20…受信装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波の到来角を推定する到来角推定システム、通信装置、並びに通信システムに係り、特に、例えばIEEE802.11などの無線LANを搭載した無線通信端末において利用される到来角推定システム、通信装置、並びに通信システムに関する。
【0002】
さらに詳しくは、本発明は、比較的近距離で十分な見通しを得ることができる状況下で用いられ、簡素で小型、低コストに構成される到来角推定システム、通信装置、並びに通信システムに係り、特に、複数のアンテナを装備した無線通信装置において利用される到来角推定システム、通信装置、並びに通信システムに関する。
【背景技術】
【0003】
旧来の有線通信方式における配線から解放するシステムとして、無線ネットワークが注目されている。例えば、IEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11a/b、gといった無線LAN(Local Area Network)規格が代表的である。無線LANによれば柔軟なインターネット接続が可能であり、既存の有線LANを置き換えるだけでなく、ホテルや空港ラウンジ、駅、カフェといった公共の場所でもインターネット接続手段を提供することができる。
【0004】
無線通信の多くは、受信装置では直接波と複数の反射波・遅延波の重ね合わせが到来するというマルチパス環境下でデータ伝送が行なわれるので、マルチパスにより遅延ひずみが生じ、通信に誤りが引き起こされるおそれがある。このため、IEEE802.11a/gなどの無線LANの標準規格では、マルチキャリア方式の1つであるOFDM変調方式が採用されている。OFDM伝送システムでは、送信データを周波数が直交する複数のキャリアに分配して伝送するので、各キャリアの帯域が狭帯域となり、周波数利用効率が非常に高く、周波数選択性フェージング妨害に強いという特徴がある。
【0005】
無線LANは既に広範に普及しているが、最近では、パーソナル・コンピュータ(PC)などの情報機器だけでなく、デジタルカメラや音楽プレーヤ、携帯電話などの小型軽量のCE(Consumer Electronics)機器にも無線LAN機能を搭載することが一般的となりつつある。無線通信の多くは無指向アンテナにより柔軟な接続を可能にする。これに対し、携帯機器に無線LANが搭載された場合にはアンテナが小型であることが求められ、また、指向性アンテナを用いて、比較的近い距離において機器をかざした特定の通信相手と接続するといったアプリケーションが想定される。このようなアプリケーションでは、電波の到来角を検出若しくは推定する技術が必要になってくる。
【0006】
電波の到来角を検出する技術はこれまでにも数多研究されており、代表的なものには、OFDM技術を利用した空間スペクトラムに基づく手法や、MUSIC((MUltiple SIgnal Classifcation)アルゴリズム、ESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Techinique)アルゴリズムが挙げられる。ここで、MUSIC法はアレーアンテナを利用し、アレーアンテナ受信信号から得られる相関行列の固有値、固有ベクトルを求め、角度スペクトラムを計算する。ESPRIT法も、MUSIC法と同様アレーアンテナ受信信号から得られる相関行列の固有値、固有ベクトルを求めるが、サブアレーアンテナ間の回転不変式の関係を基に電波の到来角を推測する点が異なる。また、ATR(Advanced Telecommunications Research Institute International:国際電気通信基礎技術研究所)により開発された電子走査導波器アンテナ(エスパアンテナ)は、円形に配置されたアンテナ素子に素子間相互結合により指向性ビームを生成し、電波の到来角を走査することができる。
【0007】
上記の信号到来方向推定技術はいずれも、マルチパス環境においても到来角の高い推測精度を得ることが可能であり、障害物が存在しても±3〜5度の精度で推定を行なうものである。しかしながら、これらは例えばビルなどの数十メートル離間した建物間での測定などを目的とするものであり、次元数の高く且つ大きなサイズのアレイアンテナなど特別な仕組みを持つアンテナを必要とするとともに、複雑な計算処理を伴う高価なシステムであり、小型機器へ搭載することは容易でない。
【0008】
無線LANを搭載した小型機器では、簡素、小型で低コストに構成される到来角推定方法が望ましい。電波の発信源と到来角の推測を行なうシステム間の距離は2メートル程度を想定しており、見通しが得られるときにはマルチパスの影響をそれほど考慮しないで済むので、概ね30〜40度程度の精度が得られればよい。
【0009】
また、2つシステム間の距離が十分に近ければ、2つのシステム間になんらかの障害物があっても人間は知覚を利用して見通しを得るための操作を行なうことができ、それを回避する手段をとることが可能である。例えば、電波の発信源が到来角の推測を行なうシステムのいずれか一方が携帯できる形状の装置である場合、2つのシステムの間に障害物があれば、システムの利用者は、携帯装置を持ったまま障害物の影響を受けない位置まで移動する、障害物を取り除く、あるいは到来角の推測が機能しないことを理解し推測操作を行なわないといった行動をとれば済む。
【0010】
例えば、2基の開口面アンテナをそれぞれリッジドウェーブガイドホーンとし、2基の開口面アンテナから入力された一対のアンテナ出力信号の和信号及び差信号を出力するハイブリッド回路を備え、2基の開口面アンテナの最大放射方向を含む平面に垂直で且つ2基の開口面アンテナの電気中心の2等分点を通る直線を回転軸として360度回転させることで到来方向を推定する信号到来方向推定装置について提案がなされている(例えば、特許文献1を参照のこと)。同装置によれば、和信号出力と差信号出力を別個の広帯域受信機で測定し、そのデータを時間領域又は周波数領域で積分することで各々の角度における総受信電力を求め、超広帯域信号に対する2つのパターンを得ると、これらの2パターンそれぞれの極大値と極小値が一致している方向を信号の到来方向と推定することができる。
【0011】
しかしながら、アンテナを回転駆動するような回転機構を小型の携帯機器に搭載することは困難であり、このような可動部の存在は装置の耐故障性、メンテナンスなどの問題を招来する。また、かかる信号到来方向推定方法は、受信側にしか適用することができない。
【0012】
【特許文献1】特開2005−156521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、IEEE802.11などの無線LANを搭載した無線通信端末において好適に利用される、優れた到来角推定システム、通信装置、並びに通信システムを提供することにある。
【0014】
本発明のさらなる目的は、比較的近距離で十分な見通しを得ることができる状況下で用いられ、簡素で小型、低コストに構成される、優れた到来角推定システム、通信装置、並びに通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記課題を参酌してなされたものであり、その第1の側面は、送信装置から無線送信されるフレームが受信装置に到来する到来角を推定する到来角推定システムであって、
前記送信装置は、当該装置の正面に対しそれぞれ±θ度だけ指向特性が傾くように配置された2つの指向性アンテナを備え、
前記受信装置は、当該装置の正面に指向特性を持つ指向性アンテナを備え、
前記送信装置から前記の指向性アンテナの各々から交互にフレームを送信した際の、送信アンテナ毎の前記受信装置側におけるフレームの各受信信号強度の比較に基づいて前記到来角を推定する、
ことを特徴とする到来角推定システムである。
【0016】
但し、ここで言う「システム」とは、複数の装置(又は特定の機能を実現する機能モジュール)が論理的に集合した物のことを言い、各装置や機能モジュールが単一の筐体内にあるか否かは特に問わない(以下、同様)。
【0017】
最近、小型の携帯機器にも無線LAN機能が搭載されることが一般的になりつつあるが、機器をかざした特定の通信相手と接続するといったアプリケーションを考慮すると、電波の到来角を検出若しくは推定する技術が必要になってくる。
【0018】
MUSICアルゴリズムやESPRITアルゴリズムといった高精度の信号到来方向推定技術は既に存在するが、これらは特別な仕組みを持つアンテナを必要とするとともに、複雑な計算処理を伴う高価なシステムであり、小型機器へ搭載することはできない。
【0019】
これに対し、本発明に係る到来角推定システムは、正面に対しそれぞれ±θ度だけ指向特性が傾くように配置された2つの指向性アンテナを備えた送信装置と、正面に指向特性を持つ指向性アンテナを備えた受信装置で構成される。
【0020】
無線LANカードを始めとしてほとんどすべての無線機器がダイバーシティを行なうために、2つ以上のアンテナ素子と送受信装置を装備している。このことを利用すれば、2つの指向性アンテナを備えた通信装置を構成することに特段のコスト増を招来することはない。
【0021】
また、主として携帯電話機などの小型機器への適用を考えると、概ね30〜40度程度の精度が得られれば十分であり、半値角40〜120度程度の小型指向性アンテナを用いることが相当である。例えば、1辺の長さが2cm程度の低コストで小型のマイクロストリップ・アンテナを利用することができる。
【0022】
送信装置が備える2つの指向性アンテナは、当該装置の正面に対しそれぞれ±θ度だけ指向特性が傾くように配置される。例えば、受信側との相対角度が0度で強い指向性を持つ2つの送信アンテナをそれぞれ±θ度だけ指向方向を傾けて取り付けるようにしてもよいし、あるいは受信側との相対角度がそれぞれ±θ度だけ傾いたところで強い指向性を持つ2つの送信アンテナを並列に取り付けるようにしてもよい。
【0023】
そして、本発明に係る到来角推定システムでは、前記送信装置の各指向性アンテナから交互にフレームを送信した際の、送信アンテナ毎の前記受信装置側におけるフレームの各受信信号強度の比較に基づいて前記到来角を推定する。
【0024】
具体的には、送信装置から、送信に用いるアンテナを短い間隔で交互に切り替えながらフレームを送信する。一方、受信装置では、受信したフレームに埋め込まれた情報を読み取ると、送信に用いたアンテナ毎に受信フレームの信号強度の平均値を求める。これら2通りの受信信号強度の平均値の差は、送信装置と受信装置間の相対角度の違いにより変化するという性質がある。
【0025】
したがって、送信装置と受信装置の間の角度をさまざまに変化させながら、各送信アンテナから受信したフレームの信号強度の差分ΔSを計測して、ΔSと送信装置及び受信装置間の角度との関係をあらかじめ記憶しておく。そして、送信装置や受信装置は通信を行ないながら、同時に送信アンテナ毎の信号強度からΔSを計測し、以前に計測しておいたデータを参照することにより、現在のΔSの値から送信装置と受信装置の間の角度を推測することができる。
【0026】
ここで、送信アンテナ毎の受信信号強度の差分ΔSには、送信アンテナ毎の送信信号電力に対し、送信アンテナ利得と受信アンテナ利得、伝搬損失が影響する。ここで、各送信アンテナからの送信電力を同一とし、各送信アンテナと受信アンテナ間の伝搬損失も同一であるとみなすと、送信アンテナ毎の受信信号強度の差分ΔSは各送信アンテナの利得の差であると考えることができる。よって、ΔSは2つの指向性アンテナの送信利得によって決定され、受信システムの利得や伝搬損失に依存しないことが分かる。したがって、あらかじめ計測に利用した受信装置と、実際に角度検出に利用する受信装置は同一のものでなくとも良い。また、受信システムと送信システム間の距離もΔSに影響を与えない。
【0027】
本発明で言う「送信装置」、「受信装置」はそれぞれデータ・フレームの送信側、受信側を意味するのではなく、到来角の推定に用いられるフレームの送信側、受信側を意味する。通信シーケンスによっては、データ・フレームの送信側でなく受信側(例えば、データ・フレームに対して確認応答フレームを返す通信機器)が「送信装置」となることもある。
【0028】
送信装置が主体となって到来角の推定に用いられるフレームの転送を行なう方式では、例えば、指向性アンテナを装備した通信装置が送信に用いるアンテナを交互に切り替えながらデータ・フレームを転送し、受信装置側で転送されたデータ・フレームの信号強度を計測する。送信装置側で上位層に転送すべき送信データがない場合には、データ・サイズが0のデータ・フレームを生成して送信する。また、データ・フレームを転送する際には、一定の周期で送信に利用する指向性アンテナを切り替えて、受信装置側で両方のアンテナからほぼ同じ頻度でフレームを受信できるようにする。
【0029】
一方、受信装置が主体となって到来角の推定に用いられるフレームの転送を行なう方式では、到来角を推定する受信装置側が一定間隔でデータ・フレームを送信し、これに対し2つ指向性アンテナを装備した送信装置から返送される確認応答フレームの信号強度を受信装置が計測する。また、受信装置側で上位層に転送すべきデータがない場合は、データ・サイズが0のデータ・フレームを生成し送信する。
【0030】
IEEE802.11では、データ・フレームの転送に対して、受信側からデータ・フレームを受信した際に必ず確認応答フレーム(ACK/NACK)を返送する仕様になっているので、一定間隔でデータ・フレームを送信すると、同様にほぼ一定間隔で確認応答フレームを受信することができる。したがって、このような通信手順を利用することによって、受信装置は、送信アンテナ毎に送信される確認応答フレームの受信信号強度に基づいて到来角の推定を行なうことができる。
【0031】
また、本発明の第2の側面は、送信装置から無線送信されるフレームが受信装置に到来する到来角を推定する到来角推定システムであって、
前記送信装置は、当該装置の正面に指向特性を持つ指向性アンテナを備え、
前記受信装置は、当該装置の正面に対しそれぞれ±θ度だけ指向特性が傾くように配置された2つの指向性アンテナを備え、前記送信装置から送信されるフレームを前記の指向性アンテナを交互に用いて受信した際の受信アンテナ毎のフレームの各受信信号強度の比較に基づいて前記到来角を推定する、
ことを特徴とする到来角推定システムである。
【0032】
このように受信装置において指向性アンテナを利用する場合には、送信装置側にそれぞれ±θ度だけ指向特性が傾くように配置された2つの指向性アンテナを装備した第1の側面に係るシステムとは相違し、送信装置側で送信フレーム中に送信アンテナの情報を格納するなどの特別な処理を必要としない。
【0033】
第2の側面に係る到来角推定システムにおいても、送信装置並びに受信装置のいずれもが主体となって到来角の推定に用いられるフレームの転送を行なうことができる。
【0034】
前者の場合、送信装置がデータ・フレームを転送し、受信装置側では受信アンテナを交互に切り替えながら、データ・フレームの信号強度を計測する。また、送信装置側で上位層に転送すべき送信データがない場合には、データ・サイズが0のデータ・フレームを生成して送信する。また、受信装置は、受信に利用する指向性アンテナを一定の周期で切り替え、両方の受信アンテナからほぼ同じ頻度でフレームを受信できるようにする。
【0035】
また、後者の場合、到来角を推定する受信装置側がいずれかの指向性アンテナを用いて一定間隔でデータ・フレームを送信し、これに対し送信装置から返送される確認応答フレームを受信装置が受信アンテナを交互に切り替えながら受信して、これらの信号強度を計測する。また、受信装置側で上位層に転送すべきデータがない場合は、データ・サイズが0のデータ・フレームを生成し送信する。
【0036】
また、本発明の第3の側面は、送信装置から無線送信されるフレームが受信装置に到来する到来角を推定する到来角推定システムであって、
前記送信装置は、当該装置の正面に対しそれぞれ±θ度だけ指向特性が傾くように配置された2つの指向性アンテナを備え、
前記受信装置は、当該装置の正面に対しそれぞれ±θ度だけ指向特性が傾くように配置された2つの指向性アンテナを備え、前記送信装置から送信されるフレームを前記の指向性アンテナを交互に用いて受信した際の受信アンテナ毎のフレームの各受信信号強度の比較に基づいて前記到来角を推定する、
ことを特徴とする到来角推定システムである。
【0037】
本発明の第3の側面に係る到来角推定システムでは、前記送信装置と前記受信装置の間の角度をさまざまに変化させながら、前記送信装置が送信アンテナを交互に切り替えながら前記受信装置にフレームの送信を行なう。これに対し、前記受信装置が受信アンテナを交互に切り替えながらフレームを受信した際の、受信アンテナ毎に各送信アンテナからの受信信号強度を計測し、その差分ΔSを計算すると、各受信アンテナについて送信アンテナ毎のΔSと前記送信装置及び前記受信装置間の角度との関係をあらかじめ記憶しておく。
【0038】
その後、前記送信装置が送信アンテナを交互に切り替えながら前記受信装置と通信を行なう際には、同時に前記受信装置が受信アンテナを交互に切り替えながら前記送信装置からフレームを受信したときの各受信アンテナにおける受信信号強度を計測する。そして、受信アンテナ毎に現在得られた送信アンテナ間の受信信号強度の差分ΔSを求めると、これらを以前に計測しておいたデータを比較することによって、前記送信装置と前記受信装置の間の角度を推測することができる。
【0039】
このように、受信装置は、受信アンテナ毎に、2つの送信アンテナから交互に送信されたフレームからΔSと送信装置及び受信装置間の角度との関係を得るとともに、2通りの送受信装置間の相対的な角度の判別結果を得ることができる。そして、これら2通りの判別結果に基づいて、よりロバストな到来角の推定を行なうことができる。
【0040】
第3の側面に係る到来角推定システムにおいても、第1及び第2の側面に係るシステムと同様に、送信装置並びに受信装置のいずれもが主体となって到来角の推定に用いられるフレームの転送を行なうことができる。
【0041】
また、本発明の第4の側面は、垂直偏波の性質を持つ2つの指向性アンテナを互いの偏波方向を略90度だけ傾きを以って正面に取り付けた送信装置と、正面に指向特性を持つ指向性アンテナを持つ受信装置を備え、前記送信装置から前記の指向性アンテナの各々から交互にフレームを送信した際の、送信アンテナ毎の前記受信装置側におけるフレームの各受信信号強度の比較に基づいて前記送信装置の水平方向に対する傾きを推定することを特徴とする通信システムである。
【0042】
本発明の第4の側面に係る通信システムによれば、送信装置の水平方向に対する傾きを、簡素で小型、且つ安価な構成により推定することができる。
【0043】
具体的には、前記送信装置の水平方向に対する傾きをさまざまに変化させながら、前記送信装置が送信アンテナを交互に切り替えて前記受信装置にフレームの送信を行なうとともに、前記受信装置がフレームを受信した際の各送信アンテナからの受信信号強度を計測して、送信アンテナ間の差分ΔPを求める。そして、ΔPと前記送信装置及び前記受信装置間の角度との関係をあらかじめ記憶しておく。
【0044】
その後、前記送信装置が送信アンテナを交互に切り替えながら前記受信装置と通信を行なう際に、同時に前記受信装置は前記送信装置の各送信アンテナからフレームを受信したときの受信信号強度を計測して、現在得られた送信アンテナ間の受信信号強度の差分ΔPを以前に計測しておいたデータを比較することにより、前記送信装置の水平方向に対する傾きを推測することができる。
【0045】
ここで、送信装置は、送信アンテナとして複数の給電点が設けられたマイクロストリップ・アンテナを用いることができる。この場合、各アンテナにおける給電点を切り替えることによって、2つの指向性アンテナの偏波の組合せを変更することができる。そして、信号処理の結果と、アンテナ切替制御機構と給電点切替制御機構からのアンテナ情報を基に、通信機器の傾きと相対角度の計測を行なう。このような構成のシステムを用いることにより、1組のアンテナだけで、受信装置と送信装置間の相対角度の検出とともに、送信装置の傾きを検出の2つの機能を行なうことが可能となる。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、比較的近距離で十分な見通しを得ることができる状況下で用いられ、複数のアンテナを装備した無線通信装置を用いて簡素で小型、低コストに構成される、優れた到来角推定システム、通信装置、並びに通信システムを提供することができる。
【0047】
本発明に係る到来角推定システムは、送信装置又は受信装置の少なくとも一方が、正面に対しそれぞれ±θ度だけ指向特性が傾くように配置された2つの指向性アンテナを備え、アンテナを交互に切り替えながらフレームを送信又は受信して、受信装置側において送信又は受信アンテナ間での受信信号強度の差分に基づいて到来角を推定することができる。
【0048】
無線LANカードを始めとしてほとんどすべての無線機器がダイバーシティを行なうために、2つ以上のアンテナ素子と送受信装置を装備していることを考量すると、2つの指向性アンテナを備えた送信装置又は受信装置を構成することに特段のコスト増を招来することはなく、簡素で小型、且つ安価にシステムを構成することができる。また、主として携帯電話機などの小型機器への適用を考えると、概ね30〜40度程度の十分な精度を得ることができる。
【0049】
本発明では、無線通信機器がIEEE802.11に基づく技術を利用することを想定しており、インフラストラクチャ・モード並びにアドホック・モードのいずれのネットワーキングにおいても好適に到来角の推定を行なうことができる。また、IEEE802.11のような既存の無線技術と簡素な指向性アンテナを組み合わせることで、±30度程度の十分な推定精度を実現することができる。
【0050】
本発明のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する本発明の実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳解する。
【0052】
A.アンテナの構成
本発明に係る到来角推定システムは、複数のアンテナを装備する無線通信装置の利用を前提としている。現在、ほとんどの無線通信装置はダイバーシティのための複数のアンテナを装備していることから、一般に入手可能な無線通信装置のほとんどがこの前提条件を満たしている。
【0053】
また、本発明に係る到来角推定システムは、主として携帯電話機などの小型機器への適用を想定しており、概ね30〜40度程度の精度が得られれば十分である。よって、半値角40〜120度程度の小型指向性アンテナを用いることが相当であり、例えば、1辺の長さが2cm程度の低コストで小型のマイクロストリップ・アンテナを利用することができる。
【0054】
図1には、マイクロストリップ・アンテナの構成例とそのインピーダンス整合回路を示している。マイクロストリップ・アンテナは、絶縁性物質を介在物として放射導体と導体地板とを対向して配置することにより構成される。放射導体の形状は、特に決まりはないが、大体において矩形若しくは円形が用いられている。図示の例では、矩形の放射導体板が用いられる。絶縁性物体には誘電体が用いられ、その厚みは概ね、無線周波数の波長λの1/10以下とされ、ゆえに薄型である。
【0055】
実際の製造においては、両面銅張りの誘電体基板をエッチング加工してマイクロストリップ・アンテナを製作されることが多いので、製造が容易であり、又は回路基板との一体化が容易である。最低次モード(矩形の場合はTM10−mode)で励振された場合の放射指向性は、概ねz軸方向の単方向性を示し、数dBi程度の指向性利得が得られる。また、励振させるために給電点は中心より若干オフセットした位置に設けられ、このオフセット長を調節することにより、50オームに整合をとることが可能である。また、給電点のオフセット方向により、アンテナの偏波方向を決定することができる。
【0056】
本発明に係る到来角推定システムは、2以上のアンテナを装備していることと、半値角が40〜120度程度の指向性があることという上述した条件を満たしていれば、送信側又は受信側として通信を行なういずれの通信機器に対しても適用することができる(後述)。
【0057】
図2には、半値角60度の指向性アンテナが持つ指向性の典型的な性質を示している。同図において、X軸は送信アンテナと受信装置間の相対角度を示し、Y軸は受信装置におけるフレームの受信信号強度(RSSI:Receiving Signal Strength Indicator)を示している。
【0058】
送信装置の指向性アンテナから送信された無線フレームを受信装置で受信し、その受信信号強度を計測することによって、指向性アンテナの角度を判別するという到来角を推定する方法が考えられる。単体の指向性アンテナでこの方法を実施する場合には、幾つかの困難がある。図3には指向性アンテナが受信装置に正対しているものの両者の距離はやや離れているシステム構成例を示し、図4では指向性アンテナと受信装置の距離は近いが、指向性アンテナが受信装置に正対していないシステム構成例を示している。これら2通りの状況では、受信側で計測される信号強度はほぼ同じ値となるとしても、信号強度だけからではどちらの状況かを判別することはできない。
【0059】
本発明では、無線LANカードを始めとしてほとんどすべての無線機器がダイバーシティを行なうため、2つ以上のアンテナ素子と送受信装置を装備していることを利用する。
【0060】
通常のダイバーシティでは、無線機器は2つのアンテナ素子と2つのフレーム送受信装置を装備し、複数の受信装置を同時に動作させ、無線フレームをすべての装置で受信する。このような方法をとることで、たとえ1つの受信装置で受信する信号強度が一時的に低下し、データの信頼性が劣化している場合であっても、別の受信装置における信号強度が十分であれば通信は安定して継続することができる。
【0061】
これに対し、本発明では、送受信装置はそれぞれ図2に示したような指向特性を持つ指向性アンテナを装備するが、送信装置10側では互いのアンテナの指向特性が角度を持つように、2つの平面アンテナを傾けて図5に示すように取り付け、受信装置20に対向して配置している。
【0062】
あるいは、図6に示すように偏向した指向特性を持つ各指向性アンテナを並列に配置する(例えば、指向性が互いに傾いた平面アンテナを同一平面上に配置する)ようにしもよい。
【0063】
図5に示した2つの指向性アンテナを傾けて配置したシステム、又は図6に示した指向特性からなる指向性アンテナを用いたシステムのいずれも、2つの指向性アンテナによる指向特性は、図7に示すようになる。同図では、2つのアンテナ素子間の干渉を考慮していないが、実際には、2つのアンテナ素子を近接させるときのアンテナ間の相互結合による影響によって、それぞれのアンテナの指向特性が中央寄りに若干偏向する。このため、それぞれのアンテナの指向特性を個別に計測するのではなく、2つの指向性アンテナを配置した状況で送信装置全体としての指向特性を計測することが好ましい。
【0064】
B.信号強度の計測方法
上述したように、本発明に係る到来角推定システムは、正面に対しそれぞれ±θ度(例えば、θ=30)だけ指向特性が傾くように配置された2つの指向性アンテナを備えた送信装置10と、正面に指向特性を持つ指向性アンテナを備えた受信装置20で構成される。
【0065】
送信装置か10らは、送信に用いるアンテナを短い間隔で交互に切り替えながらフレームを送信する。その際、どちらのアンテナから送信したかを判別するための情報を各送信フレームに付加する。
【0066】
受信装置20では、受信したフレームに埋め込まれた情報を読み取ると、フレームが送信装置10側のどちらのアンテナを利用して送信されたものかを判別する(但し、どちらのアンテナから送信されたものかを判別する具体的な手法については、後述に譲る)。そして、送信に用いたアンテナ毎に受信フレームの信号強度の平均値を求める。このとき、アンテナ1から送信されたフレームの受信信号強度の平均値をSig1、アンテナ2から送信されたフレームの受信信号強度の平均値をSig2とし、2つの信号強度の差ΔSは、ΔS=Sig1−Sig2で求めるものとする。ΔSは指向性アンテナを装着した送信装置10と受信装置20間の相対角度の違いにより変化する。
【0067】
したがって、送信装置10と受信装置20の間の角度をさまざまに変化させながら、各送信アンテナから受信したフレームの信号強度の差分ΔSを計測して、ΔSと送信装置10及び受信装置20間の角度との関係をあらかじめ記憶しておく。その後、送信装置10と受信装置20は通信を行なう際に、同時に信号強度からΔSを計測し、以前に計測しておいたデータを参照することにより、現在のΔSの値から送信装置10と受信装置20の間の角度を推測することができる。
【0068】
但し、本発明で言う「送信装置」、「受信装置」はそれぞれデータ・フレームの送信側、受信側を意味するのではなく、到来角の推定に用いられるフレームの送信側、受信側を意味する。通信シーケンスによっては、データ・フレームの送信側でなく受信側が「送信装置」となることもある。
【0069】
図8には、送信に用いたアンテナ間での受信信号強度の差分ΔSと送信装置10及び受信装置20間の角度との関係を実線で示している。但し、図1に示した指向特性を持つ2つの指向性アンテナを図5に示したようにそれぞれ送信装置10の正面から±30度だけ角度をつけて配置している。また、受信装置20のアンテナは正面方向に指向特性を持つものとする。ちなみに、アンテナ1から送信されたフレームの受信信号強度のSig1、並びにアンテナ2から送信されたフレームの受信信号強度Sig2は、図8中でそれぞれ破線、一点鎖線で示している。
【0070】
図8では、X軸は送信装置10側の各指向性アンテナと受信装置20の相対角度を示し、Y軸は信号強度を示している。同図より、送信装置10と受信装置20の相対角度が0度のとき、すなわち送信装置10の正面が受信装置20の正面に正対しているときには、アンテナ1及びアンテナ2の各々から受信したフレームの信号強度の差分ΔSは0となる。そして、向き合っている送信装置10の正面方向と受信装20置の正面方向のなす角度の差が大きくなるにつれて、ΔSは徐々に増加又は減少していく。
【0071】
本発明に係る到来角推定システムは、図5又は図6に示したように構成されるが、各送信アンテナから受信したフレームの信号強度の差分ΔSと送信装置10及び受信装置20間の角度との関係を利用することによって、送信装置10からの送信フレームが受信装置20に到来する到来角を推定する。まず、送信装置10と受信装置20の間の角度をさまざまに変化させながら、ΔSを計測し、そのデータをあらかじめ当該システムに記録しておく。そして、送信装置10や受信装置20は通信を行ないながら、同時に信号強度からΔSを計測し、以前に計測しておいたデータを参照することにより、現在のΔSの値から送信装置10と受信装置20の間の角度を推測するようにする。
【0072】
いま、受信装置20における受信信号強度をPr[dBm]とすると、Prは以下の式(1)で表すことができる。
【0073】
【数1】
【0074】
上式(1)において、Pt[dBm]は送信装置10における電波の送信電力、Gt[dBi]は送信アンテナの利得、Gr[dBi]は受信アンテナの利得である。また、Γは自由空間における電波の伝搬損失である。ここで、送信装置10に設置された指向性アンテナ1の利得をG1t、送信電力をP1t、伝搬損失をΓ1とし、さらに指向性アンテナ2の利得をG2t、送信電力をP2t、伝搬損失をΓ2とする。指向性アンテナ1及び2をそれぞれ単独で用いて送信された電波を受信装置20で受信したときの受信信号強度をそれぞれP1r[dBm]、P2r[dBm]とすると、これら受信信号強度P1r並びにP2rは以下の式(2)並びに(3)で表すことができる。
【0075】
【数2】
【0076】
送信装置10側で同一の電力を2つの指向性アンテナに与える場合、各送信1及び2からの送信電力P1tとP2tは同値となる。伝搬損失は、Γ1とΓ2は2つの送信アンテナと受信装置20間の距離や障害物、反射物の状況によって変化する値である。本発明では送信装置10側の2つの指向性アンテナの距離は3〜20cm程度であり、送信アンテナと受信アンテナとの距離は3m以内であることを前提としている。したがって、2つの送信アンテナと受信装置20との距離や障害物、反射物の状況はほぼ同一であると仮定することができ、それぞれの伝搬損失Γ1とΓ2も同値とみなすことができる。以上のことから、送信装置10側の2つの指向性アンテナから送られた電波の受信装置20における受信電力の差P1r−P2rは、以下の式(4)で表すことができる。
【0077】
【数3】
【0078】
このP1r−P2rが上述したΔSに相当する。上式(4)に示されるように、ΔSは2つの指向性アンテナの送信利得によって決定され、受信装置20の利得や伝搬損失に依存しないことが分かる。したがって、あらかじめ計測に利用した受信装置20と、実際に角度検出に利用する受信装置20は同一のものでなくとも良い。また、受信装置20と送信装置10間の距離もΔSに影響を与えない。
【0079】
勿論、上述したモデルは理想状況におけるものであり、実際にはΓ1とΓ2が同一とはならない場合が多い。しかしながら、送信装置10が受信装置20に対して、「ほぼ正対している」、「右を向いている」、「左を向いている」といった比較的低精度の判別には十分な精度を得ることができる。
【0080】
図12には、送信装置10の構成を模式的に示している。送信装置10は、指向特性が互いに偏向するように配置された2つの指向性アンテナ1及び2を備えている。以下では、送信装置10が持つ2つの指向性アンテナをそれぞれ「アンテナ1」、「アンテナ2」と呼ぶことにする。信号処理部3は、通信プロトコルの上位層から供給される送信データに対しベースバンドなどの所定の処理を施す。RF部4は、送信ベースバンド信号をアナログ信号に変換し、さらにRF信号にアップコンバートする。アンテナ切替制御機構5は、転送制御部6からの指示に従い、送信に用いるアンテナを短い一定の間隔で交互に切り替えながらフレームを送信する。その際、どちらのアンテナから送信したかを判別するための情報を各送信フレームに付加する。
【0081】
図10には、到来角の推定を行なう際に送信装置10が実行する処理手順をフローチャートの形式で示している。
【0082】
まず、信号処理部及びRF部においてフレーム送信の準備を行なう(ステップS1)。そして、転送制御部は、送信に用いるアンテナを短い一定の間隔で交互に切り替える(ステップS2)。
【0083】
フレームを送信するアンテナをアンテナ1に選択したときには、フレームにアンテナ1の情報を付加し、アンテナ切替機構を介してアンテナ1にRF送信信号を転送する(ステップS3)。また、フレームを送信するアンテナをアンテナ2に選択したときには、フレームにアンテナ2の情報を付加し、アンテナ切替機構を介してアンテナ2にRF送信信号を転送する(ステップS4)。
【0084】
また、図11には、到来角の推定を行なう際に受信装置が実行する処理手順をフローチャートの形式で示している。
【0085】
受信装置は、送信装置からのフレームを受信すると(ステップS11)、当該フレーム中に埋め込まれた情報を読み取って、送信装置側のどちらのアンテナを利用して送信されたものかを判別するとともに(ステップS12)、受信フレームの信号強度を計測する。
【0086】
受信フレームがアンテナ1から送信されたものである場合には、計測した受信信号強度をアンテナ1のデータとして保存し(ステップS13)、アンテナ2から送信されたものである場合には、該受信信号強度をアンテナ2のデータとして保存する(ステップS14)。
【0087】
そして、十分なデータが得られたときには(ステップS15のYes)、アンテナ1から送信されたフレームの受信信号強度の平均値Sig1と、アンテナ2から送信されたフレームの受信信号強度の平均値Sig2の差ΔSを求め、以前に計測しておいたデータを参照することにより、現在のΔSの値から送信装置と当該受信装置の間の角度を推測する(ステップS16)。
【0088】
C.送信アンテナの判別方法
受信装置では、受信したフレームが送信装置側のどちらのアンテナを利用して送信されたものかを判別する必要がある。ここでは送信アンテナの判別方法について説明する。
【0089】
本発明では、無線通信機器がIEEE802.11に基づく技術(802.11a、802.11b、802.11g)を利用することを想定している。
【0090】
図9には、IEEE802.11のフレーム・フォーマットを示している。IEEE802.11のフレームは、30バイトの大きさを持つMAC(Machine Access Control)ヘッダと0−2312バイトの大きさを持つFrame Body(フレーム・ボディ)と4バイトのFCS(フレーム・チェック・シーケンス)から構成される。30バイトのMACヘッダのうち先頭の2バイト(16ビット)は、Frame Controlと呼ばれ、フレームの制御情報を格納している。Frame Controlフィールドの16ビットは、図9中の下部分に示した構造を持つ。このうち2ビットのTypeと4ビットのSubtypeフィールドを用いてフレームの種別を指定する。例えば、Typeフィールドの値が1のときは当該フレームが制御用の情報を含むフレームであることを示し、Subtypeフィールドの値が13(2進数で1101)のときは当該フレームが制御用フレームのうち確認応答の情報を含むものであることを示す。
【0091】
図5に示した通信システムでは、送信装置10は、フレームがどちらからのアンテナから送信したかを識別するために、データ・フレームと確認応答フレームの2つの種類のフレームに送信アンテナの情報を付加する。データ・フレームの場合、Typeフィールドの値は2となる。このとき、Subtypeフィールドはデータ・フレームの種別を表すために利用され、0から3の値をとることにより(Subtypeの値により格納する情報が微妙に異なる)当該フレームがデータを格納するフレームであることを示す。また、Subtypeフィールドが8以上(2進数で1000)を越える値は現時点で定義されていない。送信アンテナの情報を伝達するために、この未定義のSubtypeフィールドの値を利用することができる。すなわち、Subtypeフィールドが8から11の値をとる場合(2進数で1000から1011)、このフレームがアンテナ1から送信されたものであることを示し、12から15の値をとる場合(2進数で1100から1111)、このフレームがアンテナ2から送信されたものであることを示す。
【0092】
確認応答フレームは、制御フレームの一種であるため、Typeフィールドの値は1となる。また、確認応答フレームで利用するSubtypeの値は13(2進数で1101)のみである。制御フレームにおけるSubtypeのうち、0−9(2進数で0000から1001)までの値は未定義であり、この部分を利用して送信アンテナを識別する情報を伝達することができる。すなわち、Subtypeフィールドの値が5の場合(2進数で0101)はアンテナ1を、同フィールドの値が6の場合(2進数で0110)はアンテナ2を利用して、フレームが送信されたものであることを示す。
【0093】
D.フレーム転送方式
本発明に係る到来角推定システムでは、指向性アンテナを装備した通信装置が送出したフレームを受信装置が観測することにより、指向性アンテナを装備した通信装置と受信装置の相対的な角度を推測する。このため、送信装置側のアンテナから受信装置に対して到来角の推定(すなわち受信信号強度の測定)に用いるフレームを定期的に転送する必要がある。
【0094】
但し、本発明で言う「送信装置」、「受信装置」はそれぞれデータ・フレームの送信側、受信側を意味するのではなく、到来角の推定に用いられるフレームの送信側、受信側を意味する。到来角の測定対象の機器を「送信装置」、到来角を測定する側の機器を「受信装置」と言い換えることもできる。通信シーケンスによっては、データ・フレームの送信側でなく受信側が「送信装置」となることもある。例えば、携帯端末(Mobile Device)が「送信装置」となり、PCなどの据え置き型の通信機器が「受信装置」すなわちSensing Deviceとなって、ユーザが振りかざす携帯端末からの到来角をPC側で推定する。
【0095】
IEEE802.11におけるネットワーキングは、BSS(Basic Service Set)の概念に基づいている。BSSは、アクセスポイント(AP)が存在する「インフラストラクチャ・モード」で定義されるBSSと、複数のMT(Mobile Terminal:移動局又は端末局)のみにより構成される「アドホック・モード」で定義されるIBSS(Independent BSS)の2種類で構成される。
【0096】
図23Aには、インフラストラクチャ・モードにおいて、携帯端末からの到来角をPC側で推定する様子を示している。アドホック・モード下で携帯端末とPCが直接通信を行なっている際に、PCは、携帯端末が自分宛てに送信したフレームの受信信号強度を計測して、到来角の推定を行なうことができる。
【0097】
また、図23Bには、インフラストラクチャ・モードにおいて、携帯端末からの到来角をPC側で推定する様子を示している。図示の例では、携帯端末とPCはアクセスポイント経由で通信しており、PCは携帯端末がアクセスポイントに宛てたフレームの受信信号強度を計測して、到来角の推定を行なっている。また、図23Cに示す例では、インフラストラクチャ・モードにおいて、携帯端末とPCがアクセスポイント経由で通信している際に、通信相手でないPCが携帯端末がアクセスポイントに宛てたフレームの受信信号強度を計測して、到来角の推定を行なっている。
【0098】
到来角の推定(すなわち受信信号強度の測定)に用いるフレームの転送方式には、送信側主体のフレーム転送方式と、受信側主体のフレーム転送方式の2通りの転送方式が考えられる。
【0099】
送信側主体のフレーム転送方式では、一定間隔で指向性アンテナを装備した通信装置10がデータ・フレームを転送し、受信装置20側で転送されたデータ・フレームの信号強度を計測する。上位層に転送すべき送信データがない場合には、データ・サイズが0のデータ・フレームを生成して送信する。また、データ・フレームを転送する際には、一定の周期で送信に利用する指向性アンテナを切り替えて、受信装置20側で両方の送信アンテナからほぼ同じ頻度でフレームを受信できるようにする。
【0100】
一方、受信側主体のフレーム転送方式では、到来角を推定する受信装置20側が一定間隔でデータ・フレームを送信し、これに対し2つ指向性アンテナを装備した送信装置10から返送される確認応答フレームの信号強度を計測する。上位層に転送すべきデータがない場合は、データ・サイズが0のデータ・フレームを生成し送信する。IEEE802.11では、データ・フレームの転送に対して、受信側からデータ・フレームを受信した際に必ず確認応答フレーム(ACK/NACK)を返送する仕様になっている。このため、一定間隔でデータ・フレームを送信すると、同様にほぼ一定間隔で確認応答フレームを受信することができる。したがって、IEEE802.11で策定されるこのような仕様を利用して、送信アンテナ毎に送信される確認応答フレームの受信信号強度に基づいて到来角の推定を行なうことができる。
【0101】
E.受信装置において2つの指向性アンテナを利用するシステム
ここまでの説明では、送信装置10側にそれぞれ±θ度だけ指向特性が傾くように配置された2つの指向性アンテナを装備したシステムについて説明してきたが、送信装置10ではなく受信装置20側に同様に2つの指向性アンテナを装備することによっても、送信装置10との相対的な角度を判別することができる。
【0102】
後者の到来角推定システムでは、受信装置20が、送信装置10からのフレーム受信時に、アンテナ1とアンテナ2を一定間隔で切り替えながら受信を行ない、それぞれのアンテナ毎にフレーム受信信号強度の平均値Sig1及びSig2を計測し、各受信信号強度の差ΔS=Sig1−Sig2を求め、あらかじめ記憶しておいたΔSと送信装置10及び受信装置20間の角度との関係としてあらかじめ記憶しておく。そして、到来角の推定時には、受信装置20は、アンテナ1とアンテナ2を一定間隔で切り替えながら送信装置10からのフレームの受信を行ない、その際に各受信信号強度の差ΔSを計測し、あらかじめ記憶しておいたΔSと到来角との関係に基づいて、送信装置10と受信装置20間の相対的な角度の判別を行なう。
【0103】
この場合の受信装置20の構成は図12に示したものと同様となるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0104】
図13には、±θ度だけ指向特性が傾くように配置された2つの指向性アンテナを装備した受信装置20が到来角の推定を行なう際に実行する処理手順をフローチャートの形式で示している。
【0105】
転送制御部6は、受信に用いる指向性アンテナを選択し(ステップS21)、送信装置からフレームが到来すると(ステップS22)、受信アンテナを確認する(ステップS23)。
【0106】
アンテナをアンテナ1に選択したときには、アンテナ切替機構5を介してアンテナ1で受信したRF信号をRF部に転送し、さらに信号処理部3で復号・復調処理を行なう。また、その際に計測した受信信号強度をアンテナ1のデータとして保存する(ステップS24)。一方、アンテナをアンテナ2に選択したときには、アンテナ切替機構5を介してアンテナ2で受信したRF信号をRF部に転送し、さらに信号処理部3で復号・復調処理を行なう。また、その際に計測した受信信号強度をアンテナ2のデータとして保存する(ステップS25)。
【0107】
そして、十分なデータが得られたときには(ステップS26のYes)、アンテナ1で受信したフレームの受信信号強度の平均値Sig1と、アンテナ2で受信したフレームの受信信号強度の平均値Sig2の差ΔSを求め、以前に計測しておいたデータを参照することにより、現在のΔSの値から送信装置10と当該受信装置20の間の角度を推測する(ステップS27)。
【0108】
このように受信装置20において指向性アンテナを利用する場合には、送信装置10側にそれぞれ±θ度だけ指向特性が傾くように配置された2つの指向性アンテナを装備したシステムとは相違し、送信装置10側で送信フレーム中に送信アンテナの情報を格納するなどの特別な処理を必要としない。
【0109】
また、受信装置20において指向性アンテナを利用する到来角推定システムにおいても、送信装置10並びに受信装置20のいずれもが主体となって到来角の推定に用いられるフレームの転送を行なうことができる。
【0110】
前者の場合、送信装置10がデータ・フレームを転送し、受信装置20側では受信アンテナを交互に切り替えながら、データ・フレームの信号強度を計測する。また、送信装置10側で上位層に転送すべき送信データがない場合には、データ・サイズが0のデータ・フレームを生成して送信する。また、受信装置20は、受信に利用する指向性アンテナを一定の周期で切り替え、両方のアンテナからほぼ同じ頻度でフレームを受信できるようにする。
【0111】
また、後者の場合、到来角を推定する受信装置20側がいずれかの指向性アンテナを用いて一定間隔でデータ・フレームを送信し、これに対し送信装置10から返送される確認応答フレームを受信装置20が受信アンテナを交互に切り替えながら受信して、これらの信号強度を計測する。また、受信装置20側で上位層に転送すべきデータがない場合は、データ・サイズが0のデータ・フレームを生成し送信する。
【0112】
F.送受信装置双方が2つの指向性アンテナを利用するシステム
ここまでの説明では、送信装置10又は受信装置20のいずれか一方のみがそれぞれ±θ度だけ指向特性が傾くように配置された2つの指向性アンテナを装備したシステムについて説明してきたが、送信装置10と受信装置20の双方が2つの指向性アンテナを装備することによっても、送信装置10との相対的な角度を判別することができる。
【0113】
送信装置10と受信装置20の双方が2つの指向性アンテナを利用するシステムでは、送信装置10は送信に用いるアンテナを一定間隔で切り替えながら、フレームを送信する。その際、フレームには送信アンテナに関する情報を付加する(同上)。一方、受信装置20は、送信装置10からのフレーム受信時に、アンテナ1とアンテナ2を一定間隔で切り替えながら受信を行ない、それぞれの受信アンテナ毎に、各送信アンテナから送信されたフレームの受信信号強度の平均値Sig1及びSig2を計測し、各受信信号強度の差ΔS=Sig1−Sig2を求め、あらかじめ記憶しておいたΔSと送信装置10及び受信装置20間の角度との関係としてあらかじめ記憶しておく。
【0114】
そして、到来角の推定時には、送信装置10は送信に用いるアンテナを一定間隔で切り替えながら、フレームを送信する。その際、フレームには送信アンテナに関する情報を付加する(同上)。これに対し、受信装置20は、2つの受信アンテナを一定間隔で切り替えながら送信装置10からのフレームの受信を行なう。その際に、受信アンテナ毎に、各送信アンテナから送信されたフレームの受信信号強度の差ΔSを計測し、あらかじめ記憶しておいたΔSと到来角との関係に基づいて、送信装置10と受信装置20間の相対的な角度の判別を行なう。
【0115】
したがって、本システムによれば、受信装置20は、受信アンテナ毎に、2つの送信アンテナから交互に送信されたフレームからΔSと送信装置10及び受信装置20間の角度との関係を得るとともに、2通りの到来角の判別結果を得ることができる。そして、これら2通りの判別結果に基づいて、よりロバストな到来角の推定を行なうことができる。
【0116】
この場合の送信装置10及び受信装置20の構成はともに図12に示したものと同様となるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0117】
図14には、送信装置10と受信装置20の双方が2つの指向性アンテナを利用するシステムにおいて、受信装置20が到来角の推定を行なう際に実行する処理手順をフローチャートの形式で示している。
【0118】
転送制御部6は、受信に用いる指向性アンテナを選択し(ステップS31)、送信装置からフレームが到来すると(ステップS32)、受信アンテナを確認する(ステップS33)。
【0119】
受信アンテナをアンテナ1に選択したときには、アンテナ切替機構5を介してアンテナ1で受信したRF信号をRF部4に転送し、さらに信号処理部3で復号・復調処理を行なう。また、その際に計測した受信信号強度をアンテナ1のデータとして保存する(ステップS34)。
【0120】
次いで、当該フレーム中に埋め込まれた情報を読み取って、送信装置10側のどちらのアンテナを利用して送信されたものかを確認する(ステップS36)。そして、受信フレームが送信装置10側のアンテナ1から送信されたものである場合には、計測した受信信号強度をアンテナ1のデータとして保存し(ステップS37)、送信装置10側のアンテナ2から送信されたものである場合には、該受信信号強度をアンテナ2のデータとして保存する(ステップS38)。
【0121】
一方、受信アンテナをアンテナ2に選択したときには、アンテナ切替機構5を介してアンテナ2で受信したRF信号をRF部4に転送し、さらに信号処理部3で復号・復調処理を行なう。また、その際に計測した受信信号強度をアンテナ2のデータとして保存する(ステップS35)。
【0122】
次いで、当該フレーム中に埋め込まれた情報を読み取って、送信装置10側のどちらのアンテナを利用して送信されたものかを確認する(ステップS39)。そして、受信フレームが送信装置10側のアンテナ1から送信されたものである場合には、計測した受信信号強度をアンテナ1のデータとして保存し(ステップS40)、送信装置10側のアンテナ2から送信されたものである場合には、該受信信号強度をアンテナ2のデータとして保存する(ステップS41)。
【0123】
そして、十分なデータが得られたときには(ステップS42のYes)、アンテナ1から送信されたフレームの受信信号強度の平均値Sig1と、アンテナ2から送信されたフレームの受信信号強度の平均値Sig2の差ΔSを求め、以前に計測しておいたデータを参照することにより、現在のΔSの値から送信装置10と当該受信装置20の間の角度を推測する(ステップS43)。
【0124】
また、受信装置20において指向性アンテナを利用する到来角推定システムにおいても、送信装置10並びに受信装置20のいずれもが主体となって到来角の推定に用いられるフレームの転送を行なうことができる。
【0125】
前者の場合、送信装置10が送信アンテナを交互にデータ・フレームを転送し、受信装置20側では受信アンテナを交互に切り替えながら、データ・フレームの信号強度を計測する。また、送信装置10側で上位層に転送すべき送信データがない場合には、データ・サイズが0のデータ・フレームを生成して送信する。また、受信装置20は、受信に利用する指向性アンテナを一定の周期で切り替え、両方のアンテナからほぼ同じ頻度でフレームを受信できるようにする。
【0126】
また、後者の場合、到来角を推定する受信装置20側がいずれかの指向性アンテナを用いて一定間隔で送信アンテナを交互に切り替えながらデータ・フレームを送信し、これに対し送信装置10から返送される確認応答フレームを受信装置20が受信アンテナを交互に切り替えながら受信して、これらの信号強度を計測する。また、受信装置20側で上位層に転送すべきデータがない場合は、データ・サイズが0のデータ・フレームを生成し送信する。
【0127】
G.偏波を応用した通信システムの傾きの推定
上述した到来角の推定方法を応用して、指向性アンテナを装備した携帯通信機器の傾きを検知することもできる。
【0128】
例えば、図15に示すように、垂直偏波の性質を持つ指向性アンテナを1つは垂直に、もう1つは90度の傾きをつけて、送信装置10の同じ面上に設置する。このとき、2つのアンテナが装着された面を同図中の矢印で示すように回転させながら、一定の間隔で交互にアンテナを切替えながらフレームを送信する。図16には、受信装置20側で受信するフレームの信号強度の変化を示している。同図において、X軸は送信装置10の水平方向に対する傾きの角度を示し、Y軸は受信フレームの信号強度を示している。
【0129】
受信装置20は、上述と同様に受信フレーム中に埋め込まれた情報を読み取って、送信装置がどちらのアンテナを利用して送信されたフレームかを逐次的に判別する。そして、送信アンテナ毎にフレームの受信信号強度の平均値を求める。このとき、送信装置10側でアンテナ1から送信されたフレームの信号強度の平均値をSigP1とし、アンテナ2から送信されたフレームの信号強度の平均値をSigP2とすると、2つの信号強度の差ΔPは、ΔP=SigP1−SigP2で表すことができる。ΔPは指向性アンテナを装着した送信装置10の水平方向に対する傾きの角度によって変化する。図17には、ΔPと送信装置10の水平方向に対する傾きの角度の関係を示している。同図中ではΔPを実線で示し、アンテナ1から送信されたフレームの受信信号強度のSig1、並びにアンテナ2から送信されたフレームの受信信号強度Sig2をそれぞれ破線、一点鎖線で示している。
【0130】
このΔPの値を利用して、送信装置10の水平方向に対する角度を推測することができる。すなわち、送信装置10の水平方向に対する角度を変化させながらフレームを送信し、受信装置20側では受信したフレームの信号強度を計測するとともに、送信アンテナ間での受信信号強度の差ΔPと送信装置10の水平方向に対する角度の関係を求め、あらかじめ記録しておく。
【0131】
送信装置10が送信アンテナを交互に切り替えながら受信装置20と通信を行なう際には、受信装置20は、送信装置10の各送信アンテナからのフレームを受信して信号強度を計測し、さらに送信アンテナ間での信号強度の差ΔPを求める。そして、これを以前に計測しておいたデータを参照することにより、現在のΔPの値から送信装置10の傾きの角度を推測することができる。
【0132】
偏波を利用して傾きを検出する方法の問題点は、受信装置20と送信装置10の相対角度によりΔPの値が変動してしまうことである。このため、傾きを検出する際には、送信装置10と受信装置20があらかじめ決めておいた角度(例えば正対した状態)になった後に傾き検出を行なうようにする必要がある。
【0133】
送信装置10と受信装置20の角度を特定のものにするには、あらかじめ利用者に対し、傾き検出を行なう場合の立ち位置、方向などの情報を示すことによって実現することができる。
【0134】
H.複数の給電点を利用した通信機器の傾き及び相対角度の検出
本発明は、低コストで小型のマイクロストリップ・アンテナの利用を想定している。マイクロストリップ・アンテナには、給電点を変更するだけでさまざまな偏波に対応できるメリットがある。
【0135】
例えば、図18に示すような、2つの給電点1及び2を持つマイクロストリップ・アンテナを利用し、給電点1から給電するときには、垂直偏波、給電点2から給電するときには水平偏波を生成するように設計することができる。そして、このようなアンテナを図15と同様に送信装置の同じ面上に設置すると、給電点を切り替えることによって、2つの指向性アンテナの偏波の組合せを自在に変更することができる。例えば、垂直偏波の性質を持つ2つの指向性アンテナの偏波方向が一致し、あるいは互いに直交するように組み合わせることができる。
【0136】
図19には、垂直偏波の性質を持つ2つの指向性アンテナの偏波の組み合わせを自在に変更可能に構成された送信装置10の構成を示している。
【0137】
信号処理部3は、通信プロトコルの上位層から供給される送信データに対しベースバンドなどの所定の処理を施す。RF部4は、送信ベースバンド信号をアナログ信号に変換し、さらにRF信号にアップコンバートする。給電点切替制御機構7は、転送制御部6からの指示に従い、各指向性アンテナの給電点を切り替える。また、アンテナ切替制御機構5は、転送制御部6からの指示に従い、送信に用いるアンテナを短い一定の間隔で交互に切り替えながらフレームを送信する。その際、どちらのアンテナから送信したかを判別するための情報を各送信フレームに付加する。
【0138】
各指向性アンテナにはそれぞれ2つの給電点が設けられており、転送制御部6は、給電点切替制御機構7によりどちらの給電点から給電を行なうかを制御することで、偏波の組合せを変更する。
【0139】
そして、信号処理の結果と、アンテナ切替制御機構5と給電点切替制御機構7からのアンテナ情報を基に、通信機器の傾きと相対角度の計測を行なう。このような構成のシステムを用いることにより、1組のアンテナだけで、受信装置20と送信装置10間の相対角度の検出とともに、送信装置10の傾きを検出の2つの機能を行なうことが可能となる。
【0140】
I.実施例
以下では、上述した到来角推定システムの具体的なアプリケーションについて詳解する。
【0141】
I−1.壁に設置されたスクリーンと携帯端末のインタラクション
この例では、指向性アンテナを装着した携帯端末として構成される送信装置を利用者が操作する。受信装置は壁に設置されたスクリーンの内部若しくは近傍に設置されており、利用者の持つ携帯端末と受信装置の相対角度を計測することができる。このとき、スクリーンに表示する内容を携帯端末の角度に応じて変化させる。図20には、その概念図を示している。
【0142】
また、この例の応用として、指向性アンテナを装着した携帯端末を持った複数の利用者がいる状況において、受信装置に対して正対している端末同士は、壁に設置された受信装置を介して情報の交換を行なうことができるシステムも実現できる。情報交換の間はスクリーンに正対している端末の情報を表示するなどの処理を行なう。
【0143】
I−2.携帯端末の位置計測
この例では、図21に示すように、指向性アンテナを装着した携帯端末を利用者が操作する。このとき、複数の受信装置を利用し、携帯端末との相対角度をそれぞれ計測する。計測した結果より、携帯端末の空間内の位置を推測する
【0144】
I−3.携帯端末間のインタラクション
この例では、図22に示すように、指向性アンテナを装着した携帯端末をそれぞれの利用者が操作する。このとき、各携帯端末では、一定間隔で自分の正対位置に他の通信機器が存在するか否かを確認する。そして、携帯端末を持った利用者がお互いの携帯端末を正対させたときには、データ転送処理を開始して、少なくとも一方の携帯端末において到来角を推定する。
【0145】
I−4.携帯端末の傾き検出
この例では、G項で既に述べた手法を利用して、携帯端末の傾きを検出する。2つの指向性アンテナのうち1つのアンテナを90度傾けた状態で装着した携帯端末を、利用者が操作する。受信装置は壁に設置されたスクリーンの内部や近傍に設置されており、利用者の持つ携帯端末の水平方向に対する傾き角度を計測することができる(図20を参照のこと)。携帯端末を持った利用者は、初期位置としてスクリーンに対して正対する位置で静止し、携帯端末を任意の傾きに変化させる。受信装置側では、携帯端末の傾きに応じてスクリーンに表示する内容を変化させる。
【産業上の利用可能性】
【0146】
以上、特定の実施形態を参照しながら、本発明について詳解してきた。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施形態の修正や代用を成し得ることは自明である。
【0147】
本明細書では、主にIEEE802.11に準拠した無線技術に適用した実施形態を中心に説明してきたが、本発明の要旨は必ずしもこれに限定されるものではない。±30度程度でも到来角の推定精度として十分となるさまざまな無線通信システムに同様に本発明を適用することができる。
【0148】
要するに、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本発明の要旨を判断するためには、特許請求の範囲を参酌すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】図1は、マイクロストリップ・アンテナの構成例とそのインピーダンス整合回路を示した図である。
【図2】図2は、半値角60度の指向性アンテナが持つ指向性の典型的な性質を示した図である。
【図3】図3は、指向性アンテナと受信装置の構成例を示した図である。
【図4】図4は、指向性アンテナと受信装置の構成例を示した図である。
【図5】図5は、2つの指向性アンテナからなるシステムの構成例を示した図である。
【図6】図6は、偏向した指向特性を例示した図である。
【図7】図7は、指向特性が互いに偏向する2つの指向性アンテナからなる送信装置の指向特性を示した図である。
【図8】図8は、指向特性が互いに偏向する2つの指向性アンテナからなる送信装置の各指向性アンテナからのフレームを受信装置で受信した際の信号強度の平均値と2つの信号強度の差と送信装置及び受信装置間の到来角との関係を示した図である。
【図9】図9は、IEEE802.11のフレーム・フォーマットを示した図である。
【図10】図10は、到来角の推定を行なう際に送信装置が実行する処理手順を示したフローチャートである。
【図11】図11は、到来角の推定を行なう際に受信装置が実行する処理手順を示したフローチャートである。
【図12】図12は、送信装置の構成を模式的に示した図である。
【図13】図13は、±θ度だけ指向特性が傾くように配置された2つの指向性アンテナを装備した受信装置が到来角の推定を行なう際に実行する処理手順を示したフローチャートである。
【図14】図14は、送受信装置双方が2つの指向性アンテナを利用するシステムにおいて、受信装置が到来角の推定を行なう際に実行する処理手順を示したフローチャートである。
【図15】図15は、垂直偏波の性質を持つ指向性アンテナを1つは垂直に、もう1つは90度の傾きをつけて設置した様子を示した図である。
【図16】図16は、図15に示した指向性アンテナが装着された面を同図中の矢印で示すように回転させながら、一定の間隔で交互にアンテナを切替えながらフレームを送信するときの、受信装置側で受信するフレームの信号強度の変化を示した図である。
【図17】図17は、それぞれ垂直偏波の性質を持つとともに偏波方向が互いに直交するように配置された2つの指向性アンテナからなる送信装置の各指向性アンテナからのフレームを受信装置で受信した際の信号強度の平均値と2つの信号強度の差と送信装置の傾きとの関係を示した図である。
【図18】図18は、2つの給電点1及び2を持つマイクロストリップ・アンテナの構成を示した図である。
【図19】図19は、垂直偏波の性質を持つ2つの指向性アンテナの偏波の組み合わせを自在に変更可能に構成された送信装置の構成を示した図である。
【図20】図20は、利用者が操作する送信装置と壁に接地されたスクリーンの内部又は近傍に接地された受信装置からなるシステムにおけるインタラクションを概念的に示した図である。
【図21】図21は、指向性アンテナを装着した携帯端末を利用者が操作し、複数の受信装置を利用し、携帯端末との相対角度をそれぞれ計測した結果より携帯端末の空間の位置を推測するシステムを概念的に示した図である。
【図22】図22は、携帯端末を持った利用者がお互いの携帯端末を正対させたときのインタラクションを概念的に示した図である。
【図23A】図23Aは、IEEE802.11のネットワーキングにおけるアドホック・モードに本発明を適用した例を示した図である。
【図23B】図23Bは、IEEE802.11のネットワーキングにおけるインフラストラクチャ・モードに本発明を適用した例を示した図である。
【図23C】図23Cは、IEEE802.11のネットワーキングにおけるインフラストラクチャ・モードに本発明を適用した例を示した図である。
【符号の説明】
【0150】
1、2…アンテナ
3…信号処理部
4…RF部
5…アンテナ切替機構
6…転送制御部
7…給電点切替制御機構
10…送信装置
20…受信装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信装置から無線送信されるフレームが受信装置に到来する到来角を推定する到来角推定システムであって、
前記送信装置は、当該装置の正面に対しそれぞれ±θ度だけ指向特性が傾くように配置された2つの指向性アンテナを備え、
前記受信装置は、当該装置の正面に指向特性を持つ指向性アンテナを備え、
前記送信装置から前記の指向性アンテナの各々から交互にフレームを送信した際の、送信アンテナ毎の前記受信装置側におけるフレームの各受信信号強度の比較に基づいて前記到来角を推定する、
ことを特徴とする到来角推定システム。
【請求項2】
前記送信装置と前記受信装置の間の角度をさまざまに変化させながら、前記送信装置が送信アンテナを交互に切り替えて前記受信装置にフレームの送信を行なうとともに前記受信装置がフレームを受信した際の各送信アンテナからの受信信号強度を計測し送信アンテナ間の差分ΔSを求め、ΔSと前記送信装置及び前記受信装置間の角度との関係をあらかじめ記憶し、
前記送信装置が送信アンテナを交互に切り替えながら前記受信装置と通信を行ない、同時に前記受信装置は前記送信装置の各送信アンテナからフレームを受信したときの受信信号強度を計測して、現在得られた送信アンテナ間の受信信号強度の差分ΔSを以前に計測しておいたデータを比較することにより、前記送信装置と前記受信装置の間の角度を推測する、
ことを特徴とする請求項1に記載の到来角推定システム。
【請求項3】
前記送信装置は各送信アンテナから同一の送信電力でフレームを送信し、且つ、各送信アンテナと受信アンテナ間の伝搬損失が同一であるとみなし、各送信アンテナの利得の差を送信アンテナ毎の受信信号強度の差分ΔSとして扱う、
ことを特徴とする請求項2に記載の到来角推定システム。
【請求項4】
前記送信装置が一定の周期で送信に利用する指向性アンテナを交互に切り替えながらデータ・フレームを転送し、前記受信装置側で転送されたデータ・フレームの信号強度を計測する、
ことを特徴とする請求項2に記載の到来角推定システム。
【請求項5】
前記送信装置は、上位層に転送すべき送信データがない場合には、データ・サイズが0のデータ・フレームを生成して送信する、
ことを特徴とする請求項4に記載の到来角推定システム。
【請求項6】
前記受信装置側が一定間隔でデータ・フレームを送信し、これに対し前記送信装置から送信アンテナを交互に切り替えながら返送される各確認応答フレームの受信信号強度を前記受信装置が計測する、
ことを特徴とする請求項2に記載の到来角推定システム。
【請求項7】
前記受信装置側で上位層に転送すべきデータがない場合は、データ・サイズが0のデータ・フレームを生成し送信する、
ことを特徴とする請求項6に記載の到来角推定システム。
【請求項8】
送信装置から無線送信されるフレームが受信装置に到来する到来角を推定する到来角推定システムであって、
前記送信装置は、当該装置の正面に指向特性を持つ指向性アンテナを備え、
前記受信装置は、当該装置の正面に対しそれぞれ±θ度だけ指向特性が傾くように配置された2つの指向性アンテナを備え、前記送信装置から送信されるフレームを前記の指向性アンテナを交互に用いて受信した際の受信アンテナ毎のフレームの各受信信号強度の比較に基づいて前記到来角を推定する、
ことを特徴とする到来角推定システム。
【請求項9】
前記送信装置と前記受信装置の間の角度をさまざまに変化させながら、前記受信装置が受信アンテナを交互に切り替えて前記送信装置からフレームを受信したときの各受信アンテナにおける受信信号強度を計測して、その差分ΔSと前記送信装置及び前記受信装置間の角度との関係をあらかじめ記憶し、
前記送信装置と前記受信装置は通信を行ないながら、同時に前記受信装置が受信アンテナを交互に切り替えて各受信アンテナにおける受信フレームの信号強度を計測して、現在得られた受信アンテナ間のΔSを以前に計測しておいたデータを比較することにより、前記送信装置と前記受信装置の間の角度を推測する、
ことを特徴とする請求項8に記載の到来角推定システム。
【請求項10】
前記送信装置が転送するデータ・フレームを転送し、
前記受信装置は、一定の周期で受信に利用する指向性アンテナを切り替えながら、転送されたデータ・フレームの信号強度を計測する、
ことを特徴とする請求項9に記載の到来角推定システム。
【請求項11】
前記送信装置は、上位層に転送すべき送信データがない場合には、データ・サイズが0のデータ・フレームを生成して送信する、
ことを特徴とする請求項10に記載の到来角推定システム。
【請求項12】
前記受信装置側がいずれかの指向性アンテナから一定間隔でデータ・フレームを送信し、これに対し前記送信装置から返送される確認応答フレームを前記受信装置が受信アンテナを交互に切り替えながら受信して、これらの信号強度を計測する、
ことを特徴とする請求項9に記載の到来角推定システム。
【請求項13】
前記受信装置側で上位層に転送すべきデータがない場合は、データ・サイズが0のデータ・フレームを生成し送信する、
ことを特徴とする請求項12に記載の到来角推定システム。
【請求項14】
送信装置から無線送信されるフレームが受信装置に到来する到来角を推定する到来角推定システムであって、
前記送信装置は、当該装置の正面に対しそれぞれ±θ度だけ指向特性が傾くように配置された2つの指向性アンテナを備え、
前記受信装置は、当該装置の正面に対しそれぞれ±θ度だけ指向特性が傾くように配置された2つの指向性アンテナを備え、前記送信装置から送信されるフレームを前記の指向性アンテナを交互に用いて受信した際の受信アンテナ毎のフレームの各受信信号強度の比較に基づいて前記到来角を推定する、
ことを特徴とする到来角推定システム。
【請求項15】
前記送信装置と前記受信装置の間の角度をさまざまに変化させながら、前記送信装置が送信アンテナを交互に切り替えて前記受信装置にフレームの送信を行なうとともに前記受信装置が受信アンテナを交互に切り替えながらフレームを受信した際の、各受信アンテナにおいて各送信アンテナからの受信信号強度を計測しその差分ΔSを計算し、各受信アンテナについて送信アンテナ毎のΔSと前記送信装置及び前記受信装置間の角度との関係をあらかじめ記憶し、
前記送信装置が送信アンテナを交互に切り替えながら前記受信装置と通信を行ないながら、同時に前記受信装置が各受信アンテナを交互に切り替えて前記送信装置からフレームを受信したときの各受信アンテナにおける受信信号強度を計測して、受信アンテナ毎に現在得られた送信アンテナ間の受信信号強度の差分ΔSを以前に計測しておいたデータを比較することにより、前記送信装置と前記受信装置の間の角度を推測する、
ことを特徴とする請求項14に記載の到来角推定システム。
【請求項16】
前記送信装置が送信アンテナを交互に切り替えながらデータ・フレームを転送し、前記受信装置側では受信アンテナを交互に切り替えながら前記送信装置から転送されたデータ・フレームの信号強度を計測する、
ことを特徴とする請求項15に記載の到来角推定システム。
【請求項17】
前記送信装置は、上位層に転送すべき送信データがない場合には、データ・サイズが0のデータ・フレームを生成して送信する、
ことを特徴とする請求項16に記載の到来角推定システム。
【請求項18】
前記受信装置側が一定間隔でデータ・フレームを送信し、これに対し前記送信装置から送信アンテナを交互に切り替えながら返送される各確認応答フレームの受信アンテナ毎の受信信号強度を前記受信装置が計測する、
ことを特徴とする請求項15に記載の到来角推定システム。
【請求項19】
前記受信装置側で上位層に転送すべきデータがない場合は、データ・サイズが0のデータ・フレームを生成し送信する、
ことを特徴とする請求項18に記載の到来角推定システム。
【請求項20】
正面に対しそれぞれ±θ度だけ指向特性が傾くように配置された2つの指向性アンテナと、
フレームの送信又は受信に用いるアンテナを交互に切り替えるアンテナ切替機構と、
RF送受信信号を処理するRF部と、
送受信信号を処理する信号処理部と、
転送動作に応じて前記アンテナ切替機構によるアンテナ切り替え動作を制御する転送制御部と、
を具備することを特徴とする通信装置。
【請求項21】
所定の通信相手に対してフレームを送信する際に、送信に用いる指向性アンテナを交互に切り替えてフレームの送信を行なう、
ことを特徴とする請求項20に記載の通信装置。
【請求項22】
所定の通信相手からフレームを受信する際に、受信に用いる指向性アンテナを交互に切り替えながらフレームを受信した際の受信に用いた指向性アンテナ毎のフレームの各受信信号強度の比較に基づいて前記到来角を推定する、
ことを特徴とする請求項20に記載の通信装置。
【請求項23】
前記通信相手との角度をさまざまに変化させながら、受信に用いる指向性アンテナを交互に切り替えて前記通信相手からフレームを受信したときの各指向性アンテナにおける受信信号強度を計測して、その差分ΔSと前記送信装置及び前記受信装置間の角度との関係をあらかじめ記憶し、
前記通信相手と通信を行ないながら、同時に受信に用いる指向性アンテナを交互に切り替えて各指向性アンテナにおける受信フレームの信号強度を計測して、現在得られた指向性アンテナ間のΔSを以前に計測しておいたデータを比較することにより、前記通信相手との間の角度を推測する、
ことを特徴とする請求項22に記載の通信装置。
【請求項24】
一定の周期で受信に用いる指向性アンテナを切り替えながら、前記通信相手が転送するデータ・フレームを受信し、その信号強度を計測する、
ことを特徴とする請求項22に記載の通信装置。
【請求項25】
いずれかの指向性アンテナから一定間隔でデータ・フレームを送信し、これに対し前記通信相手から返送される確認応答フレームを受信に用いる指向性アンテナを交互に切り替えながら受信して、これらの信号強度を計測する、
ことを特徴とする請求項22に記載の通信装置。
【請求項26】
上位層に転送すべきデータがない場合は、データ・サイズが0のデータ・フレームを生成し送信する、
ことを特徴とする請求項25に記載の通信装置。
【請求項27】
正面に対しそれぞれ±θ度だけ指向特性が傾くように配置された2つの指向性アンテナを備えた送信装置と通信を行なう通信装置であって、
送受信に用いるアンテナと、
RF送受信信号を処理するRF部と、
送受信信号を処理する信号処理部と、
転送動作を制御する転送制御部を備え、
前記送信装置から前記の指向性アンテナの各々から交互にフレームを送信した際の、送信アンテナ毎の受信フレームの各受信信号強度の比較に基づいて前記到来角を推定する、
ことを特徴とする通信装置。
【請求項28】
前記送信装置から一定の周期で送信アンテナを交互に切り替えながら転送されたデータ・フレームの受信信号強度を計測する、
ことを特徴とする請求項27に記載の通信装置。
【請求項29】
一定間隔でデータ・フレームを送信し、これに対し前記送信装置から送信アンテナを交互に切り替えながら返送される各確認応答フレームの受信信号強度を計測する、
ことを特徴とする請求項27に記載の通信装置。
【請求項30】
上位層に転送すべきデータがない場合は、データ・サイズが0のデータ・フレームを生成し送信する、
ことを特徴とする請求項29に記載の通信装置。
【請求項31】
垂直偏波の性質を持つ2つの指向性アンテナを互いの偏波方向を略90度だけ傾きを以って正面に取り付けた送信装置と、
正面に指向特性を持つ指向性アンテナを持つ受信装置を備え、
前記送信装置から前記の指向性アンテナの各々から交互にフレームを送信した際の、送信アンテナ毎の前記受信装置側におけるフレームの各受信信号強度の比較に基づいて前記受信装置に対する前記送信装置の傾きを推定する、
ことを特徴とする通信システム。
【請求項32】
前記送信装置の水平方向に対する傾きをさまざまに変化させながら、前記送信装置が送信アンテナを交互に切り替えて前記受信装置にフレームの送信を行なうとともに前記受信装置がフレームを受信した際の各送信アンテナからの受信信号強度を計測し送信アンテナ間の差分ΔPを求め、ΔPと前記送信装置及び前記受信装置間の角度との関係をあらかじめ記憶し、
前記送信装置が送信アンテナを交互に切り替えながら前記受信装置と通信を行ない、同時に前記受信装置は前記送信装置の各送信アンテナからフレームを受信したときの受信信号強度を計測して、現在得られた送信アンテナ間の受信信号強度の差分ΔPを以前に計測しておいたデータを比較することにより、前記送信装置の水平方向に対する傾きを推測する、
ことを特徴とする請求項31に記載の到来角推定システム。
【請求項33】
各送信アンテナは、複数の給電点が設けられたマイクロストリップ・アンテナからなり、給電点を切り替えることによって、2つの指向性アンテナの偏波の組合せを変更する、
ことを特徴とする請求項31に記載の到来角推定システム。
【請求項1】
送信装置から無線送信されるフレームが受信装置に到来する到来角を推定する到来角推定システムであって、
前記送信装置は、当該装置の正面に対しそれぞれ±θ度だけ指向特性が傾くように配置された2つの指向性アンテナを備え、
前記受信装置は、当該装置の正面に指向特性を持つ指向性アンテナを備え、
前記送信装置から前記の指向性アンテナの各々から交互にフレームを送信した際の、送信アンテナ毎の前記受信装置側におけるフレームの各受信信号強度の比較に基づいて前記到来角を推定する、
ことを特徴とする到来角推定システム。
【請求項2】
前記送信装置と前記受信装置の間の角度をさまざまに変化させながら、前記送信装置が送信アンテナを交互に切り替えて前記受信装置にフレームの送信を行なうとともに前記受信装置がフレームを受信した際の各送信アンテナからの受信信号強度を計測し送信アンテナ間の差分ΔSを求め、ΔSと前記送信装置及び前記受信装置間の角度との関係をあらかじめ記憶し、
前記送信装置が送信アンテナを交互に切り替えながら前記受信装置と通信を行ない、同時に前記受信装置は前記送信装置の各送信アンテナからフレームを受信したときの受信信号強度を計測して、現在得られた送信アンテナ間の受信信号強度の差分ΔSを以前に計測しておいたデータを比較することにより、前記送信装置と前記受信装置の間の角度を推測する、
ことを特徴とする請求項1に記載の到来角推定システム。
【請求項3】
前記送信装置は各送信アンテナから同一の送信電力でフレームを送信し、且つ、各送信アンテナと受信アンテナ間の伝搬損失が同一であるとみなし、各送信アンテナの利得の差を送信アンテナ毎の受信信号強度の差分ΔSとして扱う、
ことを特徴とする請求項2に記載の到来角推定システム。
【請求項4】
前記送信装置が一定の周期で送信に利用する指向性アンテナを交互に切り替えながらデータ・フレームを転送し、前記受信装置側で転送されたデータ・フレームの信号強度を計測する、
ことを特徴とする請求項2に記載の到来角推定システム。
【請求項5】
前記送信装置は、上位層に転送すべき送信データがない場合には、データ・サイズが0のデータ・フレームを生成して送信する、
ことを特徴とする請求項4に記載の到来角推定システム。
【請求項6】
前記受信装置側が一定間隔でデータ・フレームを送信し、これに対し前記送信装置から送信アンテナを交互に切り替えながら返送される各確認応答フレームの受信信号強度を前記受信装置が計測する、
ことを特徴とする請求項2に記載の到来角推定システム。
【請求項7】
前記受信装置側で上位層に転送すべきデータがない場合は、データ・サイズが0のデータ・フレームを生成し送信する、
ことを特徴とする請求項6に記載の到来角推定システム。
【請求項8】
送信装置から無線送信されるフレームが受信装置に到来する到来角を推定する到来角推定システムであって、
前記送信装置は、当該装置の正面に指向特性を持つ指向性アンテナを備え、
前記受信装置は、当該装置の正面に対しそれぞれ±θ度だけ指向特性が傾くように配置された2つの指向性アンテナを備え、前記送信装置から送信されるフレームを前記の指向性アンテナを交互に用いて受信した際の受信アンテナ毎のフレームの各受信信号強度の比較に基づいて前記到来角を推定する、
ことを特徴とする到来角推定システム。
【請求項9】
前記送信装置と前記受信装置の間の角度をさまざまに変化させながら、前記受信装置が受信アンテナを交互に切り替えて前記送信装置からフレームを受信したときの各受信アンテナにおける受信信号強度を計測して、その差分ΔSと前記送信装置及び前記受信装置間の角度との関係をあらかじめ記憶し、
前記送信装置と前記受信装置は通信を行ないながら、同時に前記受信装置が受信アンテナを交互に切り替えて各受信アンテナにおける受信フレームの信号強度を計測して、現在得られた受信アンテナ間のΔSを以前に計測しておいたデータを比較することにより、前記送信装置と前記受信装置の間の角度を推測する、
ことを特徴とする請求項8に記載の到来角推定システム。
【請求項10】
前記送信装置が転送するデータ・フレームを転送し、
前記受信装置は、一定の周期で受信に利用する指向性アンテナを切り替えながら、転送されたデータ・フレームの信号強度を計測する、
ことを特徴とする請求項9に記載の到来角推定システム。
【請求項11】
前記送信装置は、上位層に転送すべき送信データがない場合には、データ・サイズが0のデータ・フレームを生成して送信する、
ことを特徴とする請求項10に記載の到来角推定システム。
【請求項12】
前記受信装置側がいずれかの指向性アンテナから一定間隔でデータ・フレームを送信し、これに対し前記送信装置から返送される確認応答フレームを前記受信装置が受信アンテナを交互に切り替えながら受信して、これらの信号強度を計測する、
ことを特徴とする請求項9に記載の到来角推定システム。
【請求項13】
前記受信装置側で上位層に転送すべきデータがない場合は、データ・サイズが0のデータ・フレームを生成し送信する、
ことを特徴とする請求項12に記載の到来角推定システム。
【請求項14】
送信装置から無線送信されるフレームが受信装置に到来する到来角を推定する到来角推定システムであって、
前記送信装置は、当該装置の正面に対しそれぞれ±θ度だけ指向特性が傾くように配置された2つの指向性アンテナを備え、
前記受信装置は、当該装置の正面に対しそれぞれ±θ度だけ指向特性が傾くように配置された2つの指向性アンテナを備え、前記送信装置から送信されるフレームを前記の指向性アンテナを交互に用いて受信した際の受信アンテナ毎のフレームの各受信信号強度の比較に基づいて前記到来角を推定する、
ことを特徴とする到来角推定システム。
【請求項15】
前記送信装置と前記受信装置の間の角度をさまざまに変化させながら、前記送信装置が送信アンテナを交互に切り替えて前記受信装置にフレームの送信を行なうとともに前記受信装置が受信アンテナを交互に切り替えながらフレームを受信した際の、各受信アンテナにおいて各送信アンテナからの受信信号強度を計測しその差分ΔSを計算し、各受信アンテナについて送信アンテナ毎のΔSと前記送信装置及び前記受信装置間の角度との関係をあらかじめ記憶し、
前記送信装置が送信アンテナを交互に切り替えながら前記受信装置と通信を行ないながら、同時に前記受信装置が各受信アンテナを交互に切り替えて前記送信装置からフレームを受信したときの各受信アンテナにおける受信信号強度を計測して、受信アンテナ毎に現在得られた送信アンテナ間の受信信号強度の差分ΔSを以前に計測しておいたデータを比較することにより、前記送信装置と前記受信装置の間の角度を推測する、
ことを特徴とする請求項14に記載の到来角推定システム。
【請求項16】
前記送信装置が送信アンテナを交互に切り替えながらデータ・フレームを転送し、前記受信装置側では受信アンテナを交互に切り替えながら前記送信装置から転送されたデータ・フレームの信号強度を計測する、
ことを特徴とする請求項15に記載の到来角推定システム。
【請求項17】
前記送信装置は、上位層に転送すべき送信データがない場合には、データ・サイズが0のデータ・フレームを生成して送信する、
ことを特徴とする請求項16に記載の到来角推定システム。
【請求項18】
前記受信装置側が一定間隔でデータ・フレームを送信し、これに対し前記送信装置から送信アンテナを交互に切り替えながら返送される各確認応答フレームの受信アンテナ毎の受信信号強度を前記受信装置が計測する、
ことを特徴とする請求項15に記載の到来角推定システム。
【請求項19】
前記受信装置側で上位層に転送すべきデータがない場合は、データ・サイズが0のデータ・フレームを生成し送信する、
ことを特徴とする請求項18に記載の到来角推定システム。
【請求項20】
正面に対しそれぞれ±θ度だけ指向特性が傾くように配置された2つの指向性アンテナと、
フレームの送信又は受信に用いるアンテナを交互に切り替えるアンテナ切替機構と、
RF送受信信号を処理するRF部と、
送受信信号を処理する信号処理部と、
転送動作に応じて前記アンテナ切替機構によるアンテナ切り替え動作を制御する転送制御部と、
を具備することを特徴とする通信装置。
【請求項21】
所定の通信相手に対してフレームを送信する際に、送信に用いる指向性アンテナを交互に切り替えてフレームの送信を行なう、
ことを特徴とする請求項20に記載の通信装置。
【請求項22】
所定の通信相手からフレームを受信する際に、受信に用いる指向性アンテナを交互に切り替えながらフレームを受信した際の受信に用いた指向性アンテナ毎のフレームの各受信信号強度の比較に基づいて前記到来角を推定する、
ことを特徴とする請求項20に記載の通信装置。
【請求項23】
前記通信相手との角度をさまざまに変化させながら、受信に用いる指向性アンテナを交互に切り替えて前記通信相手からフレームを受信したときの各指向性アンテナにおける受信信号強度を計測して、その差分ΔSと前記送信装置及び前記受信装置間の角度との関係をあらかじめ記憶し、
前記通信相手と通信を行ないながら、同時に受信に用いる指向性アンテナを交互に切り替えて各指向性アンテナにおける受信フレームの信号強度を計測して、現在得られた指向性アンテナ間のΔSを以前に計測しておいたデータを比較することにより、前記通信相手との間の角度を推測する、
ことを特徴とする請求項22に記載の通信装置。
【請求項24】
一定の周期で受信に用いる指向性アンテナを切り替えながら、前記通信相手が転送するデータ・フレームを受信し、その信号強度を計測する、
ことを特徴とする請求項22に記載の通信装置。
【請求項25】
いずれかの指向性アンテナから一定間隔でデータ・フレームを送信し、これに対し前記通信相手から返送される確認応答フレームを受信に用いる指向性アンテナを交互に切り替えながら受信して、これらの信号強度を計測する、
ことを特徴とする請求項22に記載の通信装置。
【請求項26】
上位層に転送すべきデータがない場合は、データ・サイズが0のデータ・フレームを生成し送信する、
ことを特徴とする請求項25に記載の通信装置。
【請求項27】
正面に対しそれぞれ±θ度だけ指向特性が傾くように配置された2つの指向性アンテナを備えた送信装置と通信を行なう通信装置であって、
送受信に用いるアンテナと、
RF送受信信号を処理するRF部と、
送受信信号を処理する信号処理部と、
転送動作を制御する転送制御部を備え、
前記送信装置から前記の指向性アンテナの各々から交互にフレームを送信した際の、送信アンテナ毎の受信フレームの各受信信号強度の比較に基づいて前記到来角を推定する、
ことを特徴とする通信装置。
【請求項28】
前記送信装置から一定の周期で送信アンテナを交互に切り替えながら転送されたデータ・フレームの受信信号強度を計測する、
ことを特徴とする請求項27に記載の通信装置。
【請求項29】
一定間隔でデータ・フレームを送信し、これに対し前記送信装置から送信アンテナを交互に切り替えながら返送される各確認応答フレームの受信信号強度を計測する、
ことを特徴とする請求項27に記載の通信装置。
【請求項30】
上位層に転送すべきデータがない場合は、データ・サイズが0のデータ・フレームを生成し送信する、
ことを特徴とする請求項29に記載の通信装置。
【請求項31】
垂直偏波の性質を持つ2つの指向性アンテナを互いの偏波方向を略90度だけ傾きを以って正面に取り付けた送信装置と、
正面に指向特性を持つ指向性アンテナを持つ受信装置を備え、
前記送信装置から前記の指向性アンテナの各々から交互にフレームを送信した際の、送信アンテナ毎の前記受信装置側におけるフレームの各受信信号強度の比較に基づいて前記受信装置に対する前記送信装置の傾きを推定する、
ことを特徴とする通信システム。
【請求項32】
前記送信装置の水平方向に対する傾きをさまざまに変化させながら、前記送信装置が送信アンテナを交互に切り替えて前記受信装置にフレームの送信を行なうとともに前記受信装置がフレームを受信した際の各送信アンテナからの受信信号強度を計測し送信アンテナ間の差分ΔPを求め、ΔPと前記送信装置及び前記受信装置間の角度との関係をあらかじめ記憶し、
前記送信装置が送信アンテナを交互に切り替えながら前記受信装置と通信を行ない、同時に前記受信装置は前記送信装置の各送信アンテナからフレームを受信したときの受信信号強度を計測して、現在得られた送信アンテナ間の受信信号強度の差分ΔPを以前に計測しておいたデータを比較することにより、前記送信装置の水平方向に対する傾きを推測する、
ことを特徴とする請求項31に記載の到来角推定システム。
【請求項33】
各送信アンテナは、複数の給電点が設けられたマイクロストリップ・アンテナからなり、給電点を切り替えることによって、2つの指向性アンテナの偏波の組合せを変更する、
ことを特徴とする請求項31に記載の到来角推定システム。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図1】
【図23A】
【図23B】
【図23C】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図1】
【図23A】
【図23B】
【図23C】
【公開番号】特開2008−300937(P2008−300937A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141820(P2007−141820)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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