説明

制御された冷却によりリサイクルされたPETを含む組成物を製造する方法

本発明は固体フィラーと熱可塑性バインダとを含む複合材料から造形品を製造する方法に関し、前記方法は以下の順々に続く工程:(a)固体フィラーと熱可塑性バインダとを混錬デバイスに供給する工程と;(b)固体フィラーと熱可塑性バインダとを混錬デバイスにおいて混合させ、複合材料を得るために、固体フィラーと熱可塑性バインダとの混合物にかける圧力が約100kPaないし約1500kPaの範囲にある工程と;(c)工程(b)で得られた複合材料を成形して造形品にする工程と;(d)工程(c)で得られた造形品を冷却する工程であって、造形品を少なくとも約5℃/分ないし約120℃/分の冷却速度で冷却する工程とを含む。造形品は好ましくはスラブであり、これは押出成形およびまたは射出成形技術により床、キッチン作業面、キッチントップ、バスルーム、内装材および外装材ならびに他の二次元形状の装飾において非常に好適に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
発明の分野
本発明は、固体フィラーおよび熱可塑性バインダを含む複合材料から造形品を製造する方法に関する。本発明による造形品は、装飾要素、たとえばプレートまたはスラブとして都合よく使用でき、押出成形および射出成形技術による、床、天井、壁板、洗面化粧台、キッチンの作業面またはキッチントップ、バスルーム、内装材および外装材、ならびに他の二次元形状の施工においてたとえば非常に好適に使用できる。
【0002】
発明の背景
ポリマーおよび適切な成分とのそのブレンドは、短命の消費財、たとえばドリンクボトルおよび食品容器の製造用の主要な材料として、長年にわたって使用されてきた。しかしながら、それらの低い生物分解性のせいで、このポリマーおよびそのブレンドは、環境に対して重大な問題がある。そのため、有益な最終製品へのこのポリマーおよびそのブレンドのリサイクルが非常に望まれている。
【0003】
参照によりここに組み込まれるWO 02/090288は、固体粒子と1−50重量%のバインダとのマトリックスを含む組成物の製造方法を開示しており、ここでは、バインダは、任意にリサイクルされた熱可塑性ポリマー、好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラートおよびこれらの混合物からなる群より選択されるそれを含む。このバインダが、リサイクルされたポリエチレンテレフタラートを、好ましくは主成分として(70−90重量%、好ましくは80−85重量%)、更により好ましくはリサイクルされたポリプロピレン(10−30重量%、好ましくは15−20重量%)と組み合わせて含むことが好ましい。WO 02/090288に開示された方法によると、固体粒子およびバインダを、別々に加熱し(固体粒子は、バインダよりも高い温度まで加熱される)、その後、230°ないし300℃の温度で混合させる。フィラーとバインダとの混合は、攪拌子を備えた従来の混合デバイスまたは押出機で行う。任意に、フラックスオイルまたは有機溶媒を添加し、混合物の粘度を下げる。次に、この混合物を成形または付形し、その後冷却する。しかしながら、WO 02/090288による方法にはいくつかの欠点があり、劣った性質を有する製品をもたらす。たとえば、WO 02/090288の例14は、混合を二軸スクリュー押出機で行い、混合物を付形して建設要素にして、その後緩やかに冷却する(「屋外で冷却する」)と、この建設要素は収縮割れを示したことを開示しており、これは、それが高度に審美的な外観を必要とする最終製品、たとえば床、キッチンの作業面またはキッチントップの施工を意図したものである場合に望ましくない。WO 02/090288は、冷却を、好ましくはたとえば水での急冷により、都合よく迅速に行うことができることをさらに開示しているが、これは乏しい機械的性質をもたらし易いであろう。
【0004】
参照により組み込まれるWO 96/02373は、多目的建築材料を、家庭ごみ、産業廃棄物またはこれらの組み合わせから製造する方法を開示しており、ここでは、プラスチック材料の含有量が20重量%ないし65重量%である廃材を剪断して50mm以下の径を有する粒子にし、次に、均一な混合物が得られるまで、120°ないし200℃の温度で粒状フィラーと混合させ、最後に、成形して最終製品にする。WO 96/02373は、最終製品の冷却についての詳細を示していない。
【0005】
参照により組み込まれるGB 2396354は、プラスチック材料からバルク製品を製造する方法を開示しており、この方法は、同時に微細フィラー材料を供給しながら、10mm以下の平均粒径を有するプラスチック粒子を混合容器で混合することを含む。次に、プラスチック材料とフィラー材料との混合物の第1部分を分離し、冷却して、次にプラスチック粒子とフィラー材料との別の加熱した混合物とブレンドし、最後にこのブレンドした材料を付形して製品にする。GB 2396354は、付形した製品の冷却についてのさらなる詳細を開示していない。
【0006】
参照により組み込まれるUS 6583217は、化学的に改質されていない廃ポリエチレンテレフタラートおよび50−70重量%のフライアッシュ粒子から複合材料を製造する方法を開示しており、ここでは、化学的に改質されていない廃ポリエチレンテレフタラートおよびフライアッシュ粒子をまず混合させ(すなわち加熱せずに)、次に約255°ないし約265℃(化学的に改質されていない廃ポリエチレンテレフタラートの分解を防ぐために、約270℃より高くない)まで加熱して、化学的に改質されていない廃ポリエチレンテレフタラートを溶融させる。次に、混合物を付形して建設要素にし、冷却する。US 6583217は、機械的性質にとっての成形温度および冷却速度の重要性を提言しているが、さらなる詳細を示していない:一般的な方法は、混合物を型に流し込み、この型を約2時間(型の大きさおよび形状とは無関係)で周囲温度まで冷却させることを含む。
【0007】
参照により組み込まれるUS 2003/0122273は、フィラーおよび熱可塑性バインダから複合材料を製造する方法を開示しており、ここでは、バインダは、15dmm未満の針入度を有するアスファルテン含有バインダである。混合物を圧縮して最終製品にすることによって成形させ、次にこれを周囲条件下で(数時間から数日にわたって)冷却させるか、または例えば水を用いて(すなわち、水浴中に浸漬させるまたは水のスプレーを浴びせることによって)急冷することによって冷却する。
【0008】
参照により組み込まれるUS 6472460は、ポリマー複合材料を製造する方法を開示しており、この方法は、有機物親和性粘土とポリマーとを、(a)圧力および(b)単位体積当たりの総剪断歪および/または総剪断エネルギーなどの所定のプロセス条件下で溶融混練することを含む。例に従うと、約2重量%の有機物親和性粘土C12−MtまたはC18−Mtをナイロン樹脂と混合させる。US 6472460は、ポリマー複合材料に成形プロセスを施してもよいことを開示しているが、冷却に関するさらなる詳細を特定していない。
【0009】
参照により組み込まれるUS 6521155は、リサイクルされたポリエチレンテレフタラートおよびフィラーからプラスチックパイプを製造する方法を開示しており、ここでは、フィラーが2−60重量%の量で添加された、リサイクルされたポリエチレンテレフタラートとフィラーとの混合物を混錬して、均質であり、実質的に水分を含まないプロセス粘性混合物にする。混合物を押出機に供給し、ここで、波形部に供給した後、10℃/分ないし−50℃/分の温度勾配で冷却する。
【0010】
結果として、当技術には、比較的多量の固体フィラー粒子と比較的少量の熱可塑性バインダとを混合して複合材料にするための効率的な方法を提供し、この複合材料を、高度に審美的な外観を有する、特に割れの数が低減された造形品に変える必要が未だに存在する。
【0011】
発明の概要
本発明は、固体フィラーと熱可塑性バインダとを含む複合材料から造形品を製造する方法に関し、前記方法は、以下の順々に続く工程:
(a)固体フィラーと熱可塑性バインダとを混合デバイスに供給する工程と;
(b)前記固体フィラーと前記熱可塑性バインダとを前記混合デバイスにおいて混合させて複合材料を得る工程と;
(c)工程(b)で得られた前記複合材料を成形して造形品にする工程と;
(d)工程(c)で得られた前記造形品を冷却する工程であって、前記造形品を、少なくとも約35℃/分ないし約100℃/分の冷却速度で冷却する工程と
を含む。
【0012】
本発明による方法は連続プロセスであることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、前記方法の工程(a)−(d)によって得ることができる造形品に関する。
【0014】
さらに、本発明は、押出成形および射出成形技術による、造形品、特に床、フロアタイル、天井および天井タイル、壁板、洗面化粧台、キッチンの作業面、キッチントップ、バスルーム、内装材および外装材、ならびに他の二次元形状の製造のための前記複合材料の使用に関する。
【0015】
また、本発明は、押出成形および射出成形技術による、床、フロアタイル、天井および天井タイル、壁板、洗面化粧台、キッチンの作業面、キッチンのワークトップ、バスルーム、内装材および外装材、ならびに他の二次元形状の施工のための、前記複合材料の使用に関する。
【0016】
発明の詳細な説明
定義
この説明および特許請求の範囲において使用される動詞「含む」およびその活用形は、その用語に続く事項を含むが、具体的に述べていない事項は排除しないことを意味するように、非制限的な意味で使用する。加えて、不定冠詞「a」または「an」による要素の参照は、1つの要素のみが存在していることを文脈が明らかに必要としなければ、1つより多くの要素の存在の可能性を排除しない。したがって、不定冠詞「a」または「an」は、「少なくとも1つ」を通常意味する。
【0017】
この文書では、用語「リサイクルされたポリエチレンテレフタラート」を、包装用途、たとえば飲料ボトルおよび食品容器から生じる材料であって、ポリエチレンテレフタレートと、任意に、他のポリエステルおよびポリエチレンテレフタラートではない成分、たとえば紙ラベル、接着剤、インクおよび顔料の残物、ポリプロピレンキャップならびにアルミニウムキャップなどとを含む材料を表すのに使用する。また、包装用途は多層構造を有してもよい。それらとしては、さらに、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ナイロンおよび他のポリアミド、ポリカーボナート、アルミニウム箔、エポキシ樹脂コーティング、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン、LDPE、LLDPE、HDPE、ポリスチレン、熱硬化性ポリマー、織物、ならびにこれらの混合物を挙げることができる。また、これらの包装用途は、リサイクルされた(ポリマー)材料を含んでもよい。結果として、この文書では、用語「リサイクルされたポリエチレンテレフタラート」は、好ましくは、材料の総重量に基づいて、約90重量%ないし約100重量%のポリエチレンテレフタラートと、約0重量%ないし約10重量%のポリエチレンテレフタラートでない成分とを含み、ポリエチレンテレフタラートでない成分の部分は、このポリエチレンテレフタラートでない成分の部分の総重量に基づいて、好ましくは約0.001重量%ないし約10重量%、より好ましくは約0.001重量%ないし約5重量%の非ポリマー成分を含む材料である。
【0018】
また、用語「改質されたポリエチレンテレフタラート」は、当技術において周知されており、モノマー、たとえばイソフタル酸、フタル酸、シクロヘキサンジメタノールおよびこれらの混合物をさらに含む、エチレングリコールとテレフタル酸とのコポリマーを指す。
【0019】
用語「周囲温度」は、当業者に周知されているが、ここでは、約15℃ないし約40℃の温度と定義する。
【0020】
熱可塑性バインダ
本発明によると、熱可塑性バインダは、バインダの総重量に基づいて、約60重量%ないし約100重量%の熱可塑性ポリエステルを含む。好ましくは、熱可塑性バインダは、約75重量%ないし約100重量%の熱可塑性ポリエステルを含み、より好ましくは約75重量%ないし約90重量%、特には約80重量%ないし約85重量%の熱可塑性ポリエステルを含む。熱可塑性ポリエステルは、好ましくは、任意に改質され、任意にリサイクルされたポリエチレンテレフタラートおよびポリブチレンテレフタラートからなる群より選択される。熱可塑性ポリエステルは、最も好ましくは、リサイクルされたポリエチレンテレフタラートである。熱可塑性ポリエステルは、ASTM D4603によると、25℃で、好ましくは約0.50dl/gないし約0.90dl/g、より好ましくは約0.60dl/gないし約0.85dl/g、最も好ましくは約0.70dl/gないし約0.84dl/gの範囲にある固有粘度を有する。
【0021】
本発明による熱可塑性バインダは、熱可塑性バインダの総重量に基づいて、約0重量%ないし約40重量%、好ましくは約0重量%ないし約25重量%、より好ましくは約10重量%ないし約25重量%、特には約15重量%ないし約20重量%のポリオレフィンを含む。
【0022】
ポリオレフィンは、好ましくは、線状または分枝のC2−C12オレフィン、好ましくはC2−C12α−オレフィンに基づくポリオレフィンから選択される。このようなオレフィンの好適な例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンおよびスチレンが挙げられる。ポリオレフィンは、任意に、ジオレフィン、たとえばブタジエン、イソプレン、ノルボルナジエンまたはこれらの混合物を含む。ポリオレフィンは、ホモポリマーまたはコポリマーでもよい。好ましくは、ポリオレフィンは、エチレン、プロピレン、1−ヘキセン、1−オクテンおよびこれらの混合物を含むポリオレフィンからなる群より選択される。加えて、ポリオレフィンは、実質的に線状でありうるが、分枝状でもよいし、星型でもよい。ポリオレフィンは、より好ましくは、エチレン、プロピレンおよびこれらの混合物を含むポリマーから選択される。さらにより好ましくは、ポリオレフィンは、プロピレンポリマー、特にはポリプロピレンである。好ましくは、ポリオレフィンの密度は、ASTM D792によると、約0.90kg/dm3ないし約0.95kg/dm3の範囲にある。好ましくは、プロピレンポリマーの溶融流量は、ASTM D1238によると、約0.1g/10分(230℃、2.16kg)ないし約200g/10分(230℃、2.16kg)である。
【0023】
本発明に従うと、熱可塑性バインダは、1グラムの最大重量を有する粉状のまたは微粉化された粒子の形態で使用されうる。しかしながら、熱可塑性バインダは、好ましくは約2−10mm×約2−10mm(約0.5mmないし約3mmの厚さ)の大きさを有するフレークの形態で使用することが好ましい。
【0024】
固体フィラー
固体フィラーとしては、様々な材料を使用できる。好適な例としては、鉱物粒子、セメント粒子、コンクリート粒子、砂、リサイクルされたアスファルト、タイヤからリサイクルされたクラムラバー、粘土粒子、花崗岩粒子、フライアッシュ、ガラス粒子などが挙げられる。好ましくは、固体フィラーは、天然起源でもよいし合成起源でもよい方解石系材料(たとえば大理石)および/またはシリカ系材料(たとえば石英)である。任意に、固体フィラーは、異なる粒径分布を有する異なる供給源から構成されてもよい。しかしながら、最大平均粒径が1.2mm以下であり、最小平均粒径が3μm以上であることが好ましい。
【0025】
混合工程
本発明による方法の工程(b)による混合プロセスは、任意の好適な混合デバイスまたは複数の混合デバイスで行うことができる。複数の混合デバイスを使用する場合、それらは互いに異なってもよく、それらは同一である必要はない。好適な混合デバイスとしては、バッチ式混合デバイス、押出機(たとえば、単軸スクリュー、二軸スクリュー)および混練デバイスが挙げられ、これらはこの技術において周知されている。しかしながら、本発明による方法の連続動作を可能にする混合デバイスを用いることが好ましい。結果として、押出機および混練デバイスが、本発明による方法にとって好ましい混合デバイスである。
【0026】
本発明によると、工程(a)では、固体フィラーと熱可塑性バインダとを、約1:1ないし約20:1の重量比で混練デバイスに供給する。好ましくは、この重量比は、約2:1ないし約15:1であり、より好ましくは約4:1ないし約10:1である。熱可塑性バインダの熱伝導率は固体フィラーのそれよりも遥かに低いので、バインダの濃度を低くすることで、複合材料および造形品の熱伝導率が高まり、それにより後者における内部応力が低減する。加えて、冷却プロセスを十分に制御して、複合材料およびそれから製造される造形品の熱伝導率を高くすることができる。
【0027】
固体フィラーおよび/または熱可塑性バインダを混合デバイスに供給する際(本発明による方法の工程(a)において)、固体フィラー、熱可塑性バインダまたはその両方に、任意に、たとえば参照により組み込まれるWO 02/090288のような予熱工程を施してもよい。しかしながら、予熱工程なしにそれらを供給してもよい、すなわち、混合デバイスに供給する際、固体フィラーおよび/または熱可塑性バインダが略周囲温度にあってもよい。
【0028】
さらに、本発明による方法の工程(b)は、約230°ないし約350℃の温度、より好ましくは約270°ないし約320℃の温度で行われる。
【0029】
圧縮
押出機では、混合および圧縮が同一のデバイス内で行われうる。一方、混練デバイスの使用は、独立した別の工程で圧縮を行うことを可能にする。したがって、本発明の方法の工程(b)は任意に圧縮工程を含んでもよく、この工程は、混合工程と同時に行ってもよいしまたは混合工程の後に行ってもよい。
【0030】
好ましくは、圧縮工程を、約5×103kPaないし約5×104kPa、より好ましくは約104kPaないし約3×104kPaの圧力で動作する搬送押出機で行う。
【0031】
成形
また、成形工程を、当技術で知られているデバイスを用いて、たとえば、複合材料を型に詰め、負荷をかけながら造形品を成形する圧縮成形によって、射出成形によって、または、材料をダイに通して所望の形状にし、ナイフを使用して造形品を所望の長さにする押出成形によって行うこともできる。後者の方法は、造形品が壁板、洗面化粧台、キッチンの作業面またはキッチントップである場合に特に有利である。
【0032】
冷却工程
驚くべきことに、冷却条件は、従来のプロセス条件に沿って製造されたそれと同様に、本発明による造形品の重要な性質に対して大きな影響を有していたことが分かった。加えて、従来技術の方法は、特にこれらの方法が成形工程を使用して造形品を成形するので、それらがあまり効率的でないという欠点に悩まされていた。そのため、造形品をバッチ式でしか製造できなかったが、効率および製品品質のばらつきのなさのためには、連続的な製造が非常に望ましいであろう。
【0033】
特に造形品がスラブである場合、所定の厳しい冷却条件を適用することによっておよび/または特定の冷却デバイスを使用することによって、機械的性質を大きく改善できるようであった。特に、スラブの上面および下面の冷却は、改善された性質、たとえば、少ない反り、高い曲げ強さ、高い圧縮強さおよび少ない表面割れを提供したようであった。
【0034】
本発明によると、冷却速度は、好ましくは少なくとも約5℃/分ないし約120℃/分、より好ましくは少なくとも約7℃/分ないし約100℃/分、最も好ましくは少なくとも10℃/分ないし約80℃/分である。
【0035】
本発明によると、スラブは、好ましくは、厚さが約0.3cmないし約5cm、より好ましくは約0.5cmないし約3.0cm、特に約0.5cmないし約2.5cmである。さらに、スラブは、平均厚さが約2.5mmないし約50mmであることが好ましく、より好ましくは3.0mmないし約30mmである。
【0036】
所望の性質、たとえば反り、強さおよび表面割れの数は、工程d)をベルト冷却によって行うことによってさらに改善できる。
【0037】
シングルベルトおよびダブルベルト冷却などのベルト冷却は、当技術において周知されており、鉄鋼産業においてしばしば使用されている。しかしながら、鉄鋼は、本発明による複合材料とは大きく異なる性質を有し、本発明による複合材料のそれの他の要件を満足しなければならない。
【0038】
ベルト冷却は以下のように行われる。冷却される造形品を、通常鉄鋼製のベルトに載せる。鉄鋼は熱伝導性に優れているので、熱を迅速に散逸できる。熱の放散の速度は、たとえばベルトの走行速度によって制御できる。ベルト自体は外部供給源によって、たとえばベルトに対して水および/または空気をスプレーする供給源によって冷却される。好ましくは、水を冷媒として使用する場合、造形品と冷却水とは接触しない。冷却水は任意に集めることができ、所望の温度まで冷却したのち、冷却プロセスにリサイクルできる。それゆえに、冷却は空気、水またはこれらの組み合わせによって達成されることが好ましい。
【0039】
本発明によると、ベルト冷却は、シングルベルト冷却またはダブルベルト冷却によって行うことができ、ここでは、1つ以上のシングルベルト冷却デバイスおよび/または1つ以上のダブルベルト冷却デバイスをそれぞれ使用する。任意に、冷却システムは、1つ以上のシングルベルト冷却デバイスと1つ以上のダブルベルトデバイスとの組み合わせを含んでもよい。しかしながら、本発明によると、少なくとも1つのダブルベルト冷却デバイスを使用することが好ましい。
【0040】
ダブルベルト冷却は、製品が2つの冷却ベルトに接触するため、造形品を高められた能力で製造できるという1つの利点を有する。もう1つの重要な利点は、冷却プロセス全体を十分に制御できることにある。さらに、ダブルベルト冷却は、造形品の厚さに対するより大きな適応性を提供する、すなわち、厚い物品を、それよりも薄い製品がシングルベルトデバイスで冷却されるのとおよそ同じ効率で冷却することができる。
【0041】
ダブルベルト冷却デバイスでは、造形品を、下の方のベルトの上面に供給し、それを冷却領域に運び、ここで、上の方のベルトの圧力が、下の方のベルトおよび上の方のベルトの両方の表面との実質的に一定な接触を確実にし、それにより、造形品の効率的かつ制御された冷却を提供する。
【0042】
本発明によると、工程(d)の間に造形品から取り出される重量等価物当たりのエネルギー量が約100kJ/kgないし約250kJ/kg、より好ましくは約150kJ/kgないし約200kJ/kgであることが好ましい。造形品から取り出されるエネルギーの量は、冷却デバイスの冷却能力(kWで表される)と造形品のスループット(kg/秒で表される;質量流量)との比として算出され、それゆえに、kJ/kgで表される。したがって、エネルギーの量は、冷却される造形品の重量(kgで表される)に関連する。
【0043】
冷却された造形品において、応力分布は、周知のビオ数に依存する。ビオ数(Bi)は、無次元数であり、非定常状態の(すなわち瞬間的な)伝熱計算において使用され、それは造形品の内側およびその表面での伝熱抵抗に関連する。ビオ数(無次元)は以下のように定義される:
【数1】

【0044】
ここで、Hは造形品の表面での伝熱係数(W/m2.Kで表される)であり、2dは造形品の厚さ(または、造形品の体積と造形品の表面積との比である特性長;mで表される)であり、Lは造形品の熱伝導率(W/m.Kで表される)である。ビオ数が、10よりも(実質的に)大きい場合、内部応力の数は著しく大きく、これは本発明による造形品(特にスラブ)にとって明らかに望ましくない。結果として、本発明によると、ビオ数は約10未満であることが好ましく、より好ましくは約5未満である。しかしながら、ビオ数が0.1よりも遥かに小さいと、造形品内部での伝熱が、この造形品の表面からの伝熱よりも遥かに大きくなる(これは、造形品の内部で温度勾配がほとんどないことを意味する)。したがって、本発明によると、ビオ数は約0.1以上であることが好ましく、好ましくは約0.2以上である。
【0045】
複合材料
本発明によると、複合材料の密度は、好ましくは約1.5−3kg/dm3であり、より好ましくは約2.0−2.5kg/dm3である。
【0046】
造形品
本発明による造形品は、いくつかの重要な特徴を有する。たとえば、それらは、高いアルカリ耐性を特徴とし、これはそれらを、床、キッチンの作業面およびキッチントップの施工に非常に好適なものにする。また、この造形品は、優れた機械的性質を有する。特に、この造形品は、試験法NEN EN 198−1によると、少なくとも約40N/mm2の曲げ強さを有することが好ましい。加えて、圧縮強さが、試験法NEN EN 196−1によると、少なくとも約50N/mm2であることが好ましい。
【0047】
また、本発明による造形品は、低い熱膨張率、非常に小さな反り、低い脆さを示す。たとえば、参照によりここに組み込まれるUS 6583217は、リサイクルされたPETとフライアッシュとからなる複合材料から作られた造形品であって、2.2%(100重量%のリサイクルPET)ないし0.7%(30重量%のリサイクルPET、70重量%のフライアッシュ)の収縮を示した造形品を開示している。対照的に、本発明の方法によって製造された造形品の収縮が熱可塑性バインダの含有量とは実質的に無関係であったことが分かった。
【0048】
造形品は、岩石製品の設計において通常使用されている他の添加剤、たとえば顔料、着色剤、染料、およびこれらの混合物をさらに含んでもよい。このような添加剤の最大量は、好ましくは、造形品の総重量に基づいて、約5重量%未満である。
【0049】
造形品がスラブであり、このスラブの平均厚さが約2.5mmないし約50mm、より好ましくは約5.0mmないし約30mmであることがさらに好ましい。
【0050】

例1
リサイクルされたPETおよび15重量%ないし85重量%の重量比のシリカ(約0.25mmの平均径)を、単軸スクリュー混練機(Buss MDK 140;L/D=11;剪断速度450s-1、滞留時間約1分間;400kPaの最高圧力)において310℃の温度で処理した。リサイクルされたPETとシリカとの混合物をダイ(270℃)に通し、800mm×800mm(厚さ25mm)のスラブを成形した。このスラブをダブルベルト冷却デバイス(スループット600kg/時;冷却能力29kW;造形品から取り出される重量等価物当たりのエネルギー量は174kJ/kgである)で冷却した。表面割れを示さない優れたスラブが得られた。
【0051】
例2
フィラー材料として大理石を用いて、例2を繰り返した。表面割れを示さない優れたスラブが得られた。
【0052】
比較例1
WO 02/090288の例14に従ってスラブを製造した。しかしながら、最終的なスラブは、収縮割れを示した(図1を参照のこと)。
【0053】
例3
リサイクルされたPETおよび23重量%ないし77重量%の重量比の大理石石英(marble quartz)(平均粒子径約0.5mm)を、単軸スクリュー混練機(Buss MDK 140;L/D=11;剪断速度(最高)450s-1、滞留時間約1分間;400kPaの最高圧力)において300℃の温度で処理した。混合物の粘度は約1700Pa.sであった。リサイクルされたPETと大理石石英との混合物を15mmのダイを通して供給し、それにより厚さが約15mmのプレートを製造し、これを冷却ベルト(Sandvik type DBU;冷却ベルトの始点の温度は約270℃であり、冷却ベルトの終点の温度は約100℃であった;冷却ベルトの長さは8mであった;冷却速度は約13℃/分であった)に移した。方法の工程(d)の間にプレートから取り出される重量等価物当たりのエネルギー量は約180kJ/kgであった(冷却能力は45kWであり、スループットは900kg/時=0.25kg/秒であった。ビオ数は約1であった。プレートは表面割れを示さず、脆くなかった。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体フィラーと熱可塑性バインダとを含む複合材料から造形品を製造する方法であって、前記方法は、以下の順々に続く工程:
(a)固体フィラーと熱可塑性バインダとを混合デバイスに供給する工程と;
(b)前記固体フィラーと前記熱可塑性バインダとを前記混合デバイスにおいて混合させて複合材料を得る工程と;
(c)工程(b)で得られた前記複合材料を成形して造形品にする工程と;
(d)工程(c)で得られた前記造形品を冷却する工程であって、前記造形品を、少なくとも約5℃/分ないし約120℃/分の冷却速度で冷却する工程と
を含み、
工程a)において、前記固体フィラーの前記熱可塑性バインダに対する重量比は約2:1ないし約15:1である方法。
【請求項2】
前記造形品がスラブである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スラブは厚さが約0.3cmないし約5cmである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記スラブの平均厚さが約2.5mmないし約50mmである請求項2または請求項3に記載の方法。
【請求項5】
上面および下面スラブを同時に冷却する請求項2ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程(d)をベルト冷却によって行う請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程(d)において、ダブルベルト冷却デバイスを使用する請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程(d)の間に前記造形品から取り出される重量等価物当たりのエネルギー量は、約100kJ/kgないし約250kJ/kgである請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程(d)中のビオ数は約0.1ないし約10である請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
空気、水またはこれらの組み合わせを使用することによって、前記造形品の冷却を達成する請求項1ないし8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程(a)において、前記固体フィラーと前記熱可塑性バインダとを、約1:1ないし約20:1の重量比で混錬デバイスに供給する請求項1ないし10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記熱可塑性バインダは、該バインダの総重量に基づいて、約60重量%ないし約100重量%の熱可塑性ポリエステルを含む請求項1ないし11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記熱可塑性ポリエステルは、約90重量%ないし約100重量%のリサイクルされたポリエチレンテレフタラートを含む請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記熱可塑性バインダは約0重量%ないし約40重量%のポリオレフィンを含む請求項1ないし13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
工程(b)を約230°ないし約350℃の温度で行う請求項1ないし14のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−526002(P2012−526002A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509749(P2012−509749)
【出願日】平成22年5月4日(2010.5.4)
【国際出願番号】PCT/NL2010/050261
【国際公開番号】WO2010/128854
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(511269484)エクホテクト・ビー.ブイ. (2)
【氏名又は名称原語表記】Echotect B.V.
【住所又は居所原語表記】Lange Kleiweg 60F, NL−2288 GK Rijswijk, the Netherlands
【Fターム(参考)】