説明

制御できない事象をプロセスモジュールレベルで特定するための構成とその方法

【解決手段】基板処理中に処理チャンバ内におけるその場での(in-situ)高速過渡事象を検出するための方法が提供される。方法は、第1のデータセットが潜在的なその場での高速過渡事象を含むかどうかを決定するためにデータセットを基準のセット(その場での高速過渡事象)と比較することを含む。もし、第1のデータセットが潜在的なその場での高速過渡事象を含む場合は、方法は、その潜在的なその場での高速過渡事象が発生する期間中に発生する電気的徴候を保存することも含む。方法は、更に、電気的徴候を、保存されたアーク徴候のセットと比較することを含む。もし、一致が決定された場合は、方法は、尚も更に、電気的徴候を第1のその場での高速過渡事象として分類することと、既定の閾値範囲のセットに基づいて第1のその場での高速過渡事象の深刻度レベルを決定することとを含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
プラズマ処理における進歩は、半導体産業に成長をもたらした。競争力を持つためには、メーカは、基板を良質な半導体デバイスに加工することができる必要がある。基板処理中に満足のいく結果を達成するためには、プロセスパラメータの厳密な制御が一般的に必要とされる。処理パラメータ(例えば、RF電力、圧力、バイアス電圧、イオン束、プラズマ密度など)が既定の窓から外れると、望ましくない処理結果(例えば、不良なエッチングプロフィール、低い感度、基板への損傷、処理チャンバへの損傷など)がもたらされる恐れがある。したがって、半導体デバイスの製造では、処理パラメータが既定の窓から外れるときの状況を特定する能力が重要である。
【0002】
基板処理中は、基板を損傷させえる及び/又は処理チャンバコンポーネントへの損傷を生じえる何らかの制御できない事象が発生する恐れがある。これらの制御できない事象を特定するために、基板処理中にデータが収集されてよい。基板処理中に(バイアス電圧、反射能、圧力などの)様々なプロセスパラメータに関するデータを収集するために、センサなどの監視機器を用いることができる。本明細書で論じられるセンサとは、プラズマ処理コンポーネントの状態及び/又は信号を検出するために使用されえる機器を言う。議論を容易にするために、「コンポーネント」という用語は、処理チャンバ内の不可分な一パーツ又は複数パーツの組み立て品に言及するために使用される。
【0003】
センサによって収集されるデータのタイプ及び量は、近年増加を続けている。センサによって収集されたデータをプロセスモジュールデータ及びプロセスコンテクストデータ(チャンバ事象データ)との関連で解析することによって、既定の窓から外れたパラメータを特定することが可能である。したがって、(1つ又は2つ以上の)制御できない事象を止めるための(レシピ調節などの)修正措置を提供し、それによって、基板及び/又は処理チャンバコンポーネントへの更なる損傷の発生を阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0004】
添付の図面では、本発明は、限定的なものではなく例示的なものとして示され、図中、類似の参照符号は、同様の要素を指している。
【0005】
【図1】先行技術による、ホストレベル解析サーバを伴った相互接続ツール環境を示した全体的論理図である。
【0006】
【図2】センサとプロセスモデルコントローラとの間でデータを関連付けるためのクラスタツールレベルの解決法を伴った相互接続ツール環境を示した簡略ブロック図である。
【0007】
【図3】発明の一実施形態における、プロセスレベルトラブルシューティングアーキテクチャを示した簡略論理全体図である。
【0008】
【図4】発明の一実施形態における、プロセスモジュールレベル解析サーバを示した簡略機能図である。
【0009】
【図5】マイクロアーク事象を示した簡略図である。
【0010】
【図6A】発明の実施形態における、処理環境を示した簡略ブロック図である。
【図6B】発明の実施形態における、処理環境を示した簡略ブロック図である。
【0011】
【図7】発明の一実施形態における、高速サンプリング過渡検出アルゴリズムが解析モジュールの一部ではない生産環境内においてリアルタイム高速過渡事象を検出するための方法を示した簡略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、添付の図面に示されるような幾つかの実施形態を参照にして、本発明が詳細に説明される。以下の説明では、本発明の完全な理解を与えるために、多くの詳細が明記されている。しかしながら、当業者ならば、本発明が、これらの一部又は全部の詳細を伴わずとも実施されえることが明らかである。また、本発明を不必要に不明瞭にしないために、周知のプロセス工程及び/又は構造の詳細な説明は省略されている。
【0013】
方法及び技術を含む様々な実施形態が、以下で説明される。発明は、発明技術の実施形態を実行に移すためのコンピュータ可読命令を格納されたコンピュータ可読媒体を含む製造品も対象としえることを念頭に置かれるべきである。コンピュータ可読媒体としては、例えば、コンピュータ可読コードを格納するための、半導体、磁気、光磁気、光、又はその他の形態のコンピュータ可読媒体が挙げられる。更に、発明は、発明の実施形態を実施するための装置も対象とすることができる。このような装置は、発明の実施形態に関連したタスクを実行に移すための、専用及び/又はプログラム可能な回路を含んでよい。このような装置の例としては、適切にプログラムされたときの汎用コンピュータ及び/又は専用計算機器があり、コンピュータ/計算機器と、発明の実施形態に関連した様々なタスクに適応された専用の/プログラム可能な回路との組み合わせが挙げられる。
【0014】
上記のように、競争力を得るためには、メーカらは、基板処理中に発生しえる問題を効果的に且つ効率的にトラブルシューティングできなければならない。トラブルシューティングは、一般に、処理中に収集される夥しい量のデータを解析することを伴う。議論を促すために、図1は、先行技術による、ホストレベル解析サーバを伴った相互接続ツール環境を示した全体的論理図である。
【0015】
例えば、メーカが(エッチングツール、洗浄ツール、剥離ツールなどの)1つ又は2つ以上のクラスタツールを有しえる状況を考える。各クラスタツールは、1つ又は2つ以上の特定の処理を行うように各自構成された複数の処理モジュールを有してよい。各クラスタツールは、CTC104、CTC106、及びCTC108などのクラスタツールコントローラ(CTC)によって制御されてよい。各クラスタツールコントローラは、PMC110、PMC112、PMC114、及びPMC116などの1つ又は2つ以上のプロセスモジュールコントローラ(PMC)とやり取りしてよい。議論を容易にするために、PMC110との関連で例が挙げられる。
【0016】
介入を必要としえる状態を特定するために、センサによって、基板処理中に処理パラメータに関するデータ(感知データ)が収集されてよい。一例では、基板処理中に1つ又は2つ以上の処理パラメータに関するデータを収集するために、(センサ118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、及び140などの)複数のセンサがプロセスモジュールコントローラとやり取りしてよい。利用可能なセンサのタイプは、収集されえるデータのタイプに依存してよい。例えば、センサ118は、電圧データを収集するように構成されてよい。別の例では、センサ120は、圧力データを収集するように構成されてよい。一般に、プロセスモジュールからデータを収集するために使用されえるセンサは、ブランド、型、及び/又はモデルに違いがある。したがって、各センサは、その他のセンサとほとんど又は全くやり取りしないであろう。
【0017】
通常、センサは、1つ又は2つ以上の特定のパラメータに関する測定データを収集するように構成される。センサの大半は、処理を実施するようには構成されないので、各センサは、(コンピュータやユーザインターフェースなどの)計算モジュールにつなぐことができる。計算モジュールは、通常、アナログデータを処理するように及び未加工のアナログデータをデジタル形式に変換するように構成される。
【0018】
一例では、センサ118は、センサケーブル144を介してPMC110から電圧データを収集する。センサ118によって受信されたアナログ電圧データは、計算モジュール118bによって処理される。センサによって収集されたデータは、(データボックス142などの)ホストレベル解析サーバに送信される。ネットワーク接続を通じてデータボックス142に送信される前に、データは、先ず、計算モジュールによってアナログ形式からデジタル形式に変換される。一例では、ネットワーク経路146を通じてデータボックス142にデータが送信される前に、計算モジュール118bが、センサ118によって収集されたアナログデータをデジタル形式に変換する。
【0019】
データボックス142は、センサ及びプロセスモジュールを含む複数のソースからデータを収集し、処理し、解析するように構成された集中解析サーバであってよい。通常、一メーカの全クラスタツールによって基板処理中に収集されるデータの処理に、1つのデータボックスが使用可能である。
【0020】
データボックス142に伝送されえるデータの実際の量は、センサによって収集される量よりも大幅に少ないであろう。通常、センサは、膨大な量のデータを収集することができる。一例では、センサは、最大1メガバイト毎秒のレートでデータを収集することができる。しかしながら、データボックス142に送信されるのは、センサによって収集されたデータの一部のみである。
【0021】
センサによって収集されたデータストリーム全体をデータボックス142に伝送しない理由は、1つには、コスト効率の良い市販の通信プロトコルを使用するときのネットワーク帯域幅限界ゆえである。データボックス142へのネットワークパイプラインは、(データボックス142などの)1つのレシーバに送信されている(センサ118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、及び140などの)複数のソースからの大量のデータを扱うことができないであろう。つまり、センサ構成(センサ及び計算モジュール)とデータボックス142との間のネットワーク経路は、データボックス142が全センサ構成からくる膨大な量のデータを受信しようとする際に、大きなトラフィック渋滞に見舞われる恐れがある。上記からわかるように、もし、データボックス142が到着トラフィックを扱うことができないと、送信されているデータパケットが脱落して再送信が必要になり、それによって、既に深刻に渋滞しているネットワークパイプラインに更なる負荷がかかる恐れがある。
【0022】
また、データボックス142は、データの処理及び解析などのその他の重要な機能を実施しつつそれと同時に複数ソースからの多量の到着データを扱うことはできないであろう。上記のように、データボックス142は、到着するデータパケットを受信するように構成されるのみならず、例えば、到着する全データストリームを処理及び解析するようにも構成される。データボックス142は、収集されている種々のデータストリームのための解析サーバであるので、データボックス142は、夥しい量のデータストリームに対する解析を実施するための十分な処理能力を必要とする。
【0023】
データボックス142は、処理リソースに限りがあるので、各センサから収集されたデータの一部のみが、データボックス142に送信される。一例では、1つのセンサによって収集されえる幾千ものデータ項目のうち、1〜5ヘルツで10〜15のデータ項目のみが、データボックス142に転送されえる。一例では、センサ118によって収集されたデータの概略のみが、データボックス142に送信されえる。
【0024】
複数のセンサからデータを受信することに加えて、データボックス142は、プロセスモジュールコントローラからもデータを受信してよい。一例では、各プロセスモジュールコントローラによって、プロセスモジュールデータ及びプロセスコンテクストデータ(チャンバ事象データ)が収集され、データボックス142に転送されてよい。議論を容易にするために、プロセスモジュールデータ及びプロセスコンテクストデータは、プロセスモジュール&チャンバデータとして言及されてもよい。例えば、プロセスモジュールデータ及びプロセスコンテクストデータは、PMC110によって収集され、経路148を介してCTC104に送信されてよい。CTC104は、PMC110からのデータを管理するのみならず、クラスタツール内の(PMC112、PMC114、及びPMC116などの)その他のプロセスモジュールコントローラからのデータも扱ってよい。
【0025】
クラスタツールコントローラによって収集されたデータは、次いで、半導体機器通信規格/汎用機器モジュール(SECS/GEM)インターフェースを介してファブホスト102に伝送される。一例では、CTC104は、PMC110、112、114、及び/又は116から収集されたデータを、経路150を介してSECS/GEM156を通してファブホスト102に伝送する。ファブホスト102は、CTC104からのデータのみならず、例えばCTC106及びCTC108などのその他のクラスタツールコントローラからのデータも受信してよい。ファブホスト102によって収集されたデータは、次いで、経路158を介してデータボックス142に転送される。収集されているデータの量の莫大さゆえに、ファブホスト102に送信されている全てのデータがデータボックス142に転送されるのではなく、多くの場合、データの概略のみがデータボックス142に転送されるであろう。
【0026】
データボックス142は、センサ及びプロセスモジュールコントローラによって収集されたデータを処理、解析、及び/又は関連付けてよい。もし、異常が特定された場合は、データボックス120は、例えばPMC110において実施されているレシピ工程に適合しないパラメータなどの、問題の原因を決定してよい。ひとたび問題の原因が特定されたら、データボックス142は、イーサネットメッセージ(イーサネットは登録商標)の形式でファブホスト102に停止命令を送信してよい。メッセージを受信したら、ファブホスト102は、そのメッセージを、SECS/GEM156を通してCTC104に転送してよい。クラスタツールコントローラは、次いで、メッセージを、この例ではPMC110である意図したプロセスモジュールコントローラへ取り次いでよい。
【0027】
あいにく、停止命令は、リアルタイムで提供されないのが通常である。それどころか、停止命令は、影響された基板が処理された後に、又はひいては基板ロット全体がプロセスモジュールから退出された後に、意図したプロセスモジュールによって受信されるのが通常である。したがって、基板/基板ロットが損傷されるのみならず、1つ又は2つ以上の処理チャンバコンポーネントも悪影響を受け、それによって、無駄が増えるとともに所有コストが増す恐れがある。
【0028】
遅延の理由は、1つには、夥しい数のソースから受信されているデータの量の莫大さゆえである。たとえ、データボックス142が、高速プロセッサを伴うように構成され、大量のデータストリームを扱うのに十分なメモリを有するとしても、データボックス142は、依然、収集されている全てのデータを処理し、関連付け、及び/又は解析するのに時間を要するであろう。
【0029】
プロセスモジュールによる停止命令の受信が遅延するもう1つの理由は、データボックス142によって受信されているデータストリームの不完全さゆえである。データボックス142は、夥しい数のソースからデータを受信しているので、データボックス142に送信されている実際のデータは、収集されているデータよりも大幅に少ない。一例では、センサ118によって収集されている1ギガヘルツのデータストリームを送信する代わりに、データの一部のみ(約1〜5ヘルツ)が実際に送信されている。このため、データボックス142は、その全てのソースから多量のデータを受信してはいるが、受信されているデータは、不完全であるのが通常である。したがって、データボックス142が、全てのソースからの完全なデータセットにはアクセスできないゆえに、制御できない事象の決定には、時間がかかるであろう。
【0030】
また、データがデータボックス142に送信される経路には、違いがある。一例では、データは、アナログデータからデジタルデータに変換された後に、センサ構成(すなわちセンサ及びその計算モジュール)から直接送信される。反対に、プロセスモジュールによって収集されたデータは、より長いネットワーク経路を通じて(少なくともクラスタツールコントローラ及びファブホストを通して)伝送される。したがって、データボックス142は、全ての関連のデータストリームが受信されるまで、その解析を完了することができない。
【0031】
プロセスモジュールとデータボックス142との間のネットワーク経路が長いのみならず、この経路を通して送信されるデータストリームは、少なくとも2つのボトルネックに直面するのが通常である。1つ目のボトルネックは、クラスタツールコントローラにおけるものである。1つのクラスタツール内の複数のプロセスモジュールによって収集されたデータは、1つのクラスタツールコントローラに送信されているので、1つ目のボトルネックは、様々なプロセスモジュールからのデータストリームが1つのクラスタツールコントローラを通して処理されなければならないゆえに発生する。各プロセスモジュールから伝送されえるデータの量の莫大さゆえに、クラスタツールコントローラへのネットワーク経路は、深刻なトラフィック渋滞に見舞われるのが通常である。
【0032】
ひとたびクラスタツールコントローラによってデータが受信されたら、そのデータは、ファブホスト102に伝送される。2つ目のボトルネックは、ファブホスト102において発生しえる。ファブホスト102が、様々なクラスタツールコントローラからのデータを受信しているゆえに、ファブホスト102へのトラフィックもまた、受信されているデータの量の多さゆえに、渋滞に見舞われるであろう。
【0033】
データボックス142は、制御できない事象を決定するために、種々のソースからのデータを必要とするので、プロセスモジュールとデータボックス142との間のトラフィック状態は、データボックス142へのデータストリームの適時な送達を阻む。その結果、データボックス142が解析の実施に必要な全てのデータを集めるまでに、貴重な時間が失われる。更に、ひとたび停止命令が用意されると、その停止命令は、修正措置をとるべく適用されるまでに、同じく非常に長い経路を通って移動して、影響されたプロセスモジュールまで戻る必要がある。
【0034】
遅延に寄与しているもう1つの要因は、様々なデータソースからのデータを関連付ける難しさにある。データボックス142によって受信されているデータストリームは、通常、各センサ及び/又はプロセスモジュールから収集されたデータの概略であるので、データの関連付けは、利用可能なデータストリームの時間間隔に違いがあるゆえに、難しい作業になる恐れがある。一例では、センサ118からデータボックス142に伝送される選択されたデータストリームが、1秒間隔である一方で、PMC110からのデータストリームは、2秒間隔である。したがって、データストリームの関連付けは、制御できない事象が明確に決定されえるまでに、時間を要するであろう。
【0035】
データを関連付けることの更なる難しさは、データがデータボックス142に送信される経路の違いに起因する。データは、種々のコンピュータやサーバなどを通して伝送されているゆえに、コンピュータドリフト、ネットワーク待ち時間、ネットワーク負荷などに見舞われるであろう。その結果、データボックス142は、様々なソースからのデータを関連付けるのが困難であろう。制御できない事象を迅速に特定するには、厳密な関連付けが必要であるゆえに、制御できない事象が正確に特定されえる前には、更なる解析の実施が必要であろう。
【0036】
図1に提供されている解決策のもう1つの欠点は、所有コストである。クラスタツールシステムを維持するコストに加えて、センサ構成には、更なるコストがかかわっている。各センサは、ブランド/型/モデルに違いがあるので、各センサ構成は、センサと計算モジュールとを含むのが通常である。通常は、各センサ構成を収容するための物理的空間が必要とされる。したがって、特に、不動産価格が高いエリアでは、センサ構成の収容コストが高くつく恐れがある。
【0037】
プロセスモジュール内における制御できない事象の実際の発生と、プロセスモジュールによる停止命令の受信との間の実際の時間遅延を短縮するために、クラスタレベル解析サーバが提供される。図2は、センサとプロセスモデルコントローラとの間でデータを関連付けるためのクラスタツールレベルの解決法を伴った相互接続ツール環境を示した簡略ブロック図である。
【0038】
図1と同様に、クラスタツールは、(PMC210、212、214、及び216などの)複数のプロセスモジュールを含んでよい。解析のためのデータを収集するために、各プロセスモジュールは、(センサ218、220、222、224、226、228、230、232、234、236、238、及び240などの)複数のセンサにつながれてよい。各センサは、処理パラメータデータを収集するために、(センサケーブル244などの)センサケーブルを介して対応するプロセスモジュールコントローラとやり取りしてよい。センサによって収集されるデータは、アナログ形式であってよい。(計算モジュール218bなどの)計算モジュールは、経路246を介して(リモートコントローラ242などの)クラスタレベル解析サーバに転送する前に、データを処理してデジタル形式に変換してよい。
【0039】
図1と同様に、各プロセスモジュールコントローラは、(プロセスモジュールデータ及びプロセスコンテクストデータなどの)データを(CTC204及び206などの)クラスタツールコントローラにも伝送してよい。一例では、PMC210によって収集されたデータは、経路248を介してCTC204に伝送されてよい。PMC210からのデータを受信する以外に、CTC204は、(PMC212、214、及び216などの)その他の処理モジュールコントローラからのデータも受信してよい。クラスタツールコントローラによって受信されたデータは、次いで、経路250を介してファブホスト202に転送される。
【0040】
ファブホスト202とCTC204との間では、ファブホスト202に転送されるデータを複製するためのシリアルタップがネットワーク経路250につながれてよい。一例において、CTC204によってファブホスト202に転送されるデータは、シリアルタップ208によって傍受されてよい。データは、複製され、データストリームのコピーが、経路254を介してリモートコントローラ242に送信される。もし、ファブホストが2つ以上のクラスタツールコントローラにつながれている場合は、その各クラスタツールコントローラに、専用のリモートコントローラが結び付いている。一例において、経路252を介してCTC206からファブホスト202に送信されているデータは、別のシリアルタップ(256)によって傍受される。データは、複製され、CTC204に結び付いているリモートコントローラ(242)とは異なるリモートコントローラ(260)に経路258を介して送信される。
【0041】
したがって、様々なクラスタツールからの全てのデータを1つのデータボックスによって扱う代わりに、様々なクラスタツールからのデータを扱うために、複数のリモートコントローラが利用可能になる。つまり、各クラスタツールが、それ自身のリモートコントローラに結び付いている。各リモートコントローラが、(1つのクラスタツールに結び付いているプロセスモジュールコントローラ及びセンサのように)より少ない数のデータソースからのデータを扱うので、各リモートコントローラは、各ソースから、より多量のデータを扱うことができる。一例では、30〜100のデータ項目が送信される代わりに、10ヘルツで約40kB〜100kBのデータ項目が各リモートコントローラによって受信可能になるであろう。
【0042】
センサ及びプロセスモジュールコントローラから受信されたデータは、リモートコントローラによって解析される。もし、問題が特定された場合は、リモートコントローラは、クラスタツールコントローラに停止命令を送信してよい。一例では、リモートコントローラ242は、PMC210内における問題を特定する。経路254及び経路250を介し、シリアルタップ208を通してCTC204に停止命令が送信される。停止命令を受信したら、CTC204は、その停止命令を、この例ではPMC210である意図したプロセスモジュールコントローラに転送する。
【0043】
リモートコントローラは、(データボックス142によってなされているように)複数のクラスタツールからではなく、1つのクラスタツールからのデータを扱う責任のみを担うので、より多くのデータが解析されえるとともに、より優れた関連付けが異なるデータセット間に存在しえる。その結果、リモートコントローラは、より優れた且つより高速な解析を実施することができ、それによって、処理モジュール内における制御できない事象を修正するためのより適時な介入を提供することができる。一例では、特定された制御できない事象を次の基板ロットで発生させないために(データボックス142によって提供される停止命令などの)停止命令を受信するのではなく、例えばリモートコントローラ242によって送信された停止命令によって、処理を予定されている基板ロットの少なくとも一部をプロセスエンジニアが救出することを可能にすることができる。
【0044】
リモートコントローラ解決法は、データボックス解決法よりも優れてはいるが、リモートコントローラ解決法は、依然、その解析を実施するために概略データに依存している。したがって、基板処理中に発生しえる問題は、特定されないままになる恐れがある。更に、プロセスモジュールとリモートコントローラとの間の経路は、依然、直接的な経路ではない。その結果、コンピュータドリフト、ネットワーク待ち時間、及び/又はネットワーク負荷が時間的な不一致を招く恐れがあり、これは、リモートコントローラがセンサからのデータをプロセスモジュールからのデータに関連付けることを困難にする恐れがある。
【0045】
このため、リモートコントローラ解決法は、停止命令の適時性を向上させたとはいえ、依然として不十分である。停止命令は、影響された基板が被った問題を、次の基板の処理中に発生させないようにできるのがせいぜいである。コストを最小限に抑える必要がある競争が熾烈な市場では、基板の損傷ゆえの無駄及び/又は処理チャンバコンポーネントの損傷ゆえのダウンタイムが市場損失につながる恐れがある。したがって、制御できない事象を特定するためのリアルタイムな解決策が望まれている。
【0046】
本発明の実施形態にしたがって、トラベルシューティングがプロセスモジュールレベルで実施されるプロセスレベルトラベルシューティングアーキテクチャ(PLTA)が提供される。発明の実施形態は、リアルタイムな停止命令を伴ったリアルタイムな解析を提供するプロセスレベルトラブルシューティングアーキテクチャを含む。発明の実施形態は、更に、センサ間における負荷バランス及び耐障害性のための構成を含む。
【0047】
発明の実施形態において、プロセスレベルトラブルシューティングアーキテクチャは、解析サーバが1つの処理モジュール及びそれに対応するセンサと通信しているネットワークシステムである。一実施形態において、ネットワーク内において交換されている情報は、双方向である。一例では、解析サーバは、処理モジュール及びセンサからプロセスデータを継続的に受信してよい。反対に、センサは、処理モジュールからデータを受信してよく、処理モジュールは、解析サーバから命令を受信してよい。
【0048】
例えば、基板が処理されている状況を考える。基板処理中は、複数のデータが収集されてよい。一例では、圧力に関するデータが100ミリ秒ごとに収集される。もし、処理に1時間かかる場合は、圧力パラメータについて36,000のデータ項目が収集されている。ただし、圧力データ以外のその他の複数のプロセスデータ(例えば電圧バイアスや温度など)も収集されてよい。したがって、基板の処理が完了した時点では、かなりの量のデータが収集されている。
【0049】
先行技術では、データは、もし(データボックス142のように)複数のクラスタツールから収集されるデータを扱うように構成されるのでないとしても(図2のリモートコントローラ242のように)複数の処理モジュールから収集されるデータを扱うように構成されるであろう解析サーバに伝送される。データストリームは、複数のソースから来るので、データの解析及び/又は関連付けは、時間を要する。更に、先行技術の解析サーバは、収集された全てのデータを処理及び解析することはできないので、各ソースから収集されたデータの一部のみが、解析サーバに伝送される。その結果、データストリームの整合、処理、関連付け、及び/又は解析を行う複雑な作業は、必ずしも常に容易に調達可能ではない長さの時間を要する。
【0050】
発明の一態様において、本願の発明者らは、もし、より粒度の高いデータが解析のために利用可能であれば、より正確で且つより迅速な解析が実施されえることに気付いた。1つのソースから、より多くのデータを解析するためには、解析サーバは、より少ないソースからのデータを解析しなければならない。一実施形態では、プロセスモジュールレベルでデータを処理及び/又は解析するための構成が提供される。つまり、各プロセスモジュール及びその対応するセンサのための解析を実施するためのプロセスモジュールレベル解析サーバが提供される。
【0051】
一実施形態において、プロセスモジュールレベル解析サーバは、1つ又は2つ以上のプロセッサを含みえる共有メモリバックボーンを含む。各プロセッサは、1つ又は2つ以上のセンサとやり取りするように構成されてよい。一例では、センサ1によって収集されたデータが、プロセッサ1によって処理されえる一方で、センサ2によって収集されたデータは、プロセッサ2によって処理されえる。
【0052】
先行技術と異なり、プロセッサは、負荷バランス及び耐障害性を実施するために、その処理能力を互いに共有することができる。先行技術において、各計算モジュールは、1つのセンサによって収集されたデータを扱うように構成される。各計算モジュールは、個別のユニットであり、互いにやり取りしないのが通常であるので、負荷バランスは、通常は実施されない。先行技術と異なり、プロセスモジュールレベル解析サーバ内におけるプロセッサのセットは、負荷バランスを実施することができる。一例において、もし、プロセッサ1がデータ過負荷を受けている一方で、プロセッサ2がほとんど又は全くデータを受信していない場合は、プロセッサ1がセンサ1からのデータを処理するのを助けるために、プロセッサ2を充てることが可能である。
【0053】
更に、先行技術において、計算モジュールは、ブランド/型/モデルが異なる傾向にあるので、もし、1つの計算モジュールが誤動作している場合は、その他の計算モジュールは、その誤動作している計算モジュールによって実施される処理を引き継ぐことができない。先行技術と異なり、プロセッサ間で、必要に応じて作業負荷を再分配することが可能である。例えば、もし、プロセッサ2がその機能を実施することができない場合は、プロセッサ2が修復されるまで、作業負荷をその他のプロセッサに再分配することが可能である。上記からわかるように、プロセッサは、個別の計算モジュールの必要性を排除し、それによって、計算モジュールの収容に必要とされる物理的空間も削減する。
【0054】
発明の一実施形態において、プロセッサは、2つのタイプのプロセッサ、すなわちプライマリプロセッサとセカンダリプロセッサとに分けられてよい。プライマリプロセッサ及びセカンダリプロセッサは、ともに、センサからのデータを扱うように構成される。一例において、もし、セカンダリプロセッサ1がセンサ1に結び付いている場合は、セカンダリプロセッサ1は、センサ1から来るデータのみを処理するのが通常である。同様に、もし、セカンダリプロセッサ2がセンサ2及びセンサ3に結び付いている場合は、セカンダリプロセッサ2は、これらのセンサ(2及び3)から来るデータのみを処理するのが通常である。
【0055】
一実施形態において、共有メモリバックボーンは、1つ又は2つ以上のプライマリプロセッサを含んでよい。プライマリプロセッサのセットは、センサからのデータを扱うのみならず、処理モジュールから来るデータを扱うようにも構成されてよい。また、プライマリプロセッサのセットは、(センサや処理モジュールなどの)様々なソース間でデータを関連付けて解析を実施するように構成される。もし、停止が必要な場合は、プライマリプロセッサのセットは、プロセスモジュールコントローラに停止命令を送信するように構成される。
【0056】
本発明の特徴及び利点は、以下の図面及び議論を参照にして、より良く理解されるであろう。
【0057】
図3は、発明の一実施形態における、プロセスレベルトラブルシューティングアーキテクチャを示した簡略論理全体図である。メーカは、2つ以上のクラスタツールを有してよいが、発明の一実施形態の説明としては、1つのクラスタツールが使用されるとする。クラスタツールは、様々な数の処理モジュールを有してよいが、図3に示された例は、4つの処理モジュールを伴った1つのクラスタツールを含むとする。
【0058】
各処理モジュールによって収集されたデータは、その対応する処理モジュールコントローラ(PMC306、PMC308、PMC310、及びPMC312)によって収集され、クラスタツールコントローラ(CTC)304を介してファブホスト302に伝送される。PMCによって伝送されえるデータは、先行技術において送信されていたのと同じタイプのデータ(プロセスモジュールデータ及びプロセスコンテクストデータ)であってよい。先行技術と異なり、ファブホスト302に伝送されるデータは、トラブルシューティングの実施のために処理モジュールが依存するデータではなく、将来の解析に備えてアーカイブに保管されて利用可能にされるデータである。
【0059】
一実施形態では、トラブルシューティングのために必要とされる解析を実施するために、プロセスモジュールレベル解析サーバ(APECS314)が提供される。PMC308内において基板がエッチングされている状況を考える。基板処理中に、センサ316、318、及び320は、PMC308からデータを収集している。一例では、センサ316は、PMC308から電圧バイアスデータを収集するように構成される。PMC308から収集されたアナログデータは、センサケーブル328を介してセンサ316に送信される。同様に、センサ318及びセンサ320は、それぞれセンサケーブル330及びケーブル332を介してデータを収集してよい。センサによって収集されたデータは、次いで、処理及び/又は解析のために、経路322、324、及び326のいずれかを介してAPECS314に伝送されてよい。
【0060】
先行技術と異なり、センサによって収集されたデータは、解析サーバ(APECS314)に伝送される前に(例えば概略化などの)前処理を経る必要がない。一実施形態では、データを処理するための計算モジュールを有する代わりに、各センサは、データをAPECS314に転送する前にアナログデータをデジタルデータに変換するために使用されえる単純なデータコンバータを含んでよい。或いは、一実施形態では、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などのデータコンバータが、APECS314に組み込まれてよい。一例では、各プロセッサは、その処理の一環としてデータをデジタル形式に変換するためのデータコンバータアルゴリズムを含んでよい。上記からわかるように、計算モジュールの必要性を排除することによって、クラスタツール及びそのハードウェアの収容に必要とされる物理的空間が小さくてすむ。その結果、所有のコストを削減することができる。
【0061】
APECS314は、1つの処理モジュール及びその対応するセンサからのデータのみを処理するのに専念するので、1つのソースから、より多量のデータを扱うことができる。つまり、各センサから伝送されたデータの量を減らさなければならない代わりに、APECS314は、各センサによって収集されたデータの、たとえ全部ではなくとも大半を扱うように構成される。一例では、解析のために僅か10〜15のデータ項目が送信される代わりに、各センサから二千強のデータ項目がAPECS314による解析のために利用可能になるであろう。したがって、処理及び解析のためにAPECS314によって利用可能なデータストリームは、より完全なデータセットになる。
【0062】
一実施形態において、APECS314は、処理モジュールから来るデータを扱うようにも構成される。データストリームが、(データボックス又はリモートコントローラなどの)解析サーバによって受信される前に(例えばクラスタツールコントローラやファブホストなどの)様々なサーバを通る長いデータ経路を経て送信される先行技術と異なり、プロセスモジュールによって収集されたデータは、その他のサーバを通る必要なくAPECS314に直接送信される。一例では、プロセスモジュールデータは、経路334を介してPMC308からAPECS314に送信されてよい。もし、制御できない事象が特定された場合は、停止命令は、先ずその他のサーバを経る必要なく経路336を介してPMC308に直接送信されてよい。
【0063】
プロセスモジュールレベル解析サーバに関する更なる詳細が、図4に提供されている。図4は、発明の一実施形態における、プロセスモジュールレベル解析サーバを示した簡略機能図である。各プロセスモジュールには、(APECS400などの)プロセスモジュールレベル解析サーバが割り当てられてよい。APECS400は、双方向サーバであり、到着するデータを処理するように及び制御できない事象が特定されたときに停止命令を送信するように構成される。
【0064】
データソースは、2つの主なソース、すなわちセンサによって収集されたデータ及びプロセスモジュールによって収集されたデータから来るであろう。一実施形態において、APECS400は、複数のセンサ(センサ410、412、414、416、420、422、424、及び426)からの到着データを受信するように構成される。クラスタツール所有者には、従来のセンサ構成(計算モジュールを伴ったセンサ)に既に多額の資金を投じた者がいるかもしれないので、APECS400は、従来のセンサ構成及び改良されたセンサ(計算モジュールを必要としないセンサ)の両方からデータを受け入れるように構成される。
【0065】
一実施形態において、APECS400は、イーサネットスイッチ418のような、(センサ410、412、414、416などの)従来のセンサ構成とやり取りするためのインターフェースを含んでよい。一例では、センサ410によって収集されたデータは、デジタルデータとして(経路430、432、434、及び436を介して)APECS400に伝送される前に、先ず、計算モジュール410bによってアナログ形式からデジタル形式に変換される。イーサネットスイッチ418は、データストリームを受け入れるために、従来のセンサ構成とやり取りするように構成される。データストリームは、次いで、処理のために、(経路446、448、450、又は452を介して)APECS400内のプロセッサ(402、404、406、及び408)の1つに引き渡される。
【0066】
プロセスパラメータを測定するために従来のセンサ構成を用いる代わりに、改良されたセンサ(計算モジュールを伴わないもの)が使用されてよい。収集されたデータは、概略化される必要がないので、処理のための計算モジュールは、もはや必要なくなる。その代わり、一実施形態では、改良されたセンサは、安価なFPGAのような、データをアナログ形式からデジタル形式に変換するためのデータコンバータ(不図示)を含んでよい。或いは、センサ内にデータコンバータを実装する代わりに、APECS400内にデータコンバータ(不図示)が実装されてよい。データコンバータがAPECS400の外又は内のいずれに実装されるかにかかわらず、計算モジュールの排除は、クラスタツールの所有におけるコスのト節約を可能にする。一例では、計算モジュールを購入、収容、及び維持するためのコストが大幅に削減される。
【0067】
発明の一実施形態において、APECS400は、到着データを扱うためのプロセッサのセット(402、404、406、及び408)を含む。プロセッサのセットは、物理的処理ユニット、仮想プロセッサ、又はそれらの組み合わせであってよい。各プロセッサは、プロセッサに結び付いているソースからのデータストリームを扱う責任を担っている。一例では、経路440を介してセンサ422から流入するデータストリームが、プロセッサ404によって扱われる。別の一例では、センサ424によって収集されたデータストリームが、処理のために、経路442を介してプロセッサ406に伝送される。
【0068】
プロセッサの数と、プロセッサとセンサとの間の関係は、ユーザの設定に依存してよい。一例において、図4は、プロセッサとセンサとの間の1対1の関係のみを示しているが、その他の関係も存在することが可能である。一例では、1つのプロセッサが、2つ以上のソースからのデータを扱うように構成されてよい。別の例では、1つのセンサからのデータストリームを、2つ以上のプロセッサが扱うように構成されてよい。
【0069】
各プロセッサは、一実施形態では、共有メモリバックボーン428を共有する。したがって、1つ又は2つ以上のプロセッサが過負荷になったときは、負荷バランシングが実施されてよい。一例において、もし、経路444を介してセンサ426から流入するデータストリームが、プロセッサ408の処理能力を上回る場合は、プロセッサ408にかかる負荷の軽減を助けるために、その他のプロセッサを充てることが可能である。
【0070】
負荷バランシング以外に、共有メモリバックボーンは、耐障害性のための環境も提供する。つまり、もし、プロセッサの1つが正常に動作していない場合は、その誤動作しているプロセッサによってこれまでサポートされていた処理は、その他のプロセッサに再分配される。一例において、もし、プロセッサ406が正常に機能しておらず、センサ424から来るデータストリームを処理することができない場合は、センサ424からのデータストリームを扱うように、プロセッサ404を仕向けることが可能である。したがって、作業負荷を再分配する能力は、サーバ全体のダウンタイムを招くことなく正常に機能していないプロセッサが交換されることを可能にする。
【0071】
一実施形態では、APECS400内に2つのタイプのプロセッサが存在してよい。第1のタイプのプロセッサは、セカンダリプロセッサ(プロセッサ404、406、又は408)である。各セカンダリプロセッサは、その対応する(1つ又は2つ以上の)センサから受信されたデータストリームを処理するように構成される。また、一実施形態において、各プロセッサは、データを解析するように及び(1つ又は2つ以上の)対応するセンサに存在しえるあらゆる潜在的な問題を特定するように構成される。
【0072】
第2のタイプのプロセッサは、プライマリプロセッサ(402)として知られる。図4は、プライマリプロセッサを1つのみ示しているが、プライマリプロセッサの数は、ユーザの設定に依存してよい。一実施形態では、プライマリプロセッサは、1つ又は2つ以上のセンサからのデータストリームを扱うように構成されてよい。一例では、センサ420によって収集されたデータストリームは、処理のために、経路438を介してプライマリプロセッサ402に送信される。
【0073】
プライマリプロセッサのもう1つのデータソースは、プロセスモジュールである。つまり、プロセスモジュールによって収集されたプロセスモジュールデータ及びプロセスコンテクストデータが、プライマリプロセッサによって処理される。一例において、プロセスモジュールによって収集されたデータは、プロセス制御バスを通って経路454を介してAPECS400に送信される。データは、経路446を介してプライマリプロセッサ402に流入する前に、先ず、イーサネットスイッチ418を通る。
【0074】
データ処理に加えて、プライマリプロセッサは、複数ソースからのデータを解析するようにも構成される。一例では、センサ422からのデータストリームとセンサ424からのデータストリームとの間の関連付けが、プライマリプロセッサ402によって実施される。別の例では、1つ又は2つ以上のセンサからのデータストリームとプロセスモジュールからのデータストリームとの間の関連付けも、プライマリプロセッサ402によって実施される。
【0075】
各データソースのためのデータ経路が、ほぼ同様の長さになるので、データの関連付けは、先行技術におけるよりも、大幅に困難でなくなる。一例において、データは、(クラスタツールコントローラ及び/又はファブホストなどの)その他のサーバを通る必要なくプロセスモジュールからAPECS400へ流れるので、プロセスモジュールからのデータストリームは、図1及び図2で説明されたようにデータストリームが(クラスタツールコントローラやファブホストなどの)その他のサーバを通って伝送されなければならないときに発生しえる(コンピュータドリフト、コンピュータ待ち時間、ネットワーク負荷などの)コンピュータ及び/又はネットワークの状態に起因する変化に見舞われない。また、関連付け及び解析の実施に必要とされる全ての関連データストリームを受信するための待ち時間も、大幅に短縮される。このように、(コンピュータドリフト、コンピュータ待ち時間、ネットワーク負荷などの)外部状況が実質的に排除されたとき、異なるソースからのデータの関連付けは、大幅に簡略化される。
【0076】
データ経路以外にも、1つのソースからの、より粒度が高く且つより多量のデータは、関連付けを実施するためのデータ点をより多く提供するので、より迅速で且つより正確な解析の実施が可能になる。先行技術において、先行技術の解析サーバは、夥しい数のデータソースからの多量のデータを扱うことができないので、解析のために利用可能なデータは、不完全であるのが通常であり、ゆえに、データソース間の関連付けは、困難であるのが通常である。先行技術と異なり、各解析サーバは、限られた数のソース(プロセスモジュール及びそれに結び付いているセンサ)からのデータを解析する責任のみを担うので、データソースの数は、大幅に減少される。データソースの数が大幅に減少されているので、解析サーバは、1つのソースから、より多量のデータを扱う容量を有する。より粒度の高い詳細が提供されれば、様々なソースのデータストリーム間で、より優れた関連付けが達成されるであろう。
【0077】
もし、(制御できない事象などの)問題が特定された場合は、プライマリプロセッサは、プロセスモジュールに停止命令を送信するように構成される。一実施形態では、APECS400からプロセスモジュールに停止命令を送信するために、直接的なデジタル出力回線456が用いられる。2つのデバイス間の直接的なデジタル出力回線によって、停止命令は、伝送される前に先ずイーサネットメッセージに変換される必要がなくなる。したがって、停止命令を適切な形式にするために及びそれを変換しなおして戻すために必要な時間が、実質的に解消される。このため、APECS400は、制御できない事象を扱うためにリアルタイムな停止又はほぼリアルタイムな停止をプロセスモジュールに提供することができる。
【0078】
一実施形態では、プライマリプロセッサは、経路458を介してその他のデバイスとやり取りするようにも構成されてよい。一例において、もし、クラスタツールコントローラがAPECS400にリクエストを送信した場合は、そのリクエストは、経路458を介して送信されてプライマリプロセッサ402によって扱われてよい。別の例では、ファブホストへの通知が、経路458及びクラスタツールコントローラを介して送信されてよい。
【0079】
本発明の1つ又は2つ以上の実施形態からわかるように、プロセスレベルトラベルシューティングアーキテクチャが提供される。解析サーバをプロセスモジュールレベルに局在させることによって、解析のためのデータ粒度が提供され、その結果、より迅速で且つより正確な解析がもたらされる。様々なデータソースのためのデータ経路が同様であることによって、様々なデータストリーム間に、より優れた関連付けが存在する。より迅速で且つより正確な解析によって、より適時にトラブルシューティングを実施し、次の基板が損傷されるのを阻止するためだけでなく被害基板に影響を及ぼす制御できない事象を修理するためにも使用されえる修正措置をとらせることによって被害基板を損傷から救出するための停止命令を適時に提供することが可能である。このため、無駄にされる基板の数が少なくてすみ、処理チャンバコンポーネントへの損傷が大幅に低減される。
【0080】
発明の別の態様では、本願の発明者らは、適時で、迅速で、且つ正確な解析を実施することができるプロセスレベルトラブルシューティングアーキテクチャによって、(マイクロアーク事象、デチャック事象、スパイク事象などの)高速過渡事象をリアルタイムでのその場での検出が特定及び管理されえることに気付いた。本明細書で論じられる高速過渡事象とは、基板処理中に急速に且つ通常は短期間にわたって発生しえる(マイクロアーク事象、デチャック事象、スパイク事象などの)事象を言う。高速過渡事象を特定する作業は、各事象の速さ及び短い持続時間のゆえに、通常は、できる限り、基板ロット全体が処理された後にオフラインで実施されてきた。
【0081】
一例では、例えば光計測ツールを使用して、1枚又は2枚以上の基板が検査されるとする。あいにく、検査は、リアルタイム検出を提供しない。それどころか、例えばマイクロアーク事象が基板上で発生しているとして特定された時点では、その基板が損傷されているのみならず、その基板ロットの残りも損傷されている恐れがある。また、処理チャンバ内のハードウェアコンポーネントへの損傷も発生している恐れがある。
【0082】
近年では、(高速過渡事象の結果である)高速過渡の電気的徴候が捕獲されることを可能にする高速過渡センサが開発されている。しかしながら、高速過渡センサの大半は、電気的徴候を分類する能力を有さない。つまり、高速過渡センサは、データを収集することはできるが、そのデータを有害な可能性のある事象の特定に使用されえる意味ある電気的徴候に分類する能力は有さないのが通常である。
【0083】
例えば、エッチングプロセス中に、電荷が蓄積してマイクロアーク事象を発生させる状況を考える。本明細書で論じられるマイクロアークとは、電力が急激に散逸してその散逸が基板上のパターンに(層の破壊、パターンの破壊、層の融解などの)損傷を及ぼすときに発生する事象を言う。VIプローブを用いることによって、マイクロアークに関するデータが収集されえる。しかしながら、VIプローブなどの高速過渡センサの大半は、データを解釈してマイクロアーク事象などの高速過渡事象がいつ生じたかを特定する知能を欠いている。
【0084】
それどころか、高速過渡センサによって収集されたデータは、人間であるユーザなどの第三者によって、又はソフトウェアプログラムによって、解析されなければならないであろう。一例では、人間であるユーザが、夥しい量のデータを解析し、基板処理中に高速過渡事象が発生したかどうかの決定を(自身の専門知識に基づいて)下さなければならないであろう。データを解析する作業は、何週間まではいかなくても何時間はかかるであろう。たとえデータ解析がソフトウェアプログラムによって実施されるとしても、何百万ものデータサンプルの解析は、やはり時間を要するであろう。問題が特定されたときには、1つ若しくは2つ以上の基板ロットへの損傷及び/又は処理チャンバのハードウェアコンポーネントへの損傷が既に生じている恐れがある。
【0085】
マイクロアーク事象は、通常は予測可能な現象ではないので、マイクロアーク事象などの高速過渡事象の検出は、困難な作業である恐れがある。つまり、例えばマイクロアークは、必ずしも全ての基板上で発生するものではない。発明の一態様において、本願の発明者らは、たとえマイクロアーク事象のタイミングが予測不能であっても、マイクロアーク事象の電気的徴候はそうではないことに気付いた。つまり、各マイクロアーク事象は、固有の徴候によって表すことが可能である。
【0086】
図5は、マイクロアーク事象を示した簡略図(曲線502)である。曲線502からわかるように、オンウエハマイクロアーク事象が発生するときに、電圧信号及び電流信号は、同時に急降下(504)に見舞われる。次いで、電圧信号及び電流信号は、両信号が降下した時点とは異なるレベルかもしれない平坦域(506)へ徐々に上昇するのに伴って、逆減衰を経る。
【0087】
発明の実施形態にしたがって、プラズマ処理システムの処理チャンバ内におけるマイクロアーク事象などの高速過渡事象を扱うための方法と構成とが提供される。発明の実施形態は、高速過渡事象(例えばマイクロアーク)を検出するための方法を含む。発明の実施形態は、また、高速過渡の電気的徴候を、(アーク徴候などの)既知の高速過渡の徴候との徴候の比較の実施によって分類するための方法も含む。発明の実施形態は、更に、高速過渡事象の深刻度を分類するための方法も含む。発明の実施形態は、尚も更に、リアルタイムな生産環境中における損傷を最小限に抑えるために高速過渡事象を管理するための方法も含む。
【0088】
本文献では、マイクロアークを一例として使用して、様々な実装形態が論じられる。本発明は、しかしながら、マイクロアークに限定されず、基板処理中に発生しえる任意の高速過渡事象を含むことが可能である。むしろ、議論は、例示を意図しており、発明は、提示された例に限定されない。
【0089】
発明の一実施形態において、潜在的なマイクロアーク事象を検出するための方法と構成とが提供される。前述のように、高いサンプリング率を実施する(例えば1秒間に幾百万又は幾十億ものデータ点を収集する)ことができる(VIプローブなどの)高速過渡センサが、基板処理中にデータを収集するために用いられてよい。一実施形態では、例えばVIプローブが基板処理中にデータを収集している間に、高速サンプリング過渡検出アルゴリズムが実行されてよい。一実施形態では、高速サンプリング過渡検出アルゴリズムは、潜在的な高速過渡の電気信号を定義するための基準を含んでよい。一例では、潜在的なオンウエハマイクロアーク事象を特定するために、高速サンプリング過渡検出アルゴリズムを使用して、電圧信号及び電流信号がともに同時に降下する事象を探すことが可能である。別の例では、潜在的なチャンバマイクロアーク事象を特定するために、高速サンプリング過渡検出アルゴリズムを使用して、電圧信号及び電流信号がともに急上昇する事象を探すことが可能である。
【0090】
一実施形態では、高速サンプリング過渡アルゴリズムは、(VIプローブコントローラなどの)センサコントローラによって実施される。このセンサコントローラは、センサ(例えばVIプローブ)につながれてセンサ(例えばVIプローブ)とのインターフェースを提供するように及びセンサ(例えばIVプローブ)からデータを受信するように構成された計算モジュールである。別の実施形態では、高速サンプリング過渡アルゴリズムは、センサコントローラ(例えばVIプローブコントローラ)とやり取りする計算モジュールによって実施される。更に別の実施形態では、高速サンプリング過渡アルゴリズムは、センサ(例えばVIプローブ)と直接やり取りする解析モジュールによって実施される。
【0091】
もし、センサ(例えばIVプローブ)又はセンサ(例えばIVプローブ)とやり取りしている計算モジュールのいずれかによって、潜在的なマイクロアーク事象が特定された場合は、一実施形態では、その事象の発生の付近で発生する電圧信号及び電流信号(例えば電気的徴候)の波形が保存されて、解析のためにプロセスモジュールレベル解析サーバ(例えばAPECS314)などの解析モジュールに転送されてよい。つまり、センサレベルで検出を実施することによって、(マイクロアークなどの)潜在的な高速過渡の電気的徴候に関するデータのみが、更なる解析のために解析モジュールに転送される。このため、解析のために全てのデータを解析モジュールに送信するのではなく、データ経路に沿って送信されているデータトラフィックの量を減らすためにフィルタリングを実施してよく、それによって、帯域幅要件を減らすとともに解析モジュールのプロセッサ能力を軽減することが可能である。
【0092】
しかしながら、もし、センサ(例えばIVプローブ)と直接やり取りしている解析モジュールによって潜在的なマイクロアーク事象が特定される場合は、一実施形態では、データフィルタリングは不要である。その代わり、プロセスレベルトラブルシューティングアーキテクチャの一部である(APECS314などの)解析モジュールは、大量のデータを扱うことができる高速プロセッサを有してよい。発明による固有なプロセスレベルトラブルシューティングアーキテクチャによって、その他のタイプの解析アーキテクチャで発生しえる一般的なデータトラフィック渋滞が大幅に解消されえる。その結果、解析モジュールは、幾百万ものデータサンプルを迅速に且つ効率的に解析することができる。
【0093】
発明の一実施形態では、潜在的な高速過渡の電気的徴候の分類が実施されてよい。一例において、解析モジュールによって、潜在的な高速過渡事象の波形が受信されたら、同解析モジュールは、潜在的な高速過渡の電気的徴候を(アーク徴候のセットなどの)高速過渡の徴候のセットと比較してよい。一実施形態では、マイクロアークなどの高速過渡事象の例としての種々の既知の波形が、ライブラリに保存されてよい。
【0094】
もし、潜在的な高速過渡の電気的徴候が、ライブラリに保存されている高速過渡の徴候のセットのなかの1つと一致するならば、一実施形態では、高速過渡事象の深刻度が決定されてよい。一例では、その高速過渡事象は、処理されている基板にほとんど又は全く影響を及ぼさない事象である。したがって、その事象は、低い深刻度レベルを有する事象として分類されるであろう。別の例では、その高速過渡事象は、処理されている現基板を損傷させたかもしれない事象である。このため、その高速過渡事象は、高い深刻度レベルを有するものとして分類されるであろう。
【0095】
高速過渡事象の深刻度を特定することによって、その高速過渡事象をどのように扱うのが最適であるかについての決定を下すことができる。発明の一実施形態では、高速過渡事象の深刻度に応じて既定の一連の措置がとられてよい。一例では、低い深刻度レベルを有する高速過渡事象が、警告をトリガする一方で、高い深刻度レベルを有する高速過渡事象は、結果として例えばエッチングプロセスを終了させてよい。
【0096】
議論を容易にするために、図6Aは、発明の一実施形態における、処理環境を示した簡略ブロック図である。処理システム600は、基板604を中で処理されている処理チャンバ602を含んでよい。基板処理中は、基板をエッチングするためのプラズマを発生させるために、ガス(不図示)が、(RFジェネレータのセット606を通じて整合器のセット608を介して提供される)電力と相互に作用することができる。
【0097】
基板処理中に、もし、電荷の蓄積が生じて高速過渡事象を発生させた場合は、データは、VIプローブ610によって収集されて、高速サンプリング過渡検出アルゴリズムモジュール616によって識別されてよい。高速サンプリング過渡検出アルゴリズムモジュール616は、一実施形態では、高速過渡事象を定義するための基準を含んでよい。一実施形態では、高速過渡検出アルゴリズムモジュールは、基板処理中に実行されるように構成されてよい。
【0098】
一実施形態では、収集されたデータは、経路のセット614に沿ってVIプローブコントローラ612に転送されてよい。VIプローブコントローラ612は、VIプローブ610を管理するように少なくとも構成される。一実施形態では、VIプローブコントローラ612は、高速サンプリング過渡検出アルゴリズムモジュール616を含んでもよい。
【0099】
別の実施形態では、高速サンプリング過渡検出アルゴリズムモジュール616は、VIプローブコントローラ612と通信することができる独立した計算モジュールであってよい。つまり、VIプローブ610によって収集されたデータは、VIプローブコントローラ612を介して高速サンプリング過渡検出アルゴリズムモジュール616に送信されてよい。高速サンプリング過渡検出アルゴリズムモジュール616を独立したモジュールにすることによって、VIプローブコントローラ612は、たとえそれが追加の処理を扱うことができなくても変更されなくてすむ。
【0100】
別の実施形態では、VIプローブコントローラ612にデータを送信する代わりに、データは、VIプローブ610から経路650を介して(図6Bに示されるように)解析モジュール618に直接送信されてよく、解析モジュール618は、高速サンプリング過渡検出アルゴリズムモジュール616を収容していてよい。データを解析モジュール618に直接伝送することによって、VIプローブ610によって収集されたデータは、前処理を経なくてすむ。また、(VIプローブコントローラ612などの)計算モジュールは、不動産間接費を削減するために、排除することが可能である。その代わりに、解析モジュール618を使用して、潜在的な高速過渡の電気的徴候を識別することが可能である。
【0101】
既定の基準に基づいて潜在的な高速過渡の電気的徴候が検出されたら、その潜在的な高速過渡の電気的徴候は、プロセスモジュールレベル解析サーバ(例えばAPECS314)などの解析モジュール618によって分類されてよい。一実施形態では、解析モジュール618は、潜在的な高速過渡の電気的徴候を、ライブラリに保存されているアーク徴候のセットなどの高速過渡の徴候のセットと比較することによって、徴候の比較を実施してよい。もし、一致が確認された場合は、高速過渡事象が発生したとみなされる。
【0102】
一実施形態では、解析モジュール618は、高速過渡事象の深刻度を決定するように構成される。当業者ならば、高速過渡事象が種々の深刻度(例えば強度)レベルを有しえることを承知している。したがって、各高速過渡事象の深刻度を決定するためのアルゴリズムが提供される。一実施形態では、深刻度レベル/閾値範囲は、事前に定められてよく、ユーザ設定可能であってよい。一例として、電流信号又は電圧信号における4dBを超える降下と、15マイクロ秒よりも長い持続時間(降下から回復までとして定義される)とが、ウエハ上における損傷を検出するための適切な閾値だとみなされてよい。
【0103】
高速過渡事象の深刻度レベルが分類されたら、一連の措置がとられてよい。一実施形態では、一連の措置は、事前に決定されてよく、深刻度レベル/閾値範囲に結び付いていてよい。一実施形態では、一連の措置は、ユーザ設定可能であってよい。一例では、電圧及び電流の降下が小さい(マイクロアークなどの)高速過渡の電気的徴候は、無害だとみなされ、オペレータへの通知の送信のみを必要としてよい。別の例では、電圧及び電流の降下が大きい高速過渡の電気的徴候は、高い深刻度レベルを有する事象だとみなされ、基板プロセスの終了をトリガしてよい。
【0104】
図7は、発明の一実施形態における、高速サンプリング過渡検出アルゴリズムが解析モジュールの一部ではない生産環境内においてリアルタイム高速過渡事象を検出するための方法を示した簡略フローチャートである。
【0105】
第1のステップ702では、基板処理が開始する。例えば、基板604が処理チャンバ602内で処理されている状況を考える。
【0106】
次のステップ704では、処理チャンバ内における基板処理が監視される。ステップ704aでは、VIプローブなどの高速過渡センサが電気パラメータ(例えば、種々の位相、基本波、及び調波における電圧信号及び電流信号)を監視していてよい。それとほぼ同時に、ステップ704bでは、高速サンプリング過渡検出アルゴリズムが実行されていてよい。
【0107】
次のステップ706では、潜在的な高速過渡事象の存在に関して決定が下される。つまり、高速サンプリング過渡検出アルゴリズムは、例えばマイクロアークなどの潜在的な高速過渡事象を定義するための基準を含んでよい。もし、VIプローブによって収集されたデータが、高速サンプリング過渡検出アルゴリズムによって定義された基準を満たしていない場合は、潜在的な高速過渡事象は発生しておらず、VIプローブは、基板プロセスの監視(ステップ704)を続ける。
【0108】
しかしながら、もし、潜在的な高速過渡事象が特定されたならば、次のステップ708では、その潜在的な高速過渡事象の発生の付近における電圧及び電流の波形が保存されてよい。
【0109】
次のステップ710では、保存された波形が解析モジュールに伝送される。一実施形態では、潜在的な高速過渡事象の発生に関係したデータのみが保存及び伝送されてよい。潜在的な高速過渡の電気的徴候のみを送信することによって、リソースの枯渇が最小限に抑えられる。また、(VIプローブコントローラなどの)センサコントローラによって前処理が実施されているので、解析モジュールは、データの解析、並びに潜在的な高速過渡事象の分類及びそのための一連の措置の決定を迅速に行うための高速プロセッサを含まなくてすむ。
【0110】
次のステップ712では、解析モジュールによって徴候の比較が実施される。一実施形態では、解析モジュールは、潜在的な高速過渡の電気的徴候を高速過渡の徴候のセットと比較してよい。一実施形態では、高速過渡の徴候のセットは、ライブラリに保存されてよい。一実施形態では、ライブラリは、関連付けの実施を可能にするために、非高速過渡の徴候も含んでよい。
【0111】
次のステップ714では、潜在的な高速過渡の電気的徴候の分類に関して決定が下される。もし、徴候の比較の結果、一致が確認されなかった場合は、潜在的な高速過渡の電気的徴候は、意味のある高速過渡の電気的徴候として分類されない(ステップ716)。一実施形態では、この潜在的な高速過渡の電気的徴候は、廃棄されてよい。別の実施形態では、この潜在的な高速過渡の電気的徴候は、新しい高速過渡の電気的徴候としてライブラリに追加されてよい(ステップ718)。
【0112】
しかしながら、もし、徴候の比較の結果、高速過渡の電気的徴候が識別されたならば、次のステップ720では、その高速過渡事象の深刻度が決定される。一例では、深刻度は、低から高までの幅があってよい。一実施形態では、深刻度は、既定の閾値範囲のセットに基づいてよい。一実施形態では、高速過渡の電気的徴候は、ライブラリに追加されてよい(ステップ718)。ステップ718は、随意のステップであり、リアルタイム高速過渡事象の検出に必要なものではない。
【0113】
次のステップ722では、一連の措置が決定される。深刻度レベルが決定されたら、一連の措置が実行されてよい。一実施形態では、一連の措置は、事前に定められてよい。一例では、低い深刻度レベルを有する高速過渡の電気的徴候が、オペレータへの通知をトリガしてよい。別の例では、中程度の深刻度レベルを有する高速過渡の電気的徴候が、警告をトリガしてよい。更に別の例では、高い深刻度レベルを有する高速過渡の電気的徴候が、基板プロセスの終了をトリガしてよい。上記からわかるように、深刻度レベル及び該深刻度レベルに結び付いている一連の措置は、ユーザ設定可能であってよい。
【0114】
図7は、生産環境内においてリアルタイム高速過渡事象を検出する方法を実現するための、1つの実施形態を示しているに過ぎない。別の例では、方法は、一実施形態において、高速サンプリング過渡検出アルゴリズムが解析モジュールの一部であるとしてリアルタイム高速過渡事象を検出するために適用されてもよい。このタイプの環境では、高速サンプリング過渡検出アルゴリズムの実行は、VIプローブコントローラの代わりに(APECS314などの)解析モジュールによって実施されてよい。一実施形態では、解析モジュールは、多量のデータを扱うことができる高速処理計算モジュールである。一実施形態では、解析モジュールは、センサに直接つながれる。このため、データは、センサによって収集され、解析モジュールに直接伝送される。
【0115】
上記からわかるように、その場でのリアルタイム高速過渡事象を検出するための構成と方法とが提供される。先行技術において、高速過渡事象の検出は、1つの基板ロットに対する基板処理が完了した後に実施されるのが通常である。更に、高速過渡事象の存在を決定するためには、複雑な計測ツールが必要とされるであろう。高速過渡事象の存在は、予測不可能であるので、発生したかもしれない潜在的な損傷を決定するためには、一基板ロットのなかの各基板を測定する必要があるであろう。
【0116】
先行技術と異なり、発明の実施形態は、基板処理中における高速過渡事象のリアルタイムな検出を提供し、それによって、基板ロットの残り及び/又は処理チャンバへの損傷を最小限に抑える。また、先行技術と異なり、検出プロセスは、人による干渉をほとんど又は全く必要としない自動化されたプロセスである。それどころか、ユーザ設定可能な条件/基準/閾値がひとたび定義されたら、システムは、高速過渡事象を自動的に検出するように構成される。
【0117】
生産環境内において、(マイクロアーク事象などの)高速過渡事象がリアルタイムで特定されえるので、実際の発生と、その発生を管理するためにとられる一連の措置との間の待ち時間は、短縮することが可能である。先行技術では、待ち時間は、何時間、又はひいては何週間にも及ぶ恐れがある。しかしながら、本明細書で説明されている方法及び/又は構成を用いれば、待ち時間は、僅かミリ秒単位まで短縮することが可能であり、それによって、全体の所有コストが削減される。
【0118】
本発明は、幾つかの好ましい実施形態の観点から説明されているが、本発明の範囲に入るものとして、代替、置換、及び均等物がある。本明細書では、様々な例が提供されるが、これらの例は、発明に対して例示的であって限定的ではないことを意図している。
【0119】
また、名称及び概要は、便宜のために提供されたものであり、特許請求の範囲を解釈するために使用されるべきでない。更に、要約は、極めて省略された形で記載され、便宜のために提供されたものであり、したがって、特許請求の範囲に表された全体的発明を解釈するためにも制限するためにも用いられるべきでない。もし、本明細書において「セット」という用語が用いられる場合は、このような用語は、ゼロの、1つの、又は2つ以上の構成要素を対象とした通常理解の数学的意味を有することを意図している。また、本発明の方法及び装置を実現するものとして、多くの代替的手法があることも留意されるべきである。したがって、以下の添付の特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨及び範囲に含まれるものとして、このようなあらゆる代替、置換、及び均等物を含むものと解釈される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理中にプラズマ処理システムの処理チャンバ内における高速過渡事象を検出するための方法であって、
センサのセットによって収集された第1のデータセットを解析することであって、前記第1のデータセットが潜在的なその場での高速過渡事象を含むかどうかを決定するために、前記第1のデータセットをその場での高速過渡事象のセットを定義した基準のセットと比較し、
前記第1のデータセットが前記潜在的なその場での高速過渡事象を含む場合に、前記潜在的なその場での高速過渡事象が発生する期間中に発生する電気的徴候を保存し、
前記電気的徴候を、保存されたアーク徴候のセットと比較し、
一致が決定された場合に、前記電気的徴候を第1のその場での高速過渡事象として分類し、
既定の閾値範囲のセットに基づいて、前記第1のその場での高速過渡事象の深刻度レベルを決定する、
方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記第1のデータセットの解析は、高速サンプリング過渡アルゴリズムの実施を含む方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、
前記高速サンプリング過渡アルゴリズムは、センサコントローラによって実行される
方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法であって、
前記高速サンプリング過渡アルゴリズムは、計算モジュールによって実行され、前記計算モジュールは、センサ及びセンサコントローラの一方につながれるように少なくとも構成される
方法。
【請求項5】
請求項2に記載の方法であって、
前記高速サンプリング過渡アルゴリズムは、前記センサのセットのなかのセンサと直接やり取りするように構成された解析モジュールによって実行される
方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、
前記解析モジュールは、各プロセスモジュール及び前記各プロセスモジュールに結び付いているセンサのセットのための解析を実施するように構成されたプロセスモジュールレベル解析サーバである
方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、更に、
前記第1のその場での高速過渡事象の前記深刻度レベルに基づいて一連の措置を決定することを備える方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、
前記第1のその場での高速過渡事象は、マイクロアーク事象である
方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、
前記第1のデータセットは、高いサンプリング率を実施することができる高速過渡センサによって収集されている
方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、
前記電気的徴候は、前記保存されたアーク徴候のセットのなかの一アーク徴候と一致しない場合に非高速過渡事象の徴候としてライブラリに追加される
方法。
【請求項11】
プラズマ処理システムの処理チャンバ内における高速過渡事象を検出するための構成であって、前記処理チャンバは、基板処理中にデータを収集するように構成された複数のセンサを含み、前記構成は、
前記データを既定のその場での高速過渡事象のセットを定義した基準のセットと比較して、前記データから電気的徴候を抽出するように構成された、高速サンプリング過渡アルゴリズムモジュールと、
前記高速サンプリング過渡アルゴリズムモジュールと直接通信する解析モジュールであって、少なくとも、
前記電気的徴候を受信するように、
前記電気的徴候を、保存されたアーク徴候のセットと比較するように、
一致が生じた場合に、前記電気的徴候を高速過渡事象として分類するように、
既定の閾値範囲のセットに基づいて前記高速過渡事象の深刻度レベルを決定するように、
構成された解析モジュールと、
を備える構成。
【請求項12】
請求項11に記載の構成であって、更に、
前記保存されたアーク徴候のセットを保存するように構成されたライブラリを備える構成。
【請求項13】
請求項12に記載の構成であって、
前記ライブラリは、非高速過渡の徴候を保存するように構成される
構成。
【請求項14】
請求項11に記載の構成であって、
解析モジュールは、前記基板処理中に前記高速過渡事象が特定されたときに、前記一連の措置をプロセスモジュールコントローラに直接送信するように構成される
構成。
【請求項15】
請求項11に記載の構成であって、
前記解析モジュールは、更に、前記高速過渡事象の前記深刻度レベルに基づいて一連の措置を決定するように構成される
構成。
【請求項16】
請求項11に記載の構成であって、
前記高速過渡事象は、マイクロアーク事象である
構成。
【請求項17】
請求項11に記載の構成であって、
前記高速サンプリング過渡アルゴリズムモジュールは、前記複数のセンサと直接やり取りするように構成された解析モジュールによって制御される
構成。
【請求項18】
請求項11に記載の構成であって、
前記解析モジュールは、各プロセスモジュール及び前記各プロセスモジュールに結び付いているセンサのセットのための解析を実施するように構成されたプロセスモジュールレベル解析サーバである
構成。
【請求項19】
請求項11に記載の構成であって、
前記高速サンプリング過渡アルゴリズムモジュールは、センサコントローラによって制御される
構成。
【請求項20】
請求項11に記載の構成であって、
前記高速サンプリング過渡アルゴリズムモジュールは、計算モジュールによって実行され、前記計算モジュールは、センサ及びセンサコントローラの一方につながれるように少なくとも構成される
構成。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−532464(P2012−532464A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518589(P2012−518589)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/040478
【国際公開番号】WO2011/002811
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(592010081)ラム リサーチ コーポレーション (467)
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH CORPORATION
【Fターム(参考)】