説明

制御システム

【課題】車両のスマートキーシステムにおいて、バッテリー電圧が低下した場合においても、電圧が回復したらただちに照合処理を開始(再開)できる制御システムを提供する。
【解決手段】車外キー持ち出し、車内キー閉じ込め、トランク内キー閉じ込めなどのようにスマートキー3の照合処理が必要な場合、照合処理を司る照合ECU4のメモリ(例えばEEPROMを含むROM43)に、照合処理が必要な状況であることを記憶する。そしてバッテリー電圧が低下して照合処理が実効できない場合にも、照合処理が必要な状況であることを記憶し続ける。バッテリー電圧が回復した場合、メモリに記憶された情報から照合処理が必要な状況であることを認識して、ただちに照合処理を開始(あるいは再開)する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のスマートキーシステム(スマートエントリーシステム、スマートスタートシステム)が普及している。現状のスマートエントリーシステムにおいては、スマートキーが車両の通信エリア内にはいると通信を開始し、照合がとれた時点でスタンバイ状態となる。その後ユーザがドアハンドルに触れるなどの動作を行うとドアがアンロックとなる。
【0003】
例えば下記特許文献1には、スマートキーシステムにおいて、乗員に運転継続の意思があるか否かを判定する手段を装備して、携帯機が車両から離間し、携帯機の不所持者に運転継続の意思がある場合には内燃機関の再始動を許可し、車両の盗難をより確実に防止するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−153190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スマートキーシステムにおいては、エンジンの始動の際にスマートキーの車室内照合を行って、照合が成功したときのみに例えばエンジンスタートスイッチを乗員が押下することによってエンジンが始動する。その際、エンジン始動後に車室外にキーを持ち出して車両を発進させると、次にエンジンを停止したときにはキーが無いのでエンジンの再始動が不可能になる。この問題(車室外へのキー持ち出し)を回避するためスマートキーシステムにおいては、例えばイグニションオンやアクセサリーオン後に車室内照合を実行して、車室内のキーの存在が確認できない場合には警報を発することが行われている。
【0006】
しかし低電圧時(例えば、プッシュONでのエンジン始動時)にバッテリー電圧がECU動作電圧以下まで低下した場合、ECU(照合ECU)が動作停止してしまう。その際にユーザが車室外にキーを持ち出しても、(ECUが動作停止しているため)キー持ち出し警報を通知することができない。また、低電圧時は(アンテナ出力電圧が低下してしまい)照合のキー検出エリアが限定されてしまうため、正常にキーを検出することはできない。
【0007】
こうした場合、エンジン始動後にアンテナ出力のために充分なまでにバッテリー電圧が回復した後に車室内照合をただちに実行する必要がある。
【0008】
同種の問題は車室内やトランクルーム内のキー閉じ込めでも発生する。すなわち車室内やトランクルーム内のキー閉じ込めを抑制するために、ドアロック後(あるいはトランク閉鎖後)に車室内(あるいはトランクルーム内)で照合処理をおこなってキーの存在が検出されたら警報を報知する技術が知られているが、バッテリー電圧回復後に適切に照合処理を開始(再開)できない。したがって車室内やトランクルーム内のキー閉じ込めが確実に検出できない可能性がある。
【0009】
こうした問題を回避するためには、バッテリー電圧が低下して、車外キー持ち出しや車室内、トランクキー閉じ込めのための照合処理が行えない場合に、バッテリー電圧が回復したらただちに照合処理を実行(開始、再開)することが可能なシステムを装備することが望まれるが、従来技術において、そのような課題は認識されていない。
【0010】
そこで本発明が解決しようとする課題は、上記問題点に鑑み、車両のスマートキーシステムにおいて、バッテリー電圧が低下して、車外キー持ち出しや車室内、トランクキー閉じ込めのための照合処理が行えない場合に、バッテリー電圧が回復したらただちに照合処理を実行(開始、再開)することが可能な制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0011】
上記課題を達成するために、本発明に係る制御システムは、使用者が携帯可能であり、識別信号の返信を指令する指令信号を受信したら前記識別信号を返信する第1通信部を備えた携帯機と、車両に備えられて、前記第1通信部と無線通信可能な第2通信部と、前記車両に備えられたバッテリーから電力を供給されて、前記第2通信部に前記指令信号の送信を指令し、前記第2通信部が受信した信号が前記第1通信部から送信された前記携帯機固有の識別信号である場合に、前記携帯機の照合が成功したと判定して前記車両のドア開錠操作又はエンジン始動操作を許可する照合手段と、前記車両のバッテリーの電圧を検知する検知手段と、前記照合手段による照合処理が必要な状況であれば、照合処理が必要な状況であることを記憶する記憶手段と、前記車両のバッテリーの電圧が、前記照合手段による照合処理に必要な電圧よりも一旦低下してから前記必要な電力を回復したことが前記検知手段により検知された場合、前記記憶手段に照合処理が必要な状況であることが記憶されていれば前記照合手段に照合処理の実行を指令する指令手段と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
これにより本発明の制御システムでは、ユーザが携帯機との間の無線通信による照合処理を実行して照合が成功した場合に車両のドア開錠又はエンジン始動操作を許可するいわゆるスマートキーシステムにおいて、照合処理が必要な状況であれば、その旨を記憶する記憶手段を備えて、バッテリー電圧が回復したら、記憶手段を参照して、照合処理が必要な状況ならば照合処理を実行する。したがってバッテリー電圧が低下している間も、照合処理が必要な状況であることが記憶できて、バッテリー電圧が回復したら直ちに照合処理を実行できる。よってバッテリー電圧の低下によって、例えば車外キー持ち出しや車内、トランク内のキー閉じ込めの検出のための照合処理が実行できない場合にも、照合処理が必要であることを記憶しておいて、バッテリー電圧回復後に直ちに車外キー持ち出しや車内、トランク内のキー閉じ込めの検出のための照合処理を実行できる。したがってバッテリー電圧低下があっても、確実に車外キー持ち出しや車内、トランク内のキー閉じ込めを検出する制御システムが構築できる。
【0013】
また前記指令手段が前記照合手段に指令する照合処理は、前記車両がイグニションオンあるいはアクセサリーオンの状態での前記携帯機の車室外への持ち出しを検出するための車室内照合であり、その車室内照合によって車室内における前記携帯機の存在が検出されなかったら警報を報知する報知手段を備えたとしてもよい。
【0014】
これにより車両がイグニションオンあるいはアクセサリーオンの状態でありながら、バッテリー電圧の低下によって、車外キー持ち出しの検出のための照合処理が実行できない場合にも、照合処理が必要であることを記憶しておいて、バッテリー電圧回復後に直ちに車外キー持ち出しの検出のための照合処理を実行できる。したがってバッテリー電圧低下があっても、確実に車外キー持ち出しを検出する制御システムが構築できる。
【0015】
また前記指令手段が前記照合手段に指令する照合処理は、前記車両のドアが施錠された状態での前記携帯機の車室内への閉じ込めを検出するための車室内照合であり、その車室内照合によって車室内における前記携帯機の存在が検出されたら警報を報知する報知手段を備えたとしてもよい。
【0016】
これにより車両のドアが施錠された状態でありながら、バッテリー電圧の低下によって、車内キー閉じ込めの検出のための照合処理が実行できない場合にも、照合処理が必要であることを記憶しておいて、バッテリー電圧回復後に直ちに車内キー閉じ込めの検出のための照合処理を実行できる。したがってバッテリー電圧低下があっても、確実に車内キー閉じ込めを検出する制御システムが構築できる。
【0017】
また前記指令手段が前記照合手段に指令する照合処理は、前記車両のトランクが閉鎖された状態での前記携帯機のトランク内への閉じ込めを検出するためのトランク内照合であり、そのトランク内照合によってトランク内における前記携帯機の存在が検出されたら警報を報知する報知手段を備えたとしてもよい。
【0018】
これにより、車両のトランクが閉鎖された状態にありながら、バッテリー電圧の低下によって、トランク内キー閉じ込めの検出のための照合処理が実行できない場合にも、照合処理が必要であることを記憶しておいて、バッテリー電圧回復後に直ちにトランク内キー閉じ込めの検出のための照合処理を実行できる。したがってバッテリー電圧低下があっても、確実にトランク内のキー閉じ込めを検出する制御システムが構築できる。
【0019】
また前記バッテリーの電圧の低下は、前記車両のエンジンスタート操作によるものであるとしてもよい。
【0020】
これにより車両のエンジンスタート操作によってバッテリー電圧が低下した場合にも、照合処理が必要な状況であれば、その旨を記憶する記憶手段を備えて、バッテリー電圧が回復したら、記憶手段を参照して、照合処理が必要な状況ならば照合処理を実行する。したがってエンジンスタート操作によってバッテリー電圧が低下している間も、照合処理が必要な状況であることが記憶できて、バッテリー電圧が回復したら直ちに照合処理を実行できる。よってバッテリー電圧の低下によって、例えば車外キー持ち出しや車内、トランク内のキー閉じ込めの検出のための照合処理が実行できない場合にも、照合処理が必要であることを記憶しておいて、バッテリー電圧回復後に直ちに車外キー持ち出しや車内、トランク内のキー閉じ込めの検出のための照合処理を実行できる。したがってバッテリー電圧低下があっても、確実に車外キー持ち出しや車内、トランク内のキー閉じ込めを検出する制御システムが構築できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明における制御システムの実施例における構成図。
【図2】本発明のスマートキーシステムにおける車室外キー持ち出し検出の処理手順を示すフローチャート。
【図3】車室外キー持ち出し検出におけるバッテリー電圧や照合処理の時間的な経過の例を示す図。
【図4】本発明のスマートキーシステムにおける車室内キー閉じ込め検出の処理手順を示すフローチャート。
【図5】車室内キー閉じ込め検出におけるバッテリー電圧や照合処理の時間的な経過の例を示す図。
【図6】本発明のスマートキーシステムにおけるトランク内キー閉じ込め検出の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。まず図1は、本発明に係る車両の制御システム1(システム、制御装置)の装置構成の概略図である。図1に示されたシステム1は、車両2に備えられた照合制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)4、バッテリー5、及びユーザが携帯可能なキー3(スマートキー、電子キー、携帯機)を備える。車両2は自動車であれば何ら限定されず、例えばガソリンエンジン車、ディーゼルエンジン車や、電気自動車、ハイブリッド車でもよい。
【0023】
照合ECU4は、照合機能部40を有する。照合機能部40は通常のコンピュータの構造を有するとし、各種演算や情報処理を司るCPU41、CPUの作業領域としての一時記憶部であるRAM42、各種情報を記憶するための不揮発性のROM43を備える。ROM43には、後述するマスターID44が記憶されているとする。
【0024】
照合ECU4は、車室外LF送信部45a、車室内LF送信部45b、トランクルーム内LF送信部45c、RF受信部46を備える。車室外LF送信部45aは、例えば車両2のドアハンドルの部位に装備されて、LF(長波)帯域の電磁波によって車両2の車室外にポーリング信号を送信する。
【0025】
車室内LF送信部45bは、車室内に装備されて、LF(長波)帯域の電磁波によって車両2の車室内にポーリング信号を送信する。トランクルーム内LF送信部45cは、例えば車両2のトランクルーム内に装備されて、LF(長波)帯域の電磁波によってトランクルーム内にポーリング信号を送信する。RF受信部46は、例えば車室内に装備されて、車外、車室内、あるいはトランクルーム内から送信されたRF信号を受信する。
【0026】
さらに照合ECU4は、電源機能部47を備える。電源機能部47は、照合ECU4で消費される電力をバッテリー5から取得して供給する機能を有する。そして電源機能部47は、具体的な回路構成として、リレー駆動回路47aを備える。リレー駆動回路47aは、例えば乗員によるアクセサリースイッチ72、イグニションスイッチ71等の切替に応じて、車両内に供給される電力(の大きさ)を切り替えるためのリレーを駆動するための回路である。
【0027】
バッテリー5には電力が蓄えられ、車両2の各種電気機器のための電力を供給する。上記車室外LF送信部45a、車室内LF送信部45b、トランクルーム内LF送信部45c、RF受信部46を含め照合ECU4で消費する電力は、バッテリー5の電力が電源機能部47を通じて供給されるとする。オルタネータ50(交流発電機)は、車両2のエンジンの動力が伝達されることによって発電を行う。発電された通常12ボルトの交流電圧は直流の12ボルトへと整流されてバッテリー5に蓄電される。そしてバッテリー5の電圧をモニターするバッテリー電圧検知部51が備えられている。
【0028】
さらに車両2は警報部60を備える。警報部60は、車室内に装備されて報知機能のための装備、例えば音声(音響)出力が可能なスピーカ、発光出力が可能なLED、ランプ等、画像表示出力が可能なディスプレイ(例えば液晶ディスプレイ)のうち少なくとも1つを装備する。警報部60は、後述するようにキー3の車室外持ち出しや車室内閉じ込め、トランクルーム内閉じ込めが検知されたら、その旨を音声(音響)出力や発光出力、文字表示などにより車内の乗員に報知する。
【0029】
車両2のドア61にはドア開閉センサ62(ドアスイッチ)が装備され、ドアの開閉情報を検出する。また車両2のトランク63には、トランク開閉センサ64が装備されて、トランク63(あるいはトランクリッド)の開閉情報を検出する。なおドア61は車両2に装備された複数のドア(運転席側ドア、助手席側ドア、後部座席右側、左側ドアなど)を指すとし、その個々のドアにドア開閉センサ62が装備されているとすればよい。
【0030】
また車両2は、車両2のエンジンを始動させるスイッチであるクランキングスイッチ(SW)70、車両2のエンジンを動作させ続けるためのイグニション(イグニッション)スイッチ71、車両2のエンジンを始動させず各種電気装置を機能させるためのアクセサリースイッチ72を備える。以上の各部は車内通信(CAN通信)により接続されて情報の受け渡しが可能となっている。
【0031】
キー3はスマートキーシステムに関わる電子キーであり、ユーザが携帯可能で、LF受信部30、RF送信部31、制御部32、メモリ33を備える。メモリ33には、当該キー3に固有の識別信号34(IDコード、ID)が記憶されている。LF受信部30は、上述のポーリング信号を受信する。RF送信部31は、ポーリング信号の受信を受けて、当該キー3固有のIDコード34をRF信号として送信する。制御部32は、通常のコンピュータと同様の構造を有するとし、各種情報処理のためのCPUや、CPUの作業領域としての一時記憶部のRAMなどを備えるとする。制御部32によってRF送信部31、制御部32、メモリ33などキー3の装備を制御する。
【0032】
以上の構成のもとで、システム1は、車両2における車室外キー持ち出しの検出、及び警報に関する処理を実行する。その処理手順は図2に示されている。図2の処理手順は予めプログラム化して例えばROM43やメモリ33に記憶しておき、照合ECU4や制御部32が呼び出して自動的に実行するとすればよい。
【0033】
図2の処理ではまず、手順S10で照合ECU4は、車両2がアクセサリースイッチ72がオン状態(アクセサリーオン、ACC−ON)である、あるいはイグニション(イグニッション)スイッチ71がオン状態(イグニションオン、IG−ON)であるか否かを判定する。どちらかのスイッチがオン状態の場合(S10:YES)はS15へ進み、どちらのスイッチもオフ状態の場合(S10:NO)は、どちらかのスイッチがオンされるまで待ち状態となる。アクセサリースイッチ72及びイグニションスイッチ71のオンオフ情報は車両2内の車内通信(CAN通信)を通じて取得すればよい。
【0034】
アクセサリースイッチ72あるいはイグニションスイッチ71がオンとなるためには、車室内照合によって照合(認証)成功となる必要がある。すなわち車室内LF送信部45bからキー3に対して識別信号(ID34)の返信を求めるLF信号を送信する。その信号を受信したキー3はID34を含むRF信号を返信する。
【0035】
返信されたIDがRF受信部46で受信されて、照合ECU4によってキー3固有のID34であると判定されると照合成功として、照合ECU4は、クランキングスイッチ70、イグニションスイッチ71、アクセサリースイッチ72のオン操作を許可状態にする。その状態でユーザ(乗員)がイグニションスイッチ71、あるいはアクセサリースイッチ72をオン操作すると、S10が肯定判断(YES)となる。
【0036】
S15に進んだら照合ECU4は、車両2のドアが開放されているか否かを判定する。車両2のドアのうちいずれかが開放されている場合(S15:YES)はS20に進み、いずれのドアも閉鎖されている場合(S15:NO)はS10に戻って上記処理を繰り返す。ドアの開放情報は、各ドアに装備されたドア開閉センサ62の開閉情報をCAN通信によって取得すればよい。
【0037】
図2の処理においては、以上のS10、S15で肯定判断(YES)となること(すなわち、アクセサリーオン又はイグニションオンであり、かつドアが開放状態であると判定されたこと)が、S20以降で車室内照合を実行するための条件であるが、ドアが閉鎖されていても窓を通じてキーが車室外に持ち出される可能性を考慮して、S15の条件を、例えば車両2が停止状態であるか否かの条件に置き換えてもよい。(これに連動して後述のS90は、車両2が走行状態であるか否かの条件に置き換えればよい。)
【0038】
S20に進んだ場合、S10及びS15が肯定判断(YES)なので、現時点が、アクセサリースイッチがオンあるいはイグニションスイッチがオンであり、かつドアが開放されている状態である。したがってS20で照合ECU4は、キー3の車外への持ち出しの可能性があるので、キーの車外持ち出しの検出のための車室内照合処理が必要な状況であることを、例えばRAM42(あるいはROM44がEEPROMを含むとしてROM44)に記憶する。
【0039】
S30に進んだら照合ECU4は、バッテリー電圧が低下しているか否かを判定する。照合ECUの動作に必要な電圧や、LF送信部45からの信号の送信に必要な電圧を供給できないほどにバッテリーの電圧が低下している場合(S30:YES)はS40に進み、バッテリー電圧がそこまで低下していない場合(S30:NO)はS50に進む。
【0040】
バッテリー電圧はバッテリー電圧検知部50で検知すればよい。バッテリー5の電圧が低下する原因は例えば、ユーザによる何らかの操作によって電力が消費されることであり、代表的にはユーザによるエンジン始動(イグニションスタート、クランキングスイッチオン)の操作によりエンジン始動のためのセルモータが駆動して電力が消費されることである。
【0041】
次に、エンジンの始動によりオルタネータ50が作動して発電して、バッテリー4を充電する。そしてS40でバッテリー電圧検知部51がバッテリー電圧の回復を検知したとする。
【0042】
次にS50で照合ECU4は、ROM(EEPROM)の記憶内容を調べ、車室内照合が必要な状況であることが記憶されているとの情報を取得する。そして照合ECU4は、車室内LF送信部45bからLF信号(ポーリング信号)を送信する。この信号はキー3に向けてID34の返信を要求する信号である。
【0043】
キー3は、S200でポーリング信号(LF信号)を受信したら、それを受けてS210でIDコード34を含む応答信号(RF信号)を返信する。応答信号は、RF波による搬送波信号を、IDコード34の内容が反映されたベースバンド信号で変調したRF信号とすればよい。
【0044】
照合ECU4はS60で、RF信号を受信したか否かを判定する。RF信号を受信した場合(S60:YES)は、S70に進み、RF信号を受信していない場合(S60:NO)は、S65に進む。
【0045】
S70に進んだら照合ECU4は、受信したRF信号とマスターID44とを照合する。照合が成功、すなわち受信したRF信号にマスターIDと同じ識別信号が含まれている場合(S70:YES)は、S90に進み、照合が不成功の場合(S70:NO)は、S65に進む。
【0046】
S65では、LF信号の送信開始から所定時間経過したか否かを判定する。既に所定時間経過している場合(S65:YES)はS80に進む。まだ所定時間経過していない場合(S65:NO)は、S50に戻ってLF信号の送信を繰り返す。なお経過時間の算出においては、車両2が計時装置を備えて、車内通信でその情報を取得すればよい。
【0047】
S80に進んだ場合は、LF信号の送信開始から所定時間経過してもRF信号を受信しないか、あるいは受信したRF信号にはキー3からの識別信号が含まれない場合である。したがってS80で照合ECU4は、車室内にキー3が存在せず、車室外にキー3が持ち出されたと判断して警報を発する。警報は、警報部48から、キー3の車室外持ち出しを報知する音声や音響(ブザーなど)、発光あるいは文字表示等を出力すればよい。
【0048】
S90に進んだら照合ECU4は、車両2のドアが閉鎖されているか否かを判定する。全てのドアが閉鎖されている場合(S90:YES)は、車室外へのキー持ち出しがなくドアが閉鎖されているので、図2の処理を終了する。少なくとも1つのドアが開放されている場合(S90:NO)は再びS50に戻って上記処理を繰り返す。これにより全てのドアが閉鎖されていない間は車室外へのキー持ち出しを監視し続ける。以上が図2の処理手順である。
【0049】
図2の処理による応答例が図3に示されている。同図のとおり、プッシュスイッチ(SW)操作(エンジンスタート操作、クランキングスイッチ70のオン操作)を受けてエンジンを始動するためにのセルモータが駆動されてバッテリー電圧が低下している。この場合、従来技術では照合処理が必要な状況であることが記憶されていないので、バッテリー電圧回復時にただちに車室内照合を開始(再開)できない。
【0050】
しかし本発明では、上記S20において照合処理が必要な状況であることを記憶するので、バッテリー電圧低下中も、照合処理が必要な状況であるとの情報が保持され続ける。バッテリー電圧が低下している期間中は、LF信号の送信電力が不足しているために車室内照合が行えないが、バッテリー電圧回復後にただちに車室内照合を開始(再開)して、キー3からの返信(応答)がなければ、車室外キー持ち出しが検知されたと判断して警報を報知する。
【0051】
本発明の主要部は、上記S20において照合処理が必要な状況であることを記憶するので、バッテリー電圧低下中も、照合処理が必要な状況であるとの情報が保持され続けることである。図2に示された処理は、その効果が現れた一例に過ぎない。図2の処理以外に、例えば車室内のキー閉じ込めの場合も本発明は効果を発揮する。
【0052】
車室内のキー閉じ込めの検出の場合の処理手順は図4に示されている。図4の処理で図2と同一符号の処理は図2と同様の処理を実行すればよい。以下で図2と異なる部分を説明する。
【0053】
図4の処理では、S3で照合車両2のドア61がロック(施錠)されているか否かを判定する。ドア61がロックされている場合(S3:YES)はS25に進み、ロックされていない場合(S3:NO)は、ドア61がロックされるまでS3を繰り返して待ち状態となる。なおS3の処理は、例えばキー3(あるいは車両外部のロックスイッチ)を使用せずにドア61をロックする処理(例えばドアハンドルを把持したまま(持ち上げたまま)ノブをロック側にして、そのままドア61を閉じる)としてもよい。
【0054】
S25に進んだ場合は、S3が肯定判断(YES)の場合なのでドアがロックされた状態である。したがってS25に進んだら照合ECU4は、キー3の車内閉じ込めの検出のための照合処理が必要な状況であることを例えばRAM42(あるいはROM44がEEPROMを含むとしてROM44)に記憶する。
【0055】
図4の処理では、S60でRF信号が受信されていないと判断された場合(S60:NO)、及びS70で照合が不成功とされた場合(S70:NO)は、車室内のキー閉じ込めはないと判断して図4の処理を終了する。しかしS70で照合が成功したとされた場合(S70:YES)は、車室内にキー3が閉じ込められていることが検出されたとして、S80に進む。S80で照合ECU4は、車室内にキー3が閉じ込められたとの情報(警報)を、警報部48から、音声や音響(ブザーなど)、発光あるいは文字表示等によって報知すればよい。以上が図4の処理手順である。
【0056】
図4の処理による応答例が図5に示されている。同図のとおり、ドアロック操作を受けてドアロックモータが駆動されてバッテリー電圧が低下している。この場合、従来技術では照合処理が必要な状況であることが記憶されていないので、バッテリー電圧回復時にただちに車室内照合を開始(再開)できない。
【0057】
しかし本発明では、上記S25において照合処理が必要な状況であることを記憶するので、バッテリー電圧低下中も、照合処理が必要な状況であるとの情報が保持され続ける。バッテリー電圧が低下している期間中は、LF信号の送信電力が不足しているために車室内照合が行えないが、バッテリー電圧回復後にただちに車室内照合を開始(再開)して、キー3からの返信(応答)があれば、車内キー閉じ込めが検知されたと判断して警報を報知する。
【0058】
また本発明は、トランクルーム内(トランク内)のキー閉じ込めの場合も効果を発揮する。トランク内キー閉じ込めの検出の場合の処理手順は図6に示されている。図6の処理で図4と同一符号の処理は図4と同様の処理を実行すればよい。以下で図4と異なる部分を説明する。
【0059】
図6の処理では、S5で車両2のトランク63が閉鎖されているか否かを判定する。トランク63が閉鎖されている場合(S5:YES)はS27に進み、開放されている場合(S5:NO)は、トランク63が閉鎖されるまでS5を繰り返す。なおS5の処理は、トランク63が一旦開放されて、その後閉鎖されたことを判定(検出)する処理とすればよい。
【0060】
S27に進んだ場合は、S5が肯定判断(YES)の場合なのでトランク(ルーム)が閉鎖された状態である。したがってS27に進んだら照合ECU4は、キー3のトランク(ルーム)内閉じ込めの検出のための照合処理が必要な状況であることを例えばRAM42(あるいはROM44がEEPROMを含むとしてROM44)に記憶する。
【0061】
なお図6の例ではS5の処理をS20の前に実行しているが、本発明はこれに限定されず、トランク63が一旦開放されてその後閉鎖されたとの情報を、例えばS20からS40の間、つまりバッテリー電圧が低下している期間に照合ECU4が車内通信で取得するとしてもよい。
【0062】
図6の処理では、S50のLF信号の送信は、トランクルーム内LF送信部45cから行う。したがってトランクルーム内にキー3が存在すれば、キー3はS200でLF信号を受信し、S210でキー3固有のIDコードを含むRF信号を返信する。
【0063】
図6の処理では、S60でRF信号が受信されていないと判断された場合(S60:NO)、及びS70で照合が不成功とされた場合(S70:NO)は、トランク63内のキー閉じ込めはないと判断して図4の処理を終了する。そしてS70で照合が成功したとされた場合(S70:YES)は、トランクルーム内にキー3が閉じ込められていることが検出されたとして、S80に進む。S80で照合ECU4は、トランクルーム内にキー3が閉じ込められたとの情報(警報)を、警報部48から、音声や音響(ブザーなど)、発光あるいは文字表示等によって報知すればよい。以上が図6の処理手順である。
【0064】
なお照合ECU4が昇圧回路を備えるとしてもよい。昇圧回路は、バッテリー5の電圧が低下した場合に、照合ECU4に供給される電圧値を上昇させるための回路である。昇圧回路の具体的な構成は公知のものを用いればよい(例えば特開2010−136517号公報)。この場合、バッテリー電圧が低下した場合でも、昇圧回路の作用によって照合ECU4に(可能な限り)必要な電圧を供給する。これによりバッテリー電圧が低下しても照合ECU4がリセットすることを回避できるので、バッテリー電圧低下中において、車室内照合が必要な状況であることの記憶を例えばRAMで行える。したがって不揮発性メモリ(EEPROM)の装備を省略できるとの効果がある。
【0065】
上記実施例において、キー3が携帯機を構成する。LF受信部30、RF送信部31が第1通信手段を構成する。車室外LF送信部45a、車室内LF送信部45b、トランクルーム内LF送信部45c、RF受信部46が第2通信手段を構成する。照合ECU4が照合手段を構成する。RAM42あるいはROM43が記憶手段を構成する。
【符号の説明】
【0066】
1 制御システム
2 車両
3 キー(携帯機)
4 照合ECU
5 バッテリー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が携帯可能であり、識別信号の返信を指令する指令信号を受信したら前記識別信号を返信する第1通信部を備えた携帯機と、
車両に備えられて、前記第1通信部と無線通信可能な第2通信部と、
前記車両に備えられたバッテリーから電力を供給されて、前記第2通信部に前記指令信号の送信を指令し、前記第2通信部が受信した信号が前記第1通信部から送信された前記携帯機固有の識別信号である場合に、前記携帯機の照合が成功したと判定して前記車両のドア開錠操作又はエンジン始動操作を許可する照合手段と、
前記車両のバッテリーの電圧を検知する検知手段と、
前記照合手段による照合処理が必要な状況であれば、照合処理が必要な状況であることを記憶する記憶手段と、
前記車両のバッテリーの電圧が、前記照合手段による照合処理に必要な電圧よりも一旦低下してから前記必要な電力を回復したことが前記検知手段により検知された場合、前記記憶手段に照合処理が必要な状況であることが記憶されていれば前記照合手段に照合処理の実行を指令する指令手段と、
を備えたことを特徴とする制御システム。
【請求項2】
前記指令手段が前記照合手段に指令する照合処理は、前記車両がイグニションオンあるいはアクセサリーオンの状態での前記携帯機の車室外への持ち出しを検出するための車室内照合であり、
その車室内照合によって車室内における前記携帯機の存在が検出されなかったら警報を報知する報知手段を備えた請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記指令手段が前記照合手段に指令する照合処理は、前記車両のドアが施錠された状態での前記携帯機の車室内への閉じ込めを検出するための車室内照合であり、
その車室内照合によって車室内における前記携帯機の存在が検出されたら警報を報知する報知手段を備えた請求項1に記載の制御システム。
【請求項4】
前記指令手段が前記照合手段に指令する照合処理は、前記車両のトランクが閉鎖された状態での前記携帯機のトランク内への閉じ込めを検出するためのトランク内照合であり、
そのトランク内照合によってトランク内における前記携帯機の存在が検出されたら警報を報知する報知手段を備えた請求項1に記載の制御システム。
【請求項5】
前記バッテリーの電圧の低下は、前記車両のエンジンスタート操作によるものである請求項1乃至4のいずれか1項に記載の制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−57429(P2012−57429A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203989(P2010−203989)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】