制御装置および制御方法
【課題】制御量を設定値に近づける特性を完全に犠牲にしてしまうことは避けつつ、過渡状態、整定状態に関係なくエネルギー消費量を抑制する。
【解決手段】制御装置は、各制御ループの制御量PV1,PV2と設定値SP1,SP2との偏差に基づいて操作量MV1,MV2を算出するPID演算部22−1,22−2と、操作量MV1とMV2との操作量差δMVを算出する操作量差算出部31−1,31−2と、操作量差δMVに基づいて設定値SP1,SP2に対するSP補正量ΔSP1,ΔSP2を算出するSP補正量算出部32−1,32−2とを備える。SP補正量算出部32−1,32−2は、操作量MV1のエネルギー効率が悪い場合にエネルギー効率が良い方向へ変化するようにSP補正量ΔSP1,ΔSP2を算出する。
【解決手段】制御装置は、各制御ループの制御量PV1,PV2と設定値SP1,SP2との偏差に基づいて操作量MV1,MV2を算出するPID演算部22−1,22−2と、操作量MV1とMV2との操作量差δMVを算出する操作量差算出部31−1,31−2と、操作量差δMVに基づいて設定値SP1,SP2に対するSP補正量ΔSP1,ΔSP2を算出するSP補正量算出部32−1,32−2とを備える。SP補正量算出部32−1,32−2は、操作量MV1のエネルギー効率が悪い場合にエネルギー効率が良い方向へ変化するようにSP補正量ΔSP1,ΔSP2を算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御対象を空間的に分割した複数のゾーンをそれぞれ制御する複数の制御ループを備えたマルチループ制御系の制御装置および制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大規模あるいは中規模の空間を対象とした空調システムや、複数の加熱エリアを持つ加熱処理装置では、空間や加熱エリアを複数のゾーンに分割し、個々のゾーンにシングルループの制御系を形成して、温度制御や湿度制御を行う。このような温度制御や湿度制御においては、制御対象の状態量として制御量PVと、その状態量に対する目標数値として設定値SPと、制御量PVを設定値SPに制御するための制御指令として操作量MVとが、コントローラにより処理される。このとき、操作量MVと制御量PVとの関係は、その制御系において採用されるアクチュエータや制御対象の特性に依存して非線形な関係になる。そのようないわゆる非線形な制御系であっても、線形な制御手法(例えばPID)が広く利用されている。
【0003】
空間や加熱エリアを複数のゾーンに分割し、個々のゾーンにシングルループの制御系を形成する場合、各制御系の制御量PVは必ずしも同一の速度で変化するものではない。各制御系の制御量変化に速度差がある場合、最も変化の遅い最遅制御系以外の制御系の応答が最遅制御系の応答よりも速く進むため、最遅制御系以外の制御系のコントローラは最遅制御系の応答が完了するまで整定状態を維持しつつ待機しなければならない。したがって、これらのコントローラでは、応答完了後の整定状態を維持しつつ待機する整定待機時間が発生し、この整定待機時間の分だけエネルギー消費量が大きくなるという問題があった。
【0004】
そこで、特許文献1に開示された制御方法では、制御量変化が最も遅い第1制御ループのステップ応答の進捗度を算出し、第1制御ループ以外の他の制御ループの制御量が第1制御ループの制御量に同期して自動的に変化するように、他の制御ループの設定値をステップ応答の進捗度に基づいて補正してコントローラに与えるようにしている。これにより、特許文献1に開示された制御方法では、他の制御ループのコントローラの整定待機時間を削減し、省エネルギーを実現している。
【0005】
【特許文献1】特開2002−049406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
操作量MVと制御量PVとの関係が非線形な関係であって、この非線形性の程度が大きくなると、いわゆる強非線形系になる。強非線形系では、操作量MVが大きくなると、制御量PVを変化させる影響力が小さくなる。すなわち、制御量PVに対する操作量MVの影響力が飽和する状態となる。この状態を操作量MVと制御量PVとの関係で図示すると、例えば図20(A)、図20(B)に示すような関係になる。図20(A)は暖房・加熱制御の場合、図20(B)は冷房・冷却制御の場合である。図20(A)、図20(B)によれば、操作量MVが大きくなるほど、操作量MVの変化ΔMVに対する制御量PVの変化ΔPVが小さくなっていることが分かる。
【0007】
強非線形系においては、操作量MVが大きいほど、制御量PVの変化ΔPVに対する効果が小さくなるので、結果的にエネルギー効率が落ちるという問題点があった。つまり、操作量MVが大きいことはエネルギー消費量の点では不利なわけであるが、制御量PVを設定値SPに近づけるためには必要なエネルギーであり、エネルギー消費量を抑えることはできない。操作量MVを小さくすれば、エネルギー消費量を抑えることができるが、この場合には制御量PVを所望の設定値SPに近づけることが難しくなる。
【0008】
特許文献1に開示された制御方法では、制御の過渡状態のエネルギー消費量を改善することができるが、制御の整定状態は改善の対象にはなっておらず、整定状態のエネルギー消費量を抑制することはできない。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、マルチループの制御系において制御量を設定値に近づける特性を完全に犠牲にしてしまうことは避けつつ、過渡状態、整定状態に関係なくエネルギー消費量を抑制することができる制御装置および制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、制御対象を空間的に分割した複数のゾーンをそれぞれ制御する複数の制御ループを備えたマルチループ制御系の制御装置において、各制御ループの制御量PVとこれに対応する各制御ループの設定値SPとの偏差に基づいて操作量を制御ループ毎に算出する複数の制御演算手段と、算出された複数の前記操作量のうち、特定の第1の操作量と他の第2の操作量との操作量差を算出する操作量差算出手段と、前記操作量差に基づいて各制御ループの前記設定値SPまたは制御量PVに対する補正量を制御ループ毎に算出する補正量算出手段とを備え、前記補正量算出手段は、前記第1の操作量のエネルギー効率が悪い場合にエネルギー効率が良い方向へ変化するように前記補正量を算出することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の制御装置の1構成例において、前記操作量差算出手段は、前記第1の操作量から前記第2の操作量を減算して前記操作量差を算出するものであり、前記補正量は、設定値SPに加算または制御量PVから減算されるものであり、前記補正量算出手段は、前記操作量差に所定の倍率を乗算して前記補正量を算出する倍率乗算手段を備え、冷房・冷却時において前記第1の操作量に対応する前記倍率が正の値であり、暖房・加熱時において前記第1の操作量に対応する前記倍率が負の値であることを特徴とするものである。
また、本発明の制御装置の1構成例において、前記操作量差算出手段は、前記第1の操作量と第2の操作量の各々にダンピング処理を行うダンピング処理手段と、前記ダンピング処理後の第1の操作量からダンピング処理後の第2の操作量を減算して前記操作量差を算出する減算手段とを備え、前記補正量算出手段は、前記操作量差に対して不感帯処理を行う不感帯処理手段と、前記不感帯処理後の操作量差に所定の倍率を乗算して前記補正量を算出する前記倍率乗算手段と、算出された補正量に上下限処理を行う上下限処理手段とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の制御装置の1構成例において、前記操作量差算出手段は、制御対象を空間的に2つに分割する場合に、一方のゾーンの操作量を前記第1の操作量、他方のゾーンの操作量を前記第2の操作量として、前記操作量差を算出することを特徴とするものである。
また、本発明の制御装置の1構成例において、前記操作量差算出手段と補正量算出手段とは、制御対象を空間的に2つ以上に分割する場合に、ゾーン毎に設けられ、各操作量差算出手段は、制御対象のゾーンの操作量を前記第1の操作量、制御対象のゾーンに空間的に隣接するゾーンの操作量の平均値を前記第2の操作量として、前記操作量差をゾーン毎に算出することを特徴とするものである。
また、本発明の制御装置の1構成例において、前記第2の操作量は、制御対象のゾーンに空間的に隣接するゾーンの操作量の加重平均値である。
【0012】
また、本発明の制御方法は、各制御ループの制御量PVとこれに対応する各制御ループの設定値SPとの偏差に基づいて操作量を制御ループ毎に算出する制御演算手順と、算出された複数の前記操作量のうち、特定の第1の操作量と他の第2の操作量との操作量差を算出する操作量差算出手順と、前記操作量差に基づいて各制御ループの前記設定値SPまたは制御量PVに対する補正量を制御ループ毎に算出する補正量算出手順とを備え、前記補正量算出手順は、前記第1の操作量のエネルギー効率が悪い場合にエネルギー効率が良い方向へ変化するように前記補正量を算出することを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の制御方法の1構成例において、前記操作量差算出手順は、前記第1の操作量から前記第2の操作量を減算して前記操作量差を算出するものであり、前記補正量は、設定値SPに加算または制御量PVから減算されるものであり、前記補正量算出手順は、前記操作量差に所定の倍率を乗算して前記補正量を算出する倍率乗算手順を備え、冷房・冷却時において前記第1の操作量に対応する前記倍率が正の値であり、暖房・加熱時において前記第1の操作量に対応する前記倍率が負の値であることを特徴とするものである。
また、本発明の制御方法の1構成例において、前記操作量差算出手順は、前記第1の操作量と第2の操作量の各々にダンピング処理を行うダンピング処理手順と、前記ダンピング処理後の第1の操作量からダンピング処理後の第2の操作量を減算して前記操作量差を算出する減算手順とを備え、前記補正量算出手順は、前記操作量差に対して不感帯処理を行う不感帯処理手順と、前記不感帯処理後の操作量差に所定の倍率を乗算して前記補正量を算出する前記倍率乗算手順と、算出された補正量に上下限処理を行う上下限処理手順とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の制御方法の1構成例において、前記操作量差算出手順は、制御対象を空間的に2つに分割する場合に、一方のゾーンの操作量を前記第1の操作量、他方のゾーンの操作量を前記第2の操作量として、前記操作量差を算出することを特徴とするものである。
また、本発明の制御方法の1構成例において、前記操作量差算出手順と補正量算出手順とは、制御対象を空間的に2つ以上に分割する場合に、ゾーン毎に実行され、各操作量差算出手順は、制御対象のゾーンの操作量を前記第1の操作量、制御対象のゾーンに空間的に隣接するゾーンの操作量の平均値を前記第2の操作量として、前記操作量差をゾーン毎に算出することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、各制御ループの制御量PVとこれに対応する各制御ループの設定値SPとの偏差に基づいて操作量を制御ループ毎に算出する複数の制御演算手段と、算出された複数の操作量のうち、特定の第1の操作量と他の第2の操作量との操作量差を算出する操作量差算出手段と、操作量差に基づいて各制御ループの設定値SPまたは制御量PVに対する補正量を制御ループ毎に算出する補正量算出手段とを設け、補正量算出手段が、第1の操作量のエネルギー効率が悪い場合にエネルギー効率が良い方向へ変化するように補正量を算出することにより、マルチループの制御系において制御量を設定値に近づける特性を完全に犠牲にしてしまうことは避けつつ、過渡状態、整定状態に関係なくエネルギー消費量を抑制することができる。本発明は、特にゾーン間に制御量の干渉があるような制御対象に有効である。
【0015】
また、本発明では、第1の操作量から第2の操作量を減算して操作量差を算出し、操作量差に所定の倍率を乗算して補正量を算出し、補正量を、設定値SPに加算または制御量PVから減算する。このとき、冷房・冷却時においては第1の操作量に対応する倍率を正の値とし、暖房・加熱時においては第1の操作量に対応する倍率を負の値とすることにより、第1の操作量のエネルギー効率が悪い場合にエネルギー効率が良い方向へ変化するように補正量を算出することができ、エネルギー消費量を抑制することができる。
【0016】
また、本発明では、ダンピング処理手段を設けることにより、操作量の高周波のふらつきを削減することができる。また、本発明では、不感帯処理手段を設けることにより、操作量差を無視してよい数値範囲を規定することができる。また、本発明では、上下限処理手段を設けることにより、補正量が無制限に広がり過ぎないように制限することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[発明の原理]
大規模あるいは中規模の空間を対象とした空調システムや、複数の加熱エリアを持つ加熱処理装置では、空間や加熱エリアを複数のゾーンに分割し、個々のゾーンにシングルループの制御系を形成して、温度制御や湿度制御を行う。このような構成は、全体として見れば、マルチループの制御系を形成していることになる。通常、マルチループの制御系では、ゾーン間に温度干渉のような状態量干渉が発生することに特徴がある。この状態量干渉を利用し、操作量差を小さくする操作を与えることで、制御量PVを設定値SPに近付ける特性を完全に犠牲にしてしまうことは避けながらも、エネルギー的な不利を緩和することが可能になることに、発明者は着眼した。
【0018】
図1は本発明の原理を説明するためのフローチャートである。ここでは、対象となる空間を2つのゾーンZ1,Z2に分割して冷房・冷却制御を行う場合について説明する。
ゾーンZ1の操作量MV1とゾーンZ2の操作量MV2(MV1>MV2)に対して、操作量差δMV(=MV1−MV2)を小さくするような、設定値(温度)SP1,SP2の補正量であるSP補正量ΔSP1,ΔSP2を算出する(ステップS1)。
【0019】
SP補正量ΔSP1により、操作量の大きい側の設定値SP1が高めに補正される(ステップS2)。
SP補正量ΔSP2により、操作量の小さい側の設定値SP2が低めに補正される(ステップS3)。
【0020】
ゾーンZ1の設定値SP1が高めに補正されたことにより、ゾーンZ1の操作量MV1は下降する方向に算出される(ステップS4)。
ゾーンZ2の設定値SP2が低めに補正されたことにより、ゾーンZ2の操作量MV2は上昇する方向に算出される(ステップS5)。
【0021】
ゾーンZ1の操作量MV1が下がったことにより、ゾーンZ1の制御量(温度)PV1は上昇する(ステップS6)。
ゾーンZ2の操作量MV2が上がったことにより、ゾーンZ2の制御量(温度)PV2は下降する(ステップS7)。
【0022】
このとき、温度干渉があるので、ゾーンZ1の制御量(温度)PV1が上昇し、ゾーンZ2の制御量(温度)PV2が下降したとしても、ゾーンZ1,Z2の実質温度(室温)RT1,RT2は元の設定値SP1,SP2から大きく逸脱することはない。
【0023】
そして、エネルギー効率の悪い大きい側の操作量であった操作量MV1が小さめ方向にdMV1だけ制御され、エネルギー効率の良い小さい側の操作量であった操作量MV2は大きめ方向にdMV2(dMV1>dMV2)だけ制御されることになる。全体として考えると、エネルギー効率の良い小さい側への変化分の方が多いので、エネルギー消費量を抑制することができる。
【0024】
以上の動作を実現するために、操作量差δMVを算出し、この操作量差δMVを設定値SP1,SP2に対する補正量に変換して、設定値SP1,SP2に帰還させる方法を採用すればよいことに、発明者は想到した。この方法では、特に操作量の大きい側を重視することが好適である。
【0025】
なお、暖房・加熱制御の場合は、操作量の大きい側の設定値SP1が低めに補正され、操作量の小さい側の設定値SP2が高めに補正されるように、SP補正量ΔSP1,ΔSP2を算出し、ゾーンZ1の操作量MV1を下降する方向に制御し、ゾーンZ2の操作量MV2を上昇する方向に制御すればよい。これにより、ゾーンZ1の制御量(温度)PV1は下降し、ゾーンZ2の制御量(温度)PV2は上昇するが、ゾーンZ1とZ2間の干渉により、ゾーンZ1,Z2の実質温度(室温)RT1,RT2は元の設定値SP1,SP2から大きく逸脱することはない。
【0026】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図2は本発明の第1の実施の形態に係る空調システムの構成を示すブロック図である。
1は空調制御の対象となる空間、Z1,Z2は空間1を分割した2つのゾーン、2−1,2−2はゾーンZ1,Z2毎に温度制御を行うコントローラ、3はコントローラ2−1,2−2に与えられる設定値SP1,SP2を補正するためのSP補正量ΔSP1,ΔSP2を算出する連携動作演算部、4−1,4−2はゾーンZ1,Z2の制御量PV1,PV2を計測するセンサ、5−1,5−2はゾーンZ1,Z2に冷温風を供給する空調機、6−1,6−2はゾーンZ1,Z2の冷温風出口である。
【0027】
空調機5−1,5−2は、例えば冷温水を供給する熱源と、熱源から供給される冷温水の流量を調節するバルブ(アクチュエータ)と、バルブを通して送られてきた冷温水により空気を冷却または加熱するコイルと、冷却または加熱された空気を送り出す送風機等から構成される。
【0028】
本実施の形態は、中規模の空間1を2つのゾーンZ1,Z2に分けて温度制御を行なうものである。この場合、通常のシングルループの制御系を2ループ構成する。
図3に本実施の形態の空調システムで用いる制御装置の構成を示す。制御装置は、シングルループの制御系を構成するための構成要素であるコントローラ2−1,2−2と、連携動作演算部3とからなる。
【0029】
コントローラ2−1は、例えばゾーンZ1の居住者によって設定された設定値SP1を入力する設定値SP入力部20−1と、センサ4−1によって計測されたゾーンZ1の制御量PV1を入力する制御量PV入力部21−1と、設定値SP1と制御量PV1とSP補正量ΔSP1に基づいて操作量MV1を算出する制御演算手段となるPID演算部22−1と、操作量MV1をゾーンZ1の空調機5−1と連携動作演算部3に出力する操作量MV出力部23−1とを備える。
【0030】
同様に、コントローラ2−2は、ゾーンZ2の居住者によって設定された設定値SP2を入力する設定値SP入力部20−2と、センサ4−2によって計測されたゾーンZ2の制御量PV2を入力する制御量PV入力部21−2と、設定値SP2と制御量PV2とSP補正量ΔSP2に基づいて操作量MV2を算出する制御演算手段となるPID演算部22−2と、操作量MV2をゾーンZ2の空調機5−2と連携動作演算部3に出力する操作量MV出力部23−2とを備える。
【0031】
連携動作演算部3は、制御対象のゾーン以外の他のゾーンの操作量を受ける比較操作量入力部30−1,30−2と、操作量差δMVを算出する操作量差算出部31−1,31−2と、SP補正量ΔSP1,ΔSP2を算出するSP補正量算出部32−1,32−2とを、それぞれゾーンZ1,Z2毎に備える。
【0032】
図4に、本実施の形態における制御系のブロック線図を示す。P1はゾーンZ1の制御対象、P2はゾーンZ2の制御対象であり、PID演算部22−1,22−2と共にフィードバック制御系が個々のゾーンZ1,Z2毎に形成される。すなわち、制御対象P1とPID演算部22−1とからなるフィードバック制御系がゾーンZ1に形成され、制御対象P2とPID演算部22−2とからなるフィードバック制御系がゾーンZ2に形成される。
【0033】
PV1,PV2はゾーンZ1,Z2の制御量であり、本実施の形態では温度である。ΔSP1,ΔSP2はゾーンZ1,Z2のSP補正量である。PID演算部22−1,22−2は、設定値SP1,SP2にSP補正量ΔSP1,ΔSP2を加算する加算部220−1,220−2を内部に備えている。
【0034】
操作量差算出部31−1,31−2とSP補正量算出部32−1,32−2とは、操作量差δMVを算出し、操作量差δMVを設定値SP1,SP2に対するSP補正量ΔSP1,ΔSP2に変換してPID演算部22−1,22−2に帰還させる連携制御系を構成している。
【0035】
図5に、本実施の形態における好適な制御系のブロック線図を示す。図5は、図4に示した制御系のより好適かつ詳細な構成を示している。
ダンピング処理部310,311は、操作量MV1,MV2の高周波のふらつきを削減するための構成要素である。ダンピング処理部310,311は、例えば1次遅れの時間遅れ特性のローパスフィルタで実現すればよい。ゾーンZ1のダンピング処理の時定数をT1、ゾーンZ2のダンピング処理の時定数をT2、ラプラス演算子をsとすると、ダンピング処理部310の伝達関数は1/(1+T1s)、ダンピング処理部311の伝達関数は1/(1+T2s)となる。
【0036】
減算部312は、ダンピング処理後の操作量MV1とMV2との差である操作量差δMVを次式のように算出する。
δMV=MV1−MV2 ・・・(1)
【0037】
不感帯処理部320は、操作量差δMVを無視してよい数値範囲を規定するための構成要素である。図6は不感帯処理部320の入出力特性を示す図である。不感帯処理部320は、操作量差算出部31−1,31−2から出力された操作量差δMVが不感帯±α(例えば±20%)の範囲内であれば、操作量差δMVを0にする。不感帯処理部320は、具体的には以下の式を実行する。
IF −α≦δMV≦α THEN δMV=0
ELSEIF δMV>α THEN δMV←δMV−α
ELSEIF δMV<−α THEN δMV←δMV+α ・・・(2)
【0038】
不感帯処理部320は、操作量差δMVが不感帯の正側の境界値αより大きい場合、操作量差δMVからαを減算し、操作量差δMVが不感帯の負側の境界値(−α)より小さい場合、操作量差δMVにαを加算する(式(2)の2つのELSEIF文以下の処理)。
【0039】
倍率乗算部321,323は、不感帯処理後の操作量差δMVをSP補正量ΔSP1,ΔSP2に変換するための構成要素である。倍率乗算部321,323は、次式に示すように操作量差δMVに倍率A1,A2を乗算してSP補正量ΔSP1,ΔSP2を算出する。
ΔSP1=δMV×A1 ・・・(3)
ΔSP2=δMV×A2 ・・・(4)
【0040】
冷房・冷却時にはゾーンZ1用の倍率A1が正の値、ゾーンZ2用の倍率A2が負の値になる。例えば倍率A1が0.02であれば、操作量差δMVが50%のときにSP補正量ΔSP1は1.0℃になり、倍率A2が−0.02であれば、操作量差δMVが50%のときにSP補正量ΔSP2は−1.0℃になる。また、暖房・加熱時には倍率A1が負の値、倍率A2が正の値になる。
【0041】
上下限処理部322,324は、SP補正量ΔSP1,ΔSP2が無制限に広がり過ぎないように制限するための構成要素である。上下限処理部322は、SP補正量ΔSP1が予め設定された上限値ΔSPmax(例えば+3.0℃)より大きい場合、ΔSP1=ΔSPmaxとし、SP補正量ΔSP1が予め設定された下限値ΔSPmin(例えば−3.0℃)より小さい場合、ΔSP1=ΔSPminとする上下限処理を行う。すなわち、上下限処理部322は以下の式を実行する。
IF ΔSP1>ΔSPmax THEN ΔSP1=ΔSPmax ・・・(5)
IF ΔSP1<ΔSPmin THEN ΔSP1=ΔSPmin ・・・(6)
【0042】
このような上下限処理により、SP補正量ΔSP1を例えば±3.0℃以内に制限することができる。上下限処理部324のSP補正量ΔSP2に対する上下限処理も同じである。
【0043】
以下、本実施の形態の制御装置の動作を説明する。図7は制御装置の動作を示すフローチャートである。
設定値SP1は、例えばゾーンZ1の居住者によって設定され、コントローラ2−1の設定値SP入力部20−1を介してPID演算部22−1に入力される(ステップS100)。設定値SP2は、例えばゾーンZ2の居住者によって設定され、コントローラ2−2の設定値SP入力部20−2を介してPID演算部22−2に入力される(ステップS101)。
【0044】
制御量PV1は、センサ4−1によって計測され、コントローラ2−1の制御量PV入力部21−1を介してPID演算部22−1に入力される(ステップS102)。制御量PV2は、センサ4−2によって計測され、コントローラ2−2の制御量PV入力部21−2を介してPID演算部22−2に入力される(ステップS103)。
【0045】
PID演算部22−1内の加算部220−1は、次式に示すように設定値SP1に1制御周期前に算出されたSP補正量ΔSP1を加算して設定値SP1を補正し(ステップS104)、PID演算部22−2内の加算部220−2は、設定値SP2に1制御周期前に算出されたSP補正量ΔSP2を加算して設定値SP2を補正する(ステップS105)。なお、動作開始後の最初の制御周期では、SP補正量ΔSP1,ΔSP2の初期値は0である。
SP1’=SP1+ΔSP1 ・・・(7)
SP2’=SP2+ΔSP2 ・・・(8)
【0046】
続いて、PID演算部22−1は、補正後の設定値SP1’と制御量PV1に基づいて、次式のようなPID制御演算を行って操作量MV1を算出し(ステップS106)、PID演算部22−2は、補正後の設定値SP2’と制御量PV2に基づいて操作量MV2を算出する(ステップS107)。
MV1=Kg1{1+(1/Ti1s)+Td1s}(SP1’−PV1)
・・・(9)
MV2=Kg2{1+(1/Ti2s)+Td2s}(SP2’−PV2)
・・・(10)
【0047】
式(9)、式(10)において、Kg1,Kg2は比例ゲイン、Ti1,Ti2は積分時間、Td1,Td2は微分時間である。
操作量MV出力部23−1,23−2は、PID演算部22−1,22−2から出力された操作量MV1,MV2をそれぞれ空調機5−1,5−2のアクチュエータに出力すると共に連携動作演算部3に出力する。なお、冷房・冷却時には、PID演算部22−1,22−2は、算出した操作量MV1,MV2をそれぞれ反転させた上で出力する。すなわち、0%の操作量MVを100%とし、100%の操作量MVを0%とするといったように反転させて出力する。
【0048】
連携動作演算部3の操作量差算出部31−1は、コントローラ2−1から出力された操作量MV1を受け取ると共に、コントローラ2−2から出力された操作量MV2を比較操作量入力部30−1を介して受け取る。操作量差算出部31−2は、コントローラ2−2から出力された操作量MV2を受け取ると共に、コントローラ2−1から出力された操作量MV1を比較操作量入力部30−2を介して受け取る。
【0049】
操作量差算出部31−1内のダンピング処理部310,311は、それぞれ操作量MV1,MV2をダンピング処理し(ステップS108)、同様に操作量差算出部31−2内のダンピング処理部310,311は、操作量MV1,MV2をダンピング処理する(ステップS109)。
【0050】
続いて、操作量差算出部31−1内の減算部312は、ダンピング処理後の操作量MV1とMV2とから操作量差δMVを式(1)のように算出し(ステップS110)、同様に操作量差算出部31−2内の減算部312は、操作量差δMVを算出する(ステップS111)。
【0051】
次に、SP補正量算出部32−1内の不感帯処理部320は、操作量差算出部31−1から出力された操作量差δMVに対して式(2)で説明したような不感帯処理を行い(ステップS112)、同様にSP補正量算出部32−2内の不感帯処理部320は、操作量差算出部31−2から出力された操作量差δMVに対して不感帯処理を行う(ステップS113)。
【0052】
SP補正量算出部32−1内の倍率乗算部321は、不感帯処理後の操作量差δMVに倍率A1を乗算してSP補正量ΔSP1を算出し(ステップS114)、SP補正量算出部32−2内の倍率乗算部323は、不感帯処理後の操作量差δMVに倍率A2を乗算してSP補正量ΔSP2を算出する(ステップS115)。
【0053】
SP補正量算出部32−1内の上下限処理部322は、SP補正量ΔSP1に対して上下限処理を行い、上下限処理後のSP補正量ΔSP1をPID演算部22−1に出力する(ステップS116)。SP補正量算出部32−2内の上下限処理部324は、SP補正量ΔSP2に対して上下限処理を行い、上下限処理後のSP補正量ΔSP2をPID演算部22−2に出力する(ステップS117)。
【0054】
以上のようなステップS100〜S117の処理が例えば空調システムのオペレータによって制御の終了が指示されるまで(ステップS118においてYES)、制御周期毎に繰り返し実行される。
【0055】
図8は、従来の空調システムと本実施の形態の空調システムの冷房・冷却時の数値例を示す図である。図8(A)に示すように、例えばゾーンZ1の設定値SP1とゾーンZ2の設定値SP2がともに25.0℃であるとき、ゾーンZ1の制御量PV1とゾーンZ2の制御量PV2はともに25.0℃に制御される。このとき、ゾーン間に温度干渉があったとしても、ゾーンZ1の実質温度(室温)RT1とゾーンZ2の実質温度(室温)RT2はともに25.0℃になる。
【0056】
ゾーンZ1の操作量MV1が95.0%でゾーンZ2の操作量MV2が25.0%であったとすると、従来の空調システムでは、操作量差δMVが70.0%(95.0−25.0%)のまま維持されることになる。このように、ゾーンZ1の操作量MV1が95.0%という極めて高い値になっていることが、エネルギー消費量が大きくなる要因になる。
【0057】
一方、図8(A)に示した状況に対して本実施の形態を適用すると、操作量差δMV=70.0%(95.0−25.0%)に対して、例えば±20%の不感帯処理が実行され操作量差δMVが50.0%になる。そして、ゾーンZ1については操作量差δMV=50.0%に例えば0.02の倍率A1が乗算され、SP補正量ΔSP1が1.0℃になり、ゾーンZ2については操作量差δMV=50.0%に例えば−0.02の倍率A2が乗算され、SP補正量ΔSP2が−1.0℃になる。
【0058】
この結果、ゾーンZ1の設定値SP1は25.0℃から26.0℃になり、ゾーンZ2の設定値SP2は25.0℃から24.0℃になる(図8(B))。設定値SP1が26.0℃になることは冷房要求が下がる側に補正されたことを意味し、設定値SP2が24.0℃になることは冷房要求が上がる側に補正されたことを意味する。
【0059】
設定値SP1,SP2の補正により、ゾーンZ1の制御量PV1は26.0℃に制御され、ゾーンZ2の制御量PV2は24.0℃に制御される(図8(C))。このとき、操作量MVと制御量PVとの間には図20(B)に示したような非線形な関係があり、またゾーンZ2の操作量MV2に比べてゾーンZ1の操作量MV1の方が大きいので、制御量PV1を1度上げるための操作量MV1の変化分と、制御量PV2を1度下げるための操作量MV2の変化分とを比べると、操作量MV1の変化分の方が大きい。例えば操作量MV1は65.0%になり、操作量MV2は45.0%になるというように、エネルギー効率の悪い側の操作量MV1が小さめ方向にdMV1=30.0%だけ制御され、エネルギー効率の良い側の操作量MV2は大きめ方向にdMV2=20.0%(dMV1>dMV2)だけ制御される。
【0060】
ゾーンZ1とZ2との間には温度干渉があるので、ゾーンZ1の実質温度(室温)RT1は例えば25.5℃になり、ゾーンZ2の実質温度(室温)RT2は例えば24.5℃になる。最終的には、エネルギー消費量の抑制効果が得られる適度な平衡点に収束する。
このように、本実施の形態では、ゾーン干渉と、操作量MVと制御量PVとの非線形性を利用することで、制御量PVを設定値SPに近づける特性を完全に犠牲にしてしまうことは避けながらも、エネルギー消費量を抑制することが可能になる。
【0061】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図9は本発明の第2の実施の形態に係る空調システムの構成を示すブロック図である。
1aは空調制御の対象となる空間、Z1〜Z6は空間1aを分割した6つのゾーン、2−1〜2−6はゾーンZ1〜Z6毎に温度制御を行うコントローラ、3aは連携動作演算部、4−1〜4−6はゾーンZ1〜Z6の制御量PV1〜PV6を計測するセンサ、5−1〜5−6はゾーンZ1〜Z6に冷温風を供給する空調機、6−1〜6−6はゾーンZ1〜Z6の冷温風出口である。
【0062】
本実施の形態は、大規模の空間1aを6つのゾーンZ1〜Z6に分けて温度制御を行なうものである。この場合、通常のシングルループの制御系を6ループ構成する。
図10に本実施の形態の空調システムで用いる制御装置の構成を示す。制御装置は、コントローラ2−1〜2−6と、連携動作演算部3aとからなる。
【0063】
コントローラ2−1〜2−6は、設定値SP入力部20−1〜20−6と、制御量PV入力部21−1〜21−6と、御演算手段となるPID演算部22−1〜22−6と、操作量MV出力部23−1〜23−6とを、それぞれゾーンZ1〜Z6毎に備える。
【0064】
連携動作演算部3aは、比較操作量入力部30a−1〜30a−6と、操作量差算出部31a−1〜31a−6と、SP補正量算出部32a−1〜32a−6とを、それぞれゾーンZ1〜Z6毎に備える。
【0065】
図11に、本実施の形態における制御系のブロック線図を示す。第1の実施の形態と同様に、制御対象P1とPID演算部22−1とからなるフィードバック制御系がゾーンZ1に形成される。その他のゾーンZ2〜Z6についても同様である。なお、図11では、ゾーンZ1の制御系のみを示し、他のゾーンZ2〜Z6の制御系については記載を省略している。
【0066】
MVa1はゾーンZ1と隣接するゾーンの平均操作量である。図12に示すZ10を制御対象のゾーンとしたとき、隣接するゾーンとはゾーンZ12,Z14,Z15,Z17のことを言う。例えば図9におけるゾーンZ1の隣接ゾーンは、ゾーンZ2,Z4であり、ゾーンZ2の隣接ゾーンは、ゾーンZ1,Z3,Z5である。なお、隣接するゾーンの平均操作量MVa1は、単純な平均値に限るものではなく、隣接するゾーンの操作量の加重平均値としてもよい。この場合は、ゾーン間干渉の影響を考慮して、各操作量に乗算する加重を調整すればよい。
【0067】
操作量差算出部31a−1とSP補正量算出部32a−1とは、操作量差δMV1を算出し、操作量差δMV1を設定値SP1に対するSP補正量ΔSP1に変換してPID演算部22−1に帰還させる連携制御系を構成している。
【0068】
図13に、本実施の形態における好適な制御系のブロック線図を示す。図13は、図11に示した制御系のより好適かつ詳細な構成を示している。
操作量差算出部31a−1内のダンピング処理部310の構成および動作は、第1の実施の形態と同様である。
【0069】
操作量差算出部31a−1内の平均操作量算出部313は、制御対象のゾーンZ1と隣接するゾーンの平均操作量MVa1を算出する。上記のようにゾーンZ1の隣接ゾーンがゾーンZ2,Z4であるとすれば、平均操作量MVa1は以下のようになる。
MVa1=(MV2+MV4)/2 ・・・(11)
【0070】
上記のとおり、平均操作量MVa1は、隣接するゾーンの操作量の加重平均値でもよく、この場合、平均操作量MVa1は以下のようになる。
MVa1=(W2×MV2+W4×MV4)/(W2+W4) ・・・(12)
加重W2,W4は、それぞれゾーンZ2,Z4とゾーンZ1との間の制御量の干渉を考慮して調整すればよい。
【0071】
ダンピング処理部314は、平均操作量MVa1の高周波のふらつきを削減するための構成要素である。ダンピング処理部314は、例えば1次遅れの時間遅れ特性のローパスフィルタで実現すればよい。平均操作量MVa1のダンピング処理の時定数をTaとすると、ダンピング処理部314の伝達関数は1/(1+Tas)となる。
【0072】
減算部312aは、ダンピング処理後の操作量MV1と平均操作量MVa1との差である操作量差δMV1を次式のように算出する。
δMV1=MV1−MVa1 ・・・(13)
【0073】
SP補正量算出部32a−1内の不感帯処理部320と倍率乗算部321と上下限処理部322の構成および動作は、第1の実施の形態と同様である。
ここまでゾーンZ1の処理について説明したが、他のゾーンについても同様の処理を行えばよい。
【0074】
以下、本実施の形態の制御装置の動作を説明する。図14は制御装置の動作を示すフローチャートである。なお、図14では、記載を容易にするために、ゾーンZ1〜Z3の処理についてのみ記載している。
【0075】
設定値SP1は、例えばゾーンZ1の居住者によって設定され、コントローラ2−1の設定値SP入力部20−1を介してPID演算部22−1に入力される(ステップS200)。設定値SP2は、例えばゾーンZ2の居住者によって設定され、コントローラ2−2の設定値SP入力部20−2を介してPID演算部22−2に入力される(ステップS201)。設定値SP3は、例えばゾーンZ3の居住者によって設定され、コントローラ2−3の設定値SP入力部20−3を介してPID演算部22−3に入力される(ステップS202)。
【0076】
制御量PV1は、センサ4−1によって計測され、コントローラ2−1の制御量PV入力部21−1を介してPID演算部22−1に入力される(ステップS203)。制御量PV2は、センサ4−2によって計測され、コントローラ2−2の制御量PV入力部21−2を介してPID演算部22−2に入力される(ステップS204)。制御量PV3は、センサ4−3によって計測され、コントローラ2−3の制御量PV入力部21−3を介してPID演算部22−3に入力される(ステップS205)。
【0077】
PID演算部22−1内の加算部220−1は、式(7)に示したように設定値SP1に1制御周期前に算出されたSP補正量ΔSP1を加算して設定値SP1を補正する(ステップS206)。PID演算部22−2内の加算部は、式(8)に示したように設定値SP2に1制御周期前に算出されたSP補正量ΔSP2を加算して設定値SP2を補正する(ステップS207)。PID演算部22−3内の加算部は、次式に示すように設定値SP3に1制御周期前に算出されたSP補正量ΔSP3を加算して設定値SP3を補正する(ステップS208)。なお、動作開始後の最初の制御周期では、SP補正量ΔSP1,ΔSP2,ΔSP3の初期値は0である。
SP3’=SP3+ΔSP3 ・・・(14)
【0078】
続いて、PID演算部22−1は、式(9)のようなPID制御演算を行って操作量MV1を算出する(ステップS209)。PID演算部22−2は、式(10)のようなPID制御演算を行って操作量MV2を算出する(ステップS210)。PID演算部22−3は、次式のようなPID制御演算を行って操作量MV3を算出する(ステップS211)。
MV3=Kg3{1+(1/Ti3s)+Td3s}(SP3’−PV3)
・・・(15)
【0079】
式(15)において、Kg3は比例ゲイン、Ti3は積分時間、Td3は微分時間である。そして、操作量MV出力部23−1,23−2,23−3は、PID演算部22−1,22−2,22−3から出力された操作量MV1,MV2,MV3をそれぞれ空調機5−1,5−2,5−3のアクチュエータに出力すると共に連携動作演算部3aに出力する。なお、冷房・冷却時には、PID演算部22−1,22−2,22−3は、算出した操作量MV1,MV2,MV3をそれぞれ反転させた上で出力する。
【0080】
連携動作演算部3aの操作量差算出部31a−1は、コントローラ2−1から出力された操作量MV1を受け取ると共に、他のコントローラ2−2〜2−6から出力された操作量MV2〜MV6を比較操作量入力部30a−1を介して受け取る。操作量差算出部31a−2は、コントローラ2−2から出力された操作量MV2を受け取ると共に、他のコントローラ2−1,2−3〜2−6から出力された操作量MV1,MV3〜MV6を比較操作量入力部30a−2を介して受け取る。操作量差算出部31a−3は、コントローラ2−3から出力された操作量MV3を受け取ると共に、他のコントローラ2−1,2−2,2−4〜2−6から出力された操作量MV1,MV2,MV4〜MV6を比較操作量入力部30a−3を介して受け取る。
【0081】
操作量差算出部31a−1,31a−2,31a−3内のダンピング処理部310は、それぞれ操作量MV1,MV2,MV3をダンピング処理する(ステップS212,S213,S214)。操作量差算出部31a−1内の平均操作量算出部313は、制御対象のゾーンZ1と隣接するゾーンの平均操作量MVa1を式(11)または式(12)に示したように算出する(ステップS215)。
【0082】
図9におけるゾーンZ2の隣接ゾーンは、ゾーンZ1,Z3,Z5である。操作量差算出部31a−2内の平均操作量算出部313は、制御対象のゾーンZ2と隣接するゾーンの平均操作量MVa2を次式のように算出する(ステップS216)。
MVa2=(MV1+MV3+MV5)/3 ・・・(16)
【0083】
平均操作量MVa2を隣接ゾーンの操作量の加重平均値とする場合は、平均操作量MVa2は以下のようになる。
MVa2=(W1×MV1+W3×MV3+W5×MV5)/(W1+W3+W5)
・・・(17)
加重W1,W3,W5は、それぞれゾーンZ1,Z3,Z5とゾーンZ2との間の制御量の干渉を考慮して調整すればよい。
【0084】
図9におけるゾーンZ3の隣接ゾーンは、ゾーンZ2,Z6である。操作量差算出部31a−3内の平均操作量算出部313は、制御対象のゾーンZ3と隣接するゾーンの平均操作量MVa3を次式のように算出する(ステップS217)。
MVa3=(MV2+MV6)/2 ・・・(18)
【0085】
平均操作量MVa3を隣接ゾーンの操作量の加重平均値とする場合は、平均操作量MVa3は以下のようになる。
MVa3=(W2×MV2+W6×MV6)/(W2+W6)
・・・(19)
加重W2,W6は、それぞれゾーンZ2,Z6とゾーンZ3との間の制御量の干渉を考慮して調整すればよい。
【0086】
操作量差算出部31a−1内のダンピング処理部314は、平均操作量MVa1をダンピング処理する(ステップS218)。操作量差算出部31a−2内のダンピング処理部314は、平均操作量MVa2をダンピング処理する(ステップS219)。操作量差算出部31a−3内のダンピング処理部314は、平均操作量MVa3をダンピング処理する(ステップS220)。
【0087】
操作量差算出部31a−1内の減算部312aは、ダンピング処理後の操作量MV1と平均操作量MVa1とから操作量差δMV1を式(13)に示したように算出する(ステップS221)。
【0088】
操作量差算出部31a−2内の減算部312aは、ダンピング処理後の操作量MV2と平均操作量MVa2との差である操作量差δMV2を次式のように算出する(ステップS222)。
δMV2=MV2−MVa2 ・・・(20)
【0089】
操作量差算出部31a−3内の減算部312aは、ダンピング処理後の操作量MV3と平均操作量MVa3との差である操作量差δMV3を次式のように算出する(ステップS223)。
δMV3=MV3−MVa3 ・・・(21)
【0090】
次に、SP補正量算出部32a−1内の不感帯処理部320は、操作量差算出部31a−1から出力された操作量差δMV1に対して式(2)と同様の不感帯処理を行う(ステップS224)。SP補正量算出部32a−2内の不感帯処理部は、操作量差算出部31a−2から出力された操作量差δMV2に対して不感帯処理を行う(ステップS225)。SP補正量算出部32a−3内の不感帯処理部320は、操作量差算出部31a−3から出力された操作量差δMV3に対して不感帯処理を行う(ステップS226)。
【0091】
SP補正量算出部32a−1内の倍率乗算部321は、不感帯処理後の操作量差δMV1に倍率A1を乗算してSP補正量ΔSP1を算出する(ステップS227)。SP補正量算出部32a−2内の倍率乗算部は、不感帯処理後の操作量差δMV2に倍率A2を乗算してSP補正量ΔSP2を算出する(ステップS228)。SP補正量算出部32a−3内の倍率乗算部は、不感帯処理後の操作量差δMV3に倍率A3を乗算してSP補正量ΔSP3を算出する(ステップS229)。
【0092】
ここで、冷房・冷却時には倍率A1,A2,A3が正の値になり、暖房・加熱時には倍率A1,A2,A3が負の値になる。
【0093】
SP補正量算出部32a−1内の上下限処理部322は、SP補正量ΔSP1に対して上下限処理を行い、上下限処理後のSP補正量ΔSP1をPID演算部22−1に出力する(ステップS230)。SP補正量算出部32a−2内の上下限処理部は、SP補正量ΔSP2に対して上下限処理を行い、上下限処理後のSP補正量ΔSP2をPID演算部22−2に出力する(ステップS231)。SP補正量算出部32a−3内の上下限処理部は、SP補正量ΔSP3に対して上下限処理を行い、上下限処理後のSP補正量ΔSP3をPID演算部22−3に出力する(ステップS232)。
【0094】
以上のようなステップS200〜S232の処理が例えば空調システムのオペレータによって制御の終了が指示されるまで(ステップS233においてYES)、制御周期毎に繰り返し実行される。図14では、ゾーンZ1,Z2,Z3の処理について説明したが、他のゾーンについても同様の処理を行えばよい。ゾーンZ4,Z5,Z6用の倍率A4,A5,A6は、倍率A1,A2,A3の場合と同様に、冷房・冷却時には正の値になり、暖房・加熱時には負の値になる。
こうして、空間や加熱エリアを3つ以上のゾーンに分ける場合においても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0095】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。図15は本発明の第3の実施の形態に係る空調システムの構成を示すブロック図である。
本実施の形態は、第1の実施の形態と同様に空間1を2つのゾーンZ1,Z2に分けて温度制御を行なうものであり、設定値SPを補正する代わりに、制御量PVを補正するようにしたものである。
【0096】
図16は本実施の形態の空調システムで用いる制御装置の構成を示すブロック図である。制御装置は、コントローラ2b−1,2b−2と、連携動作演算部3bとからなる。
コントローラ2b−1は、設定値SP入力部20−1と、制御量PV入力部21−1と、設定値SP1と制御量PV1とPV補正量ΔPV1に基づいて操作量MV1を算出するPID演算部22b−1と、操作量MV出力部23−1とを備える。同様に、コントローラ2−2は、設定値SP入力部20−2と、制御量PV入力部21−2と、設定値SP2と制御量PV2とPV補正量ΔPV2に基づいて操作量MV2を算出するPID演算部22b−2と、操作量MV出力部23−2とを備える。
【0097】
連携動作演算部3bは、比較操作量入力部30−1,30−2と、操作量差算出部31−1,31−2と、PV補正量算出部33−1,33−2とを、それぞれゾーンZ1,Z2毎に備える。
【0098】
図17に、本実施の形態における制御系のブロック線図を示す。ΔPV1,ΔPV2はゾーンZ1,Z2のPV補正量である。PID演算部22b−1,22b−2は、制御量PV1,PV2からPV補正量ΔPV1,ΔPV2を減算する減算部221−1,221−2を内部に備えている。
【0099】
操作量差算出部31−1,31−2とPV補正量算出部33−1,33−2とは、操作量差δMVを算出し、操作量差δMVを制御量PV1,PV2に対するPV補正量ΔPV1,ΔPV2に変換してPID演算部22b−1,22b−2に帰還させる連携制御系を構成している。
【0100】
図18に、本実施の形態における好適な制御系のブロック線図を示す。図18は、図17に示した制御系のより好適かつ詳細な構成を示している。
PV補正量算出部33−1,33−2内の不感帯処理部330は、それぞれ操作量差δMVに対して第1の実施の形態の不感帯処理部320と同様の処理を行う。
【0101】
倍率乗算部331,333は、不感帯処理後の操作量差δMVをPV補正量ΔPV1,ΔPV2に変換するための構成要素である。倍率乗算部331,333は、次式に示すように操作量差δMVに倍率A1,A2を乗算してPV補正量ΔPV1,ΔPV2を算出する。
ΔPV1=δMV×A1 ・・・(22)
ΔPV2=δMV×A2 ・・・(23)
【0102】
第1の実施の形態と同様に、冷房・冷却時にはゾーンZ1用の倍率A1が正の値、ゾーンZ2用の倍率A2が負の値になる。また、暖房・加熱時には倍率A1が負の値、倍率A2が正の値になる。
【0103】
上下限処理部332,334は、それぞれPV補正量ΔPV1,ΔPV2に対して第1の実施の形態の上下限処理部322,324と同様の処理を行う。
【0104】
以下、本実施の形態の制御装置の動作を説明する。図19は制御装置の動作を示すフローチャートである。
図19のステップS300〜S303の処理は、第1の実施の形態のステップS100〜S103と同じである。
【0105】
PID演算部22b−1内の減算部221−1は、次式に示すように制御量PV1から1制御周期前に算出されたPV補正量ΔPV1を減算して制御量PV1を補正し(ステップS304)、PID演算部22b−2内の減算部221−2は、制御量PV2から1制御周期前に算出されたPV補正量ΔPV2を減算して制御量PV2を補正する(ステップS305)。なお、動作開始後の最初の制御周期では、PV補正量ΔPV1,ΔPV2の初期値は0である。
PV1’=PV1−ΔPV1 ・・・(24)
PV2’=PV2−ΔPV2 ・・・(25)
【0106】
続いて、PID演算部22b−1は、設定値SP1と補正後の制御量PV1’に基づいて、次式のようなPID制御演算を行って操作量MV1を算出し(ステップS306)、PID演算部22b−2は、設定値SP2と補正後の制御量PV2’に基づいて操作量MV2を算出する(ステップS307)。
MV1=Kg1{1+(1/Ti1s)+Td1s}(SP1−PV1’)
・・・(26)
MV2=Kg2{1+(1/Ti2s)+Td2s}(SP2−PV2’)
・・・(27)
【0107】
そして、操作量MV出力部23−1,23−2は、PID演算部22b−1,22b−2から出力された操作量MV1,MV2をそれぞれ空調機5−1,5−2のアクチュエータに出力すると共に連携動作演算部3bに出力する。なお、冷房・冷却時には、PID演算部22b−1,22b−2は、算出した操作量MV1,MV2をそれぞれ反転させた上で出力する。
【0108】
ステップS308〜S311の処理は、第1の実施の形態のステップS108〜S111と同じである。
次に、PV補正量算出部33−1内の不感帯処理部330は、操作量差算出部31−1から出力された操作量差δMVに対して不感帯処理を行い(ステップS312)、同様にPV補正量算出部33−2内の不感帯処理部330は、操作量差算出部31−2から出力された操作量差δMVに対して不感帯処理を行う(ステップS313)。
【0109】
PV補正量算出部33−1内の倍率乗算部331は、不感帯処理後の操作量差δMVに倍率A1を乗算してPV補正量ΔPV1を算出し(ステップS314)、PV補正量算出部33−2内の倍率乗算部333は、不感帯処理後の操作量差δMVに倍率A2を乗算してPV補正量ΔPV2を算出する(ステップS315)。
【0110】
PV補正量算出部33−1内の上下限処理部332は、PV補正量ΔPV1に対して上下限処理を行い、上下限処理後のPV補正量ΔPV1をPID演算部22b−1に出力する(ステップS316)。PV補正量算出部33−2内の上下限処理部334は、PV補正量ΔPV2に対して上下限処理を行い、上下限処理後のPV補正量ΔPV2をPID演算部22b−2に出力する(ステップS317)。
【0111】
以上のようなステップS300〜S317の処理が例えば空調システムのオペレータによって制御の終了が指示されるまで(ステップS318においてYES)、制御周期毎に繰り返し実行される。
【0112】
以上説明したように、設定値SPを補正する代わりに、制御量PVを補正する場合には、設定値SPの場合と同様にしてPV補正量ΔPVを算出し、制御量PVからPV補正量ΔPVを減算すればよい。
同様に、第2の実施の形態においても、制御量PVを補正する場合には、制御量PVからPV補正量ΔPVを減算すればよい。
【0113】
なお、第1〜第3の実施の形態において、コントローラの制御アルゴリズムとしては、最も汎用的に利用されているPIDが実用上好適であるが、IMC(Internal Model Control)やSAC(Simple Adaptive Control)などであってもよい。
【0114】
また、以上の説明では、強非線形系を対象とする場合に省エネルギーという観点から優れた効果が得られるものとしているが、電気ヒータを用いて複数のゾーンを加熱する場合にも、操作量差を小さくすることで最大の操作量が出力される制御ループの操作量が小さく制御されて電気ヒータの寿命を延ばす効果が得られる。すなわち、本発明の構成の有効性は、強非線形系を対象とする場合に限られない。
【0115】
第1〜第3の実施の形態で説明したコントローラ2−1〜2−6,2b−1,2b−2および連携動作演算部3,3a,3bは、CPU、記憶装置およびインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。CPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って第1〜第3の実施の形態で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、マルチループ系の制御装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の原理を説明するためのフローチャートである。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る空調システムの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る空調システムで用いる制御装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における制御系のブロック線図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における好適な制御系のブロック線図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における不感帯処理部の入出力特性を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】従来の空調システムと本発明の第1の実施の形態に係る空調システムの冷房・冷却時の数値例を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る空調システムの構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る空調システムで用いる制御装置の構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態における制御系のブロック線図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態における空間の隣接ゾーンを説明するための図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態における好適な制御系のブロック線図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態に係る制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図15】本発明の第3の実施の形態に係る空調システムの構成を示すブロック図である。
【図16】本発明の第3の実施の形態に係る空調システムで用いる制御装置の構成を示すブロック図である。
【図17】本発明の第3の実施の形態における制御系のブロック線図である。
【図18】本発明の第3の実施の形態における好適な制御系のブロック線図である。
【図19】本発明の第3の実施の形態に係る制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図20】強非線形系における操作量と制御量との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0118】
1,1a…空間、2−1〜2−6,2b−1,2b−2…コントローラ、3,3a,3b…連携動作演算部、4−1〜4−6…センサ、5−1〜5−6…空調機、6−1〜6−6…冷温風出口、20−1〜20−6…設定値SP入力部、21−1〜21−6…制御量PV入力部、22−1〜22−6,22b−1,22b−2…PID演算部、23−1〜23−6…操作量MV出力部、30−1,30−2,30a−1〜30a−6…比較操作量入力部、31−1,31−2,31−1a〜31a−6…操作量差算出部、32−1,32−2,32a−1〜32a−6…SP補正量算出部、310,311,314…ダンピング処理部、312,312a…減算部、320,330…不感帯処理部、321,323,331,333…倍率乗算部、322,324,332,334…上下限処理部、313…平均操作量算出部、Z1〜Z6…ゾーン。
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御対象を空間的に分割した複数のゾーンをそれぞれ制御する複数の制御ループを備えたマルチループ制御系の制御装置および制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大規模あるいは中規模の空間を対象とした空調システムや、複数の加熱エリアを持つ加熱処理装置では、空間や加熱エリアを複数のゾーンに分割し、個々のゾーンにシングルループの制御系を形成して、温度制御や湿度制御を行う。このような温度制御や湿度制御においては、制御対象の状態量として制御量PVと、その状態量に対する目標数値として設定値SPと、制御量PVを設定値SPに制御するための制御指令として操作量MVとが、コントローラにより処理される。このとき、操作量MVと制御量PVとの関係は、その制御系において採用されるアクチュエータや制御対象の特性に依存して非線形な関係になる。そのようないわゆる非線形な制御系であっても、線形な制御手法(例えばPID)が広く利用されている。
【0003】
空間や加熱エリアを複数のゾーンに分割し、個々のゾーンにシングルループの制御系を形成する場合、各制御系の制御量PVは必ずしも同一の速度で変化するものではない。各制御系の制御量変化に速度差がある場合、最も変化の遅い最遅制御系以外の制御系の応答が最遅制御系の応答よりも速く進むため、最遅制御系以外の制御系のコントローラは最遅制御系の応答が完了するまで整定状態を維持しつつ待機しなければならない。したがって、これらのコントローラでは、応答完了後の整定状態を維持しつつ待機する整定待機時間が発生し、この整定待機時間の分だけエネルギー消費量が大きくなるという問題があった。
【0004】
そこで、特許文献1に開示された制御方法では、制御量変化が最も遅い第1制御ループのステップ応答の進捗度を算出し、第1制御ループ以外の他の制御ループの制御量が第1制御ループの制御量に同期して自動的に変化するように、他の制御ループの設定値をステップ応答の進捗度に基づいて補正してコントローラに与えるようにしている。これにより、特許文献1に開示された制御方法では、他の制御ループのコントローラの整定待機時間を削減し、省エネルギーを実現している。
【0005】
【特許文献1】特開2002−049406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
操作量MVと制御量PVとの関係が非線形な関係であって、この非線形性の程度が大きくなると、いわゆる強非線形系になる。強非線形系では、操作量MVが大きくなると、制御量PVを変化させる影響力が小さくなる。すなわち、制御量PVに対する操作量MVの影響力が飽和する状態となる。この状態を操作量MVと制御量PVとの関係で図示すると、例えば図20(A)、図20(B)に示すような関係になる。図20(A)は暖房・加熱制御の場合、図20(B)は冷房・冷却制御の場合である。図20(A)、図20(B)によれば、操作量MVが大きくなるほど、操作量MVの変化ΔMVに対する制御量PVの変化ΔPVが小さくなっていることが分かる。
【0007】
強非線形系においては、操作量MVが大きいほど、制御量PVの変化ΔPVに対する効果が小さくなるので、結果的にエネルギー効率が落ちるという問題点があった。つまり、操作量MVが大きいことはエネルギー消費量の点では不利なわけであるが、制御量PVを設定値SPに近づけるためには必要なエネルギーであり、エネルギー消費量を抑えることはできない。操作量MVを小さくすれば、エネルギー消費量を抑えることができるが、この場合には制御量PVを所望の設定値SPに近づけることが難しくなる。
【0008】
特許文献1に開示された制御方法では、制御の過渡状態のエネルギー消費量を改善することができるが、制御の整定状態は改善の対象にはなっておらず、整定状態のエネルギー消費量を抑制することはできない。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、マルチループの制御系において制御量を設定値に近づける特性を完全に犠牲にしてしまうことは避けつつ、過渡状態、整定状態に関係なくエネルギー消費量を抑制することができる制御装置および制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、制御対象を空間的に分割した複数のゾーンをそれぞれ制御する複数の制御ループを備えたマルチループ制御系の制御装置において、各制御ループの制御量PVとこれに対応する各制御ループの設定値SPとの偏差に基づいて操作量を制御ループ毎に算出する複数の制御演算手段と、算出された複数の前記操作量のうち、特定の第1の操作量と他の第2の操作量との操作量差を算出する操作量差算出手段と、前記操作量差に基づいて各制御ループの前記設定値SPまたは制御量PVに対する補正量を制御ループ毎に算出する補正量算出手段とを備え、前記補正量算出手段は、前記第1の操作量のエネルギー効率が悪い場合にエネルギー効率が良い方向へ変化するように前記補正量を算出することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の制御装置の1構成例において、前記操作量差算出手段は、前記第1の操作量から前記第2の操作量を減算して前記操作量差を算出するものであり、前記補正量は、設定値SPに加算または制御量PVから減算されるものであり、前記補正量算出手段は、前記操作量差に所定の倍率を乗算して前記補正量を算出する倍率乗算手段を備え、冷房・冷却時において前記第1の操作量に対応する前記倍率が正の値であり、暖房・加熱時において前記第1の操作量に対応する前記倍率が負の値であることを特徴とするものである。
また、本発明の制御装置の1構成例において、前記操作量差算出手段は、前記第1の操作量と第2の操作量の各々にダンピング処理を行うダンピング処理手段と、前記ダンピング処理後の第1の操作量からダンピング処理後の第2の操作量を減算して前記操作量差を算出する減算手段とを備え、前記補正量算出手段は、前記操作量差に対して不感帯処理を行う不感帯処理手段と、前記不感帯処理後の操作量差に所定の倍率を乗算して前記補正量を算出する前記倍率乗算手段と、算出された補正量に上下限処理を行う上下限処理手段とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の制御装置の1構成例において、前記操作量差算出手段は、制御対象を空間的に2つに分割する場合に、一方のゾーンの操作量を前記第1の操作量、他方のゾーンの操作量を前記第2の操作量として、前記操作量差を算出することを特徴とするものである。
また、本発明の制御装置の1構成例において、前記操作量差算出手段と補正量算出手段とは、制御対象を空間的に2つ以上に分割する場合に、ゾーン毎に設けられ、各操作量差算出手段は、制御対象のゾーンの操作量を前記第1の操作量、制御対象のゾーンに空間的に隣接するゾーンの操作量の平均値を前記第2の操作量として、前記操作量差をゾーン毎に算出することを特徴とするものである。
また、本発明の制御装置の1構成例において、前記第2の操作量は、制御対象のゾーンに空間的に隣接するゾーンの操作量の加重平均値である。
【0012】
また、本発明の制御方法は、各制御ループの制御量PVとこれに対応する各制御ループの設定値SPとの偏差に基づいて操作量を制御ループ毎に算出する制御演算手順と、算出された複数の前記操作量のうち、特定の第1の操作量と他の第2の操作量との操作量差を算出する操作量差算出手順と、前記操作量差に基づいて各制御ループの前記設定値SPまたは制御量PVに対する補正量を制御ループ毎に算出する補正量算出手順とを備え、前記補正量算出手順は、前記第1の操作量のエネルギー効率が悪い場合にエネルギー効率が良い方向へ変化するように前記補正量を算出することを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の制御方法の1構成例において、前記操作量差算出手順は、前記第1の操作量から前記第2の操作量を減算して前記操作量差を算出するものであり、前記補正量は、設定値SPに加算または制御量PVから減算されるものであり、前記補正量算出手順は、前記操作量差に所定の倍率を乗算して前記補正量を算出する倍率乗算手順を備え、冷房・冷却時において前記第1の操作量に対応する前記倍率が正の値であり、暖房・加熱時において前記第1の操作量に対応する前記倍率が負の値であることを特徴とするものである。
また、本発明の制御方法の1構成例において、前記操作量差算出手順は、前記第1の操作量と第2の操作量の各々にダンピング処理を行うダンピング処理手順と、前記ダンピング処理後の第1の操作量からダンピング処理後の第2の操作量を減算して前記操作量差を算出する減算手順とを備え、前記補正量算出手順は、前記操作量差に対して不感帯処理を行う不感帯処理手順と、前記不感帯処理後の操作量差に所定の倍率を乗算して前記補正量を算出する前記倍率乗算手順と、算出された補正量に上下限処理を行う上下限処理手順とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の制御方法の1構成例において、前記操作量差算出手順は、制御対象を空間的に2つに分割する場合に、一方のゾーンの操作量を前記第1の操作量、他方のゾーンの操作量を前記第2の操作量として、前記操作量差を算出することを特徴とするものである。
また、本発明の制御方法の1構成例において、前記操作量差算出手順と補正量算出手順とは、制御対象を空間的に2つ以上に分割する場合に、ゾーン毎に実行され、各操作量差算出手順は、制御対象のゾーンの操作量を前記第1の操作量、制御対象のゾーンに空間的に隣接するゾーンの操作量の平均値を前記第2の操作量として、前記操作量差をゾーン毎に算出することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、各制御ループの制御量PVとこれに対応する各制御ループの設定値SPとの偏差に基づいて操作量を制御ループ毎に算出する複数の制御演算手段と、算出された複数の操作量のうち、特定の第1の操作量と他の第2の操作量との操作量差を算出する操作量差算出手段と、操作量差に基づいて各制御ループの設定値SPまたは制御量PVに対する補正量を制御ループ毎に算出する補正量算出手段とを設け、補正量算出手段が、第1の操作量のエネルギー効率が悪い場合にエネルギー効率が良い方向へ変化するように補正量を算出することにより、マルチループの制御系において制御量を設定値に近づける特性を完全に犠牲にしてしまうことは避けつつ、過渡状態、整定状態に関係なくエネルギー消費量を抑制することができる。本発明は、特にゾーン間に制御量の干渉があるような制御対象に有効である。
【0015】
また、本発明では、第1の操作量から第2の操作量を減算して操作量差を算出し、操作量差に所定の倍率を乗算して補正量を算出し、補正量を、設定値SPに加算または制御量PVから減算する。このとき、冷房・冷却時においては第1の操作量に対応する倍率を正の値とし、暖房・加熱時においては第1の操作量に対応する倍率を負の値とすることにより、第1の操作量のエネルギー効率が悪い場合にエネルギー効率が良い方向へ変化するように補正量を算出することができ、エネルギー消費量を抑制することができる。
【0016】
また、本発明では、ダンピング処理手段を設けることにより、操作量の高周波のふらつきを削減することができる。また、本発明では、不感帯処理手段を設けることにより、操作量差を無視してよい数値範囲を規定することができる。また、本発明では、上下限処理手段を設けることにより、補正量が無制限に広がり過ぎないように制限することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[発明の原理]
大規模あるいは中規模の空間を対象とした空調システムや、複数の加熱エリアを持つ加熱処理装置では、空間や加熱エリアを複数のゾーンに分割し、個々のゾーンにシングルループの制御系を形成して、温度制御や湿度制御を行う。このような構成は、全体として見れば、マルチループの制御系を形成していることになる。通常、マルチループの制御系では、ゾーン間に温度干渉のような状態量干渉が発生することに特徴がある。この状態量干渉を利用し、操作量差を小さくする操作を与えることで、制御量PVを設定値SPに近付ける特性を完全に犠牲にしてしまうことは避けながらも、エネルギー的な不利を緩和することが可能になることに、発明者は着眼した。
【0018】
図1は本発明の原理を説明するためのフローチャートである。ここでは、対象となる空間を2つのゾーンZ1,Z2に分割して冷房・冷却制御を行う場合について説明する。
ゾーンZ1の操作量MV1とゾーンZ2の操作量MV2(MV1>MV2)に対して、操作量差δMV(=MV1−MV2)を小さくするような、設定値(温度)SP1,SP2の補正量であるSP補正量ΔSP1,ΔSP2を算出する(ステップS1)。
【0019】
SP補正量ΔSP1により、操作量の大きい側の設定値SP1が高めに補正される(ステップS2)。
SP補正量ΔSP2により、操作量の小さい側の設定値SP2が低めに補正される(ステップS3)。
【0020】
ゾーンZ1の設定値SP1が高めに補正されたことにより、ゾーンZ1の操作量MV1は下降する方向に算出される(ステップS4)。
ゾーンZ2の設定値SP2が低めに補正されたことにより、ゾーンZ2の操作量MV2は上昇する方向に算出される(ステップS5)。
【0021】
ゾーンZ1の操作量MV1が下がったことにより、ゾーンZ1の制御量(温度)PV1は上昇する(ステップS6)。
ゾーンZ2の操作量MV2が上がったことにより、ゾーンZ2の制御量(温度)PV2は下降する(ステップS7)。
【0022】
このとき、温度干渉があるので、ゾーンZ1の制御量(温度)PV1が上昇し、ゾーンZ2の制御量(温度)PV2が下降したとしても、ゾーンZ1,Z2の実質温度(室温)RT1,RT2は元の設定値SP1,SP2から大きく逸脱することはない。
【0023】
そして、エネルギー効率の悪い大きい側の操作量であった操作量MV1が小さめ方向にdMV1だけ制御され、エネルギー効率の良い小さい側の操作量であった操作量MV2は大きめ方向にdMV2(dMV1>dMV2)だけ制御されることになる。全体として考えると、エネルギー効率の良い小さい側への変化分の方が多いので、エネルギー消費量を抑制することができる。
【0024】
以上の動作を実現するために、操作量差δMVを算出し、この操作量差δMVを設定値SP1,SP2に対する補正量に変換して、設定値SP1,SP2に帰還させる方法を採用すればよいことに、発明者は想到した。この方法では、特に操作量の大きい側を重視することが好適である。
【0025】
なお、暖房・加熱制御の場合は、操作量の大きい側の設定値SP1が低めに補正され、操作量の小さい側の設定値SP2が高めに補正されるように、SP補正量ΔSP1,ΔSP2を算出し、ゾーンZ1の操作量MV1を下降する方向に制御し、ゾーンZ2の操作量MV2を上昇する方向に制御すればよい。これにより、ゾーンZ1の制御量(温度)PV1は下降し、ゾーンZ2の制御量(温度)PV2は上昇するが、ゾーンZ1とZ2間の干渉により、ゾーンZ1,Z2の実質温度(室温)RT1,RT2は元の設定値SP1,SP2から大きく逸脱することはない。
【0026】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図2は本発明の第1の実施の形態に係る空調システムの構成を示すブロック図である。
1は空調制御の対象となる空間、Z1,Z2は空間1を分割した2つのゾーン、2−1,2−2はゾーンZ1,Z2毎に温度制御を行うコントローラ、3はコントローラ2−1,2−2に与えられる設定値SP1,SP2を補正するためのSP補正量ΔSP1,ΔSP2を算出する連携動作演算部、4−1,4−2はゾーンZ1,Z2の制御量PV1,PV2を計測するセンサ、5−1,5−2はゾーンZ1,Z2に冷温風を供給する空調機、6−1,6−2はゾーンZ1,Z2の冷温風出口である。
【0027】
空調機5−1,5−2は、例えば冷温水を供給する熱源と、熱源から供給される冷温水の流量を調節するバルブ(アクチュエータ)と、バルブを通して送られてきた冷温水により空気を冷却または加熱するコイルと、冷却または加熱された空気を送り出す送風機等から構成される。
【0028】
本実施の形態は、中規模の空間1を2つのゾーンZ1,Z2に分けて温度制御を行なうものである。この場合、通常のシングルループの制御系を2ループ構成する。
図3に本実施の形態の空調システムで用いる制御装置の構成を示す。制御装置は、シングルループの制御系を構成するための構成要素であるコントローラ2−1,2−2と、連携動作演算部3とからなる。
【0029】
コントローラ2−1は、例えばゾーンZ1の居住者によって設定された設定値SP1を入力する設定値SP入力部20−1と、センサ4−1によって計測されたゾーンZ1の制御量PV1を入力する制御量PV入力部21−1と、設定値SP1と制御量PV1とSP補正量ΔSP1に基づいて操作量MV1を算出する制御演算手段となるPID演算部22−1と、操作量MV1をゾーンZ1の空調機5−1と連携動作演算部3に出力する操作量MV出力部23−1とを備える。
【0030】
同様に、コントローラ2−2は、ゾーンZ2の居住者によって設定された設定値SP2を入力する設定値SP入力部20−2と、センサ4−2によって計測されたゾーンZ2の制御量PV2を入力する制御量PV入力部21−2と、設定値SP2と制御量PV2とSP補正量ΔSP2に基づいて操作量MV2を算出する制御演算手段となるPID演算部22−2と、操作量MV2をゾーンZ2の空調機5−2と連携動作演算部3に出力する操作量MV出力部23−2とを備える。
【0031】
連携動作演算部3は、制御対象のゾーン以外の他のゾーンの操作量を受ける比較操作量入力部30−1,30−2と、操作量差δMVを算出する操作量差算出部31−1,31−2と、SP補正量ΔSP1,ΔSP2を算出するSP補正量算出部32−1,32−2とを、それぞれゾーンZ1,Z2毎に備える。
【0032】
図4に、本実施の形態における制御系のブロック線図を示す。P1はゾーンZ1の制御対象、P2はゾーンZ2の制御対象であり、PID演算部22−1,22−2と共にフィードバック制御系が個々のゾーンZ1,Z2毎に形成される。すなわち、制御対象P1とPID演算部22−1とからなるフィードバック制御系がゾーンZ1に形成され、制御対象P2とPID演算部22−2とからなるフィードバック制御系がゾーンZ2に形成される。
【0033】
PV1,PV2はゾーンZ1,Z2の制御量であり、本実施の形態では温度である。ΔSP1,ΔSP2はゾーンZ1,Z2のSP補正量である。PID演算部22−1,22−2は、設定値SP1,SP2にSP補正量ΔSP1,ΔSP2を加算する加算部220−1,220−2を内部に備えている。
【0034】
操作量差算出部31−1,31−2とSP補正量算出部32−1,32−2とは、操作量差δMVを算出し、操作量差δMVを設定値SP1,SP2に対するSP補正量ΔSP1,ΔSP2に変換してPID演算部22−1,22−2に帰還させる連携制御系を構成している。
【0035】
図5に、本実施の形態における好適な制御系のブロック線図を示す。図5は、図4に示した制御系のより好適かつ詳細な構成を示している。
ダンピング処理部310,311は、操作量MV1,MV2の高周波のふらつきを削減するための構成要素である。ダンピング処理部310,311は、例えば1次遅れの時間遅れ特性のローパスフィルタで実現すればよい。ゾーンZ1のダンピング処理の時定数をT1、ゾーンZ2のダンピング処理の時定数をT2、ラプラス演算子をsとすると、ダンピング処理部310の伝達関数は1/(1+T1s)、ダンピング処理部311の伝達関数は1/(1+T2s)となる。
【0036】
減算部312は、ダンピング処理後の操作量MV1とMV2との差である操作量差δMVを次式のように算出する。
δMV=MV1−MV2 ・・・(1)
【0037】
不感帯処理部320は、操作量差δMVを無視してよい数値範囲を規定するための構成要素である。図6は不感帯処理部320の入出力特性を示す図である。不感帯処理部320は、操作量差算出部31−1,31−2から出力された操作量差δMVが不感帯±α(例えば±20%)の範囲内であれば、操作量差δMVを0にする。不感帯処理部320は、具体的には以下の式を実行する。
IF −α≦δMV≦α THEN δMV=0
ELSEIF δMV>α THEN δMV←δMV−α
ELSEIF δMV<−α THEN δMV←δMV+α ・・・(2)
【0038】
不感帯処理部320は、操作量差δMVが不感帯の正側の境界値αより大きい場合、操作量差δMVからαを減算し、操作量差δMVが不感帯の負側の境界値(−α)より小さい場合、操作量差δMVにαを加算する(式(2)の2つのELSEIF文以下の処理)。
【0039】
倍率乗算部321,323は、不感帯処理後の操作量差δMVをSP補正量ΔSP1,ΔSP2に変換するための構成要素である。倍率乗算部321,323は、次式に示すように操作量差δMVに倍率A1,A2を乗算してSP補正量ΔSP1,ΔSP2を算出する。
ΔSP1=δMV×A1 ・・・(3)
ΔSP2=δMV×A2 ・・・(4)
【0040】
冷房・冷却時にはゾーンZ1用の倍率A1が正の値、ゾーンZ2用の倍率A2が負の値になる。例えば倍率A1が0.02であれば、操作量差δMVが50%のときにSP補正量ΔSP1は1.0℃になり、倍率A2が−0.02であれば、操作量差δMVが50%のときにSP補正量ΔSP2は−1.0℃になる。また、暖房・加熱時には倍率A1が負の値、倍率A2が正の値になる。
【0041】
上下限処理部322,324は、SP補正量ΔSP1,ΔSP2が無制限に広がり過ぎないように制限するための構成要素である。上下限処理部322は、SP補正量ΔSP1が予め設定された上限値ΔSPmax(例えば+3.0℃)より大きい場合、ΔSP1=ΔSPmaxとし、SP補正量ΔSP1が予め設定された下限値ΔSPmin(例えば−3.0℃)より小さい場合、ΔSP1=ΔSPminとする上下限処理を行う。すなわち、上下限処理部322は以下の式を実行する。
IF ΔSP1>ΔSPmax THEN ΔSP1=ΔSPmax ・・・(5)
IF ΔSP1<ΔSPmin THEN ΔSP1=ΔSPmin ・・・(6)
【0042】
このような上下限処理により、SP補正量ΔSP1を例えば±3.0℃以内に制限することができる。上下限処理部324のSP補正量ΔSP2に対する上下限処理も同じである。
【0043】
以下、本実施の形態の制御装置の動作を説明する。図7は制御装置の動作を示すフローチャートである。
設定値SP1は、例えばゾーンZ1の居住者によって設定され、コントローラ2−1の設定値SP入力部20−1を介してPID演算部22−1に入力される(ステップS100)。設定値SP2は、例えばゾーンZ2の居住者によって設定され、コントローラ2−2の設定値SP入力部20−2を介してPID演算部22−2に入力される(ステップS101)。
【0044】
制御量PV1は、センサ4−1によって計測され、コントローラ2−1の制御量PV入力部21−1を介してPID演算部22−1に入力される(ステップS102)。制御量PV2は、センサ4−2によって計測され、コントローラ2−2の制御量PV入力部21−2を介してPID演算部22−2に入力される(ステップS103)。
【0045】
PID演算部22−1内の加算部220−1は、次式に示すように設定値SP1に1制御周期前に算出されたSP補正量ΔSP1を加算して設定値SP1を補正し(ステップS104)、PID演算部22−2内の加算部220−2は、設定値SP2に1制御周期前に算出されたSP補正量ΔSP2を加算して設定値SP2を補正する(ステップS105)。なお、動作開始後の最初の制御周期では、SP補正量ΔSP1,ΔSP2の初期値は0である。
SP1’=SP1+ΔSP1 ・・・(7)
SP2’=SP2+ΔSP2 ・・・(8)
【0046】
続いて、PID演算部22−1は、補正後の設定値SP1’と制御量PV1に基づいて、次式のようなPID制御演算を行って操作量MV1を算出し(ステップS106)、PID演算部22−2は、補正後の設定値SP2’と制御量PV2に基づいて操作量MV2を算出する(ステップS107)。
MV1=Kg1{1+(1/Ti1s)+Td1s}(SP1’−PV1)
・・・(9)
MV2=Kg2{1+(1/Ti2s)+Td2s}(SP2’−PV2)
・・・(10)
【0047】
式(9)、式(10)において、Kg1,Kg2は比例ゲイン、Ti1,Ti2は積分時間、Td1,Td2は微分時間である。
操作量MV出力部23−1,23−2は、PID演算部22−1,22−2から出力された操作量MV1,MV2をそれぞれ空調機5−1,5−2のアクチュエータに出力すると共に連携動作演算部3に出力する。なお、冷房・冷却時には、PID演算部22−1,22−2は、算出した操作量MV1,MV2をそれぞれ反転させた上で出力する。すなわち、0%の操作量MVを100%とし、100%の操作量MVを0%とするといったように反転させて出力する。
【0048】
連携動作演算部3の操作量差算出部31−1は、コントローラ2−1から出力された操作量MV1を受け取ると共に、コントローラ2−2から出力された操作量MV2を比較操作量入力部30−1を介して受け取る。操作量差算出部31−2は、コントローラ2−2から出力された操作量MV2を受け取ると共に、コントローラ2−1から出力された操作量MV1を比較操作量入力部30−2を介して受け取る。
【0049】
操作量差算出部31−1内のダンピング処理部310,311は、それぞれ操作量MV1,MV2をダンピング処理し(ステップS108)、同様に操作量差算出部31−2内のダンピング処理部310,311は、操作量MV1,MV2をダンピング処理する(ステップS109)。
【0050】
続いて、操作量差算出部31−1内の減算部312は、ダンピング処理後の操作量MV1とMV2とから操作量差δMVを式(1)のように算出し(ステップS110)、同様に操作量差算出部31−2内の減算部312は、操作量差δMVを算出する(ステップS111)。
【0051】
次に、SP補正量算出部32−1内の不感帯処理部320は、操作量差算出部31−1から出力された操作量差δMVに対して式(2)で説明したような不感帯処理を行い(ステップS112)、同様にSP補正量算出部32−2内の不感帯処理部320は、操作量差算出部31−2から出力された操作量差δMVに対して不感帯処理を行う(ステップS113)。
【0052】
SP補正量算出部32−1内の倍率乗算部321は、不感帯処理後の操作量差δMVに倍率A1を乗算してSP補正量ΔSP1を算出し(ステップS114)、SP補正量算出部32−2内の倍率乗算部323は、不感帯処理後の操作量差δMVに倍率A2を乗算してSP補正量ΔSP2を算出する(ステップS115)。
【0053】
SP補正量算出部32−1内の上下限処理部322は、SP補正量ΔSP1に対して上下限処理を行い、上下限処理後のSP補正量ΔSP1をPID演算部22−1に出力する(ステップS116)。SP補正量算出部32−2内の上下限処理部324は、SP補正量ΔSP2に対して上下限処理を行い、上下限処理後のSP補正量ΔSP2をPID演算部22−2に出力する(ステップS117)。
【0054】
以上のようなステップS100〜S117の処理が例えば空調システムのオペレータによって制御の終了が指示されるまで(ステップS118においてYES)、制御周期毎に繰り返し実行される。
【0055】
図8は、従来の空調システムと本実施の形態の空調システムの冷房・冷却時の数値例を示す図である。図8(A)に示すように、例えばゾーンZ1の設定値SP1とゾーンZ2の設定値SP2がともに25.0℃であるとき、ゾーンZ1の制御量PV1とゾーンZ2の制御量PV2はともに25.0℃に制御される。このとき、ゾーン間に温度干渉があったとしても、ゾーンZ1の実質温度(室温)RT1とゾーンZ2の実質温度(室温)RT2はともに25.0℃になる。
【0056】
ゾーンZ1の操作量MV1が95.0%でゾーンZ2の操作量MV2が25.0%であったとすると、従来の空調システムでは、操作量差δMVが70.0%(95.0−25.0%)のまま維持されることになる。このように、ゾーンZ1の操作量MV1が95.0%という極めて高い値になっていることが、エネルギー消費量が大きくなる要因になる。
【0057】
一方、図8(A)に示した状況に対して本実施の形態を適用すると、操作量差δMV=70.0%(95.0−25.0%)に対して、例えば±20%の不感帯処理が実行され操作量差δMVが50.0%になる。そして、ゾーンZ1については操作量差δMV=50.0%に例えば0.02の倍率A1が乗算され、SP補正量ΔSP1が1.0℃になり、ゾーンZ2については操作量差δMV=50.0%に例えば−0.02の倍率A2が乗算され、SP補正量ΔSP2が−1.0℃になる。
【0058】
この結果、ゾーンZ1の設定値SP1は25.0℃から26.0℃になり、ゾーンZ2の設定値SP2は25.0℃から24.0℃になる(図8(B))。設定値SP1が26.0℃になることは冷房要求が下がる側に補正されたことを意味し、設定値SP2が24.0℃になることは冷房要求が上がる側に補正されたことを意味する。
【0059】
設定値SP1,SP2の補正により、ゾーンZ1の制御量PV1は26.0℃に制御され、ゾーンZ2の制御量PV2は24.0℃に制御される(図8(C))。このとき、操作量MVと制御量PVとの間には図20(B)に示したような非線形な関係があり、またゾーンZ2の操作量MV2に比べてゾーンZ1の操作量MV1の方が大きいので、制御量PV1を1度上げるための操作量MV1の変化分と、制御量PV2を1度下げるための操作量MV2の変化分とを比べると、操作量MV1の変化分の方が大きい。例えば操作量MV1は65.0%になり、操作量MV2は45.0%になるというように、エネルギー効率の悪い側の操作量MV1が小さめ方向にdMV1=30.0%だけ制御され、エネルギー効率の良い側の操作量MV2は大きめ方向にdMV2=20.0%(dMV1>dMV2)だけ制御される。
【0060】
ゾーンZ1とZ2との間には温度干渉があるので、ゾーンZ1の実質温度(室温)RT1は例えば25.5℃になり、ゾーンZ2の実質温度(室温)RT2は例えば24.5℃になる。最終的には、エネルギー消費量の抑制効果が得られる適度な平衡点に収束する。
このように、本実施の形態では、ゾーン干渉と、操作量MVと制御量PVとの非線形性を利用することで、制御量PVを設定値SPに近づける特性を完全に犠牲にしてしまうことは避けながらも、エネルギー消費量を抑制することが可能になる。
【0061】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図9は本発明の第2の実施の形態に係る空調システムの構成を示すブロック図である。
1aは空調制御の対象となる空間、Z1〜Z6は空間1aを分割した6つのゾーン、2−1〜2−6はゾーンZ1〜Z6毎に温度制御を行うコントローラ、3aは連携動作演算部、4−1〜4−6はゾーンZ1〜Z6の制御量PV1〜PV6を計測するセンサ、5−1〜5−6はゾーンZ1〜Z6に冷温風を供給する空調機、6−1〜6−6はゾーンZ1〜Z6の冷温風出口である。
【0062】
本実施の形態は、大規模の空間1aを6つのゾーンZ1〜Z6に分けて温度制御を行なうものである。この場合、通常のシングルループの制御系を6ループ構成する。
図10に本実施の形態の空調システムで用いる制御装置の構成を示す。制御装置は、コントローラ2−1〜2−6と、連携動作演算部3aとからなる。
【0063】
コントローラ2−1〜2−6は、設定値SP入力部20−1〜20−6と、制御量PV入力部21−1〜21−6と、御演算手段となるPID演算部22−1〜22−6と、操作量MV出力部23−1〜23−6とを、それぞれゾーンZ1〜Z6毎に備える。
【0064】
連携動作演算部3aは、比較操作量入力部30a−1〜30a−6と、操作量差算出部31a−1〜31a−6と、SP補正量算出部32a−1〜32a−6とを、それぞれゾーンZ1〜Z6毎に備える。
【0065】
図11に、本実施の形態における制御系のブロック線図を示す。第1の実施の形態と同様に、制御対象P1とPID演算部22−1とからなるフィードバック制御系がゾーンZ1に形成される。その他のゾーンZ2〜Z6についても同様である。なお、図11では、ゾーンZ1の制御系のみを示し、他のゾーンZ2〜Z6の制御系については記載を省略している。
【0066】
MVa1はゾーンZ1と隣接するゾーンの平均操作量である。図12に示すZ10を制御対象のゾーンとしたとき、隣接するゾーンとはゾーンZ12,Z14,Z15,Z17のことを言う。例えば図9におけるゾーンZ1の隣接ゾーンは、ゾーンZ2,Z4であり、ゾーンZ2の隣接ゾーンは、ゾーンZ1,Z3,Z5である。なお、隣接するゾーンの平均操作量MVa1は、単純な平均値に限るものではなく、隣接するゾーンの操作量の加重平均値としてもよい。この場合は、ゾーン間干渉の影響を考慮して、各操作量に乗算する加重を調整すればよい。
【0067】
操作量差算出部31a−1とSP補正量算出部32a−1とは、操作量差δMV1を算出し、操作量差δMV1を設定値SP1に対するSP補正量ΔSP1に変換してPID演算部22−1に帰還させる連携制御系を構成している。
【0068】
図13に、本実施の形態における好適な制御系のブロック線図を示す。図13は、図11に示した制御系のより好適かつ詳細な構成を示している。
操作量差算出部31a−1内のダンピング処理部310の構成および動作は、第1の実施の形態と同様である。
【0069】
操作量差算出部31a−1内の平均操作量算出部313は、制御対象のゾーンZ1と隣接するゾーンの平均操作量MVa1を算出する。上記のようにゾーンZ1の隣接ゾーンがゾーンZ2,Z4であるとすれば、平均操作量MVa1は以下のようになる。
MVa1=(MV2+MV4)/2 ・・・(11)
【0070】
上記のとおり、平均操作量MVa1は、隣接するゾーンの操作量の加重平均値でもよく、この場合、平均操作量MVa1は以下のようになる。
MVa1=(W2×MV2+W4×MV4)/(W2+W4) ・・・(12)
加重W2,W4は、それぞれゾーンZ2,Z4とゾーンZ1との間の制御量の干渉を考慮して調整すればよい。
【0071】
ダンピング処理部314は、平均操作量MVa1の高周波のふらつきを削減するための構成要素である。ダンピング処理部314は、例えば1次遅れの時間遅れ特性のローパスフィルタで実現すればよい。平均操作量MVa1のダンピング処理の時定数をTaとすると、ダンピング処理部314の伝達関数は1/(1+Tas)となる。
【0072】
減算部312aは、ダンピング処理後の操作量MV1と平均操作量MVa1との差である操作量差δMV1を次式のように算出する。
δMV1=MV1−MVa1 ・・・(13)
【0073】
SP補正量算出部32a−1内の不感帯処理部320と倍率乗算部321と上下限処理部322の構成および動作は、第1の実施の形態と同様である。
ここまでゾーンZ1の処理について説明したが、他のゾーンについても同様の処理を行えばよい。
【0074】
以下、本実施の形態の制御装置の動作を説明する。図14は制御装置の動作を示すフローチャートである。なお、図14では、記載を容易にするために、ゾーンZ1〜Z3の処理についてのみ記載している。
【0075】
設定値SP1は、例えばゾーンZ1の居住者によって設定され、コントローラ2−1の設定値SP入力部20−1を介してPID演算部22−1に入力される(ステップS200)。設定値SP2は、例えばゾーンZ2の居住者によって設定され、コントローラ2−2の設定値SP入力部20−2を介してPID演算部22−2に入力される(ステップS201)。設定値SP3は、例えばゾーンZ3の居住者によって設定され、コントローラ2−3の設定値SP入力部20−3を介してPID演算部22−3に入力される(ステップS202)。
【0076】
制御量PV1は、センサ4−1によって計測され、コントローラ2−1の制御量PV入力部21−1を介してPID演算部22−1に入力される(ステップS203)。制御量PV2は、センサ4−2によって計測され、コントローラ2−2の制御量PV入力部21−2を介してPID演算部22−2に入力される(ステップS204)。制御量PV3は、センサ4−3によって計測され、コントローラ2−3の制御量PV入力部21−3を介してPID演算部22−3に入力される(ステップS205)。
【0077】
PID演算部22−1内の加算部220−1は、式(7)に示したように設定値SP1に1制御周期前に算出されたSP補正量ΔSP1を加算して設定値SP1を補正する(ステップS206)。PID演算部22−2内の加算部は、式(8)に示したように設定値SP2に1制御周期前に算出されたSP補正量ΔSP2を加算して設定値SP2を補正する(ステップS207)。PID演算部22−3内の加算部は、次式に示すように設定値SP3に1制御周期前に算出されたSP補正量ΔSP3を加算して設定値SP3を補正する(ステップS208)。なお、動作開始後の最初の制御周期では、SP補正量ΔSP1,ΔSP2,ΔSP3の初期値は0である。
SP3’=SP3+ΔSP3 ・・・(14)
【0078】
続いて、PID演算部22−1は、式(9)のようなPID制御演算を行って操作量MV1を算出する(ステップS209)。PID演算部22−2は、式(10)のようなPID制御演算を行って操作量MV2を算出する(ステップS210)。PID演算部22−3は、次式のようなPID制御演算を行って操作量MV3を算出する(ステップS211)。
MV3=Kg3{1+(1/Ti3s)+Td3s}(SP3’−PV3)
・・・(15)
【0079】
式(15)において、Kg3は比例ゲイン、Ti3は積分時間、Td3は微分時間である。そして、操作量MV出力部23−1,23−2,23−3は、PID演算部22−1,22−2,22−3から出力された操作量MV1,MV2,MV3をそれぞれ空調機5−1,5−2,5−3のアクチュエータに出力すると共に連携動作演算部3aに出力する。なお、冷房・冷却時には、PID演算部22−1,22−2,22−3は、算出した操作量MV1,MV2,MV3をそれぞれ反転させた上で出力する。
【0080】
連携動作演算部3aの操作量差算出部31a−1は、コントローラ2−1から出力された操作量MV1を受け取ると共に、他のコントローラ2−2〜2−6から出力された操作量MV2〜MV6を比較操作量入力部30a−1を介して受け取る。操作量差算出部31a−2は、コントローラ2−2から出力された操作量MV2を受け取ると共に、他のコントローラ2−1,2−3〜2−6から出力された操作量MV1,MV3〜MV6を比較操作量入力部30a−2を介して受け取る。操作量差算出部31a−3は、コントローラ2−3から出力された操作量MV3を受け取ると共に、他のコントローラ2−1,2−2,2−4〜2−6から出力された操作量MV1,MV2,MV4〜MV6を比較操作量入力部30a−3を介して受け取る。
【0081】
操作量差算出部31a−1,31a−2,31a−3内のダンピング処理部310は、それぞれ操作量MV1,MV2,MV3をダンピング処理する(ステップS212,S213,S214)。操作量差算出部31a−1内の平均操作量算出部313は、制御対象のゾーンZ1と隣接するゾーンの平均操作量MVa1を式(11)または式(12)に示したように算出する(ステップS215)。
【0082】
図9におけるゾーンZ2の隣接ゾーンは、ゾーンZ1,Z3,Z5である。操作量差算出部31a−2内の平均操作量算出部313は、制御対象のゾーンZ2と隣接するゾーンの平均操作量MVa2を次式のように算出する(ステップS216)。
MVa2=(MV1+MV3+MV5)/3 ・・・(16)
【0083】
平均操作量MVa2を隣接ゾーンの操作量の加重平均値とする場合は、平均操作量MVa2は以下のようになる。
MVa2=(W1×MV1+W3×MV3+W5×MV5)/(W1+W3+W5)
・・・(17)
加重W1,W3,W5は、それぞれゾーンZ1,Z3,Z5とゾーンZ2との間の制御量の干渉を考慮して調整すればよい。
【0084】
図9におけるゾーンZ3の隣接ゾーンは、ゾーンZ2,Z6である。操作量差算出部31a−3内の平均操作量算出部313は、制御対象のゾーンZ3と隣接するゾーンの平均操作量MVa3を次式のように算出する(ステップS217)。
MVa3=(MV2+MV6)/2 ・・・(18)
【0085】
平均操作量MVa3を隣接ゾーンの操作量の加重平均値とする場合は、平均操作量MVa3は以下のようになる。
MVa3=(W2×MV2+W6×MV6)/(W2+W6)
・・・(19)
加重W2,W6は、それぞれゾーンZ2,Z6とゾーンZ3との間の制御量の干渉を考慮して調整すればよい。
【0086】
操作量差算出部31a−1内のダンピング処理部314は、平均操作量MVa1をダンピング処理する(ステップS218)。操作量差算出部31a−2内のダンピング処理部314は、平均操作量MVa2をダンピング処理する(ステップS219)。操作量差算出部31a−3内のダンピング処理部314は、平均操作量MVa3をダンピング処理する(ステップS220)。
【0087】
操作量差算出部31a−1内の減算部312aは、ダンピング処理後の操作量MV1と平均操作量MVa1とから操作量差δMV1を式(13)に示したように算出する(ステップS221)。
【0088】
操作量差算出部31a−2内の減算部312aは、ダンピング処理後の操作量MV2と平均操作量MVa2との差である操作量差δMV2を次式のように算出する(ステップS222)。
δMV2=MV2−MVa2 ・・・(20)
【0089】
操作量差算出部31a−3内の減算部312aは、ダンピング処理後の操作量MV3と平均操作量MVa3との差である操作量差δMV3を次式のように算出する(ステップS223)。
δMV3=MV3−MVa3 ・・・(21)
【0090】
次に、SP補正量算出部32a−1内の不感帯処理部320は、操作量差算出部31a−1から出力された操作量差δMV1に対して式(2)と同様の不感帯処理を行う(ステップS224)。SP補正量算出部32a−2内の不感帯処理部は、操作量差算出部31a−2から出力された操作量差δMV2に対して不感帯処理を行う(ステップS225)。SP補正量算出部32a−3内の不感帯処理部320は、操作量差算出部31a−3から出力された操作量差δMV3に対して不感帯処理を行う(ステップS226)。
【0091】
SP補正量算出部32a−1内の倍率乗算部321は、不感帯処理後の操作量差δMV1に倍率A1を乗算してSP補正量ΔSP1を算出する(ステップS227)。SP補正量算出部32a−2内の倍率乗算部は、不感帯処理後の操作量差δMV2に倍率A2を乗算してSP補正量ΔSP2を算出する(ステップS228)。SP補正量算出部32a−3内の倍率乗算部は、不感帯処理後の操作量差δMV3に倍率A3を乗算してSP補正量ΔSP3を算出する(ステップS229)。
【0092】
ここで、冷房・冷却時には倍率A1,A2,A3が正の値になり、暖房・加熱時には倍率A1,A2,A3が負の値になる。
【0093】
SP補正量算出部32a−1内の上下限処理部322は、SP補正量ΔSP1に対して上下限処理を行い、上下限処理後のSP補正量ΔSP1をPID演算部22−1に出力する(ステップS230)。SP補正量算出部32a−2内の上下限処理部は、SP補正量ΔSP2に対して上下限処理を行い、上下限処理後のSP補正量ΔSP2をPID演算部22−2に出力する(ステップS231)。SP補正量算出部32a−3内の上下限処理部は、SP補正量ΔSP3に対して上下限処理を行い、上下限処理後のSP補正量ΔSP3をPID演算部22−3に出力する(ステップS232)。
【0094】
以上のようなステップS200〜S232の処理が例えば空調システムのオペレータによって制御の終了が指示されるまで(ステップS233においてYES)、制御周期毎に繰り返し実行される。図14では、ゾーンZ1,Z2,Z3の処理について説明したが、他のゾーンについても同様の処理を行えばよい。ゾーンZ4,Z5,Z6用の倍率A4,A5,A6は、倍率A1,A2,A3の場合と同様に、冷房・冷却時には正の値になり、暖房・加熱時には負の値になる。
こうして、空間や加熱エリアを3つ以上のゾーンに分ける場合においても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0095】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。図15は本発明の第3の実施の形態に係る空調システムの構成を示すブロック図である。
本実施の形態は、第1の実施の形態と同様に空間1を2つのゾーンZ1,Z2に分けて温度制御を行なうものであり、設定値SPを補正する代わりに、制御量PVを補正するようにしたものである。
【0096】
図16は本実施の形態の空調システムで用いる制御装置の構成を示すブロック図である。制御装置は、コントローラ2b−1,2b−2と、連携動作演算部3bとからなる。
コントローラ2b−1は、設定値SP入力部20−1と、制御量PV入力部21−1と、設定値SP1と制御量PV1とPV補正量ΔPV1に基づいて操作量MV1を算出するPID演算部22b−1と、操作量MV出力部23−1とを備える。同様に、コントローラ2−2は、設定値SP入力部20−2と、制御量PV入力部21−2と、設定値SP2と制御量PV2とPV補正量ΔPV2に基づいて操作量MV2を算出するPID演算部22b−2と、操作量MV出力部23−2とを備える。
【0097】
連携動作演算部3bは、比較操作量入力部30−1,30−2と、操作量差算出部31−1,31−2と、PV補正量算出部33−1,33−2とを、それぞれゾーンZ1,Z2毎に備える。
【0098】
図17に、本実施の形態における制御系のブロック線図を示す。ΔPV1,ΔPV2はゾーンZ1,Z2のPV補正量である。PID演算部22b−1,22b−2は、制御量PV1,PV2からPV補正量ΔPV1,ΔPV2を減算する減算部221−1,221−2を内部に備えている。
【0099】
操作量差算出部31−1,31−2とPV補正量算出部33−1,33−2とは、操作量差δMVを算出し、操作量差δMVを制御量PV1,PV2に対するPV補正量ΔPV1,ΔPV2に変換してPID演算部22b−1,22b−2に帰還させる連携制御系を構成している。
【0100】
図18に、本実施の形態における好適な制御系のブロック線図を示す。図18は、図17に示した制御系のより好適かつ詳細な構成を示している。
PV補正量算出部33−1,33−2内の不感帯処理部330は、それぞれ操作量差δMVに対して第1の実施の形態の不感帯処理部320と同様の処理を行う。
【0101】
倍率乗算部331,333は、不感帯処理後の操作量差δMVをPV補正量ΔPV1,ΔPV2に変換するための構成要素である。倍率乗算部331,333は、次式に示すように操作量差δMVに倍率A1,A2を乗算してPV補正量ΔPV1,ΔPV2を算出する。
ΔPV1=δMV×A1 ・・・(22)
ΔPV2=δMV×A2 ・・・(23)
【0102】
第1の実施の形態と同様に、冷房・冷却時にはゾーンZ1用の倍率A1が正の値、ゾーンZ2用の倍率A2が負の値になる。また、暖房・加熱時には倍率A1が負の値、倍率A2が正の値になる。
【0103】
上下限処理部332,334は、それぞれPV補正量ΔPV1,ΔPV2に対して第1の実施の形態の上下限処理部322,324と同様の処理を行う。
【0104】
以下、本実施の形態の制御装置の動作を説明する。図19は制御装置の動作を示すフローチャートである。
図19のステップS300〜S303の処理は、第1の実施の形態のステップS100〜S103と同じである。
【0105】
PID演算部22b−1内の減算部221−1は、次式に示すように制御量PV1から1制御周期前に算出されたPV補正量ΔPV1を減算して制御量PV1を補正し(ステップS304)、PID演算部22b−2内の減算部221−2は、制御量PV2から1制御周期前に算出されたPV補正量ΔPV2を減算して制御量PV2を補正する(ステップS305)。なお、動作開始後の最初の制御周期では、PV補正量ΔPV1,ΔPV2の初期値は0である。
PV1’=PV1−ΔPV1 ・・・(24)
PV2’=PV2−ΔPV2 ・・・(25)
【0106】
続いて、PID演算部22b−1は、設定値SP1と補正後の制御量PV1’に基づいて、次式のようなPID制御演算を行って操作量MV1を算出し(ステップS306)、PID演算部22b−2は、設定値SP2と補正後の制御量PV2’に基づいて操作量MV2を算出する(ステップS307)。
MV1=Kg1{1+(1/Ti1s)+Td1s}(SP1−PV1’)
・・・(26)
MV2=Kg2{1+(1/Ti2s)+Td2s}(SP2−PV2’)
・・・(27)
【0107】
そして、操作量MV出力部23−1,23−2は、PID演算部22b−1,22b−2から出力された操作量MV1,MV2をそれぞれ空調機5−1,5−2のアクチュエータに出力すると共に連携動作演算部3bに出力する。なお、冷房・冷却時には、PID演算部22b−1,22b−2は、算出した操作量MV1,MV2をそれぞれ反転させた上で出力する。
【0108】
ステップS308〜S311の処理は、第1の実施の形態のステップS108〜S111と同じである。
次に、PV補正量算出部33−1内の不感帯処理部330は、操作量差算出部31−1から出力された操作量差δMVに対して不感帯処理を行い(ステップS312)、同様にPV補正量算出部33−2内の不感帯処理部330は、操作量差算出部31−2から出力された操作量差δMVに対して不感帯処理を行う(ステップS313)。
【0109】
PV補正量算出部33−1内の倍率乗算部331は、不感帯処理後の操作量差δMVに倍率A1を乗算してPV補正量ΔPV1を算出し(ステップS314)、PV補正量算出部33−2内の倍率乗算部333は、不感帯処理後の操作量差δMVに倍率A2を乗算してPV補正量ΔPV2を算出する(ステップS315)。
【0110】
PV補正量算出部33−1内の上下限処理部332は、PV補正量ΔPV1に対して上下限処理を行い、上下限処理後のPV補正量ΔPV1をPID演算部22b−1に出力する(ステップS316)。PV補正量算出部33−2内の上下限処理部334は、PV補正量ΔPV2に対して上下限処理を行い、上下限処理後のPV補正量ΔPV2をPID演算部22b−2に出力する(ステップS317)。
【0111】
以上のようなステップS300〜S317の処理が例えば空調システムのオペレータによって制御の終了が指示されるまで(ステップS318においてYES)、制御周期毎に繰り返し実行される。
【0112】
以上説明したように、設定値SPを補正する代わりに、制御量PVを補正する場合には、設定値SPの場合と同様にしてPV補正量ΔPVを算出し、制御量PVからPV補正量ΔPVを減算すればよい。
同様に、第2の実施の形態においても、制御量PVを補正する場合には、制御量PVからPV補正量ΔPVを減算すればよい。
【0113】
なお、第1〜第3の実施の形態において、コントローラの制御アルゴリズムとしては、最も汎用的に利用されているPIDが実用上好適であるが、IMC(Internal Model Control)やSAC(Simple Adaptive Control)などであってもよい。
【0114】
また、以上の説明では、強非線形系を対象とする場合に省エネルギーという観点から優れた効果が得られるものとしているが、電気ヒータを用いて複数のゾーンを加熱する場合にも、操作量差を小さくすることで最大の操作量が出力される制御ループの操作量が小さく制御されて電気ヒータの寿命を延ばす効果が得られる。すなわち、本発明の構成の有効性は、強非線形系を対象とする場合に限られない。
【0115】
第1〜第3の実施の形態で説明したコントローラ2−1〜2−6,2b−1,2b−2および連携動作演算部3,3a,3bは、CPU、記憶装置およびインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。CPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って第1〜第3の実施の形態で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、マルチループ系の制御装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の原理を説明するためのフローチャートである。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る空調システムの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る空調システムで用いる制御装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における制御系のブロック線図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における好適な制御系のブロック線図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における不感帯処理部の入出力特性を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】従来の空調システムと本発明の第1の実施の形態に係る空調システムの冷房・冷却時の数値例を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る空調システムの構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る空調システムで用いる制御装置の構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態における制御系のブロック線図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態における空間の隣接ゾーンを説明するための図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態における好適な制御系のブロック線図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態に係る制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図15】本発明の第3の実施の形態に係る空調システムの構成を示すブロック図である。
【図16】本発明の第3の実施の形態に係る空調システムで用いる制御装置の構成を示すブロック図である。
【図17】本発明の第3の実施の形態における制御系のブロック線図である。
【図18】本発明の第3の実施の形態における好適な制御系のブロック線図である。
【図19】本発明の第3の実施の形態に係る制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図20】強非線形系における操作量と制御量との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0118】
1,1a…空間、2−1〜2−6,2b−1,2b−2…コントローラ、3,3a,3b…連携動作演算部、4−1〜4−6…センサ、5−1〜5−6…空調機、6−1〜6−6…冷温風出口、20−1〜20−6…設定値SP入力部、21−1〜21−6…制御量PV入力部、22−1〜22−6,22b−1,22b−2…PID演算部、23−1〜23−6…操作量MV出力部、30−1,30−2,30a−1〜30a−6…比較操作量入力部、31−1,31−2,31−1a〜31a−6…操作量差算出部、32−1,32−2,32a−1〜32a−6…SP補正量算出部、310,311,314…ダンピング処理部、312,312a…減算部、320,330…不感帯処理部、321,323,331,333…倍率乗算部、322,324,332,334…上下限処理部、313…平均操作量算出部、Z1〜Z6…ゾーン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象を空間的に分割した複数のゾーンをそれぞれ制御する複数の制御ループを備えたマルチループ制御系の制御装置において、
各制御ループの制御量PVとこれに対応する各制御ループの設定値SPとの偏差に基づいて操作量を制御ループ毎に算出する複数の制御演算手段と、
算出された複数の前記操作量のうち、特定の第1の操作量と他の第2の操作量との操作量差を算出する操作量差算出手段と、
前記操作量差に基づいて各制御ループの前記設定値SPまたは制御量PVに対する補正量を制御ループ毎に算出する補正量算出手段とを備え、
前記補正量算出手段は、前記第1の操作量のエネルギー効率が悪い場合にエネルギー効率が良い方向へ変化するように前記補正量を算出することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置において、
前記操作量差算出手段は、前記第1の操作量から前記第2の操作量を減算して前記操作量差を算出するものであり、
前記補正量は、設定値SPに加算または制御量PVから減算されるものであり、
前記補正量算出手段は、前記操作量差に所定の倍率を乗算して前記補正量を算出する倍率乗算手段を備え、
冷房・冷却時において前記第1の操作量に対応する前記倍率が正の値であり、暖房・加熱時において前記第1の操作量に対応する前記倍率が負の値であることを特徴とする制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の制御装置において、
前記操作量差算出手段は、
前記第1の操作量と第2の操作量の各々にダンピング処理を行うダンピング処理手段と、
前記ダンピング処理後の第1の操作量からダンピング処理後の第2の操作量を減算して前記操作量差を算出する減算手段とを備え、
前記補正量算出手段は、
前記操作量差に対して不感帯処理を行う不感帯処理手段と、
前記不感帯処理後の操作量差に所定の倍率を乗算して前記補正量を算出する前記倍率乗算手段と、
算出された補正量に上下限処理を行う上下限処理手段とを備えることを特徴とする制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の制御装置において、
前記操作量差算出手段は、制御対象を空間的に2つに分割する場合に、一方のゾーンの操作量を前記第1の操作量、他方のゾーンの操作量を前記第2の操作量として、前記操作量差を算出することを特徴とする制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の制御装置において、
前記操作量差算出手段と補正量算出手段とは、制御対象を空間的に2つ以上に分割する場合に、ゾーン毎に設けられ、
各操作量差算出手段は、制御対象のゾーンの操作量を前記第1の操作量、制御対象のゾーンに空間的に隣接するゾーンの操作量の平均値を前記第2の操作量として、前記操作量差をゾーン毎に算出することを特徴とする制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の制御装置において、
前記第2の操作量は、制御対象のゾーンに空間的に隣接するゾーンの操作量の加重平均値であることを特徴とする制御装置。
【請求項7】
制御対象を空間的に分割した複数のゾーンをそれぞれ制御する複数の制御ループを備えたマルチループ制御系の制御方法において、
各制御ループの制御量PVとこれに対応する各制御ループの設定値SPとの偏差に基づいて操作量を制御ループ毎に算出する制御演算手順と、
算出された複数の前記操作量のうち、特定の第1の操作量と他の第2の操作量との操作量差を算出する操作量差算出手順と、
前記操作量差に基づいて各制御ループの前記設定値SPまたは制御量PVに対する補正量を制御ループ毎に算出する補正量算出手順とを備え、
前記補正量算出手順は、前記第1の操作量のエネルギー効率が悪い場合にエネルギー効率が良い方向へ変化するように前記補正量を算出することを特徴とする制御方法。
【請求項8】
請求項7に記載の制御方法において、
前記操作量差算出手順は、前記第1の操作量から前記第2の操作量を減算して前記操作量差を算出するものであり、
前記補正量は、設定値SPに加算または制御量PVから減算されるものであり、
前記補正量算出手順は、前記操作量差に所定の倍率を乗算して前記補正量を算出する倍率乗算手順を備え、
冷房・冷却時において前記第1の操作量に対応する前記倍率が正の値であり、暖房・加熱時において前記第1の操作量に対応する前記倍率が負の値であることを特徴とする制御方法。
【請求項9】
請求項8に記載の制御方法において、
前記操作量差算出手順は、
前記第1の操作量と第2の操作量の各々にダンピング処理を行うダンピング処理手順と、
前記ダンピング処理後の第1の操作量からダンピング処理後の第2の操作量を減算して前記操作量差を算出する減算手順とを備え、
前記補正量算出手順は、
前記操作量差に対して不感帯処理を行う不感帯処理手順と、
前記不感帯処理後の操作量差に所定の倍率を乗算して前記補正量を算出する前記倍率乗算手順と、
算出された補正量に上下限処理を行う上下限処理手順とを備えることを特徴とする制御方法。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれか1項に記載の制御方法において、
前記操作量差算出手順は、制御対象を空間的に2つに分割する場合に、一方のゾーンの操作量を前記第1の操作量、他方のゾーンの操作量を前記第2の操作量として、前記操作量差を算出することを特徴とする制御方法。
【請求項11】
請求項7乃至9のいずれか1項に記載の制御方法において、
前記操作量差算出手順と補正量算出手順とは、制御対象を空間的に2つ以上に分割する場合に、ゾーン毎に実行され、
各操作量差算出手順は、制御対象のゾーンの操作量を前記第1の操作量、制御対象のゾーンに空間的に隣接するゾーンの操作量の平均値を前記第2の操作量として、前記操作量差をゾーン毎に算出することを特徴とする制御方法。
【請求項12】
請求項11に記載の制御方法において、
前記第2の操作量は、制御対象のゾーンに空間的に隣接するゾーンの操作量の加重平均値であることを特徴とする制御方法。
【請求項1】
制御対象を空間的に分割した複数のゾーンをそれぞれ制御する複数の制御ループを備えたマルチループ制御系の制御装置において、
各制御ループの制御量PVとこれに対応する各制御ループの設定値SPとの偏差に基づいて操作量を制御ループ毎に算出する複数の制御演算手段と、
算出された複数の前記操作量のうち、特定の第1の操作量と他の第2の操作量との操作量差を算出する操作量差算出手段と、
前記操作量差に基づいて各制御ループの前記設定値SPまたは制御量PVに対する補正量を制御ループ毎に算出する補正量算出手段とを備え、
前記補正量算出手段は、前記第1の操作量のエネルギー効率が悪い場合にエネルギー効率が良い方向へ変化するように前記補正量を算出することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置において、
前記操作量差算出手段は、前記第1の操作量から前記第2の操作量を減算して前記操作量差を算出するものであり、
前記補正量は、設定値SPに加算または制御量PVから減算されるものであり、
前記補正量算出手段は、前記操作量差に所定の倍率を乗算して前記補正量を算出する倍率乗算手段を備え、
冷房・冷却時において前記第1の操作量に対応する前記倍率が正の値であり、暖房・加熱時において前記第1の操作量に対応する前記倍率が負の値であることを特徴とする制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の制御装置において、
前記操作量差算出手段は、
前記第1の操作量と第2の操作量の各々にダンピング処理を行うダンピング処理手段と、
前記ダンピング処理後の第1の操作量からダンピング処理後の第2の操作量を減算して前記操作量差を算出する減算手段とを備え、
前記補正量算出手段は、
前記操作量差に対して不感帯処理を行う不感帯処理手段と、
前記不感帯処理後の操作量差に所定の倍率を乗算して前記補正量を算出する前記倍率乗算手段と、
算出された補正量に上下限処理を行う上下限処理手段とを備えることを特徴とする制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の制御装置において、
前記操作量差算出手段は、制御対象を空間的に2つに分割する場合に、一方のゾーンの操作量を前記第1の操作量、他方のゾーンの操作量を前記第2の操作量として、前記操作量差を算出することを特徴とする制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の制御装置において、
前記操作量差算出手段と補正量算出手段とは、制御対象を空間的に2つ以上に分割する場合に、ゾーン毎に設けられ、
各操作量差算出手段は、制御対象のゾーンの操作量を前記第1の操作量、制御対象のゾーンに空間的に隣接するゾーンの操作量の平均値を前記第2の操作量として、前記操作量差をゾーン毎に算出することを特徴とする制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の制御装置において、
前記第2の操作量は、制御対象のゾーンに空間的に隣接するゾーンの操作量の加重平均値であることを特徴とする制御装置。
【請求項7】
制御対象を空間的に分割した複数のゾーンをそれぞれ制御する複数の制御ループを備えたマルチループ制御系の制御方法において、
各制御ループの制御量PVとこれに対応する各制御ループの設定値SPとの偏差に基づいて操作量を制御ループ毎に算出する制御演算手順と、
算出された複数の前記操作量のうち、特定の第1の操作量と他の第2の操作量との操作量差を算出する操作量差算出手順と、
前記操作量差に基づいて各制御ループの前記設定値SPまたは制御量PVに対する補正量を制御ループ毎に算出する補正量算出手順とを備え、
前記補正量算出手順は、前記第1の操作量のエネルギー効率が悪い場合にエネルギー効率が良い方向へ変化するように前記補正量を算出することを特徴とする制御方法。
【請求項8】
請求項7に記載の制御方法において、
前記操作量差算出手順は、前記第1の操作量から前記第2の操作量を減算して前記操作量差を算出するものであり、
前記補正量は、設定値SPに加算または制御量PVから減算されるものであり、
前記補正量算出手順は、前記操作量差に所定の倍率を乗算して前記補正量を算出する倍率乗算手順を備え、
冷房・冷却時において前記第1の操作量に対応する前記倍率が正の値であり、暖房・加熱時において前記第1の操作量に対応する前記倍率が負の値であることを特徴とする制御方法。
【請求項9】
請求項8に記載の制御方法において、
前記操作量差算出手順は、
前記第1の操作量と第2の操作量の各々にダンピング処理を行うダンピング処理手順と、
前記ダンピング処理後の第1の操作量からダンピング処理後の第2の操作量を減算して前記操作量差を算出する減算手順とを備え、
前記補正量算出手順は、
前記操作量差に対して不感帯処理を行う不感帯処理手順と、
前記不感帯処理後の操作量差に所定の倍率を乗算して前記補正量を算出する前記倍率乗算手順と、
算出された補正量に上下限処理を行う上下限処理手順とを備えることを特徴とする制御方法。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれか1項に記載の制御方法において、
前記操作量差算出手順は、制御対象を空間的に2つに分割する場合に、一方のゾーンの操作量を前記第1の操作量、他方のゾーンの操作量を前記第2の操作量として、前記操作量差を算出することを特徴とする制御方法。
【請求項11】
請求項7乃至9のいずれか1項に記載の制御方法において、
前記操作量差算出手順と補正量算出手順とは、制御対象を空間的に2つ以上に分割する場合に、ゾーン毎に実行され、
各操作量差算出手順は、制御対象のゾーンの操作量を前記第1の操作量、制御対象のゾーンに空間的に隣接するゾーンの操作量の平均値を前記第2の操作量として、前記操作量差をゾーン毎に算出することを特徴とする制御方法。
【請求項12】
請求項11に記載の制御方法において、
前記第2の操作量は、制御対象のゾーンに空間的に隣接するゾーンの操作量の加重平均値であることを特徴とする制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2010−73098(P2010−73098A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242383(P2008−242383)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]