制御装置及び真空処理装置
【課題】真空ポンプ等の構成変更等をすることなく、また真空ポンプ等の機械的劣化を引き起こすことなく、稼働停止後における真空ポンプの確実な再起動を容易に可能とし、信頼性の高い真空処理を実現する制御装置及び真空処理装置を提供する。
【解決手段】制御装置10は、例えば制御部3に対して外付けで着脱自在に接続されるものであり、制御部3の補助真空ポンプ2の稼働制御に言わば割り込んで、回転停止期間内において、上記した停止期間運転モードを挿入し、当該停止期間運転モードを実行する。停止期間運転モードでは、回転停止期間内において、補助真空ポンプ2のロータ12の1回又は複数回の間欠運転が規定されている。
【解決手段】制御装置10は、例えば制御部3に対して外付けで着脱自在に接続されるものであり、制御部3の補助真空ポンプ2の稼働制御に言わば割り込んで、回転停止期間内において、上記した停止期間運転モードを挿入し、当該停止期間運転モードを実行する。停止期間運転モードでは、回転停止期間内において、補助真空ポンプ2のロータ12の1回又は複数回の間欠運転が規定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、真空処理を行う際の制御装置及び真空処理装置に関し、特に半導体製造工程で用いられる各種の処理装置の真空処理に適用して好適である。
【背景技術】
【0002】
真空処理装置は、対象となる反応室内を所定の真空度に制御するものであり、その排気系として、例えば、反応室内の圧力を所定の設計圧力まで減圧する主真空ポンプと、主真空ポンプが作動できる圧力領域まで減圧する補助真空ポンプとを備えて構成される。主真空ポンプとしては例えばターボポンプが、補助真空ポンプとしては例えばドライポンプがそれぞれ用いられる。
真空処理装置を半導体製造工程で用いる場合、反応室としては、エッチング装置やイオン注入装置、CVD装置等の真空チャンバが適用される。
【0003】
【特許文献1】特開平4−50492号公報
【特許文献2】特開2005−105829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
真空処理装置は、反応室の真空引きを行うことから、反応室内に存する物質が真空処理装置の排気系に搬送され、当該物質による排気系へのダメージが懸念される場合がある。
特に、真空処理装置の対象となる反応室では、その用途や当該用途に供される材料等に起因して、当該物質として、処理中に反応性の高い反応副生成物が生じるものがあり、このような反応副生成物により、以下のような問題が発生する。
【0005】
真空処理装置の排気系を停止する際は、装置からの遠隔制御信号或いは排気系に付帯する制御スイッチを操作する。例えば補助真空ポンプでは、この操作で内部のロータの回転が停止する。補助真空ポンプを停止させた後、再起動を行うと、多くの補助真空ポンプで再起動ができず、甚だしくはポンプ交換が必要な場合もあるという問題がある。
【0006】
このように、真空ポンプの再起動が不能となるメカニズムは、以下のように考えられる。
反応室における処理中に、当該反応室から補助真空ポンプへ搬送された反応副生成物が、真空系の作動停止とともにポンプ内部に滞留する。この反応副生成物は、時間の経過によりポンプ内部で固着する。この固着した反応副生成物により、運転時にロータとの間で摩擦による抵抗が生じ、ロータ回転動力が不足して稼働不能となる。
【0007】
従来では、真空ポンプ内に滞留する反応副生成物に対する対策として、例えば、真空処理中における真空ポンプのケーシング内の温度を高くし、反応副生成物を活性な状態に維持し、外部へ排出させる方法や、反応副生成物の濃度を低下させるために、不活性ガスを希釈用として、処理中にポンプ内に導入する方法が検討されている。また、特許文献1には、粘着性物質によるロータ回転障害に対してポンプ構造を変更してポンプ稼動中にポンプ内部を洗浄する方法が提案されている。特許文献2には、ポンプ内部のギアオイルの性能劣化を抑止する方法が挙げられている。
【0008】
しかしながら、上記のような従来の各種手法は、いずれも真空ポンプの稼動中における対策である。これらの場合、反応副生成物を除去するために真空ポンプ内の昇温を要するために機械的劣化を惹起したり、特殊なポンプ構造等を要するために装置構成の複雑化を招く等の問題がある。現在のところ、これらのように真空ポンプの稼動中における対策では、稼働停止後に真空ポンプの再起動が不能となるという問題を解決するには至っていない状況にある。
【0009】
本件は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、真空ポンプ等の構成変更等をすることなく、また真空ポンプ等の機械的劣化を引き起こすことなく、稼働停止後における真空ポンプの確実な再起動を容易に可能とし、信頼性の高い真空処理を実現する制御装置及び真空処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本件の制御装置は、ケーシング内にロータを備えた真空ポンプの制御装置であって、前記真空ポンプの停止期間における前記ロータの回転動作の状態として、間欠運転を規定する停止期間運転モードを有しており、前記真空ポンプの停止時において、前記停止期間運転モードに従って前記ロータの回転動作を制御する。
【0011】
本件の真空処理装置は、ケーシング内にロータを備えた真空ポンプと、前記真空ポンプと接続されており、前記真空ポンプの停止期間における前記ロータの回転動作の状態として間欠動作を規定する停止期間運転モードを有し、前記真空ポンプの停止時において、前記停止期間運転モードに従って前記ロータの回転動作を制御する制御装置とを含み構成される。
【発明の効果】
【0012】
本件によれば、真空ポンプ等の構成変更等をすることなく、また真空ポンプ等の機械的劣化を引き起こすことなく、稼働停止後における真空ポンプの確実な再起動が容易に可能となり、信頼性の高い真空処理が実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
―本件を適用した好適な諸実施形態―
上記したように、従来の各種手法は、いずれも真空ポンプの稼動中における対策であり、処理中に搬送される反応副生成物をポンプ内に滞留させないように、外部に排出或いは洗浄除去するという発想のものである。そもそも従来では、真空ポンプの再起動が不能となるという問題意識がないか、或いは極めて希薄であり、反応副生成物の滞留を真空ポンプの再起動不能との関係では議論されていない現況にある。
【0014】
本発明者は、先ず、反応副生成物の滞留による真空ポンプの再起動が不能となる状況について、補助真空ポンプを例に採ってより詳細に考察した。
補助真空ポンプは、図1(a)に示すように、ケーシング101内にロータ102が設けられており、ロータ102はそのロータ軸102aが固定側軸受け部103及び伸び側軸受け部(不図示)によりケーシング101に回転自在に固定されている。ケーシング101内でロータ102が回転することにより、不図示の排気部から排気することで反応室内を所定の真空状態(主真空ポンプが作動できる圧力領域)とする。
【0015】
補助真空ポンプの運転中には、図1(b)に示すように、吸引する気体を圧縮した時に発生する圧縮熱、付加された本体加熱用のヒータ等によりケーシング101内が高温となっている。このような状態によりロータ軸102aが熱膨張し、ロータ軸102aと一体のロータ102も矢印A1の方向へ移動し、間隔Wが拡張する。この拡張された固定側間隔W1の部分に反応副生成物である異物111が生じる。
【0016】
補助真空ポンプの停止した際には、図1(c)に示すように、圧縮による自己発熱と付加された加熱ヒータ等による昇温効果が無くなり、更に、ポンプ自体の部品の劣化を防止するために使われている冷却水の影響で、ポンプ自体の温度が急激に低下する。この時、ケーシング101内では、温度低下により、残留した未反応ガスによって新たに生成された反応副生成物や運転中に生成し残留している反応副生成物である異物111が、ロータ102とケーシング101との間隙に滞留する。一方、熱膨張していたロータ軸102aは、環境温度にあった状態まで収縮が始まり、ロータ軸102aと一体のロータ102もケーシング101内を移動し、ケーシング101との間隙Wが狭くなってゆく。この間隙Wに滞留した異物111は、ロータ102とケーシング101との間で押し潰されて固着してゆき、再起動時におけるロータ102の作動を拘束するに至る。
【0017】
通常、補助真空ポンプは、図2(a)に示すように、ロータ軸102aが固定側軸受け部103及び伸び側軸受け部104によりケーシング101に回転自在に固定されており、ロータ幅が徐々に小さくなるように複数のロータ102が吸気部側から排気部側にかけて直列してなる複数段式とされている。このような複数段式の補助真空ポンプでは、図2(b)に示すように、排気部側に近いロータ102ほど反応副生成物の付着量が多い。
【0018】
本発明者は、上述したような反応副生成物等の異物の生成・滞留の過程を、滞留した反応副生成物等の異物により真空ポンプの再起動が不能となることに関連付けて考察し、真空ポンプの稼働停止時の動作を工夫することで再起動が可能となることを見出した。
本件では、真空ポンプのロータの回転停止期間における回転動作の状態を規定する停止期間運転モードを有し、真空ポンプの稼動停止時において、停止期間運転モードに従ってロータの回転動作を制御する制御装置を提供する。具体的に、停止期間運転モードでは、回転停止期間内において、ロータの1回又は複数回の間欠運転が規定されている。制御装置では、停止期間運転モードにおいて、回転停止期間、間欠運転の継続時間、ロータの単位時間当りの回転数、及びロータのトルクが設定自在とされている。更に制御装置では、ケーシング内に供給するパージガスの流量を回転停止期間に設定自在とされるとともに、回転停止期間にはケーシングへの冷却水の供給を停止させる。
【0019】
回転停止期間、間欠運転の継続時間、ロータの単位時間当りの回転数、ロータのトルク、パージガスの流量を回転停止期間のパラメータとして適宜設定し、更に場合に応じて回転停止期間には冷却水の供給停止を指示することにより、回転停止期間に真空ポンプを徐冷し、昇華物質である反応副生成物等の異物を固着させないように適宜保持して、回転停止期間内に気化状態で排気部から外部へ排出する。更に、パージガス流量の制御によりケーシング内部に残留している未反応ガスと滞留している反応副生成物との排出を促す。更に、ケーシング温度の制御性を高める方法として、回転停止期間では真空ポンプへ供給されている冷却水を遮断するようにしても良い。
【0020】
これらにより、真空ポンプの稼動を停止させた際には、ケーシング内にはロータの作動を拘束する反応副生成物等の異物が滞留しておらず、真空ポンプの確実な再起動が可能となる。ここで、反応副生成物が既にケーシング内部に付着している場合もあるが、その場合でも、間欠運転により反応副生成物が回転中のロータと接触して機械的に削られ、更には反応副生成物がパージガスの流れに乗せられることで、ケーシング外へ排出することが可能である。
【0021】
図3に、本件の制御装置における停止期間運転モードの一例を示す。ここでは、真空ポンプの通常稼動時におけるロータの単位時間当りの回転数をR1とし、停止期間運転モードに入ったときに、パージガス流量をLに制御しながら、当該回転数をR2(R2<R1)に制御する。回転数R2による時間t1のロータの減速運転の制御の後、時間t2のロータの停止する制御(停止1)を行う。続いて、回転数R2による時間t3のロータの間欠運転(間欠運転1)、時間t4のロータの停止する制御(停止2)、回転数R2による時間t5のロータの間欠運転(間欠運転2)、時間t6のロータの停止する制御(停止3)、回転数R2による時間7のロータの間欠運転(間欠運転3)の制御を行い、ロータが完全停止する。なお、図3では、制御装置における停止期間運転モードによる運転制御を示しており、停止期間運転モードによるロータの実際の運転では、停止(間欠運転)と間欠運転(停止)との間には若干の時間を要することは言うまでもない。
【0022】
上記のように制御装置で停止期間運転モードを実行することにより、ケーシング内の温度は図示のように回転停止期間に環境温度まで漸減してゆく。このように、回転停止期間にケーシング内を環境温度まで徐々に冷却することにより、完全停止にはケーシング内には反応副生成物等の異物が残存しておらず、真空ポンプの確実な再起動が可能となる。
【0023】
―本件を適用した具体的な諸実施形態―
以下、本件を適用した具体的な諸実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
(第1の実施形態)
図4は、第1の実施形態による真空処理装置の概略構成を示す模式図であり、図5は第1の実施形態による真空処理装置の補助真空ポンプの概略構成を示す模式図である。
【0025】
本実施形態による真空処理装置は、対象となる反応室4内を所定の真空度に制御するものであり、反応室内の圧力を所定の設計圧力まで減圧する主真空ポンプ1と、主真空ポンプ1が作動できる圧力領域まで減圧する補助真空ポンプ2と、主真空ポンプ1及び補助真空ポンプ2の稼働を制御する制御部3と、例えば制御部3に接続された制御装置10とを備えて構成されている。
【0026】
補助真空ポンプ2は、ケーシング11内に複数のロータ12が設けられた複数段式のものである。ここで、ロータ12はそのロータ軸12aが伸び側軸受け部13及び固定側軸受け部14によりケーシング11に回転自在に固定されており、ロータ幅が徐々に小さくなるように複数のロータ12が吸気部15側から排気部16側にかけて直列している。
補助真空ポンプ2には、吸気部15からケーシング11内へパージガスを導入し、排気部16からパージガスを排出させるパージガス供給機能17と、ケーシング11内を冷却するために当該ケーシング11内に冷却水を流入出させる(冷却水の流入口18aがケーシング11の伸び側軸受け部13側に、流出口18bが固定側軸受け部14側にそれぞれ設けられている。)冷却水供給機能18とが設けられている。
【0027】
制御部3は、主真空ポンプ1及び補助真空ポンプ2の単位時間当たりの回転数や稼働時間等が設定自在とされており、当該設定に応じて主真空ポンプ1及び補助真空ポンプ2の稼働を制御する。なお、稼働時間については、特に設定することなく稼働のオン/オフのスイッチング機能のみが制御部3に付加されているようにしても良い。
【0028】
制御装置10は、例えば制御部3に対して外付けで着脱自在に接続されるものであり、制御部3の補助真空ポンプ2の稼働制御に言わば割り込んで、回転停止期間内において、上記した停止期間運転モードを挿入し、当該停止期間運転モードを実行するものである。
【0029】
停止期間運転モードでは、回転停止期間内において、補助真空ポンプ2のロータ12の1回又は複数回の間欠運転が規定されている。制御装置10では、停止期間運転モードにおいて、回転停止期間、間欠運転の継続時間、ロータ12の単位時間当りの回転数、及びロータ12のトルクが設定自在とされている。一般的にロータのトルクはロータの単位時間当りの回転数と比例関係にはない。そこで例えば、通常稼動時におけるロータ12の単位時間当りの回転数をR1として、R2<R1であり、ロータ12のトルクが極大値(或いは最大値)となるロータ12の単位時間当りの回転数R2を、停止期間運転モードにおけるロータ12の回転数に設定しても良い。
【0030】
制御装置10は、ケーシング11内に供給するパージガス、例えばN2ガスの流量を回転停止期間に設定自在とされており、当該設定に応じてパージガス供給機構17を制御する。更に制御装置10は、回転停止期間にはケーシング11への冷却水の供給を停止させるように、冷却水供給機構18を制御する。
【0031】
以下、制御装置10を用いて(制御部3を通じて)、補助真空ポンプ2を停止期間運転モードにより制御する場合を例示する。
【0032】
(制御例1)
図6は、本実施形態の制御装置10における停止期間運転モードの制御例1を示す特性図である。
ここでは、反応室4をエッチング装置とし、シリコン基板のシリコンをエッチングする場合に、本実施形態による真空処理装置を適用する。
具体的には、停止期間運転モードにおけるロータ12の単位時間当りの回転数を、その通常稼動時における値と同一のR1とし、停止期間運転モードに入ったときに、制御装置10が冷却水供給機構18を制御して冷却水の供給を停止し、パージガス供給機構17を制御してパージガス流量を例えば0.5L/minに制御しながら、時間t1(例えば20分間)のロータ12の停止する制御(停止1)、時間t2(例えば1分間)のロータ12の間欠運転(間欠運転1)、時間t3(例えば14分間)のロータ12の停止する制御(停止2)、時間t4(例えば1分間)のロータ12の間欠運転(間欠運転2)の制御を行った後、ロータが完全停止する。
【0033】
上記のように制御装置で停止期間運転モードを実行することにより、ケーシング11内の温度は図示のように回転停止期間に環境温度まで漸減してゆく。このように、回転停止期間にケーシング11内を環境温度まで徐々に冷却することにより、完全停止にはケーシング内には反応副生成物等の異物が残存しておらず、補助真空ポンプ2の所期の再起動が確認された。
【0034】
(制御例2)
図7は、本実施形態の制御装置10における停止期間運転モードの制御例2を示す特性図である。
ここでは、反応室4をイオン注入装置とし、シリコン基板に不純物として例えばホウ素(B+)をイオン注入する場合に、本実施形態による真空処理装置を適用する。
具体的には、停止期間運転モードにおけるロータ12の単位時間当りの回転数を、その通常稼動時における値と同一のR1とし、停止期間運転モードに入ったときに、制御装置10が冷却水供給機構18を制御して冷却水の供給を停止し、パージガス供給機構17を制御してパージガス流量を例えば0.5L/minに制御しながら、時間t1(例えば30分間)のロータ12の停止する制御(停止1)、時間t2(例えば1分間)のロータ12の間欠運転(間欠運転1)、時間t3(例えば14分間)のロータ12の停止する制御(停止2)、時間t4(例えば1分間)のロータ12の間欠運転(間欠運転2)、時間t5(例えば14分間)のロータ12の停止する制御(停止3)、時間t6(例えば1分間)のロータ12の間欠運転(間欠運転3)の制御を行った後、ロータが完全停止する。
【0035】
上記のように制御装置で停止期間運転モードを実行することにより、ケーシング11内の温度は図示のように回転停止期間に環境温度まで漸減してゆく。このように、回転停止期間にケーシング11内を環境温度まで徐々に冷却することにより、完全停止にはケーシング内には反応副生成物等の異物が残存しておらず、補助真空ポンプ2の所期の再起動が確認された。
【0036】
なお、上記の制御例1,2は飽くまで一例であり、他のパラメータ制御は勿論可能であり、エッチング装置やイオン注入装置のみならず、各種のCVD装置等、所期の真空度を要するあらゆる処理装置に適用可能である。
【0037】
また、上述した真空処理装置の構成では、ケーシング11の内部に付着した(付着し始めた)反応副生成物を間欠運転によりロータ12のトルクで削り取り、ケーシング11内の環境温度までの適切な温度変化を得るため、回転停止期間、間欠運転の継続時間、ロータ12の単位時間当りの回転数、及びロータ12のトルク等の各種パラメータをユーザが適宜設定する場合について説明したが、制御装置10が各種パラメータを自動的に選択する自動制御の構成も考えられる。例えば以下のように、回転停止期間にケーシング11の内部が所期の温度変化となるように、上記の各種パラメータを自動的に選択し、所期値に制御する。
【0038】
例えば、図8に示すように、補助真空ポンプ2のケーシング11に温度センサ19を設置する。制御装置10では、例えば、所定各種の補助真空ポンプを用いて回転停止期間の所期の温度変化が得られる各種パラメータ及びそれらの値をデータとして備えたデータベース等を利用する。また、このようなデータベースを利用することなく、制御装置10において温度変化と各種パラメータとの関係を予め規定しておき、当該規定に従うようにしても良い。データベースや上記の規定では、補助真空ポンプ2の種類(その真空度等を含む)、反応室4で実行させる処理、反応副生成物の種類や硬度、粘度等の諸性質などに応じて、ケーシング11の回転停止期間における環境温度に達するまでの温度変化が各種パラメータと関係付けられている。制御装置10は、温度センサ19によりケーシング11の温度をモニタしながら、当該温度変化を得る(或いは当該温度変化に近づける)ように、上記の各種パラメータを自動的に設定する。
【0039】
以上説明したように、本実施形態によれば、補助真空ポンプ2の構成変更等をすることなく、また補助真空ポンプ2の機械的劣化を引き起こすことなく、稼働停止後における補助真空ポンプ2の確実な再起動が容易に可能となり、信頼性の高い真空処理が実現する。
【0040】
(第2の実施形態)
図9は、第2の実施形態による真空処理装置の概略構成を示す模式図であり、図10は第2の実施形態による真空処理装置の補助真空ポンプの概略構成を示す模式図である。
本実施形態の真空処理装置は、第1の実施形態の真空処理装置とほぼ同様に構成されているが、制御装置10の機能が、制御部3の機能を含む制御部5に設けられている点で相違する。
【0041】
即ち制御部5は、主真空ポンプ1及び補助真空ポンプ2の単位時間当たりの回転数や稼働時間等が設定自在とされており、当該設定に応じて主真空ポンプ1及び補助真空ポンプ2の稼働を制御する。なお、稼働時間については、特に設定することなく稼働のオン/オフのスイッチング機能のみが制御部3に付加されているようにしても良い。
更に制御部5は、第1の実施形態の制御装置10の機能、即ち回転停止期間内において停止期間運転モードを実行する。
なお、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、制御部5が第1の実施形態で説明した制御装置10と同様に各種パラメータを自動制御する構成も考えられる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態によれば、補助真空ポンプ2の構成変更等をすることなく、また補助真空ポンプ2の機械的劣化を引き起こすことなく、稼働停止後における補助真空ポンプ2の確実な再起動が容易に可能となり、信頼性の高い真空処理が実現する。
【0043】
なお、ここまで説明した実施形態では、間欠動作を、動作と停止を交互に繰り返すものとして説明した。しかしながら、ここで言う停止とは、回転が完全に止まった状態に限定されるものではなく、動作時よりも遅い回転速度で回転する場合を含むものである。
【0044】
以下、本件の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0045】
(付記1)ケーシング内にロータを備えた真空ポンプの制御装置であって、
前記真空ポンプの停止期間における前記ロータの回転動作の状態として、間欠運転を規定する停止期間運転モードを有しており、
前記真空ポンプの停止時において、前記停止期間運転モードに従って前記ロータの回転動作を制御することを特徴とする制御装置。
【0046】
(付記2)前記停止期間運転モードにおける前記間欠運転の継続時間が設定自在とされていることを特徴とする付記1に記載の制御装置。
【0047】
(付記3)前記停止期間運転モードにおける前記間欠運転時の前記ロータの単位時間当りの回転数が設定自在とされていることを特徴とする付記2に記載の制御装置。
【0048】
(付記4)前記停止期間運転モードにおける前記間欠運転時の前記ロータのトルクが設定自在とされていることを特徴とする付記2又は3に記載の制御装置。
【0049】
(付記5)前記停止期間運転モードにおいて、前記回転停止期間に前記ケーシング内に供給するパージガスの流量が設定自在とされていることを特徴とする付記1〜4のいずれか1項に記載の制御装置。
【0050】
(付記6)前記停止期間運転モードにおいて、前記回転停止期間には前記ケーシングへの冷却水の供給を停止させることを特徴とする付記1〜5のいずれか1項に記載の制御装置。
【0051】
(付記7)前記真空ポンプに対して、外付けで設置されるものであることを特徴とする付記1〜6のいずれか1項に記載の制御装置。
【0052】
(付記8)ケーシング内にロータを備えた真空ポンプと、
前記真空ポンプと接続されており、前記真空ポンプの停止期間における前記ロータの回転動作の状態として間欠動作を規定する停止期間運転モードを有し、前記真空ポンプの停止時において、前記停止期間運転モードに従って前記ロータの回転動作を制御する制御装置と
を含むことを特徴とする真空処理装置。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】従来の補助真空ポンプの動作を説明するための模式図である。
【図2】従来の補助真空ポンプの概略構成を示す模式図である。
【図3】本件の制御装置における停止期間運転モードの一例を示す特性図である。
【図4】第1の実施形態による真空処理装置の概略構成を示す模式図である。
【図5】第1の実施形態による真空処理装置の補助真空ポンプの概略構成を示す模式図である。
【図6】本実施形態の制御装置における停止期間運転モードの制御例1を示す特性図である。
【図7】本実施形態の制御装置における停止期間運転モードの制御例2を示す特性図である。
【図8】補助真空ポンプのケーシングに温度センサが設けられた様子を示す模式図である。
【図9】第2の実施形態による真空処理装置の概略構成を示す模式図である。
【図10】第2の実施形態による真空処理装置の補助真空ポンプの概略構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0054】
1 主真空ポンプ
2 補助真空ポンプ
3,5 制御部
4 反応室
10 制御装置
11 ケーシング
12 ロータ
13 伸び側軸受け部
14 固定側軸受け部
15 吸気部
16 排気部
17 パージガス供給機能
18 冷却水供給機能
19 温度センサ
【技術分野】
【0001】
本件は、真空処理を行う際の制御装置及び真空処理装置に関し、特に半導体製造工程で用いられる各種の処理装置の真空処理に適用して好適である。
【背景技術】
【0002】
真空処理装置は、対象となる反応室内を所定の真空度に制御するものであり、その排気系として、例えば、反応室内の圧力を所定の設計圧力まで減圧する主真空ポンプと、主真空ポンプが作動できる圧力領域まで減圧する補助真空ポンプとを備えて構成される。主真空ポンプとしては例えばターボポンプが、補助真空ポンプとしては例えばドライポンプがそれぞれ用いられる。
真空処理装置を半導体製造工程で用いる場合、反応室としては、エッチング装置やイオン注入装置、CVD装置等の真空チャンバが適用される。
【0003】
【特許文献1】特開平4−50492号公報
【特許文献2】特開2005−105829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
真空処理装置は、反応室の真空引きを行うことから、反応室内に存する物質が真空処理装置の排気系に搬送され、当該物質による排気系へのダメージが懸念される場合がある。
特に、真空処理装置の対象となる反応室では、その用途や当該用途に供される材料等に起因して、当該物質として、処理中に反応性の高い反応副生成物が生じるものがあり、このような反応副生成物により、以下のような問題が発生する。
【0005】
真空処理装置の排気系を停止する際は、装置からの遠隔制御信号或いは排気系に付帯する制御スイッチを操作する。例えば補助真空ポンプでは、この操作で内部のロータの回転が停止する。補助真空ポンプを停止させた後、再起動を行うと、多くの補助真空ポンプで再起動ができず、甚だしくはポンプ交換が必要な場合もあるという問題がある。
【0006】
このように、真空ポンプの再起動が不能となるメカニズムは、以下のように考えられる。
反応室における処理中に、当該反応室から補助真空ポンプへ搬送された反応副生成物が、真空系の作動停止とともにポンプ内部に滞留する。この反応副生成物は、時間の経過によりポンプ内部で固着する。この固着した反応副生成物により、運転時にロータとの間で摩擦による抵抗が生じ、ロータ回転動力が不足して稼働不能となる。
【0007】
従来では、真空ポンプ内に滞留する反応副生成物に対する対策として、例えば、真空処理中における真空ポンプのケーシング内の温度を高くし、反応副生成物を活性な状態に維持し、外部へ排出させる方法や、反応副生成物の濃度を低下させるために、不活性ガスを希釈用として、処理中にポンプ内に導入する方法が検討されている。また、特許文献1には、粘着性物質によるロータ回転障害に対してポンプ構造を変更してポンプ稼動中にポンプ内部を洗浄する方法が提案されている。特許文献2には、ポンプ内部のギアオイルの性能劣化を抑止する方法が挙げられている。
【0008】
しかしながら、上記のような従来の各種手法は、いずれも真空ポンプの稼動中における対策である。これらの場合、反応副生成物を除去するために真空ポンプ内の昇温を要するために機械的劣化を惹起したり、特殊なポンプ構造等を要するために装置構成の複雑化を招く等の問題がある。現在のところ、これらのように真空ポンプの稼動中における対策では、稼働停止後に真空ポンプの再起動が不能となるという問題を解決するには至っていない状況にある。
【0009】
本件は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、真空ポンプ等の構成変更等をすることなく、また真空ポンプ等の機械的劣化を引き起こすことなく、稼働停止後における真空ポンプの確実な再起動を容易に可能とし、信頼性の高い真空処理を実現する制御装置及び真空処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本件の制御装置は、ケーシング内にロータを備えた真空ポンプの制御装置であって、前記真空ポンプの停止期間における前記ロータの回転動作の状態として、間欠運転を規定する停止期間運転モードを有しており、前記真空ポンプの停止時において、前記停止期間運転モードに従って前記ロータの回転動作を制御する。
【0011】
本件の真空処理装置は、ケーシング内にロータを備えた真空ポンプと、前記真空ポンプと接続されており、前記真空ポンプの停止期間における前記ロータの回転動作の状態として間欠動作を規定する停止期間運転モードを有し、前記真空ポンプの停止時において、前記停止期間運転モードに従って前記ロータの回転動作を制御する制御装置とを含み構成される。
【発明の効果】
【0012】
本件によれば、真空ポンプ等の構成変更等をすることなく、また真空ポンプ等の機械的劣化を引き起こすことなく、稼働停止後における真空ポンプの確実な再起動が容易に可能となり、信頼性の高い真空処理が実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
―本件を適用した好適な諸実施形態―
上記したように、従来の各種手法は、いずれも真空ポンプの稼動中における対策であり、処理中に搬送される反応副生成物をポンプ内に滞留させないように、外部に排出或いは洗浄除去するという発想のものである。そもそも従来では、真空ポンプの再起動が不能となるという問題意識がないか、或いは極めて希薄であり、反応副生成物の滞留を真空ポンプの再起動不能との関係では議論されていない現況にある。
【0014】
本発明者は、先ず、反応副生成物の滞留による真空ポンプの再起動が不能となる状況について、補助真空ポンプを例に採ってより詳細に考察した。
補助真空ポンプは、図1(a)に示すように、ケーシング101内にロータ102が設けられており、ロータ102はそのロータ軸102aが固定側軸受け部103及び伸び側軸受け部(不図示)によりケーシング101に回転自在に固定されている。ケーシング101内でロータ102が回転することにより、不図示の排気部から排気することで反応室内を所定の真空状態(主真空ポンプが作動できる圧力領域)とする。
【0015】
補助真空ポンプの運転中には、図1(b)に示すように、吸引する気体を圧縮した時に発生する圧縮熱、付加された本体加熱用のヒータ等によりケーシング101内が高温となっている。このような状態によりロータ軸102aが熱膨張し、ロータ軸102aと一体のロータ102も矢印A1の方向へ移動し、間隔Wが拡張する。この拡張された固定側間隔W1の部分に反応副生成物である異物111が生じる。
【0016】
補助真空ポンプの停止した際には、図1(c)に示すように、圧縮による自己発熱と付加された加熱ヒータ等による昇温効果が無くなり、更に、ポンプ自体の部品の劣化を防止するために使われている冷却水の影響で、ポンプ自体の温度が急激に低下する。この時、ケーシング101内では、温度低下により、残留した未反応ガスによって新たに生成された反応副生成物や運転中に生成し残留している反応副生成物である異物111が、ロータ102とケーシング101との間隙に滞留する。一方、熱膨張していたロータ軸102aは、環境温度にあった状態まで収縮が始まり、ロータ軸102aと一体のロータ102もケーシング101内を移動し、ケーシング101との間隙Wが狭くなってゆく。この間隙Wに滞留した異物111は、ロータ102とケーシング101との間で押し潰されて固着してゆき、再起動時におけるロータ102の作動を拘束するに至る。
【0017】
通常、補助真空ポンプは、図2(a)に示すように、ロータ軸102aが固定側軸受け部103及び伸び側軸受け部104によりケーシング101に回転自在に固定されており、ロータ幅が徐々に小さくなるように複数のロータ102が吸気部側から排気部側にかけて直列してなる複数段式とされている。このような複数段式の補助真空ポンプでは、図2(b)に示すように、排気部側に近いロータ102ほど反応副生成物の付着量が多い。
【0018】
本発明者は、上述したような反応副生成物等の異物の生成・滞留の過程を、滞留した反応副生成物等の異物により真空ポンプの再起動が不能となることに関連付けて考察し、真空ポンプの稼働停止時の動作を工夫することで再起動が可能となることを見出した。
本件では、真空ポンプのロータの回転停止期間における回転動作の状態を規定する停止期間運転モードを有し、真空ポンプの稼動停止時において、停止期間運転モードに従ってロータの回転動作を制御する制御装置を提供する。具体的に、停止期間運転モードでは、回転停止期間内において、ロータの1回又は複数回の間欠運転が規定されている。制御装置では、停止期間運転モードにおいて、回転停止期間、間欠運転の継続時間、ロータの単位時間当りの回転数、及びロータのトルクが設定自在とされている。更に制御装置では、ケーシング内に供給するパージガスの流量を回転停止期間に設定自在とされるとともに、回転停止期間にはケーシングへの冷却水の供給を停止させる。
【0019】
回転停止期間、間欠運転の継続時間、ロータの単位時間当りの回転数、ロータのトルク、パージガスの流量を回転停止期間のパラメータとして適宜設定し、更に場合に応じて回転停止期間には冷却水の供給停止を指示することにより、回転停止期間に真空ポンプを徐冷し、昇華物質である反応副生成物等の異物を固着させないように適宜保持して、回転停止期間内に気化状態で排気部から外部へ排出する。更に、パージガス流量の制御によりケーシング内部に残留している未反応ガスと滞留している反応副生成物との排出を促す。更に、ケーシング温度の制御性を高める方法として、回転停止期間では真空ポンプへ供給されている冷却水を遮断するようにしても良い。
【0020】
これらにより、真空ポンプの稼動を停止させた際には、ケーシング内にはロータの作動を拘束する反応副生成物等の異物が滞留しておらず、真空ポンプの確実な再起動が可能となる。ここで、反応副生成物が既にケーシング内部に付着している場合もあるが、その場合でも、間欠運転により反応副生成物が回転中のロータと接触して機械的に削られ、更には反応副生成物がパージガスの流れに乗せられることで、ケーシング外へ排出することが可能である。
【0021】
図3に、本件の制御装置における停止期間運転モードの一例を示す。ここでは、真空ポンプの通常稼動時におけるロータの単位時間当りの回転数をR1とし、停止期間運転モードに入ったときに、パージガス流量をLに制御しながら、当該回転数をR2(R2<R1)に制御する。回転数R2による時間t1のロータの減速運転の制御の後、時間t2のロータの停止する制御(停止1)を行う。続いて、回転数R2による時間t3のロータの間欠運転(間欠運転1)、時間t4のロータの停止する制御(停止2)、回転数R2による時間t5のロータの間欠運転(間欠運転2)、時間t6のロータの停止する制御(停止3)、回転数R2による時間7のロータの間欠運転(間欠運転3)の制御を行い、ロータが完全停止する。なお、図3では、制御装置における停止期間運転モードによる運転制御を示しており、停止期間運転モードによるロータの実際の運転では、停止(間欠運転)と間欠運転(停止)との間には若干の時間を要することは言うまでもない。
【0022】
上記のように制御装置で停止期間運転モードを実行することにより、ケーシング内の温度は図示のように回転停止期間に環境温度まで漸減してゆく。このように、回転停止期間にケーシング内を環境温度まで徐々に冷却することにより、完全停止にはケーシング内には反応副生成物等の異物が残存しておらず、真空ポンプの確実な再起動が可能となる。
【0023】
―本件を適用した具体的な諸実施形態―
以下、本件を適用した具体的な諸実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
(第1の実施形態)
図4は、第1の実施形態による真空処理装置の概略構成を示す模式図であり、図5は第1の実施形態による真空処理装置の補助真空ポンプの概略構成を示す模式図である。
【0025】
本実施形態による真空処理装置は、対象となる反応室4内を所定の真空度に制御するものであり、反応室内の圧力を所定の設計圧力まで減圧する主真空ポンプ1と、主真空ポンプ1が作動できる圧力領域まで減圧する補助真空ポンプ2と、主真空ポンプ1及び補助真空ポンプ2の稼働を制御する制御部3と、例えば制御部3に接続された制御装置10とを備えて構成されている。
【0026】
補助真空ポンプ2は、ケーシング11内に複数のロータ12が設けられた複数段式のものである。ここで、ロータ12はそのロータ軸12aが伸び側軸受け部13及び固定側軸受け部14によりケーシング11に回転自在に固定されており、ロータ幅が徐々に小さくなるように複数のロータ12が吸気部15側から排気部16側にかけて直列している。
補助真空ポンプ2には、吸気部15からケーシング11内へパージガスを導入し、排気部16からパージガスを排出させるパージガス供給機能17と、ケーシング11内を冷却するために当該ケーシング11内に冷却水を流入出させる(冷却水の流入口18aがケーシング11の伸び側軸受け部13側に、流出口18bが固定側軸受け部14側にそれぞれ設けられている。)冷却水供給機能18とが設けられている。
【0027】
制御部3は、主真空ポンプ1及び補助真空ポンプ2の単位時間当たりの回転数や稼働時間等が設定自在とされており、当該設定に応じて主真空ポンプ1及び補助真空ポンプ2の稼働を制御する。なお、稼働時間については、特に設定することなく稼働のオン/オフのスイッチング機能のみが制御部3に付加されているようにしても良い。
【0028】
制御装置10は、例えば制御部3に対して外付けで着脱自在に接続されるものであり、制御部3の補助真空ポンプ2の稼働制御に言わば割り込んで、回転停止期間内において、上記した停止期間運転モードを挿入し、当該停止期間運転モードを実行するものである。
【0029】
停止期間運転モードでは、回転停止期間内において、補助真空ポンプ2のロータ12の1回又は複数回の間欠運転が規定されている。制御装置10では、停止期間運転モードにおいて、回転停止期間、間欠運転の継続時間、ロータ12の単位時間当りの回転数、及びロータ12のトルクが設定自在とされている。一般的にロータのトルクはロータの単位時間当りの回転数と比例関係にはない。そこで例えば、通常稼動時におけるロータ12の単位時間当りの回転数をR1として、R2<R1であり、ロータ12のトルクが極大値(或いは最大値)となるロータ12の単位時間当りの回転数R2を、停止期間運転モードにおけるロータ12の回転数に設定しても良い。
【0030】
制御装置10は、ケーシング11内に供給するパージガス、例えばN2ガスの流量を回転停止期間に設定自在とされており、当該設定に応じてパージガス供給機構17を制御する。更に制御装置10は、回転停止期間にはケーシング11への冷却水の供給を停止させるように、冷却水供給機構18を制御する。
【0031】
以下、制御装置10を用いて(制御部3を通じて)、補助真空ポンプ2を停止期間運転モードにより制御する場合を例示する。
【0032】
(制御例1)
図6は、本実施形態の制御装置10における停止期間運転モードの制御例1を示す特性図である。
ここでは、反応室4をエッチング装置とし、シリコン基板のシリコンをエッチングする場合に、本実施形態による真空処理装置を適用する。
具体的には、停止期間運転モードにおけるロータ12の単位時間当りの回転数を、その通常稼動時における値と同一のR1とし、停止期間運転モードに入ったときに、制御装置10が冷却水供給機構18を制御して冷却水の供給を停止し、パージガス供給機構17を制御してパージガス流量を例えば0.5L/minに制御しながら、時間t1(例えば20分間)のロータ12の停止する制御(停止1)、時間t2(例えば1分間)のロータ12の間欠運転(間欠運転1)、時間t3(例えば14分間)のロータ12の停止する制御(停止2)、時間t4(例えば1分間)のロータ12の間欠運転(間欠運転2)の制御を行った後、ロータが完全停止する。
【0033】
上記のように制御装置で停止期間運転モードを実行することにより、ケーシング11内の温度は図示のように回転停止期間に環境温度まで漸減してゆく。このように、回転停止期間にケーシング11内を環境温度まで徐々に冷却することにより、完全停止にはケーシング内には反応副生成物等の異物が残存しておらず、補助真空ポンプ2の所期の再起動が確認された。
【0034】
(制御例2)
図7は、本実施形態の制御装置10における停止期間運転モードの制御例2を示す特性図である。
ここでは、反応室4をイオン注入装置とし、シリコン基板に不純物として例えばホウ素(B+)をイオン注入する場合に、本実施形態による真空処理装置を適用する。
具体的には、停止期間運転モードにおけるロータ12の単位時間当りの回転数を、その通常稼動時における値と同一のR1とし、停止期間運転モードに入ったときに、制御装置10が冷却水供給機構18を制御して冷却水の供給を停止し、パージガス供給機構17を制御してパージガス流量を例えば0.5L/minに制御しながら、時間t1(例えば30分間)のロータ12の停止する制御(停止1)、時間t2(例えば1分間)のロータ12の間欠運転(間欠運転1)、時間t3(例えば14分間)のロータ12の停止する制御(停止2)、時間t4(例えば1分間)のロータ12の間欠運転(間欠運転2)、時間t5(例えば14分間)のロータ12の停止する制御(停止3)、時間t6(例えば1分間)のロータ12の間欠運転(間欠運転3)の制御を行った後、ロータが完全停止する。
【0035】
上記のように制御装置で停止期間運転モードを実行することにより、ケーシング11内の温度は図示のように回転停止期間に環境温度まで漸減してゆく。このように、回転停止期間にケーシング11内を環境温度まで徐々に冷却することにより、完全停止にはケーシング内には反応副生成物等の異物が残存しておらず、補助真空ポンプ2の所期の再起動が確認された。
【0036】
なお、上記の制御例1,2は飽くまで一例であり、他のパラメータ制御は勿論可能であり、エッチング装置やイオン注入装置のみならず、各種のCVD装置等、所期の真空度を要するあらゆる処理装置に適用可能である。
【0037】
また、上述した真空処理装置の構成では、ケーシング11の内部に付着した(付着し始めた)反応副生成物を間欠運転によりロータ12のトルクで削り取り、ケーシング11内の環境温度までの適切な温度変化を得るため、回転停止期間、間欠運転の継続時間、ロータ12の単位時間当りの回転数、及びロータ12のトルク等の各種パラメータをユーザが適宜設定する場合について説明したが、制御装置10が各種パラメータを自動的に選択する自動制御の構成も考えられる。例えば以下のように、回転停止期間にケーシング11の内部が所期の温度変化となるように、上記の各種パラメータを自動的に選択し、所期値に制御する。
【0038】
例えば、図8に示すように、補助真空ポンプ2のケーシング11に温度センサ19を設置する。制御装置10では、例えば、所定各種の補助真空ポンプを用いて回転停止期間の所期の温度変化が得られる各種パラメータ及びそれらの値をデータとして備えたデータベース等を利用する。また、このようなデータベースを利用することなく、制御装置10において温度変化と各種パラメータとの関係を予め規定しておき、当該規定に従うようにしても良い。データベースや上記の規定では、補助真空ポンプ2の種類(その真空度等を含む)、反応室4で実行させる処理、反応副生成物の種類や硬度、粘度等の諸性質などに応じて、ケーシング11の回転停止期間における環境温度に達するまでの温度変化が各種パラメータと関係付けられている。制御装置10は、温度センサ19によりケーシング11の温度をモニタしながら、当該温度変化を得る(或いは当該温度変化に近づける)ように、上記の各種パラメータを自動的に設定する。
【0039】
以上説明したように、本実施形態によれば、補助真空ポンプ2の構成変更等をすることなく、また補助真空ポンプ2の機械的劣化を引き起こすことなく、稼働停止後における補助真空ポンプ2の確実な再起動が容易に可能となり、信頼性の高い真空処理が実現する。
【0040】
(第2の実施形態)
図9は、第2の実施形態による真空処理装置の概略構成を示す模式図であり、図10は第2の実施形態による真空処理装置の補助真空ポンプの概略構成を示す模式図である。
本実施形態の真空処理装置は、第1の実施形態の真空処理装置とほぼ同様に構成されているが、制御装置10の機能が、制御部3の機能を含む制御部5に設けられている点で相違する。
【0041】
即ち制御部5は、主真空ポンプ1及び補助真空ポンプ2の単位時間当たりの回転数や稼働時間等が設定自在とされており、当該設定に応じて主真空ポンプ1及び補助真空ポンプ2の稼働を制御する。なお、稼働時間については、特に設定することなく稼働のオン/オフのスイッチング機能のみが制御部3に付加されているようにしても良い。
更に制御部5は、第1の実施形態の制御装置10の機能、即ち回転停止期間内において停止期間運転モードを実行する。
なお、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、制御部5が第1の実施形態で説明した制御装置10と同様に各種パラメータを自動制御する構成も考えられる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態によれば、補助真空ポンプ2の構成変更等をすることなく、また補助真空ポンプ2の機械的劣化を引き起こすことなく、稼働停止後における補助真空ポンプ2の確実な再起動が容易に可能となり、信頼性の高い真空処理が実現する。
【0043】
なお、ここまで説明した実施形態では、間欠動作を、動作と停止を交互に繰り返すものとして説明した。しかしながら、ここで言う停止とは、回転が完全に止まった状態に限定されるものではなく、動作時よりも遅い回転速度で回転する場合を含むものである。
【0044】
以下、本件の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0045】
(付記1)ケーシング内にロータを備えた真空ポンプの制御装置であって、
前記真空ポンプの停止期間における前記ロータの回転動作の状態として、間欠運転を規定する停止期間運転モードを有しており、
前記真空ポンプの停止時において、前記停止期間運転モードに従って前記ロータの回転動作を制御することを特徴とする制御装置。
【0046】
(付記2)前記停止期間運転モードにおける前記間欠運転の継続時間が設定自在とされていることを特徴とする付記1に記載の制御装置。
【0047】
(付記3)前記停止期間運転モードにおける前記間欠運転時の前記ロータの単位時間当りの回転数が設定自在とされていることを特徴とする付記2に記載の制御装置。
【0048】
(付記4)前記停止期間運転モードにおける前記間欠運転時の前記ロータのトルクが設定自在とされていることを特徴とする付記2又は3に記載の制御装置。
【0049】
(付記5)前記停止期間運転モードにおいて、前記回転停止期間に前記ケーシング内に供給するパージガスの流量が設定自在とされていることを特徴とする付記1〜4のいずれか1項に記載の制御装置。
【0050】
(付記6)前記停止期間運転モードにおいて、前記回転停止期間には前記ケーシングへの冷却水の供給を停止させることを特徴とする付記1〜5のいずれか1項に記載の制御装置。
【0051】
(付記7)前記真空ポンプに対して、外付けで設置されるものであることを特徴とする付記1〜6のいずれか1項に記載の制御装置。
【0052】
(付記8)ケーシング内にロータを備えた真空ポンプと、
前記真空ポンプと接続されており、前記真空ポンプの停止期間における前記ロータの回転動作の状態として間欠動作を規定する停止期間運転モードを有し、前記真空ポンプの停止時において、前記停止期間運転モードに従って前記ロータの回転動作を制御する制御装置と
を含むことを特徴とする真空処理装置。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】従来の補助真空ポンプの動作を説明するための模式図である。
【図2】従来の補助真空ポンプの概略構成を示す模式図である。
【図3】本件の制御装置における停止期間運転モードの一例を示す特性図である。
【図4】第1の実施形態による真空処理装置の概略構成を示す模式図である。
【図5】第1の実施形態による真空処理装置の補助真空ポンプの概略構成を示す模式図である。
【図6】本実施形態の制御装置における停止期間運転モードの制御例1を示す特性図である。
【図7】本実施形態の制御装置における停止期間運転モードの制御例2を示す特性図である。
【図8】補助真空ポンプのケーシングに温度センサが設けられた様子を示す模式図である。
【図9】第2の実施形態による真空処理装置の概略構成を示す模式図である。
【図10】第2の実施形態による真空処理装置の補助真空ポンプの概略構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0054】
1 主真空ポンプ
2 補助真空ポンプ
3,5 制御部
4 反応室
10 制御装置
11 ケーシング
12 ロータ
13 伸び側軸受け部
14 固定側軸受け部
15 吸気部
16 排気部
17 パージガス供給機能
18 冷却水供給機能
19 温度センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内にロータを備えた真空ポンプの制御装置であって、
前記真空ポンプの停止期間における前記ロータの回転動作の状態として、間欠運転を規定する停止期間運転モードを有しており、
前記真空ポンプの停止時において、前記停止期間運転モードに従って前記ロータの回転動作を制御することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記停止期間運転モードにおいて、前記回転停止期間には前記ケーシングへの冷却水の供給を停止させることを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
ケーシング内にロータを備えた真空ポンプと、
前記真空ポンプと接続されており、前記真空ポンプの停止期間における前記ロータの回転動作の状態として間欠動作を規定する停止期間運転モードを有し、前記真空ポンプの停止時において、前記停止期間運転モードに従って前記ロータの回転動作を制御する制御装置と
を含むことを特徴とする真空処理装置。
【請求項1】
ケーシング内にロータを備えた真空ポンプの制御装置であって、
前記真空ポンプの停止期間における前記ロータの回転動作の状態として、間欠運転を規定する停止期間運転モードを有しており、
前記真空ポンプの停止時において、前記停止期間運転モードに従って前記ロータの回転動作を制御することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記停止期間運転モードにおいて、前記回転停止期間には前記ケーシングへの冷却水の供給を停止させることを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
ケーシング内にロータを備えた真空ポンプと、
前記真空ポンプと接続されており、前記真空ポンプの停止期間における前記ロータの回転動作の状態として間欠動作を規定する停止期間運転モードを有し、前記真空ポンプの停止時において、前記停止期間運転モードに従って前記ロータの回転動作を制御する制御装置と
を含むことを特徴とする真空処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2009−203823(P2009−203823A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−44766(P2008−44766)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】
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