説明

制御装置

【課題】所望の発電量を確保することが容易な制御装置を実現する。
【解決手段】第一制御モードと、第二制御モードと、第一係合装置C1の直結係合状態且つ第二係合装置C2のスリップ係合状態で回転電機12に発電を行わせる第三制御モードと、第一係合装置C1のスリップ係合状態且つ第二係合装置C2の直結係合状態で回転電機12に発電を行わせる第四制御モードと、を切り替えるモード制御部52と、第二係合装置C2の温度及び発熱量の少なくとも一方を選択対象量として取得する対象量取得部51と、を備え、モード制御部52は、第一制御モードから第二制御モード及び第二制御モードから第一制御モードの少なくとも一方のモード移行に際し、選択対象量が予め定められた選択基準値未満である場合は第三制御モードを経てモード移行を実行し、選択対象量が選択基準値以上である場合には第四制御モードを経てモード移行を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関と車輪とを結ぶ動力伝達経路に、内燃機関の側から順に、第一係合装置、回転電機、及び第二係合装置、が設けられた車両用駆動装置を制御対象とする制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような制御装置の従来技術として、例えば下記の特許文献1に記載された技術がある。この背景技術の欄の説明では、〔〕内に特許文献1における部材名を引用する。この制御装置は、第一係合装置〔第1クラッチCL1〕の直結係合状態且つ第二係合装置〔第2クラッチCL2〕のスリップ係合状態で回転電機〔モータジェネレータMG〕に発電を行わせるWSC積極的発電モードを実現可能に構成されている。このWSC積極的発電モードでは、内燃機関〔エンジンE〕の駆動力を用いて車両を走行させつつ、当該駆動力を用いて回転電機に発電を行わせることができる。
【0003】
しかしながら、WSC積極的発電モードでは第二係合装置のみがスリップ係合状態とされるため、第二係合装置によって係合される2つの係合部材の間の回転速度差が比較的大きくなりやすい。そのため、特許文献1の構成では、第二係合装置の温度によってはWSC積極的発電モードの使用が制限され、所望の発電量(電力量)を確保することができないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−7094号公報(段落0056〜0058、図6等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、所望の発電量を確保することが容易な制御装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る、内燃機関と車輪とを結ぶ動力伝達経路に、前記内燃機関の側から順に、第一係合装置、回転電機、及び第二係合装置、が設けられた車両用駆動装置を制御対象とする制御装置の特徴構成は、前記第一係合装置及び前記第二係合装置の双方のスリップ係合状態で前記回転電機に発電を行わせる第一制御モードと、前記第一係合装置及び前記第二係合装置の双方の直結係合状態で前記回転電機に発電を行わせる第二制御モードと、前記第一係合装置の直結係合状態且つ前記第二係合装置のスリップ係合状態で前記回転電機に発電を行わせる第三制御モードと、前記第一係合装置のスリップ係合状態且つ前記第二係合装置の直結係合状態で前記回転電機に発電を行わせる第四制御モードと、を切り替えるモード制御部と、前記第二係合装置の温度及び発熱量の少なくとも一方を選択対象量として取得する対象量取得部と、を備え、前記モード制御部は、前記第一制御モードから前記第二制御モード及び前記第二制御モードから前記第一制御モードの少なくとも一方のモード移行に際し、前記選択対象量が予め定められた選択基準値未満である場合は前記第三制御モードを経て前記モード移行を実行し、前記選択対象量が前記選択基準値以上である場合には前記第四制御モードを経て前記モード移行を実行する点にある。
【0007】
なお、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
また、「直結係合状態」は、対象となる係合装置によって係合される2つの係合部材が一体回転する状態で係合されている状態を表し、「スリップ係合状態」は、当該2つの係合部材が回転速度差を有する状態で駆動力を伝達可能に係合されている状態を表す。
【0008】
上記の特徴構成によれば、第一係合装置及び第二係合装置の双方のスリップ係合状態で回転電機に発電を行わせる第一制御モードを実現できるため、係合対象の2つの係合部材の間の回転速度差を、第一係合装置及び第二係合装置の双方について小さく抑えることができ、第一係合装置及び第二係合装置の何れについても発熱量を抑制することができる。よって、回転電機に発電を行わせる第一制御モードを比較的多くの状況下で実現でき、所望の発電量を確保するのが容易となる。
そして、上記の特徴構成によれば、第一制御モードと第二制御モードとの間の少なくとも何れか一方向側のモード移行に際し、選択対象量と選択基準値との間の大小関係に基づき第二係合装置の発熱状態を推定して、経由するモードを第三制御モード及び第四制御モードの中から適切に選択することができる。すなわち、第二係合装置の温度上昇が許容される場合には、内燃機関のトルクを直接回転電機に伝達できる第三制御モードを選択してエネルギ効率の向上を図り、そうでない場合には、第四制御モードを選択して第二係合装置の発熱量を抑制することができる。これにより、第二係合装置を保護しつつ、所望の発電量を確保することを容易とする第一制御モードへの移行又は当該第一制御モードから他モードへの移行を適切に実行することができる。
【0009】
ここで、前記対象量取得部は、前記第一係合装置の温度及び発熱量の少なくとも一方を第一判定対象量として取得するとともに、前記第二係合装置の温度及び発熱量の少なくとも一方を第二判定対象量として取得し、前記第一制御モードにおいて、前記第一判定対象量が予め定められた第一判定基準値未満であり、且つ前記第二判定対象量が予め定められた第二判定基準値未満である場合には、前記車輪を駆動するために要求される要求駆動力が当該車輪に伝達されるように前記要求駆動力に応じた制御を実行し、前記第一制御モードにおいて、前記第一判定対象量が前記第一判定基準値以上であり、且つ前記第二判定対象量が前記第二判定基準値以上である場合には、前記車輪に伝達される駆動力が前記要求駆動力より小さくなるように、前記内燃機関の出力トルクを低下させる制御を実行すると好適である。
【0010】
この構成によれば、第一判定対象量が第一判定基準値以上であるとともに第二判定対象量が第二判定基準値以上である場合に、内燃機関の出力トルクを低下させることで第一係合装置及び第二係合装置の双方について伝達トルクを低下させることができる。従って、双方の係合装置の発熱量を低減して温度上昇を抑制することができる。
【0011】
また、前記対象量取得部は、前記第一係合装置の温度及び発熱量の少なくとも一方を第一判定対象量として取得し、前記第一制御モードにおいて、前記第一判定対象量が予め定められた第三判定基準値以上となった場合には、前記回転電機の出力トルクを低下させることで当該回転電機による発電量を低下させるとともに、前記回転電機の出力トルクの低下分に応じて前記内燃機関の出力トルクを低下させる制御を実行すると好適である。
【0012】
この構成によれば、第一判定対象量が第三判定基準値以上となった場合に、内燃機関の出力トルクの低下分に応じて第一係合装置の伝達トルクを低下させることができるため、第一係合装置の発熱量を低減して温度上昇を抑制することができる。この際、回転電機の出力トルクの低下分に応じて内燃機関の出力トルクが低下されるため、車輪に伝達される駆動力を維持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る制御装置及びその制御対象である車両用駆動装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る第一モード移行制御の処理手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態に係る第二モード移行制御の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態に係る第一トルク補正制御の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態に係る第二トルク補正制御の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態に係る第一モード移行の第一の具体例を示すタイムチャートである。
【図7】本発明の実施形態に係る第一モード移行の第二の具体例を示すタイムチャートである。
【図8】本発明の実施形態に係る第一モード移行の第三の具体例を示すタイムチャートである。
【図9】本発明の実施形態に係る第二モード移行の第一の具体例を示すタイムチャートである。
【図10】本発明の実施形態に係る第二モード移行の第二の具体例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る制御装置の実施形態について、図面を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態に係る制御装置40は、内燃機関11及び回転電機12の双方を備えた車両6(ハイブリッド車両)を駆動するための駆動装置1を制御対象とする、車両用駆動装置用の制御装置である。以下、本実施形態に係る駆動装置1及び制御装置40について、順に説明する。
【0015】
なお、以下の説明では、「駆動連結」は、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を意味し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が一又は二以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いている。このような伝動部材には、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材(例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等)が含まれる。ここで、「駆動力」は「トルク」と同義で用いている。
【0016】
また、各係合装置についての「係合圧」は、例えば油圧サーボ機構等により当該係合装置によって係合される2つの係合部材を相互に押し付け合う圧力を表す。また、「解放圧」は、当該係合装置が定常的に解放状態(係合装置によって係合される2つの係合部材の間で回転及び駆動力が伝達されない状態)となる圧を表す。「解放境界圧」は、当該係合装置が解放状態とスリップ係合状態との境界のスリップ境界状態となる圧(解放側スリップ境界圧)を表す。「係合境界圧」は、当該係合装置がスリップ係合状態と直結係合状態との境界のスリップ境界状態となる圧(係合側スリップ境界圧)を表す。「完全係合圧」は、当該係合装置が定常的に直結係合状態となる圧を表す。
【0017】
1.駆動装置の構成
本実施形態に係る制御装置40による制御対象となる駆動装置1は、いわゆる1モータパラレル方式のハイブリッド車両用の駆動装置として構成されている。図1に示すように、この駆動装置1は、内燃機関11と車輪15とを結ぶ動力伝達経路に、内燃機関11の側から順に、第一クラッチC1、回転電機12、及び第二クラッチC2(変速機構13)を備えている。すなわち、内燃機関11と車輪15とを結ぶ動力伝達経路に回転電機12が設けられていると共に、内燃機関11と回転電機12との間に第一クラッチC1が設けられ、回転電機12と車輪15との間に第二クラッチC2(変速機構13)が設けられている。
【0018】
内燃機関11は、機関内部における燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す原動機であり、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等を用いることができる。内燃機関11は、入力軸Iに駆動連結されている。本例では、内燃機関11のクランクシャフト等の内燃機関出力軸と入力軸Iとが一体回転する。
【0019】
第一クラッチC1は、内燃機関11と回転電機12との間の駆動連結(駆動力の伝達)を解除可能に設けられている。第一クラッチC1は、入力軸Iと中間軸M及び出力軸Oとを選択的に駆動連結(言い換えれば内燃機関11と回転電機12及び車輪15とを選択的に駆動連結)する摩擦係合装置であり、車輪15から内燃機関11を切り離す内燃機関切離用クラッチとして機能する。第一クラッチC1としては、湿式多板クラッチや乾式単板クラッチ等を用いることができる。本実施形態では、第一クラッチC1が本発明における「第一係合装置」に相当する。
【0020】
回転電機12は、ロータとステータとを有して構成され(図示せず)、回転電機12のロータが中間軸Mに駆動連結されている。本例では、中間軸Mが回転電機12のロータ軸として機能し、ロータと中間軸Mとが一体回転する。回転電機12は、インバータ装置27を介してバッテリやキャパシタ等の蓄電装置28に電気的に接続されている。回転電機12は、蓄電装置28から電力の供給を受けて力行し、或いは、内燃機関11の出力トルク(内燃機関トルクTe)や車両6の慣性力により発電した電力を蓄電装置28に供給して蓄電する。ロータ軸としての中間軸Mは、変速機構13の入力軸(変速入力軸)となっている。
【0021】
変速機構13は、変速比の異なる複数の変速段を切替可能に有する自動有段変速機構である。変速機構13は、これら複数の変速段を形成するため、遊星歯車機構等の歯車機構と、この歯車機構の回転要素の係合又は解放を行うクラッチやブレーキ等の複数の係合装置(本例では摩擦係合装置)とを備えている。これら複数の係合装置としては、湿式多板クラッチ等を用いることができる。また本実施形態では、これら複数の係合装置には第二クラッチC2が含まれ、これ以外にも他のクラッチ、ブレーキ等が含まれている。本実施形態では、第二クラッチC2が本発明における「第二係合装置」に相当する。
【0022】
変速機構13は、変速用の複数の係合装置の係合状態に応じて形成される各変速段についてそれぞれ設定された変速比に基づいて、中間軸M(変速入力軸)の回転速度を変速すると共にトルクを変換して、変速機構13の出力軸(変速出力軸)としての出力軸Oに伝達する。なお、「変速比」は、出力軸O(変速出力軸)の回転速度に対する中間軸M(変速入力軸)の回転速度の比である。変速機構13から出力軸Oに伝達されたトルクは、出力用差動歯車装置14を介して左右2つの車輪15に分配されて伝達される。これにより、駆動装置1は、内燃機関11及び回転電機12の一方又は双方のトルクを車輪15に伝達して車両6を走行させることができる。
【0023】
本実施形態では、駆動装置1は、中間軸Mに駆動連結されたオイルポンプ(図示せず)を備えている。オイルポンプは、回転電機12及び内燃機関11の一方又は双方の駆動力により駆動されて作動し、油圧を発生させる。オイルポンプからの油は、油圧制御装置25により所定油圧に調整されてから、第一クラッチC1や第二クラッチC2等に供給される。このオイルポンプとは別に、専用の駆動モータを有するオイルポンプを備えた構成としても良い。
【0024】
図1に示すように、車両6には、入力軸回転速度センサSe1、中間軸回転速度センサSe2、及び出力軸回転速度センサSe3が備えられている。入力軸回転速度センサSe1は、入力軸Iの回転速度を検出するセンサである。入力軸回転速度センサSe1により検出される入力軸Iの回転速度は、内燃機関11の回転速度に等しい。
【0025】
中間軸回転速度センサSe2は、中間軸Mの回転速度を検出するセンサである。中間軸Mの回転速度は、回転電機12のロータの回転速度に等しく、また、変速入力軸の回転速度にも等しい。そのため、中間軸回転速度センサSe2は、例えば、回転電機12に備えられる回転センサ(レゾルバ等)や、変速機構13に備えられる変速入力センサ(パルス型検出器等)を用いることができる。
【0026】
出力軸回転速度センサSe3は、出力軸Oの回転速度を検出するセンサである。出力軸Oの回転速度は、変速出力軸の回転速度に等しいため、出力軸回転速度センサSe3は、例えば、変速機構13に備えられる変速出力センサ(パルス型検出器等)を用いることができる。制御装置40は、出力軸回転速度センサSe3により検出される出力軸Oの回転速度に基づいて、車両6の走行速度である車速を導出する。
【0027】
2.制御装置の構成
図1に示すように、本実施形態に係る制御装置40は、走行モード決定部41、要求駆動力決定部42、回転電機制御部43、第一クラッチ動作制御部44、変速機構動作制御部45、対象量取得部51、モード制御部52、対象量判定部53、及びトルク補正制御部54を備えている。これらの各機能部は、互いに情報の受け渡しを行うことができるように構成されている。
【0028】
制御装置40は、CPU等の演算処理装置を中核として備えると共に、RAMやROM等の記憶装置等を有して構成される。そして、ROM等に記憶されたソフトウェア(プログラム)又は別途設けられた演算回路等のハードウェア、或いはそれらの両方により、制御装置40の各機能部が構成されている。なお、プログラムにより構成される機能部については、制御装置3が備える演算処理装置が、当該プログラムを実行するコンピュータとして動作する。
【0029】
図1に示すように、車両6には、内燃機関11の動作制御を行う内燃機関制御装置30が備えられている。内燃機関制御装置30と制御装置40とは、互いに情報の受け渡しを行うことができるように構成されている。そして、内燃機関制御装置30は、制御装置40からの指令に基づき、内燃機関11の動作点(内燃機関トルクTe及び回転速度)を制御する。また、制御装置40は、上述した入力軸回転速度センサSe1、中間軸回転速度センサSe2、及び出力軸回転速度センサSe3による検出結果の情報を取得可能に構成されているとともに、アクセルペダル(図示せず)の操作量(又はアクセル開度)を検出するセンサ、ブレーキペダル(図示せず)の操作量を検出するセンサ、蓄電装置26の状態(蓄電量や温度等)を検出するセンサ等からの情報も取得可能に構成されている。
【0030】
2−1.走行モード決定部の構成
走行モード決定部41は、車両6の走行モードを決定する機能部である。走行モード決定部41は、例えば車速やアクセル開度、蓄電装置28の蓄電量等に基づいて、所定のマップ(モード選択マップ)を参照する等して駆動装置1が実現すべき走行モードを決定する。
【0031】
本実施形態では、走行モード決定部41が選択可能な走行モードには、電動走行モード及びパラレル走行モードが含まれる。電動走行モードでは、第一クラッチC1の解放状態且つ第二クラッチC2の直結係合状態で、基本的に、回転電機12が力行してその出力トルク(回転電機トルクTm)のみにより車両6を走行させる。パラレル走行モードでは、第一クラッチC1及び第二クラッチC2の双方の直結係合状態、第一クラッチC1及び第二クラッチC2の一方のスリップ係合状態且つ他方の直結係合状態、又は第一クラッチC1及び第二クラッチC2の双方のスリップ係合状態で、基本的に、少なくとも内燃機関トルクTeにより車両6を走行させる。
【0032】
パラレル走行モードには、回転電機12が正方向(力行方向)のトルクを出力して内燃機関トルクTeによる駆動力を補助する走行モードに加えて、回転電機12が負方向(発電方向)のトルク(回生トルク)を出力して内燃機関トルクTeの一部により発電する走行モードが含まれる。
【0033】
具体的には、内燃機関トルクTeを利用して回転電機12に発電させつつ車両6を走行させるパラレル走行モード(発電モード)には、第一制御モード、第二制御モード、第三制御モード、及び第四制御モードが含まれる。第一制御モードでは、第一クラッチC1及び第二クラッチC2の双方のスリップ係合状態で回転電機12が発電する。第二制御モードでは、第一クラッチC1及び第二クラッチC2の双方の直結係合状態で回転電機12が発電する。第三制御モードでは、第一クラッチC1の直結係合状態且つ第二クラッチC2のスリップ係合状態で回転電機12が発電する。第四制御モードでは、第一クラッチC1のスリップ係合状態且つ第二クラッチC2の直結係合状態で回転電機12が発電する。
【0034】
2−2.要求駆動力決定部の構成
要求駆動力決定部42は、車両6を走行させるべく車輪15を駆動するために要求される要求駆動力Tdを決定する機能部である。要求駆動力決定部42は、車速とアクセル開度とに基づいて、所定のマップ(要求駆動力決定マップ)を参照する等して要求駆動力Tdを決定する。このようにして決定される要求駆動力Tdは、基本的に、運転者の人為的な操作(例えばアクセル操作等)に応じた挙動を実現するために必要な駆動力と等しくなる。決定された要求駆動力Tdに基づき、内燃機関11及び回転電機12のそれぞれが受け持つ分担駆動力が、各分担駆動力の和が要求駆動力Tdに等しくなるように決定される。そして、決定された分担駆動力が車輪15に伝達されるように、内燃機関制御装置30による内燃機関11の制御、及び回転電機制御部43による回転電機12の制御が実行される。これにより、車輪15には基本的に、要求駆動力Tdと同じ大きさの駆動力が伝達される。
【0035】
なお、回転電機12に発電を行わせる必要がある場合には、回転電機トルクTmは、要求される発電量を発電するために必要となる負トルク(以下、「要求回生トルク」という。)に設定される。この場合、回転電機12についての分担駆動力が負の値となるため、内燃機関11についての分担駆動力は、要求駆動力Tdよりも大きな値となる。
【0036】
2−3.回転電機制御部の構成
回転電機制御部43は、回転電機12の動作制御を行う機能部である。回転電機制御部43は、インバータ装置27を制御することで回転電機12の動作点(回転電機トルクTm及び回転速度)を制御する。本実施形態では、回転電機制御部43は、車両6の走行状態に応じて回転電機12のトルク制御と回転速度制御とを切り替えことが可能である。ここで、トルク制御は、制御目標として目標トルクを設定し、回転電機トルクTmをその目標トルクに追従させる(近づける)制御である。また、回転速度制御は、制御目標として目標回転速度を設定し、回転電機トルクTmを制御して回転電機12の回転速度をその目標回転速度に追従させる制御である。
【0037】
2−4.第一クラッチ動作制御部の構成
第一クラッチ動作制御部44は、第一クラッチC1の動作制御を行う機能部である。ここで、第一クラッチ動作制御部44は、油圧制御装置25を介して第一クラッチC1に供給される油圧を制御し、第一クラッチC1の係合圧を制御することにより、当該第一クラッチC1の動作制御を行う。具体的には、係合圧を解放境界圧未満(例えば解放圧)とすることにより第一クラッチC1を解放状態とし、係合圧を係合境界圧以上(例えば完全係合圧)とすることにより第一クラッチC1を直結係合状態とする。また、係合圧を解放境界圧以上係合境界圧未満のスリップ係合圧とすることにより、第一クラッチC1をスリップ係合状態とする。
【0038】
第一クラッチC1のスリップ係合状態では、入力軸Iと中間軸Mとが相対回転する状態で、回転速度が高い方の回転軸から低い方の回転軸に向かって駆動力が伝達される。なお、第一クラッチC1の直結係合状態又はスリップ係合状態で伝達可能なトルクの最大値(伝達トルク容量)は、第一クラッチC1のその時点での係合圧に応じて決まる。そして、第一クラッチC1が伝達するトルク(伝達トルク)の大きさは、スリップ係合状態では伝達トルク容量に等しくなる。本実施形態では、第一クラッチC1に対する油圧指令に応じて、比例ソレノイド等で第一クラッチC1への供給油量及び供給油圧の大きさを連続的に制御することにより、係合圧及び伝達トルク容量の増減が連続的に制御可能である。
【0039】
本実施形態では、第一クラッチ動作制御部44は、車両6の走行状態に応じて第一クラッチC1のトルク制御と回転速度制御とを切り替えることが可能である。ここで、トルク制御は、制御目標として目標伝達トルク容量を設定し、第一クラッチC1の伝達トルク容量をその目標伝達トルク容量に追従させる制御である。また、回転速度制御は、制御目標として、目標差回転速度、入力側回転部材(入力側係合部材)の回転速度、或いは出力側回転部材(出力側係合部材)の回転速度を設定し、第一クラッチC1の係合圧(油圧)や伝達トルク容量を制御して、第一クラッチC1によって係合される2つの係合部材の間の回転速度差(本例では入力軸Iと中間軸Mとの間の回転速度差)、入力側回転部材(本例では入力軸I)の回転速度、或いは出力側回転部材(本例では中間軸M)の回転速度を、その制御目標に追従させる制御である。
【0040】
2−5.変速機構動作制御部の構成
変速機構動作制御部45は、変速機構13の動作制御を行う機能部である。変速機構動作制御部45は、アクセル開度及び車速に基づいて、所定のマップ(変速マップ)を参照する等して目標変速段を決定する。そして、変速機構動作制御部45は、決定された目標変速段に基づいて、変速機構13内に備えられる所定のクラッチ及びブレーキ等への供給油圧を制御して目標変速段を形成する。
【0041】
変速機構13に備えられる第二クラッチC2は、本例では、同じく変速機構13に備えられるブレーキと協働して、最大変速比の変速段である第1速段を形成する。変速機構動作制御部45のうち、第二クラッチC2の動作制御を行う機能部を、ここでは特に第二クラッチ動作制御部45aとする。第二クラッチ動作制御部45aは、油圧制御装置25を介して第二クラッチC2に供給される油圧を制御し、第二クラッチC2の係合圧を制御することにより、当該第二クラッチC2の動作制御を行う。第二クラッチ動作制御部45aによる第二クラッチC2の動作制御に関しては、制御対象及びそれに付随する事項が一部異なるだけで、第一クラッチ動作制御部44による第一クラッチC1の動作制御と基本的には同様である。
【0042】
2−6.対象量取得部の構成
対象量取得部51は、係合装置の発熱状態に関する物理量である対象量Bを取得する機能部である。具体的には、対象量取得部51は、第二クラッチC2の温度及び発熱量の少なくとも一方を選択対象量B0として取得し、本実施形態では更に、対象量取得部51は、第一クラッチC1の温度及び発熱量の少なくとも一方を第一判定対象量B1として取得するとともに、第二クラッチC2の温度及び発熱量の少なくとも一方を第二判定対象量B2として取得する。なお、選択対象量B0と第二判定対象量B2とは、互いに同一の物理量としても互い異なる物理量としても良い。
【0043】
第一クラッチC1や第二クラッチC2の温度は、温度センサ(図示せず)の検出結果に基づき取得される構成とすることができる。また、第一クラッチC1や第二クラッチC2のスリップ係合状態での発熱量は、当該クラッチによって係合される2つの係合部材の間の回転速度差と、当該クラッチの伝達トルク容量とに基づき(例えば回転速度差と伝達トルク容量との積に基づき)取得される構成とすることができる。なお、クラッチの温度が、当該クラッチの発熱量に基づき(例えば発熱量の積算値に基づき)取得される構成とすることもできる。
【0044】
2−7.対象量判定部の構成
対象量判定部53は、対象量取得部51が取得した対象量Bを、当該対象量Bについての基準値D(判定基準値)と比較して大小関係を判定する機能部である。本実施形態では、対象量取得部51は、対象量Bとして選択対象量B0、第一判定対象量B1、及び第二判定対象量B2の3つを取得するため、対象量判定部53はこれら3つの対象量Bのそれぞれについて、対応する基準値Dとの間で大小関係の判定を行う。
【0045】
具体的には、対象量判定部53は、選択対象量B0について、予め定められた当該選択対象量B0についての基準値Dである選択基準値D0との間で大小関係の判定を実行する。また、対象量判定部53は、第一判定対象量B1について、予め定められた当該第一判定対象量B1についての基準値Dである第一判定基準値D1との間で大小関係の判定を実行するとともに、第二判定対象量B2について、予め定められた当該第二判定対象量B2についての基準値Dである第二判定基準値D2との間で大小関係の判定を実行する。本実施形態では、更に、対象量判定部53は、第一判定対象量B1について、予め定められた当該第一判定対象量B1についての基準値Dである第三判定基準値D3との間でも大小関係の判定を実行する。
【0046】
選択基準値D0及び第二判定基準値D2は、例えば第二クラッチC2の耐熱性等に応じて設定され、互いに同一の値とすることも可能である。同様に、第一判定基準値D1及び第三判定基準値D3は、例えば第一クラッチC1の耐熱性等に応じて設定され、互いに同一の値とすることも可能である。後に説明する図8の具体例では、全ての対象量B(B0,B1,B2)が温度とされるとともに全ての基準値D(D0,D1,D2,D3)が互いに異なる値とされている。具体的には、第二判定基準値D2が選択基準値D0より大きい値に設定されているとともに、第三判定基準値D3が第一判定基準値D1より大きい値に設定されており、小さい側から、選択基準値D0、第一判定基準値D1、第二判定基準値D2、第三判定基準値D3の順(D0<D1<D2<D3)となっている。
【0047】
なお、対象量Bが温度及び発熱量の双方とされる場合には、当該対象量Bについての基準値Dは、温度及び発熱量のそれぞれに対して設定される。この場合、温度及び発熱量の双方が対応する基準値D以上である場合に対象量Bが基準値D以上であると判定される構成とすることも、温度及び発熱量の少なくとも一方が対応する基準値D以上である場合に対象量Bが基準値D以上であると判定される構成とすることもできる。
【0048】
2−8.モード制御部の構成
モード制御部52は、第一クラッチ動作制御部44や第二クラッチ動作制御部45a等の他の機能部を協調制御することで、走行モード決定部41が決定する各走行モードを切り替えて当該各モードを実現する機能部である。上記のように、走行モード決定部41が選択可能な走行モードには、第一制御モード、第二制御モード、第三制御モード、及び第四制御モードが含まれるため、モード制御部52は、第一制御モードと、第二制御モードと、第三制御モードと、第四制御モードと、を切り替えることができる。
【0049】
モード制御部52が実行する制御には、第一制御モードから第二制御モードへのモード移行である第一モード移行(後に説明する図6〜図8の具体例参照)を実行するための制御(第一モード移行制御)と、第二制御モードから第一制御モードへのモード移行である第二モード移行(後に説明する図9、図10の具体例参照)を実行するための制御(第二モード移行制御)とが含まれる。
【0050】
そして、モード制御部52は、第一モード移行及び第二モード移行の少なくとも一方(本例では双方)のモード移行に際し、選択対象量B0が選択基準値D0未満である場合は第三制御モードを経てモード移行を実行し、選択対象量B0が選択基準値D0以上である場合には第四制御モードを経てモード移行を実行する。本実施形態では、第一モード移行制御及び第二モード移行制御の実行開始時の選択対象量B0に基づき、第三制御モード及び第四制御モードの何れの制御モードを経由してモード移行を実行するかを決定する。
【0051】
2−8−1.第一モード移行制御の処理手順
モード制御部52を中核として実行される第一モード移行制御の処理手順について、図2のフローチャートを参照して説明する。なお、第一モード移行制御の実行開始時には第一制御モードが実現されているため、第一クラッチC1及び第二クラッチC2の双方はスリップ係合状態にある。
【0052】
第一クラッチC1及び第二クラッチC2の双方がスリップ係合状態とされる第一制御モードから、第一クラッチC1及び第二クラッチC2の双方が直結係合状態とされる第二制御モードへの移行(第一モード移行)の実行が決定されると(ステップ#01:Yes)、対象量判定部53により選択対象量B0と選択基準値D0との間の大小関係の判定が実行される(ステップ#02)。そして、対象量判定部53により選択対象量B0が選択基準値D0未満であると判定されると(ステップ02:Yes)、第一クラッチC1を直結係合状態へと移行させるための制御が開始される(ステップ#03)。第一クラッチC1が直結係合状態となるまでの間は(ステップ#04:No)、この移行制御が継続して実行され(ステップ#03)、第一クラッチC1が直結係合状態となると(ステップ#04:Yes)、第一制御モードから第三制御モードへの移行が完了する。
【0053】
第三制御モードへの移行が完了した後、第二クラッチC2を直結係合状態へと移行させるための制御が開始される(ステップ#05)。第二クラッチC2が直結係合状態となるまでの間は(ステップ#06:No)、この移行制御が継続して実行され(ステップ#05)、第二クラッチC2が直結係合状態となると(ステップ#06:Yes)、第三制御モードから第二制御モードへの移行が完了し、第一モード移行制御は終了する。
【0054】
一方、対象量判定部53により選択対象量B0が選択基準値D0以上であると判定された場合には(ステップ02:No)、図2に示すように、上述したステップ#03〜ステップ#06の各処理において第一クラッチC1と第二クラッチC2とを入れ替えた処理(ステップ#07〜ステップ#10)が順次実行され、第四制御モードを経由する第一制御モードから第二制御モードへの移行が行われる。
【0055】
このように、第一モード移行制御では、第一クラッチC1のスリップ係合状態から直結係合状態への移行と、第二クラッチC2のスリップ係合状態から直結係合状態への移行とが実行されるが、選択対象量B0が選択基準値D0未満である場合には、第一クラッチC1、第二クラッチC2の順に、直結係合状態への移行が実行され、選択対象量B0が選択基準値D0以上である場合には、第二クラッチC2、第一クラッチC1の順に、直結係合状態への移行が実行される。よって、第一モード移行制御の実行時における第一クラッチC1がスリップ係合状態とされる時間(以下「スリップ時間」という。)は、選択対象量B0が選択基準値D0未満である場合には第二クラッチC2のスリップ時間より短くなり、選択対象量B0が選択基準値D0以上である場合には第二クラッチC2のスリップ時間より長くなる。
【0056】
2−8−2.第二モード移行制御の処理手順
次に、モード制御部52を中核として実行される第二モード移行制御の処理手順について、図3のフローチャートを参照して説明する。なお、第二モード移行制御の実行開始時には第二制御モードが実現されているため、第一クラッチC1及び第二クラッチC2の双方は直結係合状態にある。
【0057】
第一クラッチC1及び第二クラッチC2の双方が直結係合状態とされる第二制御モードから、第一クラッチC1及び第二クラッチC2の双方がスリップ係合状態とされる第一制御モードへの移行(第二モード移行)の実行が決定されると(ステップ#11:Yes)、対象量判定部53により選択対象量B0と選択基準値D0との間の大小関係の判定が実行される(ステップ#12)。そして、対象量判定部53により選択対象量B0が選択基準値D0未満であると判定されると(ステップ#12:Yes)、第二クラッチC2をスリップ係合状態へと移行させるための制御が開始される(ステップ#13)。第二クラッチC2がスリップ係合状態となるまでの間は(ステップ#14:No)、この移行制御が継続して実行され(ステップ#13)、第二クラッチC2がスリップ係合状態となると(ステップ#14:Yes)、第二制御モードから第三制御モードへの移行が完了する。
【0058】
第三制御モードへの移行が完了した後、第一クラッチC1をスリップ係合状態へと移行させるための制御が開始される(ステップ#15)。第一クラッチC1がスリップ係合状態となるまでの間は(ステップ#16:No)、この移行制御が継続して実行され(ステップ#15)、第一クラッチC1がスリップ係合状態となると(ステップ#16:Yes)、第三制御モードから第一制御モードへの移行が完了し、第二モード移行制御は終了する。
【0059】
一方、対象量判定部53により選択対象量B0が選択基準値D0以上であると判定された場合には(ステップ12:No)、図3に示すように、上述したステップ#13〜ステップ#16の各処理において第一クラッチC1と第二クラッチC2とを入れ替えた処理(ステップ#17〜ステップ#20)が順次実行され、第四制御モードを経由する第二制御モードから第一制御モードへの移行が行われる。
【0060】
このように、第二モード移行制御では、第一クラッチC1の直結係合状態からスリップ係合状態への移行と、第二クラッチC2の直結係合状態からスリップ係合状態への移行とが実行されるが、選択対象量B0が選択基準値D0未満である場合には、第二クラッチC2、第一クラッチC1の順に、スリップ係合状態への移行が実行され、選択対象量B0が選択基準値D0以上である場合には、第一クラッチC1、第二クラッチC2の順に、スリップ係合状態への移行が実行される。よって、第二モード移行制御の実行時においても、第一モード移行制御の実行時と同様、第一クラッチC1のスリップ時間は、選択対象量B0が選択基準値D0未満である場合には第二クラッチC2のスリップ時間より短くなり、選択対象量B0が選択基準値D0以上である場合には第二クラッチC2のスリップ時間より長くなる。
【0061】
2−9.トルク補正制御部の構成
トルク補正制御部54は、トルク補正制御を実行する機能部である。このトルク補正制御では、所定の条件が成立した際に内燃機関トルクTeを低下させるトルク低下制御を実行する。本実施形態では、トルク補正制御部54は、第一トルク補正制御及び第二トルク補正制御の2つのトルク補正制御を並行して実行する。
【0062】
第一トルク補正制御について図4のフローチャートを参照して説明する。第一トルク補正制御では、第一制御モードにおいて(ステップ#22:Yes)、第一判定対象量B1が第一判定基準値D1以上であり(ステップ#23:Yes)、且つ第二判定対象量B2が第二判定基準値D2以上である(ステップ#24:Yes)場合に、トルク低下制御として車輪伝達駆動力低下制御を実行する(ステップ#25)。なお、ステップ#21及びステップ#26の処理から明らかなように、本例では、第一トルク補正制御は、第一モード移行や第二モード移行の実行中(ステップ#21:Yes)に実行されるとともに、車輪伝達駆動力低下制御は、第一制御モードが継続して実現される期間中に最大で一度実行される。また、本例では、第一制御モードの実現中には、第一判定対象量B1及び第二判定対象量B2が対象量取得部51により繰り返し取得される。
【0063】
ここで、車輪伝達駆動力低下制御は、車輪15に伝達される駆動力(以下、「車輪伝達駆動力」という。)が要求駆動力決定部42により決定された要求駆動力Tdより小さくなるように、内燃機関トルクTeを低下させる制御である。後に説明する図8の具体例では、時刻T23において車輪伝達駆動力低下制御が実行され、内燃機関トルクTeの低下分に応じて車輪伝達駆動力が要求駆動力Tdから低下している。
【0064】
なお、車輪伝達駆動力低下制御の実行前の状態では、基本的に、車輪伝達駆動力が要求駆動力Tdと等しくなるように内燃機関トルクTe及び回転電機トルクTmが制御される。すなわち、第一判定対象量B1が第一判定基準値D1未満であり、且つ第二判定対象量B2が第二判定基準値D2未満である場合を含む、車輪伝達駆動力低下制御の実行前の状態では、要求駆動力決定部42が決定した要求駆動力Tdが車輪15に伝達される。
【0065】
次に、第二トルク補正制御について図5のフローチャートを参照して説明する。第二トルク補正制御では、第一制御モードにおいて(ステップ#32:Yes)、第一判定対象量B1が第三判定基準値D3以上である(ステップ#33:Yes)場合に、トルク低下制御として発電量低下制御を実行する(ステップ#34)。なお、ステップ#31及びステップ#35の処理から明らかなように、本例では、第二トルク補正制御は、第一モード移行や第二モード移行の実行中(ステップ#31:Yes)に実行されるとともに、発電量低下制御は、第一制御モードが継続して実現される期間中に最大で一度実行される。また、本例では、第一制御モードの実現中には、第一判定対象量B1が対象量取得部51により繰り返し取得される。
【0066】
ここで、発電量低下制御は、回転電機トルクTm(より正確には回転電機トルクTmの絶対値)を低下させることで当該回転電機12による発電量を低下させるとともに、回転電機トルクTmの低下分に応じて内燃機関トルクTeを低下させる制御である。後に説明する図8の具体例では、時刻T24において発電量低下制御が実行され、回転電機トルクTmの要求回生トルクからの低下分(絶対値の低下分)に応じて、内燃機関トルクTeが低下している。図8の例では、発電量低下制御により回転電機トルクTmが零とされるため、回転電機トルクTmの要求回生トルクからの低下分は、要求回生トルクの大きさに等しくなっている。
【0067】
なお、図8に示す具体例のように発電量低下制御の実行により回転電機トルクTmが零とされた状態においても、例えば蓄電装置28の蓄電量の低下等により回転電機12に発電が要求され続けている場合(すなわち、要求回生トルクが発電停止後も設定されている場合)には、回転電機12が発電を行っているとして走行モードを分類するものとする。すなわち、図8に示す例では、時刻T24において発電量低下制御が実行された後も要求回生トルクが継続して設定されており、時刻T24以降も走行モードは発電モードとなっている。
【0068】
3.第一モード移行の具体的内容
上記のような構成を備える制御装置40において実行される第一モード移行の具体例について、図6から図8のタイムチャートを参照して順に説明する。なお、各タイムチャートにおいて、「同期線(換算回転速度)」は、変速機構13において変速段(本例では第1速段)が形成されていると仮定した場合の、出力軸Oの回転速度を中間軸Mの回転速度に換算して得られる回転速度を表し、「要求駆動力」は、要求駆動力Tdを当該変速段に対応する変速比で除算した値で示している。
【0069】
3−1.第一モード移行の第一の具体例
本具体例は、図6に示すように、車両6が停止(換算回転速度が零)しているとともに回転電機12に発電を行わせている状態から車両6を発進させる際に実行される第一モード移行の具体例である。なお、第一モード移行制御の実行開始時に車両6が走行中である場合にも同様の制御を行うことが可能である(図7、図8についても同様)。
【0070】
初期状態(時刻T01以前)では、車両6が停止しているとともに、第一クラッチC1の直結係合状態且つ第二クラッチC2の解放状態で内燃機関トルクTeにより回転電機12が発電している。そして、時刻T01において車両6を発進させるための車両発進条件が成立すると、第一クラッチC1の係合圧及び第二クラッチC2の係合圧の双方をスリップ係合圧とする制御を実行する(時刻T01〜T02)。なお、車両発進条件は、例えば、運転者によるアクセルペダルの踏み込み操作やブレーキペダルの解除操作等が検知された場合に成立する構成とすることができる。そして、走行モードが第一制御モードに移行すると(時刻T02)、第一モード移行制御が開始される。
【0071】
図示は省略するが、本例では、第一モード移行制御の実行開始時(時刻T02)において選択対象量B0は選択基準値D0未満であり、第三制御モードを経由する第一モード移行が実行される。また、同じく図示は省略するが、本例では、第一制御モードの実現中に、上述した車輪伝達駆動力低下制御の実行条件(図4のステップ#23,#24)や、発電量低下制御の実行条件(図5のステップ#33)が成立しない場合を想定している。
【0072】
時刻T02〜時刻T04において実現される第一制御モードでは、スリップ係合状態の第二クラッチC2は、目標伝達トルク容量に基づくトルク制御により制御される。この際、目標伝達トルク容量は、要求駆動力Tdが車輪15に伝達されるように、第二クラッチC2の動力伝達経路における位置に応じて設定される。また、第一制御モードでは、スリップ係合状態の第一クラッチC1は、内燃機関11の回転速度を目標回転速度に追従させるように、回転速度フィードバック制御により制御(回転速度制御)される。この際、目標回転速度は、内燃機関11が自立運転を継続可能な下限回転速度以上の値(例えばアイドル回転速度やアイドル回転速度より高い値)に設定される。本例では、目標回転速度は、第一制御モードの開始時(時刻T02)の内燃機関11の回転速度に設定され、第一制御モードの実現中、当該回転速度に維持される。
【0073】
また、第一制御モードでは、回転電機12は目標回転速度に基づく回転速度制御により制御される。この際、目標回転速度は、換算回転速度より高く内燃機関11の回転速度より低い値であって、回転速度が最も低下しても要求される発電量を確保できる値に設定される。本例では、この目標回転速度は、換算回転速度との差が一定になるように設定される。そのため、図6に示すように、車速(換算回転速度)の上昇に伴い、内燃機関11と回転電機12との間の回転速度差が減少する。なお、回転電機トルクTmは、要求される発電量を目標回転速度で除算した値(要求回生トルク)に基づき設定される。
【0074】
時刻T03において内燃機関11と回転電機12との間の回転速度差が所定の同期判定基準値以下となると、第一クラッチC1の係合圧を完全係合圧に向けて上昇させる。そして、時刻T04において第一クラッチC1が直結係合状態に移行することで、走行モードが第一制御モードから第三制御モードへと移行する。時刻T02〜時刻T04において実行される各制御が、先に説明した図2のステップ#03において実行される、第一クラッチC1を直結係合状態へと移行させるための制御に相当する。
【0075】
時刻T04〜時刻T06において実現される第三制御モードでは、スリップ係合状態の第二クラッチC2は第一制御モードの実現時と同様にトルク制御により制御される。また、回転電機12も第一制御モードの実現時と同様に回転速度制御により制御されるが、この際の目標回転速度は、換算回転速度との差が徐々に減少するように設定される。時刻T05において回転電機12の回転速度と換算回転速度との差が所定の同期判定基準値以下となると、第二クラッチC2の係合圧を完全係合圧に向けて上昇させる。そして、時刻T06において第二クラッチC2が直結係合状態に移行することで、走行モードが第三制御モードから第二制御モードへと移行する。時刻T04〜時刻T06において実行される各制御が、先に説明した図2のステップ#05において実行される、第二クラッチC2を直結係合状態へと移行させるための制御に相当する。
【0076】
上記のように、本例では、第一クラッチC1の直結係合状態への移行(時刻T03〜T04)が、第二クラッチC2のスリップ係合状態で行われるため、当該移行に伴う係合ショックが車輪15に伝達されることを抑制することが可能となっている。また、本例では、第一クラッチC1のスリップ係合状態で回転電機12に発電を行わせる期間が第一制御モードの実現時のみとなるため、第一クラッチC1を介したトルク伝達に起因するエネルギ損失を低減して、発電効率を高めることも可能となっている。
【0077】
3−2.第一モード移行の第二の具体例
本具体例は、図7に示すように、上記第一の具体例(図6)とは異なり、第四制御モードを経由する第一モード移行の具体例である。以下、本具体例について、上記第一の具体例との相違点を中心に説明する。特に説明しない点については、上記第一の具体例と同様とする。
【0078】
時刻T12において走行モードが第一制御モードとなり、第一モード移行制御が開始される。本例では、図示は省略するが、第一モード移行制御の実行開始時(時刻T12)において選択対象量B0は選択基準値D0以上であり、第四制御モードを経由する第一モード移行が実行される。
【0079】
時刻T12〜時刻T14において実現される第一制御モードでは、回転電機12の目標回転速度が一定値に設定される。そのため、車速(換算回転速度)の上昇に伴い、回転電機12の回転速度と換算回転速度との差が減少する。時刻T13において回転電機12の回転速度と換算回転速度との差が所定の同期判定基準値以下となると、第二クラッチC2の係合圧を完全係合圧に向けて上昇させる。そして、時刻T14において第二クラッチC2が直結係合状態に移行することで、走行モードが第一制御モードから第四制御モードへと移行する。時刻T12〜時刻T14において実行される各制御が、先に説明した図2のステップ#07において実行される、第二クラッチC2を直結係合状態へと移行させるための制御に相当する。
【0080】
時刻T14〜時刻T16において実現される第四制御モードでは、スリップ係合状態の第一クラッチC1は第一制御モードの実現時と同様に回転速度制御により制御される。また、回転電機12の目標回転速度は、内燃機関11の回転速度との差が徐々に減少するように設定される。時刻T15において内燃機関11と回転電機12との間の回転速度差が所定の同期判定基準値以下となると、第一クラッチC1の係合圧を完全係合圧に向けて上昇させる。そして、時刻T16において第一クラッチC1が直結係合状態に移行することで、走行モードが第四制御モードから第二制御モードへと移行する。時刻T14〜時刻T16において実行される各制御が、先に説明した図2のステップ#09において実行される、第一クラッチC1を直結係合状態へと移行させるための制御に相当する。
【0081】
上記のように、本例では、第二クラッチC2のスリップ係合状態で回転電機12に発電を行わせる期間が第一制御モードの実現時のみとなるため、第二クラッチC2の温度が高くなりすぎることを抑制することが可能である。
【0082】
3−3.第一モード移行の第三の具体例
本具体例は、図8に示すように、第四制御モードを経由する第一モード移行の具体例という点では上記第二の具体例(図7)と一致するが、第一制御モードの実現中に車輪駆動力低下制御と発電量低下制御とが実行されるという点で、上記第二の具体例とは異なる。以下、本具体例について、上記第二の具体例との相違点を中心に説明する。特に説明しない点については、上記第一及び第二の具体例と同様とする。
【0083】
本例では、全ての対象量B(B0,B1,B2)が温度とされている。そして、第一モード移行の実行時(時刻T22)において選択対象量B0が選択基準値D0以上であるため、第四制御モードを経由する第一モード移行が実行される。第一制御モードの実現中においては上記第二の具体例と同様に各制御が実行されるが、本例では時刻T23において、第一判定対象量B1が第一判定基準値D1以上であり、且つ第二判定対象量B2が第二判定基準値D2以上である状態となる。これにより、車輪伝達駆動力低下制御が実行され、車輪伝達駆動力が要求駆動力Tdより小さくなるように、内燃機関トルクTeが低下される。この際、回転電機トルクTmは一定に維持されるため、内燃機関トルクTeの低下分に応じて車輪伝達駆動力が要求駆動力Tdから低下する。
【0084】
本例では、更に、時刻T24において、第一判定対象量B1が第三判定基準値D3以上となる。これにより、発電量低下制御が実行され、回転電機トルクTm(より正確には回転電機トルクTmの絶対値)を要求回生トルクから低下させるとともに、当該低下分に応じて内燃機関トルクTeを低下させる。この際、発電量低下制御の実行前後で車輪伝達駆動力は変化しない。発電量低下制御の実行により低下した回転電機トルクTmにより、回転電機12が発電を継続する構成とすることもできるが、本例では、発電量低下制御により回転電機トルクTmを零とすることで、回転電機12による発電を停止している。その後は、上記第二の具体例と同様の制御を行う。なお、本例における時刻T25,T26,T27,T28のそれぞれが、上記第二の具体例(図7)における時刻T13,T14,T15,T16に対応する。
【0085】
ここでは、車輪伝達駆動力低下制御及び発電量低下制御の双方が実行される場合を例として説明したが、第一制御モードの実現中に第一判定対象量B1が第三判定基準値D3以上とならなかった場合には、車輪伝達駆動力低下制御のみが実行される。また、第一判定基準値D1が第三判定基準値D3よりも大きな値に設定される構成では、第一制御モードの実現中に、車輪伝達駆動力低下制御及び発電量低下制御の双方ではなく、発電量低下制御のみが実行される場合もあり得る。
【0086】
4.第二モード移行の具体的内容
次に、制御装置40において実行される第二モード移行の具体例について、図9、図10のタイムチャートを参照して順に説明する。
【0087】
4−1.第二モード移行の第一の具体例
本具体例は、図9に示すように、第二制御モードで走行している状態から車両6を停車させる際に実行される第二モード移行の具体例である。なお、第二モード移行の実行後に車両6が第一制御モードで走行を継続する場合にも同様の制御を行うことが可能である(図10についても同様)。
【0088】
初期状態(時刻T31以前)では、車両6が第二制御モードで走行しており、第一クラッチC1及び第二クラッチC2の双方の直結係合状態で内燃機関トルクTeにより回転電機12が発電している。そして、時刻T31において車両6を停止させるための車両停止条件が成立すると、第二モード移行制御が開始される。車両停止条件は、例えば、運転者によるアクセルペダルの解除操作やブレーキペダルの踏み込み操作等が検知された場合に成立する構成とすることができる。
【0089】
図示は省略するが、本例では、第二モード移行制御の実行開始時(時刻T31)において選択対象量B0は選択基準値D0未満であり、第三制御モードを経由する第二モード移行が実行される。そのため、本例では、時刻T31において第二クラッチC2の係合圧をスリップ係合圧まで低下させる。これにより、第二クラッチC2がスリップ係合状態に移行し、走行モードが第二制御モードから第三制御モードへと移行する。時刻T31において実行される第二クラッチC2の係合圧の低下制御が、先に説明した図3のステップ#13において実行される、第二クラッチC2をスリップ係合状態へと移行させるための制御に相当する。
【0090】
時刻T31〜時刻T32において実現される第三制御モードでは、スリップ係合状態の第二クラッチC2は、目標伝達トルク容量に基づくトルク制御により制御される。この際、目標伝達トルク容量は、要求駆動力Tdが車輪15に伝達されるように、第二クラッチC2の動力伝達経路における位置に応じて設定される。
【0091】
また、第三制御モードでは、回転電機12は目標回転速度に基づく回転速度制御により制御される。この際、目標回転速度は、換算回転速度より高く、且つ内燃機関11が自立運転を継続可能な下限回転速度以上の値(例えばアイドル回転速度やアイドル回転速度より高い値)であって、要求される発電量を確保できる値に設定される。本例では、この目標回転速度は、第三制御モードの開始時(時刻T31)の回転電機12の回転速度に設定され、第三制御モードの実現中は当該回転速度に維持される。そのため、車速(換算回転速度)の低下に伴い、回転電機12の回転速度と換算回転速度との差が増加する。
【0092】
時刻T32において回転電機12の回転速度と換算回転速度との差が所定の移行判定基準値以上となると、第一クラッチC1の係合圧をスリップ係合圧まで低下させる。これにより、第一クラッチC1がスリップ係合状態に移行し、走行モードが第三制御モードから第一制御モードへと移行する。時刻T31〜時刻T32において実行される各制御が、先に説明した図3のステップ#15において実行される、第一クラッチC1をスリップ係合状態へと移行させるための制御に相当する。
【0093】
時刻T32以降において実現される第一制御モードでは、スリップ係合状態の第二クラッチC2は第三制御モードの実現時と同様にトルク制御により制御される。また、スリップ係合状態の第一クラッチC1は、内燃機関11の回転速度を目標回転速度に追従させるように、回転速度フィードバック制御により制御(回転速度制御)される。この際、目標回転速度は、内燃機関11が自立運転を継続可能な下限回転速度以上の値(例えばアイドル回転速度やアイドル回転速度より高い値)に設定される。本例では、目標回転速度は、第一制御モードの開始時(時刻T32)の内燃機関11の回転速度に設定され、第一制御モードの実現中、当該回転速度に維持される。
【0094】
また、第一制御モードでは、回転電機12は第三制御モードの実現時と同様に回転速度制御により制御されるが、この際の目標回転速度は、換算回転速度より高く内燃機関11の回転速度より低い値であって、要求される発電量を確保できる値に設定される。本例では、この目標回転速度は、換算回転速度との差が一定になるように設定される。そのため、図9に示すように、車速(換算回転速度)の低下に伴い、回転電機12の目標回転速度も低下し、車両6が停止した時刻T33以降は、当該目標回転速度は一定値に維持される。なお、本例では、第一制御モードへの移行後に(時刻T32以降)、上述した車輪伝達駆動力低下制御の実行条件(図4のステップ#23,#24)や、発電量低下制御の実行条件(図5のステップ#33)が成立しない場合を想定している。
【0095】
上記のように、本例では、第一クラッチC1のスリップ係合状態への移行(時刻T32)が、第二クラッチC2のスリップ係合状態で行われるため、当該移行に伴うトルク変化によるショックが車輪15に伝達されることを抑制することが可能となっている。また、本例では、第一クラッチC1のスリップ係合状態で回転電機12に発電を行わせる期間が第一制御モードの実現時のみとなるため、第一クラッチC1を介したトルク伝達に起因するエネルギ損失を低減して、発電効率を高めることも可能となっている。
【0096】
4−2.第二モード移行の第二の具体例
本具体例は、図10に示すように、上記第一の具体例(図9)とは異なり、第四制御モードを経由する第二モード移行の具体例である。以下、本具体例について、上記第一の具体例との相違点を中心に説明する。特に説明しない点については、上記第一の具体例と同様とする。
【0097】
本例では、図示は省略するが、第二モード移行制御の実行開始時(時刻T41)において選択対象量B0は選択基準値D0以上であり、第四制御モードを経由する第二モード移行が実行される。そのため、本例では、時刻T41において第一クラッチC1の係合圧をスリップ係合圧まで低下させる。これにより、第一クラッチC1がスリップ係合状態に移行し、走行モードが第二制御モードから第四制御モードへと移行する。時刻T41において実行される第一クラッチC1の係合圧の低下制御が、先に説明した図3のステップ#17において実行される、第一クラッチC1をスリップ係合状態へと移行させるための制御に相当する。
【0098】
時刻T41〜時刻T42において実現される第四制御モードでは、スリップ係合状態の第一クラッチC1は、内燃機関11の回転速度を目標回転速度に追従させるように、回転速度フィードバック制御により制御(回転速度制御)される。この際、目標回転速度は、内燃機関11が自立運転を継続可能な下限回転速度以上の値(例えばアイドル回転速度やアイドル回転速度より高い値)に設定される。本例では、目標回転速度は、第四制御モードの開始時(時刻T41)の内燃機関11の回転速度に設定され、第四制御モードの実現中、並びにその後の第一制御モードの実現中、当該回転速度に維持される。そのため、図10に示すように、車速(換算回転速度)の低下に伴い、内燃機関11と回転電機12との間の回転速度差が増加する。
【0099】
時刻T42において内燃機関11と回転電機12との間の回転速度差が所定の移行判定基準値以上となると、第二クラッチC2の係合圧をスリップ係合圧まで低下させる。これにより、第二クラッチC2がスリップ係合状態に移行し、走行モードが第四制御モードから第一制御モードへと移行する。時刻T41〜時刻T42において実行される各制御が、先に説明した図3のステップ#19において実行される、第二クラッチC2をスリップ係合状態へと移行させるための制御に相当する。
【0100】
時刻T42以降において実現される第一制御モードでは、スリップ係合状態の第一クラッチC1は第四制御モードの実現時と同様に回転速度制御により制御される。また、スリップ係合状態の第二クラッチC2は、目標伝達トルク容量に基づくトルク制御により制御される。この際、目標伝達トルク容量は、要求駆動力Tdが車輪15に伝達されるように、第二クラッチC2の動力伝達経路における位置に応じて設定される。
【0101】
また、第一制御モードでは、回転電機12は目標回転速度に基づく回転速度制御により制御される。この際、目標回転速度は、換算回転速度より高く内燃機関11の回転速度より低い値であって、要求される発電量を確保できる値に設定される。本例では、この目標回転速度は一定値に設定される。そのため、図10に示すように、車速(換算回転速度)の低下に伴い、回転電機12の回転速度と換算回転速度との差が増大し、車両6が停止した時刻T43以降は、回転電機12の回転速度と換算回転速度との差は一定となる。
【0102】
上記のように、本例では、第二クラッチC2のスリップ係合状態で回転電機12に発電を行わせる期間が第一制御モードの実現時のみとなるため、第二クラッチC2の温度が高くなりすぎることを抑制することが可能である。
【0103】
5.その他の実施形態
最後に、本発明に係る制御装置の、その他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0104】
(1)上記の実施形態では、トルク補正制御部54が、第一トルク補正制御及び第二トルク補正制御の2つのトルク補正制御を並行して実行する構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第一トルク補正制御及び第二トルク補正制御の一方のみを実行する構成や、第一トルク補正制御及び第二トルク補正制御の何れも実行しない構成とすることも可能である。
【0105】
(2)上記の実施形態では、第一モード移行及び第二モード移行の双方のモード移行に際し、選択対象量B0が選択基準値D0未満である場合は第三制御モードを経てモード移行を実行し、選択対象量B0が選択基準値D0以上である場合には第四制御モードを経てモード移行を実行する構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第一モード移行及び第二モード移行の一方のモード移行についてのみ、選択対象量B0が選択基準値D0未満である場合は第三制御モードを経てモード移行を実行し、選択対象量B0が選択基準値D0以上である場合には第四制御モードを経てモード移行を実行する構成とすることも可能である。この場合、他方のモード移行については、経由する走行モードが固定された構成とすることができる。この場合において、経由する走行モードは、第三制御モードや第四制御モードとは異なる走行モードとすることも可能である。また、他方のモード移行については、間に他の走行モードを介することなく直接モード移行が行われる構成、すなわち、第一クラッチC1及び第二クラッチC2のそれぞれの係合状態の移行が同時に行われる構成とすることも可能である。
【0106】
(3)上記の実施形態では、第三制御モード及び第四制御モードの何れの制御モードを経由してモード移行を実行するかの決定が、第一モード移行制御や第二モード移行制御の実行開始時に実行される構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、選択対象量B0と選択基準値D0との間の大小関係の判定をモード移行制御中にも実行し、当該大小関係が逆転した場合には、経由する走行モードを切り替える構成とすることも可能である。
【0107】
(4)上記の実施形態では、変速機構13内の変速用の係合装置の1つ(第二クラッチC2)が「第二係合装置」とされた構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、内燃機関11と車輪15とを結ぶ動力伝達経路において、回転電機12よりも車輪15側に設けられた係合装置であれば、変速機構13内の他の係合装置を「第二係合装置」としても良い。
また、例えば回転電機12と車輪15との間にトルクコンバータ等の流体継手を備える場合において、当該流体継手が有するロックアップクラッチを「第二係合装置」としても良い。或いは、例えば回転電機12と車輪15との間に専用の伝達クラッチを設け、当該伝達クラッチを「第二係合装置」としても良い。これらの場合には、変速機構13として、自動無段変速機構、手動有段変速機構、及び固定変速機構等を用いることもできる。また、変速機構13の位置も任意に設定することができる。
【0108】
(5)上記の実施形態では、第一クラッチC1や第二クラッチC2が、供給油圧に応じて係合圧が制御される油圧駆動式の係合装置とされた構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、これらは係合圧の増減に応じて伝達トルク容量を調整可能であれば良く、例えばこれらのうちの一方又は双方を、電磁力に応じて係合圧が制御される電磁式の係合装置としても良い。
【0109】
(6)上記の実施形態では、制御装置40とは別に内燃機関制御装置30が備えられた構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、内燃機関制御装置30が制御装置40に一体化された構成とすることも可能である。また、上記の実施形態で説明した制御装置40における機能部の割り当ては単なる一例であり、複数の機能部を組み合わせたり、1つの機能部をさらに区分けしたりすることも可能である。
【0110】
(7)上記の実施形態では、内燃機関11のクランクシャフト等の内燃機関出力軸と入力軸Iとが一体回転する構成を例として説明したが、ダンパやフライホイール等の部材を介して内燃機関出力軸と入力軸Iとが駆動連結された構成とすることもできる。
【0111】
(8)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、本願の特許請求の範囲に記載されていない構成に関しては、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は、内燃機関と車輪とを結ぶ動力伝達経路に、内燃機関の側から順に、第一係合装置、回転電機、及び第二係合装置、が設けられた車両用駆動装置を制御対象とする制御装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0113】
1:駆動装置
11:内燃機関
12:回転電機
15:車輪
40:制御装置
51:対象量取得部
52:モード制御部
B0:選択対象量
B1:第一判定対象量
B2:第二判定対象量
D0:選択基準値
D1:第一判定基準値
D2:第二判定基準値
D3:第三判定基準値
C1:第一クラッチ(第一係合装置)
C2:第二クラッチ(第二係合装置)
Td:要求駆動力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と車輪とを結ぶ動力伝達経路に、前記内燃機関の側から順に、第一係合装置、回転電機、及び第二係合装置、が設けられた車両用駆動装置を制御対象とする制御装置であって、
前記第一係合装置及び前記第二係合装置の双方のスリップ係合状態で前記回転電機に発電を行わせる第一制御モードと、前記第一係合装置及び前記第二係合装置の双方の直結係合状態で前記回転電機に発電を行わせる第二制御モードと、前記第一係合装置の直結係合状態且つ前記第二係合装置のスリップ係合状態で前記回転電機に発電を行わせる第三制御モードと、前記第一係合装置のスリップ係合状態且つ前記第二係合装置の直結係合状態で前記回転電機に発電を行わせる第四制御モードと、を切り替えるモード制御部と、
前記第二係合装置の温度及び発熱量の少なくとも一方を選択対象量として取得する対象量取得部と、を備え、
前記モード制御部は、前記第一制御モードから前記第二制御モード及び前記第二制御モードから前記第一制御モードの少なくとも一方のモード移行に際し、前記選択対象量が予め定められた選択基準値未満である場合は前記第三制御モードを経て前記モード移行を実行し、前記選択対象量が前記選択基準値以上である場合には前記第四制御モードを経て前記モード移行を実行する制御装置。
【請求項2】
前記対象量取得部は、前記第一係合装置の温度及び発熱量の少なくとも一方を第一判定対象量として取得するとともに、前記第二係合装置の温度及び発熱量の少なくとも一方を第二判定対象量として取得し、
前記第一制御モードにおいて、前記第一判定対象量が予め定められた第一判定基準値未満であり、且つ前記第二判定対象量が予め定められた第二判定基準値未満である場合には、前記車輪を駆動するために要求される要求駆動力が当該車輪に伝達されるように前記要求駆動力に応じた制御を実行し、
前記第一制御モードにおいて、前記第一判定対象量が前記第一判定基準値以上であり、且つ前記第二判定対象量が前記第二判定基準値以上である場合には、前記車輪に伝達される駆動力が前記要求駆動力より小さくなるように、前記内燃機関の出力トルクを低下させる制御を実行する請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記対象量取得部は、前記第一係合装置の温度及び発熱量の少なくとも一方を第一判定対象量として取得し、
前記第一制御モードにおいて、前記第一判定対象量が予め定められた第三判定基準値以上となった場合には、前記回転電機の出力トルクを低下させることで当該回転電機による発電量を低下させるとともに、前記回転電機の出力トルクの低下分に応じて前記内燃機関の出力トルクを低下させる制御を実行する請求項1又は2に記載の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−35416(P2013−35416A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173216(P2011−173216)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】