説明

制振装置、及び制振装置を有する建物

【課題】本発明は、錘の固有周期を変更できる制振装置、及び制振装置を有する建物を提供することを目的とする。
【解決手段】建物12の揺れが大きくなり、振動検知装置58によって検知された床スラブ28(錘)の振動の大きさが所定値以上となった場合、制御手段56がソレノイド54を作動させる。ソレノイド54は、ストッパ部材52を上方に移動させ、ストッパ部材52とピン44とを係合させる。これにより、コイルばね48の付勢力によってピン44が固定台50側へ移動してフランジ42から抜け出し、係合部材34と床スラブ18Aの貫通孔36との係合が解除され、係合部材34が下方へ移動(落下)する。この結果、係合部材34による吊り材26の一部26Aの固定(拘束)が解除され、床スラブ28の吊り長さがLからL(図4参照)に変わり、床スラブ28の周期が長周期化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の震動を低減する制振装置、及び制振装置を有する建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、高層建物等では、風等の振動を低減する目的としてTMD(Tuned Mass Damper)が設置されることが多い。TMDとしては、振り子型形式のTMD(以下、「振り子型TMD」という)が知られている。この振り子型TMDは、建物の上部から錘を吊り下げ、この錘と建物とをダンパー等で連結して構成される。そして、風等により建物が揺れると、慣性力によって錘が建物と位相差をもって振動し、ダンパーの減衰力によって建物の振動が低減される。なお、錘の固有周期は、建物の固有周期に同調するように設定される。
【0003】
ここで、振り子型TMDの制振効果は、建物全体の質量と錘の質量との比によって決定されるところ、高層建物等では、錘の質量が建物全体の質量に対して相対的に小さくなり易く、十分な制振効果を得られない場合がある。
【0004】
一方、特許文献1には、建物の最上階から床スラブを吊り下げ、この床スラブを錘とした制振装置が提案されている。この制振装置では、床スラブを錘とすることで、錘の質量を確保できる点で好ましい。しかしながら、地震等の大きな揺れに対して、錘としての床スラブを建物に同調させた状態にしておくと、床スラブの振幅が増大し床スラブが建物と接触して問題となる。
【0005】
また、特許文献2では、正面視にてV字型に連結された2つのレールの上に錘を載置し、レールに沿って弧を描くように左右に錘を移動可能にした制振装置が開示されている。この制振装置は、2つのレールのV字角度を油圧シリンダによって動的に変更し、錘の移動軌跡によって描かれる弧の曲率を変化させることで、錘の周期を変えている。
【0006】
しかしながら、特許文献2の制振装置は振り子型TMDではなく、また錘の質量を大きくすると装置構成が大掛かりとなり、更に錘の質量に比例してV字角度を変える油圧シリンダの必要電力量が大きくなって不経済となる。
【特許文献1】特開平6−322827号公報
【特許文献2】特開平8−105486号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の事実を考慮し、錘の固有周期を変更できる制振装置、及び制振装置を有する建物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の制振装置は、吊り材によって建物に吊り下げられる錘と、前記建物と前記錘とを連結する減衰手段と、前記吊り材の一部を前記建物に固定し又は前記建物に固定された前記吊り材の一部の固定を解除して前記錘の周期を変える周期調整手段と、前記錘の揺れを検知する振動検知手段と、前記振動検知手段によって検知された振動の大きさに基づいて前記周期調整手段を作動させるか否かを判断する制御手段と、を備えている。
【0009】
上記の構成によれば、風等により建物が揺れると、建物に吊り下げされた錘が慣性力によって建物と位相差をもって振動する。また、建物と錘を連結する減衰手段によって建物に減衰力を付与し、建物の振動が低減される。
【0010】
また、振動検知手段によって検知された錘の振動の大きさに基づいて、制御手段が周期調整手段を作動させるか否かを判断する。ここで、周期調整手段が作動すると、吊り材の一部を建物に固定し、又は建物に固定された吊り材の一部の固定を解除して吊り長さを変更し、錘の周期を変える。即ち、振動検知手段によって所定の大きさの振動が検知された場合、制御手段が錘の固有周期を変えることで、建物の固有周期から錘の固有周期がずれる。従って、錘と建物とが共振(同調)せず、錘の振幅が小さくなって建物と錘との接触が回避される。
【0011】
請求項2の記載の制振装置は、請求項1に記載の制振装置において、前記周期調整手段が、前記吊り材に沿って上下方向に移動可能に設けられた係合部材を前記建物に設けられた被係合部に係合させて前記吊り材の一部を前記建物に固定し、又は前記被係合部に係合された前記係合部材の係合を解除して前記建物に固定された前記吊り材の一部の固定を解除する。
【0012】
上記の構成によれば、建物には被係合部が設けられ、吊り材には被係合部に係合する係合部材が上下方向に移動可能に設けられている。
【0013】
ここで、周期調整手段が作動すると、係合部材が吊り材に沿って上下方向に移動し、被係合部と係合して吊り材の一部を建物に固定して吊り長さを変更する。又は、被係合部に係合された係合部材が上下方向に移動し、被係合部との係合を解除して建物に固定された吊り材の一部の固定を解除して吊り長さを変更する。これにより、錘の周期が変わる。従って、錘と建物とが共振(同調)せず、錘の振幅が小さくなって建物と錘との接触が回避される。
【0014】
請求項3に記載の制振装置は、請求項1に記載の制振装置において、前記吊り材には可動部材が設けられ、前記周期調整手段が、前記建物に設けられた被連結部に前記可動部材を連結して前記吊り材の一部を前記建物に固定し又は前記被連結部に連結された前記可動部材の連結を解除して前記建物に固定された前記吊り材の一部の固定を解除する。
【0015】
上記の構成によれば、吊り材には可動部材が設けられている。制御手段が作動すると、建物に設けられた被連結部に可動部材を連結して吊り材の一部を建物に固定する。又は、被連結部に連結された可動部材の連結を解除して建物に固定された吊り材の一部の固定を解除する。これにより、錘の固有周期が変わる。従って、錘と建物とが共振(同調)せず、錘の振幅が小さくなって建物と錘との接触が回避される。
【0016】
請求項4に記載の制振装置は、吊り材によって建物に吊り下げされる可動部材と、前記可動部材に吊り下げられると共に該可動部材に連結して固定された錘と、前記建物と前記錘又は前記可動部材とを連結する減衰手段と、前記可動部材と前記錘との連結を解除して前記錘の周期を変える周期調整手段と、前記可動部材及び前記錘の揺れを検知する振動検知手段と、前記振動検知手段によって検知された振動の大きさに基づいて前記周期調整手段を作動させるか否かを判断する制御手段と、を備えている。
【0017】
上記の構成によれば、風等により建物が揺れると、建物に吊り下げされた可動部材及びこの可動部材に連結して固定された錘が慣性力によって一体挙動し、これらの可動部材及び錘が建物と位相差をもって振動する。また、建物と錘を連結する減衰手段によって建物に減衰力が付与され、建物の振動が低減される。
【0018】
また、振動検知手段によって検知された可動部材及び錘の振動の大きさに基づいて、制御手段が周期調整手段を作動させるか否かを判断する。ここで、周期調整手段が作動すると、可動部材と錘との連結を解除して可動部材と錘とを分離し、錘の吊り長さを長くする。これにより、錘の固有周期が変わる。従って、錘と建物とが共振(同調)せず、錘の振幅が小さくなって建物と錘との接触が回避される。
【0019】
請求項5に記載の制振装置は、吊り材によって建物に吊り下げされる可動部材と、前記可動部材に吊り下げられる錘と、前記建物と前記錘とを連結する減衰手段と、前記可動部材に前記錘を連結して固定し、前記錘の周期を変える周期調整手段と、前記錘の揺れを検知する振動検知手段と、前記振動検知手段によって検知された振動の大きさに基づいて前記周期調整手段を作動させるか否かを判断する制御手段と、を備えている。
【0020】
上記の構成によれば、風等により建物が揺れると、建物に吊り下げされた可動部材、及この可動部材に吊り下げられた錘の各々が別々に建物と位相差をもって振動する。また、建物と錘を連結する減衰手段によって建物に減衰力が付与され、建物の振動が低減される。
【0021】
また、振動検知手段によって検知された錘の振動の大きさに基づいて、制御手段が周期整手段を作動させるか否かを判断する。ここで、周期調整手段が作動すると、可動部材に錘を連結して固定し、錘と可動部材とを一体挙動させ、錘の吊り長さを短くする。これにより、錘の固有周期が変わる。従って、錘と建物とが共振(同調)せず、錘の振幅が小さくなって建物と錘との接触が回避される。
【0022】
請求項6に記載の制振装置は、請求項1〜5の何れか1項に記載の制振装置において、前記錘が、床スラブである。
【0023】
上記の構成によれば、錘を床スラブとすることで、錘の質量を確保でき、即ち、建物全体の質量に対する錘の質量を相対的に大きくすることができる。従って、高層建物等の質量が大きい建物に対しても制振効果を発揮させることができる。
【0024】
請求項7に記載の建物は、請求項1〜6の何れか1項に記載の制振装置を有している。
【0025】
上記の構成によれば、請求項1〜6の何れか1項に記載の制振装置を有することで環境性能が向上された建物を構築することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、上記の構成としたので、振り子型TMDにおいて、錘の固有周期を変更できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る制振装置、及び制振装置を有する建物について説明する。
【0028】
先ず、本発明の第1の実施形態に係る制振装置10の構成について説明する。
【0029】
図1には、制振装置10が設置された複数層からなる建物12が示されている。建物12は、左右の柱14、16と、複数の床スラブ18A〜18Dと、ハットトラス20を備えている。鉄筋コンクリート(以下、「RC」という)造の左右の柱14、16の間には、RC造の複数の床スラブ18A〜18Dが架設され、また、柱14、16の上部にはハットトラス20が架設されている。ハットトラス20は、鋼材からなる上弦材20A、下弦材20B、及び斜材20Cを連結したトラス構造とされている。ハットトラス20の下弦材20Bには、複数のブラケット22が設けられており、このブラケット22に回転可能に支持されたピン24に後述する吊り材26が取り付けられている。
【0030】
制振装置10は、吊り材26と、錘としての床スラブ28を備えている。RC造の床スラブ28は、平面視にて矩形の板状に形成され、その四隅にアンカー(不図示)が打ち込まれている。これらのアンカーにはPC鋼線からなる吊り材26の一端が接続されており、この吊り材26によって床スラブ28が略水平となるようにハットトラス20に吊り下げられており、ピン24の軸線を回転軸(図2において、矢印B方向)として床スラブ28がハットトラス20の長手方向(矢印F方向)に揺動可能とされている。
【0031】
なお、吊り材26は、床スラブ28、床スラブ28の仕上材、及び床スラブ28の上に載置される機械や設備等の積載重量を支持可能な剛性・強度を有している。また、ブラケット22と床スラブ28との間に構築された床スラブ18A、18Bにはそれぞれ貫通孔36、39が形成されており、これらの貫通孔36、39を貫通して吊り材26が床スラブ28を支持している。
【0032】
床スラブ28の長手方向両側には固定部材30A、30Bが設けられている。固定部材30A、30Bは板状に形成され、床スラブ28の下面から下向きに突設されている。この固定部材30A、30Bと左右の柱14、16との間には、それぞれオイルダンパー32A、32B(減衰手段)が配置され、建物12に減衰力が付与されている。オイルダンパー32A、32Bは、その軸方向両端部が固定部材30A、30B及び左右の柱14、16に接続され、固定部材30Aと柱14の間、及び固定部材30Bと柱16の間で伸縮自在に設置されている。更に、床スラブ28の上面には、当該床スラブ28の揺れの大きさを検知する振動検知装置58(振動検知手段)が設置されている。この振動検知装置58は、地震時に床スラブ28が揺れたときの速度、加速度等から床スラブ28の振動の大きさを推定し、内蔵されたメモリに記憶する。
【0033】
周期調整手段は、係合部材34、連結機構40、及びソレノイド54を備えている。図3に示すように、吊り材26には係合部材34が設けられている。係合部材34は、鋼製の円錐台形に形成され、床スラブ18Aに形成された円錐台形の貫通孔36(被係合部)と係合可能とされている。また、係合部材34の略中心には上下方向に延びる貫通孔37が設けられている。この貫通孔37には吊り材26が挿通され、この吊り材26に沿って係合部材34が上下方向に移動可能に取り付けられている。
【0034】
係合部材34は、床スラブ18Aの上面に設けられた連結機構40によって床スラブ18Aに連結されている。連結機構40は、フランジ42、ピン44、土台46及び固定台50を備えている。係合部材34の上面に固定されたフランジ42には貫通孔が形成され、また、床スラブ18Aの上面に固定された土台46には貫通孔が形成され、これらの貫通孔に水平方向に貫通されるピン44によって、係合部材34が床スラブ18Aに連結支持されている。このピン44にはキー溝が形成されており、上方から土台46を貫通すると共にピン44のキー溝に係合するストッパ部材52によって、ピン44が土台46に固定されている。また、ピン44と床スラブ18Aの上面に固定された固定台50との間にはコイルばね48が配置され、これらのピン44及び固定台50に接続されたコイルばね48によってピン44が固定台50側に付勢(矢印C方向)されている。ピン44はコイルばね48の付勢力によって固定台50側に付勢されているが、ストッパ部材52がピン44のキー溝に係合しているため、通常ピン44がフランジ42から抜け出さず、係合部材34が床スラブ18Aに連結支持されている。これにより、係合部材34の貫通孔37の内周壁に囲まれた吊り材26の一部26Aが、係合部材34を介して床スラブ18Aに固定(拘束)され、水平方向の変位が規制されている。従って、図4に示すように、地震時において床スラブ28は係合部材34の下面を支点(図4において、矢印A方向)として吊り長さLで揺動する。吊り長さLは、床スラブ28の動吸効果を高めるために床スラブ28の周期と建物12の固有周期とが共振(同調)する長さに設定される。
【0035】
一方、ストッパ部材52にはソレノイド54が連結され、このソレノイド54がストッパ部材52を上方(矢印D方向)へ移動させることにより、ストッパ部材52とピン44との係合が解除され、ピン44がコイルばね48の付勢力によって固定台50側へ移動する。この結果、ピン44がフランジ42から抜け出し、係合部材34と床スラブ18Aの貫通孔36との係合が解除され、係合部材34が下方(矢印E方向)へ移動(落下)する。これにより、係合部材34によって水平方向の移動が規制された吊り材26の一部26Aの固定(拘束)が解除され、吊り材26が貫通孔36の直径の範囲内で水平方向に変位可能となる。この場合、図4に示すように、床スラブ28はハットトラス20に設けられたピン24を支点(矢印B方向)として揺動する。
【0036】
ソレノイド54には、制御手段56が接続されており、地震時に振動検知装置58が床スラブ28の揺れの大きさを検出し、この検出信号に基づいて制御手段56がソレノイド54を作動させるか否かを判断する。具体的には、振動検知装置58の検出信号に含まれる床スラブ28の揺れの大きさが、予め設定された所定値以上となったときに、制御手段56がソレノイド54を作動させ、ストッパ部材52を上方(矢印D方向)へ移動させる。他方、振動検知装置58の検出信号に含まれる床スラブ28の揺れの大きさが、予め設定された所定値未満の場合は、ソレノイド54を作動させない。
【0037】
係合部材34の下方には、鋼製の円盤形の支持部材38が配置されている。この支持部材38の略中心には貫通孔(不図示)が設けられ、この貫通孔に挿通された吊り材26に支持部材38が溶接固定されている。この支持部材38により、吊り材26に沿って下方(矢印E方向)に移動(落下)した係合部材34が支持される。
【0038】
ここで、一般的に単振り子の周期は、支点から錘の重心までの距離(吊り長さ)の1/2乗に比例するところ、図4に示すように、床スラブ18Aの貫通孔36に係合部材34が係合している場合、床スラブ28は係合部材34を支点(矢印A方向)として吊り長さLで揺動する。一方、床スラブ18Aの貫通孔36と係合部材34との係合が解除された場合、床スラブ28は、ハットトラス20に設けられたピン44を支点(矢印B方向)として吊り長さLで揺動する。従って、地震時に床スラブ28の揺れが所定値以上大きくなり、制御手段56によって床スラブ18Aの貫通孔36と係合部材34との係合が解除されると、床スラブ28の吊り長さがLからLに変わり(L<L)、床スラブ28の周期が長周期化される。
【0039】
次に、第1の実施形態に係る制振装置10の作用について説明する。
【0040】
風や地震等により建物12が揺れると、建物12に吊り下げされた床スラブ28が慣性力によって建物12と位相差をもって振動(図1において、矢印F方向)する。これにより、左右の柱14、16に対して固定部材30A、30Bがそれぞれ相対変位し、オイルダンパー32A、32Bが伸縮して振動エネルギーが吸収される。
【0041】
ここで、一般的な振り子型TMDを例に、建物及び錘の共振(同調)と錘の相対変位量(振幅量)との関係について説明する。なお、以下の試算は、地震時に錘の周期を変化させることによって建物に錘を共振させないことによる効果、即ち、地震時における錘の過大振幅を抑制して錘と建物との衝突を防ぐことを説明するための各種パラメータの数値目安を表すものであり、本実施形態は下記の数値目安に限定されるものではない。
【0042】
図5(A)は一般的な振り子型TMDを単純化した振動モデル59であり、図5(B)は地震時における地盤、建物及び錘の変位を示している。なお、図中のM、K、Cは、それぞれ建物を示す質点、建物の剛性、及び減衰係数であり、m、k、cは、錘を示す質点、振り子型TMDの剛性、及び減衰係数(本実施形態におけるオイルダンパー32に相当)であり、Gは地盤である。また、図6は一般的な多質点系の建物の弾性域における変位応答スペクトル(1次モード、減衰定数2%)の理論値であり、図7は一般的な調和地動に対する一質点系の建物の弾性域における変位応答倍率(1次モード、定常応答、減衰定数10%)の理論値である。なお、図6中の符号60は地盤の変位応答スペクトルを示し、符号62は地盤の応答変位に変位応答倍率(地盤の応答変位に対する建物の応答変位の比)を乗じた建物の変位応答スペクトルを示している。また、図6では、地盤の応答変位は周期比に比例するものと仮定している。
【0043】
先ず、振動モデル59において地盤Gに対する質点M(建物)の相対変位について検討する。一般的に多質点系の建物の相対変位(応答変位)は、地盤の変位に変位応答倍率を乗じた値となり、図6に示されるように、地盤と建物との周期比が例えば、0.5、2のときはそれぞれ約0.2、約2.5となり、周期比が1(共振点)のときは約25(変位応答倍率=約25)となる。これを振動モデル59に置き換えると、地盤G及び質点Mの共振時(周期比=1)における質点Mの変位量xは、地盤の変位量xの約25倍(x/x≒25)となる。
【0044】
次に、振動モデル59において質点M(建物)に対する質点m(錘)の相対変位について検討する。質点Mと質点mとの相対関係は、地盤と一質点系の建物との相対関係に相当する(このとき、図7の周期比とは、建物周期を錘の周期で除したものである)。一質点系の建物の相対変位は、多質点系の建物と同様に地盤の変位に変位応答倍率を乗じた値となる。この変位応答倍率は、図7から分かるように地盤と一質点系の建物との周期比が例えば0.5、2のときはそれぞれ約0.3倍、約1.3倍となり、周期比が1(共振点)のときは約5倍となる。これを振動モデル59に置き換えると、質点Mに対する質点mの相対変位量xは、質点Mの変位量xの約5倍(x/x≒5)となる。
【0045】
従って、振動モデル59において、建物及び振り子型TMDの減衰係数C、cをそれぞれ2%、10%、地震時における地盤Gの変位量xを1とすると、質点Mと質点mとが共振したときの質点mの相対変位量xは、x=x×(x/x)×(x/x)=1×25×5=125となる。このように質点Mと質点mとが共振すると、質点mの相対変位量xが過大となる。従って、図1に示す建物12において、大きな地震時に建物12と床スラブ28とを共振させた状態のままにしておくと、床スラブ28の揺れ(振幅)が過大となり、左右の柱14、16に対して床スラブ28が接触する可能性がある。
【0046】
そこで、本実施形態では、地震時の床スラブ28の揺れの大きさが所定値以上となった場合に、吊り長さを変更して床スラブ28の周期を変え、建物12に床スラブ28を共振(同調)させないようにする。上記振動モデル59を用いて説明すると、例えば、質点mの周期を半分にして質点Mと質点mとの周期比を0.5にすると、質点mの相対変位量xは、x=x×(x/x)×(x/x)=0.5×0.2×0.3=0.03となる。また、質点mの周期を2倍にして質点Mと質点mとの周期比を2にすると、質点mの相対変位量xは、x=x×(x/x)×(x/x)=2×2.5×1.3=6.5となる。このように、質点mの周期を変えることで、共振時(相対変位量x=125)と比較して質点mの相対変位量xが飛躍的に小さく抑えることができる。
【0047】
そこで、本実施形態では以下のように床スラブ28の周期を調整する。即ち、図1に示すように振動検知装置58によって検知された床スラブ28の振動の大きさが所定値未満の場合、係合部材34の下面を支点(矢印A方向)として建物12に床スラブ28を共振(同調)させた状態で揺動(矢印F方向)させる。これにより、振動低減効果を高めることができる。一方、建物12の揺れが大きくなり、振動検知装置58によって検知された床スラブ28の振動の大きさが所定値以上となった場合、制御手段56がソレノイド54を作動させる。ソレノイド54は、ストッパ部材52を上方に移動させ、ストッパ部材52とピン44とを係合させる。これにより、コイルばね48の付勢力によってピン44が固定台50側へ移動してフランジ42から抜け出し、係合部材34と床スラブ18Aの貫通孔36との係合が解除され、係合部材34が下方へ移動(落下)する。この結果、係合部材34による吊り材26の一部26Aの固定(拘束)が解除され、図2及び図4に示すように床スラブ28がハットトラス20に設けられたピン44を支点(矢印B方向)とし揺動(矢印F方向)し、床スラブ28の吊り長さがLからL(図4参照)に変わって、床スラブ28の周期が長周期化される。従って、建物12と床スラブ28とが共振(同調)せず、床スラブ28の振幅が小さくなって床スラブ28と左右の柱14、16との接触が回避される。
【0048】
また、床スラブ28を錘として用いることにより、錘の質量を確保し易い。従って、超高層建物等のように質量が大きい建物に対しても、十分な制振効果(動吸効果)を発揮することができる。
【0049】
次に、第1の実施形態に係る制振装置10の変形例の構成について説明する。
【0050】
第1の実施形態では、振動検知装置58によって検知された床スラブ28の振動の大きさが所定値以上となった場合に、周期調整手段によって床スラブ28の周期を長周期化したが、本変形例では床スラブ28の周期を短周期化する。
【0051】
図8及び図9に示すように、吊り材26には、支持部材64及び係合部材66が設けられている。鋼製の支持部材64は円柱形に形成されている。この支持部材64の略中心には貫通孔が形成され、この貫通孔に挿通された吊り材26に支持部材64を溶接等することで、支持部材64が吊り材26に固定されている。更に、支持部材64の上面には連結機構40が設けられている。
【0052】
支持部材64の下方には、係合部材66が配置されている。鋼製の係合部材66は、逆円錐台形に形成され、床スラブ18Bに形成された逆円錐台形の貫通孔68(被係合部)と係合可能とされている。また、係合部材66の略中心には上下方向に延びる貫通孔70が設けられており、この貫通孔70に挿通される吊り材26に沿って、係合部材66が上下方向に移動可能に取り付けられている。更に、係合部材66にはフランジ42が設けられている。フランジ42は係合部材66の上面に突設されており、支持部材64に形成された連結孔65に挿入される。支持部材64の上面から突き出したフランジ42の先端部には貫通孔が形成されており、この貫通孔に貫通される連結機構40のピン44によって、係合部材66が支持部材64に連結支持されている。
【0053】
ここで、図9に示すように、制御手段56がソレノイド54を作動させ、係合部材66と支持部材64との連結が解除されると、係合部材66が吊り材26に沿って下方へ移動(落下)する。移動した係合部材66は、床スラブ18Bの貫通孔68に係合して停止する。貫通孔68に係合部材66が係合すると、係合部材66の貫通孔70の内周壁に囲まれた吊り材26の一部26Bが、係合部材66を介して床スラブ18B(建物12)に固定(拘束)される。これにより、吊り材26の一部26Bの水平方向の変位が規制され、床スラブ28が係合部材66の下面を支点(矢印A)として揺動(図8において、矢印F方向、吊り長さL)する。
【0054】
次に、第1の実施形態に係る制振装置10の変形例の作用について説明する。
【0055】
振動検知装置58によって検知された床スラブ28の振動の大きさが所定値未満の場合、床スラブ28はハットトラス20に設けられたピン44を支点(図8において、矢印B方向、吊り長さL)として揺動(矢印F方向)する。一方、建物12の揺れが大きくなり、振動検知装置58によって検知された床スラブ28の振動の大きさが所定値以上となった場合、制御手段56がソレノイド54を作動させる。ソレノイド54はストッパ部材52を上方に移動させ、ストッパ部材52とピン44との係合を解除する。これにより、コイルばね48の付勢力によってピン44が固定台50側へ移動してフランジ42から抜け出し、係合部材66と支持部材64の係合が解除される。この結果、係合部材66が下方へ移動(落下)し、床スラブ18Bの貫通孔68と係合して停止する。これにより、吊り材26の一部26Bが床スラブ18B(建物12)に固定され、係合部材66の下面を支点(図9において、矢印A方向)として床スラブ28が揺動し、床スラブ28の吊り長さがLからLに変わって、床スラブ28の周期が短周期化される。従って、床スラブ28と建物12との共振(同調)が回避され、床スラブ28の振幅が小さくなって床スラブ28と左右の柱14、16との接触が回避される。
【0056】
次に、本発明の第2の実施形態に係る制振装置80の構成について説明する。なお、第1の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
【0057】
図10及び図11には、制振装置80が設置された複数層からなる建物82が示されている。建物82の内部には、RC造の壁84、86が設置されている。これらの壁84、86と左右の柱14、16との間には複数のRC造の床スラブ88が架設されている。なお、柱14と柱16との間は吹き抜けとされている。
【0058】
制振装置10は、吊り材90、錘としての床スラブ28、及び可動部材としての床スラブ92を備えている。吊り材90は、PC鋼線からなる吊り材90A及び吊り材90Bで構成されている。吊り材90Aは、その一端がハットトラス20の下弦材20Bに設けられたブラケット22のピン24に取り付けられ、他端が床スラブ92に取り付けられている。
【0059】
RC造の床スラブ92は、平面視にて矩形の板状に形成されると共に略中央部に孔92Aが設けられている。この孔92Aの外周部にはアンカー(不図示)が打ち込まれており、これらのアンカーに吊り材90Aの一端(吊り材90Aの一部)が接続されている。これにより、床スラブ92が吊り材90Aによって略水平となるようにハットトラス20に吊り下げられており、ピン96の軸線を回転軸(図11において、矢印B方向)としてハットトラス20の長手方向(図11において、矢印I方向)に揺動可能とされている。なお、壁84、86に床スラブ92、28が挿入される開口84A、84B、86A、86Bがそれぞれ形成されている。
【0060】
また、床スラブ92は、左右の柱14、16に設けられたH型鋼からなる梁98の上に載置されている。図12に示すように、梁98のフランジ部98Aの上面にはボルト(不図示)又は接着剤等によって滑り材102が固定されており、この滑り材102の上に床スラブ92が載置されている。また、床スラブ92、滑り材102及び梁98のフランジ部98Aには、それぞれ貫通孔104、106、108が形成されており、これらの貫通孔104、106、108に挿入される連結ピン110によって床スラブ92が梁98に連結固定され、床スラブ92の水平方向の移動が規制されている。これにより、床スラブ92を介して吊り材90Aの一端(吊り材90Aの一部)が梁98(建物82)に固定されている。
【0061】
連結ピンの110の上端部には貫通孔が形成されており、この貫通孔に貫通された連結機構40のピン44によって、連結ピン110が貫通孔104、106、108に挿入された状態で保持されている。一方、制御手段56がソレノイド54を作動させ、ストッパ部材52とピン44との係合が解除されると、ピン44がコイルばね48の付勢力によって固定台50側へ移動し、連結ピン110の貫通孔からピン44が抜け出して連結ピン110が下方(矢印E方向)へ移動(落下)する。下方へ移動した連結ピン110は、床スラブ92の貫通孔104から抜け出し、フランジ部98Bに当接してフランジ部98Aの貫通孔108に挿入された状態で保持される。これにより、床スラブ92と梁98との連結固定が解除され、床スラブ92が滑り材102の上をスライドして水平方向(矢印I方向)へ移動可能となる。即ち、床スラブ92を介して梁98(建物82)に固定されていた吊り材90Aの一端(吊り材90Aの一部)の固定が解除され、床スラブ92がピン96の軸線を回転軸(図11において、矢印B方向)としてハットトラス20の長手方向(図11において、矢印I方向)に揺動可能となる。なお、滑り材102は適宜省略可能である。
【0062】
図10に示すように、床スラブ92の下面には複数のブラケット94が設けられている。ブラケット94には、ピン96が回転可能に支持されており、このピン96に吊り材90Bの一端が取り付けられている。床スラブ92の下方には床スラブ28が配置されている。床スラブ28の略中央部には孔28Aが形成され、この孔28Aの外周部にはアンカー(不図示)が打ち込まれている。これらのアンカーには吊り材90Bの他端が接続されており、これらの吊り材90Bによって床スラブ28が略水平になるように床スラブ92に吊り下げられると共に、ピン96の軸線を回転軸(矢印A方向、吊り長さL)としてハットトラス20の長手方向に揺動可能(矢印H方向)とされている。なお、吊り長さLは、建物82に床スラブ28が共振する長さとされている。
【0063】
次に、第2の実施形態に係る制振装置80の作用について説明する。
【0064】
風や地震等により建物82が揺れると、建物82に吊り下げされた床スラブ28に慣性力が作用し、床スラブ28がピン96を支点(図10において、矢印A方向、吊り長さL)として建物82と位相差をもって振動(図10において、矢印H方向)する。これにより、左右の柱14、16に対して固定部材30A、30Bがそれぞれ相対変位し、オイルダンパー32A、32Bが伸縮して振動エネルギーが吸収される。
【0065】
ここで、建物82の揺れが大きくなり、振動検知装置58によって検知された床スラブ28の振動の大きさが所定値以上となった場合、制御手段56がソレノイド54を作動させる。ソレノイド54はストッパ部材52が上方に移動させ、ストッパ部材52とピン44との係合を解除する。これにより、ピン44がコイルばね48の付勢力によって固定台50側へ移動し、連結ピン110の貫通孔からピン44が抜け出して、連結ピン110が下方へ移動(落下)する。この結果、床スラブ92の貫通孔104から連結ピン110が抜けて床スラブ92と梁98との連結が解除され、床スラブ92が滑り材102の上をスライドして水平方向(図11において、矢印I方向)へ移動可能となる。即ち、床スラブ92を介して梁98(建物82)に固定されていた吊り材90Aの一端(吊り材90Aの一部)の固定が解除され、床スラブ92がハットトラス20に設けられたピン24を支点(図11において、矢印B方向、吊り長さL)としてハットトラス20の長手方向(図11において、矢印I方向)に揺動する。これにより、床スラブ92に吊り下げられた床スラブ28の吊り長さがLからLに変わり(L<L)、床スラブ28周期が長周期化される。従って、床スラブ28と建物82とが共振(同調)がせず、床スラブ28の振幅が小さくなり、床スラブ28と左右の柱14、16との接触が回避される。
【0066】
次に、第2の実施形態の変形例の構成について説明する。
【0067】
上記第2に実施形態では、図10及び図11に示すように、床スラブ28の揺れが所定値以上となった場合に、制御手段56が床スラブ92と梁98(建物82)との連結固定を解除することで吊り材90Aの一部の固定を解除し、床スラブ28の吊り長さをLからLに変更して床スラブ28の周期を長周期化している。これに対して本変形例では、初期状態において床スラブ28を吊り長さLで揺動させ、床スラブ28の揺れが所定値以上となった場合に、制御手段56が床スラブ92を梁98(建物82)に連結固定し、床スラブ28の吊り長さをLからLに変更して床スラブ28の周期を短周期化する。
【0068】
具体的には、図13に示すように、第2の実施形態における連結ピン110よりも軸方向長さが短い連結ピン112を使用する。この連結ピン112は、床スラブ92の下面から突出しないように貫通孔104に収納された状態で、連結機構40のピン44によって保持されている。従って、床スラブ92と梁98とは連結されず、床スラブ92は滑り材102の上をスライドして水平方向(矢印I方向)へ移動可能となっている。
【0069】
連結ピン112の下方には、当該連結ピン112が挿入される管部材114が設けられている。筒状の管部材114は、梁98の上下のフランジ部98A、98Bの間には配置されており、その内部には仕切板116が溶接されている。この仕切板116によって、管部材114に挿入された連結ピン112が、貫通孔104、106、及び108に挿入された状態(2点鎖線)で支持される。従って、制御手段56がソレノイド54を作動させ、連結ピン112が下方へ移動(落下)して管部材114に挿入された場合、床スラブ92と梁98(建物82)とが連結固定され、床スラブ92を介して吊り材90Aの一部が梁98に固定される。
【0070】
次に、第2の実施形態の変形例の作用について説明する。
【0071】
風や地震等により建物82が揺れると、建物82に吊り下げされた床スラブ28及び床スラブ92に慣性力が作用し、ハットトラス20に設けられたピン24を支点(図11において、矢印B方向、吊り長さL)として床スラブ28、92がハットトラス20の長手方向(図11において、矢印I方向、矢印H方向)に振動する。これにより、左右の柱14、16に対して固定部材30A、30Bがそれぞれ相対変位し、オイルダンパー32A、32Bが伸縮して振動エネルギーが吸収される。
【0072】
ここで、建物82の揺れが大きくなり、振動検知装置58によって検知された床スラブ28の振動の大きさが所定値以上となった場合、図13に示すうに、制御手段56がソレノイド54を作動させる。ソレノイド54はストッパ部材52を上方へ移動し、ストッパ部材52とピン44との係合を解除する。これにより、ピン44がコイルばね48の付勢力によって固定台50側へ移動し、連結ピン112の貫通孔からピン44が抜け出して連結ピン112が下方へ移動(落下)する。下方へ移動した連結ピン112は、連結ピン112の軸線と管部材114の軸線とが一致したときに、管部材114に挿入され、仕切板116に当接して貫通孔104、106、108に挿入された状態で保持される。これにより、床スラブ92を介して吊り材90Aの一部が梁98(建物82)に固定され、床スラブ28の吊り長さがLからLに変わり(L>L)、床スラブ28の周期が短周期化される。従って、床スラブ28と建物82とが共振(同調)せず、床スラブ28の振幅が小さくなり、床スラブ28と左右の柱14、16との接触が回避される。
【0073】
次に、本発明の第3の実施形態に係る制振装置120の構成について説明する。なお、第1、第2の実施形態と同じ構成のものは、同符号を付すると共に、適宜省略して説明する。
【0074】
図14及び図15には、制振装置120が設置された複数層からなる建物122が示されている。建物122の内部には、RC造の壁84、86が設置されている。これらの壁84、86と左右の柱14、16との間には、複数のRC造の床スラブ88が架設されている。なお、柱14と柱16との間は吹き抜けとされている。
【0075】
制振装置120は、吊り材124、126と、錘としての床スラブ28、及び可動部材としてのフレーム体128を備えている。吊り材124はPC鋼線からなり、その一端がハットトラス20に設けられたブラケット22のピン24に取り付けられている。
【0076】
鋼製のフレーム体128は、フレーム128A、フレーム128B、及びフレーム128Cを接合して構成されている。水平に配置されたフレーム128Aの軸方向両側には、L字型に連結されたフレーム128B、128Cが対称に配置され、フレーム128Aの端部にそれぞれ接合されている。フレーム128Cには図示せぬフックが設けられており、このフックに接続された吊り材124によってフレーム体128がピン24の軸線を回転軸(矢印J方向、吊り長さL)としてハットトラス20の長手方向に揺動可能(矢印K方向)に吊り下げられている。なお、吊り長さLは、建物122にフレーム体128及び床スラブ28が共振する長さとされている。
【0077】
また、フレーム128Aの下面には、複数のブラケット130が設けられており、このブラケット130に回転可能に支持されたピン132にPC鋼線からなる吊り材126の一端が取り付けられている。また、フレーム体128の下方には床スラブ28が配置されている。床スラブ28には、複数のアンカー(不図示)が打ち込まれている。これらのアンカーには吊り材126の他端が接続され、この吊り材126によって床スラブ28が略水平になるようにフレーム体128に吊り下げされると共に、ピン132の軸線を回転軸(図15において、矢印N方向)として揺動可能とされている。
【0078】
また、図16に示すように、フレーム128Cのフランジ部及び床スラブ28にはそれぞれ貫通孔134、136が設けられており、これらの貫通孔134、136に挿入される連結ピン138によってフレーム128Cに床スラブ28が連結されて固定されている。即ち、連結ピン138によって、フレーム128Cと床スラブ28との水平方向の相対変位が規制され、フレーム体128と床スラブ28とが一体となって揺動する。
【0079】
フレーム128Cのフランジ部には連結機構40が設けられており、連結ピン138の上部側周面には一対の溝138Aが設けられている。この溝138Aに係合される連結機構40のピン44によって、連結ピン138が貫通孔134、136に挿入された状態で保持されている。なお、床スラブ28の下面にはボルト135によって板材133が取り付けられており、この板材133が貫通孔136を塞いでいる。
【0080】
一方、制御手段56がソレノイド54を作動させ、溝138Aとピン44との係合が解除されると、ピン44がコイルばね48の付勢力によって固定台50側へ移動し、連結ピン138が溝138Aから抜け出して連結ピン138が下方へ移動(落下)する。下方へ移動した連結ピン138は、フレーム128Cの貫通孔134から抜け出し、板材133に当接して床スラブ28の貫通孔136に収納された状態で保持される。これにより、フレーム体128と床スラブ28との連結が解除されてフレーム体128と床スラブ28とが別々に揺動し、床スラブ28がピン132の軸線を回転軸(図15において、矢印N方向)としてハットトラス20の長手方向(図15において、矢印O方向)に揺動可能となる。このときの床スラブ28の吊り長さは(L+L)となる。
【0081】
次に、第3の実施形態に係る制振装置120の作用について説明する。
【0082】
風や地震等により建物122が揺れると、建物122に吊り下げされたフレーム体128及び床スラブ28に慣性力が作用し、ハットトラス20に設けられたピン24を支点(図14において、矢印J方向)としてフレーム体128及びこのフレーム体128に連結固定された床スラブ28が一体となってハットトラス20の長手方向(図15において、矢印K方向、吊り長さL)に揺動する。これにより、左右の柱14、16に対して固定部材30A、30Bがそれぞれ相対変位し、オイルダンパー32A、32Bが伸縮して振動エネルギーが吸収される。
【0083】
ここで、建物122の揺れが大きくなり、振動検知装置58によって検知された床スラブ28の振動の大きさが所定値以上となった場合、図16に示すうに、制御手段56がソレノイド54を作動させる。ソレノイド54はストッパ部材52を上方に移動し、ストッパ部材52とピン44との係合を解除する。この結果、ピン44がコイルばね48の付勢力によって固定台50側へ移動し、ピン44と連結ピン138の溝138Aとの係合が解除され、連結ピン138が下方へ移動(落下)する。下方へ移動した連結ピン138は、板材133に当接して床スラブ28の貫通孔136に収納された状態で保持される。これにより、フレーム体128と床スラブ28との連結固定が解除され、フレーム体128と床スラブ28とが別々に揺動する。即ち、床スラブ28がピン132を支点(図15において、矢印N方向)として、ハットトラス20の長手方向(図15において、矢印O方向)に揺動する。これにより、床スラブ28の吊り長さがLから(L+L)に変わり、床スラブ28の周期が長周期化される。従って、床スラブ28と建物12とが共振(同調)せず、床スラブ28の振幅が小さくなり、床スラブ28と左右の柱14、16との接触が回避される。
【0084】
なお、上記の実施形態では、振動検知装置58によって検知された床スラブ28の振動の大きさが所定値以上となった場合、フレーム体128と床スラブ28との連結固定を解除して、床スラブ28の吊り長さをLから(L+L)に変えて床スラブ28の周期を長周期化したがこれに限らない。例えば、床スラブ28の振動の大きさが所定値以上となった場合に、別々に揺動するフレーム体128と床スラブ28と、例えば、図13に示すような連結機構40で連結して固定し、床スラブ28の吊り長さを(L+L)からLに変えて床スラブ28の周期を短周期化し、床スラブ28と建物12とを共振させないように構成しても良い。
【0085】
次に、本発明の実施形態に係る周期調整手段の変形例について説明する。以下、周期調整手段を構成する連結機構の変形例を、第1の実施形態に適用した場合を例に説明するが、当然ながら当該変形例に係る連結機構を適宜設計変更して第2、第3の実施形態へ適用可能である。なお、図17〜図19に示される床スラブ18Aは、図1に示す建物12の床スラブ18Aに相当する。
【0086】
先ず、変形例1に係る連結機構150について説明する。
【0087】
図17には、連結機構150が適用された床スラブ18Aが示されている。連結機構150は、固定フランジ152、ピン154、及びモータ156を備えている。モータ156は床スラブ18Aの上面に設置されている。モータ156及び係合部材34の上面に突設されたフランジ42の間には固定フランジ152が設けられている。固定フランジ152は、床スラブ18Aの上面に固定されると共にフランジ42と対向して配置されている。フランジ42及び固定フランジ152にはそれぞれ貫通孔が形成されており、これらの貫通孔に挿入されたピン154によって、係合部材34が床スラブ18Aに連結支持されている。ピン154の後端部には、リング状の取付部154Aが設けられている。この取付部154Aには鋼製のワイヤ160の一端が取り付けられている。ワイヤ160の他端は、モータ156に設けられた回転ロッド158の先端に取り付けられている。回転ロッド158はモータ156によって回転駆動され、固定フランジ152から離間する方向に回転可能となっている。
【0088】
また、モータ156には、制御手段56が接続されており、地震時に振動検知装置58が床スラブ28の揺れの大きさを検出し、この検出信号に基づいて制御手段56がモータ156を作動させるか否かを判断する。即ち、制御手段56がモータ156を作動させた場合、回転ロッド158が固定フランジ152から離間する方向に回転し、ワイヤ160に取り付けられたピン154がフランジ42の貫通孔から抜ける。この結果、床スラブ18Aと係合部材34との連結が解除されて係合部材34が下方へ移動(落下)する。これにより、係合部材34によって水平方向の移動が規制されていた吊り材26の一部26Aの固定(拘束)が解除され、吊り材26が貫通孔36の直径の範囲内で水平方向に揺動可能となる。従って、床スラブ28(図1参照)の吊り長さが変更され、床スラブ28の周期が長周期化される。
【0089】
次に、変形例2に係る連結機構140について説明する。
【0090】
図18には、連結機構140が適用された床スラブ18Aが示されている。床スラブ18Aには貫通孔142(被係合部)が形成されており、この貫通孔142には円柱形の係合部材144が係合している。この係合部材144の略中心に設けられた貫通孔には吊り材26が挿通され、この吊り材26に沿って係合部材144が上下方向に移動可能に取り付けられている。また、係合部材144の側周面には一対の溝穴144Aが形成されている。
【0091】
連結機構140は床スラブ18Aに埋設された油圧シリンダ146を備えている。油圧シリンダ146は油圧によって水平方向へ移動可能なロッド148を備えており、このロッド148を係合部材144の溝穴144Aに挿入することで、係合部材144が床スラブ18Aに連結支持されている。
【0092】
また、油圧シリンダ146には、制御手段56が接続されており、地震時には、振動検知装置58が床スラブ28の揺れの大きさを検出し、この検出信号に基づいて制御手段56が油圧シリンダ146のロッド148を作動させるか否かを判断する。即ち、制御手段56がロッド148を作動させた場合、ロッド148が水平方向へ移動する。この結果、ロッド148が係合部材144の溝穴144Aから抜け出し(2点鎖線)、係合部材144と床スラブ18Aの貫通孔142との係合が解除され、係合部材144が下方(矢印E方向)へ移動(落下)する。これにより、係合部材144によって水平方向の移動が規制されていた吊り材26の一部26Aの固定(拘束)が解除され、吊り材26が貫通孔142の直径の範囲内で水平方向に揺動可能となる。従って、床スラブ28(図1参照)の吊り長さが変更され、床スラブ28の周期が長周期化される。
【0093】
次に、変形例3に係る連結機構170について説明する。
【0094】
図19には、連結機構170が適用された床スラブ18Aが示されている。床スラブ18Aには貫通孔172(被係合部)が形成されており、この貫通孔172には円柱形の係合部材174が係合している。係合部材174の略中心に設けられた貫通孔には吊り材26が挿通されており、この吊り材26に沿って係合部材174が上下方向に移動可能に取り付けられている。また、係合部材174は形状記憶合金からなり、常温では貫通孔172と同一又は僅かに大きい直径とされているが、所定温度以上になると縮径するように構成されている。従って、通常、係合部材174は貫通孔172に押し込まれた状態で当該貫通孔172と係合され、床スラブ18Aに連結支持されているが、係合部材174の側周面の温度が所定温度以上になると、縮径して直径が貫通孔172の直径よりも小さくなる。この結果、係合部材174と貫通孔172との係合が解除され、係合部材174が下方へ移動(落下)するように構成されている。
【0095】
連結機構170は、床スラブ18Aの貫通孔172の周辺に埋設される加熱器176を備えている。加熱器176は電熱線を備えており、この電熱線に電流を流すことで当該電熱線が発熱し、係合部材174の側周面が加熱されるようになっている。
【0096】
また、加熱器176には、制御手段56が接続されており、地震時には、振動検知装置58が床スラブ28の揺れの大きさを検出し、この検出信号に基づいて制御手段56が加熱器176を作動させるか否かを判断する。即ち、制御手段56が加熱器176を作動させた場合、電熱線に電流が流され、当該電熱線が発熱する。この結果、係合部材174の側周面が加熱されて係合部材174が縮径し、係合部材174と床スラブ18Aの貫通孔172との係合が解除され、係合部材174が下方(矢印E方向)へ移動(落下)する。これにより、係合部材174によって水平方向の移動が規制されていた吊り材26の一部26Aの固定(拘束)が解除され、吊り材26が貫通孔172の直径の範囲内で水平方向に変位可能となる。従って、床スラブ28(図1参照)の吊り長さが変更され、床スラブ28の周期が長周期化される。
【0097】
次に、変形例4に係る連結機構180について説明する。
【0098】
図20には、連結機構180が適用された床スラブ18Aが示されている。床スラブ18Aには貫通孔182が形成されている。この貫通孔182の上方には円柱形の係合部材184が設けられている。係合部材184の略中心に設けられた貫通孔には吊り材26が挿通されており、この吊り材26に沿って係合部材184が上下方向に移動可能に取り付けられている。
【0099】
連結機構180は、土台186、回転板188、及び電磁石190を備えている。土台186は、床スラブ18Aの上面であって貫通孔182の縁に複数設けられている。土台186には回転軸186Aが設けられており、この回転軸186Aに回転可能に支持された回転板188の材軸を貫通孔182の中心に向けて放射状に配置されている。この回転板188の後端部の下面には鉄板192が設けられている。鉄板192と対向する床スラブ18Aの位置には電磁石190が固定されている。電磁石190は通電によって磁力を発生するものであり、通電時には磁力によって鉄板192が吸着固定される。これにより、回転板188が略水平となるように固定されると共に回転が規制され、回転板188の先端部に載置された係合部材184を支持可能となっている。回転板188の先端部には複数の凸部194が設けられており、係合部材184の下面に設けられた複数の凹部196に凸部194を係合させることで係合部材184の水平方向の移動が拘束されている。
【0100】
また、電磁石190には、制御手段56が接続されており、地震時には、振動検知装置58が床スラブ28の揺れの大きさを検出し、この検出信号に基づいて制御手段56が電磁石190への通電を停止させるか否かを判断する。即ち、制御手段56が電磁石190の通電を停止した場合、磁力によって電磁石190に吸着固定されていた回転板188が開放され、回転板188が回転する。この結果、回転板188の先端部が下方へ移動して凸部194と凹部196との係合が解除されると共に、回転板188の先端部で支持されていた係合部材184が吊り材26に沿って下方へ移動(落下)する。これにより、係合部材184によって水平方向の移動が規制されていた吊り材26の一部26Aの固定(拘束)が解除され、吊り材26が貫通孔182の直径の範囲内で水平方向に変位可能となる。従って、床スラブ28(図1参照)の吊り長さが変更され、床スラブ28の周期が長周期化される。
【0101】
次に、変形例5に係る連結機構200について説明する。
【0102】
図21(A)〜図21(C)には、連結機構200が適用された床スラブ18Aが示されている。図21(A)に示すように、床スラブ18Aには貫通孔202(被係合部)が形成されている。この貫通孔202には、円柱形の係合部材204が収納されている。係合部材204は、筒状の外周部204Aと円柱形のコア部204Aとを備えている。外周部204Aには貫通孔が形成されており、この貫通孔にコア部204Aが収納されている。係合部材204Bの略中心に設けられた貫通孔には吊り材26が挿通され、この吊り材26に沿って係合部材204Bが上下方向に移動可能に取り付けられている。
【0103】
外周部204Aの側周面には複数の貫通孔206が形成されており、床スラブ18Aの内周壁には複数の溝穴208が形成されている。これらの貫通孔206及び溝穴208に貫通された連結ピン210によって、外周部204Aが床スラブ18Aに連結支持されている。この連結ピン210とコア部204Bとはワイヤ212によって繋がれている。ワイヤ212の一端は、連結ピン210の後端部に取り付けられ、外周部204Aの内周壁に設けられた滑車214を介してコア部204Aの上面に取り付けられている。
【0104】
また、外周部204Aの下部にはモータ216が埋設されている。モータ216は回転軸216Aを備え、この回転軸216Aが外周部204Aの下面から突出するように埋設されている。この回転軸216Aにはコア部204Bの下面にまで延びる板材218が取り付けられており、この板材218によってコア部204Bが外周部204Aに支持されている。モータ216が駆動して板材218が90度回転すると、図21(B)に示すように、板材218による支持が解除され、コア部204Bが下方へ移動(落下)する。
【0105】
また、モータ216には、制御手段56が接続されており、地震時には、振動検知装置58が床スラブ28の揺れの大きさを検出し、この検出信号に基づいて制御手段56がモータ216を作動させるか否かを判断する。即ち、制御手段56がモータ216を駆動させ、板材218を回転させた場合、板材218によるコア部204Bに支持が解除され、コア部204Bが下方へ移動(落下)する。この結果、ワイヤ212によってコア部204Bに繋げられた連結ピン210が溝穴208から抜け出し、貫通孔202と外周部204Aとの連結が解除される。これにより、係合部材204によって水平方向の移動が規制されていた吊り材26の一部26Aの固定(拘束)が解除され、吊り材26が貫通孔182の直径の範囲内で水平方向に変位可能となる。従って、床スラブ28(図1参照)の吊り長さが変更され、床スラブ28の周期が長周期化される。
【0106】
なお、上記第1〜第3の実施形態では、錘として床スラブ28を用いたがこれに限らず、例えば、設備用架台、吊り天井、キャットウォーク、ブドウ棚等を用いても良い。また、図22に示す模式図のように、床スラブ28を対となる2本の吊り材26A、26Bを用いて、いわゆる複数本(図22では2本)吊りにしても良い。この場合、各吊り材26A、26Bに上下方向に移動可能な係合部材34A、34Bを設ければ良い。
【0107】
また、上記第1の実施形態では、吊り材26の一部26Aを床スラブ18Bに固定したがこれに限らない。吊り材26の一部26Aは、建物12のどこかに固定されれば良く、例えば、柱、梁、屋根、壁等に固定しても良い。また、上記第2の実施形態では、可動部材として床スラブ92を用いたがこれに限らない。可動部材は、吊り材90に設けられ、当該可動部材を介して吊り材90の一部を建物82に固定可能な部材であれば良く、例えば、単なるH型鋼等の鋼材や木材等でも良い。第3の実施形態における可動部材としてのフレーム体128も同様である。
【0108】
更に、上記第1〜3の実施形態における吊り材26、90、124、126はPC鋼線に限らず、錘を支持可能な部材であれば良い。例えば、PC鋼棒や高強度ケーブル等を用いても良い。また、吊り材は物理的に一本の部材である必要なく、支点と錘とを接続する複数の部材であっても良い。例えば、第2の実施形態では、床スラブ92を介して吊り材90Aと吊り材90Bとを接続し、一つの吊り材90を構成している。このような構成も本発明の吊り材に含まれる。また、吊り材の一部とは、当該部位を固定した場合に錘の支点となり得る吊り材の部位を言う。従って、複数の部材で吊り材を構成した場合は、これらの部材の何れかの部位であって錘の支点となる部位を差す。
【0109】
また、上記第1〜3の実施形態では、減衰手段としてオイルダンパー32を用いたがこれに限らず、例えば、種々の粘性ダンパーを適用可能であり、また、摩擦ダンパー、粘弾性ダンパー等を使用しても良い。
【0110】
更に、上記第1〜3の実施形態では、振動検知装置58によって床スラブ28の振動の大きさを検出したがこれに限らず、建物の振動の大きさを検知しても良い。この場合、制御手段56は、建物の振動の大きさから錘の振動の大きさを推定し、周期調整手段を作動させるか否かを判断すれば良い。
【0111】
更にまた、上記第1〜3の実施形態では、周期調整手段としては、ソレノイド56やモータ156等を用いたがこれに限らない。例えば、振動・外乱の大きさによって物性が変化する材料を用いても良い。例えば、チキソトロピー性を有する物質や圧電素子を用いたアクチュエータなどを用いても良い。
【0112】
また、本発明の制振装置10、80、120を有することで、耐震性能、制振性能が向上された建物を構築することができる。
【0113】
以上、本発明の第1〜第3の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、第1〜第3の実施形態を組み合わせて用いてもよいし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る制振装置が設置された建物を示す正面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る制振装置が設置された建物を示す正面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る周期調整手段を示す、概略拡大図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る周期調整手段を示す、概略拡大図である。
【図5】(A)は一般的な振り子型TMDの振動モデルを示す概略図であり、(B)は各質点の変位を示す図である。
【図6】一般的な多質点系の建物の弾性域における変位応答スペクトル示すグラフである。
【図7】一般的な調和地動に対する一質点系の建物の弾性域における変位応答倍率を示すグラフである。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る制振装置の変形例が設置された建物を示す正面図である。
【図9】本発明の第1の実施形態の周期調整手段の変形例を示す、概略拡大図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係る制振装置が設置された建物を示す正面図である
【図11】本発明の第2の実施形態に係る制振装置が設置された建物を示す正面図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る周期調整手段を示す、概略拡大図である。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る周期調整手段の変形例を示す、概略拡大図である。
【図14】本発明の第3の実施形態に係る制振装置が設置された建物を示す正面図である
【図15】本発明の第3の実施形態に係る制振装置が設置された建物を示す正面図である
【図16】本発明の第3の実施形態に係る周期調整手段を示す、概略拡大図である。
【図17】本発明の実施形態に係る周期調整手段の変形例を示す、概略拡大図である。
【図18】本発明の実施形態に係る周期調整手段の変形例を示す、概略拡大図である。
【図19】本発明の実施形態に係る周期調整手段の変形例を示す、概略拡大図である。
【図20】本発明の実施形態に係る周期調整手段の変形例を示す、概略拡大図である。
【図21】(A)、(B)は本発明の実施形態に係る周期調整手段の変形例を示す、概略拡大図であり、(C)は平面図である。
【図22】本発明の実施形態に係る制振装置の変形例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0115】
10 制振装置
12 建物
18B 床スラブ(建物)
26 吊り材
26A 吊り材の一部
26B 吊り材の一部
28 床スラブ
32 オイルダンパー(減衰手段)
34 係合部材
36 貫通孔(周期調整手段、被係合部)
40 連結機構(周期調整手段)
56 ソレノイド(周期調整手段)
56 制御手段
58 振動検知装置(振動検知手段)
66 係合部材
68 貫通孔(周期調整手段、被係合部)
80 制振装置
82 建物
90 吊り材
92 床スラブ(可動部材)
98 梁(建物)
120 制振装置
122 建物
124 吊り材
126 吊り材
128 フレーム体(可動部材)
140 連結機構(周期調整手段)
142 貫通孔(被係合部)
144 係合部材
150 連結機構(周期調整手段)
170 連結機構(周期調整手段)
172 貫通孔(被係合部)
174 係合部材
180 連結機構(周期調整手段)
182 貫通孔(被係合部)
184 係合部材
194 凸部(係合部材)
200 連結機構(周期調整手段)
202 貫通孔(被係合部)
204 係合部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊り材によって建物に吊り下げられる錘と、
前記建物と前記錘とを連結する減衰手段と、
前記吊り材の一部を前記建物に固定し又は前記建物に固定された前記吊り材の一部の固定を解除して前記錘の周期を変える周期調整手段と、
前記錘の揺れを検知する振動検知手段と、
前記振動検知手段によって検知された振動の大きさに基づいて前記周期調整手段を作動させるか否かを判断する制御手段と、
を備える制振装置。
【請求項2】
前記周期調整手段が、前記吊り材に沿って上下方向に移動可能に設けられた係合部材を前記建物に設けられた被係合部に係合させて前記吊り材の一部を前記建物に固定し、又は前記被係合部に係合された前記係合部材の係合を解除して前記建物に固定された前記吊り材の一部の固定を解除する請求項1に記載の制振装置。
【請求項3】
前記吊り材には可動部材が設けられ、
前記周期調整手段が、前記建物に設けられた被連結部に前記可動部材を連結して前記吊り材の一部を前記建物に固定し又は前記被連結部に連結された前記可動部材の連結を解除して前記建物に固定された前記吊り材の一部の固定を解除する請求項1に記載の制振装置。
【請求項4】
吊り材によって建物に吊り下げされる可動部材と、
前記可動部材に吊り下げられると共に該可動部材に連結して固定された錘と、
前記建物と前記錘又は前記可動部材とを連結する減衰手段と、
前記可動部材と前記錘との連結を解除して前記錘の周期を変える周期調整手段と、
前記可動部材及び前記錘の揺れを検知する振動検知手段と、
前記振動検知手段によって検知された振動の大きさに基づいて前記周期調整手段を作動させるか否かを判断する制御手段と、
を備える制振装置。
【請求項5】
吊り材によって建物に吊り下げされる可動部材と、
前記可動部材に吊り下げられる錘と、
前記建物と前記錘とを連結する減衰手段と、
前記可動部材に前記錘を連結して固定し、前記錘の周期を変える周期調整手段と、
前記錘の揺れを検知する振動検知手段と、
前記振動検知手段によって検知された振動の大きさに基づいて前記周期調整手段を作動させるか否かを判断する制御手段と、
を備える制振装置。
【請求項6】
前記錘が、床スラブである請求項1〜5の何れか1項に記載の制振装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の制振装置を有する建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−101092(P2010−101092A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274433(P2008−274433)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】