説明

制振装置及び制振性に優れた立設部材

【課題】高振動数から低振動数まで振動数が変動する振動にも広範囲の振動数において高い減衰性能を有し、かつ振動の方向にも左右されない制振装置及び制振性に優れた立設部材を提供する。
【解決手段】底面の内外面が曲面形状を有する容器に複数個の粒状体が収容されてなる制振装置であって、容器がその底面の下端部において揺動自在に支持されていることを特徴とする制振装置とこの制振装置を取り付けてなる立設部材。下方に弾性部材を有する平板上に載置し、平板に穿たれた穴を貫通して容器の底面の下端部と弾性部材の下端部の間を線材によって結ぶことによって、容器をその底面の下端部において揺動自在に支持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制振装置及び制振性に優れた立設部材に関する。特に、道路や橋梁などに立設される、照明柱、標識柱、信号柱などの立設部材に用いられる制振装置及び制振性に優れた立設部材に関する。
【背景技術】
【0002】
道路や橋梁などに立設された、照明柱、標識柱、信号柱などの立設部材は、風、地震や車両走行に伴う路面振動などに起因する共振現象によって、揺れが生じることがある。これらの立設部材に揺れが生じると、揺れによって立設部材の損傷が起きやすく、また、その損傷が促進される。また、発生する振動により、立設部材に取り付けられた器具の寿命が短くなる問題があり、さらに、照明柱の場合には、照明光が揺れて人に違和感を与える問題もある。
【0003】
このような共振現象に起因する立設部材の揺れを防止するために、
(a)立設部材の重量、形状及び剛性を変更して、その固有振動数を変更する方法、
(b)立設部材の内部に物理振り子及び当接具を設けて、振動時に物理振り子を当接具に衝突させることによって制振効果を持たせる方法、
が、それぞれ、すでに提案されている。
【0004】
しかしながら、上記(a)の方法では、特定の振動数に対しては制振効果があるものの、風による揺れのように、励振周期や振動数が様々に変動する揺れには対応できないだけでなく、立設部材の材料設計の自由度を減じることになる。また、上記(b)の方法では、励振周期や振動数が様々に変動する揺れには対応できないことに加えて、制振効果を上げるためには、物理振り子及び当接具を一定以上の大きさにする必要がある。そのために収納スペースが必要となるが、これも、立設部材の装置設計の自由度を減じる結果となる。
【0005】
特許文献1には、このような従来技術の問題点を踏まえて、垂直中空体の内部に、非固定の自由振動部を持たせて鋼製チェーンまたはワイヤーを吊り下げ、かつこの鋼製チェーンまたはワイヤーと垂直中空体の内壁との間隔を等価に維持することによって、振動数の変動に対応した制振装置が記載されている。この制振装置を垂直立設部材の外部又は内部に取り付けることによって、垂直立設部材に加えられた揺れによる振動を減衰させるものである。
【0006】
さらに、特許文献2には、底面の内面が曲面形状を有する容器に複数個の球状体を収容し、容器内の各球状体が容器内を移動自在に収容してなる制振装置が記載されている。そして、このような球状体を容器内に収容したものに加えて垂直中空体の内部に鋼製チェーン等の吊り下げ部材を吊り下げてなる制振装置も記載されている。
【0007】
【特許文献1】特公平04−26004号公報
【特許文献2】特開2008−69861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
照明柱、標識柱、信号柱などの立設部材に、上記の特許文献1又は2に記載の制振装置を組み込んでも、風、地震や車両走行に伴う路面振動などに起因する共振現象によって立設部材に揺れが生じることがあった。そして、これらの立設部材に揺れが生じると、発生する振動により、立設部材に取り付けられた器具の寿命が短くなり、さらに、照明柱の場合には、照明光が揺れて人に違和感を与える。
【0009】
この原因は、上記の特許文献1に記載の制振装置においては、風、地震や車両走行に伴う路面振動などに起因する振動の場合は、振動数範囲が広いために、垂直中空体の内部に単に鋼製チェーンを吊り下げるだけでは、全振動数範囲の振動に対応できないためである。特に、1〜2Hzの低振動数の振動に対する制振効果が不十分であることが判明した。
【0010】
また、上記の特許文献2に記載の制振装置においては、底面の内面が曲面形状を有する容器に複数個の球状体を収容し、容器内の各球状体が容器内を移動自在となるようにすることによって、高振動数から低振動数まで広範囲に振動数が変動する振動にも高い減衰性能を有し、もって優れた制振効果を得ることができるものであり、1〜2Hzの低振動数の振動に対する制振効果も十分である。しかしながら、5Hz程度の高振動数の振動に対する制振効果は、このような球状体を容器内に収容した制振装置だけでなく、さらに垂直中空体の内部に鋼製チェーン等の吊り下げ部材を吊り下げてなる制振装置も含めて、不十分であることが判明した。
【0011】
本発明の目的は、このような状況に鑑み、高振動数から低振動数まで振動数が変動する振動にも広範囲の振動数において高い減衰性能を有し、かつ振動の方向にも左右されない制振装置及び制振性に優れた立設部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、種々に実験と検討を重ねた結果、次の(a)〜(g)に示す知見を得た。
【0013】
(a) 低振動数の振動に対する制振効果は、底面の内面が曲面形状を有する容器に複数個の粒状体を収容することによって発揮させるのがよい。すなわち、このような容器を立設部材等の構造物に取り付けておいた場合、構造物が車両走行に基づく交通振動や地震のような低い振動数での振動を開始すると、この構造物に取り付けられた容器内の複数の粒状体が振動を開始する。そして、その際に、この容器はその底面の内面が曲面形状を有し、かつ、複数の粒状体は容器内を移動自在であるため、粒状体同士の間又は粒状体と容器内壁の間の摩擦力や、複数の粒状体が構造物とは逆位相の振動をすることによる慣性力が、構造物の振動を減衰せしめ、もって、構造物の低振動数の振動を抑えることができる。
【0014】
(b) 次に、高振動数の振動に対する制振効果は、底面の外面が曲面形状を有する容器を用い、その底面の下端部において揺動可能に支持することによって、発揮できることを見出した。たとえば、容器を下方に弾性部材を有する平板上に載置し、平板に穿たれた穴を貫通して容器の底面の下端部と弾性部材の下端部の間を、線材によって結ぶことによって、容器をその底面の下端部において揺動自在に支持することができる。すなわち、底面の外面が曲面形状を有する容器を平板上に載置し、その容器の底面の下端部を、バネ材やゴム材からなる弾性部材を介して、線材によって固定することによって、容器の有する慣性モーメントを利用することができるから、容器はその底面の下端部において揺動自在に支持される。
【0015】
このような容器を、立設部材等の構造物に揺動自在に取り付けておいた場合、構造物が風の励振などの高い振動数での振動を開始すると、底面の外面が曲面形状を有する容器を線材とともに支持している弾性部材がたわみ、この容器が構造物の振動に対して逆位相の円弧運動を開始する。その際、弾性部材の固定部を支点とした慣性モーメントにより、構造物の振動とは逆位相の力が働くことによって、構造物の高い振動数の振動を抑えることができる。
【0016】
ここで、容器を載置する平板は、例えば鋼板やステンレス鋼板を用いることができる。そして、容器を載置する平板は、立設部材等の構造物の一部材であってもよいし、構造物とは異なる部材であってもよい。容器の底面の下端部に線材の一端を固定するためには、たとえば、容器の底面の下端部に穿った孔に線材を通し、ストッパーを取り付ければよい。また、弾性部材の下端部に線材の他端を固定するためには、同様にして、ストッパーを取り付ければよい。
【0017】
なお、弾性部材の弾性定数は、後述するように、容器と球状体の重量に応じて、構造物に加わる振動数に同調する値に設定するのが好ましい。
【0018】
(c) このように、底面の内外面が曲面形状を有する容器に複数個の粒状体を収容するとともに、その容器をその底面の下端部において揺動自在に支持することによって、高振動数と低振動数のいずれにおいても高い減衰性能を有する制振装置とすることができる。また、この容器は左右対象形であるから、振動の方向に左右されることもない制振装置とすることができる。さらに、上記の特許文献1に記載の制振装置を組み込んだ場合には、鋼製チェーンの吊り下げ部材の衝撃音が発生するから、住宅街等に立設する立設部材に用いるのは問題が多いが、この制振装置では粒状体同士の擦過音又は粒状体が容器内壁にぶつかる音が発生するだけであるから、静かであるという利点がある。
【0019】
(d) この容器は底面の内外面を曲面形状とすることが必要となる。底面の内外面の曲面形状としては、球形の外に、卵形や砲弾形のような形のものであってもよい。そして、具体的な容器の形状としては、全体として球形の容器であってもよいが、上蓋を有するものが好ましい。上蓋を有する容器とすると、上蓋に容器内の粒状体が衝突する際にエネルギーが吸収されて、その分振動が減衰するからである。この際、上蓋の内面は平面形状と曲面形状のいずれであってもよいが、平面形状がより好ましい。上蓋は、容器にネジ締めによって取り付けると、取り外しやすい。また、容器の材料としては、特に限定されるものではなく、たとえば、鉄、ステンレス鋼、プラスチック等を挙げることができる。
【0020】
(e) 容器内に移動自在に収容される粒状体は、粒状体同士の間又は粒状体と容器内壁の間の摩擦力や、複数の粒状体が構造物とは逆位相の振動をすることによる慣性力が、立設部材等の構造物の振動を減衰せしめ、もって構造物の振動を抑えることができるのであるから、粒状体は減衰させたい振動に応じて、ある程度以上の重量を有することが好ましい。この観点からは、粒状体としては鉛や鉄等の密度の高い材料を用いるのが好ましい。なお、粒状体はその外径が直径1〜20mmであるものが好ましく、複数の粒状体が同一形状であるのが好ましい。粒状体の形状は球体であるのが好ましいが、卵形状や砲弾形状のような概ね球形状のものであってもよい。
【0021】
(f) 容器の曲面の下端部に設けられて容器を揺動自在に支持するための弾性部材としては、巻バネや板バネ等のバネ材やゴム材を用いることができる。そして、線材の材料としては、鋼線やナイロン線等を用いることができる。なお、バネ材等の弾性体の弾性定数を適宜選択することによって、容器と球状体の重量に応じて、構造物に加わる振動数に同調する値に設定するのが好ましい。地震や交通振動などの低振動数域の振動に対して、減衰性能をより高めることが可能となるからである。たとえば、底面の内外面が曲面の中空容器の底面部を揺動自在に支持しているバネ部材のバネ定数を弱くすることで、低振動数の振動に対する制振効果に重点を置いた制振装置を構成することも可能である。
【0022】
(g) そして、このような制振装置を、道路や橋梁などに立設される、照明柱、標識柱、信号柱などの立設部材に取り付けることによって、立設部材に高振動数と低振動数のいずれにおいても高い減衰性能を有するとともに、振動の方向に左右されることもない制振性を付与することができる。
【0023】
本発明にかかる制振装置および制振性に優れた立設部材は、これらの知見に基づいて完成したものである。そして、その要旨は、次の(1)〜(10)の制振装置及び(11)の制振性に優れた立設部材である。以下、これらを総称して本発明ということもある。
【0024】
(1) 底面の内外面が曲面形状を有する容器に複数個の粒状体が収容されてなる制振装置であって、容器がその底面の下端部において揺動自在に支持されていることを特徴とする制振装置。
【0025】
(2) 容器は下方に弾性部材を有する平板上に載置されており、平板に穿たれた穴を貫通して容器の底面の下端部と弾性部材の下端部の間を結ぶ線材によって、容器がその底面の下端部において揺動自在に支持されていることを特徴とする、上記(1)の制振装置。
【0026】
(3) 容器は全体として球形であることを特徴とする、上記(1)又は(2)の制振装置。
【0027】
(4) 容器が上蓋を有することを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかの制振装置。
【0028】
(5) 上蓋の内面が平面形状を有することを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれかの制振装置。
【0029】
(6) 容器の底面の内外面形状が半球形であることを特徴とする、上記(1)〜(5)のいずれかの制振装置。
【0030】
(7) 粒状体の外径が直径1〜20mmであることを特徴とする、上記(1)〜(6)のいずれかの制振装置。
【0031】
(8) 粒状体が球体であることを特徴とする、上記(1)〜(7)のいずれかの制振装置
(9) 複数の粒状体が同一形状を有することを特徴とする、上記(1)〜(8)のいずれかの制振装置。
【0032】
(10) 弾性部材としてバネを用いることを特徴とする、上記(1)〜(9)のいずれかの制振装置。
【0033】
(11) 上記(1)〜(10)のいずれかの制振装置が取り付けられていることを特徴とする、制振性に優れた立設部材。
【発明の効果】
【0034】
本発明により、高振動数から低振動数まで振動数が変動する振動にも広範囲の振動数において高い減衰性能を有し、かつ振動の方向にも左右されない制振装置及び制振性に優れた立設部材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下に、図面に基づいて、本発明を説明する。ここでは、小型の実験装置を用いて本発明の効果を実証した。なお、本発明は次の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0036】
図1は、本発明に係る制振装置を立設部材の柱頭部に取り付けたときの一例の模式図である。(a)は立設部材の縦断面図であり、(b)は(a)の頂部の拡大断面図である。
【0037】
照明柱等の立設部材2は、基礎3の上に断面円形の鋼管柱4が立設されてなるものである。そして、制振装置1は、底面20の内外面が半球形を有する容器に複数個の粒状体22が容器内を移動自在となるように収容した上で平面形状の蓋21を被せるとともに、容器がその底面の下端部において揺動自在に支持されることで、構成されている。
【0038】
ここでは、容器は下方に巻バネ30を有する平板10の上に載置されており、平板10に穿たれた穴(図示せず)を貫通して容器の底面の下端部と巻バネ30の下端部の間を結ぶ線材31によって、容器がその底面の下端部において揺動自在に支持されている。なお、線材の両端にはそれぞれストッパー32が設けられているので、一端が容器の底面の下端部の内面に固定され、そして、他端が巻バネ30の下端部に固定されている。
【0039】
低い振動数の振動に対しては、容器内の移動自在の粒状体が制振効果を発揮する。照明柱等の立設部材を構成する鋼管柱4が、車両走行に基づく交通振動や地震のような低い振動数での振動を開始すると、容器内の複数の粒状体22が振動を開始する。複数の粒状体22は容器内を移動自在であるため、粒状体同士の間又は粒状体と容器内壁の間の摩擦力や、複数の粒状体が構造物とは逆位相の振動をすることによる慣性力が発生し、鋼管柱4の振動を減衰せしめ、もって、低振動数の振動を抑えることができる。
【0040】
そして、高い振動数の振動に対しては、図2に示すとおり、揺動自在の容器が制振効果を発揮する。
【0041】
図2は、図1に示す制振装置の高振動数での制振メカニズムの説明図(立設部材の頂部の縦拡大断面図)である。
【0042】
照明柱等の立設部材を構成する鋼管柱4が、風によって動的外力を受け、風の励振による高振動数の振動を開始すると、容器の底面の下端部において容器を揺動自在に支持している巻バネ30がたわみ、容器が鋼管柱4の振動に対して逆位相の円弧運動を開始する。その際、巻バネ30の上端の固定部を支点とした慣性モーメントにより、鋼管柱4の振動とは逆位相の力が働き、鋼管柱4の振動を抑えることができる。
【0043】
この実施例の制振装置を構成する容器及びバネの諸元を表1に示す。また、この制振装置を取り付けてなる立設部材(鋼管柱)の諸元を表2に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
図3は、この制振装置1を取り付けてなる立設部材2について、鋼管柱4を自由振動させて、柱頭部の加速度の変化を測定した結果を計測時間とともに示す。
【0047】
図3より、A部における振動の減衰定数を求めると、次のとおりになる。
【0048】
減衰定数h=対数減衰率δ/2π=0.411/2π=6.54(%)
なお、減衰定数hの求め方は、次のとおりである。図3では、α1→α2→α3へと振動するから、対数減衰率δは、それぞれ、次式のとおりになる。
【0049】
対数減衰率δα1→α2=loge(|α1/α2|)
対数減衰率δα2→α3=loge(|α2/α3|)
A部の対数減衰率δは、これらの平均であるから、
δ=log(|α1/α3|)/2=log(|11.6/5.1|)=0.411
となる。
【0050】
したがって、減衰定数hは、
減衰定数h=対数減衰率δ/2π=0.411/2π=6.54(%)
となる。
【0051】
次に、長さの異なる6体の鋼管柱に、それぞれ、この制振装置を取り付け、鋼管柱を自由振動させて、減衰定数と振動数を測定する実験を行った。鋼管柱6体の諸元を表3に示す。また、制振装置を構成する容器及びバネの諸元は表1に記載したとおりである。
【0052】
【表3】

【0053】
図4に、本発明に係る制振装置(図1)を用いて、減衰定数と振動数を測定した結果を示す。ここで、この測定結果は、長さの異なる6体の鋼管柱について各2回測定し、その平均値を示したものである。なお、比較のため、後述する比較例1(図5)の測定結果も図4に示した。また、後述する比較例2(図6)の測定結果との比較は図7に示した。
【0054】
本発明に係る制振装置が、振動数が2Hzと5Hzの両方において高い制振効果を発揮することが分かる。
【比較例1】
【0055】
図5は、特許文献1に記載された制振装置を立設部材の柱頭部に取り付けたときの一例の模式図である。(a)は照明柱等の立設部材の縦断面図であり、(b)は(a)の頂部の拡大断面図である。
【0056】
照明柱等の立設部材2は、基礎3の上に断面円形の鋼管柱4が立設されてなるものである。そして、制振装置1は、底面20の内面が曲面形状を有する容器に複数個の鉛球状体22が容器内を移動自在となるように収容した上で、平面形状の上蓋21を被せてなる容器1個で構成されている。
【0057】
この比較例1の制振装置を構成する容器の諸元は、表4に記載した。また、この制振装置を取り付けてなる立設部材(鋼管柱)の諸元は、表3に記載したとおりである。
【0058】
【表4】

【0059】
なお、この比較例1にかかる制振装置を鋼管柱に取り付けてなる立設部材について、鋼管柱を自由振動させて、減衰定数と振動数を測定した結果は、実施例に係る制振装置(図1)での測定結果と対比して、図4に示した。
【0060】
この結果、この比較例1に係る制振装置は、振動数が2Hzにおいて高い制振効果を発揮するが、振動数が5Hzにおける制振効果はほとんどみられないことが分かった。
【比較例2】
【0061】
図6は、特許文献1に記載された制振装置を立設部材の柱頭部に取り付けたときの他の例の模式図である。(a)は照明柱等の立設部材の縦断面図であり、(b)は(a)の頂部の拡大断面図である。
【0062】
照明柱等の立設部材2は、基礎3の上に断面円形の鋼管柱4が立設されてなるものである。そして、制振装置は、底面20の内面が曲面形状を有する容器に複数個の鉛の粒状体22が容器内を移動自在となるように収容した上で、平面形状の上蓋21を被せてなる容器に加えて、垂直中空体10としての鋼管柱4の内部に鋼製チェーン11が吊り下げられたものとを組み合わせることによって構成されている。なお、鋼製チェーン11の軸心と、垂直中空体10としての鋼管柱4の軸心が一致するように吊り下げられている。
【0063】
この比較例2の制振装置5を構成する2個の容器及び立設部材(鋼管柱)の諸元は、表3に記載したとおりである。なお、鋼製チェーン11は長さ500mmであり、1リンクの寸法として長さ30mm×幅21mmの鋼製リンク(直径6mm)をつなぎ合わせた重量385gのものを吊り下げた。
【0064】
図7に、この比較例2にかかる制振装置を鋼管柱に取り付けてなる立設部材について、鋼管柱を自由振動させて、減衰定数と振動数を測定した結果を示す。比較のため、実施例に係る制振装置(図1)での測定結果も、図7に示した。
【0065】
この結果、この比較例2に係る制振装置は、振動数が2Hzにおいて高い制振効果を発揮するが、振動数が5Hzにおける制振効果は余りみられないことが分かった。また、比較例2に係る制振装置に比べ、実施例に係る制振装置は重量が少ない利点もある。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上のとおり、本発明により、高振動数から低振動数まで振動数が変動する振動にも広範囲の振動数において高い減衰性能を有し、かつ振動の方向にも左右されない制振装置及び制振性に優れた立設部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係る制振装置を立設部材の柱頭部に取り付けたときの一例の模式図である。(a)は立設部材の縦断面図であり、(b)は(a)の頂部の拡大断面図である。
【図2】図1に示す制振装置の高振動数での制振メカニズムの説明図(立設部材の頂部の縦拡大断面図)である。
【図3】図1に示す制振装置を取り付けてなる立設部材について、鋼管柱を自由振動させて、柱頭部の加速度の変化を測定した結果を計測時間とともに示す。
【図4】実施例に係る制振装置(図1)及び比較例1に係る制振装置(図5)を用いて、減衰定数と振動数を測定した結果を示す。
【図5】特許文献1に記載された制振装置を立設部材の柱頭部に取り付けたときの一例(比較例1)の模式図である。(a)は照明柱等の立設部材の縦断面図であり、(b)は(a)の頂部の拡大断面図である。
【図6】特許文献1に記載された制振装置を立設部材の柱頭部に取り付けたときの他の例(比較例2)の模式図である。(a)は照明柱等の立設部材の縦断面図であり、(b)は(a)の頂部の拡大断面図である。
【図7】実施例に係る制振装置(図1)及び比較例2にかかる制振装置(図6)を用いて、減衰定数と振動数を測定した結果を示す。
【符号の説明】
【0068】
1 制振装置
2 立設部材
3 基礎
4 鋼管柱
10 平板
11 鋼製チェーン
20 容器の底面
21 容器の上蓋
22 粒状体
30 巻バネ
31 線材
32 ストッパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面の内外面が曲面形状を有する容器に複数個の粒状体が収容されてなる制振装置であって、容器がその底面の下端部において揺動自在に支持されていることを特徴とする制振装置。
【請求項2】
容器は下方に弾性部材を有する平板上に載置されており、平板に穿たれた穴を貫通して容器の底面の下端部と弾性部材の下端部の間を結ぶ線材によって、容器がその底面の下端部において揺動自在に支持されていることを特徴とする、請求項1に記載の制振装置。
【請求項3】
容器は全体として球形であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の制振装置。
【請求項4】
容器が上蓋を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれかに記載の制振装置。
【請求項5】
上蓋の内面が平面形状を有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれかに記載の制振装置。
【請求項6】
容器の底面の内外面形状が半球形であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれかに記載の制振装置。
【請求項7】
粒状体の外径が直径1〜20mmであることを特徴とする、請求項1から6までのいずれかに記載の制振装置。
【請求項8】
粒状体が球体であることを特徴とする、請求項1から7までのいずれかに記載の制振装置。
【請求項9】
複数の粒状体が同一形状を有することを特徴とする、請求項1から8までのいずれかに記載の制振装置。
【請求項10】
弾性部材としてバネを用いることを特徴とする、請求項1から9までのいずれかに記載の制振装置。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれかに記載の制振装置が取り付けられていることを特徴とする、制振性に優れた立設部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−101391(P2010−101391A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−272605(P2008−272605)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(591141784)学校法人大阪産業大学 (49)
【出願人】(000006839)日鐵住金建材株式会社 (371)
【Fターム(参考)】