削孔工具および薬液注入工法
【課題】合成樹脂製のケーシングパイプでも削孔動作によってひび割れなどの損傷が発生しないようにすること。
【解決手段】ロッド21の外周側に位置して削孔された孔壁の崩落を防ぐケーシングパイプ41とを有する削孔工具11であって、上記ロッド21の先端は、削孔ビット部材31の後端部に対してねじ23,32aで着脱可能に接続され、上記ケーシングパイプ41の先端には、削孔ビット部材31の後側部分の嵌合軸部34に対して相対移動可能な状態で嵌合する先端スリーブ51が設けられ、該先端スリーブ51と嵌合軸部34との間には、径方向において相互に嵌合して抜け止めし、先端スリーブを削孔ビット部材に追従させる嵌合構造38,52が設けられ、該嵌合構造38,52には、先端スリーブ51を削孔ビット部材31上で相対移動可能にする緩衝用の隙間52aが形成された削孔工具11。
【解決手段】ロッド21の外周側に位置して削孔された孔壁の崩落を防ぐケーシングパイプ41とを有する削孔工具11であって、上記ロッド21の先端は、削孔ビット部材31の後端部に対してねじ23,32aで着脱可能に接続され、上記ケーシングパイプ41の先端には、削孔ビット部材31の後側部分の嵌合軸部34に対して相対移動可能な状態で嵌合する先端スリーブ51が設けられ、該先端スリーブ51と嵌合軸部34との間には、径方向において相互に嵌合して抜け止めし、先端スリーブを削孔ビット部材に追従させる嵌合構造38,52が設けられ、該嵌合構造38,52には、先端スリーブ51を削孔ビット部材31上で相対移動可能にする緩衝用の隙間52aが形成された削孔工具11。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トンネル工事や基礎工事、補強工事等において用いられる削孔工具に関し、より詳しくは、ケーシングパイプが合成樹脂製であっても充分に使用に耐えられるような削孔工具に関する。
【背景技術】
【0002】
ケーシングパイプが合成樹脂製であってもよいとするものとして、下記特許文献1に開示された掘削工具がある。これは、ケーシングパイプに対してその軸線方向に推力と打撃を伝達する構造の掘削工具であるが、この掘削工具は、推力と打撃が伝達される上記ケーシングパイプと、このケーシングパイプの内部に同芯上に配置されていて、軸線方向に推力と打撃が伝達されると共に回転力が伝達されるロッドと、該ロッドの先端部に取り付けられた掘削工具本体と、該掘削工具本体の先端にこの掘削工具本体に対する回転が拘束されて装着される掘削ビットとを備えた掘削工具において、上記ケーシングパイプの先端に、ケーシングパイプに対して軸線方向に移動可能でかつ軸線周りに回転可能な円筒状のケーシングトップが上記掘削工具本体に外嵌されるようにして取り付けられ、このケーシングトップが常に掘削ビットを包囲した状態で削孔に建て込むことができるように構成されている。
【0003】
そして、この構成では、ケーシングトップがケーシングに対して軸線方向に移動可能に取り付けられているので建て込み時にケーシングパイプに過大な抵抗が作用することなく、ケーシングパイプが樹脂などの低強度のものであってもよいとされている。
【0004】
しかし、推力と打撃はケーシングパイプにも直接的に作用する構成であり、たとえ緩衝材が介装されているとはいっても、多大な負荷がかかるため、割れなどのおそれがあった。特に、削孔される対象が固い岩盤である場合には、上記負荷は非常に大きなものとなり、特許文献1のような構成の工具では到底削孔することはできない。
【0005】
また、特許文献1の掘削工具は削孔を形成するためのもので、地盤や岩盤を補強(改良)や防水するために薬液を注入することはできない。このため、別途に注入管が必要であった。そのうえ薬液の注入作業は削孔作業を完了してから行わなければならないので、作業は煩雑であった。
【0006】
【特許文献1】特開2003−172089号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこでこの発明は、ケーシングパイプが損傷してしまうおそれをなくし、また、薬液注入の作業も容易に行えるようにすることを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのための手段は、削孔のための動力を伝達するロッドと、該ロッドの先に設けられて削孔を行う削孔ビット部材と、上記ロッドの外周側に位置して削孔された孔壁の崩落を防ぐケーシングパイプとを有する削孔工具であって、上記ロッドの先端部と削孔ビット部材の後端部の間には、ロッドを削孔ビット部材に対して着脱可能に接続する着脱構造が設けられ、上記ケーシングパイプの先端には、当該先端スリーブの先端側部分が、上記削孔ビット部材の後側部分の外周に形成された嵌合軸部に対して相対移動可能な状態で嵌合する先端スリーブが設けられ、該先端スリーブと上記削孔ビット部材の嵌合軸部との間には、径方向において相互に嵌合して抜け止めし、先端スリーブを削孔ビット部材に追従させる嵌合構造が設けられ、該嵌合構造には、先端スリーブを削孔ビット部材上で相対移動可能にする緩衝用の隙間が形成された削孔工具である。
【0009】
すなわち、切削のための動力を伝達するロッドは、削孔ビット部材に対して回転しながら打撃を加え、削孔を行う。このとき、削孔ビット部材の嵌合軸部の外周には先端スリーブが相対移動可能に嵌合されているが、この先端スリーブと嵌合軸部との間には、抜け止めをする嵌合構造が設けられているので、削孔ビット部材の削孔動作に伴い、先端スリーブは削孔ビットに追従して移動する。しかし、嵌合構造には、先端スリーブを削孔ビット部材上で相対移動可能にする緩衝用の隙間が形成されているので、打撃による振動は緩和され、先端スリーブの後端部に接続されたケーシングパイプに掛かる負荷を軽減できる。
【0010】
このため、ケーシングパイプが、たとえば塩化ビニルなどの合成樹脂製であっても、ひび割れたりする不測の損傷を回避できる。
【0011】
また、削孔後には、着脱構造においてロッドを削孔ビット部材から分離し、削孔ビットとケーシングパイプと先端スリーブを残してロッドを抜き取ればよい。
【0012】
ここで、上記各構成要素については、次のような態様を採用することができる。
その態様の一つは、上記ロッドの軸芯部に長さ方向に貫通する導通孔部が形成され、上記削孔ビット部材の軸方向における中央部には、上記導通孔部と連通する中央孔部が後端から設けられて、該中央孔部の先端からは削孔ビット部材の先端部に開口する噴孔が延設されるとともに、上記中央孔部または噴孔には、噴孔側からの物体の浸入を阻止する逆止弁が設けられたものである。
すなわち、削孔に際しては、ロッドの導通孔部、削孔ビット部材の中央孔部および噴孔に圧縮エアなどの流体を流すとともに、上記流体に代えて、地盤改良等の薬液を通して薬液注入を行うことができる。また、流体を流さない時には逆止弁が噴孔からの泥土や砂などの物体の侵入を防止することができる。
【0013】
態様の他の一つは、上記嵌合構造が凸部と凹部とで構成されるとともに、上記凸部が転動可能な球体からなるものである。
すなわち、相互に嵌合して抜け止めをする凸部と凹部のうち凸部が転動可能な球体であるので、凸部と凹部の衝突時にその衝撃を緩和できる。このため、より一層の緩衝効果が期待できる。
【0014】
態様の他の一つは、上記嵌合構造を軸方向において挟む2位置に、削孔ビット部材の嵌合軸部と先端スリーブの内周面との間をシールするシール部材が設けられたものである。
すなわち、先端スリーブは嵌合軸部に対してシール部材を介して接続されているので、先端スリーブはいたずらにがたつくことはない。また嵌合軸部と先端スリーブとの間に泥土や砂などが浸入するのを防止し、緩衝を行う嵌合構造を保護できる。
【0015】
態様の他の一つは、上記ケーシングパイプが樹脂製である。
すなわち、ケーシングパイプを建て込んでそのまま埋め殺しにしても、後で行う掘削工事などに支障はなく、補強や防水を行っての容易な工事を期待できる。
【0016】
態様の他の一つは、上記着脱構造が、回転により着脱可能なものであるとともに、前記ロッドの後にカップリング部材を介して別のロッドが接続され、各ロッドとカップリング部材の間には、上記着脱構造での離脱を可能にする方向と反対方向に向けてのねじが形成されるとともに、上記ロッド又はカップリング部材のうち内側に位置するものには、周方向に沿った係合溝が形成され、上記カップリング部材又はロッドのうち外側に位置するものには、ロッドとカップリング部材を接続した時に上記係合溝と対応する貫通孔が形成され、該貫通孔に対してピンが挿入されることでロッドとカップリング部材が回り止め可能に接続されるものである。
すなわち、ロッドに対して着脱構造での離脱を可能にする方向と反対方向に向けて回転しながら打撃を加えて削孔を行い、所定の削孔を形成した後、ロッドに対して着脱構造での離脱方向に回転すれば、各ロッドとカップリングが係合溝と貫通孔とピンとで相対回転不可に結合しているので、ロッドを削孔ビット部材から外して抜き取り回収することができる。
【0017】
態様の他の一つは、上記ケーシングパイプが、逆止弁付きの噴射孔を有するものである。
すなわち、所望の削孔を行ってロッドを抜き取った後、ロッドに代えて薬液注入用の注入管を差し込んで薬液注入を行えば、注入管から噴出した薬液は、ケーシングパイプの噴射孔を通して噴射され所望の作用を行う。噴射孔は逆止弁を有するので、削孔中にケーシングパイプ内に泥土や砂などが浸入することを防止できる。
【0018】
別の手段は、上記削孔工具を用いて削孔を行い、上記ロッドを削孔ビット部材から分離し、ケーシングパイプを残してロッドを抜き取る削孔工法である。
すなわち、削孔を行って回収するのはロッドであって、ケーシングパイプを含めたその他のものは埋め殺しにするので、回収する部材が一本のものであり、簡単で手間もかからないため、作業効率を向上することができる。
【0019】
別の手段は上記導通孔部と中央孔部と噴孔を有する削孔工具を用いて行う削孔工程と、該削孔工程で形成された削孔に対して、上記削孔工具におけるロッドの導通孔部から薬液を注入して行う薬液注入工程とが交互または同時に行われる薬液注入工法である。
すなわち、削孔と薬液注入は同期して行えるので、一度削孔した後であらためて薬液注入用の工具を差し込んで薬液注入を行う場合に比して格段に作業効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、この発明によれば、ロッドを介して削孔ビット部材に伝達された削孔のための振動がケーシングパイプに直接伝わらないように、ケーシングパイプの先端に先端スリーブを設けて、この先端スリーブと削孔ビット部材との間に緩衝用の嵌合構造を設けている。このため、削孔のための回転と打撃でケーシングパイプが損傷してしまうおそれをなくすことができる。つまり、ケーシングパイプは孔壁の崩落を防ぐ程度の強度さえあればよく、鋼管を用いる必要はない。また、削孔作業後ロッドは抜き取られる。この結果、ケーシングパイプを埋め殺しにしても、ケーシングパイプが鋼鉄製ではなく合成樹脂や紙からなる場合には掘削等の後の作業に影響はなく、作業効率を向上することができる。
【0021】
また、削孔のための動力はロッドと該ロッドの先に設けられた削孔ビット部材に対して直接的に付与される構造であるので、そのロッドと削孔ビット部材に、薬液注入を可能にする構成を設けることで、削孔をしながらの薬液注入が可能となり、薬液注入の作業性が大幅に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1は、削孔工具11の断面図、図2はその分解図である。これらの図に示すように削孔工具11は、削孔のための動力を伝達するロッド21と、該ロッド21の先端に着脱可能に取り付けられて削孔を行う削孔ビット部材31と、上記ロッド21の外周側に位置して削孔された孔壁の崩落を防ぐケーシングパイプ41と、該ケーシングパイプ41の先端に設けられ、上記削孔ビット部材31との間に介在する先端スリーブ51とを有する。
【0023】
この削孔工具11では、ロッド21を介して削孔ビット31に伝達された回転力と打撃力とによって削孔が行われる構造であって、上記先端スリーブ51とケーシングパイプ41はその削孔動作に追従して削孔内に侵入する。
【0024】
上記各部について順に説明する。
上記ロッド21は、パーカッションマシンの本体ハンマ機構部におけるシャンクロッド(図示せず)の先に接続されるもので、上記削孔ビット部材31に対して接続される先端ロッド21aと、この先端ロッド21aの後ろに順次継ぎ足される継ぎ足しロッド21bとがある。いずれも所定長さに形成された円筒状で、軸心部には長さ方向に貫通する導通孔部22を有し、両端部には接続のための雄ねじ23,23が形成されている。この雄ねじ23は左ねじである。つまり、左への回転が締まる方向への回転である。なお、図では、例としてテーパねじを示したが、ロープねじやハイリードねじなどであるもよい。
【0025】
先端ロッド21aにおいては、削孔ビット部材31に接続する側の一端部は、雄ねじ23のみで形成されるが、他端部と継ぎ足しロッド21bの両端部の雄ねじ23部分においては、図3に示したように雄ねじ23の先に係合溝24が併せて形成される。
【0026】
すなわち、所定長さの範囲にわたって形成された雄ねじ23の先に、断面U字状をなす1条の係合溝24が周方向に形成されている。そして、先端ロッド21aと継ぎ足しロッド21b、継ぎ足しロッド21b同士は、上記雄ねじ23に螺合する雌ねじ25を両端部に有した円筒状のカップリング部材26によって接続されるが、このカップリング部材26における接続時に上記係合溝24と対応する位置には貫通孔27が形成される。貫通孔27は、1条の係合溝24に対して平行に2個、すなわち一つのカップリング部材26に合計4個形成されている。
【0027】
これら貫通孔27には、螺合による接続後にピン28が挿入される(図4参照)。ピン28の挿入によりロッド21がカップリング部材26から抜ける方向、すなわち右方向に回転しようとしても、貫通孔27に挿入されているピン28が係合溝24に係合された状態を保つので、右方向への回転が阻止され、抜け止めがなされる。なお、ピンには割りピンを用いるのが好ましい。
【0028】
上記削孔ビット部材31は、上記ロッド21が接続される略円筒状の本体部材32と、該本体部材32の先に一体固定されるビット部材33とからなる。本体部材32は、後端部に上記先端ロッド21aの雄ねじ23が螺合する雌ねじ32aを有し、先端部がビット部材33内に差し込まれて回転不可能な状態に固定される。本体部材32におけるビット部材33から出ている部分が嵌合軸部34である。
【0029】
ビット部材33は、本体部材32よりも大径で、先端部は適宜の形状に形成され、超硬合金からなるチップ35が固定されている。そしてこのビット部材33には、本体部材32の軸心部に形成されている中央孔部36aに連通する中央孔部36bが形成され、この中央孔部36bから先には複数本の噴孔36cが形成されている。
【0030】
上記中央孔部36a,36bと噴孔36cには、ロッド21内の導通孔部22を通して、またはその他の部材を通して注入されるエアや水、薬液などの流体が通る。このため、上記中央孔部36a,36bには、逆止弁37が設けられる。逆止弁37は、図示したようにボール37aと、これを付勢するねじりコイルばね37bで構成できる。
【0031】
また、逆止弁37と上記雌ねじ32aとの間には、上記先端スリーブ51を相対移動可能な状態で取り付ける嵌合構造の構成要素としての凸部38が形成されている。上記相対移動は、先端スリーブ51の長さ方向および周方向に適宜範囲で行われるように設定される。また、凸部38は、たとえば3個、4個などと周方向に複数形成される。
【0032】
この例では凸部38は、転動可能な球体38aで形成されている。また、この球体38aは内外に出没自在である。
【0033】
すなわち、球体38aは、嵌合軸部34に形成された保持孔34aに保持されるとともに、この保持孔34aの内周側に位置するように収納された短筒状の支持環38bと、この支持環38bを上記保持孔34aの下に位置するように付勢するばね38cとを有する。上記支持環38bの外周面における反ばね側にはテーパ面38dが形成され、支持環38bが先端側に変位した位置からばね38cの付勢力に従って後方に変位した時に、球体38aを外周側に押圧して移動するように構成されている。図中39は、上記支持環38bに対して位置規制を行う止め具である。
【0034】
このような嵌合軸部の外周に嵌まるのが、上記先端スリーブ51である。この先端スリーブ51は、内周面における上記球体38aに対応する部位に凹部52を有する。凹部52は、先端スリーブ51を嵌合軸部34上で相対移動可能にする緩衝用の隙間52aを有した大きさである。
【0035】
先端スリーブ51の内周面における上記凹部52を長さ方向にはさむ2位置には、嵌合軸部34との間をシールするシール部材53,54が設けられている。
【0036】
また、先端スリーブ51の先端部には、上記削孔ビット部材31におけるビット部材33の後端部に形成された噛合部33aと、相対移動可能に噛合する噛合部51aが形成されている。
【0037】
一方、先端スリーブ51の後端部には、接続用の接続ねじ部51bが形成されており、上記ケーシングパイプ41が接続される。
【0038】
先端スリーブ51を嵌合軸部34に嵌合するには、適宜の治具を用いて支持環38bを先端方向に向けて押し込んでおき、この状態で、先端スリーブ51の先端部を嵌合軸部34に対して差し込んでから、治具による支持環38bの押圧を解除すればよい。すると、支持環38bがばね38cの弾性復帰に伴って後方に向けて変位し、球体38aが外周側に突出する。すなわち、球体38aが凹部52内に収まり嵌め殺し状態になる。
【0039】
上記ケーシングパイプ41は、塩化ビニルなどの合成樹脂製で、所定長さに形成された円筒状である。そして先端に、上記接続ねじ部51bに螺合する第1ねじ部41aが形成され、後端には、この第1ねじ部41aに螺合可能な形状の第2ねじ部(図示せず)が形成された構造で、順次継ぎ足して使用される。
【0040】
また、ケーシングパイプ41には、薬剤を噴射するため、図5に示したように、逆止弁42付きの複数の噴射孔43が適宜間隔おきに形成されている。逆止弁42付きの噴射孔43は、たとえば図5(a)に示したように、ボール42aと、これを付勢するばね42bを、ケーシングパイプ41の内周側に位置する内側孔42cと、外周側に位置する外側孔42dとの間に保持して構成される。このとき、内側から外側への流体の通過を許容しつつも外側から内側への泥土等の通過を阻止するため、上記ボール42aは内側孔42cがわに保持される。また、逆止弁42は、図5(b)に示したように、1個のゴム製のものであるもよい。つまり、逆止弁42は、孔内に取り付けられる筒状部42eと、該筒状部42eの下端(ケーシングパイプ41の内周がわ)に形成された抜け止め用の鍔部42fと、上記筒状部42eの上端(ケーシングパイプ41の外周がわ)に形成された開閉可能な複数枚の弁板42gとを有する。
【0041】
このように構成された削孔工具11では、図1に示したようにロッド21を削孔ビット部材31に接続した状態でパーカッションマシンから左回りの回転力と打撃力を削孔ビット部材31に伝達すると、図6に示したように、削孔ビット部材31は、その回転力と打撃力を受けて、地盤や岩盤内に切り込む。このとき、回転力と打撃力を受ける削孔ビット部材31に接触しているのは先端スリーブ51であるが、この先端スリーブ51の接触は、凸部38と凹部52とからなる嵌合構造とシール部材53,54を介してなされている。そして、凸部38と凹部52の間には、隙間52a(余裕、あそび)を有しているため、回転力や打撃力による振動は緩和され、先端スリーブ51の後端部に接続されたケーシングパイプ41に掛かる負荷を軽減できる。
【0042】
しかも、凸部38は転動可能であるため、凸部38と凹部52の衝突時の衝撃も緩和できるため、ケーシングパイプ41に掛かる負荷はより一そう軽減される。
【0043】
さらに、先端スリーブ41は嵌合軸部に対してシール部材53,54を介して接続されているので、先端スリーブ51はいたずらにがたつくことはない。そのうえ、嵌合軸部34と先端スリーブ51との間に泥土などが浸入するのを防止し、緩衝を行う嵌合構造を保護できる。
【0044】
また、削孔などの作業終了後には、ロッド21に対して図7に示した如く、削孔の時とは逆、すなわち右回りの回転力を加えれば、ロッドはすべて一体であるので、先端ロッド21aを削孔ビット部材31から簡単に分離することができる。抜き取ったロッド21は、カップリング部材26の貫通孔27に差し込んだピン28を抜き取れば各部材ごとに分離できる。
【0045】
以上のような削孔工具を用いた作業例を以下に説明する。
(作業例1)
削孔しながら薬液注入を行う場合には、図8に示したように、まず、噴孔からエア又は水を噴射しながら所定深さの削孔(削孔工程)を行い(a)、削孔動作を止めてからエア又は水に代えて所望の薬液を噴孔36cから噴射(薬液注入工程)する(b)。または、上記削孔(削孔工程)と薬液噴射(薬液注入工程)を同時に行う。
このような動作を順次繰り返して、所定の深さまで削孔と薬液注入を行う(c)。
最後に、ロッドを右に回転してロッドのみを回収する(d)。
【0046】
(作業例2)
所定深さの削孔(削孔工程)をしてから薬液注入(薬液注入工程)を行う場合には、図9に示したように、まず、噴孔からエア又は水を噴射しながら所定深さの削孔を行う(a,b)。次に、ロッドを右に回転してロッドのみを回収する(c)。続いて、薬液注入用の注入管61をロッド21に代えて差し込んで、注入管61を利用して薬液注入を行う(d)。薬液は、ケーシングパイプ41に設けられた逆止弁42付きの噴射孔43から噴出する。
【0047】
上記例のようにして、削孔作業と薬液注入作業は行われる。
そして、削孔動作に際しては、上述の如くケーシングパイプ41に掛かる負荷を抑えることができるので、ケーシングパイプ41がひび割れたりする不測の損傷を回避できる。
【0048】
また、ロッド21には導通孔部22が形成され、削孔ビット部材31には中央孔部36a,36bと噴孔36cが形成されているので、削孔をしながら、または削孔と交互に薬液注入を行うことも可能で、作業効率を向上することもできる。
【0049】
さらに、作業後に埋め殺しにされるケーシングパイプ41は合成樹脂製であるので、後の掘削等の作業に影響はなく、作業効率を向上することができる。
【0050】
またケーシングパイプ41が逆止弁42付きの噴射孔43を有しているので、削孔を行った後に薬液注入を行う場合に、ケーシングパイプ41を抜き取らずに埋めた状態のまま作業が行える。つまり、作業の簡単化を図ることができる。
【0051】
以下、その他の形態について説明する。なお、上記構成と同一又は同等の部位については同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0052】
図10は、嵌合軸部34と先端スリーブ51との間に形成される嵌合構造の構成要素としての凸部38が、内外に出没自在でない場合を示した例である。
【0053】
すなわち、嵌合軸部34における凸部形成位置には、凸部38としての球体38aの下半分ほどを収容する凹所34bが周方向に複数形成形成され、一方、先端スリーブ51における上記凹所対応位置は、所定の凹部52を形成可能な厚みに設定されるとともに、この部位には、内外に貫通する穴部55が形成される。この穴部55には蓋部材56が固定される。つまり、嵌合軸部34と先端スリーブ51の嵌合に際しては、上記蓋部材56が取り付けられずに穴部55が開放された状態であり、先端スリーブ51を嵌合軸部34に嵌合した後、穴部55を通して球体38aを凹所34bに収容する。球体38aの収容後に蓋部材56を固定すれば、先端スリーブ51は嵌合軸部34から抜け止めされ、しかも、緩衝が行える状態になる。
【0054】
図11も、嵌合軸部34と先端スリーブ51との間に形成される嵌合構造の構成要素としての凸部38が、内外に出没自在でない場合を示した例であり、この場合には、図10に示した例の場合の穴部55や蓋部材56、蓋部材56の固定作業が不要となる。
【0055】
すなわち、嵌合軸部34における突部形成部位に、内外に貫通する形状の保持孔34aが形成されるとともに、その保持孔34aから後ろ側、つまりロッド接続のための雌ねじ32aがわが前側よりも大径に設定されている。この大径に形成された部分に、凸部38としての球体38aを支持する筒状の支持部材38eが固定される。
【0056】
嵌合軸部34に対しての先端スリーブ51の固定は、まず、嵌合軸部34に対して先端スリーブ51を嵌合してから、保持孔34aに対して球体38aを収容する。続いて、支持部材38eを、嵌合軸部34を構成する本体部材32の大径部分に対して固定する。すると球体38aは、保持孔34aと凹部52内に収まり、先端スリーブ51の抜け止めがなされるともに緩衝が行える状態になる。
【0057】
この発明の構成と、上記一形態の構成との対応において、
この発明の着脱構造は、上記一形態における先端ロッド21aの雄ねじ32と雌ねじ32aに対応し、
同様に、
嵌合構造は、凸部38と凹部52に対応するも、
この発明は、上記一形態の構成のみに限定されるものではなく、その他の様々な形態を採用することができる。
【0058】
たとえば、着脱構造は、上述のようにねじのみで構成するのではなく、例えば特異な形状の溝を有し、適宜の回転と引張り等の所定の動作で着脱可能な構成などを採用するもよい。
【0059】
また、嵌合構造は、嵌合軸部側に凸部、先端スリーブがわに凹部を設けた例を示したが、凸部と凹部を逆に配置するもよい。また、凸部は、球体のほか、例えばEリング状の部材を先端スリーブに対して固定して、該部材の内周側に位置する突起を、嵌合構造の凸部とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】削孔工具の断面図。
【図2】削孔工具の分解状態の断面図。
【図3】継ぎ足しロッドとカップリング部材の構造説明図。
【図4】カップリング部材による接続状態の断面図。
【図5】ケーシングパイプの一部拡大断面図。
【図6】作用状態の断面図。
【図7】作用状態の断面図。
【図8】作業工程を示す説明図。
【図9】作業工程を示す説明図。
【図10】他の例に係る削孔工具の断面図。
【図11】他の例に係る削孔工具の断面図。
【符号の説明】
【0061】
11…削孔工具
21…ロッド
22…導通孔部
23…雄ねじ
24…係合溝
26…カップリング部材
27…貫通孔
28…ピン
31…削孔ビット部材
32a…雌ねじ
34…嵌合軸部
36a,36b…中央孔部
36c…噴孔
37…逆止弁
38…凸部
38a…球体
41…ケーシングパイプ
42…逆止弁
43…噴射孔
51…先端スリーブ
52…凹部
52a…隙間
53,54…シール部材
【技術分野】
【0001】
この発明は、トンネル工事や基礎工事、補強工事等において用いられる削孔工具に関し、より詳しくは、ケーシングパイプが合成樹脂製であっても充分に使用に耐えられるような削孔工具に関する。
【背景技術】
【0002】
ケーシングパイプが合成樹脂製であってもよいとするものとして、下記特許文献1に開示された掘削工具がある。これは、ケーシングパイプに対してその軸線方向に推力と打撃を伝達する構造の掘削工具であるが、この掘削工具は、推力と打撃が伝達される上記ケーシングパイプと、このケーシングパイプの内部に同芯上に配置されていて、軸線方向に推力と打撃が伝達されると共に回転力が伝達されるロッドと、該ロッドの先端部に取り付けられた掘削工具本体と、該掘削工具本体の先端にこの掘削工具本体に対する回転が拘束されて装着される掘削ビットとを備えた掘削工具において、上記ケーシングパイプの先端に、ケーシングパイプに対して軸線方向に移動可能でかつ軸線周りに回転可能な円筒状のケーシングトップが上記掘削工具本体に外嵌されるようにして取り付けられ、このケーシングトップが常に掘削ビットを包囲した状態で削孔に建て込むことができるように構成されている。
【0003】
そして、この構成では、ケーシングトップがケーシングに対して軸線方向に移動可能に取り付けられているので建て込み時にケーシングパイプに過大な抵抗が作用することなく、ケーシングパイプが樹脂などの低強度のものであってもよいとされている。
【0004】
しかし、推力と打撃はケーシングパイプにも直接的に作用する構成であり、たとえ緩衝材が介装されているとはいっても、多大な負荷がかかるため、割れなどのおそれがあった。特に、削孔される対象が固い岩盤である場合には、上記負荷は非常に大きなものとなり、特許文献1のような構成の工具では到底削孔することはできない。
【0005】
また、特許文献1の掘削工具は削孔を形成するためのもので、地盤や岩盤を補強(改良)や防水するために薬液を注入することはできない。このため、別途に注入管が必要であった。そのうえ薬液の注入作業は削孔作業を完了してから行わなければならないので、作業は煩雑であった。
【0006】
【特許文献1】特開2003−172089号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこでこの発明は、ケーシングパイプが損傷してしまうおそれをなくし、また、薬液注入の作業も容易に行えるようにすることを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのための手段は、削孔のための動力を伝達するロッドと、該ロッドの先に設けられて削孔を行う削孔ビット部材と、上記ロッドの外周側に位置して削孔された孔壁の崩落を防ぐケーシングパイプとを有する削孔工具であって、上記ロッドの先端部と削孔ビット部材の後端部の間には、ロッドを削孔ビット部材に対して着脱可能に接続する着脱構造が設けられ、上記ケーシングパイプの先端には、当該先端スリーブの先端側部分が、上記削孔ビット部材の後側部分の外周に形成された嵌合軸部に対して相対移動可能な状態で嵌合する先端スリーブが設けられ、該先端スリーブと上記削孔ビット部材の嵌合軸部との間には、径方向において相互に嵌合して抜け止めし、先端スリーブを削孔ビット部材に追従させる嵌合構造が設けられ、該嵌合構造には、先端スリーブを削孔ビット部材上で相対移動可能にする緩衝用の隙間が形成された削孔工具である。
【0009】
すなわち、切削のための動力を伝達するロッドは、削孔ビット部材に対して回転しながら打撃を加え、削孔を行う。このとき、削孔ビット部材の嵌合軸部の外周には先端スリーブが相対移動可能に嵌合されているが、この先端スリーブと嵌合軸部との間には、抜け止めをする嵌合構造が設けられているので、削孔ビット部材の削孔動作に伴い、先端スリーブは削孔ビットに追従して移動する。しかし、嵌合構造には、先端スリーブを削孔ビット部材上で相対移動可能にする緩衝用の隙間が形成されているので、打撃による振動は緩和され、先端スリーブの後端部に接続されたケーシングパイプに掛かる負荷を軽減できる。
【0010】
このため、ケーシングパイプが、たとえば塩化ビニルなどの合成樹脂製であっても、ひび割れたりする不測の損傷を回避できる。
【0011】
また、削孔後には、着脱構造においてロッドを削孔ビット部材から分離し、削孔ビットとケーシングパイプと先端スリーブを残してロッドを抜き取ればよい。
【0012】
ここで、上記各構成要素については、次のような態様を採用することができる。
その態様の一つは、上記ロッドの軸芯部に長さ方向に貫通する導通孔部が形成され、上記削孔ビット部材の軸方向における中央部には、上記導通孔部と連通する中央孔部が後端から設けられて、該中央孔部の先端からは削孔ビット部材の先端部に開口する噴孔が延設されるとともに、上記中央孔部または噴孔には、噴孔側からの物体の浸入を阻止する逆止弁が設けられたものである。
すなわち、削孔に際しては、ロッドの導通孔部、削孔ビット部材の中央孔部および噴孔に圧縮エアなどの流体を流すとともに、上記流体に代えて、地盤改良等の薬液を通して薬液注入を行うことができる。また、流体を流さない時には逆止弁が噴孔からの泥土や砂などの物体の侵入を防止することができる。
【0013】
態様の他の一つは、上記嵌合構造が凸部と凹部とで構成されるとともに、上記凸部が転動可能な球体からなるものである。
すなわち、相互に嵌合して抜け止めをする凸部と凹部のうち凸部が転動可能な球体であるので、凸部と凹部の衝突時にその衝撃を緩和できる。このため、より一層の緩衝効果が期待できる。
【0014】
態様の他の一つは、上記嵌合構造を軸方向において挟む2位置に、削孔ビット部材の嵌合軸部と先端スリーブの内周面との間をシールするシール部材が設けられたものである。
すなわち、先端スリーブは嵌合軸部に対してシール部材を介して接続されているので、先端スリーブはいたずらにがたつくことはない。また嵌合軸部と先端スリーブとの間に泥土や砂などが浸入するのを防止し、緩衝を行う嵌合構造を保護できる。
【0015】
態様の他の一つは、上記ケーシングパイプが樹脂製である。
すなわち、ケーシングパイプを建て込んでそのまま埋め殺しにしても、後で行う掘削工事などに支障はなく、補強や防水を行っての容易な工事を期待できる。
【0016】
態様の他の一つは、上記着脱構造が、回転により着脱可能なものであるとともに、前記ロッドの後にカップリング部材を介して別のロッドが接続され、各ロッドとカップリング部材の間には、上記着脱構造での離脱を可能にする方向と反対方向に向けてのねじが形成されるとともに、上記ロッド又はカップリング部材のうち内側に位置するものには、周方向に沿った係合溝が形成され、上記カップリング部材又はロッドのうち外側に位置するものには、ロッドとカップリング部材を接続した時に上記係合溝と対応する貫通孔が形成され、該貫通孔に対してピンが挿入されることでロッドとカップリング部材が回り止め可能に接続されるものである。
すなわち、ロッドに対して着脱構造での離脱を可能にする方向と反対方向に向けて回転しながら打撃を加えて削孔を行い、所定の削孔を形成した後、ロッドに対して着脱構造での離脱方向に回転すれば、各ロッドとカップリングが係合溝と貫通孔とピンとで相対回転不可に結合しているので、ロッドを削孔ビット部材から外して抜き取り回収することができる。
【0017】
態様の他の一つは、上記ケーシングパイプが、逆止弁付きの噴射孔を有するものである。
すなわち、所望の削孔を行ってロッドを抜き取った後、ロッドに代えて薬液注入用の注入管を差し込んで薬液注入を行えば、注入管から噴出した薬液は、ケーシングパイプの噴射孔を通して噴射され所望の作用を行う。噴射孔は逆止弁を有するので、削孔中にケーシングパイプ内に泥土や砂などが浸入することを防止できる。
【0018】
別の手段は、上記削孔工具を用いて削孔を行い、上記ロッドを削孔ビット部材から分離し、ケーシングパイプを残してロッドを抜き取る削孔工法である。
すなわち、削孔を行って回収するのはロッドであって、ケーシングパイプを含めたその他のものは埋め殺しにするので、回収する部材が一本のものであり、簡単で手間もかからないため、作業効率を向上することができる。
【0019】
別の手段は上記導通孔部と中央孔部と噴孔を有する削孔工具を用いて行う削孔工程と、該削孔工程で形成された削孔に対して、上記削孔工具におけるロッドの導通孔部から薬液を注入して行う薬液注入工程とが交互または同時に行われる薬液注入工法である。
すなわち、削孔と薬液注入は同期して行えるので、一度削孔した後であらためて薬液注入用の工具を差し込んで薬液注入を行う場合に比して格段に作業効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、この発明によれば、ロッドを介して削孔ビット部材に伝達された削孔のための振動がケーシングパイプに直接伝わらないように、ケーシングパイプの先端に先端スリーブを設けて、この先端スリーブと削孔ビット部材との間に緩衝用の嵌合構造を設けている。このため、削孔のための回転と打撃でケーシングパイプが損傷してしまうおそれをなくすことができる。つまり、ケーシングパイプは孔壁の崩落を防ぐ程度の強度さえあればよく、鋼管を用いる必要はない。また、削孔作業後ロッドは抜き取られる。この結果、ケーシングパイプを埋め殺しにしても、ケーシングパイプが鋼鉄製ではなく合成樹脂や紙からなる場合には掘削等の後の作業に影響はなく、作業効率を向上することができる。
【0021】
また、削孔のための動力はロッドと該ロッドの先に設けられた削孔ビット部材に対して直接的に付与される構造であるので、そのロッドと削孔ビット部材に、薬液注入を可能にする構成を設けることで、削孔をしながらの薬液注入が可能となり、薬液注入の作業性が大幅に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1は、削孔工具11の断面図、図2はその分解図である。これらの図に示すように削孔工具11は、削孔のための動力を伝達するロッド21と、該ロッド21の先端に着脱可能に取り付けられて削孔を行う削孔ビット部材31と、上記ロッド21の外周側に位置して削孔された孔壁の崩落を防ぐケーシングパイプ41と、該ケーシングパイプ41の先端に設けられ、上記削孔ビット部材31との間に介在する先端スリーブ51とを有する。
【0023】
この削孔工具11では、ロッド21を介して削孔ビット31に伝達された回転力と打撃力とによって削孔が行われる構造であって、上記先端スリーブ51とケーシングパイプ41はその削孔動作に追従して削孔内に侵入する。
【0024】
上記各部について順に説明する。
上記ロッド21は、パーカッションマシンの本体ハンマ機構部におけるシャンクロッド(図示せず)の先に接続されるもので、上記削孔ビット部材31に対して接続される先端ロッド21aと、この先端ロッド21aの後ろに順次継ぎ足される継ぎ足しロッド21bとがある。いずれも所定長さに形成された円筒状で、軸心部には長さ方向に貫通する導通孔部22を有し、両端部には接続のための雄ねじ23,23が形成されている。この雄ねじ23は左ねじである。つまり、左への回転が締まる方向への回転である。なお、図では、例としてテーパねじを示したが、ロープねじやハイリードねじなどであるもよい。
【0025】
先端ロッド21aにおいては、削孔ビット部材31に接続する側の一端部は、雄ねじ23のみで形成されるが、他端部と継ぎ足しロッド21bの両端部の雄ねじ23部分においては、図3に示したように雄ねじ23の先に係合溝24が併せて形成される。
【0026】
すなわち、所定長さの範囲にわたって形成された雄ねじ23の先に、断面U字状をなす1条の係合溝24が周方向に形成されている。そして、先端ロッド21aと継ぎ足しロッド21b、継ぎ足しロッド21b同士は、上記雄ねじ23に螺合する雌ねじ25を両端部に有した円筒状のカップリング部材26によって接続されるが、このカップリング部材26における接続時に上記係合溝24と対応する位置には貫通孔27が形成される。貫通孔27は、1条の係合溝24に対して平行に2個、すなわち一つのカップリング部材26に合計4個形成されている。
【0027】
これら貫通孔27には、螺合による接続後にピン28が挿入される(図4参照)。ピン28の挿入によりロッド21がカップリング部材26から抜ける方向、すなわち右方向に回転しようとしても、貫通孔27に挿入されているピン28が係合溝24に係合された状態を保つので、右方向への回転が阻止され、抜け止めがなされる。なお、ピンには割りピンを用いるのが好ましい。
【0028】
上記削孔ビット部材31は、上記ロッド21が接続される略円筒状の本体部材32と、該本体部材32の先に一体固定されるビット部材33とからなる。本体部材32は、後端部に上記先端ロッド21aの雄ねじ23が螺合する雌ねじ32aを有し、先端部がビット部材33内に差し込まれて回転不可能な状態に固定される。本体部材32におけるビット部材33から出ている部分が嵌合軸部34である。
【0029】
ビット部材33は、本体部材32よりも大径で、先端部は適宜の形状に形成され、超硬合金からなるチップ35が固定されている。そしてこのビット部材33には、本体部材32の軸心部に形成されている中央孔部36aに連通する中央孔部36bが形成され、この中央孔部36bから先には複数本の噴孔36cが形成されている。
【0030】
上記中央孔部36a,36bと噴孔36cには、ロッド21内の導通孔部22を通して、またはその他の部材を通して注入されるエアや水、薬液などの流体が通る。このため、上記中央孔部36a,36bには、逆止弁37が設けられる。逆止弁37は、図示したようにボール37aと、これを付勢するねじりコイルばね37bで構成できる。
【0031】
また、逆止弁37と上記雌ねじ32aとの間には、上記先端スリーブ51を相対移動可能な状態で取り付ける嵌合構造の構成要素としての凸部38が形成されている。上記相対移動は、先端スリーブ51の長さ方向および周方向に適宜範囲で行われるように設定される。また、凸部38は、たとえば3個、4個などと周方向に複数形成される。
【0032】
この例では凸部38は、転動可能な球体38aで形成されている。また、この球体38aは内外に出没自在である。
【0033】
すなわち、球体38aは、嵌合軸部34に形成された保持孔34aに保持されるとともに、この保持孔34aの内周側に位置するように収納された短筒状の支持環38bと、この支持環38bを上記保持孔34aの下に位置するように付勢するばね38cとを有する。上記支持環38bの外周面における反ばね側にはテーパ面38dが形成され、支持環38bが先端側に変位した位置からばね38cの付勢力に従って後方に変位した時に、球体38aを外周側に押圧して移動するように構成されている。図中39は、上記支持環38bに対して位置規制を行う止め具である。
【0034】
このような嵌合軸部の外周に嵌まるのが、上記先端スリーブ51である。この先端スリーブ51は、内周面における上記球体38aに対応する部位に凹部52を有する。凹部52は、先端スリーブ51を嵌合軸部34上で相対移動可能にする緩衝用の隙間52aを有した大きさである。
【0035】
先端スリーブ51の内周面における上記凹部52を長さ方向にはさむ2位置には、嵌合軸部34との間をシールするシール部材53,54が設けられている。
【0036】
また、先端スリーブ51の先端部には、上記削孔ビット部材31におけるビット部材33の後端部に形成された噛合部33aと、相対移動可能に噛合する噛合部51aが形成されている。
【0037】
一方、先端スリーブ51の後端部には、接続用の接続ねじ部51bが形成されており、上記ケーシングパイプ41が接続される。
【0038】
先端スリーブ51を嵌合軸部34に嵌合するには、適宜の治具を用いて支持環38bを先端方向に向けて押し込んでおき、この状態で、先端スリーブ51の先端部を嵌合軸部34に対して差し込んでから、治具による支持環38bの押圧を解除すればよい。すると、支持環38bがばね38cの弾性復帰に伴って後方に向けて変位し、球体38aが外周側に突出する。すなわち、球体38aが凹部52内に収まり嵌め殺し状態になる。
【0039】
上記ケーシングパイプ41は、塩化ビニルなどの合成樹脂製で、所定長さに形成された円筒状である。そして先端に、上記接続ねじ部51bに螺合する第1ねじ部41aが形成され、後端には、この第1ねじ部41aに螺合可能な形状の第2ねじ部(図示せず)が形成された構造で、順次継ぎ足して使用される。
【0040】
また、ケーシングパイプ41には、薬剤を噴射するため、図5に示したように、逆止弁42付きの複数の噴射孔43が適宜間隔おきに形成されている。逆止弁42付きの噴射孔43は、たとえば図5(a)に示したように、ボール42aと、これを付勢するばね42bを、ケーシングパイプ41の内周側に位置する内側孔42cと、外周側に位置する外側孔42dとの間に保持して構成される。このとき、内側から外側への流体の通過を許容しつつも外側から内側への泥土等の通過を阻止するため、上記ボール42aは内側孔42cがわに保持される。また、逆止弁42は、図5(b)に示したように、1個のゴム製のものであるもよい。つまり、逆止弁42は、孔内に取り付けられる筒状部42eと、該筒状部42eの下端(ケーシングパイプ41の内周がわ)に形成された抜け止め用の鍔部42fと、上記筒状部42eの上端(ケーシングパイプ41の外周がわ)に形成された開閉可能な複数枚の弁板42gとを有する。
【0041】
このように構成された削孔工具11では、図1に示したようにロッド21を削孔ビット部材31に接続した状態でパーカッションマシンから左回りの回転力と打撃力を削孔ビット部材31に伝達すると、図6に示したように、削孔ビット部材31は、その回転力と打撃力を受けて、地盤や岩盤内に切り込む。このとき、回転力と打撃力を受ける削孔ビット部材31に接触しているのは先端スリーブ51であるが、この先端スリーブ51の接触は、凸部38と凹部52とからなる嵌合構造とシール部材53,54を介してなされている。そして、凸部38と凹部52の間には、隙間52a(余裕、あそび)を有しているため、回転力や打撃力による振動は緩和され、先端スリーブ51の後端部に接続されたケーシングパイプ41に掛かる負荷を軽減できる。
【0042】
しかも、凸部38は転動可能であるため、凸部38と凹部52の衝突時の衝撃も緩和できるため、ケーシングパイプ41に掛かる負荷はより一そう軽減される。
【0043】
さらに、先端スリーブ41は嵌合軸部に対してシール部材53,54を介して接続されているので、先端スリーブ51はいたずらにがたつくことはない。そのうえ、嵌合軸部34と先端スリーブ51との間に泥土などが浸入するのを防止し、緩衝を行う嵌合構造を保護できる。
【0044】
また、削孔などの作業終了後には、ロッド21に対して図7に示した如く、削孔の時とは逆、すなわち右回りの回転力を加えれば、ロッドはすべて一体であるので、先端ロッド21aを削孔ビット部材31から簡単に分離することができる。抜き取ったロッド21は、カップリング部材26の貫通孔27に差し込んだピン28を抜き取れば各部材ごとに分離できる。
【0045】
以上のような削孔工具を用いた作業例を以下に説明する。
(作業例1)
削孔しながら薬液注入を行う場合には、図8に示したように、まず、噴孔からエア又は水を噴射しながら所定深さの削孔(削孔工程)を行い(a)、削孔動作を止めてからエア又は水に代えて所望の薬液を噴孔36cから噴射(薬液注入工程)する(b)。または、上記削孔(削孔工程)と薬液噴射(薬液注入工程)を同時に行う。
このような動作を順次繰り返して、所定の深さまで削孔と薬液注入を行う(c)。
最後に、ロッドを右に回転してロッドのみを回収する(d)。
【0046】
(作業例2)
所定深さの削孔(削孔工程)をしてから薬液注入(薬液注入工程)を行う場合には、図9に示したように、まず、噴孔からエア又は水を噴射しながら所定深さの削孔を行う(a,b)。次に、ロッドを右に回転してロッドのみを回収する(c)。続いて、薬液注入用の注入管61をロッド21に代えて差し込んで、注入管61を利用して薬液注入を行う(d)。薬液は、ケーシングパイプ41に設けられた逆止弁42付きの噴射孔43から噴出する。
【0047】
上記例のようにして、削孔作業と薬液注入作業は行われる。
そして、削孔動作に際しては、上述の如くケーシングパイプ41に掛かる負荷を抑えることができるので、ケーシングパイプ41がひび割れたりする不測の損傷を回避できる。
【0048】
また、ロッド21には導通孔部22が形成され、削孔ビット部材31には中央孔部36a,36bと噴孔36cが形成されているので、削孔をしながら、または削孔と交互に薬液注入を行うことも可能で、作業効率を向上することもできる。
【0049】
さらに、作業後に埋め殺しにされるケーシングパイプ41は合成樹脂製であるので、後の掘削等の作業に影響はなく、作業効率を向上することができる。
【0050】
またケーシングパイプ41が逆止弁42付きの噴射孔43を有しているので、削孔を行った後に薬液注入を行う場合に、ケーシングパイプ41を抜き取らずに埋めた状態のまま作業が行える。つまり、作業の簡単化を図ることができる。
【0051】
以下、その他の形態について説明する。なお、上記構成と同一又は同等の部位については同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0052】
図10は、嵌合軸部34と先端スリーブ51との間に形成される嵌合構造の構成要素としての凸部38が、内外に出没自在でない場合を示した例である。
【0053】
すなわち、嵌合軸部34における凸部形成位置には、凸部38としての球体38aの下半分ほどを収容する凹所34bが周方向に複数形成形成され、一方、先端スリーブ51における上記凹所対応位置は、所定の凹部52を形成可能な厚みに設定されるとともに、この部位には、内外に貫通する穴部55が形成される。この穴部55には蓋部材56が固定される。つまり、嵌合軸部34と先端スリーブ51の嵌合に際しては、上記蓋部材56が取り付けられずに穴部55が開放された状態であり、先端スリーブ51を嵌合軸部34に嵌合した後、穴部55を通して球体38aを凹所34bに収容する。球体38aの収容後に蓋部材56を固定すれば、先端スリーブ51は嵌合軸部34から抜け止めされ、しかも、緩衝が行える状態になる。
【0054】
図11も、嵌合軸部34と先端スリーブ51との間に形成される嵌合構造の構成要素としての凸部38が、内外に出没自在でない場合を示した例であり、この場合には、図10に示した例の場合の穴部55や蓋部材56、蓋部材56の固定作業が不要となる。
【0055】
すなわち、嵌合軸部34における突部形成部位に、内外に貫通する形状の保持孔34aが形成されるとともに、その保持孔34aから後ろ側、つまりロッド接続のための雌ねじ32aがわが前側よりも大径に設定されている。この大径に形成された部分に、凸部38としての球体38aを支持する筒状の支持部材38eが固定される。
【0056】
嵌合軸部34に対しての先端スリーブ51の固定は、まず、嵌合軸部34に対して先端スリーブ51を嵌合してから、保持孔34aに対して球体38aを収容する。続いて、支持部材38eを、嵌合軸部34を構成する本体部材32の大径部分に対して固定する。すると球体38aは、保持孔34aと凹部52内に収まり、先端スリーブ51の抜け止めがなされるともに緩衝が行える状態になる。
【0057】
この発明の構成と、上記一形態の構成との対応において、
この発明の着脱構造は、上記一形態における先端ロッド21aの雄ねじ32と雌ねじ32aに対応し、
同様に、
嵌合構造は、凸部38と凹部52に対応するも、
この発明は、上記一形態の構成のみに限定されるものではなく、その他の様々な形態を採用することができる。
【0058】
たとえば、着脱構造は、上述のようにねじのみで構成するのではなく、例えば特異な形状の溝を有し、適宜の回転と引張り等の所定の動作で着脱可能な構成などを採用するもよい。
【0059】
また、嵌合構造は、嵌合軸部側に凸部、先端スリーブがわに凹部を設けた例を示したが、凸部と凹部を逆に配置するもよい。また、凸部は、球体のほか、例えばEリング状の部材を先端スリーブに対して固定して、該部材の内周側に位置する突起を、嵌合構造の凸部とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】削孔工具の断面図。
【図2】削孔工具の分解状態の断面図。
【図3】継ぎ足しロッドとカップリング部材の構造説明図。
【図4】カップリング部材による接続状態の断面図。
【図5】ケーシングパイプの一部拡大断面図。
【図6】作用状態の断面図。
【図7】作用状態の断面図。
【図8】作業工程を示す説明図。
【図9】作業工程を示す説明図。
【図10】他の例に係る削孔工具の断面図。
【図11】他の例に係る削孔工具の断面図。
【符号の説明】
【0061】
11…削孔工具
21…ロッド
22…導通孔部
23…雄ねじ
24…係合溝
26…カップリング部材
27…貫通孔
28…ピン
31…削孔ビット部材
32a…雌ねじ
34…嵌合軸部
36a,36b…中央孔部
36c…噴孔
37…逆止弁
38…凸部
38a…球体
41…ケーシングパイプ
42…逆止弁
43…噴射孔
51…先端スリーブ
52…凹部
52a…隙間
53,54…シール部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
削孔のための動力を伝達するロッドと、該ロッドの先に設けられて削孔を行う削孔ビット部材と、上記ロッドの外周側に位置して削孔された孔壁の崩落を防ぐケーシングパイプとを有する削孔工具であって、
上記ロッドの先端部と削孔ビット部材の後端部の間には、ロッドを削孔ビット部材に対して着脱可能に接続する着脱構造が設けられ、
上記ケーシングパイプの先端には、当該先端スリーブの先端側部分が、上記削孔ビット部材の後側部分の外周に形成された嵌合軸部に対して相対移動可能な状態で嵌合する先端スリーブが設けられ、
該先端スリーブと上記削孔ビット部材の嵌合軸部との間には、径方向において相互に嵌合して抜け止めし、先端スリーブを削孔ビット部材に追従させる嵌合構造が設けられ、
該嵌合構造には、先端スリーブを削孔ビット部材上で相対移動可能にする緩衝用の隙間が形成された
削孔工具。
【請求項2】
前記ロッドの軸芯部に長さ方向に貫通する導通孔部が形成され、
前記削孔ビット部材の軸方向における中央部には、上記導通孔部と連通する中央孔部が後端から設けられて、該中央孔部の先端からは削孔ビット部材の先端部に開口する噴孔が延設されるとともに、
上記中央孔部または噴孔には、噴孔側からの物体の浸入を阻止する逆止弁が設けられた
請求項1に記載の削孔工具。
【請求項3】
前記嵌合構造が凸部と凹部とで構成されるとともに、
上記凸部が転動可能な球体からなる
請求項1または請求項2に記載の削孔工具。
【請求項4】
前記嵌合構造を軸方向において挟む2位置に、削孔ビット部材の嵌合軸部と先端スリーブの内周面との間をシールするシール部材が設けられた
請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の削孔工具。
【請求項5】
前記ケーシングパイプが樹脂製である
請求項1から請求項4のうちのいずれか一項に記載の削孔工具。
【請求項6】
前記着脱構造が、回転により着脱可能なものであるとともに、
前記ロッドの後にカップリング部材を介して別のロッドが接続され、
各ロッドとカップリング部材の間には、上記着脱構造での離脱を可能にする方向と反対方向に向けてのねじが形成されるとともに、
上記ロッド又はカップリング部材のうち内側に位置するものには、周方向に沿った係合溝が形成され、上記カップリング部材又はロッドのうち外側に位置するものには、ロッドとカップリング部材を接続した時に上記係合溝と対応する貫通孔が形成され、
該貫通孔に対してピンが挿入されることでロッドとカップリング部材が回り止め可能に接続される
請求項1から請求項5のうちのいずれか一項に記載の削孔工具。
【請求項7】
前記ケーシングパイプが、逆止弁付きの噴射孔を有する
請求項1から請求項6のうちのいずれか一項に記載の削孔工具。
【請求項8】
前記請求項1から請求項7のうちのいずれか一項に記載の削孔工具を用いて削孔を行い、前記ロッドを削孔ビット部材から分離し、ケーシングパイプを残してロッドを抜き取る
削孔工法。
【請求項9】
前記請求項2から請求項7のうちのいずれか一項に記載の削孔工具を用いて行う削孔工程と、
該削孔工程で形成された削孔に対して、上記削孔工具におけるロッドの導通孔部から薬液を注入して行う薬液注入工程とが交互または同時に行われる
薬液注入工法。
【請求項1】
削孔のための動力を伝達するロッドと、該ロッドの先に設けられて削孔を行う削孔ビット部材と、上記ロッドの外周側に位置して削孔された孔壁の崩落を防ぐケーシングパイプとを有する削孔工具であって、
上記ロッドの先端部と削孔ビット部材の後端部の間には、ロッドを削孔ビット部材に対して着脱可能に接続する着脱構造が設けられ、
上記ケーシングパイプの先端には、当該先端スリーブの先端側部分が、上記削孔ビット部材の後側部分の外周に形成された嵌合軸部に対して相対移動可能な状態で嵌合する先端スリーブが設けられ、
該先端スリーブと上記削孔ビット部材の嵌合軸部との間には、径方向において相互に嵌合して抜け止めし、先端スリーブを削孔ビット部材に追従させる嵌合構造が設けられ、
該嵌合構造には、先端スリーブを削孔ビット部材上で相対移動可能にする緩衝用の隙間が形成された
削孔工具。
【請求項2】
前記ロッドの軸芯部に長さ方向に貫通する導通孔部が形成され、
前記削孔ビット部材の軸方向における中央部には、上記導通孔部と連通する中央孔部が後端から設けられて、該中央孔部の先端からは削孔ビット部材の先端部に開口する噴孔が延設されるとともに、
上記中央孔部または噴孔には、噴孔側からの物体の浸入を阻止する逆止弁が設けられた
請求項1に記載の削孔工具。
【請求項3】
前記嵌合構造が凸部と凹部とで構成されるとともに、
上記凸部が転動可能な球体からなる
請求項1または請求項2に記載の削孔工具。
【請求項4】
前記嵌合構造を軸方向において挟む2位置に、削孔ビット部材の嵌合軸部と先端スリーブの内周面との間をシールするシール部材が設けられた
請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の削孔工具。
【請求項5】
前記ケーシングパイプが樹脂製である
請求項1から請求項4のうちのいずれか一項に記載の削孔工具。
【請求項6】
前記着脱構造が、回転により着脱可能なものであるとともに、
前記ロッドの後にカップリング部材を介して別のロッドが接続され、
各ロッドとカップリング部材の間には、上記着脱構造での離脱を可能にする方向と反対方向に向けてのねじが形成されるとともに、
上記ロッド又はカップリング部材のうち内側に位置するものには、周方向に沿った係合溝が形成され、上記カップリング部材又はロッドのうち外側に位置するものには、ロッドとカップリング部材を接続した時に上記係合溝と対応する貫通孔が形成され、
該貫通孔に対してピンが挿入されることでロッドとカップリング部材が回り止め可能に接続される
請求項1から請求項5のうちのいずれか一項に記載の削孔工具。
【請求項7】
前記ケーシングパイプが、逆止弁付きの噴射孔を有する
請求項1から請求項6のうちのいずれか一項に記載の削孔工具。
【請求項8】
前記請求項1から請求項7のうちのいずれか一項に記載の削孔工具を用いて削孔を行い、前記ロッドを削孔ビット部材から分離し、ケーシングパイプを残してロッドを抜き取る
削孔工法。
【請求項9】
前記請求項2から請求項7のうちのいずれか一項に記載の削孔工具を用いて行う削孔工程と、
該削孔工程で形成された削孔に対して、上記削孔工具におけるロッドの導通孔部から薬液を注入して行う薬液注入工程とが交互または同時に行われる
薬液注入工法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−46301(P2007−46301A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−230860(P2005−230860)
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【出願人】(591046858)アロイ工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【出願人】(591046858)アロイ工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】
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