説明

前立腺障害の治療および予防のための生薬組成物

a)遊離形態もしくはリン脂質との複合体である、シリマリンまたはその成分と、b)純粋の形態またはリコペルシカムアエスキュレンタム抽出物の形態であるリコピンと、c)ラウリン酸、またはその無毒性エステルもしくは塩、あるいはノコギリヤシの親油性抽出物と、d)場合により亜鉛塩および/またはセレニウム化合物と、を含む組成物を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前立腺肥大の治療および前立腺がんの予防のための、植物起源の天然化合物と場合により微量元素との組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シリマリン(silymarin)、特にシリビニン(silibinin)は、局所的または全身的な経路で投与する場合に、抗肝毒活性(Reinhard S.ら、Drugs、2001年、61巻、2035〜2063頁)および抗炎症活性(Gupta P.O.ら、Phytomedicine、2000年、7巻、21頁)のある化合物であることが知られており、この分子はまた、エストロゲン受容体に対して親和性があることも知られている(Scambia G.ら、European J.of Cancer、1996年、32A、878頁)。シリマリンは、数十年にわたり、様々な種類の肝臓疾患を治療するために、ならびにα−アマニチンおよびファロイジンの中毒を治療するために使用されてきた。米国特許第5714473号では、シスプラチンおよびアントラサイクリンなどの抗腫瘍薬の毒性を調節、または和らげるためのシリマリンおよびシリビニンの使用についても記載している。国際公開第96/37209号では、シリビニンは、リン脂質との複合体の形態で卵巣および乳房のホルモン依存性腫瘍の増殖を抑制し、白金錯体と相乗効果があると主張されている。シリビニンはエストロゲン受容体に対して親和性があるため、エストロゲン受容体を異常に発現する部位にシリビニン分子が蓄積し、発現過多の臓器に対し、際立った抗酸化作用、抗炎症作用、および抗増殖作用を与えることができる。これらの抗炎症作用および抗増殖作用は、以下に述べる理由から、ホルモン非依存性の前立腺腫瘍の治療および防止に特に重要である。
【0003】
in vitroでは、シリマリン、特にシリビニンは、アンドロゲン非依存性の前立腺がん細胞の増殖を抑制し、すなわち細胞周期をG1で停止させる。
【0004】
リコピンは、広く知られているように、前立腺がんの発生を防止する作用のある、親油性の抗酸化剤である。疫学レベルでは、理由は未だ完全に解明されていないが、血漿中リコピン濃度と前立腺腫瘍の間には反比例の関係がある。体内でビタミンAを生成しないこのプロカロテノイドはリポタンパク質に入り、そこでコレステロールの酸化を阻害し、この阻害はステロイドホルモンの合成および代謝に影響を及ぼすことがある。外科的根治を待っている局在性の前立腺腺がんの患者に行った実験では、リコピンを1日28mgの投与量で3週間食事の一部として摂取すると、PSA(前立腺特異抗原)の血漿濃度が低下し、手術後の生検組織のDNAに対する酸化的損傷は大幅に減少した(J Natl Cancer Inst 2001年、93巻、1872〜79頁)。
【0005】
最後に、ノコギリヤシ(Serenoa repens)の親油性抽出物が、ここしばらく良性の前立腺肥大の治療に用いられている。
【発明の開示】
【0006】
a.遊離形態もしくはリン脂質との複合体である、シリマリンまたはその成分と、
b.純粋の形態もしくはリコペルシカムアエスキュレンタム(Lycopersicum aesculentum)抽出物の形態で用いられるリコピンと、
c.ラウリン酸、またはその無毒性エステルもしくは塩、あるいはノコギリヤシの親油性抽出物と、
d.ならびに場合により、亜鉛塩および/またはセレニウム化合物と、
の組成物が、驚くべきことに、細胞の増殖、前立腺肥大、PSA、およびDNAに対する酸化的損傷を、これらの成分を別々に摂取したときに知られていたよりも遥かに大きい程度で減少させることが今や判明した。
【0007】
欧州特許第0209038号で開示されているように、シリマリンまたはその主成分(シリビニン、シリジアニン(silidianin)およびシリクリスチン(silichristin)、特にシリビニン)は、ミルクシスル(マリアアザミ)から抽出され、そのように抽出されたものを、またはそのリン脂質との複合体の形態として、用いることができる。
【0008】
シリビニンのホスファチジルコリンとの複合体が、特に好ましい。
【0009】
リコペルシカムアエスキュレンタム抽出物は、欧州特許第0818225号、国際出願番号PCT/EP2003/02749号に記載されたように調製することができ、ノコギリヤシ抽出物は、欧州特許第0250953号で開示されたように調製することができる。
【0010】
ラウリン酸は、メチルエステルもしくはエチルエステル、または亜鉛塩の形態であるのが好ましい。
【0011】
5〜20マイクログラムのセレニウムを投与するために、セレニウム源として、セレニウムと他の様々な無毒性の基質との付加化合物を用いることができる。メチルセレノシステイン(Methylselenocysteine)が特に好ましい。
【0012】
錠剤、硬ゼラチンカプセル剤もしくは軟ゼラチンカプセル剤、または飲料用製剤として、適切な賦形剤とともに、様々な成分が好ましく処方される。
【0013】
様々な成分の、1日あたりの平均投与量の範囲は、シリビニンが100mg〜1g、好ましくは150〜300mg、リコピンが2〜30mg、好ましくは7.5mg、ラウリン酸、またはその無毒性エステルもしくは塩が20〜80mg、好ましくは40mgであり、亜鉛は8〜16mgの量、好ましくは12mgが投与され、セレニウムは、メチルセレノシステインの形態で、1日あたり5〜20マイクログラムの量、好ましくは10マイクログラムが投与される。
【0014】
シリビニンまたはシリマリンのリン脂質複合体の場合は、投与量は有効成分含有量を意味する。
【0015】
好ましい組成物は、ホスファチジルコリンと複合体を形成したシリビニンを160mg、リコピンを7.5mg、ラウリン酸亜鉛を22mg、およびメチルセレノシステインを12μg含む。
【0016】
様々な成分は、製剤全体の許容できる吸収を確実にするように適切な賦形剤で希釈される。これらの組成物を用いて、排尿困難、あるいは日中および夜間の頻尿などの良性の前立腺肥大の症状、ならびに前立腺肥大の進行が前立腺患者で縮小されている。ホルモン非依存性の前立腺がんの患者で、この組合せにより、血漿PSA値が低下し、細胞増殖に対する直接作用を示している。
【0017】
(実施例)
以下の実施例により、本発明が詳しく説明される。
【0018】
実施例1
シリマリンのホスファチリジルコリンとの複合体 240mg
ノコギリヤシ抽出物 200mg
リコピン10%のトマト抽出物 50mg
を含むカプセル剤。
【0019】
実施例2
シリビンのホスファチリジルコリンとの複合体 160mg
リコピン 20mg
ラウリン酸亜鉛 30mg
メチルセレノシステイン 0.01mg
を含むカプセル剤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.遊離形態もしくはリン脂質との複合体である、シリマリンまたはその成分と、
b.純粋な形態またはリコペルシカムアエスキュレンタム抽出物の形態であるリコピンと、
c.ラウリン酸、またはその無毒性エステルもしくは塩、あるいはノコギリヤシの親油性抽出物と、
d.場合により、亜鉛塩および/またはセレニウム化合物と、
を含む組成物。
【請求項2】
成分a.がホスファチジルコリンと複合体を形成したシリビン(silybin)である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
成分c.がラウリン酸のメチルエステルもしくはエチルエステル、またはその亜鉛塩である請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
セレニウム化合物がメチルセレノシステインである請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
シリビンもしくはシリマリンを100mg〜1g、または対応するリン脂質との複合体の同等量と、
リコピンを2〜30mgと、
ラウリン酸またはそのエステルもしくは塩を20〜80mgと、
亜鉛を8〜16mgと、
およびセレニウムをメチルセレノシステインとして5〜20μgと、
を1日投与量として含む、
請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
ホスファチジルコリンと複合体を形成したシリビンを160mgと、
リコピンを7.5mgと、
ラウリン酸亜鉛を22mgと、
メチルセレノシステインを12μgと、
を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
a.遊離形態もしくはリン脂質との複合体である、シリマリンまたはその成分と、
b.純粋の形態またはリコペルシカムアエスキュレンタム抽出物の形態であるリコピンと、
c.ラウリン酸、またはその無毒性エステルもしくは塩、あるいはノコギリヤシの親油性抽出物と、
d.場合により、亜鉛塩および/またはセレニウム化合物と、
の組合せの使用であって、良性の前立腺肥大の治療、ならびにホルモン非依存性の前立腺がんの治療および予防のための薬物または機能性食品を調製するための使用。

【公表番号】特表2007−528361(P2007−528361A)
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518006(P2006−518006)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006550
【国際公開番号】WO2005/004889
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(591092198)インデナ エッセ ピ ア (52)
【Fターム(参考)】