説明

剛直系複素環共重合体およびその製造方法

【課題】 引っ張り強度、圧縮強度ともに優れた剛直系複素環共重合体、その製造方法、およびそれからの成形体を提供する。
【解決手段】 下記式(E)および(F)
【化1】


(E)


(F)
(mは1〜4の整数、XはO、S、NHのいずれかを表し、Mはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれるハロゲン原子を表し、Arは炭素数4〜20の4価の芳香族基を表し、Arは炭素数4〜20の芳香族基を表す)
で表わされる繰り返し単位、およびそれとは異なる特定の繰り返し単位とからなる共重合体、その製造方法、およびそれからの成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン原子を有する剛直系複素環共重合体、その製造方法、およびそれからの成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリベンゾビスオキサゾール系化合物については広範な紹介例があり(特許文献1)、ベンゾビスオキサゾールとピリジン−ベンゾビスオキサゾールの共重合体の製造についての記載があるが、繊維などの成形体の検討はなされていない。
【0003】
水酸基を有するアゾール系ポリマー及びその製造方法としては例えば非特許文献1に報告されているが、ベンゾビスオキサゾールとピリジン−ベンゾビスオキサゾールの共重合体等の窒素をフェニレン基に含有するアゾールポリマーとの組成物、共重合体の繊維等の成型、物性等の検討はされていない。
【0004】
また非特許文献2にはポリベンゾビスチアゾール分子鎖中にハロゲン原子を導入し焼成時に発生するラジカルにより分子間結合を導入する試みがなされており、確かにシェアモジュラスの向上が見られるがポリベンゾビスオキサゾール、や水酸基を有するアゾール系ポリマーやピリジン環を有するアゾール系ポリマーとの共重合の報告例はない。
【0005】
【特許文献1】国際公開第85/04178号パンフレット
【非特許文献1】Polymer, 35 , (1994) 3091
【非特許文献2】Journal of Polymer Science:PartA:Polymer Chemistry, vol.30, 1111−1122 (1992)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、剛直な複素環重合体の分子間相互作用を導入し引っ張り強度、圧縮強度ともに優れた剛直系複素環共重合体を提供するというものである。さらにはカチオン染料、酸性染料による高い染色性を有する剛直系複素環共重合体子、およびそれからの成形体を提供するというものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、 下記式(A)および(B)
【化1】

(A)

(B)
(nは1〜4の整数、XはO、S、NHのいずれかを表し、Arは炭素数4〜20の4価の芳香族基を表し、Arは炭素数4〜20の芳香族基を表す。)
で表わされる繰り返し単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の第一の繰り返し単位、及び下記式(C)および(D)
【化2】

(C)

(D)
(XはO、S、NHのいずれかを表しAr’は炭素数4〜20の4価の芳香族基を表わし,YおよびYはN、CHのいずれかを表し、YおよびYの少なくともいずれか一方はNである)
で表わされる繰り返し単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の第二の繰り返し単位、及び下記式(E)および(F)
【化3】

(E)

(F)
(mは1〜4の整数、XはO、S、NHのいずれかを表し、Mはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれるハロゲン原子を表し、Ar”は炭素数4〜20の4価の芳香族基を表し、Arは炭素数4〜20の芳香族基を表す。)
で表わされる繰り返し単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の第三の繰り返し単位とからなり、下記式(1)、(2)
0.1≦(a+b)/(c+d)≦10.0 (1)
0.01≦(e+f)/(a+b+c+d)≦10.0 (2)
(aは上記式(A)のモル数を表し、bは上記式(B)のモル数を表し、cは上記式(C)のモル数を表し、dは上記式(D)のモル数を表し、eは上記式(E)のモル数を表し、fは上記式(F)のモル数を表す。)
を満たし、かつ0.5g/100mlの濃度のメタンスルホン酸溶液で25℃にて測定した還元粘度が0.05〜200dl/gである共重合体、その製造方法、およびそれからの成形体である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、引っ張り強度、圧縮強度ともに優れた剛直系複素環共重合体、およびそれからの成形体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<剛直系複素環共重合体>
本発明の剛直系複素環共重合体は、下記式(A)および(B)
【化4】

(A)

(B)
(nは1〜4の整数、XはO、S、NHのいずれかを表し、Arは炭素数4〜20の4価の芳香族基を表し、Arは炭素数4〜20の2価の芳香族基を表す。)
で表わされる繰り返し単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の第一の繰り返し単位、及び下記式(C)および(D)
【化5】

(C)

(D)
(XはO、S、NHのいずれかを表しAr’は炭素数4〜20の4価の芳香族基を表わし,YおよびYはN、CHのいずれかを表し、YおよびYの少なくともいずれか一方はNである)
で表わされる繰り返し単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の第二の繰り返し単位、及び下記式(E)および(F)
【化6】

(E)

(F)
(mは1〜4の整数、XはO、S、NHのいずれかを表し、Mはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれるハロゲン原子を表し、Ar”は炭素数4〜20の4価の芳香族基を表し、Arは炭素数4〜20の芳香族基を表す)
で表わされる繰り返し単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の第三の繰り返し単位とからなり、下記式(1)、(2)
0.1≦(a+b)/(c+d)≦10.0 (1)
0.01≦(e+f)/(a+b+c+d)≦10.0 (2)
(aは上記式(A)のモル数を表し、bは上記式(B)のモル数を表し、cは上記式(C)のモル数を表し、dは上記式(D)のモル数を表し、eは上記式(E)のモル数を表し、fは上記式(F)のモル数を表す。)
を満たし、かつ0.5g/100mlの濃度のメタンスルホン酸溶液で25℃にて測定した還元粘度が0.05〜200dl/gである共重合体である。
【0010】
上記式(1)において(a+b)/(c+d)が0.1より小さい場合や10.0より大きい場合は重合体に分子間相互作用を導入させる効果が十分得られない。(a+b)/(c+d)の下限としては、0.11以上が好ましく、より好ましくは0.125以上、さらに好ましくは0.15以上である。また、(a+b)/(c+d)の上限としては、9.0以下が好ましく、より好ましくは8.0以下、さらに好ましくは7.0以下である。従って、本発明における(a+b)/(c+d)の最適範囲は0.15以上7.0以下ということができる。
【0011】
上記式(2)において(e+f)/(a+b+c+d)が0.01より小さい場合や10.0より大きい場合は重合体に分子間相互作用を導入させる効果が十分得られない。(e+f)/(a+b+c+d)の上限としては、9.0以下が好ましく、より好ましくは8.0以下、さらに好ましくは7.0以下である。従って、本発明における(e+f)/(a+b+c+d)の最適範囲は0.01以上7.0以下ということができる。
【0012】
上記式(A)〜(F)において、Arは炭素数4〜20の4価の芳香族基であり、1〜2個の窒素原子を含んでも良い。
上記式(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)中、XはO、S、NHのいずれかを表し好ましくはSあるいはOのいずれかひとつから選ばれるものである。上記式(C)、(D)中、YおよびYはN、CHのいずれかを表し、YおよびYの少なくともいずれか一方はNである。上記式(E)、(F)中、Mはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれるハロゲン原子を表すものである。
【0013】
上記式(A)のなかで好ましいものとして下記式(A−1)
【化7】

(A−1)
(XはO、S、NHのいずれかを表し、Z、ZはN、CHのいずれかを表す。)
で表わされる繰り返し単位が挙げられる。
【0014】
上記式(B)のなかで好ましいものとして下記式(B−1)
【化8】

(B−1)
(XはO、S、NHのいずれかを表し、Z、ZはN、CHのいずれかを表す。)
で表わされる繰り返し単位が挙げられる。
【0015】
上記式(C)のなかで好ましいものとして下記式(C−1)
【化9】

(C−1)
(XはO、S、NHのいずれかを表し、Y、Y、Z、ZはN、CHのいずれかを表し、YおよびYの少なくともいずれか一方はNである)
で表わされる繰り返し単位が挙げられる。
【0016】
上記式(D)のなかで好ましいものとして下記式(D−1)
【化10】

(D−1)
(XはO、S、NHのいずれかを表し、Y、Y、Z、ZはN、CHのいずれかを表し、YおよびYの少なくともいずれか一方はNである)
で表わされる繰り返し単位が挙げられる。
【0017】
上記式(E)のなかで好ましいものとして下記式(E−1)
【化11】

(E−1)
(XはO、S、NHを表し、Z、ZはN、CHのいずれかを表し、Mはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれるハロゲン原子を表す)
で表わされる繰り返し単位が挙げられる。
【0018】
上記式(F)のなかで好ましいものとして下記式(F−1)
【化12】

(F−1)
(XはO、S、NHを表し、Z、ZはN、CHのいずれかを表し、Mはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれるハロゲン原子を表す)
で表わされる繰り返し単位が挙げられる。
【0019】
本発明の共重合体の還元粘度は0.5g/100mlの濃度のメタンスルホン酸溶液で25℃にて測定した値が0.05〜200dl/gの範囲のものである。
本発明の剛直系複素環共重合体の還元粘度の好ましい範囲は1.0〜100dl/g、さらに好ましくは10〜80dl/gである。
【0020】
さらに本発明の共重合体には、必要に応じて、各種の副次的添加物を加えていろいろな改質を行うことが出来る。副次的添加物の例としては、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、各種フィラー、静電剤、離型剤、可塑剤、香料、抗菌・抗カビ剤、核形成剤、滑剤、難燃剤、発泡剤、充填剤等その他類似のものが挙げられる。
【0021】
(製造方法について)
本発明の共重合体は、次の方法によって良好な生産性で工業的に製造することができる。
【0022】
すなわち下記式(G)または(H)
【化13】

(G)

(H)
(XはO、S、NHのいずれかを表し、Arは炭素数4〜20の4価の芳香族基を表わす)
で表わされる芳香族アミン誘導体およびその強酸塩からなる群から選択される少なくとも1種と、下記式(I)、(J)および(K)
【化14】

(I)

(J)

(K)
(Ar、Arは炭素数4〜20の芳香族基であり、LはOH、ハロゲン原子、またはORで表される基であり、Rは炭素数6〜20の1価の芳香族基を表し、Y、Y、Z、ZはN、CHのいずれかを表し、YおよびYの少なくともいずれか一方はNであり、Mはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれるハロゲン原子、nおよびmはそれぞれ独立に1〜4の整数を表す。)
で表わされる芳香族ジカルボン酸誘導体を反応させる方法が挙げられる。
【0023】
上記式(G)、(H)におけるArは共重合体の組成に関して説明したArと同じであり、芳香族基の具体例はフェニレン基、ナフタレン基、ビフェニレン基、イソプロピリデンジフェニル基、ジフェニルエーテル基、ジフェニルスルフィド基、ジフェニルスルホン基、ジフェニルケトン基等である。これらの芳香族基の水素原子のうち1つまたは複数が各々独立にフッ素、塩素、臭素等のハロゲン基;メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数5〜10のシクロアルキル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基等で置換されていてもよい。
ここで強酸塩としては塩酸塩、燐酸塩、硫酸塩が挙げられる。
【0024】
上記式(G)で表される芳香族アミン誘導体が下記式
【化15】

(Z、ZはN、CHのいずれかを表す。)
あるいはその2強酸塩、及びまたは下記式
【化16】

(Z、ZはN、CHのいずれかを表す。)
あるいはその2強酸塩であることが好ましい。
【0025】
また上記式(H)で表される芳香族アミン誘導体が下記式
【化17】

(Z、ZはN、CHのいずれかを表す。)
あるいはその2強酸塩、及びまたは下記式
【化18】

(Z、ZはN、CHのいずれかを表す。)
あるいはその2強酸塩であることが好ましい。
【0026】
上記式(I)で表される芳香族ジカルボン酸誘導体が下記式(I)−1
【化19】

(I)−1
(LはOH、ハロゲン原子、またはORで表される基であり、Rは炭素数6〜20の1価の芳香族基を表す)
で表わされることが好ましい。
【0027】
また上記式(K)で表される芳香族ジカルボン酸誘導体が下記式(K)−1
【化20】

(K)−1
(LはOH、ハロゲン原子、またはORで表される基であり、Rは炭素数6〜20の1価の芳香族基を表し、Mはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれるハロゲン原子を表す)
で表わされることが好ましい。
【0028】
各モノマー(反応成分)のモル数が、下記式(3)、(4)、および(5)
0.8≦ (g+h)/(i+j+k) ≦1.2 (3)
0.1≦i/j≦10.0 (4)
0.01≦k/(i+j)≦10.0 (5)
(gは上記式(G)で表される芳香族アミン誘導体、hは上記式(H)で表される芳香族アミン誘導体、iは上記式(I)で表される芳香族ジカルボン酸誘導体、jは上記式(J)で表される芳香族ジカルボン酸誘導体、 kは上記式(K)で表される芳香族ジカルボン酸誘導体の各仕込みモル数である。)
【0029】
上記式(3)において(g+h)/(i+j+k)が0.8より小さい場合や1.2より大きい場合には、重合度の十分なポリマーを得ることが困難である場合がある。(g+h)/(i+j+k)の下限としては、0.9以上が好ましく、より好ましくは0.93以上、さらに好ましくは0.95以上である。また、(g+h)/(i+j+k)の上限としては、1.1以下が好ましく、より好ましくは1.07以下、さらに好ましくは1.05以下である。従って、本発明における(g+h)/(i+j+k)の最適範囲は0.95≦(g+h)/(i+j+k)≦1.05ということができる。
【0030】
上記式(4)においてi/jが0.1より小さい場合や10.0より大きい場合は重合体に分子間相互作用を導入させる効果が十分得られない。i/jの下限としては、0.11以上が好ましく、より好ましくは0.125以上、さらに好ましくは0.15以上である。また、i/jの上限としては、9.0以下が好ましく、より好ましくは8.0以下、さらに好ましくは7.0以下である。従って、本発明におけるi/jの最適範囲は0.15≦i/j≦7.0ということができる。
【0031】
上記式(5)においてk/(i+j)が0.01より小さい場合や10.0より大きい場合は重合体に分子間相互作用を導入させる効果が十分得られない。k/(i+j)のの上限としては、9.0以下が好ましく、より好ましくは8.0以下、さらに好ましくは7.0以下である。従って、本発明におけるk/(i+j)の最適範囲は0.01≦k/(i+j)≦7.0ということができる。
【0032】
(G)、(H)はそれぞれ単独で用いても、併用してもよく、(G):(H)のモル比は0:100〜100:0の任意の比率で適宜選択できる。
【0033】
反応は、溶媒中で行う反応、無溶媒の加熱溶融反応のいずれも採用できるが、例えば、後述する反応溶媒中で攪拌下に加熱反応させるのが好ましい。反応温度は、50℃から500℃が好ましく、100℃から350℃がさらに好ましい。50℃より温度が低いと反応が進みにくく、500℃より温度が高いと分解等の副反応が起こりやすくなるためである。反応時間は温度条件にもよるが、通常は1時間から数十時間である。反応は加圧下から減圧下で行うことができる。
【0034】
反応は、通常、無触媒でも進行するが、必要に応じてエステル交換触媒を用いてもよい。本発明で用いるエステル交換触媒としては三酸化アンチモンといったアンチモン化合物、酢酸第一錫、塩化錫、オクチル酸錫、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジアセテートといった錫化合物、酢酸カルシウムのようなアルカリ土類金属塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムのようなアルカリ金属塩等、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸トリフェニル等の亜リン酸を例示することができる。
【0035】
反応に際しては、必要に応じて溶媒を用いることが出来る。好ましい溶媒としては1―メチル―2−ピロリドン、1―シクロヘキシル−2―ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン、ジクロロメタン、クロロロホルム、テトラヒドロフラン、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、りん酸、ポリりん酸等を挙げることが出来るがこれに限定されるものではない。
剛直系複素環共重合体の分解及び着色を防ぐため、反応は乾燥した不活性ガス雰囲気下で行うことが望ましい。
【0036】
このようにして製造される共重合体の還元粘度は、0.5g/100mlの濃度のメタンスルホン酸溶液で25℃にて測定した値が0.05〜200dl/gの範囲のものである。本発明の共重合体の還元粘度の好ましい範囲は1.0以上100以下、さらに好ましくは10以上80以下である。
以上のとおり本発明の剛直系複素環共重合体から、引っ張り強度、圧縮強度ともに優れた成形体を提供することができる
【実施例】
【0037】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによっていささかも限定されるものではない。なお、以下の実施例における各測定値は次の方法により求めた値である。
(1)還元粘度:0.5g/100mlの濃度のメタンスルホン酸溶液で25℃にて測定した値である。
(2)機械特性:オリエンテック株式会社製テンシロン万能試験機1225Aにより結節強度および引っ張り強度を求めた。結節強度/引っ張り強度:結節強度を引っ張り強度で割った値で繊維の当方性の指標とした。
【0038】
[参考例1](モノマーの合成、重合)(N−PBO)
4,6−ジアミノ−1,3−ベンゼンジオール二塩酸塩7重量部を、窒素で脱気した水33重量部に溶解した。ピリジンジカルボン酸5.347重量部を、1M水酸化ナトリウム水溶液64重量部に溶解し窒素で脱気した。4,6−ジアミノ−1,3−ベンゼンジオール二塩酸塩水溶液を、ピリジンジカルボン酸二ナトリウム塩水溶液に10分間かけて滴下し、4,6−ジアミノ−1,3−ベンゼンジオール/ピリジンジカルボン酸塩の白色沈殿を形成させた。この際、反応温度は90℃に維持した。得られた塩を、ろ過し、窒素で脱気した水3000重量部に分散混合し、再度ろ過を行った。この分散混合、ろ過操作を3回繰り返し行った。
【0039】
[参考例2](モノマーの合成)(OH−PBO)
4,6−ジアミノ−1,3−ベンゼンジオール二塩酸塩7重量部を、窒素で脱気した水33重量部に溶解した。2,5−ジヒドロキシテレフタル酸6.180重量部を、1M水酸化ナトリウム水溶液64重量部に溶解し窒素で脱気した。4,6−ジアミノ−1,3−ベンゼンジオール二塩酸塩水溶液を、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸二ナトリウム塩水溶液に10分間かけて滴下し、4,6−ジアミノ−1,3−ベンゼンジオール/2,5−ジヒドロキシテレフタル酸塩の白色沈殿を形成させた。この際、反応温度は90℃に維持した。得られた塩を、ろ過し、窒素で脱気した水3000重量部に分散混合し、再度ろ過を行った。この分散混合、ろ過操作を3回繰り返し行った。
【0040】
[参考例3](モノマーの合成)(Br−PBO)
4,6−ジアミノ−1,3−ベンゼンジオール二塩酸塩7重量部を、窒素で脱気した水33重量部に溶解した。2,5−ジブロモテレフタル酸10.104重量部を、1M水酸化ナトリウム水溶液64重量部に溶解し窒素で脱気した。4,6−ジアミノ−1,3−ベンゼンジオール二塩酸塩水溶液を、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸二ナトリウム塩水溶液に10分間かけて滴下し、4,6−ジアミノ−1,3−ベンゼンジオール/2,5−ジブロモテレフタル酸塩の白色沈殿を形成させた。この際、反応温度は90℃に維持した。得られた塩を、ろ過し、窒素で脱気した水3000重量部に分散混合し、再度ろ過を行った。この分散混合、ろ過操作を3回繰り返し行った。
【0041】
[実施例1](重合)
参考例1で得られた4,6−ジアミノ−1,3−ベンゼンジオールのピリジンジカルボン酸塩8.725重量部、参考例2にて得られた4,6−ジアミノ−1,3−ベンゼンジオールの2,5−ジヒドロキシテレフタル酸塩4.803重量部、参考例3で得られた4,6−ジアミノ−1,3−ベンゼンジオールの2,5−ジブロモテレフタル酸塩0.5917重量部にポリりん酸43.3重量部、5酸化りん15.0重量部、塩化スズ0.1重量部を加え80℃にて1時間攪拌混合した。その後2時間かけ150℃に昇温し、150℃にて6時間攪拌を行った。その後1時間かけて200℃に昇温し200℃にて1時間反応を行った。得られたポリマーの還元粘度は34dl/gであった。
【0042】
[実施例2]
実施例1にて得られたポリマードープを孔径0.2mm、孔数1個のキャップを用いド−プ温度を180℃に保ち、1.0/minでイオン交換水の凝固浴に押し出した。キャップ面と凝固浴との距離は20cmとした。押し出した繊維は90m/minにて水洗バス中で巻き取り、フィラメントを得た。弾性率は156GPa、引っ張り強度844mN/texであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(A)および(B)
【化1】

(A)

(B)
(nは1〜4の整数、XはO、S、NHのいずれかを表し、Arは炭素数4〜20の4価の芳香族基を表し、Arは炭素数4〜20の芳香族基を表す。)
で表わされる繰り返し単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の第一の繰り返し単位、及び下記式(C)および(D)
【化2】

(C)

(D)
(XはO、S、NHのいずれかを表しAr’は炭素数4〜20の4価の芳香族基を表わし,YおよびYはN、CHのいずれかを表し、YおよびYの少なくともいずれか一方はNである)
で表わされる繰り返し単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の第二の繰り返し単位、及び下記式(E)および(F)
【化3】

(E)

(F)
(mは1〜4の整数、XはO、S、NHのいずれかを表し、Mはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれるハロゲン原子を表し、Ar”は炭素数4〜20の4価の芳香族基を表し、Arは炭素数4〜20の芳香族基を表す。)
で表わされる繰り返し単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の第三の繰り返し単位とからなり、下記式(1)、(2)
0.1≦(a+b)/(c+d)≦10.0 (1)
0.01≦(e+f)/(a+b+c+d)≦10.0 (2)
(aは上記式(A)のモル数を表し、bは上記式(B)のモル数を表し、cは上記式(C)のモル数を表し、dは上記式(D)のモル数を表し、eは上記式(E)のモル数を表し、fは上記式(F)のモル数を表す。)
を満たし、かつ0.5g/100mlの濃度のメタンスルホン酸溶液で25℃にて測定した還元粘度が0.05〜200dl/gである共重合体。
【請求項2】
上記式(A)で表される繰り返し単位が下記式(A−1)
【化4】

(A−1)
(XはO、S、NHを表し、Z、ZはN、CHのいずれかを表す。)
で表わされ、かつ上記式(C)で表される繰り返し単位が下記式(C−1)
【化5】

(C−1)
(XはO、S、NHのいずれかを表し、Y、Y、Z、ZはN、CHのいずれかを表し、YおよびYの少なくともいずれか一方はNである)
で表わされ、かつ上記式(E)で表される繰り返し単位が下記式(E−1)
【化6】

(E−1)
(XはO、S、NHを表し、Z、ZはN、CHのいずれかを表し、Mはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれるハロゲン原子を表す)
で表される請求項1記載の共重合体。
【請求項3】
上記式(B)で表される繰り返し単位が下記式(B−1)
【化7】

(B−1)
(XはO、S、NHのいずれかを表し、Z、ZはN、CHのいずれかを表す。)
で表わされ、かつ上記式(D)で表される繰り返し単位が下記式(D−1)
【化8】

(D−1)
(XはO、S、NHのいずれかを表し、Y、Y、Z、ZはN、CHのいずれかを表し、YおよびYの少なくともいずれか一方はNである)
で表され、かつ上記式(F)で表される繰り返し単位が下記式(F−1)
【化9】

(F−1)
(XはO、S、NHを表し、Z、ZはN、CHのいずれかを表し、Mはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれるハロゲン原子を表す)
で表わされる請求項1記載の共重合体。
【請求項4】
下記式(G)および(H)
【化10】

(G)

(H)
(XはO、S、NHのいずれかを表し、Arは炭素数4〜20の4価の芳香族基を表わす)
で表わされる芳香族アミン誘導体およびその強酸塩からなる群から選択される少なくとも1種と、下記式(I)、(J)および(K)
【化11】

(I)

(J)

(K)
(Ar、Arは炭素数4〜20の芳香族基であり、LはOH、ハロゲン原子、またはORで表される基であり、Rは炭素数6〜20の1価の芳香族基を表し、Y、Y、Z、ZはN、CHのいずれかを表し、YおよびYの少なくともいずれか一方はNであり、Mはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれるハロゲン原子、nおよびmはそれぞれ独立に1〜4の整数を表す。)
で表わされる芳香族ジカルボン酸誘導体を、
下記式(3)、(4)、および(5)
0.8≦ (g+h)/(i+j+k) ≦1.2 (3)
0.1≦i/j≦10.0 (4)
0.01≦k/(i+j)≦10.0 (5)
(gは上記式(G)で表される芳香族アミン誘導体、hは上記式(H)で表される芳香族アミン誘導体、iは上記式(I)で表される芳香族ジカルボン酸誘導体、jは上記式(J)で表される芳香族ジカルボン酸誘導体、 kは上記式(K)で表される芳香族ジカルボン酸誘導体の各モル数である。)
を満足する割合で反応させる請求項1記載の共重合体の製造方法。
【請求項5】
上記式(G)で表される芳香族アミン誘導体が下記式
【化12】

(Z、ZはN、CHのいずれかを表す。)
あるいはその2強酸塩、及びまたは下記式
【化13】

(Z、ZはN、CHのいずれかを表す。)
あるいはその2強酸塩である請求項4に記載の共重合体の製造方法。
【請求項6】
上記式(H)で表される芳香族アミン誘導体が下記式
【化14】

(Z、ZはN、CHのいずれかを表す。)
あるいはその2強酸塩、及びまたは下記式
【化15】

(Z、ZはN、CHのいずれかを表す。)
あるいはその2強酸塩である請求項4に記載の共重合体の製造方法。
【請求項7】
上記式(I)で表される芳香族ジカルボン酸誘導体が下記式(I)−1
【化16】

(I)−1
(LはOH、ハロゲン原子、またはORで表される基であり、Rは炭素数6〜20の1価の芳香族基を表す)
で表わされる請求項4〜6のいずれかに記載の共重合体の製造方法。
【請求項8】
上記式(K)で表される芳香族ジカルボン酸誘導体が下記式(K)−1
【化17】

(K)−1
(LはOH、ハロゲン原子、またはORで表される基であり、Rは炭素数6〜20の1価の芳香族基を表し、Mはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれるハロゲン原子を表す)
で表わされる請求項4〜7のいずれかに記載の共重合体の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれかに記載の共重合体から得られる成形体。
【請求項10】
成型体が繊維で有る請求項9記載の成形体。
【請求項11】
成型体がフィルムで有る請求項9記載の成形体。

【公開番号】特開2006−342233(P2006−342233A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−168137(P2005−168137)
【出願日】平成17年6月8日(2005.6.8)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【出願人】(303013268)帝人テクノプロダクツ株式会社 (504)
【Fターム(参考)】