説明

剤形安定性を改善させたO/W型化粧料組成物

本発明は、剤形安定性を改善させたO/W型化粧料組成物に関し、より詳細には、剤形安定性改善のための有効成分として、親油性アルキル鎖を側鎖として有する分枝型高分子と、陰イオン界面活性剤とを含むO/W型化粧料組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剤形安定性を改善させたO/W型化粧料組成物に関し、より詳細には、剤形安定性改善のための有効成分として、親油性アルキル鎖を側鎖として有する分枝型高分子(branched polymer)と、陰イオン界面活性剤とを含むO/W型化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーム状化粧料は、その剤形または性状によって多様に分類することができ、クリーム硬度の測定時に40dyne/cm2(T.Speed 2cm/min)以上のクリーム状の化粧料を、通常、高硬度のクリームであると言う。
【0003】
一般的に、高硬度クリーム剤形の化粧料は、脂肪アルコールやワックスのような固形成分と水溶性高分子が配合されたものであって、これらがクリームの粘度を形成する主要成分となる。クリーム剤形の見掛けは、栄養感があるように見えるが、含有された多量の脂肪アルコールとワックスによって重くて且つべたつく使用感を示すだけでなく、このような成分は、温度変化に敏感であるから、製造時に多くの注意を要し、剤形及び経時安定性を阻害することになる。また、シリコンオイルを含有する化粧料の場合は、油相及び水相と相溶性が良くないため、シリコンオイルの含量が増加すれば、剤形安定性が不良になる。また、水溶性高分子系の高分子のみを使用する場合は、すべすべし、吸収性が良くないという短所がある。特に、高分子は、化粧品において内容物の粘度を調節することで、使用時に美的感覚を高め、オイル粒子の乳化安定性と分散物の分散安定性を確保するので、現代化粧品において不可欠の成分である。しかし、十分な機能を発揮するためには、高分子を過量で使用しなければならないが、この場合、化粧料を皮膚に塗布すれば、すべすべした使用感を与え、水分が蒸発しながら垢のように高分子がこすられるか、または次の化粧段階であるメーキャップ化粧時に均一に塗布されないなどの問題が発生する。したがって、このような問題を解決するために、様々な形態の水溶性高分子が合成されているが、その改善効果は、微々たる水準にとどまっていて、画期的な突破口が見つかっていない。
【0004】
一方、クリーム化粧料組成物には、通常的には、親水性非イオン界面活性剤と高級脂肪族アルコールが含まれているが、このようなクリーム状化粧料は、経時安定性と使用性に優れているという長所があるが、界面活性剤と高級脂肪族アルコールの含量比によっては剤形安定性が不良になることがあり、製造工程で多くの注意を要し、皮膚に副作用を誘発することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これより、本発明者らは、特定高分子と陰イオン界面活性剤の相互作用を明らかにし、これを利用して高硬度の剤形安定性に優れた化粧料組成物を製造するために努力した結果、親油性アルキル鎖を側鎖として有する分枝型高分子であるアクリレート/C10−30アルキルアクリレートクロスポリマー(Acrylates/C10−30 Alkyl Acrylate Crosspolymer)と、陰イオン界面活性剤であるポタシウムセチルホスフェート(Potassium Cetyl Phosphate)とを特定の比率で混合する場合、これらの相互作用によって化粧料組成物の硬度を上昇させて、最上の安定度を維持することができることを知見し、本発明を完成するようになった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、硬度を上昇させて最上の安定度を維持することができるO/W型化粧料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、剤形安定性改善のための有効成分として、親油性アルキル鎖を側鎖として有する分枝型高分子と、陰イオン界面活性剤とを含むことを特徴とするO/W型化粧料組成物を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によるO/W型化粧料組成物は、親油性アルキル鎖を側鎖として有する高分子と、陰イオン界面活性剤とを混合使用し、化粧料の硬度を上昇させることによって、剤形の安定性を改善させた。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、剤形安定化剤として、親油性アルキル鎖を側鎖として有する分枝型高分子と、陰イオン界面活性剤とを含むO/W型化粧料組成物に関する。本発明の一実施例において、上記O/W型化粧料組成物は、高硬度のクリーム状化粧料であることができる。
【0010】
本発明では、親油性アルキル鎖を側鎖として有する分枝型高分子として、アクリレート/C10−30アルキルアクリレートクロスポリマー、アクリレート/C12−22アルキルメタクリレート共重合体(Acrylates/C12−22Alkyl Methacrylate Copolymer)、アクリレート/ベヘネス−25メタクリレート共重合体(Acrylates/Beheneth−25 Methacrylate Copolymer)、またはアクリレート/セテス−20メタクリレート共重合体(Acrylates/Ceteth−20 Methacrylate Copolymer)を使用することができ、最も好ましくは、アクリレート/C10−30アルキルアクリレートクロスポリマーを使用する。
【0011】
また、陰イオン界面活性剤として、ポタシウムセチルホスフェート、アルミニウムイソステアリルグリセリルホスフェート(Aluminum Isostearyl Glyceryl Phosphate)、またはソジウムラウリルサルフェート(Sodium lauryl sulfate)などのように、親水性基としてフォスフェート、サルフェートまたはシトラートなどの陰イオン性基を有し、対イオンとしてソジウム、ポタシウムまたはアンモニウムなどが挙げられ、疎水基として一般的にC8〜24の脂肪アルキル基を有する界面活性剤を使用することができ、最も好ましくは、ポタシウムセチルホスフェートを使用する。
【0012】
本発明によるO/W型化粧料組成物は、組成物の全体重量に対して上記分枝型高分子を0.05〜0.5重量%で含有し、上記陰イオン界面活性剤を0.5〜2重量%で含有することができる。この際、分枝型高分子の含量が0.05重量%未満の場合には、漸増の効果を発揮することができず、0.5重量%を超過する場合には、皮膚安定性の問題が発生し、陰イオン界面活性剤の含量が0.5重量%未満の場合には、粒子の乳化が形成されない問題が発生し、2重量%を超過する場合には、皮膚刺激があるなど安全性の問題が発生する。
【0013】
本発明によるO/W型化粧料組成物は、クリーム硬度の測定時に、40dyne/cm2(T.Speed 2cm/min)以上の高硬度を有することが特徴である。したがって、本発明によるO/W型化粧料組成物は、硬度及び使用感を画期的に変化させることができ、これにより、剤形安定性を高めることができる。また、本発明によるO/W型化粧料組成物は、通常、クリーム状化粧料に配合するオイルやワックスの含量を高めて混合しても、剤形安定性を害しない。
【0014】
本発明によるO/W型化粧料組成物は、O/W型化粧料の製造時に、通常的に使用するジメチコンまたはシクロメチコンなどのシリコンオイル、セチルエチルヘキサノエート(cetyl ethyl hexanoate)またはC12−15アルキルベンゾエート(Alkyl Benzoate)などのエステル系オイル、水素化ポリデセン(Hydrogenated Polydecene)またはスクアラン(Squalane)などのヒドロカーボン系オイル、及びこれらの混合物を組成物の全体重量に対して2〜30重量%で含有することができるが、これに限定されるものではない。この際、“オイルの含量”は、エマルジョン安定化剤を含まないオイル状構成成分の総量を意味する。
【0015】
また、本発明によるO/W型化粧料組成物は、O/W型化粧料の製造時に、通常的に使用する色素、香料、防腐剤及び漸増剤などの補助成分を、化粧料組成物の全体重量に対して0〜20重量%で含有することができる。
【0016】
本発明によるO/W型化粧料組成物は、クリーム状で最も安定的で且つ合理的ではあるが、使用量を調節することによって、クリーム状以外の剤形にも適用可能であり、皮膚、粘膜、頭皮または毛髪などに使用することができるものであって、例えば、柔軟化粧水、栄養化粧水、ローション、クリーム、パック、ゼル若しくはパッチなどの基礎化粧料、リップスティック、メーキャップベース若しくはファウンデーションなどのメーキャップ化粧料、シャンプー、リンス、ボディークレンザー、歯磨き若しくは口腔清浄剤などの洗浄料、ヘアトニック、ゼル若しくはムースなどの整髪剤、または養毛剤若しくは染毛剤などの毛髪用化粧料組成物に剤形化されることができる。また、ローション、軟膏、ゲル、クリーム、パッチまたは噴霧剤のような医薬品及び医薬部外品などに幅広く適用することもできる。
【実施例】
【0017】
以下、本発明の内容を実施例及び試験例によりさらに具体的に説明する。これら実施例は、本発明の内容を理解するために提示されるものに過ぎず、本発明の権利範囲がこれら実施例に限定されるものではなく、当業界において通常的に周知された変形、置換及び挿入などを行うことができ、これに関するものも本発明の範囲に含まれる。
【0018】
[実施例1及び比較例1〜5]
下記表1に記載された組成で下記の製造方法によって実施例1及び比較例1〜5のO/W型クリームをそれぞれ製造した(単位:重量%)。
【0019】
【表1】

【0020】
〈製造方法〉
1)油相成分を70℃に加温した。
2)水相成分を混合攪拌機(agi-mixer)で混合しながら75℃に加温して溶解した。
3)上記2)の水相成分に、1)の油相成分を混合し、8,000rpmで5分間ホモゲナイザーを利用してクリームを製造した。
4)その後、撹拌しながら漸増剤など追加成分を入れ、ホモゲナイザーにより8,000rpmで3分間撹拌した。
5)完全撹拌して、脱気した後、30℃に冷却した。
【0021】
[試験例1]高分子と界面活性剤変化による処方例
上記実施例1及び比較例1〜5で、高分子と界面活性剤の変化による各O/W型クリーム製造時の硬度変化値を測定し、実施例1を基準にして他の試験物質(比較例1〜5)の変化幅を調査した結果を下記表2に示した。この際、硬度測定は、SUN RHEOMETER社のCOMPAC−100 2NDを利用してFULL SCALE 2KGの圧力、2cm/2MIN scaleで測定した。
【0022】
【表2】

【0023】
上記表2の結果から、陰イオン界面活性剤であるポタシウムセチルホスフェートと、親油性アルキル鎖を側鎖として有する高分子であるアクリレート/C10−30アルキルアクリレートクロスポリマーとを混合使用した実施例1のクリームが、他の界面活性剤と他の高分子とを使用した比較例1〜5よりも、最小15〜30程度の硬度が高くなることを確認することができた。
【0024】
[試験例2]クリームの安定度の調査
上記実施例1及び比較例1〜5で製造したO/W型クリームを試験物質にして室温、45℃、及び循環(Cycling)恒温槽で、5日、10日、15日、及び一ヶ月間保管しながら、硬度下降、オイルの浮遊や分離などの発生有無によるクリーム安定度を観察し、その結果を下記表3に示した。
【0025】
【表3】

【0026】
上記表3の結果から、本発明による実施例1のO/W型クリーム剤形が、室温、高温、及び循環状態で、比較例1〜5のO/W型クリーム剤形より高い安定性を確保することができることを確認した。すなわち、O/W型高硬度クリームの製造時に、親油性アルキル鎖を側鎖として有する高分子と、陰イオン界面活性剤とを混合添加することによって、硬度を上昇させ、高い安定度を確保することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
剤形安定性改善のための有効成分として、親油性アルキル鎖を側鎖として有する分枝型高分子と、陰イオン界面活性剤とを含むことを特徴とするO/W型化粧料組成物。
【請求項2】
上記親油性アルキル鎖を側鎖として有する分枝型高分子は、アクリレート/C10−30アルキルアクリレートクロスポリマー、アクリレート/C12−22アルキルメタクリレート共重合体、アクリレート/ベヘネス−25メタクリレート共重合体、及びアクリレート/セテス−20メタクリレート共重合体よりなる群から選択されたいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のO/W型化粧料組成物。
【請求項3】
上記陰イオン界面活性剤は、ポタシウムセチルホスフェート、アルミニウムイソステアリルグリセリルホスフェート、及びソジウムラウリルサルフェートよりなる群から選択されたいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のO/W型化粧料組成物。
【請求項4】
上記親油性アルキル鎖を側鎖として有する分枝型高分子は、組成物の全体重量に対して0.05〜0.5重量%で含有されることを特徴とする請求項1に記載のO/W型化粧料組成物。
【請求項5】
上記陰イオン界面活性剤は、組成物の全体重量に対して0.5〜2重量%で含有されることを特徴とする請求項1に記載のO/W型化粧料組成物。

【公表番号】特表2013−506656(P2013−506656A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532002(P2012−532002)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【国際出願番号】PCT/KR2010/006379
【国際公開番号】WO2011/040720
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(503327691)株式會社アモーレパシフィック (73)
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
【住所又は居所原語表記】181,Hangang−ro 2ga,Yongsan−gu,Seoul 140−777,Republic of Korea
【Fターム(参考)】